説明

無端状環状体および画像形成装置

【課題】繰り返し使用による位置検知の精度の低下を抑制する。
【解決手段】少なくとも樹脂および導電性粒子を含有する無端状環状体本体1と、無端状環状体本体1の外周面上の一部に、内側透明膜2Aおよび外側透明膜2Bにより挟まれて密閉された、無端状環状体本体1の位置を検知するための位置検知用膜3と、を有し、内側透明膜2Aの位置検知用膜3内側面に相対していない部分と、外側透明膜2Bの位置検知用膜3外側面に相対していない部分と、が直接接触し、且つ該直接接触する部分のうち位置検知用膜3の側面に面する部分において内側透明膜2Aと外側透明膜2Bとが溶着している画像形成装置用の無端状環状体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端状環状体および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、像保持体上に形成されたトナー像を、記録媒体搬送用環状体によって搬送された記録媒体に直接転写するか、または一旦中間転写用環状体に転写しその後記録媒体に転写して画像を記録する方法がある。
【0003】
これら記録媒体搬送用環状体や中間転写用環状体の位置を検知する方法として、種々の方法が提案されている。
例えば、中間転写体が、無端ベルト状の基体と、その外周面に積層された光透過性材料からなる表面層とを有し、該表面層内又は表面層下に、該中間転写体の周面上の位置を検知するためのマークが埋め込まれて、このマーク埋設部分の表面が平坦となっており、該中間転写体と対向する位置に、周回移動する中間転写体に付された前記マークの位置を検知するマーク検知手段が設けられている画像形成装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
また、無端状となったフィルム状のベルト構成体と、該ベルト構成体の外周面上に形成され、周辺部と光の反射性が異なる速度検出パターンと、光透過性の材料からなり、前記ベルト構成体の外周面及び前記速度検出パターンを被覆する表面層と、を有するベルトが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−316506号公報
【特許文献2】特開2005−24934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、内側透明膜と外側透明膜とが直接接触する部分のうち位置検知用膜の側面に面する部分が溶着していない場合に比べ、繰り返し使用による位置検知の精度の低下を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の本発明によって達成される。
即ち、請求項1に係る発明は、
少なくとも樹脂および導電性粒子を含有する無端状環状体本体と、
該無端状環状体本体の外周面上の一部に、内側透明膜および外側透明膜により挟まれて密閉された、前記無端状環状体本体の位置を検知するための位置検知用膜と、を有し、
前記内側透明膜の前記位置検知用膜内側面に相対していない部分と、前記外側透明膜の前記位置検知用膜外側面に相対していない部分と、が直接接触し、且つ該直接接触する部分のうち前記位置検知用膜の側面に面する部分において前記内側透明膜と外側透明膜とが溶着している画像形成装置用の無端状環状体である。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記外側透明膜の前記溶着している部分の外側表面の表面粗さRaが5μm以下である請求項1に記載の画像形成装置用の無端状環状体である。
【0008】
請求項3に係る発明は、
像保持体と、
該像保持体を帯電させる帯電装置と、
帯電された前記像保持体表面を露光して静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
請求項1に記載の無端状環状体を用いてなる中間転写用環状体と、
前記像保持体上の前記トナー像を前記中間転写用環状体表面に転写する一次転写装置と、
前記中間転写用環状体に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写装置と、
前記中間転写用環状体における前記位置検知用膜の位置を検知する検知装置と、
を備える画像形成装置である。
【0009】
請求項4に係る発明は、
像保持体と、
該像保持体を帯電させる帯電装置と、
帯電された前記像保持体表面を露光して静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
請求項1に記載の無端状環状体を用いてなる記録媒体搬送用環状体と、
