説明

無端ベルト及び画像形成装置

【課題】均一な厚さの弾性層を備え、高品質の画像を安定して形成することに貢献する無端ベルト、及び、高品質の画像を形成することのできる画像形成装置を提供すること。
【解決手段】樹脂組成物を硬化してなる無端ベルト基体2と、前記無端ベルト基体2の外周面でラテックス組成物を硬化してなる弾性層3とを備えてなることを特徴とする無端ベルト1、及び、この無端ベルト1を備えた画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無端ベルト及び画像形成装置に関し、さらに詳しくは、均一な厚さの弾性層を備え、高品質の画像を安定して形成することに貢献する無端ベルト、及び、高品質の画像を形成することのできる画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンター及びビデオプリンター等のプリンター、複写機、ファクシミリ、これらの複合機等には、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。電子写真方式を利用した画像形成装置は、無端ベルトの機能等に応じて、例えば、像担持体に現像された現像剤像を記録体に直接転写する直接転写方式と、現像剤像を一旦無端ベルトに転写し、無端ベルトから記録体に転写する中間転写方式とがある。
【0003】
直接転写方式は、感光ドラム等の像担持体に形成された静電潜像を現像手段に装備された現像剤担持体から供給される現像剤で現像し、転写手段に電圧を印加することにより、無端ベルト(転写搬送ベルトともいう。)に静電的に吸着されて像担持体と転写手段との間に搬送される記録体に現像された現像剤像を転写し、現像剤像が転写された記録体を加圧ローラ及び定着ローラによって圧着又は加熱圧着し、転写された現像剤像を記録体上に画像や文字として定着する方式である。
【0004】
中間転写方式は、例えば、像担持体に形成された静電潜像を現像剤で現像し、現像された現像剤像を像担持体に当接又は圧接する無端ベルト(中間転写ベルトともいう。)に転写(一次転写)し、無端ベルトに転写された現像剤像を記録体に転写(二次転写)して、現像剤像が転写された記録体を加圧ローラ及び定着ローラによって圧着又は加熱圧着し、転写された現像剤像を記録体上に画像や文字として定着する方式である。このような中間転写方式の画像形成装置は、現像剤の転写性がよく、画像のカラー化及び高精細化、並びに、画像形成速度の高速化等を比較的実現しやすいことから、広く利用されている。
【0005】
これらの画像形成装置に装着される無端ベルトは、現像剤の転写性及び離型性の向上、耐久性向上等を目的として、複層構造とされることがある。例えば、無端ベルトにおける転写性(例えば、無端ベルトが中間転写ベルトである場合には一次転写特性及び二次転写特性等)を向上させるために、弾性層が設けられることがある。種々の特性向上等を目的とする無端ベルトとして、具体的には、「体積固有抵抗値が10〜1012Ω・cmの高分子材料からなる単層または積層体の管状物の外周表面に、体積固有抵抗値が10〜1014Ω・cmの表面層が形成されていることを特徴とする、転写ベルト。」が特許文献1に記載されている。
【0006】
また、前記無端ベルトは、現像剤のクリーニング性向上等を目的として、前記弾性層とは別に薄層の表層が設けられることがある。薄層の表層を備えた無端ベルトとして、具体的には、「ポリイミド樹脂中にカーボンブラックを分散させ、厚さ80μmの無端状ベルトにしたものを基材として、その上に表面層としてフッ素ラテックス(フッ素樹脂微粒子分散品、ダイキン工業社製:GLS−213)を20μmコーティングして焼成した」中間転写体5が特許文献2(段落番号0023欄参照。)に、また、「ゴムラテックス、フッ素系ポリマーおよび水系イソシアネートを含有するコーティング剤のコーティング層を設けた画像形成装置部材」が特許文献3(請求項3参照。)に、それぞれ記載されている。
【0007】
特許文献2及び特許文献3等の、薄層に形成される表層を均一な厚さに形成することは一般的に比較的容易であるが、表層よりも厚く形成される弾性層を、所望の厚さを確保しつつ平坦な表面に形成することは通常難しい。例えば、ゴム組成物をスプレー法で塗布すると、塗布されたゴム組成物に塵等の異物が付着することがあり、また、所望の厚さを確保するためにゴム組成物の複数回の塗布が必要となって積層塗布された塗布層厚が均一にならないことがある。ゴム組成物をドクターブレード法で塗布すると、塗布開始点から最初に塗布されたゴム組成物上にさらにゴム組成物が積層塗布された部分の塗布層が必然的に厚くなり、また、塗布後にブレードを引上げた時にゴム組成物がブレードの動きに追随して凸状に隆起する。ゴム組成物をディッピング法で塗布すると、塗布されたゴム組成物が液だれ等を起こし、また、粘度と固形分量とが高精度に調整されたゴム組成物でなければ塗布層が均一な厚さにならないことがある。例えば、ブレードの脱離痕に関する問題点が特許文献4に記載されている。
【0008】
ところが、複層構造の無端ベルトに形成される弾性層にも当然にその厚さが均一であることが要求される。すなわち、均一な厚さを有していない弾性層を備えた無端ベルトを画像形成装置に装着して画像を形成すると、画像の高品質化に貢献するどころか、かえって、画像の品質を低下させることになる。特に、近年の画像形成装置は、画像の高精細化、画像形成速度の高速化が図られ、このような画像形成装置に装着される無端ベルトとして、より一層均一な厚さを有する弾性層を備えた無端ベルトが強く望まれている。
【0009】
【特許文献1】特開2001−125388号公報
【特許文献2】特開平10−307485号公報
【特許文献3】特開2004−59801号公報
【特許文献4】特開2004−181291
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明は、均一な厚さの弾性層を備え、高品質の画像を安定して形成することに貢献する無端ベルトを提供すること、及び、高品質の画像を形成することのできる画像形成装置を提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、樹脂組成物を硬化してなる無端ベルト基体と、前記無端ベルト基体の外周面でラテックス組成物を硬化して形成された弾性層とを備えてなることを特徴とする無端ベルトであり、
請求項2は、前記ラテックス組成物は、−40〜0℃のガラス転移温度を有する重合体を含有していることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルトであり、
請求項3は、前記ラテックス組成物は、イオウを含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の無端ベルトであり、
請求項4は、前記ラテックス組成物は、シリコーン感熱凝集剤を含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無端ベルトであり、
請求項5は、前記樹脂組成物は、ポリアミドイミド又はポリイミドを含有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の無端ベルトであり、
請求項6は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の無端ベルトを備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係る無端ベルトは、無端ベルト基体上に塗布されたときに塗布厚のばらつきが小さくなると共に無端ベルトに要求される特性を維持するラテックス組成物を硬化してなる弾性層を備えている。したがって、この発明によれば、均一な厚さの弾性層を備え、高品質の画像を安定して形成することに貢献する無端ベルトを提供すること、及び、この発明に係る無端ベルトを備え、高品質の画像を形成することのできる画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明に係る無端ベルトの一実施例である無端ベルトを、図を参照して、説明する。この無端ベルト1は、図1に示されるように、無端ベルト基体2と、無端ベルト基体2の外周面上に形成された弾性層3とを備えてなる。
【0014】
前記無端ベルト基体2は、後述する樹脂組成物を硬化してなり、単層構造とされている。無端ベルト基体2は、無端ベルト1の用途等、すなわち、画像形成装置に配設される位置(構成部分)、張架される複数のローラ間隔等に応じて、所望の幅及び内周径に設定される。無端ベルト基体2の厚さは、特に限定されないが、通常、例えば、具体的な厚みが50〜200μmであるのが好ましく、60〜140μmであるのがより好ましく、80〜120μmであるのが特に好ましい。無端ベルト基体2の厚さが前記範囲内にあると、無端ベルト1としたときの機械的強度及び可撓性を確保することができ、無端ベルト1の耐久性に優れる。無端ベルト基体2の厚さは、接触式膜厚計又は非接触式膜厚計等により測定することができ、例えば、過電流式膜厚計(商品名「CTR−1500E」、サンコー電子株式会社製)を使用することができる。
【0015】
無端ベルト基体2は、高い弾性率を有するのが好ましい。この弾性率は、通常2000〜4500MPaであるのがよく、2500〜4000MPaであるのがよい。弾性率は、JIS K7113(1995)に記載の「プラスチックの引張試験方法」に準じて「2号試験片」を用いて、測定される値である。
