説明

無線アクセスポイント装置、無線通信装置及び無線通信システム

【課題】無線通信システム全体として効率的に電波干渉を回避し、電波干渉の影響を防止できるようにする。
【解決手段】本発明の無線アクセスポイント装置は、複数の周波数帯域のそれぞれを時分割して送信区域を形成し、複数の無線通信装置に送信区域を割り当てる。無線アクセスポイント装置は、それぞれ割り当てられた送信区域の周波数帯域を利用して各無線通信装置が無線通信した受信信号に基づいて、各無線通信装置からの通信品質値を管理し、各無線通信装置の通信品質値に基づいて、各無線通信装置に割り当てた送信区域の割当構成を再構築する送信区域割当再構築手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線アクセスポイント装置、無線通信装置及び無線通信システムに関するものである。例えば、本発明は、特定の位置に固定された複数の無線端末を有して構成される集中制御型の無線通信システムにおいて、電波干渉を軽減させる無線アクセスポイント装置、無線通信装置に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電波干渉を回避する技術の1つにキャリアセンス方式がある。キャリアセンス方式は、通信開始前に、無線通信装置が、自己の無線通信システムと同一周波数帯域が空いているか否かを確認するものである。
【0003】
キャリアセンス方式は、キャリセンス期間中にのみ無線通信装置がキャリアセンスを行ない、それ以外の他の期間で、無線通信装置はキャリアセンスを行なわない。
【0004】
そのため、自己の無線通信システムが、通信可能状態にあり、かつ、実際に通信を行なっていない期間に、他の無線通信システムがキャリアセンスを行なうと、自己の無線通信システムで使用すべき周波数帯域が空いていると判断されてしまうことがある。
【0005】
その結果、他の無線通信システムは、自己の無線通信システムの周波数帯域を利用して通信を開始し、電波干渉が生じ得る。このとき、電波干渉が生じてしまうと、伝送効率が著しく低下するという問題がある。
【0006】
特に、TDMA(Time Division Multiple Access)方式を採用する無線通信システムは、電波干渉の影響を顕著に受ける。これは、TDMA方式を採用した無線通信システムは、あらかじめタイムスロットと呼ばれる論理的な送信区間が、無線通信装置(以下、ST(ステーションターミナル)ともいう)に割り当てられており、各STは、自己のタイムスロット期間にデータ送信を行なう。しかし、自己のタイムスロット期間以外(すなわち、空タイムスロット)で、各STはデータ送信を行なわないため、空タイムスロット期間に、その周波数帯域について、他の無線通信システムによる割り込みが発生し、電波干渉が発生してしまうからである(図1参照)。
【0007】
このような問題に対して、特許文献1には、自己の通信システムにおける空タイムスロット区間において、管理端末(AP(アクセスポイント)ともいう)がダミー信号を送信することで、擬似的な電波が送信され、他の無線通信システムのキャリアセンスによる割り込みをさせないという方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−158764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の記載技術は、同一周波数帯域を使用する他の無線通信システムとの間の電波干渉を防止することを主眼においており、複数周波数帯域(チャネル)を利用する無線通信システムに対応した方法としては技術的に十分とはいえない。
【0010】
つまり、複数の周波数帯域を利用する無線通信システムでは、ある周波数帯域に生じ得る電波干渉を回避するだけでなく、複数の周波数帯域のそれぞれの利用状況を把握しながら、システム全体で電波干渉の回避を考慮する必要がある。
【0011】
そのため、複数の周波数帯域を利用して無線通信を行なう無線通信システムにおいて、システム全体として効率的に電波干渉を回避し、電波干渉の影響を防止できるようにする無線アクセスポイント装置、無線通信装置及び無線通信システムが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決するために、第1の本発明は、(1)複数の周波数帯域のそれぞれを時分割して送信区域を形成し、複数の無線通信装置に送信区域を割り当てる送信区域割当手段と、(2)それぞれ割り当てられた送信区域の周波数帯域を利用して各無線通信装置が無線通信した受信信号に基づいて、各無線通信装置からの通信品質値を管理する通信品質管理手段と、(3)通信品質管理手段の各無線通信装置の通信品質値に基づいて、各無線通信装置に割り当てた送信区域の割当構成を再構築する送信区域割当再構築手段とを備えることを特徴とする無線アクセスポイント装置である。
【0013】
第2の本発明は、複数の周波数帯域のそれぞれを時分割して送信区域を形成し、複数の無線通信装置に送信区域を割り当てる無線アクセスポイント装置と無線通信する無線通信装置において、無線アクセスポイント装置により割り当てられた送信区間に指示された通信チャネルを用いてデータ通信を行なうデータ通信手段を備えることを特徴とする無線通信装置である。
【0014】
第3の本発明は、複数の無線通信装置と、1又は複数の無線アクセスポイント装置とを備える無線通信システムにおいて、各無線アクセスポイント装置が、第1の本発明の無線アクセスポイント装置に相当するものであり、各無線通信装置が、第2の本発明の無線通信装置に相当するものであることを特徴とする無線通信システムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数の周波数帯域を利用して無線通信を行なう無線通信システムにおいて、システム全体として効率的に電波干渉を回避し、電波干渉の影響を防止できるようにする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】複数のSTに対してスロットを割り当てた状況を説明する説明図である。
【図2】実施形態に係る無線通信システムの全体構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態の無線通信システムが採用する多元接続方式を説明する説明図である。
【図4】実施形態のAPの内部構成を示すブロック図である。
【図5】実施形態のSTの内部構成を示すブロック図である。
【図6】通信チャネル指示制御パケットのフォーマットを説明する説明図である。
【図7】通信チャネル指示ACK制御パケットのフォーマットを説明する説明図である。
【図8】電池残量確認指示制御パケットのフォーマットを説明する説明図である。
【図9】電池残量確認制御パケットのフォーマットを説明する説明図である。