前記像保持体上の前記トナー像を前記記録媒体搬送用環状体によって搬送された記録媒体に転写する転写装置と、
前記記録媒体搬送用環状体における前記位置検知用膜の位置を検知する検知装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、内側透明膜と外側透明膜とが直接接触する部分のうち位置検知用膜の側面に面する部分が溶着していない場合に比べ、繰り返し使用による位置検知の精度の低下が抑制される。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、外側透明膜の溶着している部分の外側表面の表面粗さRaが5μmを超える場合に比べ、位置検知の精度が向上される。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、無端状環状体において、内側透明膜と外側透明膜とが直接接触する部分のうち位置検知用膜の側面に面する部分が溶着していない場合に比べ、繰り返し使用による中間転写用環状体の位置検知の精度の低下が抑制される。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、無端状環状体において、内側透明膜と外側透明膜とが直接接触する部分のうち位置検知用膜の側面に面する部分が溶着していない場合に比べ、繰り返し使用による記録媒体搬送用環状体の位置検知の精度の低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る環状体において位置検知用膜を有する箇所における断面図
【図2】従来の環状体において位置検知用膜を有する箇所における断面図
【図3】回転塗布法(フロー塗布法)により環状体本体を製造する装置を示す概略構成図
【図4】本実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図
【図5】本実施形態に係る画像形成装置において検知装置(位置検知センサー)を有する部分を拡大して示す概略構成図
【図6】比較例にて製造した環状体において位置検知用膜を有する箇所における断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
<無端状環状体>
本実施形態に係る画像形成装置用の無端状環状体(以下単に「環状体」と称す)は、少なくとも樹脂および導電性粒子を含有する無端状環状体本体(以下単に「環状体本体」と称す)と、該環状体本体の外周面上の一部に、内側透明膜および外側透明膜により挟まれて密閉された、前記環状体本体の位置を検知するための位置検知用膜と、を有し、前記内側透明膜の前記位置検知用膜内側面に相対していない部分と、前記外側透明膜の前記位置検知用膜外側面に相対していない部分と、が直接接触し、且つ該直接接触する部分のうち前記位置検知用膜の側面に面する部分において前記内側透明膜と外側透明膜とが溶着している。
【0017】
図2に示すごとく、環状体本体101に位置検知用膜103を設ける場合、保護のため該位置検知用膜103を内側透明膜102Aおよび外側透明膜102Bによって挟んで接着し、位置検知用膜103が密閉された状態で環状体本体101上に設ける態様がある。しかし、位置検知用膜103の厚みのために、内側透明膜102Aと外側透明膜102Bとが直接接触する部分のうち位置検知用膜103の側面に面する部分(位置検知用膜103の側面を覆う部分)Yに空隙が生じる。この空隙が生じた環状体では、長期にわたり画像形成を繰り返すと、上記空隙にトナーが入り込み、結果として更に位置検知用膜103と外側透明膜102Bとの界面にトナーが入り込んで位置検知用膜103の表面が汚れるため、検知不良が発生していた。
【0018】
これに対し本実施形態に係る環状体では、図1に示すごとく、内側透明膜2Aの位置検知用膜3内側面に相対していない部分と、外側透明膜2Bの位置検知用膜3外側面に相対していない部分と、が直接接触し、且つ該直接接触する部分のうち位置検知用膜3の側面に面する部分Yにおいて内側透明膜2Aと外側透明膜2Bとが溶着していることで、位置検知用膜3の側面部分にて生じる空隙が抑制され、該空隙や位置検知用膜3と外側透明膜2Bとの界面へのトナーの入り込みが抑制されて、繰り返し使用による位置検知の精度の低下が抑制される。
【0019】
尚、内側透明膜2Aと外側透明膜2Bとが溶着しているか否かは、目視にて確認し得る。より具体的には、内側透明膜2Aおよび外側透明膜2Bが直接接触する部分のうち位置検知用膜3の側面に面する部分Y(位置検知用膜3の周囲の部分)を目視にて観察した際に、外部より印加された熱や圧力による溶着痕が確認されるか否かにより判断される。
【0020】
