説明

無水アルケニルコハク酸ハーフエステル乳化剤

【課題】新規な乳化剤の製造、該乳化剤を用いて製造されたエマルション、および該乳化剤を用いて製造された製品を提供する。
【解決手段】本発明は、デンプンを十分に可溶化した後、その十分に可溶化されたデンプン製品を十分に誘導体化することにより、一実施形態では、十分に可溶化されたデンプンをアルケニル無水コハク酸と反応させることにより製造されたデンプン乳化剤製品に関する。このようなデンプン乳化剤製品は、乳化剤および/またはカプセル化剤として、特に、有効成分の高い付加と保持、表面の低い油露出、および優れた酸化耐性が望まれる系において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年11月25日に米国特許商標庁に提出された米国本特許出願第12/626,463号および2010年1月14日に米国特許商標庁に提出された米国本特許出願第12/687,782号の継続出願であり、これらに対する優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、新規な乳化剤の製造、該乳化剤を用いて製造されたエマルション、および該乳化剤を用いて製造された製品に関する。
【背景技術】
【0003】
ハーフエステルデンプン誘導体は、アルケニル無水コハク酸デンプン誘導体を形成させるように、デンプンと置換ジカルボン酸無水物を反応させることにより作出することができる。天然のデンプン顆粒は冷水には不溶である。しかしながら、天然のデンプン顆粒を水に分散させて加熱すると、水和するようになり、膨潤する。加熱、剪断または極端なpHの条件を続けると、その顆粒が断片化し、デンプン分子が水に分散し、すなわち、可溶化され、顆粒でない分散デンプンとなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一つの実施形態において、本発明は、アルケニル無水コハク酸のデンプンハーフエステルである乳化剤製品を含んでなる。アルケニル無水コハク酸のデンプンハーフエステルは75以下の水流動度(water fluidity)を有し、分散相プロセスにより製造され、そして、唯一の乳化剤としてアルケニル無水コハク酸のデンプンハーフエステルを用いて、20重量%の油付加量で、アルケニル無水コハク酸のデンプンハーフエステル:油が1:4の比率で含む、試験水中油型エマルションを製造する場合に、少なくとも、a)PID・ELS(polarization intensity differential plus elastic light scattering)により評価した場合に、57℃で24時間後にエマルションの油粒子に1ミクロンを超えるものが約5%以下であること、およびb)BP DV−1(Brookfield Programmable DV-1)粘度計により評価した場合に、5℃で約1週間保存した後にエマルションのブルックフィールド粘度が約2Pa・s(約2000cps)であることを特徴とする試験水中油型エマルションを作り出す。
【0005】
別の実施形態では、該デンプン乳化剤製品はドデセニルまたはオクテニル無水コハク酸のハーフエステルである。
別の実施形態では、該デンプン乳化剤製品の水流動度は65以下である。
別の実施形態では、該デンプン乳化剤製品の水流動度は40以下である。
別の実施形態では、該デンプン乳化剤製品の水流動度は20以下である。
【0006】
別の実施形態では、該デンプン乳化剤製品はオクテニル無水コハク酸のハーフエステルであり、該デンプン乳化剤製品の水流動度は40以下である。
別の実施形態では、該デンプン乳化剤製品の平均粒径は、PID・ELS(polarization intensity differential plus elastic light scattering) (Beckman Coulter LS 13 320 Aqueous Module)により評価した場合に、1ミクロン未満として特徴付けることができる。
【0007】
別の実施形態では、該デンプン乳化剤製品を唯一の乳化剤として用いて製造された試験水中油型エマルションは、アルケニル無水コハク酸のデンプンハーフエステル:油の比率が1:6であることを特徴とする。
別の実施形態では、試験水中油型エマルションは、該デンプン乳化剤製品を唯一の乳化剤として用いて製造され、ここで試験水中油型エマルションの油付加量は24重量%である。
【0008】
別の実施形態では、油と水とデンプンを含んでなるエマルションが記載され、ここで、該デンプンはアルケニル無水コハク酸のハーフエステルであり、該デンプンは分散相プロセスにより製造され、該デンプンは水流動度が75以下であることを特徴とし、そして該デンプンは、唯一の乳化剤として該デンプンを用いて、デンプン:油の比率が1:4で、油付加量を20重量%として含む、試験水中油型エマルションを製造する場合に、その試験水中油型エマルションが少なくとも:
a.PID・ELS(polarization intensity differential plus elastic light scattering)により評価した場合に、57℃で24時間後に該試験水中油型エマルションの油粒子に1ミクロンを超えるものが約5%以下であること、および
b.BP DV−1(Brookfield Programmable DV-1)粘度計により評価した場合に、5℃で約1週間保存した後に該試験水中油型エマルションのブルックフィールド粘度が約2Pa・s(約2000cps)であること
を特徴とする。
【0009】
別の実施形態では、デンプンと油と水を含んでなり、該デンプンがドデセニル無水コハク酸のハーフエステルであるエマルションが開示される。
別の実施形態では、デンプンと油と水を含んでなり、該デンプンがオクテニル無水コハク酸のハーフエステルであるエマルションが開示される。
【0010】
別の実施形態では、デンプンと油と水を含んでなり、該デンプンの水流動度が65以下であるエマルションが開示される。
別の実施形態では、デンプンと油と水を含んでなり、該デンプンの水流動度が40以下であるエマルションが開示される。
別の実施形態では、デンプンと油と水を含んでなり、該デンプンがオクテニル無水コハク酸のハーフエステルであり、該デンプンの水流動度が40以下であるエマルションが開示される。
【0011】
別の実施形態では、デンプンと油がエマルション中に1:4の比率で存在し、該油が該エマルションに対して12重量%の量で存在するエマルションが開示される。
別の実施形態では、デンプンと油がエマルション中に1:4の比率で存在し、該油が該エマルションに対して20重量%の量で存在するエマルションが開示される。