【図10】STデータパケットのフォーマットを説明する説明図である。
【図11】実施形態の無線通信システムの構成例を示す図である。
【図12】実施形態の無線通信システムの基本的な通信手順を説明する説明図である。
【図13】実施形態の占有時間拡張処理を示すフローチャートである。
【図14】実施形態の通信品質管理テーブルの構成を説明する説明図である。
【図15】実施形態のST管理テーブルの構成を説明する説明図である。
【図16】実施形態の各STの電池残量値テーブルの構成を説明する説明図である。
【図17】実施形態の順位付け後の並び替えたテーブルを説明する説明図である。
【図18】実施形態の占有時間拡張処理を説明する説明図である。
【図19】実施形態の占有周波数拡張処理を示すフローチャートである。
【図20】実施形態の占有周波数拡張処理を説明する説明図である。
【図21】実施形態のスロット位置変更処理を示すフローチャートである。
【図22】実施形態のスロット位置変更処理を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(A)主たる実施形態
以下では、本発明の無線アクセスポイント装置、無線通信装置及び無線通信システムの実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0018】
この実施形態は、例えばICT(Information and Communication Technology)機器内等のように狭小かつ複雑な空間に、1又は複数の無線通信装置(以下「ST」ともいう)を固定的に配置させ、これら無線通信装置と無線アクセスポイント装置(以下、「AP」ともいう)との間でなされる無線通信システムに、本発明を適用した実施形態を例示する。
【0019】
(A−1)実施形態の構成
図2は、実施形態に係る無線通信システム1の全体構成を示すブロック図である。図2において、この実施形態の無線通信システム1は、AP10と、複数のST20(20−1〜20−n:nは正の整数)とを有して構成される。
【0020】
AP10は、それぞれのST20との間で無線通信を行なう無線アクセスポイント装置である。AP10は、各ST20との間で無線通信を行なうことができれば、例えば、ICT機器内に配置されるようにしてもよいし、ICT機器付近に配置されないようにしてもよい。この実施形態では、ICT機器内にAP10が固定的に配置されている場合を想定して説明する。
【0021】
AP10は、各ST20に対して通信チャネルを割り当て、その割り当てた通信チャネルを各ST20に指示すると共に、各ST20に対して送信タイミングを指示するものである。AP10は、1台のST20に対して複数の通信チャネルを割り当てるようにしてもよい。例えば、通信チャネルには、通信チャネル識別情報(例えば、番号等)で付されており、AP10は、各ST20に割り当てた通信チャネルを管理する。なお、図2では、AP10が、複数のST20を管理する場合を例示するが、単一のST20を管理するようにしてもよい。
【0022】
ST20は、AP10により割り当てられた1又は複数の通信チャネルを利用し、AP10から指示されたタイミングで送信すべきデータを無線通信する無線通信装置である。例えば、ST20は、ICT機器内に固定的に配置され、ICT機器内にある装置やセンサ等からのデータを無線通信するものである。また、ST20は、AP10から複数の通信チャネルの割り当てを受け、それぞれの通信チャネルを用いて、それぞれ指示されたタイミングで無線通信を行なう。
【0023】
なお、図2では、記載の便宜上、ST20が、1台のAP10と接続する場合を例示するが、複数のAP10と接続するようにしてもよい。また、ST20は、1又は複数の他のST20との間で無線通信を行なうようしてもよい。
【0024】
図3は、この実施形態の無線通信システム1が採用する多元接続方式を説明する説明図である。
【0025】
無線通信システム1は、AP10と各ST20との間の通信について、FTDMA(Frequency and Time Division Multiple Access)方式を採用する。FTDMA方式とは、周波数帯域と時間領域を分割して、各ユーザに割り当てることで実現する多元接続方式である。
【0026】
無線通信システム1が採用する多元接続方式は、通信媒体である周波数帯域及び時間領域をスロットと呼ばれる領域に分け、それぞれのスロットをいずれかのST20に割り当て、各ST20は、割り当てられたスロットを利用して通信を行なう方式である。
【0027】
例えば、図3に示すように、無線通信システム1が、4個の周波数帯域を通信チャネルCH1〜CH4とするとき、それぞれの通信チャネルCH1〜CH4を時間領域で区分し、この区分された領域をスロットとする。
【0028】
例えば、通信チャネルCH1を所定時間毎に区分して、4個のスロット「Slot1」、「Slot2」、「Slot3」、「Slot4」を形成する。1個のスロットは1台のST20の送信区間として割り当てられる。従って、例えば、通信チャネルCH1の「Slot1」がST20に割り当てられると、当該ST20は、通信チャネルCH1の周波数帯域を利用して、「Slot1」の時間領域でデータ送信を行なう。
【0029】
図3の例では、各通信チャネルCH1〜CH4について区分した4個のスロットを1サイクルとする。1サイクル経過後、各通信チャネルCH1〜CH4の各スロットが繰り返し利用される。
【0030】
なお、通信チャネル数及び1スロットを区分する時間は、特に限定されるものではない。また、1サイクルとするスロット数も、特に限定されるものではない。
【0031】
図4は、AP10の内部構成を示すブロック図である。例えば、AP10は、CPU、ROM、RAM、EEPROM、入出力インタフェース等を有する回路装置からなり、CPUが、ROMに格納された通信プログラムを実行することで、AP10の各種機能が実現される。なお、AP10が実行する通信プログラムは、外部からインストールされるものであってもよい。
【0032】
図4において、AP10は、送信部11、受信部12、送受信制御部13、チャネル制御部14、メモリ部15、電源16、外部インタフェース部17を有する。
【0033】
ここで、送信部11、受信部12及び送受信制御部13は、AP10における無線通信インタフェースの機能を担っている。送信部11、受信部12及び送受信制御部13は、例えば、IEEE802.11に規定されている無線通信フォーマットのフレーム送受信を行なう送受信装置と同等のものを適用することができる。
【0034】
送信部11は、送受信制御部13からデータあるいは指示を受けて、該当するパケットを生成し、送信信号を変調し、空中に電波を送信するものである。
【0035】
受信部12は、空中から電波を受信し、所定方式により電波を復調し、復調信号に基づいてパケットを復元し、送受信制御部13にデータを与えるものである。
