無線受信装置
【課題】MB−OFDM方式等の無線受信装置において、比較的簡単な構成にて高速に、利得制御を行えるようにする。
【解決手段】電力演算部20は瞬時電力値(I2+Q2)を算出し、「判定および計測部」21は、この瞬時電力値が予め定められた所定の閾値を越える回数を計測する。更に、瞬時電力値の各プリアンブルシンボル区間における平均値又は中央値を算出する。そして、この計測結果、算出結果を、制御部22へ出力する。制御部22は、まず計測結果に応じて高速であるが精度の粗い利得調整を行い、この粗調整終了後に、上記平均値又は中央値と、予め設定されるこれらの基準値とに基づいて、高い精度の利得の補正を行う。
【解決手段】電力演算部20は瞬時電力値(I2+Q2)を算出し、「判定および計測部」21は、この瞬時電力値が予め定められた所定の閾値を越える回数を計測する。更に、瞬時電力値の各プリアンブルシンボル区間における平均値又は中央値を算出する。そして、この計測結果、算出結果を、制御部22へ出力する。制御部22は、まず計測結果に応じて高速であるが精度の粗い利得調整を行い、この粗調整終了後に、上記平均値又は中央値と、予め設定されるこれらの基準値とに基づいて、高い精度の利得の補正を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線受信装置に係り、特にダイレクトコンバージョン方式を用いる無線受信機等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や無線LANと比較して、近距離を非常に高速に伝送するための無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)が検討されている。WPANを実現するための技術として、3.1GHzから10.6GHzを利用する超広帯域無線(UWB)が有力視されているが、UWBの一方式として、WiMedia Allianceが推進する、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex:直交周波数分割多重)変調と、特定の周波数パターンに沿って搬送波周波数を切り替える周波数ホッピングを組み合わせたマルチバンドOFDM(以下、MB−OFDM)方式が検討されている。
【0003】
MB−OFDM方式に限らず、最近の無線通信回路において、受信機の構成としてはダイレクトコンバージョン方式が用いられることが多い。特にMB−OFDM方式の場合は、搬送波周波数に対して、変調帯域が非常に広帯域であることから、通常、ダイレクトコンバージョン方式を用いられる。
【0004】
ダイレクトコンバージョン方式は、ゼロIF方式とも呼ばれ、従来、受信機において受信した信号を無線周波数帯から、中間周波数に変換(ダウンコンバート)することなく、一気にベースバンドに変換する方式である。
【0005】
一般的なダイレクトコンバージョン方式の受信機の構成例を、図11に示す。
図11に示す受信機100は、増幅器101、ミキサ(乗算器)102,103、Lo(ローカル発振器)104、A/D変換器105,106、及び復調部107を有する。
【0006】
増幅器101はアンテナからの受信信号を増幅して各ミキサ(乗算器)102,103へ出力する。各ミキサ(乗算器)102,103は、90°位相シフタ(不図示)を備えたローカル発振器(Lo104)によって直交ドライブされ、当該互いに直交するLo発振信号により上記受信信号をベースバンド信号に変換する。尚、Lo(ローカル発振器)104が出力する図示の0°の信号はLoが内部で生成する搬送波であり、図示の90°の信号はこの搬送波を上記90°位相シフタ(不図示)によってπ/2だけ位相シフトした信号である。そして、図示の例では、0°の信号はミキサ(乗算器)102に入力され、90°の信号はミキサ(乗算器)103に入力され、これより上記直交ドライブされることになる。
【0007】
ミキサ(乗算器)102の出力はA/D変換器105に入力し、ミキサ(乗算器)103の出力はA/D変換器106に入力し、それぞれA/D変換が行われる。ここで、A/D変換器105の出力はIチャネル(I成分)、A/D変換器106の出力はQチャネル(Q成分)となる。
【0008】
