説明

無研磨ガラスを用いた表示パネルのための画像補正データ生成システム、画像補正データ生成方法及び画像補正データ生成プログラム

【課題】無研磨ガラスを用いた表示パネルにおいて、表示むらを効率的に抑制するための画像補正データ生成システム、画像補正データ生成方法及び画像補正データ生成プログラムを提供する。
【解決手段】画質調整装置20の制御部21は、無研磨ガラスのロット識別子に基づいて、フィルタリング周波数を決定する。そして、制御部21は、テストパターンを生成し、液晶パネル10に供給し、撮影カメラ30から出力画像を取得する。そして、出力画像データについてハイパスフィルタリングを行ない、補正値を算出する。そして、すべての基準階調について画像補正テーブルの算出を終了した場合、ROMに書き込む。このROMを、液晶パネル10の補正回路に組み込む。そして、画像信号を取得した液晶パネル10は、補正回路から取得した補正値と、画像信号とに基づいて画像を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無研磨ガラスを用いた表示パネルの表示むらを効率的に抑制するための画像補正データ生成システム、画像補正データ生成方法及び画像補正データ生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、液晶パネル等のディスプレイの製造ラインは、均一な品質を実現できるように構築されている。しかし、このような製造ラインにおいても、個々のディスプレイには、製造バラツキが発生する。そこで、各ディスプレイにおいて、よりよい画像を出力できるように調整するための技術が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1に記載の技術では、画質調整装置の制御部が、テストパターンを生成し、液晶パネルに供給し、撮影カメラから出力画像を取得する。そして、出力画像データについてバンドフィルタリングを行ない、補正値を算出する。そして、すべての基準階調について画像補正テーブルの算出を終了した場合、補正回路のROMに書き込む。液晶パネルに画像を表示するための画像信号は、ROMに記録された画像補正テーブルを参照し、線形補間された補正値を算出する。
【0003】
このような表示パネルを備えた液晶表示装置等の作製においては、その表面がよりフラットなガラス基板を用いることが求められてきた。このため、高い表面平坦度を有するガラス板を製造するための研磨方法が検討されている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2に記載の技術では、セラミックス製のガラス板保持側定盤のガラス板貼付面にフロートガラス板を貼りつけて保持させる。そして、ガラス板に対向配置した研磨パッドを貼りつけた定盤の研磨パッドに、ガラス板を押しつけながら定盤を回転させるとともに、研磨パッドに酸化セリウム研磨液を供給してガラス板表面のポリッシングを行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−57149号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】特開2000−218481号公報(第1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、大型の液晶ディスプレイ等に使用するガラスを、高い精度で研磨する場合には手間がかかり、その分、コストが高くなる。一方、安価な無研磨ガラスを使用する場合には、ガラス表面における凹凸や細かい傷に基づくむらにより、高品質な画像を提供することができない。このような無研磨ガラスにおける凹凸や細かい傷は、ガラスの製造プロセスの影響を受けており、製造ロットによって異なる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、無研磨ガラスを用いた表示パネルにおいても、表示むらを効率的に抑制するための画像補正データ生成システム、画像補正データ生成方法及び画像補正データ生成プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数の画素により構成され、無研磨ガラスを用いた表示パネルに画像を出力するための信号を供給する信号発生手段と、前記表示パネルにおいて表示された出力画像を撮影する撮像手段と、前記信号発生手段と前記撮像手段に接続される制御手段を備えた、無研磨ガラスを用いた表示パネルのための画像補正データ生成システムであって、前記撮像手段として、前記表示パネルの画素サイズよりも小さい領域を解像可能な撮像手段を用いるとともに、前記制御手段が、前記信号発生手段に対して、表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力する指示手段と、前記撮像手段から、出力画像データを取得する画像取得手段と、前記出力画像データのハイパスフィルタリングを行なったハイパスデータを算出するハイパスフィルタ手段と、前記ハイパスデータに対応した画