【0036】
送受信制御部13は、外部インタフェース部17から受け取ったデータを送信部11に与えたり、受信部12から受け取ったデータを外部インタフェース部17に与えたりするものである。
【0037】
また、送受信制御部13は、チャネル制御部14から制御パケットの送信指示が与えられると、当該制御パケットの送信指示を送信部11に与えるものである。さらに、送受信部制御部13は、受信部12が制御パケットを受信した場合には、その制御パケットに含まれる情報をチャネル制御部14に与えるものである。
【0038】
チャネル制御部14は、各ST20に割り当てる通信チャネル(スロット)の選定を行なうものである。チャネル制御部14は、各ST20の通信チャネル(スロット)を管理するものである。
【0039】
ここで、チャネル制御部14が各ST20に対して割り当てる通信チャネルの選定方法は、特に限定されるものではなく、種々の方法を適用することができる。
【0040】
例えば、チャネル制御部14は、全ての通信チャネルについて各ST20との間の通信品質を測定し、メモリ部15の通信品質管理テーブル151に、測定した全ての通信チャネルの通信品質の情報をST20毎に格納する。通信品質管理テーブル151には、最新の通信品質の情報が格納されるようにする。チャネル制御部14は、通信品質管理テーブル151に格納される各ST20の通信チャネルの通信品質の情報に基づいて、各ST20との間の無線通信の通信品質が良好となる通信チャネルを評価する。チャネル制御部14は、通信品質の評価の高い順に、各ST20の通信チャネルを決定する方法を適用することができる。また、チャネル制御部14は、通信品質管理テーブル151に格納されたST20毎の通信チャネルの通信品質の情報に基づいて、各ST20に割り当てた通信チャネル(スロット)をST管理テーブル152に格納する。そして、チャネル制御部14は、ST管理テーブル152に格納された各ST20の通信チャネル(スロット)に基づいて、送受信制御部13に送信すべきことを指示する。
【0041】
また、チャネル制御部14は、各ST20に対して割り当てる通信チャネルの再構築を行なうものである。
【0042】
ここで、通信チャネル再構築の方法は、後述する動作の項で詳細に説明するが、チャネル制御部14は、例えば、各通信チャネルの周波数帯域及び時間領域で形成されるスロット群全体で、空きスロットが減少するように、スロットの割り当てを行なう方法を適用することができる。これにより、全体的にスロットの空き時間が減少するので、他の無線通信システムによる割り込みが減少し、システム全体で電波干渉を回避することができる。
【0043】
メモリ部15は、チャネル制御部14の処理で使用される情報等を格納する記憶手段である。メモリ部15は、通信品質管理テーブル151、ST管理テーブル152を記憶する。
【0044】
通信品質管理テーブル151は、全ての通信チャネルの通信品質を示す情報を、ST20毎に格納した管理テーブルである。
【0045】
ST管理テーブル152は、各ST20に割り当てた通信チャネルの番号、送信電力値等を格納した管理テーブルである。
【0046】
外部インタフェース部17は、例えば、パーソナルコンピュータ(PC)やセンサ等の外部装置30と接続する接続インタフェース部である。外部インタフェース部17は、外部装置30から受け取ったデータを送受信制御部13に与えたり、又送受信制御部13から受け取ったデータを外部装置30に与えたりするものである。
【0047】
電源部16は、AP10の各モジュール(各構成要素)に電源電力を供給するものである。電源部16は、例えばACアダプタ等を適用することができる。また、電源部16は、各モジュールに電力を供給することができれば、例えば、1次電池、2次電池、燃料電池等の電池であってもよい。
【0048】
図5は、ST20の内部構成を示すブロック図である。例えば、ST20は、CPU、ROM、RAM、EEPROM、入出力インタフェース等を有する回路装置からなり、CPUが、ROMに格納された通信プログラムを実行することで、ST20の各種機能が実現される。なお、ST20が実行する通信プログラムは、外部からインストールされるものであってもよい。
【0049】
図5において、ST20は、送信部21、受信部22、送受信制御部23、チャネル制御部24、メモリ部25、電源部26、電池残量確認部27、外部インタフェース部28を有する。
【0050】
送信部21、受信部22及び送受信制御部23は、ST20における無線通信インタフェースの機能を担っている。送信部21、受信部22及び送受信制御部23は、例えば、IEEE802.11に規定されている無線通信フォーマットのフレーム送受信を行なう送受信装置と同等のものを適用することができる。
【0051】
送信部21は、送受信制御部23からデータあるいは指示を受けて、該当するパケットを生成し、送信信号を変調し、空中に電波を送信するものである。
【0052】
受信部22は、空中から電波を受信し、所定方式により電波を復調し、復調信号に基づいてパケットを復元し、送受信制御部23にデータを与えるものである。
【0053】
送受信制御部23は、外部インタフェース部28から受け取ったデータを送信部21に与えたり、受信部22から受け取ったデータを外部インタフェース部28に与えたりするものである。
【0054】
送受信制御部23は、後述するチャネル制御部24の制御の下、自身に割り当てられた通信チャネル(スロット)の割当態様に応じて、誤り訂正の強度を制御するものである。誤り訂正の強度制御については、動作の項で詳細に説明するが、スロットの割当態様によっては、1サイクルにおけるスロットの占有度が比較的多くなる場合もある。その場合には、通信品質を維持するため、送受信制御部23は、誤り訂正の強度が強くなるように制御する。
【0055】
また、送受信制御部23は、チャネル制御部24から制御パケットの送信指示が与えられると、当該制御パケットの送信指示を送信部11に与えるものである。さらに、送受信部制御部23は、受信部22が制御パケットを受信した場合には、その制御パケットに含まれる情報をチャネル制御部24に与えるものである。
【0056】
また、送信制御部23は、送信電力制御部231を有する。送信電力制御部231は、パケット送信電力値がAP10から指示された送信電力値となるように調整するものである。
【0057】
チャネル制御部24は、送受信制御部23に対して、パケットの通信チャネル等を制御するものである。チャネル制御部24は、AP10から受信した制御パケットに含まれている通信チャネル等を保持し、この通信チャネル等を利用してパケット送信させる。
【0058】
メモリ部25は、自己に割り当てられた通信チャネルの識別情報、送信電力値、電池残量確認部27により確認された最新の電池残量等を記憶するものである。
【0059】