また、図1は、本実施形態に係る環状体において位置検知用膜3を有する箇所における断面図を表す。図1においては、左右方向が環状体における軸方向を、奥および手前方向が環状体における周方向を表す。
【0021】
ここで、本実施形態に係る環状体において位置検知用膜3が設けられる位置としては、特に該環状体を画像形成装置における中間転写用環状体や記録媒体搬送用環状体等として用いる場合であれば、環状体本体1の軸方向(図1においては左右方向)の端部に形成することが好ましい。より具体的には、中間転写用環状体として用いる環状体であれば、像保持体からトナー像が転写されない領域(端部)に位置検知用膜3を有することが好ましい。また、記録媒体搬送用環状体として用いる環状体であれば、記録媒体を保持しない領域(端部)に位置検知用膜3を有することが好ましい。
但し、本実施形態に係る環状体はこれに限定されるものではなく、用途によって上記端部以外の位置に設けてもよい。
また、本実施形態に係る環状体において位置検知用膜3を設ける箇所の数は、環状体の周方向(回転駆動方向)に1箇所であってもよいし、複数の箇所に設けてもよい。
【0022】
〔表面粗さRa〕
また本実施形態に係る環状体では、前記外側透明膜の前記溶着している部分の外側表面の表面粗さRaが5μm以下であることが好ましい。
位置検知用膜に対して光を照射しその反射光を読み込むことで該位置検知用膜の位置を検知する位置検知方式に本実施形態に係る環状体を適用する場合、溶着している部分の外側表面の表面粗さが5μm以下に抑制されていることにより、位置検知のために位置検知用膜に対して照射される光の乱反射が抑制され、位置検知の精度が向上される。
【0023】
尚、上記表面粗さRaはJIS B0601−2001に記載の方法により測定されたものである。本明細書に記載の数値は該方法によって測定されている。
【0024】
上記表面粗さRaは、更に3.5μm以下であることがより好ましい。
【0025】
〔環状体の製造方法〕
本実施形態に係る環状体の製造方法について、一例を挙げて説明する。
まず、片面に接着処理が施されている内側透明膜2Aの該接着処理側の面を環状体本体1に貼り付け、ついで片面に接着処理が施されている位置検知用膜3の該接着処理側の面を、環状体本体1上に貼り付けられた内側透明膜2A上に貼り付け、さらに片面に接着処理が施されている外側透明膜2Bの該接着処理側の面を、内側透明膜2Aの位置検知用膜3を有する側の面に貼り付けることで、内側透明膜2Aおよび外側透明膜2Bによって位置検知用膜3を密閉した透明膜−位置検知用膜積層体を環状体本体1上に形成する。
尚、内側透明膜2Aおよび外側透明膜2Bを兼ねた一続きの透明膜を用いてもよい。即ち、片面に接着処理が施されている透明膜(内側透明膜2A兼外側透明膜2B)の該接着処理側の面の一部を環状体本体1に貼り付け、ついで片面に接着処理が施されている位置検知用膜3の該接着処理側の面を、前記透明膜の環状体本体1に貼り付けられた部分の上に貼り付ける。さらに前記透明膜を環状体本体1に一周貼り付け、前記透明膜上に貼り付けられた位置検知用膜3の上に重ねるように貼り付けることで、内側透明膜2Aと外側透明膜2Bとを兼ねた一続きの透明膜によって、位置検知用膜3が挟まれ密閉された透明膜−位置検知用膜積層体を形成してもよい。
【0026】
ついで、内側透明膜2Aおよび外側透明膜2Bが直接接触する部分のうち位置検知用膜3の側面に面する部分Y(位置検知用膜3の周囲の部分)を溶着することで、環状体が作製される。
【0027】
ここで、内側透明膜2Aおよび外側透明膜2Bを溶着する方法としては、熱付与による溶着や、超音波照射による溶着などの方法が用いられ、用いる透明膜の材質に合わせて選択される。
超音波照射による溶着の場合には、例えば、超音波照射装置のヘッドを溶着する箇所の外側透明膜2B上に押し当てて超音波を照射することにより、溶着が行なわれる。また、熱付与による溶着の場合には、例えば、熱付与装置のヘッドを溶着する箇所の外側透明膜2B上に押し当てて加熱することにより、溶着が行なわれる。
【0028】
尚、外側透明膜の溶着している部分の外側表面の前記表面粗さRaは、例えば、溶着の際に押し当てる前記超音波照射装置のヘッドや熱付与装置のヘッドの形状、ヘッドの押し付け圧力、超音波照射または熱付与の時間等を制御することにより調整される。
【0029】
〔位置検知用膜〕
位置検知用膜3としては、例えば、画像形成装置に備えられる検知装置(位置検知用センサー)から発せられる光を反射して、その反射光を該位置検知用センサーに読み込ませる位置検知方式に適用する、反射膜が挙げられる。
上記反射膜の材質としては、環状体本体と光学特性(光の反射特性等)が異なる材質が用いられ、例えば、金属膜、金属蒸着樹脂膜等が挙げられる。上記金属膜としては、アルミニウム膜、ステンレス膜、銅膜等が挙げられる。また、上記金属蒸着樹脂膜用の金属としては、アルミニウム、銀、銅などが、樹脂としてはポリカーボネート、PET、ポリエステル、ポリアリレートなどが挙げられる。
