説明

無給油式往復動型圧縮機

【課題】優れた耐久性を発揮可能な無給油式往復動型圧縮機を提供する。
【解決手段】本発明の無給油式往復動型圧縮機は、シリンダボア5aが形成されたハウジング5と、シリンダボア5a内を往復動し、外周面にリング溝20aが形成されたピストン20と、リング溝20aに嵌合され、ピストン20の往復動によってシリンダボア5aと摺接するピストンリング20bとを備えている。シリンダボア5aとピストン20との間には潤滑油が供給されない。ピストンリング20bはPTFEを主体としている。シリンダボア5aの内周面には、バインダ樹脂、PTFE粉末及び無機充填材を含有する摺動層5bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダボアとピストンとの間に潤滑油が供給されない無給油式往復動型圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
往復動型圧縮機は、シリンダボアが形成されたハウジングと、シリンダボア内を往復動するピストンとを備えている。この種の圧縮機において、ピストンの外周面にリング溝が形成され、リング溝にピストンリングが嵌合されることがある。ピストンリングは、ピストンの往復動によってシリンダボアと摺接する。
【0003】
シリンダボアとピストンとの間に潤滑油が供給されない無給油式往復動型圧縮機の場合、アルマイト又は鋳鉄によってシリンダボアを形成するとともに、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を主体とするピストンリングが採用され得る(例えば、特許文献1〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−252507号公報
【特許文献2】特開2005−248729号公報
【特許文献3】特開平11−270680号公報
【特許文献4】特開2009−63174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、無給油式往復動型圧縮機において、金属製のシリンダボアに対し、PTFEを主体とするピストンリングを摺動させると、ピストンリングが大きく摩耗する。このため、長期の使用によってシリンダボア内をピストンが直接摺動することもあり、圧縮機の耐久性が懸念される。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、優れた耐久性を発揮可能な無給油式往復動型圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無給油式往復動型圧縮機は、シリンダボアが形成されたハウジングと、該シリンダボア内を往復動し、外周面にリング溝が形成されたピストンと、該リング溝に嵌合され、該ピストンの往復動によって該シリンダボアと摺接するピストンリングとを備え、該シリンダボアと該ピストンとの間に潤滑油が供給されない無給油式往復動型圧縮機において、
前記ピストンリングはPTFEを主体とし、
前記シリンダボアの内周面には、バインダ樹脂、PTFE粉末及び無機充填材を含有する摺動層が形成されていることを特徴とする(請求項1)。
【0008】
本発明の無給油式往復動型圧縮機では、ピストンがシリンダボア内を往復動すると、シリンダボアとピストンとの間に潤滑油が供給されない状態の下、PTFEを主体とするピストンリングがバインダ樹脂、PTFE粉末及び無機充填材を含有する摺動層上を摺動する。
【0009】
PTFE同士の摺動は、特開2007−246836号等に記載されているように、相手材に自己のPTFEを移着させて摩擦係数を下げるとともに、摩耗量を少なくする。また、PTFEを主体とするピストンリング等の摺動部材は、充填材の種類によって摩擦特性、摩耗特性に特徴が発揮されることも知られている(三菱電線工業時報「充てん材による四ふっ化エチレン樹脂の摩擦・摩耗挙動への影響について」松浦王昭及び加納康司著、2004年4月)。
【0010】