【0016】
また、無端ベルト基体2は、高い耐折特性を有するのが好ましい。耐折特性は、通常、500回以上であるのがよく、1,000回以上であるのがよい。耐折特性は、JIS P8115(2001)に記載の「耐折強さ試験法」に準じて、折り曲げクランプのエッジ曲率R0.38、折り曲げ角度90度、荷重4.9N、曲げ速度毎分175回にて試験片を折り曲げ破断するまでの折り曲げ回数を計測して、計測された折り曲げ回数とする。
【0017】
無端ベルト基体2は、樹脂を含有する組成物を硬化してなる。樹脂組成物は、ある程度の強度を有し、繰返し変形に耐える可撓性に富む樹脂単体又は複数種類の樹脂を含有してなる樹脂組成物であるのがよく、このような樹脂組成物に含有される樹脂としては、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を挙げることができる。熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、アクリロニトリル・スチレン系共重合体、ポリアミドイミド樹脂(PAI)、ポリイミド樹脂(PI)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリエステル系樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂及びポリアミド樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましく、ポリアミドイミド樹脂がより好ましく、特に、芳香族ポリアミドイミド樹脂が、強度、可撓性、寸法安定性及び耐熱性等の機械的特性がバランスよく優れている点で、好ましい。
【0018】
前記芳香族ポリアミドイミド樹脂は、トリカルボン酸無水物とジイソシアネート化合物とを反応させるジイソシアネート法により製造することができ、ジイソシアネート法は原料の入手、反応性及び副生成物が少ない等の点で優れている。ジイソシアネート法で製造される芳香族ポリアミドイミド樹脂の他にも、重縮合反応を好適に進めることができるのであれば、ジイソシアネート化合物に代えてジアミン化合物を用いて製造される芳香族ポリアミドイミド樹脂も、好ましい。ジアミン化合物を用いて得られる芳香族ポリアミドイミド樹脂は、ヤング率が高く、無端ベルト基体を形成する樹脂組成物に含まれる樹脂として好適である。また、トリカルボン酸無水物の一部をテトラカルボン酸二無水物に代えてイミド結合を増加させた芳香族ポリアミドイミド樹脂は、耐湿性に優れている。芳香族ポリアミドイミド樹脂は、適宜の溶媒中で、常圧下、及び、常温下又は加熱下で反応させることにより、容易に合成することができる。
【0019】
前記トリカルボン酸無水物としては、芳香族トリカルボン酸無水物が好ましく、例えば、トリメリット酸無水物、3,4,4’−ジフェニルエーテルトリカルボン酸無水物、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸無水物、2,3,5−ピリジントリカルボン酸無水物、ナフタレントリカルボン酸無水物、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらの酸無水物は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0020】
トリカルボン酸無水物の一部に代えて用いられるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0021】
前記ジイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネート化合物を好ましく挙げることができる。また、ジイソシアネート化合物として、芳香族ジイソシアネート化合物と共に、又は芳香族ジイソシアネート化合物に代えて、脂肪族ジイソシアネート化合物及び/又は脂環式ジイソシアネート化合物を、又はこれらの誘導体であるアミン類を使用することもできる。
【0022】
芳香族ジイソシアネート化合物として、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4’−ジイソシアネートジフェニルスルホン、4,4’−ジイソシアネートビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートビフェニル、2,4−トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。また、これらの芳香族ジイソシアネート化合物の誘導体であるジアミン類も原料として利用できる。脂肪族ジイソシアネート化合物としては、例えば、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。脂環式ジイソシアネート化合物としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネート化合物の中でも、無端ベルト基体の耐熱性、機械的特性及び溶解性等を考慮すると、使用する全ジイソシアネート化合物中の60質量%以上、好ましくは70質量%以上を、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアネートビフェニル、イソホロンジイソシアネート又はこれらの誘導体であるジアミン類とすることが好ましい。さらに、無端ベルト基体2の寸法安定性を考慮すると、使用する全ジイソシアネート化合物中の70質量%以上をジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート又はこの誘導体である4,4’−ジアミノジフェニルメタンとすることがより好ましい。
【0023】
芳香族ポリアミドイミド樹脂を合成する重縮合反応に使用される溶媒としては、溶解性の点で極性溶媒が好ましく、反応性を考慮すると非プロトン性極性溶媒が特に好ましい。非プロトン性極性溶媒として、例えば、N,N−ジアルキルアミド類としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、及び、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド等のN,N−ジアルキルアミド類が挙げられる。また、極性溶媒として、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等も好ましい。これらの溶媒は、一種単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0024】
樹脂組成物は導電性付与剤を含有してもよい。導電性付与剤として、例えば、導電性粉末及びイオン導電性物質等を挙げることができる。導電性粉末としては、例えば、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボンの他に、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン類、また酸化チタン、酸化亜鉛、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属、さらには金属酸化物、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー、ナノ粒子等を挙げることができる。イオン導電性物質としては、例えば、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の無機イオン性導電物質等を挙げることができる。これらの中でも、導電性カーボン及びゴム用カーボン類等が好ましく、カーボンブラックが特に好ましい。導電性付与剤は、前記各種物質をその一種を単独で使用することができ、また二種以上を併用することもできる。導電性付与剤の好ましい形状は、球状又は不定形である。球状又は不定形をなす導電性付与剤の粒子のサイズは、一次粒子径として0.01〜10μm程度が好ましい。導電性付与剤がカーボンブラックの場合、そのBET比表面積は、一次粒子径との相関性が強く、50〜300m/gであることが好ましく、100〜200m/gがより好ましい。
【0025】
樹脂組成物における導電性付与剤の含有量は、導電性付与剤の導電性及び粒径、並びに、無端ベルト基体に要求される導電特性等により、適宜調整すればよいが、通常、樹脂組成物と導電性付与剤との全質量100%に対して、1〜25質量%であるのが好ましく、5〜20質量%であるのがより好ましく、10〜20質量%であるのが特に好ましい。導電性付与剤の添加量が1質量%より少ないと、導電性物質同士の距離が離れすぎて無端ベルト基体における導電性の発現が悪くなることがあり、一方、導電性付与剤の添加量が25質量%を超えると、無端ベルト基体の機械的強度が低下することがある。導電性付与剤を樹脂に分散させるには、公知の方法を適宜選択することができ、公知の方法として、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機、三本ロール、ホモジナイザー、ボールミル、ポットミル及びビーズミル等を用いた混合方法が挙げられる。
【0026】