【0030】
尚、位置検知用膜3としては予め片面に接着処理が施されたものを用いてもよく、例えば市販品として、日東電工社製の商品名:リビックテープNo.401銀、ニチバン社製の商品名:マイラップNo.602等が挙げられる。
【0031】
〔透明膜〕
内側透明膜2Aおよび外側透明膜2Bは、位置検知用膜3を密閉して保護する役割を担う。
これら透明膜の材質としては、例えば、ポリカーボネート、PET、ポリエステル、ポリアリレート等が挙げられ、これらの中でも特にポリエステルが好ましい。
【0032】
尚、これら透明膜としては予め片面に接着処理が施されたものを用いてもよく、例えば市販品として、日東電工社製の商品名:No.31B、ニチバン社製の商品名:No.5511等が挙げられる。
【0033】
また、既に述べた通り、内側透明膜2Aおよび外側透明膜2Bを兼ねた一続きの透明膜を用いてもよい。
【0034】
〔接着剤〕
次いで、内側透明膜2Aと位置検知用膜3との接着、外側透明膜2Bと位置検知用膜3との接着、内側透明膜2Aと外側透明膜2Bとの接着、内側透明膜2Aと環状体本体1との接着等には、接着剤を用いてもよい。
接着剤としては、公知のアクリル系、ポリエーテル系、シリコーン系、ゴム系等の接着剤が、特に制限されることなく用いられる。
【0035】
尚、接着剤を用いるにあたり、被着材の表面の接着性を改善するためのプライマー(下塗り剤)を用いてもよい。
被着剤の材質により適用するプライマーの種類は異なるが、従来公知のもの、例えばポリウレタン系、アクリル系、ポリエステル系、シリコーン系、ゴム系等のプライマーが用いられる。
【0036】
〔環状体本体〕
・樹脂
環状体本体1には、少なくとも樹脂が用いられる。樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、およびポリアミドイミド樹脂等、特に限定されることなく画像形成装置の環状体として用いられる樹脂であれば使用し得る。これらの中でも、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂が最も適している。尚、上記樹脂は単独で用いても混合して用いてもよい。
【0037】
・導電性粒子
環状体本体1には、導電性(即ち体積抵抗率が10Ω・cm以上1014Ω・cm以下の範囲内)を付与する観点から、導電性粒子が含有される。
上記導電性粒子としては、例えばカーボンブラック、イオン導電性樹脂、および導電性高分子材料等が挙げられ、特にカーボンブラックが好適に用いられる。上記カーボンブラックとしては、例えばオイルファーネスブラック、チャンネルブラック、およびアセチレンブラック等が挙げられ、中でもチャンネルブラックが特に好ましい。尚、上記導電材料は単独で用いても混合して用いてもよい。
【0038】
・その他の添加剤
上記環状体本体1には、上記のほかにも酸化防止剤や界面活性剤等、画像形成装置の環状体に用いられる各種の添加剤を用いてもよい。
【0039】
・環状体本体の製造方法
環状体本体1を製造する方法について、図3に示す回転塗布法(フロー塗布法)により行なう方法を一例に挙げて説明する。
回転塗布法では、環状体本体の長さに対応した外径を有する円筒成形管111を用意する。円筒成形管111外周面に沿った位置に、環状体本体形成用の塗布液(前記樹脂と前記導電性粒子とを少なくとも含有する塗布液)116を円筒成形管111外周面上に吐出するためのノズル115を配し、ノズル115は配管を通じて塗布液容器114に接続されており、さらに塗布液容器114は配管を通じて加圧装置117に接続している。また、ノズル115の下方には、吐出された塗布液116を円筒成形管111外周面上において押し付けるためのブレード118が配置されている。
【0040】
円筒成形管111を円筒成形管回転方向(矢印D)の向きに回転し、ノズル115から塗布液116を円筒成形管111外周面上に吐出し、ブレード118で円筒成形管111外周面上に均す。ノズル115とブレード118は、ノズルおよびブレード移動方向(矢印E)に移動し、塗布液116が円筒成形管111外周面上に塗布される。なお、塗布液116は加圧装置117によりノズル115から吐出するように調節されている。これにより、円筒成形管111外周面上に塗布液116の塗膜が形成される。
【0041】
次いで、塗布液116の塗膜を加熱乾燥して環状体本体を成形した後、冷却して円筒成形管111から剥離し定められた幅で切断することで環状体本体が得られる。