像補正テーブルを出力する補正データ生成手段とを備えたことを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、複数の画素により構成され、無研磨ガラスを用いた表示パネルに画像を出力するための信号を供給する信号発生手段と、前記表示パネルにおいて表示された出力画像を撮影する撮像手段と、前記信号発生手段と前記撮像手段に接続される制御手段を備えた画像補正データ生成システムを用いて、無研磨ガラスを用いた表示パネルのための画像補正データを生成する方法であって、前記撮像手段として、前記表示パネルの画素サイズよりも小さい領域を解像可能な撮像手段を用いるとともに、前記制御手段が、前記信号発生手段に対して、表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力する指示段階と、前記撮像手段から、出力画像データを取得する画像取得段階と、前記出力画像データのハイパスフィルタリングを行なったハイパスデータを算出するハイパスフィルタ段階と、前記ハイパスデータに対応した画像補正テーブルを出力する補正データ生成段階とを実行することを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、複数の画素により構成され、無研磨ガラスを用いた表示パネルに画像を出力するための信号を供給する信号発生手段と、前記表示パネルにおいて表示された出力画像を撮影する撮像手段と、前記信号発生手段と前記撮像手段に接続される制御手段を備えた画像補正データ生成システムを用いて、無研磨ガラスを用いた表示パネルのための画像補正データを生成するプログラムであって、前記撮像手段として、前記表示パネルの画素サイズよりも小さい領域を解像可能な撮像手段を用いるとともに、前記制御手段を、前記信号発生手段に対して、表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力する指示手段、前記撮像手段から、出力画像データを取得する画像取得手段、前記出力画像データのハイパスフィルタリングを行なったハイパスデータを算出するハイパスフィルタ手段、前記ハイパスデータに対応した画像補正テーブルを出力する補正データ生成手段として機能させることを要旨とする。
【0010】
(作用)
本発明によれば、撮像手段として、表示パネルの画素サイズよりも小さい領域を解像可能な撮像手段を用いる。そして、制御手段が、信号発生手段に対して、表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力し、撮像手段から、出力画像データを取得する。出力画像データのハイパスフィルタリングを行なったハイパスデータを算出し、ハイパスデータに対応した画像補正テーブルを出力する。これにより、比較的安価な無研磨ガラスを用いた表示パネルにおいて、撮影した画像に基づいて、表示むらを抑制するための画像補正データを生成することができる。ここで、ハイパスフィルタリングを行なうことにより、変化の緩やかな表示むらは補正されない。従って、周辺減光の影響を排除し、無研磨ガラスにおいて生じる細かい傷などによる表示むらを簡易かつ効率的に低減することができる。
【0011】
本発明によれば、表示パネルに用いられている無研磨ガラスの製造ロットを特定し、製造ロットに基づいて、ハイパスフィルタリングの周波数を決定する。無研磨ガラスは、製造ロットによって凹凸や傷等の表面状態が共通していることがある。したがって、製造ロットに応じたフィルタリングを用いることにより、効率的に画像補正データを生成することができる。
【0012】
本発明によれば、無研磨ガラスの筋むらの方向を特定し、この筋むらの方向に対して直交する方向の解像度を高くする。例えば、表示パネルの上下方向の筋むらの場合には水平解像度を高くし、左右方向の筋むらの場合には垂直解像度を高くする。これにより、無研磨ガラスの表面状態に応じて、効率的に画像補正データを生成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、無研磨ガラスを用いた表示パネルにおける表示むらを効率的に抑制するための画像補正データ生成システム、画像補正データ生成方法及び画像補正データ生成プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の画像補正データ生成方法の説明図。
【図2】補正データ生成処理の説明図。
【図3】本発明の補正回路の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の画像補正データ生成システム、画像補正データ生成方法及び画像補正データ生成プログラムについて説明する。本実施形態では、調整対象の表示パネルの表示むら(輝度むら)を抑制して画質を改善する場合を想定する。なお、本実施形態では、調整対象の表示パネルとして、液晶パネル10を用いる。
【0016】