樹脂組成物は、この発明の目的を阻害しない限り、前記樹脂及び前記導電性付与剤に加えて、他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、シリコーン系化合物、フッ素系有機化合物、カップリング剤、滑剤、酸化防止剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、老化防止剤、補強性充填材、反応助剤、反応抑制剤等の各種添加剤等が挙げられる。また、この樹脂組成物は、この発明の目的を阻害しない限り、他の樹脂が含有されていてもよい。これら他の成分の前記樹脂組成物における含有量は、これら他の成分の添加により前記樹脂組成物に発現させる特性に応じて適宜に決定されることが、できる。
【0027】
前記弾性層3は、前記無端ベルト基体2の外周面で後述するラテックス組成物を硬化してなり、単層構造とされている。したがって、弾性層3は、無端ベルト基体2の外周径と同じ内周径を有し、無端ベルト基体2の幅と同じ幅を有している。
【0028】
この弾性層3は、均一な厚さを有している。具体的には、弾性層3の厚さのばらつき(弾性層3の最大厚さと弾性層3の最小厚さとの差)が、弾性層3の厚さに対して8.5%以下であるのが好ましく、8.0%以下であるのがより好ましく、7.0%以下であるのがさらに好ましく、6.0%以下であるのが特に好ましい。
【0029】
弾性層3の厚さは、後述するラテックス組成物によって弾性を有する厚さに調整されればよく、通常、60〜400μmであるのが好ましく、100〜300μmであるのがより好ましく、150〜250μmであるのが特に好ましい。弾性層2の厚さが前記範囲内にあると、比較的厚く形成されても厚さのばらつきを前記範囲内に抑えて、均一な厚さにすることができると共に、無端ベルト1が画像形成装置に装着されたときに、無端ベルト1が当接する部材と無端ベルト1との当接幅を確保して、現像剤の良好な転写性を実現することができる。
【0030】
弾性層3の厚さは、複数の測定点、例えば、弾性層3の周方向に8等分した軸線方向に平行な線と、弾性層3の軸線方向に4等分した周方向に平行な線との交点である合計24の測定点における厚さを分解能0.001mmのデジタルダイヤルゲージを用いて測定したときの測定値を、算術平均した値とする。前記弾性層3の厚さのばらつきは、前記複数の測定点における厚さのうち、最大厚さと最小厚さとの差を算術平均した値に対する百分率で示した値(%)とする。
【0031】
弾性層3は、弾性を有しており、例えば、通常、30〜80のマイクロゴム硬度を有しているのが好ましく、40〜60のマイクロゴム硬度を有しているのが特に好ましい。弾性層3が前記範囲内のマイクロゴム硬度を有していると、無端ベルト1が当接する部材と無端ベルト1との大きな当接幅を確保することができ、その結果、前記部材に担持された現像剤のほとんどすべてを受取り担持することができ、一方、無端ベルト1が担持した現像剤のほとんどすべてを他の部材に供給することができる。したがって、弾性層3が前記範囲内のマイクロゴム硬度を有していると、無端ベルト1としたときに高い転写性を実現することができる。弾性層3のマイクロゴム硬度は、JIS K7215に規定されるタイプAデュロメーターの約1/5縮小モデルとして設計されたマイクロゴム硬度計を用いて、測定時の室温を23℃に設定して測定する。このようなマイクロゴム硬度計を用いる理由は、JIS K7215に規定されるタイプAデュロメーターでは、硬度の測定が困難であったことによる。
【0032】
弾性層3は、0〜30%のクリープ特性を有しているのが好ましく、0〜20%のクリープ特性を有しているのがより好ましく、0〜10%のクリープ特性を有しているのが特に好ましい。弾性層3が前記範囲のクリープ特性を有していると、中間転写ベルトとして電子写真装置内で繰り返し使用されても良好な転写特性が持続するという効果が得られる。弾性層3のクリープ特性は、JIS K6263(1993)に記載の「加硫ゴムの応力緩和試験方法」に準拠して、弾性層3と同様にして作製した試験片に50%の引張歪を与え、初期の引張張力と24時間後の引張張力とを測定して、これらの変化率から求めることができる。このとき用いる試験片はJIS K6251(1993)に記載の「ダンベル状3号形に打ち抜かれたもの」を使用する。
【0033】
弾性層3は、ラテックス組成物を硬化してなる。ラテックス組成物に含有されるラテックスは、少なくとも一種のエチレン系不飽和単量体を重合してなる重合体の水分散液であればよい。ラテックスが少なくとも一種のエチレン系不飽和単量体を重合してなる重合体の水分散液であると、このラテックスを含有するラテックス組成物を塗布方法にかかわらず、塗布厚のばらつきが小さくなってラテックス組成物を均一に塗布することができ、その結果、形成される弾性層3の厚さが均一になる。ラテックスは、合成ゴムラッテクスであるのが好ましく、ハロゲン原子で置換されていない少なくとも一種のエチレン系不飽和単量体を重合してなる重合体の水分散液であるのがさらに好ましい。ラテックスがハロゲン原子で置換されていない少なくとも一種のエチレン系不飽和単量体を重合してなる重合体の水分散液であると、このラテックスを含有するラテックス組成物を塗布方法にかかわらず均一に塗布することができ、弾性層3に要求される弾性を発揮させることができると共に、後述する感熱凝集剤を含有させると、より一層均一な厚さを有する弾性層3を形成することができるから、転写性、及び、無端ベルト1における外周面の移動速度をより一層安定化することができる。
【0034】
このような無端ベルト1における外周面の移動速度の安定化は、電子写真装置等の画像形成装置に求められる重要な特性の1つである。すなわち、画像形成装置において、無端ベルト表面の移動速度と移動量は、通常、無端ベルト1が張架された駆動ローラの回転数及び回転速度を制御することで、制御される。このとき、無端ベルト1の厚さが不均一であると、無端ベルト内面に接する駆動ローラの回転数及び回転速度を正確に制御しても、これらの回転数及び回転速度から想定さる移動速度と移動量とが、実際に走行する無端ベルト1の移動速度と移動量とに一致しないことがある。そうすると、所望の品質を有する画像を形成することができなくなる。したがって、無端ベルト1の厚さ(無端ベルトを構成する各層の厚さ)は均一になっていることが重要である。
【0035】
ハロゲン原子で置換されていない少なくとも一種のエチレン系不飽和単量体を重合してなる重合体が分散されてなるラテックスとして、例えば、アクリルゴムラテックス、天然ゴムラテックス、イソプレンラテックス、ウレタンゴムラテックス、ブチルゴムラテックス、ポリブタジエンゴムラテックス、シリコーンゴムラテックス等が好適に挙げられる。ハロゲン原子で置換されていない二種以上のエチレン系不飽和単量体を共重合してなる共重合体が分散されてなるラテックスとしては、例えば、アクリルニトリル−ブタジエンゴムラテックス、スチレン−ブタジエンゴムラテックス、メタクリル酸メチル−ブタジエンゴムラテックス等が好適に挙げられる。
【0036】
ラテックスに分散される前記重合体(共重合体を含む。)は、前記各ラテックスに応じて、ハロゲン原子で置換されていない、下記のエチレン系不飽和単量体の中から一種又は二種以上を選択して、重合又は共重合してなる。前記重合体及び前記共重合体を形成するエチレン系不飽和単量体としては、ハロゲン原子で置換されていない、エチレン系不飽和結合を有する単量体であればよく、エチレン系単量体、ブタジエン系単量体等が挙げられる。エチレン系単量体としては、例えば、エチレン、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、カルボキシ基を有するエチレン系単量体等が挙げられる。カルボキシ基を有するエチレン系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数は1〜6であるのが好ましい。)、メタクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数は1〜6であるのが好ましい。)等が挙げられる。ブタジエン系単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。
【0037】
少なくとも一種の前記エチレン系不飽和単量体を重合してなる重合体の中でも、ラテックスには二種以上のエチレン系不飽和単量体を共重合してなる共重合体が分散されているのが好ましい。ラテックスが二種以上のエチレン系不飽和単量体を共重合してなる共重合体の分散液であると、このラテックスを含有するラテックス組成物を塗布方法にかかわらず均一に塗布することができると共に、弾性層3に要求される弾性を発揮させることができる。
【0038】
特に、共重合体がアクリルニトリル−ブタジエンゴムである場合には、アクリルニトリルの含有量が例えば31〜35質量%の範囲にある、所謂「中高ニトリル量」及び「高ニトリル量」のアクリルニトリル−ブタジエンゴムであるのが、耐摩耗性や機械的強度の点で、好ましい。ここで、アクリルニトリルの含有量は、アクリルニトリルの配合比から算出してもよく、定法により測定してもよい。
【0039】
特に、共重合体がスチレン−ブタジエンゴムである場合には、スチレンの含有量が例えば20〜30質量%の範囲にある、所謂「中高スチレン量」のスチレン−ブタジエンゴムであるのが、耐摩耗性や機械的強度の点で、好ましい。ここで、スチレンの含有量は、例えば、JIS K6236(2001)に規定された方法に準拠して測定される値である。