各A/D変換器105,106の出力は復調部107に入力し、復調部107においてディジタル信号処理にて、復調処理が行われる。
ここで、受信信号の振幅は、無線回線による減衰を受けるため、数十dBと言う広範囲の受信信号電力に対して、A/D変換器105,106への入力信号レベルが適正になるように前段の増幅器の利得を制御する(不図示の制御部などが利得制御している)。
【0009】
この利得制御(AGC制御)は、通常、受信機側で同期を捕捉する為に使用される、OFDM信号に先立って送られる既知の信号列(プリアンブル信号;予め決められている特定の繰り返し信号)の受信時に行われるが、MB−OFDM方式のプリアンブル信号は、実軸(Iチャネル)上にのみ信号成分を持つため、受信機の出力信号は、プリアンブル信号をs(t)、送受信機における搬送波の位相差をφ、無線回線などにおける利得/減衰をKとすると、
I チャネル: K・s(t)・cosφ
Q チャネル: K・s(t)・sinφ
となり、受信信号電力の大きさに関わらず、送信機と受信機の搬送波における位相差により、I/Qチャネル出力振幅は大きく変動する。
【0010】
これら利得制御を含む、MB−OFDM方式の受信回路に関しては、特許文献1および特許文献2などに記載の発明が提案されている。
また、特許文献3の発明は、RSSI信号を得るために、A/D変換部の出力から得られる受信信号の振幅成分を絶対値もしくは二乗することにより得られる電圧・電力成分を、一定時間に亘って累積加算するものである。
【特許文献1】特開2007−19985号公報
【特許文献2】US2006/0007985 Saturation handling during multiband receiver synchronization
【特許文献3】特開平10−322310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1,2の発明は、受信回路全体の振る舞いについて記述するものであり、利得の制御に関して、特に利得制御を行うのに用いる信号の特性およびA/D変換器の特性を考慮した、具体的な利得制御の手法を提案するものではない。
【0012】
また、MB−OFDM方式を含むOFDM信号のように、PAPR(ピーク対平均電力比)の大きい信号の場合、特許文献3の発明のように累積加算を行うと、A/D変換部に過大入力が入ることにより発生するクリップ(飽和)現象の影響が見え難くなる。また、累積加算に必要な回路構成自体も、
(A/D変換部もしくは内部演算におけるビット数)×(累積期間サンプル数)
のメモリが必要になる等、比較的大規模になる。
【0013】
何れにしても、ダイレクトコンバージョン方式を用いる無線受信装置に関して、特にMB−OFDM方式のようなダイレクトコンバージョン方式(包絡線が一定にならない変調方式による信号のダイレクトコンバージョン方式)に関して、従来技術と比較して、より簡単な構成で高速に、無線受信装置内の増幅器の利得をA/D変換器への入力信号が適切なレベルになるように制御できるようにすることが望ましい。
【0014】
本発明は、例えばMB−OFDM方式等のようなダイレクトコンバージョン方式を用いる無線受信装置において、高速にホッピング、シンボル同期を確立するために、高精度のRSSI(RA/Dio Signal Strength Indicator)回路などの特別な回路を用いることなく、より簡単な構成で且つ高速に、無線受信装置内の増幅器の利得をA/D変換器への入力信号が適切なレベルになるように制御できる無線受信装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の無線受信装置は、ダイレクトコンバージョン方式を用いる無線受信装置において、増幅器により増幅された入力信号をA/D変換するA/D変換器の出力から瞬時電力
値を求める電力演算手段と、前記電力演算手段が求めた各瞬時電力値が所定の第1の閾値を超えた回数を計測し、あるいは所定期間毎に瞬時電力値の平均値又は中央値を算出する計測/算出手段と、前記入力信号がプリアンブル信号であるときの任意の第1の期間において、前記計測された回数が所定の第2の閾値を超えた場合、前記増幅器の利得を予め決められている一定値分下げる制御を行う利得の粗調整手段と、前記利得の粗調整手段による前記利得の制御が行われた後に、前記所定期間毎の前記平均値又は中央値と、予め設定されている該平均値又は中央値の基準値とに基づいて、前記増幅器の利得を求める利得の微調整手段とを有する。