別の実施形態では、デンプンと油がエマルション中に1:4の比率で存在し、該油が該エマルションに対して24重量%の量で存在するエマルションが開示される。
【0012】
別の実施形態では、デンプンと油がエマルション中に1:6の比率で存在し、該油が該エマルションに対して12重量%の量で存在するエマルションが開示される。
別の実施形態では、デンプンと油がエマルション中に1:6の比率で存在し、該油が該エマルションに対して20重量%の量で存在するエマルションが開示される。
別の実施形態では、デンプンと油がエマルション中に1:6の比率で存在し、該油が該エマルションに対して24重量%の量で存在するエマルションが開示される。
【0013】
別の実施形態では、デンプンと油と水を含んでなり、該デンプンと該油の比率が1:6であり、該油が該エマルションに対して24重量%の量で存在するエマルションが開示される。
【0014】
本発明を記載および特許請求する目的で、以下の用語を定義する。
「アルケニル無水コハク酸のハーフエステル」とは、アルケニル無水コハク酸誘導体によるデンプンの化学修飾により製造される誘導体を意味する。一例では、アルケニル無水コハク酸のハーフエステルは、デンプンに存在するアルコール基と環状無水物を反応させ、そして該環状無水物の環状構造を開環し、例えば下記のダイアグラム(そこではStOH=デンプン)においてハーフアシッド、ハーフエステルを形成させることにより製造することができる。
【0015】
【化1】

【0016】
「アルケニル無水コハク酸」とは、分子式RC433を有する有機化合物を意味し、式中、Rはアルケニル基である。これは置換コハク酸の酸無水物である。
「OSA」とは、オクテニル無水コハク酸を意味する。
【0017】
「漏斗粘度(Funnel Viscosity)」とは、以下の手順に従って、厳密に定義されたガラス漏斗を用いて、特定量のデンプン分散液の流速を測定する粘度試験値を意味する。漏斗粘度は、一実施形態では、供試デンプン分散液を固形分8.5重量%に調整し、屈折計により測定することにより測定可能である。分散液の温度は22℃に制御される。計100mlのデンプン分散液をメスシリンダーに計り取る。そして、指でオリフィスを塞ぎながら、それを較正漏斗に注ぐ。少量を漏斗からメスシリンダーへ流し込んで、入り込んでいる空気を除き、残りを漏斗へ注ぎ戻す。次に、指を離して漏斗から内容物を流出させ、タイマーを用いて、100mlのサンプルが漏斗の尖端部(apex)(基部と漏斗本体の接合部)を通って流れるのに要する時間を計る。この時間を記録し、漏斗粘度とする。漏斗のガラス部分は標準58°の肉厚、耐性ガラス漏斗であり、その上部直径は約9〜約10cmで、基部の内径は約0.381cmである。この漏斗のガラス基部は尖端部からおよそ2.86cmの長さに切り、注意深く火炎仕上げを施し、長さ約5.08cmm、外径約0.9525cmの長いステンレス鋼チップで再び取り付ける。このスチールチップの内径は、ガラス基部に取り付ける上端では約0.5952cmであり、流出端では約0.4445cmであり、両端から約2.54cmのところで幅が制限されている。スチールチップは、テフロン(登録商標)チューブの手段によってガラス漏斗に取り付けられる。この漏斗は、上記の手順を用いて、100mlの水を6秒で通過させるように較正される。
【0018】
「水流動度」とは、0〜90の尺度で測定される粘度の試験値を意味する。水流動度は、30℃において100.0cpsの粘度を持つ標準油で標準化された、ウォータージャケット付きBohlin Visco 88 回転粘度計(Malvern Instruments, Inc., Southborough, MAから市販)を用いて測定する。水流動度は固形分レベル8.06%の粘度を測定し、その粘度を、下式を用いて水流動度(WF)値に変換することにより得られる。この手順には、必要量のデンプン(例えば、乾燥重量で10.0g)をステンレス鋼カップに加え、14gの蒸留水を加えてペーストを作製することを含む。次に、このカップに100.00gの20% CaCl2溶液を加え、この混合物を100℃の水浴中で、最初の2分間は急速攪拌しながら、30分間加熱する。その後、このデンプン分散液を90℃以上の蒸留水で最終重量(例えば124g)とする。このサンプルをすぐに粘度計カップに移し、そしてこれをBohlin Visco 88 装置に入れ、その粘度を90℃で分析する(装置の較正後)。Bohlin Visco 88 装置により記録された粘度(mPa・s)を、下式:WF=116.0−[18.746×Ln(粘度)](式中、Ln=自然対数)で定義されるように、水流動度値に変換する。
【0019】
本発明の目的で、上記の条件に従ってそれぞれ測定される漏斗粘度と水流動度の間の関係を図1に例示する。
【0020】
「ワキシー(waxy)」または「低アミロース」とは、デンプンの10重量%未満、一実施形態では5重量%未満、他の実施形態では2重量%未満、さらに別の実施形態では1重量%のアミロースを含有する、デンプンまたはデンプン含有製品(本明細書では、デンプンまたはデンプン含有製品をデンプンと呼ぶ)を意味する。
【0021】
「高アミロース」とは、デンプンの少なくとも50重量%、一実施形態では少なくとも70重量%、他の実施形態では少なくとも80重量%、さらに別の実施形態では少なくとも90重量%のアミロースを含有するデンプンを意味する。
「デンプン含有製品」とは、限定されるものではないが、フラワー(flour)、粗粉を含むデンプンを含有するいずれの製品も意味する。
「油付加量(oil load)」とは、エマルション全体に対する、エマルション中の油の量を意味するものとし、重量%で示す。
【0022】
「PID・ELS(polarization intensity differential plus elastic light scattering)」とは、微小な物体の粒径を評価するために散乱光の偏光作用を用いることを意味する。小粒子では、垂直偏光散乱光が、水平偏光光の場合と異なる散乱パターンおよび微細構造を持つ。小粒子の水平散乱強度(I)の主な特徴は、最低90°前後であることである。この最低値は大きな粒子ほど大きな角度にシフトする。従って、小粒子の場合、垂直散乱強度(I)と水平散乱強度(I)はいずれも小さなコントラストしか持たないが、これらの間の差は、識別性のより高い微細構造を明らかにすることができ、それにより、小粒子のサイジング(sizing)が可能となる。偏光作用と大角度での波長依存性を組み合わせると、このプロセスは、推定を用いずに40nmといった低いサイジング限界にまで拡張することができる。この組合せアプローチはPIDS(Polarization Intensity Differential Scattering)法(Beckman Coulter)として知られる。光ビームがv方向またはh方向のいずれかに偏光されると、ある角度の散乱強度IおよびIは異なる。IとIの差(I−I)はPIDSシグナルと呼ばれる。小粒子では、PIDSシグナルはほぼ、90°を中心とする二次曲線である。このパターンは大きな粒子ほど小さな角度にシフトし、散乱因子によって二次的ピークが現れる。PIDSシグナルは、光の波長に相対する粒径に依存するので、いくつかの波長においてPIDSシグナルを測定することで、粒径分布に関する有用な情報を得ることができる。