【0040】
前記重合体及び共重合体のゲル含有率は、特に制限されないが、例えば、35〜100(%)であるのが好ましい。前記重合体及び共重合体のゲル含有率が前記範囲内にあると、良好なゴム弾性が得られる。ゲル含有率は乾燥したラテックス樹脂をトルエンで再溶解し、溶解しなかった樹脂の量を計測することで求められる。
【0041】
前記重合体及び共重合体は、−40〜0℃のガラス転移温度(Tg)を有しているのが好ましい。前記重合体及び共重合体が前記範囲のガラス転移温度を有していると、通常電子写真装置の使用温度環境下において弾性層3が優れた弾性を発揮する。また、前記重合体及び共重合体が前記範囲のガラス転移温度を有していると、通常画像形成装置を使用する温度環境下における無端ベルト1の機械的変形の内部損失が小さくなり、弾性層3としたときのクリープ特性に優れる。したがって、前記重合体及び共重合体が前記範囲のガラス転移温度を有していると、無端ベルト1としたときの特性を損なうことなく、優れた弾性と良好なクリープ特性を有する弾性層3を形成することができるから、無端ベルト1を画像形成装置に装着したときに、高精細化された画像又はより一層高精細化された画像を、高速又はより一層高速で形成することができる。より一層優れた弾性とクリープ特性とを両立することができる点で、重合体及び共重合体のガラス転移温度は、−40〜−10℃であるのがより好ましく、−40〜−20℃であるのが特に好ましい。すなわち、前記範囲のガラス転移温度を有する重合体及び共重合体を水に分散されてなるラテックスを含有するラテックス組成物を硬化してなる弾性層3を無端ベルト1が備えていると、より一層高精細化された画像を形成することができ、また、高精細化された画像をより一層高速で形成することができる。したがって、前記範囲のガラス転移温度を有する重合体及び共重合体を水に分散してなるラテックスを含有するラテックス組成物を用いるこの発明によれば、均一な厚さの弾性層を備え、無端ベルトに要求される特性を低下させることなく、より一層高品質の画像を高速でかつ安定して形成することに貢献する無端ベルトを提供するという目的を達成することができる。ここで、重合体及び共重合体のガラス転移温度は、DMA法によって、測定することができる。なお、重合体及び共重合体のガラス転移温度が2つ以上ある場合には、最も低いガラス転移温度が前記範囲内にあればよい。
【0042】
ラテックス組成物に含有される重合体及び共重合体は、ラテックス組成物における含有量が、20〜60質量%であるのが好ましく、30〜50質量%であるのが好ましい。重合体及び共重合体が前記含有量でラテックス組成物に含有されていると、ラテックス組成物の粘度に優れ、塗布方法にかかわらず、無端ベルト基体2の外周面に均一に塗布することができる。前記重合体及び/又は共重合体は、無端ベルト1が使用される用途等に応じて、一種又は二種以上が適宜選択されて、ラテックス組成物に含有される。
【0043】
ラテックス組成物には、イオウを含有するのが好ましい。このイオウはラテックス組成物に含有されるラテックスを加硫する加硫剤として機能する。イオウの含有量は、ラテックス組成物において、0.5〜5質量%であるのが好ましく、1〜3質量%であるのが好ましい。
【0044】
ラテックス組成物には、前記エチレン系不飽和単量体を加硫することのできる、イオウ以外の加硫剤を含有していてもよい。このような加硫剤としては、例えば、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0045】
ラテックス組成物には、感熱凝集剤を含有するのが好ましい。感熱凝集剤は、感熱凝集剤に特有の温度例えば感熱温度未満の温度範囲において、前記重合体又は前記共重合体と相互作用して、例えば、付着体(結合体、複合体等を含む。)を形成し、前記感熱温度以上の温度範囲において、前記重合体又は前記共重合体との相互作用がなくなり、前記付着体から脱離して、前記重合体及び前記共重合体の凝集物を生成させる。したがって、感熱凝集剤は、このような特性を有する化合物であればよく、例えば、シリコーン感熱凝集剤、曇点を有するノニオン系界面活性剤等が挙げられる。シリコーン感熱凝集剤としては、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製「TSF484A」、信越化学工業株式会社製「F−474」、バイエル株式会社製「コアギュラントWS」等が挙げられる。曇点を有するノニオン系界面活性剤としては、例えば、BASF社製「ルトナールM−40」等が挙げられる。
【0046】
感熱凝集剤は、一種又は二種以上が適宜選択されて、ラテックス組成物に含有される。ラテックス組成物が感熱凝集剤を含有している場合に、感熱点以上に加温されたベルト基体2をラテックス組成物に浸漬すると、無端ベルト基体2の外周面に接触しているラテックス組成物が均一に加熱されて、感熱凝集剤によって、このラテックス組成物中の前記重合体及び前記共重合体が均一に凝集し、前記重合体及び前記共重合体の凝集物が無端ベルト基体2の外周面に生成される。その結果、形成される弾性層3の厚さが高精度に均一になる。ラテックスに含有される感熱凝集剤は、ラテックス組成物における含有量が、0.5〜5質量%であるのが好ましく、1〜3質量%であるのが好ましい。感熱凝集剤が前記含有量でラテックス組成物に含有されていると、ラテックス組成物の粘度に優れ、塗布方法にかかわらず、無端ベルト基体2の外周面により一層均一に塗布することができる。
【0047】
ラテックス組成物には、前記成分に加えて、各種添加剤を含有していてもよく、各種添加剤としては、例えば、加硫促進剤、加硫促進助剤、加硫遅延剤、感熱助剤、分散剤、老化防止剤、酸化防止剤、充填材、増粘剤、安定剤、顔料、着色剤、加工助剤、軟化剤、可塑剤、乳化剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導性向上剤、離型剤、水以外の溶剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、通常用いられる添加剤であってもよく、用途に応じて特別に用いられる添加剤であってもよい。
【0048】
発明者らは、塗布厚のばらつきが小さくなると共に無端ベルトに要求される特性を維持するラテックス組成物を無端ベルト基体2上に塗布すると、このラテックス組成物が無端ベルト基体2上に均一な厚さになることを見出し、特に、感熱凝集剤を含有する液状のラテックス組成物が感熱温度を超えた際に凝集する性質を利用して、例えば加熱した無端ベルト基体2にラテックス組成物を塗布したときに、無端ベルト基体2の表面に接しているこのラテックス組成物から均一に加熱されることで、ラテックス組成物が無端ベルト基体2上に均一な厚さで凝集することを見出し、その結果、無端ベルト基体2の外周面に塗布されたときに、無端ベルト基体2(塗布されたラテックス組成物)の円周方向及び軸線方向における、塗布されたラテックス組成物における塗布厚のばらつきが抑えられることを、今回新たに発見して、本願発明を完成した。すなわち、本願発明は、ラテックス組成物を無端ベルト基体2の外周面で硬化すること、及び、ラテックス組成物を無端ベルト基体2の外周面で硬化してなる弾性層を備えていることを、特徴の1つとする。
【0049】
ラテックス組成物は、ラテックス、好ましくはイオウ及び/又は感熱凝集剤、所望によりイオウ以外の加硫剤及び/又は各種添加剤を、公知の方法で混合して調整される。公知の方法として、例えば、ミキシングロール、加圧式ニーダー、押出機、三本ロール、ホモジナイザー、ボールミル、ポットミル及びビーズミル等を用いた混合方法が挙げられる。なお、ラテックス、イオウ、感熱凝集剤、イオウ以外の加硫剤、各種添加剤等は、ラテックス又は溶剤に、一度に又は順に添加して混合してもよく、また、各成分の分散液又は溶液を調整後、これらの分散液又は溶液を一度に又は順に添加して混合してもよい。後者の混合方法によれば、各成分をより均一に分散させることができる。
【0050】
前記無端ベルト基体2と前記弾性層3とを備えてなる二層構造の無端ベルト1は、無端ベルト1の用途等に応じて、所望の幅及び内周径に設定される。その一例を挙げると、例えば、無端ベルト1の幅は200〜350mmであり、内周径は200〜2,500mmである。また、無端ベルト1の全体厚さは、特に限定されないが、通常、例えば、110〜600μmであるのが好ましく、160〜440μmであるのがより好ましく、230〜370μmであるのが特に好ましい。無端ベルト1の厚さが前記範囲内であると、機械的強度及び可撓性を確保することができ、耐久性に優れる。無端ベルト1の厚さは無端ベルト基体2と同様にして測定する。
【0051】
無端ベルト1は、温度23℃、相対湿度50%の条件において、通常、体積抵抗率(単位:Ω・cm)の常用対数値が6〜14の範囲内にあるのが好ましく、7〜12の範囲内にあるのが特に好ましい。無端ベルト1が前記範囲の体積抵抗率の常用対数値を有していると、静電吸着力が強く、現像剤を所望のように受取りかつ担持し、また所望のように供給することができるから、高品質の画像を形成することができる。無端ベルト1の体積抵抗率の常用対数値は、体積抵抗測定装置(三菱化学株式会社製、商品名:Hiresta−UP、使用プローブ:URS)により体積抵抗率を測定し、測定値を常用対数値に換算することにより、求めることができる。