この液晶パネル10は、透明電極に挟まれた液晶(液晶部)と、背面から液晶を照明するバックライトから構成されている。本実施形態においては、液晶部を構成するガラス基板において、研磨を行なっていない無研磨ガラスを用いる。このようなガラスにおいては、特許文献に記載されているように、凹凸や細かい傷による筋むらが発生していることがある。このため、液晶パネル10には、液晶部のむら、無研磨ガラスに依存するむらと、バックライトの周辺減光とが重畳された画像が出力されることになる。
【0017】
液晶パネル10の画質を改善するために、図3に示すように、補正回路50を用いる。この補正回路50は、画像補正テーブルを記録するための不揮発性メモリ(ROM51)を備える。
【0018】
このROM51には、入力された画像信号の信号値を調整するための補正値に関するデータ(画像補正テーブル)が記録される。本実施形態では、基準階調毎に補正値の平面分布が記録される。
【0019】
そして、この補正値を算出するための画像補正データ生成システムは、図1に示すように、画質調整装置20、撮影カメラ30、テストパターン発生装置40、ROMライタ60から構成される。
【0020】
ここで、撮像手段としての撮影カメラ30は、液晶パネル10上に表示された画像を撮影し、出力画像データを画質調整装置20に供給する。本実施形態では、撮影カメラ30として、表示パネルの画素サイズよりも小さい領域を解像可能なCCD素子を備えたモノクロカメラを用いる。そして、液晶パネル10に表示された画像を撮影する。
【0021】
信号発生手段としてのテストパターン発生装置40は、画質調整装置20からの指示に基づいて、液晶パネル10にテストパターン信号を供給する。本実施形態では、8bitのRGB信号を液晶パネル10全面に供給する。
ROMライタ60は、画質調整装置20から出力される補正値データをROM51に書き込む。
【0022】
画質調整装置20は、液晶パネル10の画質を調整するための補正値を算出する処理を実行するコンピュータ端末である。この画質調整装置20は、制御部21、パネル情報記憶部22、ガラス情報記憶部23を備える。
【0023】
パネル情報記憶部22は、液晶パネル10に用いられている無研磨ガラスが製造された製造ロットを特定するためのパネル管理レコードを記憶する。このパネル管理レコードは、調整対象の液晶パネル10を取得した場合に登録される。このパネル管理レコードは、パネル識別子、ロット識別子に関するデータを含んで構成される。
【0024】
パネル識別子データ領域には、各液晶パネル10を特定するための識別子に関するデータが記録される。
ロット識別子データ領域には、この液晶パネル10に用いられている無研磨ガラスの製造ロットを特定するための識別子に関するデータが記録される。同じ製造ロットの無研磨ガラスが利用されている液晶パネル10においては、異なるパネル識別子に対して同じロット識別子が記録されることになる。
【0025】
ガラス情報記憶部23は、各製造ロットの無研磨ガラスにおける表面状態情報を特定するためのガラス管理レコードを記憶する。このガラス管理レコードは、調整対象の液晶パネル10を取得した場合に登録される。このガラス管理レコードは、ロット識別子、表面状態識別子に関するデータを含んで構成される。
【0026】
ロット識別子データ領域には、無研磨ガラスの製造ロットを特定するための識別子に関するデータが記録される。
表面状態識別子データ領域には、この製造ロットにおける無研磨ガラスの表面状態を特定するための識別子に関するデータが記録される。この表面状態識別子は、無研磨ガラスの表面状態(凹凸や傷の大きさや密度等)を所定の測定方法(粗さ測定、反射率測定等)により評価して付与される。
【0027】
制御部21は、制御手段としてのCPU、RAM及びROM等を有し、後述する処理(指示段階、画像取得段階、ハイパスフィルタ段階、補正データ生成段階等を含む処理)を行なう。このための補正テーブル生成プログラムを実行することにより、制御部21は、図1に示すように、プロセス管理手段211、フィルタ手段212として機能する。
【0028】
プロセス管理手段211は、指示手段、画像取得手段、補正データ生成手段として機能する。具体的には、調整対象の液晶パネル10に用いられている無研磨ガラスのロット識別子を取得する。このロット識別子を用いることにより、無研磨ガラスの表面状況に関する情報を取得することができる。更に、プロセス管理手段211は、ハイパスフィルタを決定するためのフィルタ決定テーブルを備えている。このフィルタ決定テーブルにおいては、表面状態識別子に対応させて、ハイパスフィルタにおいて透過させるフィルタリング周波数が関連付けられている。
【0029】
また、プロセス管理手段211は、液晶パネル10に入力する信号を制御するとともに、液晶パネル10に表示された出力画像データに基づいて補正値を算出する処理を実行する。
【0030】
フィルタ手段212(ハイパスフィルタ手段)は、撮影カメラ30から取得した出力画像データに対して、なだらかな変化成分を削除したハイパスデータを生成する。すなわち、中間的及び高周波数のみを分離するようなハイパスフィルタリングを行なう。
【0031】
(補正データ生成処理)