【0023】
「ブルックフィールド粘度」とは、室温(すなわち、22℃)にて与えられた測定条件(スピンドルS63、60rpmで、回転開始の15秒後に読み取り値を取得)でBP DV−1(Brookfield Programmable DV-1)粘度計により実行された測定によって決定された粘度を意味する。DV−Iの作動の原理は、較正されたばねによってスピンドル(試験流体に浸漬されている)を運転または回転させることである。このスピンドルに対する流体の粘性抗力(viscous drag)が、ばねのたわみによって測定される。ばねのたわみは、内部較正によって抗力を試験流体の粘度へ変換する回転変換器を用いて測定される。測定範囲(センチポアズまたはミリパスカル秒)は、スピンドルの回転速度、スピンドルの大きさと形状、中でスピンドルが回転する容器(一実施形態では、幅5.72cm(2.25インチ)×高さ12.7cm(5インチ)の寸法を有する3.5kg(8オンス)の背の高いガラス瓶)および較正済みのばねのフルスケールトルクによって決定される。
【0024】
「試験水中油型エマルション」とは、まずプレエマルションがLCI高剪断性ミキサー(Charles Ross & Son Company製のModel HSM-100 LCI)を用いて5000rpmで2分間攪拌しながらデンプン分散液(水相中のデンプン)に油ブレンドをゆっくり添加することにより作製されるプロセスによって作製されるエマルションを意味する。次に、上記のプレエマルションを、APV加圧ホモジナイザー(APV Gaulin製のModel 15 MR Laboratory Homogenizer)に2回通すことによりホモジナイズする。尚、油付加量12%の場合には、2段階目のセットを3.5MPa(500psi)、一段階目のセットを21MPa(3000psi)、油付加量20%または24%の場合には、2段階目のセットを3.5MPa(500psi)、1段階目のセットを31.5MPa(4500psi)とする。
【0025】
「分散相プロセス」とは、デンプンが十分に可溶化され、そしてその次に、またはその後のいずれかの工程で、その十分に可溶化されたデンプンが誘導体化される、少なくとも2工程を意味する。
【0026】
「十分に可溶化されたデンプン」とは、実質的に糊化し、従って、デンプンが偏光下で見た際にマルタ十字を持たず、100倍で顕微鏡観察した際にその顆粒構造または結晶構造の全てを失っているデンプンを意味する。より具体的な実施形態では、「十分に可溶化されたデンプン」とは、PID・ELS(polarization intensity differential plus elastic light scattering) (Beckman Coulter LS 13 320 Aqueous Module)により評価した場合に1ミクロン未満の平均粒径を有するデンプンを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本明細書に記載の条件に従ってそれぞれ測定される、漏斗粘度と水流動度の間の関係のグラフ表示の具体例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の詳細な実施形態をここに開示するが、開示されている実施形態は、種々の形態で具現化され得る、単に本発明の例示であると理解すべきである。さらに、本発明の種々の実施形態に関して示されるそれぞれの例は例示であって、限定を意図するものではない。さらに、これらの図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、特定の成分の詳細を示すために拡大されているものもある。さらに、図面に示されているいずれの測定値、明細なども例示であって、限定を意図するものではない。よって、本明細書に開示されている特定の構造的また機能的詳細は限定として解釈されるものではなく、単に、本発明を様々に用いることを当業者に教示する代表的なものと解釈されるべきである。
【0029】
本発明の一実施形態において、デンプンをまず水相でスラリーとして、そのままのデンプン固形分およそ40%(乾燥固形分およそ35%)のスラリーを得た後、54℃(129.2°F)に加熱する。次に、このデンプンを酸性変換する。本発明の一実施形態では、このスラリーデンプンに0.7%の濃縮HClを加え、そのスラリーを16時間混合した後、3%NaOHでpH5.5まで中和する。次に、このデンプンを濾過し、洗浄し、乾燥させた後、再懸濁させてそのままのデンプン固形分およそ40%のスラリーを形成させる。一実施形態では、次に、このスラリーをおよそ154℃(310°F)で連続的にジェット調理し、乾燥固形分含量30%の十分に可溶化されたデンプンを得る。その後、この十分に可溶化されたデンプンを十分に誘導体化する。一実施形態では、この十分に可溶化されたワキシートウモロコシデンプンを一定温度の浴槽に入れ、一定の攪拌をしながら40℃(310°F)に維持する。pHは、一実施形態において、3%NaOHで7.5に調整する。次に、この可溶化デンプンに、pHを7.5に維持しながら、そのままのデンプンの重量に対して3重量%のOSAをゆっくり加える。反応が完了した後、pHを希HClで5.5まで中和する。十分に誘導体化し、次いでそのデンプンを所望により酵素変換および/または噴霧乾燥してもよい。上記の製造工程の結果、本発明の乳化剤製品は、75以下の水流動度を有し、以下の試験水中油型エマルションで特徴付けられる。即ち、このアルケニル無水コハク酸のデンプンハーフエステルを用いて、唯一の乳化剤として該デンプンをデンプン:油の重量比1:4で、油付加量を12%として含む、試験水中油型エマルションを製造する場合に、該試験水中油型エマルションが、少なくとも(1)PID・ELS(polarization intensity differential plus elastic light scattering)により評価した場合に、57℃(134.6°F)で24時間後に該試験エマルションの油粒子に1ミクロンを超えるものが約5%以下であること、および(2)BP DV−1(Brookfield Programmable DV-1)粘度計により評価した場合に、5℃(41°F)で約1週間保存した後に試験エマルションのブルックフィールド粘度が約2Pa・s(約2000cps)未満であることを特徴とする。