しかしながら、本発明に係るピストンリングと摺動層との間の摺動時の挙動、両者による摩擦特性及び摩耗特性等は知られていない。発明者らは、無給油式往復動型圧縮機において、本発明に係るピストンリング及び摺動層を採用することにより、ピストンリング及び摺動層が低い摩擦係数を発揮しつつ実用的に少ない摩耗量を実現できることを発見し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、上記公知の技術からすれば、PTFE同士の摺動を無給油式往復動型圧縮機に採用した場合、つまり、無給油式往復動型圧縮機において、PTFEを主体とするピストンリングを採用しつつ、シリンダボアの内周面にPTFEからなる摺動層を形成した場合には、PTFE同士の摺動と同様、相手材に自己のPTFEを移着させて摩擦係数を下げることは可能であると考えられる。しかし、発明者らの試験結果によれば、この場合には、ピストンリング及び摺動層の摩耗量が無給油式往復動型圧縮機としては依然として多い。PTFEを主体とするピストンリングは摩耗量の減少、圧縮特性の向上、剛性の上昇、熱的寸法安定性の向上、硬度の上昇等を目的として銅系粉末等が含まれるため、摺動層がPTFEだけからなる場合には、摺動層の耐摩耗性が十分でなく、摺動層が大きく摩耗するとともに、PTFE同士のなじみ効果が打ち消されてピストンリングも大きく摩耗したものと考えられる。
【0012】
この点、本発明の無給油式往復動型圧縮機では、摺動層中において、無機充填材がバインダ樹脂によって結合されている。このため、摺動層の耐摩耗性が向上し、摺動層が摩耗し難くなっているとともに、PTFE同士のなじみ効果が維持されてピストンリングも摩耗し難くなっているものと考えられる。特に、摺動層中のPTFE粉末がバインダ樹脂によって結合されていることから、相手材であるピストンリングへの移着量がバインダ樹脂によって制御され、PTFE同士のなじみ効果が維持され易いと考えられる。
【0013】
したがって、本発明の無給油式往復動型圧縮機では、ピストンリング及び摺動層が低い摩擦係数を発揮しつつ実用的に少ない摩耗量を実現し、優れた耐久性を発揮することが可能である。
【0014】
本発明の無給油式往復動型圧縮機において、ピストンリングはPTFEを主体とするものであれば、種々のものが適宜選択され得る。PTFEが主体とは、PTFEが40質量%以上含有され、銅系粉末等の充填材が60質量%未満であることをいう。充填材としては、銅系粉末の他、ガラス繊維、カーボン又はグラファイト、カーボン繊維、二硫化モリブデン(MoS2)、耐熱性樹脂、着色料、カップリング剤等が採用され得る。
【0015】
発明者らの試験結果によれば、摺動層はカップリング剤を含有していることが好ましい(請求項2)。カップリング剤がバインダ樹脂とPTFE粉末又は無機充填材との結合力を安定させるためであると考えられる。
【0016】
カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤等を採用することができる。発明者らの試験結果によれば、カップリング剤として、シランカップリング剤を採用することが好ましい。シランカップリング剤としては、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、特殊アミノシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等を採用することができる。
【0017】
本発明の無給油式往復動型圧縮機において、バインダ樹脂及び無機充填材は種々のものが適宜選択され得る。バインダ樹脂としては、ポリアミドイミド及びポリイミド等からなるポリイミド系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の耐熱性に優れたものを採用することができる。コスト及びバインダ樹脂としての特性を考慮すると、ポリアミドイミドが最適である。摺動層用塗料組成物はこれらのバインダ樹脂の未硬化のものを用いる。無機充填材としては、TiO2粉末、MoS2粉末、グラファイト粉末、CaF2粉末、Al23粉末、SiO2粉末、SiC粉末等を採用することができる。
【0018】
発明者らの試験結果によれば、バインダ樹脂はポリアミドイミドであり、無機充填材は、TiO2粉末及びCaF2粉末の少なくとも1種であることが好ましい(請求項3)。発明者らの試験結果によれば、特に、無機充填材はTiO2粉末を有することが好ましい(請求項4)。TiO2粉末を無機充填材として用いた摺動層は耐摩耗性及び耐焼付き性の点で良好である。これは、特にTiO2粉末はバインダ樹脂への分散性が優れていることから、摺動層の表面平滑性及びPTFE粒子の脱落防止において優れた効果を発揮することにより、耐摩耗性の向上が著しいと考えられる。なお、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型のいずれのTiO2粉末も採用することもできるが、光触媒作用によるバインダ樹脂の劣化及びコストを考慮すると、ルチル型のTiO2粉末が最適である。