電源部26は、ST20の各モジュール(各構成要素)に対して電源電力を供給するものである。例えば、電源部26は、1次電池、2次電池、燃料電池等の電池や、ACアダプタ等を適用することができる。この実施形態では、電源部26が電池である場合を想定して説明する。
【0060】
電池残量確認部27は、電源部26である電池の残量を確認し、メモリ部25の電池残量の欄に情報を格納するものである。また、電池残量確認部27は、AP10から電池残量確認指示制御パケットを受けると、メモリ部25から電池残量の情報を取得し、電池残量確認ACK制御パケットのペイロードに該情報を格納し、送受信制御部23にパケット送信の指示をする。
【0061】
外部インタエース部28は、例えばPCやセンサ等の外部装置40と接続する接続インタフェース部である。外部インタフェース部28は、外部装置40から受け取ったデータを送受信制御部23に与えたり、又、送受信部23から受け取ったデータを外部装置40に与えたりするものである。
【0062】
図6〜図10は、この実施形態で利用される各制御パケットのフォーマットを説明する説明図である。
【0063】
図6は、AP10から各ST20に対して送信される通信チャネル指示制御パケットの構成を説明する説明図である。
【0064】
通信チャネル指示制御パケットは、AP10から各ST20に送信されるものである。通信チャネル指示制御パケットは、AP10が最初に割り当てた通信チャネルを指示するときだけでなく、AP10が通信チャネル再構築を行なったときにも送信されるものである。
【0065】
通信チャネル指示制御パケットは、「制御フィールド」、「パケットタイプ」、「APアドレス」、「STアドレス」、「通信チャネル番号」を有して構成される。
【0066】
「制御フィールド」は、一般の無線通信に必要な各種制御フィールドが設定されるものである。
【0067】
「パケットタイプ」は、パケット種類を識別する番号が設定されるものであう。例えば、ここでは、通信チャネル指示制御パケットのパケットタイプが「パケットタイプ=1」であるとする。
【0068】
「APアドレス」は、AP10のアドレス情報(例えば、MACアドレス等)が設定されるものである。
【0069】
「STアドレス」は、送信先のST20のアドレス情報(例えば、MACアドレス等)が設定されるものである。
【0070】
「通信チャネル番号」は、AP10が送信先のST20に対して割り当てた1又は複数の通信チャネルの識別情報が設定されるものである。例えば、AP10が送信先のST20に対して通信チャネルCH1を割り当てる場合、「1」が「通信チャネル番号」に設定される。
【0071】
また、「通信チャネル番号」は、AP10がスロット変更により通信チャネルを変更した場合に、その変更後の通信チャネル番号が設定される。
【0072】
図7は、ST20からAP10に対して送信される通信チャネル指示ACK制御パケットのフォーマットを説明する説明図である。
【0073】
通信チャネル指示ACK制御パケットは、通信チャネル指示制御パケットを受信したST20がAP10に対して送信するものであり、通信チャネル指示制御パケットのACKパケットとして利用されるものである。
【0074】
通信チャネル指示ACK制御パケットは、「制御フィールド」、「パケットタイプ」、「STアドレス」、「APアドレス」を有して構成される。
【0075】
「制御フィールド」は、一般の無線通信に必要な各種制御フィールドが設定されるものである。「STアドレス」は、送信元のST20のアドレス情報が設定されるものである。「APアドレス」は、送信先のAP10のアドレス情報が設定されるものである。
【0076】
「パケットタイプ」は、パケット種類を識別する番号が設定されるものである。例えば、ここでは、通信チャネル指示ACK制御パケットのパケットタイプが「パケットタイプ=2」であるとする。
【0077】
図8は、電池残量確認指示制御パケットのフォーマットを説明する説明図である。電池残量確認指示制御パケットは、AP10がST20に対して送信するものである。
【0078】
電池残量確認指示制御パケットは、「制御フィールド」、「パケットタイプ」、「APアドレス」、「STアドレス」を有して構成される。
【0079】
「制御フィールド」は、一般の無線通信に必要な各種制御フィールドが設定されるものである。「APアドレス」は、AP10のアドレス情報が設定されるものである。「STアドレス」は、送信先のST20のアドレス情報が設定されるものである。
【0080】
「パケットタイプ」は、パケット種類を識別する番号が設定されるものである。例えば、ここでは、電池残量確認指示制御パケットのパケットタイプが「パケットタイプ=3」であるとする。
【0081】
図9は、電池残量確認制御パケットのフォーマットを説明する説明図である。電池残量確認制御パケットは、電池残量確認指示制御パケットを受信したST20からAP10に送信されるものであり、電池残量確認指示制御パケットのACKパケットとして利用されるものである。
【0082】
電池残量確認制御パケットは、「制御フィールド」、「パケットタイプ」、「STアドレス」、「APアドレス」、「電池残量」を有して構成される。
【0083】
「制御フィールド」は、一般の無線通信に必要な各種制御フィールドが設定されるものである。「STアドレス」は、送信元のST20のアドレス情報が設定されるものである。「APアドレス」は、送信先のAP10のアドレス情報が設定されるものである。
【0084】
「パケットタイプ」は、パケット種類を識別する番号が設定されるものである。例えば、ここでは、電池残量確認指示制御パケットのパケットタイプが「パケットタイプ=4」であるとする。
【0085】
「電池残量」は、自身のメモリ部25に格納されている電池残量の情報が設定されるものである。上述したように、電源部26の電池残量は、電池残量確認部27により確認されたものである。
【0086】
図10は、STデータパケットのフォーマットを説明する説明図である。STデータパケットは、送信すべきデータを有するST20がAP10に対してデータを送信する際に利用されるものである。
【0087】
STパケットは、「制御フィールド」、「パケットタイプ」、「STアドレス」、「APアドレス」、「データ」から構成される。
【0088】
「制御フィールド」は、一般の無線通信に必要な各種制御フィールドが設定されるものである。「STアドレス」は、送信元のST20のアドレス情報が設定されるものである。「APアドレス」は、送信先のAP10のアドレス情報が設定されるものである。
【0089】
「パケットタイプ」は、パケット種類を識別する番号が設定されるものである。例えば、ここでは、電池残量確認指示制御パケットのパケットタイプが「パケットタイプ=5」であるとする。
【0090】