【0030】
本発明のための好適なデンプン供給源はいずれの天然供給源に由来してもよい。本明細書で用いる天然供給源は天然に見られるものである。また、交雑育種、転座、形質転換、または一般に遺伝子組み換え生物(GMO)と呼ばれるそのバリエーションを含むような他のいずれかの遺伝子または染色体操作法をはじめとする標準的な育種技術により得られた植物に由来するデンプンも好適である。さらに、本明細書では、突然変異育種の既知の標準的方法により作出することができる、人工的突然変異および上記の遺伝子組成のバリエーションから育てた植物に由来するデンプンも好適である。
【0031】
デンプンの典型的な供給源は、穀類(穀粒)、種子、塊茎、根、莢および果実である。天然供給源は、トウモロコシ(maize)、エンドウ、ジャガイモ、サツマイモ、バナナ、オオムギ、コムギ、イネ、エンバク、サゴ、アマランス、タピオカ(キャッサバ)、クズウコン、カンナおよびソルガム、ならびにそのワキシーまたは高アミロース変種であり得る。具体化される本発明は、アミロース含量に関わらず、全てのデンプンに関し、天然のもの、遺伝的に改変されたもの、または雑種育種から得られたものを含め、全てのデンプン供給源を含むものとする。一実施形態では、デンプンはワキシーデンプンであり、別の実施形態では、ワキシーコーンスターチである。
【0032】
本発明の一実施形態において、デンプンは酸変換される。
該デンプンは可溶化される。該デンプンは、例えば、化学的、酵素的または物理的処理により可溶化され得る。
本発明の一実施形態において、可溶化は変換デンプンをもたらし得る。変換は、本発明の乳化剤製品が75より大きい水流動度を持たない限り、いずれの程度であってもよい。
【0033】
デンプンを十分に可溶化するのに好適な方法としては、限定されるものではないが、例えば、およそ154℃(310°F)でハイドロヒータ(Hydroheater)(Hydro-Thermal Corporation, Milwaukee, WI)クッキングチャンバーを用いて「ジェット調理」すること、顆粒デンプンを沸騰水に入れること、顆粒デンプンを苛性剤(caustic agent)で処理すること、顆粒デンプンを限定されるものではないが尿素を含む塩で処理すること、および/またはデンプン顆粒の物理的破壊が挙げられる。
可溶化デンプンは化学的に誘導体化される。
【0034】
さらに別の実施形態では、該試薬は、少なくとも5個の炭素原子を含むアルキルもしくはアルケニル基、または少なくとも6個の炭素原子を含むアラルキルもしくはアラルケニル基を有し、一実施形態では、24個までの炭素原子を含み得る。
【0035】
上記で概略を示した基準を満たすアルケニル無水コハク酸のデンプンハーフエステルが得られるように、十分に可溶化されたデンプンを十分に誘導体化するのに好適な試薬としては、限定されるものではないが、オクテニル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸および種々の環状ジカルボン酸無水物が挙げられる。一実施形態では、該試薬はオクテニル無水コハク酸またはドデセニル無水コハク酸であり、別の実施形態ではオクテニル無水コハク酸である。
【0036】
試薬としては、限定されるものではないが、イミダゾリド、カルボン酸またはスルホン酸のN,N’−二置換イミダゾリウム塩、第四級または第三級アミン、無水酢酸、酸化アルキレンおよび無水コハク酸が挙げられる。
【0037】
(1)デンプンの十分な可溶化と(2)十分に可溶化されたデンプンの十分な誘導体化の間に、上記で概略を示したその十分な可溶化工程と十分な誘導体化工程の間に挟まった工程が、誘導体化工程が本発明の乳化剤製品を得る上で不十分なものとならない限り(例えば、十分に可溶化されたデンプンをさらに分解して、多量のオリゴ糖分解副産物が生じてしまうことによるなど)、限定されるものではないが、酸変換、酸化などを含む1以上の工程を行ってもよい。
【0038】
本発明の別の実施形態では、該可溶化材料が、誘導体化工程の前および/または後にリン酸で処理される。
該デンプンは、本発明の乳化剤製品の粘度を低くするために変換することができる。
【0039】
一実施形態では、変換は酸分解による。
一実施形態では、変換は熱による。
一実施形態では、変換は剪断による。
変換は誘導体化の前または後のいずれに行ってもよい。一実施形態では、変換は誘導体化の前である。
変換は、本発明の乳化剤製品が75より大きい水流動度を持たない限り、いずれの程度であってもよい。
さらなる実施形態では、該デンプンは意図的には変換されない。
【0040】
本発明の一実施形態では、該デンプンは、可溶化デンプンの誘導体化の後のいずれの時点でいずれの酵素で、またはデンプンの誘導体化の前にα(1−4)グリコシド結合をランダムに切断する酵素(αアミラーゼなど)で処理されてもよい。誘導体化後の処理に有用な酵素としては、限定されるものではないが、α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、マルトゲナーゼ、プルラナーゼ、エキソ−α−1,4−グルコシダーゼ、エキソ−1,4−α−Dグルカンマルトテトラヒドロラーゼおよびエキソ−1,4−α−Dグルカンマルトヘキサヒドロラーゼが挙げられる。
【0041】
デンプンは、デンプンが可溶化および誘導体化された後に、さらに酵素により処理されてもよい。所望の変換が達せられると、酵素は熱またはpHにより不活性化させることができる。その後、pHを再調整してもよい。酵素のタイプおよび濃度、変換条件ならびに変換の長さは、結果として得られる製品の組成に寄与する。あるいは、酵素の組合せも使用可能である。
【0042】
本発明の別の実施形態では、デンプンは、本発明の乳化剤製品が、上記で特定した試験エマルションに関して乳化剤として有効に機能するように十分な誘導体化がまだ可能な限り、どの時点でも酵素変換可能である。
【0043】
誘導体化デンプンのpHは、その意図される使用目的に従って所望のpHに調整することができる。一実施形態では、当技術分野で公知の技術を用い、pHを5.0〜7.5に、別の実施形態では6.0〜7.0に調整する。
【0044】