【0019】
発明者らの試験結果によれば、摺動層は、PTFE粉末の質量/バインダ樹脂の質量が0.2〜0.4であることが好ましい(請求項5)。PTFE粉末の質量/バインダ樹脂の質量(以下、P/Bと記載する。)が0.2未満では、PTFE同士の摺動による摩擦係数の低減効果が得られ難く、ピストンリングの摩耗量が大きい。また、この場合、ピストンリングの充填材が表面に現れてシリンダボアの摺動層が引っ掛かれ易いため、摺動層も摩耗し易い。P/Bが0.4を超えると、摺動層が軟質になって摩耗し易く、摩耗した部分にピストンリングの摩耗粉が貯まり、その摩耗粉がピストンリングを攻撃し、ピストンリングも摩耗し易い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例の無給油式往復動型圧縮機の全体を示す断面図である。
【図2】実施例の無給油式往復動型圧縮機の一部を拡大して示す拡大断面図である。
【図3】試験1〜3で使用した試験装置を示し、図(A)は側面図、図(B)は上面図である。
【図4】試験1に係り、試験品毎のピストンリングの摩耗量と摺動層の摩耗量とを示すグラフである。
【図5】試験2に係り、P/Bとピストンリングの摩耗量との関係を示すグラフである。
【図6】試験2に係り、P/Bと摺動層の摩耗量との関係を示すグラフである。
【図7】試験3に係り、カップリング剤の有無とピストンリング及び摺動層の摩耗量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施例)
以下、本発明の無給油式往復動型圧縮機を多段圧縮機に具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0022】
実施例の多段圧縮機は、図1に示すように、3段に気体を圧縮するものである。この多段圧縮機は、カムケース1と、第1〜3エンドプレート2〜4と、第1〜3シリンダブロック5〜7と、第1〜3シリンダヘッド8〜10とを備えている。カムケース1、第1〜3エンドプレート2〜4、第1〜3シリンダブロック5〜7及び第1〜3シリンダヘッド8〜10がハウジングである。
【0023】
カムケース1は中心軸線Oに直交する断面で見てY字形状をしており、その内部には同じくY字形状のカム室1aが形成されている。カム室1a内には、中心軸線Oに沿って延びる駆動軸11が図示しないモータによって回転可能に設けられており、駆動軸11には中心軸線O回りに回転可能なカム12が固定されている。カム12の外周面がプロフィールとされている。
【0024】
中心軸線Oから放射方向に延びるカムケース1の三つの先端にはそれぞれ第1〜3エンドプレート2〜4を介して第1〜3シリンダブロック5〜7が固定されている。
【0025】
図2に示すように、第1エンドプレート2にはボス2aがカム室1aに向かって形成されており、ボス2aには中心軸線Oから離れる方向に延びる軸孔2bが貫設されている。第1シリンダブロック5には軸孔2bと同心で中心軸線Oから離れる方向に延びる第1シリンダボア5aが貫設されている。
【0026】
第1シリンダブロック5の先端には、第1弁ユニット13を介して第1シリンダヘッド8が接合されている。第1弁ユニット13は、吸入ポート14a及び吐出ポート14bが貫設された弁板14と、第1シリンダボア5a側で弁板14に当接されて吸入ポート14aを閉じ得る吸入弁15と、第1シリンダボア5aとは逆側で弁板14に当接されて吐出ポート14bを閉じ得る吐出弁16とからなる。吸入弁15及び吐出弁16は差圧によって弾性変形するようになっている。
【0027】
第1シリンダヘッド8には、第1吸入室8a及び第1吐出室8bが形成されている。第1吸入室8aは吸入ポート14a及び吸入弁15を介して第1シリンダボア5aと連通するようになっている。第1吐出室8bは吐出弁16及び吐出ポート14bを介して第1シリンダボア5aと連通するようになっている。
【0028】