「データ」は、ST20が送信すべきデータが設定されるものである。例えば、ST20が送信するデータとしては、外部装置40から受け取ったデータ(例えば、センサデータ等)である。
【0091】
(A−2)実施形態の動作
次に、この実施形態のAP10における処理の動作を、図面を参照しながら説明する。
【0092】
(A−2−1)通信手順
図11は、この実施形態の無線通信システム1の構成例を示す図である。図11に示すように、無線通信システム1は、1台のAP10と、6台のST20−1〜20−6とが無線通信を行なう場合を例示する。
【0093】
図12は、無線通信システム1における通信手順を説明する説明図である。
【0094】
図12において、無線通信システム1は、各ST20が、間欠的に、データ送信を行なうものとする。例えば、図12に示すように、無線通信システム1は、「準備期間」と「タスク実行中」のフェーズを繰り返し有しており、各ST20は、「タスク実行中」のフェーズ期間に、指定された通信チャネルを利用してデータ送信を行なう。
【0095】
また、AP10は、「準備期間」、「タスク実行中」に、各ST20から受信したパケットに基づいて通信チャネルの通信品質を測定し、最新の測定結果を管理している。
【0096】
図12において、まず、AP10は、各STに対して、通信チャネルを割り当て、各ST20に対して通信チャネルの指示を行なう(S101)。
【0097】
このとき、AP10は、各ST20に対して割り当てた通信チャネルの番号を乗せた通信チャネル指示制御パケットを、各ST20に送信する。一方、各ST20は、通信チャネル指示制御パケットを受信し、指示された通信チャネルを設定する。ここで、通信チャネル指示制御パケットが正常に受信された場合、各ST20は、確認応答として通信チャネル指示ACK制御パケットをAP10に返信する。
【0098】
また、この「準備期間」のフェーズにおいて、AP10は、電池残量確認指示制御パケットを各ST20に送信する。そして、各ST20は、自身の電池残量値を含む電池残量確認制御パケットをAP10に返信する。
【0099】
AP10では、各ST20から電池残量確認制御パケットを受信すると、各ST20の電池残量値をメモリ部15に記憶する。
【0100】
なお、各ST20では、電池残量確認部27が、最新の電源部26である電池の残量をメモリ部25に格納している。従って、電池残量確認制御パケットによりAP10に通知される電池残量値は、最新のものである。これにより、AP10は、各ST20の最新の電池残量を認識することができる。
【0101】
各ST20では、AP10から指示された通信チャネルを利用して、STデータパケットでデータ送信を開始する(S102)。
【0102】
ここで、各ST20は、STデータパケットを連続的に送信する。また、AP10から指示された送信電力値に基づいて、各ST20はデータ送信する。
【0103】
なお、STデータパケットの連続送信数や送信間隔は、特に限定されるものではなく、予め各ST20で設定された送信数、送信間隔とすることができる。また、通信チャネル指示制御パケットに送信数や送信間隔が設定できるようにし、各ST20に通知するようにしてもよい。
【0104】
AP10は、「タスク実行中」のフェーズで、各ST20からSTデータパケットを受信すると、STデータパケット受信時の通信品質値を測定し、その測定結果をST20毎に通信品質管理テーブル151に格納する。
【0105】
ここで、AP10は、例えば、各ST20からのSTデータパケットの受信成功率や受信強度等に基づいて通信品質値を測定するようにしてもよい。
【0106】
また、通信品質管理テーブル151は、STデータパケットが到達するたびに、当該STデータパケットの通信品質値を次々と更新する。これにより、AP10は、各ST20との間の最新の通信品質を保持、確認することができる。
【0107】
AP10は、通信品質管理テーブル151を利用して、全てのST20が利用している通信チャネルの通信品質を確認し、システム全体の通信品質を上げるために良好な通信チャネルをST20毎に決定する。
【0108】
そして、通信チャネルの変更が必要な場合、AP10は、変更後の通信チャネル番号を含む通信チャネル指示制御パケットを各ST20に送信して通信チャネルの変更を指示する。各ST20は、通信チャネル指示制御パケットで指示された通信チャネルを設定し、通信チャネル指示ACK制御パケットをAP10に返信する(S103)。例えば、図12のS103では、AP10が、ST20−2及びST20−6に対して通信チャネルの変更を指示した場合を例示する。
【0109】
ここで、通信チャネルの決定方法は、各周波数チャネルに収容することができるSTの数には限りがあるので、システム全体で通信品質を上げるために良好な通信チャネルを決定することができれば、種々のアルゴリズムを広く適用することができる。
【0110】
その後、各ST20は、指示された通信チャネルを利用して、STデータパケットでデータ送信を行なう(S104)。例えば、ST20−2及びST20−6は、通信チャネルの変更指示を受けたので、その後は、変更後の通信チャネルを用いてデータ送信を行なう。
【0111】
(A−2−2)通信チャネル再構築処理
次に、AP10による通信チャネル再構築処理の動作を、図面を参照しながら説明する。
【0112】
例えば、ICT機器では装置を利用しない期間がある。ICT機器内にある各ST20は、その期間にSTデータパケットの送信を行なわない。そこで、AP10は、上記のようなSTデータパケットを送信しない期間(非送信期間)をメンテナンス期間として、通信チャネル再構築処理を行なう。
【0113】
AP10が行なう通信チャネル再構築処理として、各通信チャネルの時間領域方向にスロットを拡張する「占有時間拡張処理」、同一時間領域の周波数帯域方向にスロットを拡張する「占有帯域幅拡張処理」、ST20に割り当てたある通信チャネルのスロット位置を時間軸上で変更する「スロット位置変更処理」がある。
【0114】
この通信チャネル再構築処理により、各ST20に割り当てる通信チャネルが変更すると、AP10は、通信チャネル指示制御パケットを用いて、各ST20に対して通信チャネルの変更を指示する。
【0115】
以下では、通信チャネル再構築処理である「占有時間拡張処理」、「占有帯域幅拡張処理」、「スロット位置変更処理」を順に説明する。
【0116】
まず、占有時間を拡張する処理を説明する。図13は、占有時間拡張処理を示すフローチャートである。
【0117】
図13において、AP10は、各ST20が利用する通信チャネルを決定する(S201)。
【0118】
各ST10に割り当てる通信チャネルの割り当て方法は、上述したように種々の方法を適用することができるが、例えば次に示すような方法を適用することができる。
【0119】