例えば、塗布液(樹脂溶液)116の樹脂材料としてポリイミド前駆体を用いる場合には、円筒成形管111外周面上に塗布液116塗膜を形成した後、80℃以上170℃以下で乾燥することにより溶媒を除去し(乾燥工程)、さらに250℃以上350℃以下に加熱することでイミド転化(焼成工程)させてポリイミド樹脂膜を形成する。
【0042】
こうして得られる環状体本体の厚みとしては、特に画像形成装置の記録媒体搬送用環状体や中間転写用環状体として用いる場合であれば、50μm以上150μm以下であることが好ましい。
また、環状体本体には、内周表面側や外周表面側に、表面保護層や抵抗調整層等の他の層を設けてもよい。
【0043】
<画像形成装置>
次いで、画像形成装置について説明する。
前述の本実施形態に係る環状体は、特に画像形成装置において中間転写用環状体や記録媒体搬送用環状体として好適に用いられる。
【0044】
ここで、前記環状体を中間転写用環状体として適用した画像形成装置としては、像保持体と、該像保持体を帯電させる帯電装置と、帯電された前記像保持体表面を露光して静電潜像を形成する潜像形成装置と、前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、前述の本実施形態に係る環状体を用いてなる中間転写用環状体と、前記像保持体上の前記トナー像を前記中間転写用環状体表面に転写する一次転写装置と、前記中間転写用環状体に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写装置と、前記中間転写用環状体における前記位置検知用膜の位置を検知する検知装置と、を備える画像形成装置が挙げられる。
【0045】
また、前記環状体を記録媒体搬送用環状体として適用した画像形成装置としては、像保持体と、該像保持体を帯電させる帯電装置と、帯電された前記像保持体表面を露光して静電潜像を形成する潜像形成装置と、前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、前述の本実施形態に係る環状体を用いてなる記録媒体搬送用環状体と、前記像保持体上の前記トナー像を前記記録媒体搬送用環状体によって搬送された記録媒体に転写する転写装置と、前記記録媒体搬送用環状体における前記位置検知用膜の位置を検知する検知装置と、を備える画像形成装置が挙げられる。
【0046】
次いで、本実施形態に係る画像形成装置に関し、図を用いて説明する。
図4は多色の画像を形成し得る画像形成装置の概略構成を示す図である。同図において、感光体ドラム(像保持体)11は矢線A方向への回転に伴い、その表面に帯電装置12および図示外の露光装置(図中露光ビームを符号13で示す)などの周知の電子写真プロセスによって画像情報に応じた静電潜像が形成される。また、この感光体ドラム11には、ブラック(Bk)現像器14、イエロー(Y)現像器15、マゼンタ(M)現像器16、シアン(C)現像器17を具備したロータリー状の現像器が配置されている。感光体ドラム11に形成された静電潜像を、各色毎に現像し中間転写用環状体(中間転写ベルト)20へと転写される。これを各色毎に繰り返し、中間転写用環状体上で多色画像を形成する。
【0047】
また、感光体ドラム11の表面に接触して配置された中間転写用環状体(中間転写ベルト)20は、複数(本態様では4つ)のロール21乃至24に張架されて環状体張架装置を形成し、矢線B方向へ回転駆動し得るよう配置されている。ここで、本態様では、符号21は中間転写ベルト20の駆動ロール、22は従動ロール、23は中間転写ベルト20の張力を一定に制御する支持ロール、24は二次転写用の対向ロールである。本態様では、上記中間転写ベルト20として、前述の本実施形態に係る環状体が適用されている。
【0048】
また、中間転写ベルト20の感光体ドラム11に対向する部位(一次転写位置)において、中間転写ベルト20の裏面側には一次転写装置(本態様では一次転写ロール)18が配設され、この一次転写ロール18にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加することで、感光体ドラム11上のトナー像Tが中間転写ベルト20に静電吸引される。
【0049】
また、記録媒体としての用紙Pの搬送経路に面した中間転写ベルト20の二次転写位置には二次転写装置40が配設されており、本態様では、中間転写ベルト20のトナー像保持面(外周面)側に接触配置される二次転写ロール25と、中間転写ベルト20の内周面側に配置されて二次転写ロール25の対向電極をなす対向ロール24とを備えている。そして、本態様では、二次転写ロール25が接地されており、また、対向ロール24にはトナーの帯電極性と同極性のバイアスが給電ロール26を介して印加されている。尚、二次転写ロール25には例えばウレタンゴムからなるクリーニングブレード28が付設されている。