第1エンドプレート2の軸孔2b内には、第1ピストンロッド17が往復動可能に収納されており、軸孔2bと第1ピストンロッド17との間には軸封装置41が設けられている。第1ピストンロッド17の一端にはカム12と摺接する第1フランジ18が固定されており、第1ピストンロッド17の他端には第1ピストンヘッド19が固定されている。第1ピストンヘッド19、第1ピストンロッド17及び第1フランジ18によって第1ピストン20が構成されている。
【0029】
第1フランジ18には、ばね座18aが形成されており、第1エンドプレート2とばね座18aとの間には、第1ピストン20を下死点側に付勢する第1コイルばね21が設けられている。第1シリンダボア5aにおける第1ピストンヘッド19と第1弁ユニット13との間が第1圧縮室22とされている。
【0030】
第1ピストンヘッド19の外周面には第1リング溝20aが凹設されており、第1リング溝19aには第1ピストンリング20bが嵌合されている。第1ピストンリング20bは、PTFEを主体とし、銅系粉末等を充填材として含有するものである。これら第1リング溝20a及び第1ピストンリング20bは1条には限られない。
【0031】
第1シリンダボア5aの内周面には第1摺動層5bが形成されている。第1摺動層5bは、バインダ樹脂、PTFE粉末、無機充填材及びカップリング剤を含有する摺動層用塗料組成物を第1シリンダボア5aの内周面に塗布し、硬化させたものである。バインダ樹脂としてはポリアミドイミドを採用し、無機充填材としてはTiO2粉末を採用し、カップリング剤としてはシランカップリング剤を採用している。
【0032】
図1に示す第2、3エンドプレート3、4、第2、3シリンダブロック6、7、第2、3シリンダボア6a、7a、第2、3シリンダヘッド9、10、第2、3弁ユニット23、24、第2、3ピストン25、26、第2、3リング溝25a、26a、第2、3ピストンリング25b、26b、第2、3摺動層6b、7b及び第2、3コイルばね27、28もそれぞれ上記と同様の構成である。そして、第2、3ピストン25、26と第2、3弁ユニット23、24との間は、それぞれ第2、3圧縮室29、30とされている。第2圧縮室29は、第2弁ユニット23を介して第2吸入室9a及び第2吐出室9bと連通している。第3圧縮室30は、第3弁ユニット24を介して第3吸入室10a及び第3吐出室10bと連通している。
【0033】
この多段圧縮機では、第1〜3ピストン20、25、26のストロークは同じであるが、前段から後段に向けて順に第1〜3圧縮室22、29、30の容積が小さくなっている。つまり、この多段圧縮機では、第1圧縮室22における気体の圧縮行程が第1段目の圧縮行程となり、第2圧縮室29における気体の圧縮行程が第2段目の圧縮行程となり、第3圧縮室30における気体の圧縮行程が最終である第3段目の圧縮行程となる。また、第1〜3シリンダボア5a〜7aは、それぞれカム12の回転方向に沿って、所定の角度で配置されている。
【0034】
第1吸入室8aには、図示しない気体の供給元であるボンベ等から延びる吸入管101が接続されている。また、第1吐出室8bと第2吸入室9aとは配管102によって接続されている。さらに、第2吐出室9bと第3吸入室10aとは配管103によって接続されている。そして、第3吐出室10bには吐出管104が接続されており、吐出管104は図示しない気体の供給先へと接続されている。
【0035】
以上のように構成された多段圧縮機では、カム12が1回転する間に、例えば天然ガス等の気体が第1圧縮室22で昇圧され、第2圧縮室29でさらに昇圧され、第3圧縮室30でさらに昇圧される。こうして、第1〜3圧縮室22、29、30が3段に気体を圧縮する。
【0036】
この間、この多段圧縮機では、第1〜3ピストン20、25、26が第1〜3シリンダボア5a〜7a内を往復動すると、第1〜3シリンダボア5a〜7aと第1〜3ピストン20、25、26との間に潤滑油が供給されない状態の下、第1〜3ピストンリング20b、25b、26bが第1〜3摺動層5b、6b、7b上を摺動する。ここで、この多段圧縮機では、第1〜3ピストンリング20b、25b、26b及び第1〜3摺動層5b、6b、7bが特定のものであるため、第1〜3ピストンリング20b、25b、26b及び第1〜3摺動層5b、6b、7bが低い摩擦係数を発揮しつつ実用的に少ない摩耗量を実現する。
【0037】
したがって、この多段圧縮機では、優れた耐久性を発揮することが可能である。
【0038】
(試験1)