【0016】
前記第1の閾値は、例えば、前記A/D変換器の飽和出力である。
上記構成の無線受信装置では、例えば初期状態においては、受信可能な最小の信号を検出できるようにする為に、予め決められている最大の利得で利得制御しており、まず、利得の粗調整手段において例えばA/D変換器の飽和を判定する毎に利得を一定値分下げる制御を繰り返すことで、飽和の判定が起こらなくなるまで利得を下げ続ける。
【0017】
その後、利得の微調整手段によって高精度に利得を決定する。前記プリアンブル信号は予め決まっている特定の信号であるので、予め平均値又は中央値の基準値を求めて設定しておくことで、最適な利得を求めることができる。
【0018】
利得の微調整手段による利得決定方法は、上記平均値や中央値を用いる手法に限らず、例えば以下の構成としてもよい。
すなわち、本発明の他の無線受信装置は、ダイレクトコンバージョン方式を用いる無線受信装置において、増幅器により増幅された入力信号をA/D変換するA/D変換器の出力から瞬時電力値を求める電力演算手段と、前記電力演算手段が求めた各瞬時電力値が所定の第1の閾値を超えた回数を計測する計測手段と、前記A/D変換器の出力を入力して同期検出信号を出力するマッチドフィルタと、前記入力信号がプリアンブル信号であるときの任意の第1の期間において、前記計測された回数が所定の第2の閾値を超えた場合、前記増幅器の利得を予め決められている一定値分下げる制御を行う利得の粗調整手段と、前記利得の粗調整手段による前記利得の制御が行われた後に、前記マッチドフィルタの出力のピークパルス値と、予め設定されている該ピークパルス値の基準値とに基づいて、前記増幅器の利得を求める利得の微調整手段とを有する。
【0019】
あるいは、前記利得の微調整手段は、マルチパスフェージングにより前記マッチドフィルタの出力として複数のピークパルスが発生する場合、該複数のピークパルス値の平均値を求め、該平均値と予め設定されている該平均値に対応する基準値とに基づいて、前記利得を求めるようにしてもよい。
【0020】
また、例えば、前記第1の期間は前記プリアンブル信号の最初のシンボル区間であり、前記利得の粗調整手段は、該最初のシンボル区間を複数に分割した各第2の期間毎に前記第2の閾値を超えるか否かの判定を行うものであり、前記一定値と、前記第2の期間の数を、前記最初のシンボル区間内で前記利得の粗調整手段による前記利得の制御が完了できるように設定することで、高速に利得の粗調整を行えるようにし、以って全体としても高速に利得の調整を行えるようにすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の無線受信装置等によれば、特にMB−OFDM方式等のようなダイレクトコンバージョン方式を用いる無線受信装置において、比較的簡単な構成にて高速に、A/D変換器への入力信号が適切なレベルになるように利得制御を実施することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1に、本例の第1の実施例における無線受信装置(無線受信機)の構成図を示す。
図示の受信機10は、例えば上記従来で説明したMB−OFDM変調方式による無線受信機であるが、この例に限らず、ダイレクトコンバージョン方式を用いる無線受信機であれば何でもよい。但し、特に、MB−OFDM変調方式のような包絡線が一定にならない変調方式による信号のダイレクトコンバージョン方式の無線受信機に関して、本手法は顕著な効果が得られる。
【0023】
図1に示す受信機10は、LNA(ローノイズアンプ)11、ミキサ(乗算器)12,13、Lo(ローカル発振器)14、VGA(可変ゲインアンプ)15、16、A/D変換器17,18、同期検出・復調部19、電力演算部20、判定および計測部21、制御部22を有する。
【0024】
AGC機能部である電力演算部20、判定および計測部21、及び制御部22の後述する機能は、例えば、不図示のCPU/MPU等の演算プロセッサが、不図示のメモリ等に予め記憶されている所定のアプリケーション・プログラムを読み出し・実行することにより実現される。また、判定および計測部21に関してはバイナリカウンタ等も用いられる。但し、この様な例に限らず、上記AGC機能部の機能の一部又は全部を、プログラムではなく回路により実現してもよい。