例えば、AP10は、各ST20の通信チャネル毎の通信品質値を測定し、その測定結果を通信品質管理テーブル151に格納する。通信品質管理テーブル151には、最新の通信品質の情報が格納されるようにする。AP10は、通信品質管理テーブル151に格納される各ST20の通信チャネルの通信品質の情報に基づいて、各ST20との間の無線通信の通信品質が良好となる通信チャネルを評価する。
【0120】
ここで、各ST20の通信チャネルの通信品質の評価は、ある通信チャネルでしか通信品質が高くならないST20がある場合、そのST20から優先的に通信チャネルを割り当てるための評価を行なう。すなわち、ある通信チャネルを利用するときは通信品質が良好であるが、それ以外の通信チャネルを利用すると通信品質が劣るST20がある場合には、そのST20から優先的に通信チャネルを割り当てるための評価値を求める。
【0121】
そして、AP10は、各ST20の通信品質の評価の高い順に、各ST20が利用する通信チャネルを決定し、各ST20の通信チャネルをST管理テーブル152に格納する。
【0122】
図14は、通信品質管理テーブル151の構成を説明する説明図である。図14に示すように、通信品質管理テーブル151は、「ST名」、各通信チャネルの「通信品質値」を項目として有する。
【0123】
「ST名」は、各ST20の識別番号である。図14において、例えば「ST1」はST20−1を識別する識別情報である。
【0124】
「通信品質値」は、各ST20が利用した各通信チャネルを用いて通信したときのAP10における通信品質の情報を示す。図14において、通信品質値は、通信品質の値を0〜100の数値で示し、100が最も通信品質が良いものとする。通信品質値は、例えば、ST20から連続送信されたパケットを正常に受信できたパケット数や、AP10における受信電力値等に基づいて、AP10が生成する。
【0125】
図15は、ST管理テーブル152の構成を説明する説明図である。図15に示すように、ST管理テーブル152は、「ST名」、「通信チャネル」、「通信品質値」を項目とする。なお、図15には、図示しないが、各ST20が送信する送信電力値を項目としてもよい。
【0126】
「ST名」は、各ST20の識別番号が設定される。「通信チャネル」は、AP10が決定した各ST20が利用する通信チャネルの番号が設定される。「通信品質値」は、各ST20が各通信チャネルを利用したときの通信品質値が設定される。
【0127】
AP10は、図15に例示するST管理テーブル152を保持し、また図1に例示するように、各ST20−1〜20−6のスロットを管理している。
【0128】
図1において、無線通信システム1は、5個の周波数チャネルCH1〜CH5を備え、各周波数チャネルについて第1スロット〜第4スロットが1サイクルとして区分されているものとする。
【0129】
また、図1において、ST20−1は「CH5」の「第1スロット」、ST20−2は「CH5」の「第2スロット」、ST20−3は「CH5」の「第3スロット」、ST20−4は「CH2」の「第1スロット」、ST20−5は「CH1」の「第3スロット」、ST20−6は「CH4」の「第2スロット」が割り当てられているものとする。
【0130】
次に、AP10は、全ての周波数帯域のそれぞれについて、空いているスロット位置があるか否かを判断する(S202、S203)。そして、空いているスロット位置がある場合、AP10は処理をS204に移行し、空いているスロット位置がない場合、AP10は処理をS209に移行する。
【0131】
例えば、図1の「CH1」については、AP10は、空きスロットとして、「第1スロット」、「第2スロット」、「第4スロット」を検索する。他の通信チャネルについても同様に、AP10は空きスロットを検索する。
【0132】
S204では、AP10が、各ST20の各通信チャネルの通信品質と各ST20の電池残量値とを考慮して、各ST20の順位付けを行なう(S204)。
【0133】
図16は、各ST20の最新の電池残量値を記憶するテーブルである。図16において、「電池残量値」は、各ST20から取得した電池残量値を示している。ここでは、説明便宜上、電池残量値を0〜100の数値で示しており、100は電池残量が最も多いものとしているが、ST20の電池残量値そのものであってもよい。
【0134】
例えば、AP10は、図16に示す各ST20の電池残量値のテーブルと、図15に示すST管理テーブル152とに基づいて、通信品質値の高いものから順にST20の順位付けを行なう。
【0135】
なお、ここでは、各ST20に割り当てられた通信チャネルの通信品質値の高いものから順に順位付けを行なう場合を例示するが、各ST20の電池残量値が多いものから順に順位付けを行なうようにしてもよい。また別の方法として、各STの通信チャネルの通信品質値及び電池残量値を用いて、所定の演算式に従って所定の評価値を求め、その評価値に基づいて順位付けを行なうようにしてもよい。
【0136】
図17は、順位付け後の並び替えたテーブルである。図17に示すように、順位付け後のテーブルは、「ST名」、「通信品質値」、「通信チャネル」、「電池残量値」を対応付けて、各ST20の通信チャネルの通信品質値が高いものから順に並び替えたものである。
【0137】
AP10は、順位付けしたST20のうち最も高い順位のST20から順位全てのSTの通信チャネルを確認し、各ST20の各通信チャネルの通信品質値と各ST20の電池残量値とを考慮しながら、各通信チャネルの時間領域方向について空いているスロットがあれば占有時間を拡張し(S205、S206、S207、S208)、そうでないときは、S209に移行する。
【0138】
図18は、占有時間拡張処理を説明する説明図である。
【0139】
例えば、図17において、最も順位が高いのは「ST5」であるから、AP10は「ST5」の通信チャネル及びスロットを確認する。
【0140】
図1において、「ST5」は「通信チャネル:CH1」を利用している。「CH1」は「ST5」のみが利用しているので、「ST5」が「CH1」の全てのスロットを占有して送信することができる。つまり、1サイクルが4スロットであるから、「ST5」は最大で4個のスロットを利用して送信することができる。
【0141】
このとき、スロット数を増やすと、一般的にデータ送信に係る消費電力も大きくなる。そこで、AP10は、当該ST20の電池残量値を考慮して、占有時間(すなわちスロット数)を決定する。
【0142】
例えば、AP10は、1スロット当たりのパケット送信に係る消費電力値を保持しておく。そして、AP10は、図17に示す「ST5」の電池残量値から、増加させるスロット数に応じた消費電力値を差し引き、占有時間拡張後の「ST5」の電池残量値を予測する。そして、占有時間拡張後の「ST5」の電池残量値が所定値以下とならないようにして、「ST5」のスロット数を決定するようにしてもよい。例えば、図18の例の場合、「ST5」には3スロットとする場合を示す。
【0143】