図3(A)及び(B)に示す試験装置を用い、ピストンリングの摩耗量及び摺動層の摩耗量を測定した。試験装置は、試験品1〜7の摺動層を相手材51として固定した固定具52と、PTFEを主体とし、銅系粉末等を充填材として含有するピストンリング53を保持した保持具54とからなる。相手材51の摺動面51aはφ43(mm)の円弧状に形成されている。
【0039】
試験品1はバインダ樹脂、TiO2粉末、CaF2粉末及びシランカップリング剤からなるものであり、試験品2〜5はバインダ樹脂、PTFE粉末、TiO2粉末、CaF2粉末及びシランカップリング剤からなるものであり、試験品6はアルミニウム合金(AHS−T6)であり、試験品7はバインダ樹脂、PTFE粉末、TiO2粉末及びCaF2粉末からなるものである。表1に試験品1〜5、7の組成を示す。
【0040】
【表1】

【0041】
ピストンリング53と相手材51との間の荷重100N(面圧3.5MPa)、ピストンリング53と相手材51との間の摺速0.67m/秒、ピストンリング53と相手材51との間の温度120°Cの条件で試験を行い、4時間後のピストンリング53の摩耗量(μm)及び摺動層の摩耗量(μm)を確認した。結果を図4及び表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
図4及び表2より、試験品2〜5、7の摺動層では、試験品1、6の摺動層と比較し、ピストンリングの摩耗量が大きく低減されることがわかった。
【0044】
(試験2)
試験1の結果をPTFE粉末の質量/バインダ樹脂の質量(P/B)で評価した。結果を図5及び図6に示す。
【0045】
図5及び図6より、摺動層はP/Bが0.2〜0.4であることが好ましいことがわかる。
【0046】
(試験3)
また、カップリング剤による効果をさらに確認するため、P/B=0.4である試験品4の摺動層と、試験品4からシランカップリング剤を抜いた試験品7の摺動層とを用意し、同様にピストンリング53の摩耗量(μm)及び摺動層の摩耗量(μm)を求めた。結果を図7に示す。
【0047】
図7より、試験品4の組成において、カップリング剤の有無がピストンリング及び摺動層の耐摩耗性に寄与することがわかる。
【0048】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、天然ガスの充填装置等に利用可能な圧縮機に利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
5a、6a、7a…シリンダボア
1、2〜4、5〜7、8〜10…ハウジング
20a、25a、26a…リング溝
20、25、26…ピストン
20b、25b、26b…ピストンリング
5b、6b、7b…摺動層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダボアが形成されたハウジングと、該シリンダボア内を往復動し、外周面にリング溝が形成されたピストンと、該リング溝に嵌合され、該ピストンの往復動によって該シリンダボアと摺接するピストンリングとを備え、該シリンダボアと該ピストンとの間に潤滑油が供給されない無給油式往復動型圧縮機において、
前記ピストンリングはPTFEを主体とし、
前記シリンダボアの内周面には、バインダ樹脂、PTFE粉末及び無機充填材を含有する摺動層が形成されていることを特徴とする無給油式往復動型圧縮機。
【請求項2】
前記摺動層はカップリング剤を含有している請求項1記載の無給油式往復動型圧縮機。
【請求項3】
前記バインダ樹脂はポリアミドイミドであり、前記無機充填材は、TiO2粉末及びCaF2粉末の少なくとも1種である請求項1又は2記載の無給油式往復動型圧縮機。
【請求項4】
前記無機充填材はTiO2粉末を有する請求項3記載の無給油式往復動型圧縮機。
【請求項5】
前記摺動層は、前記PTFE粉末の質量/前記バインダ樹脂の質量が0.2〜0.4である請求項1乃至4のいずれか1項記載の無給油式往復動型圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−31756(P2012−31756A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170386(P2010−170386)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】