該デンプンは、不純物、副産物、臭気および色を除去するために、限定されるものではないが、洗浄、透析、濾過、イオン交換法、蒸気ストリッピング、亜塩素酸によるなどの漂白および/または遠心分離を含む、当技術分野で公知の方法により精製してもよい。このような精製は、その精製がデンプン乳化剤の要件に悪影響を及ぼさない限り、プロセスのどの時点で行ってもよい。
【0045】
誘導体化デンプンはそのままその液体形態で用いてもよいし、あるいは限定されるものではないが、ドラム乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥および/または風乾を含む当技術分野で公知の方法を用いて乾燥させてもよい。
【0046】
別の実施形態では、上記の工程はいずれも、個々に用いてもよいし、かつ/または酸、熱、剪断、酸化、漂白、酵素処理および/またはそれらの組合せによる変換などの任意の工程と組み合わせてもよい。しかしながら、いずれの方法または方法の組合せも、水流動度が75以下であり、以下の試験水中油型エマルションであることを特徴とする本発明の乳化剤製品が得られなければならない。
【0047】
即ち、アルケニル無水コハク酸のデンプンハーフエステルを用いて、唯一の乳化剤として該デンプンを、デンプン:油の重量比1:4で、油付加量を20%として含む試験水中油型エマルションを製造する場合に、該試験水中油型エマルションが、少なくとも、
1)PID・ELS(polarization intensity differential plus elastic light scattering)により評価した場合に、57℃(134.6°F)で24時間後に該試験エマルションの油粒子に1ミクロンを超えるものが約5%以下であること、および
2)BP DV−1(Brookfield Programmable DV-1)粘度計により評価した場合に、5℃(41°F)で約1週間保存した後に試験エマルションのブルックフィールド粘度が約2000cps未満であること
を特徴とする。
【0048】
乳化剤製品の水流動度は75以下である。一実施形態では、本発明の乳化剤製品の水流動度は65以下であり、さらに別の実施形態では、本発明の乳化剤製品の水流動度は40以下である。一実施形態では、本発明の乳化剤製品の水流動度WFは11〜20の間であり、別の実施形態では、本発明の乳化剤製品の水流動度は11〜40の間であり、さらに別の実施形態では、本発明の乳化剤製品の水流動度は11〜65の間であり、さらなる実施形態では、本発明の乳化剤製品の水流動度は20〜40の間であり、なおさらなる実施形態では、本発明の乳化剤製品の水流動度は20〜65の間であり、もう1つのさらなる実施形態では、本発明の乳化剤製品の水流動度は40〜65の間である。
【0049】
該乳化剤製品を用いて、それを油と混合することにより水中油型エマルションを製造することができる。油は、限定されるものではないが、フレーバー、着色剤、芳香剤、医薬および/またはビタミンを含む、油系活性剤を含み得る。油はまた、中鎖トリグリセリドなどのトリグリセリドを含むものとする。
【0050】
油は、可能な所望のいずれの量でエマルション中に存在してもよく、油付加量は多くのパラメーター、特に、用いる乳化剤デンプン製品の量に依存する。一実施形態では、油付加量はエマルションの12重量%、別の実施形態では20重量%、さらに別の実施形態では24重量%である。
【0051】
また、エマルションのデンプン:油の比率も、いずれの所望の比率であってもよく、これもまた多くのパラメーターに依存する。デンプン:油の比率は、一実施形態では1:1、別の実施形態では1:3、さらに別の実施形態では1:4、なおさらに別の実施形態では1:6(全て重量ベース)である。
他の任意の成分をエマルションに加えてもよい。一実施形態では、分散(油)相に抗酸化剤を加える。
【0052】
別の実施形態では、エマルションの前にプレエマルションを製造する。
エマルションはまた、限定されるものではないが、噴霧乾燥、押出および噴霧冷却を含む当技術分野で公知の技術により、カプセル化形態として製造してもよい。
カプセル化製品は粉末として有効に保存することができ、水に加えた場合など、有意な水分に曝された際に、自発的にカプセル用材料を放出する。
【0053】
該エマルションまたはカプセル化製品は、種々の製品において求められるいずれのレベルで使用してもよい。これらの製品としては、限定されるものではないが、食品および飲料製品、医薬、機能性食品、幼児製品、紙製品、アニマルケアー製品、家庭用製品、農業用製品およびパーソナルケアー製品が挙げられる。
【0054】
食品および飲料製品としては、限定されるものではないが、果汁飲料、ソーダ類;インスタントコーヒーおよびティー;ソースおよび肉汁;スープ;シリアル;ドレッシング;パン製品;インスタントおよびクックアップミックス;コーヒーフレッシュ;サラダドレッシング;ならびに加糖練乳が挙げられる。
【0055】
パーソナルケアー製品としては、限定されるものではないが、制汗剤、脱臭剤、石鹸、芳香剤および化粧品;ヘアスプレー、ムース、シャンプー、クリームリンス、入浴製品およびジェルなどのヘアケア製品が挙げられる。
紙製品としては、限定されるものではないが、おむつ、生理用ナプキン、ペーパータオル、ティッシュおよびトイレットペーパーが挙げられる。
【0056】
アニマルケアー製品としては、限定されるものではないが、動物食品およびキティーリターが挙げられる。
家庭用製品としては、限定されるものではないが、クリーナー、洗剤、繊維柔軟剤および芳香剤が挙げられる。
【0057】
以下の実施形態は、本発明をさらに例示および説明するために示すものであり、何ら限定するものではない。
【0058】
1.アルケニル無水コハク酸のデンプンハーフエステルを含んでなり、
該アルケニル無水コハク酸のデンプンハーフエステルの水流動度が75以下であり、
該アルケニル無水コハク酸のデンプンハーフエステルが分散相プロセスにより製造され、かつ
該アルケニル無水コハク酸のデンプンハーフエステルを用いて、唯一の乳化剤として、該アルケニル無水コハク酸のデンプンハーフエステルをアルケニル無水コハク酸のデンプンハーフエステル:油の重量比1:4で、油付加量20重量%として含む試験水中油型エマルションを製造する場合に、該試験水中油型エマルションが少なくとも以下:
a)PID・ELS(polarization intensity differential plus elastic light scattering)により評価した場合に、57℃で24時間後にエマルションの油粒子に1ミクロンを超えるものが約5%以下であること、および
b)BP DV−1(Brookfield Programmable DV-1)粘度計により評価した場合に、5℃で約1週間保存した後にエマルションのブルックフィールド粘度が約2Pa・s(約2000cps)未満であること