ここで、占有時間拡張において、ST20に割り当てるスロット数を増やすと、当該STは長い時間連続してパケットを送信することになるので、当該STは、スロットの占有時間に応じて誤り訂正の強度を強くするようにする。例えば、図18の例の場合、「ST5」は、スロットの占有時間が3倍となったので、誤り訂正の強度も3倍となるようにする。これにより、通信品質を良好にすることができる。
【0144】
このように、各通信チャネルにある空きスロットをST20に割り当てるようにして、空きスロット数が減少するように、AP10はスロットの再構築を行なう。
【0145】
次に、占有周波数を拡張する処理を説明する。図19は、占有時周波数拡張処理を示すフローチャートである。図20は、占有周波数拡張処理を説明する説明図である。
【0146】
図19において、AP10は、全てのST20について占有時間拡張処理を行なった後に、同一時間領域における各通信チャネルの周波数帯域方向にスロットを拡張する占有周波数拡張処理を行なう。
【0147】
まず、AP10は、通信チャネルCH1〜CH5の第1スロットにおいて、空いているスロットがあるか否かを判断する(S301、S302)。
【0148】
例えば、図20は、説明便宜上、図18の状態から占有周波数拡張処理を行なう場合を示す。図18において、通信チャネルCH1〜CH5の第1スロットでは、「CH1」、「CH3」、「CH4」が空きスロットである。
【0149】
AP10は、空きスロットの周波数チャネル方向に隣接するST20が割り当てられているか否かを判断し、予め設定された閾値を用いて、その隣接するST20の電池残量値が十分ある否かを判断する(S303)。そして、電池残量値が十分ある場合、当該STの占有周波数帯域を拡張し(S305)、そうでない場合、処理をS305に移行する。
【0150】
例えば、図18において、第1スロットについて、空きスロット「CH1」、「CH3」、「CH4」に隣接するST20として、AP10は、「ST4」が「CH2」を利用し、「ST1」が「CH5」を利用していることを検索する。
【0151】
AP10は、図17に示す各ST20の電池残量値を参照して、第1スロットにおける「ST4」と「ST1」の電池残量値を確認する。例えば、閾値が「50」と設定すると、AP10は、「ST4」の電池残量値「70」は閾値を越えるので十分であると判断するが、「ST1」の電池残量値「20」は閾値以下であると判断する。従って、この場合、AP10は「ST4」に注目して占有周波数帯域を拡張する。
【0152】
この場合も、スロット数を増やすと、一般的にデータ送信に係る消費電力も大きくなるので、AP10は、当該ST20の電池残量値を考慮して、占有時間(すなわちスロット数)を決定する。
【0153】
例えば、AP10は、1スロット当たりのパケット送信に係る消費電力値を保持しておく。そして、AP10は、図17に示す「ST4」の電池残量値から、増加させるスロット数に応じた消費電力値を差し引き、占有時間拡張後の「ST4」の電池残量値を予測する。そして、占有時間拡張後の「ST4」の電池残量値が所定値以下とならないようにして、「ST4」のスロット数を決定するようにしてもよい。例えば、図20の例の場合、「ST4」には3スロットとする場合を示す。
【0154】
また、占有周波数帯域拡張において、ST20に割り当てるスロット数を増やすと、パケットの伝送速度を速くすることができる。占有時間が変わっていなくても、高速通信が可能となり、より長いパケットを送信することができるので、当該ST20は、誤り訂正の強度を強くするようにする。
【0155】
ここで、占有周波数帯域拡張処理において、AP10は、各ST20の通信品質を考慮する。例えば、AP10は、図14の通信品質管理テーブル151を参照し、「ST4」の各通信チャネルの通信品質を確認すると、「ST4」は、「CH1」〜「CH3」を利用するときの通信品質は良好であるが(例えば、通信品質値「70」以上が良好とする)、それ以外の「CH4」、「CH5」を利用するときの通信品質は悪い。このような場合、AP10は、「ST4」の電池残量値が多い場合でも、「ST4」について「CH4」、「CH5」まで占有周波数帯域の拡張を行なわないようにすることができる。なぜなら、「ST4」について占有周波数帯域を拡張すると、システム全体としての通信品質が悪くなるからである。
【0156】
また、占有周波数帯域の拡張の仕方として、図20の例では、AP10が、「CH1」、「CH2」、「CH3」が連続するスロットの周波数帯域を拡張する場合を例示しているが、AP10は、「ST4」の通信チャネルの通信品質値を考慮して、不連続のスロットの周波数帯域を拡張するようにしてもよい。
【0157】
その後、AP10は、通信チャネルCH1〜CH5の周波数帯域方向の第2スロット〜第4スロットについても順に行なう。これは、1サイクルが4スロットであるため、AP10は、1サイクルを形成する、各通信チャネルの分割時間領域について繰り返し行なう。
【0158】
次に、スロット位置の変更処理を説明する。図21は、スロット位置の変更処理を示すフローチャートである。図22は、スロット位置の変更処理を説明する説明図である。
【0159】
図21において、AP10は、各通信チャネルの周波数帯域方向の占有周波数帯域拡張処理を行なった後に、各通信チャネルの周波数帯域方向のスロット位置の変更処理を行なう。
【0160】
まず、AP10は、通信チャネルCH1〜CH5の周波数帯域方向のスロットについて、全てのスロット位置が空いているものがあるか否かを判断する(S401、S402)。周波数帯域方向のスロットのすべてが空いている場合、処理をS403に移行し、そうでない場合、処理をS405に移行して終了する。
【0161】
例えば、図22は、説明便宜上、図1の状態から占有周波数拡張処理を行なう場合を示す。図1において、各通信チャネルCH1〜CH5の第1〜第3スロットは、いずれかのST20に対して割り当てられているが、第4スロットについては、いずれの通信チャネルCH1〜CH5もST20が割り当てられていない。そこで、AP10は第4スロットに注目する。
【0162】
次に、AP10は、他のスロット位置を時間軸方向に移動することができるものがあるか否かを判断する(S403)。そして、時間軸方向に移動することができるものがある場合、AP10は、当該ST20のスロットを時間軸方向に移動する(S404)。時間軸方向に移動できるスロットがない場合、S405に移行し、処理を終了する。
【0163】
例えば、通信チャネルCH1〜CH5の第4スロットについて、AP10は「ST6」に注目する。「CH4」は「ST6」しか利用していない。この場合、占有時間の拡張も可能であるが、図16に示すように「ST6」の電池残量値は「50」であり、占有時間を拡張すると消費電力が大きくなるため、占有期間の拡張ができない。
【0164】