【0052】
無端ベルト1は、温度23℃、相対湿度50%の条件において、通常、表面抵抗率(単位:Ω/□)の常用対数値が8〜15の範囲内にあるのが好ましく、8〜13の範囲内にあるのが特に好ましい。無端ベルト1が前記範囲の表面抵抗率の常用対数値を有していると、静電吸着力が強く、現像剤を所望のように受取りかつ担持し、また所望のように供給することができるから、高品質の画像を形成することができる。無端ベルト1の表面抵抗率の常用対数値は、円形電極(例えば、三菱化学株式会社製、商品名:Hiresta−UP、使用プローブ:URSプローブ)を使用し、JIS K6911に従って表面抵抗率を測定し、測定値を常用対数値に換算することにより、求めることができる。
【0053】
無端ベルト1は、体積抵抗率及び表面抵抗率の他に、良好なISO耐折回数を有しているのが好ましい。ISO耐折回数は、通常、500以上であるのがよく、1,000以上であるのが更によい。ISO耐折回数は、JIS P8115(2001)に規定される「MIT試験機」を用いて。先端半径0.38mm、折り曲げ角度90°、試験速度175回/分の条件で、JIS P8115(2001)に記載の方法に準拠して、測定される。
【0054】
次に、この発明に係る無端ベルトの製造方法を説明する。具体的には、この発明に係る無端ベルトの製造方法は、環状に成形されてなる無端ベルト基体2の外周面にラテックス組成物を塗布して、塗布されたラテックス組成物を硬化する工程を有していることを特徴とする。前記特徴を有するこの発明に係る無端ベルトの製造方法によれば、スプレー法でラテックス組成物を塗布しても、塗布されたラテックス組成物の塗布層厚をより少ない回数で所望の厚さにすることができ、塗布層厚が均一になる。また、ドクターブレード法でラテックス組成物を塗布しても、塗布後にブレードを引上げた時にラテックス組成物がブレードの動きに追随しにくく、ラテックス組成物が凸状に隆起することが効果的に防止される。さらに、ディッピング法でラテックス組成物を塗布しても、塗布されたラテックス組成物が液だれ等を起こすこともなく、塗布層厚が均一になる。特に、ラテックス組成物が感熱凝集剤を含有していると、ラテックス組成物の塗布層厚がより一層均一になる。その結果、この発明に係る無端ベルトの製造方法によれば、塗布方法にかかわらず、均一な厚さを有する弾性層を無端成形基体の外周面に容易かつ低コストで形成することができる。したがって、この発明によれば、均一な厚さの弾性層を備え、無端ベルトに要求される特性を低下させることなく、高品質の画像を安定して形成することに貢献する無端ベルトの製造方法を提供するという目的を達成することができる。特に、この発明によれば、高精細化された画像を形成することのできる画像形成装置、画像を高速で形成することのできる画像形成装置、及び、高精細化された画像を高速で形成することのできる画像形成装置に装着されても、所望の高品質を有する画像を安定して形成することに大きく貢献する無端ベルトの製造方法を提供するという目的を達成することができる。
【0055】
また、ラテックス組成物として、前記範囲内のガラス転移温度を有する重合体又は共重合体を水に分散されてなるラテックスを含有するラテックス組成物を用いる、この発明によれば、より一層高品質の画像を高速でかつ安定して形成することに貢献する無端ベルトの製造方法を提供するという目的を達成することができる。
【0056】
この発明に係る無端ベルトを製造するには、無端ベルト基体2を形成する樹脂組成物及び弾性層3を形成するラテックス組成物をそれぞれ、前記のようにして、準備する。
【0057】
無端ベルト基体2は、準備した樹脂組成物を公知の成形方法によって環状に成形して、作成される。例えば、無端ベルト基体2を形成する樹脂組成物に含有される樹脂として熱可塑性樹脂を選択した場合には、遠心成形、押出成形、射出成形等により、一方、樹脂として熱硬化性樹脂を選択した場合には、遠心成形、RIM成形等により、無端ベルト基体2を成形することができる。これらの成形方法の中でも、材料を問わずに適用可能であり、かつ厚さ精度に優れる等の点で、遠心成形が好ましい。
【0058】
無端ベルト基体2を遠心成形によって成形する場合には、前記樹脂組成物は、その成形時の粘度を50,000mPa・s以下に調整するのが好ましい。粘度が50,000mPa・sを超えると、厚さの均一な無端ベルト基体2を製造するのが困難になることがある。樹脂組成物の粘度の下限については、特に限定されるものではないが、10mPa・s以上であるのが好ましい。樹脂組成物の粘度が上記範囲を外れる場合は、前記溶媒の添加量等を調節することにより、樹脂組成物の粘度を前記範囲内に調整することができる。溶媒としては、前記芳香族ポリアミドイミド樹脂を合成する重縮合反応に使用される溶媒が挙げられる。
【0059】
遠心成形によると、溶媒を含有することにより流動性を発現した樹脂組成物を円筒形の金型に注入し、金型を回転させて遠心力で金型内周面に樹脂組成物の層を均一に展開し、樹脂組成物の層から溶媒を乾燥除去して、無端成形基体が製造される。金型は各種金属管を用いることができる。好適な金型としては、金型の内周面は鏡面研磨されており、鏡面となった内周面はフッ素樹脂やシリコーン樹脂等の離型剤により離型処理され、形成した無端成形基体が内周面から容易に脱型できるようにされた金属管を挙げることができる。
【0060】
なお、樹脂組成物に含まれる樹脂としてポリアミドイミド樹脂を選択する場合には、上述した遠心成形による他に、ポリアミドイミド樹脂の原料であるトリカルボン酸無水物とジイソシアネート化合物とが一部重合したポリアミド酸の溶液を、金型の内周面や外周面に浸漬方式、遠心方式、塗布方式等によってコートし、又は前記ポリアミド酸の溶液を注形型に充填する等の適宜な方式で筒状に展開し、その展開層を乾燥製膜してベルト形に成形し、その成形物を加熱処理してポリアミド酸をイミドに転化して型より回収する公知の方法(特開昭61−95361号公報、特開昭64−22514号公報、特開平3−180309号公報等)等により、無端ベルト1を製造することもできる。
【0061】
金型内周面に展開された樹脂組成物の層から溶媒を除去して、無端成形基体が製造される。ここで、除去される溶媒は、金型内周面に展開された樹脂組成物の層に含有された溶媒であり、例えば、樹脂組成物の粘度を調整する際に使用される溶媒の他に、前記芳香族ポリアミドイミド樹脂を合成する際に使用される溶媒等が挙げられる。金型内周面に展開された樹脂組成物の層から溶媒を除去する処理として、加熱処理を挙げることができるが、溶媒を除去するには、以下の一次溶媒除去工程及び二次溶媒除去工程からなる溶媒除去処理を行うのが好ましい。
【0062】
前記一次溶媒除去工程は、金型を回転して金型内周面に展開された樹脂組成物の層から溶媒を除去しつつ成形し、樹脂組成物の層をフィルム状成形体とする。一次溶媒除去工程は、金型を回転したまま5〜60分間、40〜150℃の熱風を金型内に通過させることにより、溶媒が除去される。熱風温度が150℃を超えると、及び/又は、加熱時間が60分を超えると、成形されるフィルム状成形体が酸化されることがある。
【0063】
二次溶媒除去工程は、一次溶媒除去工程で成形されたフィルム状成形体を金型ごと遠心成形機から取り出し、金型ごと加熱して、フィルム状成形体から溶媒を除去し、無端成形基体とする。例えば、熱風乾燥器、オーブン等の加熱器を用いる場合には、フィルム状成形体を金型ごと、200〜300℃で1〜3時間加熱すればよく、また、過熱水蒸気炉を用いる場合には、フィルム状成形体を金型ごと、200〜260℃の過熱水蒸気で、0.5〜3時間加熱すればよい。なお、フィルム成形体の変形等を防止することができれば、金型からフィルム成形体を脱型し、フィルム成形体を前記条件で加熱することもできる。
【0064】
このようにして溶媒が除去された無端成形基体を作製した後、無端成形基体を金型から取り出し、放冷する。なお、金型ごと無端成形基体を放冷すると、金型と無端成形基体との熱膨張率の差により、無端成形基体を脱型することができる。
【0065】
このようにして無端成形基体を脱型して、環状の無端成形基体における両側端部を除去し、所定幅に裁断して、無端ベルト基体2が作製される。無端成形基体を切断する切断機は、無端成形基体の切断開始点と切断終了点とが略一致するように、切断することができる装置であればよい。
【0066】
このようにして作製される無端ベルト基体2の外周面にラテックス組成物を塗布する。このラテックス組成物は、前記したように、塗布方法にかかわらず均一な厚さに塗布することができる。したがって、ラテックス組成物の塗布は、通常の塗布方法、例えば、ディップ法、スプレー法、ロールコータ法、ドクターブレードコート法等で、硬化後の弾性層3の厚さが前記範囲内になる塗布量で、塗布される。ラテックス組成物が感熱凝集剤を含有している場合には、ラテックス組成物の塗布は、室温下で実施すればよいが、0℃以上感熱凝集剤の感熱温度未満の温度範囲で実施されるのが、ラテックス組成物を無端ベルト基体2の外周面に均一に定着させることができる点で、好ましい。例えば、前記温度範囲内に予熱した無端ベルト基体2にラテックス組成物を塗布することができる。
【0067】