【0025】
上記構成のうち、ミキサ(乗算器)12,13、Lo(ローカル発振器)14、A/D変換器17,18、及び同期検出・復調部19は、上記従来の図11に示すミキサ(乗算器)102,103、Lo(ローカル発振器)104、A/D変換器105,106、及び復調部107と略同様の構成であってよく、その説明は省略する。また、LNA11も、従来の増幅器101に相当するものと考えてもよい。同期検出・復調部19は、同期検出と復調を行う。尚、従来の復調部107でも同期検出は行っている。同期検出・復調部19における同期検出は、例えばマッチドフィルタ等により行われる。
【0026】
また、図11には示していないが、従来でも、各A/D変換器17,18の前段に、それぞれ、上記VGA15,16が設けられている構成は存在する。特に、MB−OFDM変調方式の場合、この様な構成とする場合が多い。従って、従来でも、利得制御は、LNA11及びVGA15,16に対して行っており、この点で特に違いがあるわけではない。
【0027】
そして、図1の構成では、まず、各A/D変換器17,18は、上記従来のA/D変換器105,106と同様、それぞれ、受信信号のIチャネル(I成分)、Qチャネル(Q成分)の信号成分をディジタル出力する。以下、A/D変換器17の出力値を‘I’、A/D変換器18の出力値を‘Q’と記すものとする。
【0028】
電力演算部20は、上記各A/D変換器17,18の出力値I、Qを入力して、瞬時電力値(I2+Q2)を所定のサンプル間隔(一例を後に示す)で演算する。そして、この瞬時電力値を「判定および計測部」21へ出力する。
【0029】
「判定および計測部」21は、この瞬時電力値が予め定められた所定の閾値(第1の閾値とする)を越えるか否かを判定し、瞬時電力値が第1の閾値を超える回数を計測する。更に、瞬時電力値の各プリアンブルシンボル区間における平均値又は中央値を算出する。そして、この計測結果、算出結果を、制御部22へ出力する。
【0030】
制御部22は、上記「判定および計測部」21による計測結果/算出結果に基づいて、LNA(ローノイズアンプ)11とVGA(可変ゲインアンプ)15、16の利得(ゲイ
ン)制御を行う。以下、制御部22による利得(ゲイン)制御処理について説明する。
【0031】
本例の制御部22による利得制御は、高速であるが精度の粗い利得調整段階(粗調整段階)と、この粗調整終了後に、高い精度の利得の補正を行う段階(微調整段階)とに分けて実施する。
【0032】
粗調整段階においては、制御部22では、例えば、予め定められた一定時間内に上記第1の閾値を超えた回数が一定数を越えた場合等には(後述するように、この例に限らない)、利得を予め定められた値だけ下げるように制御をかける。
【0033】
この粗調整段階の利得調整は、短時間で(特に後述するように最初のシンボルで)完了するように制御することで、利得(ゲイン)制御処理全体の高速化に貢献させる。
微調整段階においては、第1の実施例においては、制御部22は、例えば上記最初のシンボルの次のプリアンブルシンボル区間(例えば後述する図3に示すSymbol1)において、上記「判定および計測部」21による中央値もしくは平均値の算出結果に基づいて、これが予め定められた値(基準値)となるように利得の制御をかける。第2の実施例においては、上記Symbol1等において、パケット/フレーム同期に使用されるマッチドフィルタの出力(シンボル毎に現れるピーク電圧値)もしくはその平均値に基づいて、これらピーク電圧値またはその平均値が、一定(予め定められた値(基準値))になるように利得の制御を行う。
【0034】
上記のように、本手法では、プリアンブル信号の最初の2つのシンボル(後述する図3に示すSymbol0、Symbol1)のみで、利得の調整を完了することが可能である。但し、これは搬送波周波数が1種類の場合である。MB−OFDM方式では、搬送波周波数を切り替える周波数ホッピングを行っていることから(通常、3種類の搬送波周波数)、各搬送波周波数に応じた利得の調整を行うことになる。また、微調整段階は、Symbol1のみで実行する例に限らず、更にその後の各プリアンブルシンボル区間(Symbol2以降)においても実行するようにしてもよい。但し、Symbol1のみにおける調整でも、ほぼ適切な利得を決定することができる。