次に、図2を用いて、補正データ生成処理について説明する。
ここでは、所定の階調毎に表示むらを抑制するための画像補正テーブルを生成する。具体的には、予め設定された階調(基準階調)毎に、液晶パネル10上の補正値の分布を算出する。本実施形態では、8bitで表現される信号値において所定数(例えば、10段階)の基準階調を用いる。そして、基準階調に対応した調整対象階調を1段階毎に順次変更し、調整対象階調毎に画像補正テーブルを生成する。
【0032】
まず、画質調整装置20の制御部21は、フィルタ特定処理を実行する(ステップS0)。具体的には、画質調整装置20のキーボード等を用いて、調整対象の液晶パネル10のパネル識別子を入力する。これにより、制御部21のプロセス管理手段211は、パネル識別子を取得する。そして、プロセス管理手段211は、パネル情報記憶部22から、パネル識別子に関連付けられたロット識別子を取得する。そして、プロセス管理手段211は、ガラス情報記憶部23から、ロット識別子に関連付けられた表面状態識別子を取得する。次に、プロセス管理手段211は、フィルタ決定テーブルを用いて、表面状態識別子に対応したフィルタリング周波数を特定する。そして、プロセス管理手段211は、このフィルタリング周波数を含めたフィルタ条件をフィルタ手段212に提供する。これにより、フィルタ手段212は、フィルタリング周波数以上の成分を透過させるハイパスフィルタとして動作する。
【0033】
次に、画質調整装置20の制御部21は、テストパターン生成処理を実行する(ステップS1)。具体的には、制御部21のプロセス管理手段211は、テストパターン発生装置40に対して、調整対象階調の画像出力を行なうためのRGB信号の出力を指示する。ここでは、調整対象階調において、液晶パネル10全面に対して、R信号値、G信号値、B信号値が同じ信号(共通する信号値)を用いる。この指示に応じて、テストパターン発生装置40は、調整対象階調となる8bitのRGB信号を液晶パネル10に供給する。
【0034】
そして、液晶パネル10は、これに応じて調整対象階調のグレー画像を出力する。この場合、液晶においてセルギャップのむら、無研磨ガラスに依存するむらや、バックライトの明るさにむらがある場合には、液晶パネル10において、これらのむらが重畳された表示むらが生じる。ここで、撮影カメラ30は、表示むらが重畳された画像を撮影する。
【0035】
そして、画質調整装置20の制御部21は、出力画像の取得処理を実行する(ステップS2)。具体的には、制御部21のプロセス管理手段211は、液晶パネル10を撮影した出力画像データを撮影カメラ30から取り込む。そして、プロセス管理手段211は、この出力画像データを、8×8ピクセルから構成されたブロック毎の輝度分布に変換し、フィルタ手段212に供給する。
【0036】
次に、画質調整装置20の制御部21は、フィルタリング処理を実行する(ステップS3)。具体的には、制御部21のフィルタ手段212は、取得した出力画像データに対してハイパスフィルタリングを行なうことにより、ハイパスデータを算出する。このハイパスデータは、液晶パネル10の面内の輝度分布に応じて、低周波成分を除いた分布から構成される。そして、フィルタ手段212は、生成したハイパスデータをプロセス管理手段211に供給する。
【0037】
次に、画質調整装置20の制御部21は、補正値算出処理を実行する(ステップS4)。具体的には、制御部21のプロセス管理手段211は、ハイパスデータを反転させた画像補正テーブルを生成する。更に、プロセス管理手段211は、調整を行なった基準階調を特定する識別子に関連付けて画像補正テーブルをメモリに一時記憶する。
そして、画質調整装置20の制御部21は、次の調整対象階調について、上述した処理を繰り返す。
【0038】
すべての基準階調について補正データの算出を終了した場合、画質調整装置20の制御部21は、ROM書込処理を実行する(ステップS5)。具体的には、制御部21のプロセス管理手段211は、一時記憶した画像補正テーブルをROM51に書き込む。これにより、ROM51には、基準階調毎に、液晶パネル10の面内のブロック位置(xy座標)に対して補正値の分布が記録される。
【0039】
(画像表示処理)
そして、この液晶パネル10に対応して生成されたROM51は、補正回路50に組み込まれる。この補正回路は、液晶パネル10に供給される画像信号を調整するための回路である。具体的には、液晶パネル10に画像を表示するための画像信号(RGB信号)は、液晶パネル10とともに補正回路50にも供給される。
【0040】
この補正回路50は、図3に示すように、ROM51の他に、選択・補間手段52、加算手段53を備える。
選択・補間手段52は、ROM51に記録された画像補正テーブルを、RGB信号毎に参照する。ここでは、選択・補間手段52は、画像信号の各RGB信号値に隣接する二つの基準階調の画像補正テーブルにおいて、画像信号のピクセル位置(xy座標)を囲む四つのブロック格子点によって決まる補正値(2×4=8個)を取得する。そして、選択・補間手段52は、取得した補正値について、画像信号の信号値と各格子点との距離に応じて線形補間を行なう。