【0050】
本態様においては、上記対向ロール24として、例えば、金属芯材の外周に発泡弾性体層と導電層とをこの順に被覆してなる2層構成のEPDMが用い得る。外側の導電層はカーボンブラックを分散した半導電性のEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)発泡ゴムで構成されている。また、二次転写ロール25は芯金とこの芯金の周囲に固着されたカーボンブラック分散発泡EPDM材料からなるコア層にスキン層を介してカーボンブラック分散のフッ素樹脂系材料でコーティングして構成されている。
【0051】
更に、二次転写装置40の下流側には、中間転写ベルト20上の残留トナーを除去するベルトクリーナ(クリーニングスクレーパ)41が設けられている。
そして、中間転写ベルト20の二次転写装置40の下流側で且つクリーニングスクレーパ41の上流側には、中間転写ベルト20における位置検知用膜の位置を検知するための検知装置(位置検知センサー)42が中間転写ベルト20の外周面(トナー像保持面)側に対向配置されている。
【0052】
また、本態様において用紙搬送系は、用紙収納部50から用紙Pを送出ロール51で送出し、位置合せロール52で一旦位置決め停止させた後に定められたタイミングで二次転写位置へと用紙Pを送り込み、二次転写後の用紙Pを図示しない用紙搬送ガイドを介して搬送ベルト53へと導き、この搬送ベルト53にて定着器54へと搬送する。
【0053】
〔検知装置〕
ここで、検知装置(位置検知センサー)42について図を用いて説明する。
図5に示される中間転写ベルト20では、外周面側の画像が形成されない非画像領域であって、軸方向端部に位置検知用膜3が設けられている。尚、図5では位置検知用膜3のみを示し、内側透明膜2A、外側透明膜2B等は省略している。
【0054】
中間転写ベルト20が回転するのに伴い位置検知用膜3が移動し、移動する位置検知用膜3と対向するように、この位置検知用膜3の通過を検知する検知装置(位置検知センサー)42が設けられている。この検知装置42としては、例えば中間転写ベルト20に光を発してその反射光を読み込み、位置検知用膜3が設けられている部分と設けられていない部分との反射の差により位置を検知する方式が挙げられ、具体的には、受光素子であって、レーザー光やLED光等を照射し位置検知用膜3から反射される光と位置検知用膜3が無い部分から反射される光の反射光量の違いにより、位置検知用膜3の通過を検知して回転する中間転写ベルト20の位置を検知する装置が適用される。
【0055】
そして、この検知装置42によって検知された検知データに基づいて、図示しない制御部が、図4に示すトナー像Tの転写タイミングを制御して、トナー画像が正確に重ね合わされるよう制御されている。
【0056】
次に、本態様に係る画像形成装置の作像プロセスについて説明する。
図示しないスタートスイッチがオン操作されると作像プロセスが実行される。具体的には、感光体ドラム11に書き込まれた静電潜像が例えばイエローの画像情報に対応したものであれば、この静電潜像はイエロー(Y)のトナーを内包する現像器15で現像され、感光体ドラム11上にはイエローのトナー像Tが形成される。そして、感光体ドラム11上に形成された未定着トナー像Tは、感光体ドラム11と中間転写ベルト20とが接する一次転写位置で感光体ドラム11から中間転写ベルト20の表面に転写される。
【0057】
このとき、単色画像を形成する場合には、中間転写ベルト20に一次転写されたトナー像Tを用紙Pに二次転写するのであるが、複数色のトナー像を重ね合わせたカラー画像を形成する場合には、感光体ドラム11上でのトナー像の形成並びにこのトナー像Tの一次転写の工程が色数分だけ繰り返される。例えば4色のトナー像を重ね合わせた多色画像を形成する場合には、感光体ドラム11上にはその一回転毎にブラック、イエロー、マゼンタおよびシアンのトナー像Tが形成され、これらトナー像Tは順次中間転写ベルト20に一次転写される。一方、中間転写ベルト20は最初に一次転写されたブラックのトナー像Tを保持したまま感光体ドラム11と同周期で回転駆動し、中間転写ベルト20上にはその一回転毎にイエロー、マゼンタおよびシアンのトナー像Tが転写される。
【0058】
こうして中間転写ベルト20に一次転写されたトナー像Tは、中間転写ベルト20の回転駆動に伴って二次転写位置へと搬送される。一方、用紙Pは位置合せロール52にて定められたタイミングで二次転写位置へと供給され、対向ロール24に対して二次転写ロール25が用紙Pをニップする。すると、二次転写位置では、二次転写装置40である二次転写ロール25と対向ロール24とで挟まれる領域(ニップ領域)に形成される転写電界の作用で、中間転写ベルト20に保持されたトナー像Tが二次転写位置において用紙Pに静電転写される。この後、二次転写された用紙Pは搬送ベルト53を経て定着器54へと搬送され、用紙P上のトナー像Tが定着される。