【0035】
ここで、上記プリアンブルシンボル区間について、図2、図3を参照して説明する。
図2は、MB−OFDM方式における標準的なデータフレーム構成を示す図である。
図2に示すMB−OFDM方式のデータフレーム30は、PLCP(Physical Layer Convergence Protocol)プリアンブル31、PLCPヘッダ32およびPSDU(ペイロード)33の3つの部分から構成される。
【0036】
図示の通り、まず、先頭にはPLCP(Physical Layer Convergence Protocol)プリアンブル31と呼ばれる信号が存在する。これが従来で説明した、OFDM信号に先立って送られる既知の信号列(予め決まっている特定の繰り返し信号)に相当する。
【0037】
このPLCPプリアンブル31は、図3に示すように、パケットの同期即ちパケットの有無を確認する為のシンボル同期、フレーム同期に必要なシンボル群であるパケット/フレーム同期シーケンス31aと、無線通信路の状態の推定を行う為に必要なシンボル群であるチャネル推定シーケンス31bから構成される。
【0038】
次のPLCPヘッダ32には、受信機がデータ本体であるPSDU(PLCP Service Data Unit)33をデコードするために必要な情報(PHY及びMACの両方に関する情報)が付加されている。この情報には、通信のデータレート(WiMediaでは53.3Mbpsから480Mbpsまでデータレートが可変である)や、フレームのペイロードの長さ(尚、データの大きさをペイロード長という)等の情報が含まれている。最後のPSDU33はデータ本体であり、
当然、そのデータ量は可変である。
【0039】
上記の通り、PLCPプリアンブル部31は、図3に示すパケット/フレーム同期シーケンス31aと、チャネル推定シーケンス31bの2つから構成され、それぞれのシーケンスにて周波数パケット/フレーム同期、および無線回線の伝達関数の推定を行う。
【0040】
ここで、受信機の利得はチャネル推定シーケンス31bの前までには決定しなければならず、またパケット同期をとる際にもある程度の利得制御がかかってない状態では、同期をとる事は難しい。
【0041】
また、パケット/フレーム同期シーケンス31aと、チャネル推定シーケンス31bは、それぞれ、複数のシンボル(図示のSymbol0〜Symbol23とSymbol24〜Symbol29)から構成され、上記の通りSymbol0が最も最初に受信され、続いてSymbol1、Symbol2、・・・等と受信されていく)。これら各シンボルが上記プリアンブルシンボル区間に相当する(各シンボルの信号を受信する時間帯が上記プリアンブルシンボル区間に相当する)。
【0042】
尚、パケット/フレーム同期シーケンス31bは全体で24シンボルあり、例えば1シンボルの時間が312.5nsであることから、トータル約7usとなる。この例では、312.5ns毎に上記平均値又は中央値の算出を行うことになる。
【0043】
図4に、PLCPプリアンブルの1シンボル区間の信号例を示す。図示のように、プリアンブルシンボルの信号は、OFDMシンボルの信号とは異なるものの、一定の包絡線を持たない点では同じである。
【0044】
本例による上記受信機10は、OFDMなど、包絡線が一定にならない変調方式による信号のダイレクトコンバージョン方式による受信装置であり、送受信機間の同期を確立するために、不図示の送信装置が、既知の特定信号(PLCPプリアンブル部31)を情報信号(ヘッダ部やPSDU)の前に送信している。そして、受信機10側では、PLCPプリアンブル部31の信号を用いて利得制御を行う。この利得制御は、本手法では、まず上記粗い利得制御(粗調整段階)を行い、その後に上記の高い精度の利得制御(微調整段階)と行うという2段階の制御を行う。
【0045】
粗い利得制御は、上記の通り、例えば、受信機10のA/D変換器17,18の出力電力が上記第1の閾値を超えた回数に基づき、例えばこの回数が一定期間内にある値を超えた場合に、過大利得であると判定して、利得を下げる制御をかける。この制御は上記の通り短時間で行う。
【0046】