を特徴とする、乳化剤製品。
【0059】
2.前記デンプンがオクテニル無水コハク酸のハーフエステルである、実施形態1の乳化剤製品。
3.前記デンプンの水流動度が65以下である、実施形態1の乳化剤製品。
4.前記デンプンの水流動度が40以下である、実施形態1の乳化剤製品。
5.前記デンプンの水流動度が20以下である、実施形態1の乳化剤製品。
6.前記デンプンがオクテニル無水コハク酸のハーフエステルであり、前記デンプンの水流動度が40以下である、実施形態1の乳化剤製品。
【0060】
7.乳化剤製品の平均粒径が、PID・ELS(polarization intensity differential plus elastic light scattering) (Beckman Coulter LS 13 320 Aqueous Module)により評価した場合に、1ミクロン未満として特徴付けることができる、実施形態1の乳化剤製品。
8.試験水中油型エマルションのデンプンハーフエステルのアルケニル無水コハク酸:油の重量比が1:6である、実施形態1の乳化剤製品。
9.試験水中油型エマルションの油付加量が24重量%である、実施形態1の乳化剤製品。
【0061】
10.油;
水;および
実施形態1の乳化剤製品
を含んでなる、エマルション。
【0062】
11.前記乳化剤製品がオクテニル無水コハク酸のハーフエステルである、実施形態10のエマルション。
12.前記乳化剤製品の水流動度が65以下である、実施形態10のエマルション。
13.前記乳化剤製品の水流動度が40以下である、実施形態10のエマルション。
14.前記乳化剤製品がオクテニル無水コハク酸のハーフエステルであり、前記乳化剤製品の水流動度が40以下である、実施形態10のエマルション。
【0063】
15.前記乳化剤製品および油がエマルション中に1:4の比率で存在し、該油が該エマルションに対して12重量%の量で存在する、実施形態10のエマルション。
16.前記デンプンおよび油がエマルション中に1:4の比率で存在し、該油が該エマルションに対して20重量%の量で存在する、実施形態10のエマルション。
17.前記乳化剤製品および油がエマルション中に1:4の比率で存在し、該油が該エマルションに対して24重量%の量で存在する、実施形態10のエマルション。
【0064】
18.前記乳化剤製品および油がエマルション中に1:6の比率で存在し、該油が該エマルションに対して12重量%の量で存在する、実施形態10のエマルション。
19.前記乳化剤製品および油がエマルション中に1:6の比率で存在し、該油が該エマルションに対して20重量%の量で存在する、実施形態10のエマルション。
20.前記乳化剤製品および油がエマルション中に1:6の比率で存在し、該油が該エマルションに対して24重量%の量で存在する、実施形態10のエマルション。
【実施例】
【0065】
特に断りのない限り、以下の実施例および/または製法において示される全てのパーセンテージおよび/または比率は重量/重量である。水流動度および漏斗粘度の測定値は、特に断りのない限り、上記で概略を示したプロトコールを用いて得たものである。特に断りのない限り、全てのOSAパーセントは、そのままのデンプンの重量に対しての重量パーセントである。
【0066】
オレンジオイルエマルションの製造
オレンジオイルエマルションを以下のようにして製造した。
配合1:フレーバーオイル組成物
【表1】

【0067】
1×(1倍)および5×(5倍)のオレンジオイルを合わせた。1×/5×オレンジオイルブレンドにエステルガムを加え、室温で機械的振盪を用いて溶解させた。およそ3時間の時点で全てのエステルガムが溶解したことが確認された。
【0068】
配合2:フレーバーオイル組成物を用いた標準的なオレンジオイルエマルション
【表2】

【0069】
必要な量の安息香酸ナトリウムを水に溶解させた。上記の溶液にクエン酸を溶解させた。穏やかに振盪しながらデンプンを溶解させた。プレエマルション、次いでエマルションを試験水中油型エマルションに関して示された手順を用いて作製した。
【0070】
エマルション粒径の測定手順
エマルション粒径は、Beckman Coulterにより作製され、0.04μm〜2000μmの間の粒径測定値較正の動的範囲を提供するための精密ソフトウエアパッケージとともにPIDS(Polarization Intensity Differential Scattering)技術を組み込んでいるLS 13 230を用いて測定した。
【0071】
このソフトウエアのプルダウンマニュアルから、本発明者らはサンプルIDを入力し、測定する系に使用すべき適当な光モジュールを選択した。オフセット測定、アライメント、バックグラウンド測定、測定ローディングの一連の工程を自動で行った。この装置は、サンプルの受け入れ準備ができた際にベルが鳴り、測定装填(Measuring Loading)が表示される。
【0072】
希釈したサンプルをサンプルレザーバーに滴下することによって導入し、測定装填(Measuring Loading)における変化を観察した。このファンクションは、適当な濃度のサンプルを測定するために、粒子によりビームの外へ散乱した光の量を測定する。PIDSを用いずに粒子をサイジングする場合には、8%〜12%の不明瞭化(obscuration)レベルが適当である。PIDSを用いる場合には、40%〜60%のPIDS不明瞭化が推奨される。1.5の屈折率の実部を用いた。
【0073】
次に、分析を行った。プルダウンメニューによりユーザーは結果と関連のグラフをプリンターまたはPDFファイルのいずれかに出力することができた。
【0074】
エマルション粘度の測定手順
粘度測定は、与えられた測定条件(スピンドルS63、60rpmで、回転開始の15秒後に読み取り値を取得)でBP DV−1(Brookfield Programmable DV-1)粘度計を用いて行った。DV−Iの作動の原理は、較正されたばねによってスピンドル(試験流体に浸漬されている)を運転または回転させることである。このスピンドルに対する流体の粘性抗力が、ばねのたわみによって測定される。ばねのたわみは、内部較正によって抗力を試験流体の粘度へ変換する回転変換器を用いて測定される。測定範囲(センチポアズまたはミリパスカル秒)は、スピンドルの回転速度、スピンドルの大きさと形状、中でスピンドルが回転する容器および較正済みのばねのフルスケールトルクによって決定される。粘度測定は、幅5.72cm(2.25インチ)×高さ12.7cm(5インチ)の寸法を有する3.5kg(8オンス)の背の高いガラス瓶に入った22℃(71.6°F)のサンプルで行った。粘度計は水平に置き、〜10分間温めた。選択したスピンドルを所定の時間(15秒)、対象とするサンプル中で回転させた。試験流体の粘度はセンチポアズで表示した。