第4スロットの時間領域では、いずれのST20も通信チャネルを利用していないため、他の無線LANの機器に割り込まれてしまう可能性が高くなる。
【0165】
そこで、AP10は、「ST6」のスロットの位置(「CH4」の第2スロット)だけを、時間軸方向に移動して、第4スロットの位置になるように変更する。
【0166】
これにより、「ST6」が第4スロットのタイミングでデータ送信することができるようになるため、他の無線LANによるキャリアセンスにより割り込まれる可能性が低くなる。「ST6」のスロット位置の移動により、もともと利用していたスロットは空くことになるが、第2スロットにおける隣接チャネルのスロットには「ST2」が送信するため、送信しない時間帯をなくすることができ、他の無線LANの機器によるキャリアセンスによる電力の検知に反応するため、割り込みの可能は低くなる。
【0167】
(A−3)実施形態の効果
以上のように、この実施形態によれば、APが、各STの通信品質および電池残量を考慮しながら、「占有時間の拡大」、「占有周波数帯域の拡大」、「スロット位置の変更」の順で、空いているスロットを埋めていく、あるいはスロット位置を変更していくことにより、スロットの空き時間が全体的に減少し、無線LANのキャリアセンスによる空き時間の割り込みが減少するため、干渉による影響を低減することができる。
【0168】
(B)他の実施形態
(B−1)上述した実施形態では、例えばICT機器内に複数のSTが配置された集中制御型の無線通信システムに適用する場合を例示したが、集中制御型の無線通信システムであれば、STがICT機器内に配置されていない無線通信システムにも適用することができる。
【0169】
(B−2)上述した実施形態の無線通信システムは、周波数領域及び時間領域を分割したスロットを各STに割り当てる通信方式(FTDMA方式)を採用した場合を例示したが、既存の無線LANと同様に、周波数領域だけで分割し、各通信チャネルを1又は複数のSTに割り当てるようにしてもよい。
【0170】
(B−3)上述した実施形態では、STがAPと通信するものとして説明したが、ST自体をアクセスポイントとして機能させてもよい。また、APが、STとして機能するようにしてもよい。
【0171】
(B−4)上述した実施形態において、各STの電源部は電池である場合を想定した。しかし、STの電源部をACアダプタとしてもよく、その場合の電池残量値は最も大きい値としてAPは管理するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0172】
1…無線通信システム、
10…無線アクセスポイント装置(AP)、
11…送信部、12…受信部、13…送受信制御部、
14…チャネル制御部、15…メモリ部、
151…通信品質管理テーブル、152…ST管理テーブル、
16…電源部、17…外部インタフェース部、
20(20−1〜20−6)…無線通信装置(ST)、
21…送信部、22…受信部、23…送受信制御部、
231…送信電力制御部、24…チャネル制御部、25…メモリ部、
26…電源部、27…電池残量確認部、28…外部インタフェース部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数帯域のそれぞれを時分割して送信区域を形成し、複数の無線通信装置に上記送信区域を割り当てる送信区域割当手段と、
それぞれ割り当てられた上記送信区域の周波数帯域を利用して上記各無線通信装置が無線通信した受信信号に基づいて、上記各無線通信装置からの通信品質値を管理する通信品質管理手段と、
上記通信品質管理手段の上記各無線通信装置の通信品質値に基づいて、上記各無線通信装置に割り当てた上記送信区域の割当構成を再構築する送信区域割当再構築手段と
を備えることを特徴とする無線アクセスポイント装置。
【請求項2】
上記複数の無線通信装置における供給電力残量値を上記各無線通信装置から取得する供給電力残量値取得手段を備え、
上記送信区域割当再構築手段が、上記各無線通信装置の供給電力残量値に基づいて、上記送信区域の割当構成を再構築するものであることを特徴とする請求項1に記載の無線アクセスポイント装置。
【請求項3】
上記送信区域割当再構築手段が、上記通信品質値及び上記供給電力残量値が所定値以上の上記無線通信装置の上記送信区域と同一周波数帯域について、割り当てられていない空き送信区域がある場合、当該無線通信装置の上記送信区域を時間軸方向に拡張することを特徴とする請求項2に記載の無線アクセスポイント装置。
【請求項4】
上記送信区域割当再構築手段が、上記通信品質値及び上記供給電力残量値が所定値以上の上記無線通信装置の上記送信区域と、同一時間領域の周波数帯域方向に、上記空き送信区域がある場合、当該無線通信装置の上記送信区域を周波数帯域方向に拡張することを特徴とする請求項3に記載の無線アクセスポイント装置。
【請求項5】
上記送信区域割当再構築手段が、分割した時間領域の周波数帯域方向に、いずれの上記無線通信装置にも割り当てていない空き送信区域がある場合、上記複数の周波数帯域の送信区域のうち移動可能な送信区域を、当該時間領域に移動させることを特徴とする請求項4に記載の無線アクセスポイント装置。
【請求項6】
上記送信区域割当再構築手段が、複数の無線通信装置の通信品質及び電池残量に基づき、占有時間の拡張、周波数帯域方向の拡張、上位送信区域の位置の移動の順で、空き送信区域を割り当てるものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の無線アクセスポイント装置。
【請求項7】
複数の周波数帯域のそれぞれを時分割して送信区域を形成し、複数の無線通信装置に上記送信区域を割り当てる無線アクセスポイント装置と無線通信する無線通信装置において、
上記無線アクセスポイント装置により割り当てられた上記送信区間に指示された通信チャネルを用いてデータ通信を行なうデータ通信手段を備えることを特徴とする無線通信装置。
【請求項8】
複数の無線通信装置と、1又は複数の無線アクセスポイント装置とを備える無線通信システムにおいて、
上記各無線アクセスポイント装置が、請求項1〜6のいずれかに記載の無線アクセスポイント装置に相当するものであり、
上記各無線通信装置が、請求項7に記載の無線通信装置に相当するものである
ことを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−46241(P2013−46241A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182822(P2011−182822)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度総務省「ICT機器内ハーネスのワイヤレス化の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】