特に、ラテックス組成物が感熱凝集剤を含有している場合には、無端ベルト基体2を感熱凝集剤の感熱温度以上の温度に加熱して、ラテックス組成物に所定の時間浸漬するディップ法を採用するのが好ましい。このようなディップ法を採用すると、無端ベルト基体2の外周面に接触しているラテックス組成物が均一に加熱されて、感熱凝集剤によって、このラテックス組成物中の前記重合体及び前記共重合体が均一に凝集し、前記重合体及び前記共重合体の凝集物を含む塗布層が無端ベルト基体2の外周面に均一に形成される。具体的には、例えば、無端ベルト基体2を30〜80℃に加熱して、1分〜30分間にわたってラテックス組成物に浸漬させる感熱凝集条件を選択することができる。前記製造方法においては、所望により、このようにして無端ベルト基体2の外周面に定着させたラテックス組成物を純水等で洗浄することができる。この洗浄工程は、例えば、常温で純水等に無端ベルト基体2ごと少なくとも1回浸漬する手段を採用することができる。
【0068】
前記製造方法においては、塗布されたラテックス組成物を室温以上に加熱する乾燥工程を実施するのが好ましい。特に、前記ディップ法を採用する場合においては、塗布されたラテックス組成物を、室温以上、感熱凝集剤の感熱温度未満の温度に、予熱する乾燥工程を実施するのが好ましい。ラテックス組成物を前記範囲の温度に予熱すること、塗布されたラテックス組成物における塗布厚のばらつきを高精度に抑えると共に、ラテックス組成物に含有される水、溶剤等を揮発させて、ほぼ均一な塗布厚に塗布されたラテックス組成物を無端ベルト基体2の外周面に一時的に定着させることができる。予熱後に所望に応じて定着したラテックス組成物を水等で洗浄することができる。この乾燥条件は、感熱凝集剤の感熱温度に応じて、適宜調整される。
【0069】
次いで、無端ベルト基体2の外周面に塗布されたラテックス組成物又は前記塗布層を硬化する。ラテックス組成物又は前記塗布層の硬化は、前記重合体又はその凝集物が重合しうる条件下で、行われる。例えば、イオウ及び/又はイオウ以外の加硫剤を含有するラテックス組成物は、これらの加硫剤が機能する温度以上の温度に、加熱して、硬化されることができる。このラテックス組成物又は前記塗布層の加熱硬化条件として、具体的には、100〜200℃で10〜60分の加熱条件を選択することができる。感熱凝集剤を含有するラテックス組成物は、前記重合体又はその凝集物が重合しうる条件下であって、かつ、感熱凝集剤が有する感熱温度以上の温度に、加熱して、硬化されることができる。このようにして形成された弾性層3は、所望により、その表面を研磨又は研削されてもよい。
【0070】
このようにして製造される無端ベルト1は、無端ベルト基体2の外周面に塗布されたラテックス組成物における塗布厚のばらつきが抑えられ、塗布されたラテックス組成物を硬化してなる均一な厚さの弾性層3を備えている。このように、無端ベルト1は均一な厚さを有する弾性層3を備えているから、画像形成装置に装着されると、無端ベルト1が有する特性を安定して発揮し、高品質の画像を安定して形成することに貢献することができる。特に、高精細化された画像を形成することのできる画像形成装置、画像を高速で形成することのできる画像形成装置、及び、高精細化された画像を高速で形成することのできる画像形成装置に装着されると、所望の高品質を有する画像を安定して形成することに大きく貢献することができる。
【0071】
この発明に係る無端ベルトは、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、無端ベルト1の無端ベルト基体2及び弾性層3はいずれも単層構造とされているが、この発明において、無端ベルトの無端ベルト基体及び/又は弾性層は二以上の層を積層した多層構造とされてもよい。
【0072】
また、無端ベルト1は、無端ベルト基体2の外周面に弾性層3が形成されているが、この発明においては、無端ベルト基体2の外周面に接着剤層又はプライマー層等が形成された後、この接着剤層又はプライマー層等の外周面に弾性層3が形成されてもよい。さらに、無端ベルト1は、無端ベルト基体2と弾性層3とを備えてなるが、この発明において、無端ベルトは、所望により、弾性層の外周面にフッ素樹脂等で形成された表面層等を有していてもよく、また、弾性層の外周面にフッ素樹脂等の微粒子が付着していてもよい。
【0073】
さらに、無端ベルト1は、無端ベルト基体2と弾性層3とを備えてなるが、この発明において、無端ベルトは、所望により、無端ベルト基体の内周面であって無端ベルト基体における軸線方向の少なくとも一端部に、弾性材料で形成された紐状又は帯状の細長いガイド部材が設けられてもよい。このガイド部材は無端ベルトの走行中の横ぶれ防止用のガイドとして機能する。ガイド部材の材料としては、適度なゴム弾性と耐摩耗性とを有する弾性材料、例えば、ウレタン系エラストマー、シリコーン系エラストマー、フッ素系樹脂エラストマー、スチレン系エラストマー等が挙げられる。これらの中でも、耐摩耗性に優れる、JIS K 6253−1997によるA硬度が30以上95以下のウレタン系エラストマーが好適である。ガイド部材は、好ましくは、無端ベルト基体における軸線方向の両端部に無端ベルト基体の内周面を一巡するように設けられる。
【0074】
次に、この発明に係る無端ベルト1を備えた画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の一例を、図2を参照して、説明する。この画像形成装置10は中間転写方式のタンデム型カラー画像形成装置である。中間転写方式のタンデム型カラー画像形成装置10は従来公知の画像形成装置と基本的に同様に構成されている。図2に示されるように、無端ベルト1は、中間転写ベルトとして、二本の支持ローラ42、テンションローラ43及び対向ローラ44に張架されている。そして、対向ローラ44の設置位置近傍に、対向ローラ44と二次転写ローラ45と電極ローラ46とを備えて成る二次転写部40が配置されている。
【0075】
また、図2に示されるように、画像形成装置10は、中間転写ベルト1上に四種の現像ユニットB、C、M及びYが直列に配置されている。現像ユニットBは、感光体等の像担持体11Bと帯電ローラ12Bと露光手段13Bと現像ローラ23B及び筐体21Bを備えた現像手段20Bと転写ローラ14Bとクリーニングブレード15Bとを備えている。現像ユニットBには黒色現像剤が収納されている。なお、現像ユニットC、M及びYは、現像ユニットBと同様に構成され、シアン現像剤22C、マゼンタ現像剤22M及び黄色現像剤22Yが収納されている。画像形成装置10における記録体16の搬送方向下流には、定着ベルトとしての無端ベルト35を備えた定着手段30が配置されている。この定着装置30は、開口を有する筐体34内に、定着ローラ31と支持ローラ33と定着ベルト35と加圧ローラ32とを備えて成る圧力熱定着装置である。なお、定着手段30は、熱ローラ定着装置、加熱定着装置、圧力定着装置等が採用されてもよい。
【0076】
画像形成装置10は、次にようにして画像を形成する。まず、現像ユニットBによって、像担持体11Bの表面に静電潜像が黒色現像剤22Bで現像剤像として可視化され、この現像剤像が中間転写ベルト1上に転写される(一次転写)。続いて、現像ユニットC、M及びYによって中間転写ベルト1に現像剤像が転写され、カラー像が形成される。カラー像は中間転写ベルト1の回転によって二次転写部40に至り、二次転写部40に搬送された記録体16上に転写される(二次転写)。次いで、カラー像が顕像化された記録体16は定着手段30に搬送され、カラー像が永久画像として定着される。このようにして記録体16にカラー画像が形成される。なお、画像形成装置10を用いてカラー画像を形成する場合について説明したが、モノクロ画像を形成する場合には中間転写ベルト1に一次転写された現像剤像を直ちに記録体16に二次転写して定着手段30に搬送すればよい。
【0077】
この発明に係る無端ベルト1を備えた画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の別の一例を、図3を参照して、説明する。この画像形成装置50は、中間転写方式のマルチパス型カラー画像形成装置である。この中間転写方式のマルチパス型カラー画像形成装置50は従来公知の画像形成装置と基本的に同様に構成されている。図3に示されるように、無端ベルト1は、中間転写ベルトとして、二本の支持ローラ42、テンションローラ43及び対向ローラ44に張架されている。そして、対向ローラ44の設置位置近傍に、対向ローラ44と二次転写ローラ45と電極ローラ46とを備えて成る二次転写部40が配置されている。
【0078】
また、図3に示されるように、画像形成装置50は、四種の現像ユニットB、C、M及びYを内蔵した現像手段20を備えている。現像手段20に内蔵された現像ユニットB、C、M及びYは帯電手段、露光手段等を内蔵し、それぞれ、黒色現像剤、シアン現像剤、マゼンタ現像剤及び黄色現像剤を収納している。なお、現像手段20は、現像手段20の外部であって像担持体11の近傍に帯電手段、露光手段等が配置されていてもよい。画像形成装置50における記録体16の搬送方向下流には定着手段30が配置されている。定着装置30は画像形成装置10の定着装置30と同様に構成されている。
【0079】