【0075】
実施例1:試験エマルションの比較
高い油付加/乳化剤比を乳化する、また、安定なエマルション粘度を維持する上での本発明のデンプン乳化剤製品の有効性を下記の表1に示すように調べた。下記の表1のサンプルは全て、2つの方法のうち1つを用いて製造した。即ち、(1)OSA誘導体化分散相(DP)乳化剤であって、そこでは(a)顆粒デンプンを(b)水溶液中でスラリーとし、(c)ジェットクッキングにより可溶化し、(d)可溶化後のどこかの段階においてOSAで誘導体化し、(e)噴霧乾燥させた。また(2)OSA誘導体化顆粒乳化剤であって、そこでは(a)顆粒デンプンを(b)水溶液中でスラリーとし、(c)OSAで誘導体化し、(d)OSAでの誘導体化後のどこかの段階においてジェットクッキングにより可溶化させ、(e)噴霧乾燥させた。尚、N3700はNATIONAL(登録商標)3700デンプンであり、PG2000はPURITY(登録商標)GUM2000デンプンであり、PG1773はPURITY(登録商標)GUM1773デンプン(3種類のデンプンは全てNational Starch LLC, Bridgewater, NJから市販されている)(ETENIA(商標)は商標であり、オランダ Veendmの AVEBE から市販されている)である。
【0076】
【表3】

【0077】
【表4】

【0078】
上記の表1は、本発明の乳化剤が、a)さまざまな水流動度を有するOSA誘導体化顆粒乳化剤;(b)75を超える水流流動度を有するOSA誘導体化分散相乳化剤;および(c)OSA誘導体化ゲル化デンプン(例えば、ETENIA(商標))に比べて、乳化特性に実質的な改善を示したことから、本発明は予期しない結果を示したことを実証している。
【0079】
実施例2:高油付加エマルションの性能
種々のデンプン供給源に由来する種々のOSA誘導体化分散相乳化剤を用いて製造し、高油付加(24%)エマルション条件にさらした本発明の乳化剤の高油付加(24%)性能を評価した。サンプルは8kg(無水)デンプンを12リットルの水道水でスラリーにすることにより作製した。次に、このスラリーを、ハイドロヒータ(Hydroheater)(Hydro-Thermal Corporation, Milwaukee, WI)クッキングチャンバーを用い、およそ154℃(310°F)でジェット調理し、固形分30%のジェット調理デンプン分散液を得た(軽く希釈した後、固形分24.5%で1つのワキシーコーンスターチ調理を行った)。
【0080】
この調理品を8リットルのステンレス鋼ビーカー3個に分割し、90℃(194°F)の湯浴中に置いた。それぞれに0.075%の濃縮HCl(そのままのデンプン重量に対して)を加えた。漏斗粘度を、所望の範囲に達するまで経時的に追跡した。
【0081】
OSA誘導体化反応は、温度を55℃に維持するために浸漬循環浴に入れたステンレス鋼ビーカー中のこれらの分散液に対して行った(ワキシートウモロコシの反応は59℃および76℃(138.2°Fおよび168.8°F)で行った)。それぞれのpHを3%NaOHで7.5に調整した。次に、3%NaOHを用いてpHを7.5に維持しながら、各分散液に、そのままのデンプン重量に対して2.5%のOSA試薬(サンプル2では1.75%)(2.5%OSA試薬は、乾燥デンプンでは2.84%OSA(乾燥重量)に相当する)を滴下した。30分間、pHを維持するために3%NaOHが必要なくなったところで(OSAとデンプンの反応が完了したことを示す)、次に、希HClでpH5.8に調整した。その後、この製品を噴霧乾燥させた。
【0082】
下記の表2は、本発明の乳化剤製品を用いて製造した種々のエマルション例の特徴を示す。これらの例は、ワキシーコーンスターチを含め、種々のデンプン供給源に由来する本発明の乳化剤製品を含む。表2に記載されている種々の試験エマルションのデンプン:油比は、各エマルションに関して示された「デンプン固形分%」を油付加率24%で割ることにより導き出すことができる。尚、SSはデンプン固形分、P.S.は粒径(全ての場合ミクロン(mμ)で測定)である。
【0083】
WAXIPRO(登録商標)はNational Starch, LLC, Bridgewater, NJが販売している製品を示す登録商標である。サンプル2(ワキシートウモロコシ)は、酸変換ワキシーコーンスターチを再懸濁させ、ジェット調理し、分散相にて2.5%OSAと反応させ、pH6.03に中和し、噴霧乾燥させたものを用いることにより製造した。
【0084】
【表5】

【0085】
実施例3:種々の単一乳化剤調製物エマルションのブルックフィールド粘度、油粒子粒径および油付加量の比較
実施例3A:分散させ、OSA誘導体化した後、酵素変換したデンプンの乳化剤
本実施例は、飲料用フレーバーの乳化に使用するための、本発明の酵素変換デンプンの製造を示す。OSA誘導体化分散相乳化剤は、まず、そのままの固形分40%のワキシートウモロコシデンプンを水道水でスラリーとし、このスラリーにデンプン重量に対して0.25%のリン酸を加えることにより作製した。次に、このスラリーをおよそ154℃(310°F)でジェット調理し、乾燥固形分30%の可溶化デンプン分散液を得た。その後、可溶化デンプン分散液を一定温度の浴槽中に置き、一定の攪拌を行いながら、40℃(104°F)に維持した。その後、この可溶化デンプンに、そのままのデンプン重量に対して2.5%のOSA試薬を2時間かけて滴下し、可溶化デンプンを誘導体化した。このOSA誘導体化工程中、pHは、3%NaOHを用いて7.5に維持した。30分間、pHを維持するために3%NaOHを添加する必要なくなったところで(デンプンによるOSAの誘導体化反応が完了したことを示す)、次に、希HClでpH5.5に調整した。
【0086】
その後、上記分散液をpH6.5に調整し、温度を55℃に上げ、デンプン重量に対して0.3%のOPTIMALT(登録商標)BBA β−アミラーゼ(Genencor International, Inc.から入手可能)を加えた。
【0087】
β−アミラーゼによるデンプン分解度は、粘度の低下と相関していた。本実施例では、12.7秒の漏斗粘度で所望の酵素反応終了点に達した(この製品は粘度が低かったので、固形分8.5%ではなく19%で測定した)。目的の粘度に達したところで、pHを2.7まで下げ、30分間保持して酵素を変性させることにより、酵素を不活性化した。次に、このサンプルをpH4に調整し、噴霧乾燥させ、Spraying Systems Company から入手した標準的な#22 11/4 Jノズルを用い、入口温度200〜210℃(392〜410°F)および出口温度85〜00℃(185〜194°F)で噴霧乾燥させた。