【0041】
そして、加算手段53は、選択・補間手段52から取得した補正値を、入力された画像信号に加算する。液晶パネル10は、この補正された画像信号を取得して、画像を表示する。
【0042】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) 本実施形態では、補正回路50は、ROM51、選択・補間手段52、加算手段53を備える。このROM51には、撮影カメラ30によって撮影された画像における表示むらから生成された画像補正テーブルが記録される。表示むらは、各ピクセルの明るさが理想値と異なるために発生するので、予め各ピクセルの理想値とのズレを測定しておけば、そのズレに従って各ピクセルへの入力画像値を補正することで表示むらをキャンセルすることが可能である。
【0043】
(2) 本実施形態では、ROM51には、基準階調毎に画像補正テーブルが記録される。表示むらの発生は、同一ピクセルであっても入力レベルに対して一定していない。ROM51には、基準階調毎に画像補正テーブルが記録されているために、各ピクセルの信号値に応じた補正を行なうことができる。
【0044】
(3) 本実施形態では、ハイパスフィルタリングを行なった分布を用いて画像補正テーブルを生成する。これにより、緩やかな輝度の変化については補正が行なわれない。液晶自体のむらが1%以下、多い場合にも5%程度に対して、バックライトの周辺減光は多いときは30%程度もあることがある。仮に低周波数成分の除去(ローカット)を行なわないで補正した場合、完全な白(100%グレー)画像に対して、液晶パネル10における周辺減光の影響を受けて、中心部付近の輝度を低下させてしまうことになる。このような場合、画面全体のなだらかな光量変化は人間の眼には検知され難く、ローカットを行なわない補正により液晶パネル10の輝度が落ちたことのみが目に付くことになる。
また、高周波領域は除去されないので、無研磨ガラスの細かい傷は生じる筋むら(空間周波数の高い成分)を考慮した補正テーブルを生成することができる。
【0045】
(4) 本実施形態では、画質調整装置20の制御部21は、フィルタ特定処理を実行する(ステップS0)。ここでは、調整対象の液晶パネル10に用いられている無研磨ガラスのロット識別子に基づいて、表面状態を特定し、この表面状態に応じたフィルタを用いる。無研磨ガラスにおいては、同じ製造ロットにおいては、類似した凹凸や傷が生じていることがある。これにより、製造ロットに対応させたフィルタリングを行なうことができる。
【0046】
また、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・ 上記実施形態においては、モノクロカメラを用いて、輝度むらの補正を行なう。抑制対象の表示むらは輝度に限定されるものではなく、色むらの補正にも適用することが可能である。輝度むら及び色むらの両方を補正する場合は、RGB3つの光学フィルタを使って、それぞれ撮像手段で出力画像を取得する。そして、それぞれの画像から上記ハイパスフィルタリング処理(ステップS3)、補正値算出処理(ステップS4)により補正値を算出する。そして、R信号用、G信号用、B信号用の3種類の画像補正テーブルを作成し、ROM51に記録する。これにより、入力画像のRGBデータ値を補正して、色むらを抑制することができる。
【0047】
・ 上記実施形態においては、RGBの各信号値を一致させた画像を評価して、輝度むらの補正を行なう。色むらを補正する場合には、光学フィルタを用いるのではなく、単一色のR信号、G信号、B信号をそれぞれ独立して液晶パネル10に供給して、出力画像の取得処理(ステップS2)、ハイパスフィルタリング処理(ステップS3)、補正値算出処理(ステップS4)により画像補正テーブルを生成することも可能である。
【0048】
・ 上記実施形態においては、液晶パネル10の表示むらの抑制に適用したが、調整対象の表示パネルはこれに限定されるものではない。プラズマディスプレィ(PDP)等のような画像出力装置に適用することも可能である。
【0049】
・ 上記実施形態においては、画質調整装置20の制御部21は、フィルタ特定処理を実行する(ステップS0)。具体的には、画質調整装置20のキーボード等を用いて、調整対象の液晶パネル10のパネル識別子を入力する。これに代えて、画質調整装置20が、自動的にパネル識別子を取得するようにしてもよい。この場合には、調整順番に応じて、パネル識別子を記憶させた調整対象テーブルを予め準備しておく。そして、調整時に、調整対象テーブルから、順番にパネル識別子を読み出す。
【0050】
また、テストパターン発生装置40が、液晶パネル10に記憶されたパネル識別子を読み出し、液晶パネル10にパネル識別子を表示させるようにしてもよい。また、液晶パネル10のフレームに、パネル識別子を表示したプレートを貼付しておくことも可能である。これらの場合には、撮影カメラ30が液晶パネル10に表示されたパネル識別子を読み取り、文字認識処理(OCR)により、パネル識別子を特定する。