画像形成装置50は、次にようにして画像を形成する。まず、現像手段20の現像ユニットBによって、像担持体11の表面に静電潜像が黒色現像剤22Bで現像剤像として可視化され、中間転写ベルト1上に転写される(一次転写)。続いて、像担持体11及び中間転写ベルト1が1回転して、現像ユニットC、M及びYによって中間転写ベルト1に各現像剤像が重畳転写され、カラー像が形成される。カラー像は中間転写ベルト1の回転によって二次転写部40に至り、二次転写部40に搬送された記録体16上に転写される(二次転写)。次いで、カラー像が顕像化された記録体16は定着手段30に搬送され、カラー像が永久画像として定着される。このようにして、記録体16にカラー画像が形成される。なお、画像形成装置50を用いてカラー画像を形成する場合について説明したが、モノクロ画像を形成する場合には中間転写ベルト1に一次転写された現像剤像を直ちに記録体16に二次転写して定着手段30に搬送すればよい。
【0080】
これらの画像形成装置10及び50によれば、中間転写ベルト1として無端ベルト1を使用しているから、その均一な表面例えば弾性層3の表面で像担持体から現像剤を受け取ることができ、また、均一な表面例えば弾性層3の表面で担持した現像剤を記録体に供給することができる。その結果、この無端ベルト1は、現像剤を、所望のように担持し、かつ、所望のように供給することができる。したがって、これらの画像形成装置10及び50は、画像の高精細化及び/又は画像形成速度の高速化が図られていても、高品質の画像を形成することができる。
【0081】
このように、この発明に係る無端ベルトは、中間転写方式の画像形成装置に装着される中間転写ベルトとして好適に用いられる。この発明に係る無端ベルトは、前記構成を有するから、その用途は前記中間転写ベルトに限定されるわけではなく、直接転写方式の画像形成装置、及び、中間転写方式の画像形成装置に装着される各種無端ベルト、例えば、記録体を搬送する搬送ベルト、記録体への現像剤の転写に貢献する転写ベルト、記録体を搬送すると共に記録体への現像剤の転写に貢献する転写搬送ベルト、現像剤を像担持体に供給する現像ベルト、記録体に転写された現像剤を定着させる転写ベルト、現像剤像を担持する感光ベルト等にも用いることができる。
【0082】
この発明に係る画像形成装置は、前記した一例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。例えば、画像形成装置10及び50は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置10及び50は、中間転写方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、直接転写方式の画像形成装置とされてもよく、例えば、各色の現像ユニットを備えた複数の像担持体を転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型画像形成装置とされてもよく、単一の現像ユニットを備えたモノクロ型画像形成装置とされてもよい。この発明に係る画像形成装置は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置として好適に用いられる。
【実施例】
【0083】
(ラテックス組成物の調整)
まず、ラテックス組成物に含有される成分の分散液を調整した。
・イオウ(商品名「金華印コロイド硫黄A」、鶴見化学工業株式会社製)100質量部と、顔料分散剤(商品名「ソルスパース27000」、日本ルーブリゾール株式会社製)10質量部と、水200質量部とを混合し、ボールミルにて24時間かけて微粉砕し、イオウ分散液を調整した。
・前記イオウに代えて加硫促進剤(商品名「ノクセラーEZ」、大内新興化学工業株式会社製)を用いた以外は、イオウ分散液と同様にして、加硫促進剤分散液を調整した。
・前記イオウに代えて酸化亜鉛(商品名「活性亜鉛華」、バイエル株式会社製)を用いた以外は、イオウ分散液と同様にして、酸化亜鉛分散液を調整した。
・前記イオウに代えて補強用カーボン(商品名「CD−1」、日本ゼオン株式会社製)を用いた以外は、イオウ分散液と同様にして、カーボン分散液を調整した。
・前記イオウに代えて安定化剤(商品名「エマルビンW」、バイエル薬品株式会社製)を用いた以外は、イオウ分散液と同様にして、安定化剤分散液を調整した。
・前記イオウに代えて増粘剤(商品名「A−20P」、東亜合成化学工業株式会社製)を用いた以外は、イオウ分散液と同様にして、増粘剤分散液を調整した。
・感熱凝集剤(商品名「コアギュラントWS」、バイエル社製)100質量部と、安定化剤(商品名「エマルビンW」、バイエル社製)2質量部と、水10質量部とを混合し、ボールミルにて24時間かけて微粉砕し、感熱凝集剤分散液を調整した。
【0084】
また、−40〜0℃のガラス転移温度を有する下記の各種ラッテックスを準備した。
・ラテックス1:アクリロニトリル−ブタジエンラテックス(商品名「Nipol LX513」、ガラス転移温度−31℃、固形分(共重合体の含有率)45%、中高ニトリル量、日本ゼオン株式会社製)
・ラテックス2:アクリレート系ラテックス(商品名「Nipol LX854E」、ガラス転移温度−10℃、固形分(共重合体の含有率)45%、日本ゼオン株式会社製)
・ラテックス3:カルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエンラテックス(商品名「Nipol LX552」、ガラス転移温度−12℃、固形分(共重合体の含有率)45%、中高ニトリル量、日本ゼオン株式会社製)
・ラテックス4:カルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエンラテックス(商品名「Nipol LX517B」、ガラス転移温度−16℃、固形分(共重合体の含有率)40%、中高ニトリル量、日本ゼオン株式会社製)
・ラテックス5:アクリロニトリル−ブタジエンラテックス(商品名「Nipol PST555」、ガラス転移温度−35℃、固形分(共重合体の含有率)45%、中高ニトリル量、日本ゼオン株式会社製)
・ラテックス6:アクリロニトリル−ブタジエンラテックス(商品名「Nipol PST712F」、ガラス転移温度−19℃、固形分(共重合体の含有率)45%、中高ニトリル量、日本ゼオン株式会社製)
・ラテックス7:微カルボキシ変性メチルメタクリレート−ブタジエンラテックス(商品名「MR−173」、ガラス転移温度−21℃、固形分(共重合体の含有率)45.5%、日本エイアンドエル株式会社製)
・ラテックス8:微カルボキシ変性スチレン−ブタジエンラテックス(商品名「SR−107」、ガラス転移温度−15℃、固形分(共重合体の含有率)48%、日本エイアンドエル株式会社製)
・ラテックス9:アクリロニトリル−ブタジエンラテックス(商品名「NA−15」、ガラス転移温度−20℃、固形分(共重合体の含有率)45%、高ニトリル量、日本エイアンドエル株式会社製)
・ラテックス10:カルボキシ変性アクリロニトリル−ブタジエンラテックス(商品名「Nipol LX1571H」、ガラス転移温度−8℃、固形分(共重合体の含有率)45%、高ニトリル量、日本ゼオン株式会社製)
【0085】
さらに、−40℃未満又は0℃超のガラス転移温度を有する下記の各種ラッテックスを準備した。
・ラテックス11:アクリロニトリル−ブタジエンラテックス(商品名「Nipol 1577K」、ガラス転移温度26℃、固形分(共重合体の含有率)38%、中ニトリル量、日本ゼオン株式会社製)
・ラテックス12:アクリレート系ラテックス(商品名「Nipol LX811H」、ガラス転移温度1℃、固形分(共重合体の含有率)50%、日本ゼオン株式会社製)
・ラテックス13:カルボキシ変性スチレン−ブタジエンラテックス(商品名「Nipol LX432M」、ガラス転移温度−55℃、固形分(共重合体の含有率)41%、日本ゼオン株式会社製)
・ラテックス14:スチレン−ブタジエンラテックス(商品名「Nipol LX110M」、ガラス転移温度−47℃、固形分(共重合体の含有率)40.5%、日本ゼオン株式会社製)
【0086】
(実施例1〜14)
まず、無端ベルト基体2を作製した。反応容器中に、N−メチル−2−ピロリドンと、トリメリット酸無水物と、これと当量のジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートと、反応原料(トリメリット酸無水及びジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート)の合計モル数に対して2mol%のフッ化カリウム(触媒)とを加え、撹拌しながら30分間かけて室温から150℃に昇温後、同温度を5時間保持して、反応物濃度(実質的全閉環のポリアミドイミド樹脂)20質量%の芳香族ポリアミドイミド溶液を得た。この溶液に、N−メチル−2−ピロリドンをさらに加え、反応物濃度15質量%のポリアミドイミド溶液を調製した。得られたポリアミドイミド溶液に、酸化処理カーボンブラック(商品名「プリンテックス150T」、Degussa社製、pH4.0、揮発分10.0%)をポリアミドイミド樹脂と酸化処理カーボンブラックとの合計100質量%に対して18質量%の割合で加え、ポットミルで24時間混合分散して、樹脂組成物を調製した。成形に使用する金型は、内径226mm、外径246mm、長さ400mmの大きさを有し、金型内面はポリッシングにより鏡面研磨されている。次いで、金型両端の開口部に、リング状の蓋(内径170mm、外径250mm)をそれぞれ嵌合して、金型を閉塞し、樹脂組成物を1,000rpmの速度で回転する金型内周に190g注入した。次いで、金型を同速度で30分間回転させて金型内周面に樹脂組成物の層を均一に展開した。次いで、金型を同速度で回転させつつ、熱風乾燥機により金型周囲の温度を80℃に保ち、この状態を30分間保持し、フィルム状成形体を成形した。その後、金型の回転を停止し、フィルム状成形体を金型ごと遠心成形機から取り出し、250℃に調節された過熱水蒸気炉で2時間過熱水蒸気処理した後、室温で放冷して、無端成形基体とした。金型ごと無端成形基体を冷却して、金型と無端成形基体との熱膨張率の差により無端成形基体を剥離して、無端成形基体を金型から脱型した。脱型した無端成形基体の両端部をそれぞれ切断し、周長約226mm、幅240mm、厚さ100μmの大きさに切り出し、無端ベルト基体2を作製した。