【0059】
尚、検知装置42によって検知された中間転写ベルト20の位置検知データに基づいて、未定着トナー像Tの中間転写ベルト20への転写タイミングが制御され、トナー画像が正確に重ね合わされるよう制御されている。
【実施例】
【0060】
以下、実施例および比較例を用いて本発明について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
〔実施例1〕
(環状体の作製)
環状体本体1の外周面上に、内側透明膜2Aおよび外側透明膜2Bを兼ねた透明膜にて挟まれて密閉された位置検知用膜3を有し、且つ内側透明膜2Aと外側透明膜2Bとが直接接触する部分のうち位置検知用膜3の側面に面する部分Yが溶着された環状体を、以下のようにして作製した。
【0062】
尚、環状体を構成する各部材は以下の通りである。
・環状体本体1:カーボンブラックが分散されたポリイミド樹脂製のベルト
(φ168mm、幅364.8mm)
・透明膜 :日東電工社製の商品名No.31B
・位置検知用膜3:日東電工社製の商品名リビックテープNo.401銀
【0063】
まず、片面に接着処理が施されている上記透明膜の該接着処理側の面の一部を環状体本体1に貼り付け、ついで片面に接着処理が施されている位置検知用膜3の該接着処理側の面を、前記透明膜の環状体本体1に貼り付けられた部分の上に貼り付けた。さらに、上記透明膜を環状体本体1一周に貼り付け、前記透明膜上に貼り付けられた位置検知用膜3の上に重ねるように貼り付けた。このようにして、内側透明膜2Aおよび外側透明膜2Bを兼ねた一続きの透明膜によって挟まれ密閉された位置検知用膜3(透明膜−位置検知用膜積層体)を備えた環状体を得た。
ついで、超音波装置(超音波工業社製の商品名USWP−200Z28S−S)のヘッドを、内側透明膜2Aおよび外側透明膜2Bが直接接触する部分のうち位置検知用膜3の側面に面する部分Y(位置検知用膜3の周囲の部分)に押し当てて超音波を照射し、内側透明膜2Aと外側透明膜2Bとを溶着して、環状体を作製した。
尚、内側透明膜2Aおよび外側透明膜2Bが直接接触する部分のうち位置検知用膜3の側面に面する部分Y(位置検知用膜3の周囲の部分)が溶着されていることを目視により確認し、また位置検知用膜3の側面に面する部分Yには空隙がないことが確認された。
【0064】
得られた環状体における外側透明膜2Bの前記溶着している部分の外側表面の表面粗さRaを前述の方法により測定したところ、Ra3.2μmであった。
【0065】
〔実施例2〕
実施例1において、超音波装置のヘッドを押し当てる際の圧力、超音波の照射時間を制御して、外側透明膜2Bの前記溶着している部分の外側表面の表面粗さRaが5.3μmとなるよう調整した以外は、実施例1に記載の方法により環状体を作製した。
尚、内側透明膜2Aおよび外側透明膜2Bが直接接触する部分のうち位置検知用膜3の側面に面する部分Y(位置検知用膜3の周囲の部分)が溶着されていることを目視により確認し、また位置検知用膜3の側面に面する部分Yには空隙がないことが確認された。
【0066】
〔比較例1〕
実施例1において、超音波装置による超音波の照射を行なわなかった以外は実施例1に記載の方法により、内側透明膜102Aと外側透明膜102Bとが直接接触する部分のうち位置検知用膜103の側面に面する部分Yが溶着されていない環状体(図2に示す態様)を作製した。
尚、位置検知用膜103の側面に面する部分Yには空隙が生じていた。
【0067】
〔比較例2〕
(環状体の作製)
図6に示すごとく、実施例1で用いた環状体本体201の外周面の軸方向端部に、実施例1で用いた位置検知用膜3(片面に接着処理が施されている)を貼り付け、環状体を作製した。
【0068】
<評価試験>
1つの像保持体(感光体)と中間転写用環状体とを備え、該像保持体上にトナー画像を形成して中間転写用環状体に転写することをシアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),ブラック(Bk)の4色分繰り返して中間転写用環状体上にカラーの画像を形成する方式(いわゆる4サイクル方式)の画像形成装置として、DocuColor1257(富士ゼロックス社製)の、位置検知用センサーの光の出力を調整し得るよう改造した装置に、前記実施例および比較例にて得た環状体を中間転写用環状体として設置し、A3用紙(J紙、富士ゼロックス社製)を用いて、2万枚の画像形成(プリント)を行ない、以下の評価をした。