【0051】
・ 上記実施形態においては、撮影カメラ30として、表示パネルの画素サイズよりも小さい領域を解像可能なCCD素子を備えたモノクロカメラを用いる。ここで、撮影手段の解像度は、液晶パネル10の二次元面内において同一である必要はない。具体的には、無研磨ガラスの筋むらの方向を特定し、この筋むらの方向に対して直交する方向の解像度を高くした撮影カメラ30を用いる。ここでは、顕微鏡観察等の所定の測定方法により、無研磨ガラスにおいて発生する筋むらの方向(表示パネルの上下方向又は左右方向)を測定する。そして、筋むらの方向に対応して、筋むらを解像できるように、撮影カメラ30において解像度を上げる。例えば、表示パネルの上下方向の筋むらの場合には水平解像度を高くし、左右方向の筋むらの場合には垂直解像度を高くする。これにより、筋むらの方向に応じて、効率的に画像補正データを生成することができる。
【符号の説明】
【0052】
10…液晶パネル、20…画質調整装置、21…制御部、211…プロセス管理手段、212…フィルタ手段、22…パネル情報記憶部、23…ガラス情報記憶部、30…撮影カメラ、40…テストパターン発生装置、50…補正回路、51…ROM。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素により構成され、無研磨ガラスを用いた表示パネルに画像を出力するための信号を供給する信号発生手段と、
前記表示パネルにおいて表示された出力画像を撮影する撮像手段と、
前記信号発生手段と前記撮像手段に接続される制御手段を備えた、無研磨ガラスを用いた表示パネルのための画像補正データ生成システムであって、
前記撮像手段として、前記表示パネルの画素サイズよりも小さい領域を解像可能な撮像手段を用いるとともに、
前記制御手段が、
前記信号発生手段に対して、表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力する指示手段と、
前記撮像手段から、出力画像データを取得する画像取得手段と、
前記出力画像データのハイパスフィルタリングを行なったハイパスデータを算出するハイパスフィルタ手段と、
前記ハイパスデータに対応した画像補正テーブルを出力する補正データ生成手段と
を備えたことを特徴とする画像補正データ生成システム。
【請求項2】
複数の画素により構成され、無研磨ガラスを用いた表示パネルに画像を出力するための信号を供給する信号発生手段と、
前記表示パネルにおいて表示された出力画像を撮影する撮像手段と、
前記信号発生手段と前記撮像手段に接続される制御手段を備えた画像補正データ生成システムを用いて、無研磨ガラスを用いた表示パネルのための画像補正データを生成する方法であって、
前記撮像手段として、前記表示パネルの画素サイズよりも小さい領域を解像可能な撮像手段を用いるとともに、
前記制御手段が、
前記信号発生手段に対して、表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力する指示段階と、
前記撮像手段から、出力画像データを取得する画像取得段階と、
前記出力画像データのハイパスフィルタリングを行なったハイパスデータを算出するハイパスフィルタ段階と、
前記ハイパスデータに対応した画像補正テーブルを出力する補正データ生成段階と
を実行することを特徴とする画像補正データ生成方法。
【請求項3】
複数の画素により構成され、無研磨ガラスを用いた表示パネルに画像を出力するための信号を供給する信号発生手段と、
前記表示パネルにおいて表示された出力画像を撮影する撮像手段と、
前記信号発生手段と前記撮像手段に接続される制御手段を備えた画像補正データ生成システムを用いて、無研磨ガラスを用いた表示パネルのための画像補正データを生成するプログラムであって、
前記撮像手段として、前記表示パネルの画素サイズよりも小さい領域を解像可能な撮像手段を用いるとともに、
前記制御手段を、
前記信号発生手段に対して、表示パネルの全面に共通する信号値の供給指示を出力する指示手段、
前記撮像手段から、出力画像データを取得する画像取得手段、
前記出力画像データのハイパスフィルタリングを行なったハイパスデータを算出するハイパスフィルタ手段、
前記ハイパスデータに対応した画像補正テーブルを出力する補正データ生成手段
として機能させることを特徴とする画像補正データ生成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−48206(P2012−48206A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141826(P2011−141826)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【分割の表示】特願2010−187419(P2010−187419)の分割
【原出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(503193351)株式会社イクス (28)
【Fターム(参考)】