【0088】
実施例3B:分散させ、酵素変換した後、OSAで誘導体化したデンプンの乳化剤
この材料は、デンプンのOSA誘導体化の前に0.3%OPTIMALT(登録商標)BBA β−アミラーゼ処理を行うこと以外は、実施例3Aと同様にして製造した。
【0089】
実施例3C:実施例3Aおよび3Bで製造した乳化剤の性能比較
実施例3Aおよび3Bに従って製造したデンプン乳化剤製品を用いたオレンジオイルエマルションを次のように製造した。
250gの各噴霧乾燥デンプンを、ベンチトップミキサーで583.3gの蒸留水と混合した。このミキサーを速度ダイアル設定30で2分間振盪させながら、1倍量のオレンジオイル(Givaudan から入手した1倍量オレンジオイル166.7g)を渦の中心に加えた。油を加えた後、速度を最大設定まで高め、さらに3分間混合した。
【0090】
実施例3Aに従って製造した本発明の乳化剤製品が平均粒径0.835ミクロンのエマルションを形成し、そのエマルションは18時間後も分離しなかったのに対し、実施例3Bに従って製造した乳化剤は平均粒径11.57ミクロンのエマルションを形成し、そのエマルションはわずか2時間後に15mLの油分離を示した。
【0091】
本発明のいくつかの実施形態を記載したが、これらの実施形態は単に例示であって、限定されるものではなく、多くの改変および/または別の実施形態が当業者に自明となるものと理解される。よって、附属の特許請求の範囲は、本発明の精神および範囲内にあるこのような全ての改変および実施形態を包含することを意図したものであると理解される。
【0092】
以下の特許請求の範囲で用いるように、「含む」または「含んでいる」は、以下のエレメントを含むことを意味することを意図するが、他のものを排除せず無制限である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルケニル無水コハク酸のデンプンハーフエステルを含んでなり、
該アルケニル無水コハク酸のデンプンハーフエステルの水流動度が75以下であり、
該アルケニル無水コハク酸のデンプンハーフエステルが分散相プロセスにより製造され、かつ
該アルケニル無水コハク酸のデンプンハーフエステルを用いて、唯一の乳化剤として該アルケニル無水コハク酸のデンプンハーフエステルを、20重量%の油付加量で、アルケニル無水コハク酸のデンプンハーフエステル:油の重量比が1:4で含む、試験水中油型エマルションを製造する場合に、該試験水中油型エマルションが少なくとも下記なる:
a)PID・ELS(polarization intensity differential plus elastic light scattering)により評価した場合に、57℃で24時間後にエマルションの油粒子に1ミクロンを超えるものが約5%以下であること、および
b)BP DV−1(Brookfield Programmable DV-1)粘度計により評価した場合に、5℃で約1週間保存した後にエマルションのブルックフィールド粘度が約2Pa・s(約2000cps)未満であること
を特徴とする、乳化剤製品。
【請求項2】
前記デンプンがオクテニル無水コハク酸のハーフエステルである、請求項1に記載の乳化剤製品。
【請求項3】
前記デンプンの水流動度が65以下である、請求項1または2に記載の乳化剤製品。
【請求項4】
前記デンプンの水流動度が40以下である、請求項1または2に記載の乳化剤製品。
【請求項5】
前記デンプンの水流動度が20以下である、請求項1または2に記載の乳化剤製品。
【請求項6】
前記デンプンがオクテニル無水コハク酸のハーフエステルであり、該デンプンの水流動度が40以下である、請求項1に記載の乳化剤製品。
【請求項7】
前記乳化剤製品の平均粒径が、PID・ELS(polarization intensity differential plus elastic light scattering) (Beckman Coulter LS 13 320 Aqueous Module)により評価した場合に、1ミクロン未満として特徴付けることができる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の乳化剤製品。
【請求項8】
前記試験水中油型エマルションの前記アルケニル無水コハク酸のデンプンハーフエステル:油の重量比が1:6である、請求項1に記載の乳化剤製品。
【請求項9】
前記試験水中油型エマルションの油付加量が24重量%である、請求項1または8に記載の乳化剤製品。
【請求項10】
油;
水;および
請求項1〜9のいずれか一項に記載の乳化剤製品
を含んでなる、エマルション。
【請求項11】
前記乳化剤製品および油がエマルション中に1:4の比率で存在し、該油が該エマルションに対して12重量%の量で存在する、請求項10に記載のエマルション。
【請求項12】
前記デンプンおよび油がエマルション中に1:4の比率で存在し、該油が該エマルションに対して20重量%の量で存在する、請求項10に記載のエマルション。
【請求項13】
前記乳化剤製品および油がエマルション中に1:4の比率で存在し、該油が該エマルションに対して24重量%の量で存在する、請求項10に記載のエマルション。
【請求項14】
前記乳化剤製品および油がエマルション中に1:6の比率で存在し、該油が該エマルションに対して12重量%の量で存在する、請求項10に記載のエマルション。
【請求項15】
前記乳化剤製品および油がエマルション中に1:6の比率で存在し、該油が該エマルションに対して20重量%の量で存在する、請求項10に記載のエマルション。
【請求項16】
前記乳化剤製品および油がエマルション中に1:6の比率で存在し、該油が該エマルションに対して24重量%の量で存在する、請求項10に記載のエマルション。

【図1】
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【公開番号】特開2011−110554(P2011−110554A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−261325(P2010−261325)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(308036790)ブルノプ トゥヴェーデ ベスローテン フェンノートシャップ (21)
【Fターム(参考)】