【0087】
調整した各分散液及び準備した各ラテックスを第1表に示す割合(各分散液に含有される固形分に換算した質量)で室温下混合し、各ラテックス組成物を調整した。感熱凝集条件が80℃となるように、80℃に加温した金属製の中子(外周長約226mm、幅240mm)の外周面に無端ベルト基体2を装着して、無端ベルト基体2を中子で保持した状態のまま、ラテックス組成物に浸漬した。各ラテックス組成物は、1回の浸漬処理によって、硬化後の厚さが約200μmとなるように、浸漬時間を調整した後に中子ごとラテックス組成物中から無端ベルト基体2を取り出した(このとき、塗布されたラテックス組成物(前記凝集物)は無端ベルト基体2の外周面に一時的に定着していた。)。
【0088】
次いで、無端ベルト基体2を中子ごと蒸留水中に浸漬して、無端ベルト基体2の外周面に塗布されたラテックス組成物を洗浄した。この後、70℃に設定されたギヤーオープンで1時間乾燥した。次いで、加熱硬化条件が120℃、20分となるように、中子に保持された状態のまま、ギヤーオーブンを用いて、120℃で20分間にわたって加熱して、無端ベルト基体2の外周面に弾性層3を形成した。このようにして、各実施例における無端ベルトを製造した。
【0089】
(実施例15)
1回の浸漬処理によって硬化後の弾性層の厚さが約290μmとなるように浸漬時間を7分に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例15の無端ベルトを製造した。
【0090】
(比較例1)
前記ラテックス組成物をウレタンゴム組成物に変更し、硬化後の弾性層の厚さが約20μmとなるように、スプレー法によって無端ベルト基体2の外周面にウレタンゴム組成物を1回塗布した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の無端ベルトを製造した。用いたウレタンゴム組成物は、「ニッポラン4032(日本ポリウレタン工業株式会社製)」100質量部と、「ミリオネートT−80(日本ポリウレタン工業株式会社製)」7.5質量部とを含有していた。
(比較例2)
前記ウレタンゴム組成物の塗布方法をドクターブレード法(塗布回数1回)に変更し、硬化後の弾性層の厚さが約200μmとなるようにした以外は、比較例1と同様にして、比較例2の無端ベルトを製造した。
【0091】
(比較例3)
前記ラテックス組成物をシリコーンゴム組成物に変更し、硬化後の弾性層の厚さが約20μmとなるように、スプレー法によって無端ベルト基体2の外周面にシリコーンゴム組成物を1回塗布した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の無端ベルトを製造した。用いたシリコーンゴム組成物は、液状シリコーンゴム「KE‐1990A(信越化学工業株式会社製)」100質量部と、「KE‐1990B(信越化学工業株式会社製)」100質量部とを含有していた。
(比較例4)
前記シリコーンゴム組成物の塗布方法をドクターブレード法(塗布回数1回)に変更し、硬化後の弾性層の厚さが約200μmとなるようにした以外は、比較例3と同様にして、比較例4の無端ベルトを製造した。
(比較例5)
シリコーンゴム組成物の塗布方法をディッピング法(塗布回数1回)に変更し、硬化後の弾性層の厚さが約200μmとなるようにした以外は、比較例3と同様にして、比較例5の無端ベルトを製造した。
【0092】
このようにして製造した各無端ベルトの厚さを以下の方法により測定し、弾性層3の厚さを算出した。まず、無端ベルトの周方向に8等分した軸線方向に平行な線と、無端ベルトの軸線方向に4等分した周方向に平行な線との交点(合計24点)における各無端ベルトの厚さを分解能0.001mmのデジタルダイヤルゲージを用いて測定した。このようにして測定された各無端ベルトの厚さから無端ベルト基体2の厚さ(なお、前記のようにして作製した無端ベルト基体2は均一な厚さを有していた。)を減じて、弾性層の厚さとした。このようにして算出した厚さの算術平均値、算出された厚さのうちの最大厚さと最小厚さの差(ばらつきとも称する。)、及び、この差を前記算術平均値で除して100を乗じた百分率(%)で示した値を算出した。算出した結果を第2表に示す。
【0093】
また、各無端ベルトの表面抵抗率及び体積抵抗率を、温度23℃、相対湿度50%の条件で、前記方法に準拠して測定した。この測定値を常用対数値に換算した値を測定結果として第2表に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
各無端ベルトの弾性層を高分子計器製「マイクロゴム硬度計MD−1」によって評価した。その結果、実施例1〜10及び15はマイクロゴム硬度が40〜60の範囲にあり、弾性に極めて優れ、実施例11〜14はマイクロゴム硬度が30〜80の範囲にあり、弾性に優れていたのに対して、比較例1〜5はマイクロゴム硬度が30〜80の範囲外にあり、画像形成装置用の無端ベルトとしての弾性が不足していた。
【0097】
さらに、各無端ベルトにおける弾性層のクリープ特性を、JIS K6263(1993)に記載の「加硫ゴムの応力緩和試験方法」に準拠して、各弾性層と同様にして作製した試験片に50%の引張歪を与え、初期の引張張力と24時間後の引張張力とを測定して、これらの変化率から求めた。このとき用いた試験片はJIS K6251(1993)に記載の「ダンベル状3号形に打ち抜かれたもの」を使用した。その結果、実施例1〜10及び15のクリープ特性は0〜10%の範囲内にあって極めて良好であり、実施例11〜14のクリープ特性は0〜20%の範囲内にあって特に良好であったのに対して、比較例1〜5のクリープ特性は30%を超えて劣っていた。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】図1は、この発明に係る無端ベルトの一実施例である無端ベルトを示す概略側面図である。
【図2】図2は、この発明に係る画像形成装置の一例であるタンデム型カラー画像形成装置の概略図である。
【図3】図3は、この発明に係る画像形成装置の一例であるマルチパス型カラー画像形成装置の概略図である。
【符号の説明】
【0099】
1 無端ベルト(中間転写ベルト)
2 無端ベルト基体
3 弾性層
10、50 画像形成装置
11、11B、11C、11M、11Y 像担持体
12B、12C、12M、12Y 帯電ローラ
13B、13C、13M、13Y 露光手段
14、14B、14C、14M、14Y 転写ローラ
15B、15C、15M、15Y クリーニングブレード
16 記録体
20、20B、20C、20M、20Y 現像手段
21B、21C、21M、21Y、34 筐体
22B、22C、22M、22Y 現像剤
23B、23C、23M、23Y 現像ローラ
30 定着装置
31 定着ローラ
32 加圧ローラ
33 定着ベルト支持ローラ
35 無端ベルト(定着ベルト)
40 二次転写部
42 支持ローラ
43 テンションローラ
44 対向ローラ
45 二次転写ローラ
46 電極ローラ
B、C、M、Y 現像ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物を硬化してなる無端ベルト基体と、前記無端ベルト基体の外周面でラテックス組成物を硬化して形成された弾性層とを備えてなることを特徴とする無端ベルト。
【請求項2】
前記ラテックス組成物は、−40〜0℃のガラス転移温度を有する重合体を含有していることを特徴とする請求項1に記載の無端ベルト。
【請求項3】
前記ラテックス組成物は、イオウを含有していることを特徴とする請求項1又は2に記載の無端ベルト。
【請求項4】
前記ラテックス組成物は、シリコーン感熱凝集剤を含有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無端ベルト。
【請求項5】
前記樹脂組成物は、ポリアミドイミド又はポリイミドを含有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の無端ベルト。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の無端ベルトを備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−237468(P2009−237468A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−86337(P2008−86337)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】