尚、上記画像形成装置に備えられた位置検知用センサーにおいて、光の出力は発光に供する電源の電圧にて調整した。
【0069】
−トナー入り込み評価−
2万枚プリント後の環状体の、内側透明膜と外側透明膜とが直接接触する部分のうち位置検知用膜の側面に面する部分(位置検知用膜の周囲の部分)、および、位置検知用膜における外側表面(位置検知用センサーの光を反射する面)を目視により観察し(但し比較例2の環状体については位置検知用膜における外側表面を観察)、トナーによる汚れの発生を評価した。評価基準は以下の通りである。
○:汚れの発生なし
×:トナーが入り込むことにより汚れ発生
【0070】
−位置検知精度評価−
2万枚プリントの初期と2万枚プリント後とにおける、中間転写用環状体の位置検知の精度を評価した。評価基準は以下の通りである。
○:検知良好(即ち位置検知膜により十分な光量の反射光が得られている)
△:位置検知用センサーの光の出力を調整することで検知良好(即ち、光の出力を調整
した際に位置検知膜により十分な光量の反射光が得られている)
×:検知不良(即ち、光の出力を調整しても位置検知膜により十分な光量の反射光が得
られない)
【0071】
【表1】

【0072】
(※1)透明膜が溶着している部分において微細な光の乱反射が発生した
(※2)位置検知用膜の剥れが発生した
【符号の説明】
【0073】
1,101,201 環状体本体
2A,102A 内側透明膜
2B,102B 外側透明膜
3,103,203 位置検知用膜
11 感光体ドラム
12 帯電装置
13 露光ビーム
14,15,16,17 現像器
18 一次転写ロール
20 中間転写ベルト
21 駆動ロール
22 従動ロール
23 支持ロール
24 対向ロール
25 二次転写ロール
26 給電ロール
28 クリーニングブレード
40 二次転写装置
41 クリーニングスクレーパ
42 検知装置(位置検知センサー)
50 用紙収納部
51 送出ロール
52 位置合せロール
53 搬送ベルト
54 定着器
111 円筒成形管
114 塗布液容器
115 ノズル
116 塗布液
117 加圧装置
118 ブレード
Y 内側透明膜と外側透明膜とが直接接触する部分のうち位置検知用膜の側面に面する部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂および導電性粒子を含有する無端状環状体本体と、
該無端状環状体本体の外周面上の一部に、内側透明膜および外側透明膜により挟まれて密閉された、前記無端状環状体本体の位置を検知するための位置検知用膜と、を有し、
前記内側透明膜の前記位置検知用膜内側面に相対していない部分と、前記外側透明膜の前記位置検知用膜外側面に相対していない部分と、が直接接触し、且つ該直接接触する部分のうち前記位置検知用膜の側面に面する部分において前記内側透明膜と外側透明膜とが溶着している画像形成装置用の無端状環状体。
【請求項2】
前記外側透明膜の前記溶着している部分の外側表面の表面粗さRaが5μm以下である請求項1に記載の画像形成装置用の無端状環状体。
【請求項3】
像保持体と、
該像保持体を帯電させる帯電装置と、
帯電された前記像保持体表面を露光して静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
請求項1に記載の無端状環状体を用いてなる中間転写用環状体と、
前記像保持体上の前記トナー像を前記中間転写用環状体表面に転写する一次転写装置と、
前記中間転写用環状体に転写された前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写装置と、
前記中間転写用環状体における前記位置検知用膜の位置を検知する検知装置と、
を備える画像形成装置。
【請求項4】
像保持体と、
該像保持体を帯電させる帯電装置と、
帯電された前記像保持体表面を露光して静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像装置と、
請求項1に記載の無端状環状体を用いてなる記録媒体搬送用環状体と、
前記像保持体上の前記トナー像を前記記録媒体搬送用環状体によって搬送された記録媒体に転写する転写装置と、
前記記録媒体搬送用環状体における前記位置検知用膜の位置を検知する検知装置と、
を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−242433(P2012−242433A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109420(P2011−109420)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】