そして、上記粗い利得制御を行った後に、A/D変換器17,18の出力電力を、粗い利得制御の場合より長い期間で監視し(粗い利得制御が例えば後述する20サンプル単位で判定・制御するのに対して、1シンボル(後述する128サンプル)単位で判定・制御する)、その中央値もしくは平均値が所定の一定値となるように利得の制御を行う。
【0047】
あるいは、上記粗い利得制御を行った後に、同期捕捉を行うためのマッチドフィルタの出力(ピーク電圧値)もしくはその平均値を監視し、これらピーク値又はその平均値が、所定の一定値となるように利得を制御する。
【0048】
以下、まず、上記粗い利得制御(粗調整段階)について、更に具体的・詳細に説明する。
まず、受信機10の制御部22は、初期状態においては、受信可能な最小の信号を検出
できるようにするために、予め決められている最大の利得で利得制御している。この状態で、最小受信感度を大きく超えた受信信号が受信機10に入力された場合、IチャネルもしくはQチャネルのA/D変換器17、18の出力は、上述した搬送波の位相差に応じて、飽和してしまう。
【0049】
ここでは上記第1の閾値は、飽和の判定閾値とする。すなわち、第1の閾値の一例を、Isat2(Isat;A/D変換器17の出力の最大値=飽和出力)とする。尚、第1の閾値の一例をQsat2(Qsat;A/D変換器18の出力の最大値=飽和出力)としてもよい。
【0050】
これより、「判定および計測部」21は、電力演算部20から上記演算結果(I2+Q2)が出力される毎に、
(I2+Q2)>= Isat2
であるか否かを判定する。すなわち第1の閾値を超えたか否か(飽和したか否か)を判定する。そして、飽和したと判断した場合には、上記「第1の閾値を超えた回数」を+1インクリメントする。
【0051】
尚、この場合、Iチャネル、Qチャネルいずれの出力も飽和していなくても、「判定および計測部」21において飽和したと判定される可能性があるが、この場合も受信機入力電力が十分大きいと考えてよいため、飽和していると判断するものであってよい。
【0052】
「判定および計測部」21における飽和の判断(上記「第1の閾値を超えた回数」)が、予め決められている所定の数だけ継続した場合、もしくはある時間内に上記回数が所定の閾値(第2の閾値とする)を超えた場合は、制御部22は、受信機の利得が過大であると判断して、利得を下げるように制御する。本例では、この利得の下げ幅は一定であるとする。
【0053】
以下の説明では上記「ある所定時間内に上記回数が所定の閾値(第2の閾値とする)を超えた場合」を例にする。
ここで、上記粗い利得制御は上記の通り短時間で完了させるものであり、ここでは特にパケット/フレーム同期シーケンス31aの最初のシンボル(図3のSymbol0)で完了させるものとする。上記“所定時間”及び“利得の下げ幅”は、この目的を満たすように設定する。
【0054】
例えば、1プリアンブルシンボル区間=128サンプル(サンプリング周波数:528MHz)として上記瞬時電力値のサンプリングを行う場合には、上記“所定時間”は20サンプル程度(21サンプル等であってもよい)のサンプリング時間とし、上記“利得の下げ幅”は12dBに設定する。つまり、20サンプル毎に利得が過大であるか否かを判断して、過大である場合に12dBずつ利得を下げるように制御をかける。尚、上記第1の閾値を超えた回数は、20サンプル毎に‘0’にリセットする。
【0055】
この様にすると、1つのプリアンブルシンボル区間の信号を受信する間に最大で72dBのダイナミックレンジをカバーすることが出来る。これは、通常の使用範囲内では十分な値であり(送信出力の平均電力が約-14dBmで、受信機の最小受信感度が約-80dBmであることから、所要最大ダイナミックレンジは約66dB(実際にはそれよりも小さくなる))、かつA/D変換器のダイナミックレンジを考慮すれば、これにより最初のプリアンブルシンボル区間内で粗い精度の利得制御完了が可能となる。
【0056】
既に述べたように、粗い精度の利得制御が終了したら、続いて、高い精度の利得の補正を行う。
ここで、A/D変換器の出力には、入力信号の振幅に依らず、量子化雑音が付加される
。従って、A/D変換後のS/N比を最大にするためには、A/D変換によるオーバーフロー(結果として、出力信号の歪み)が発生しない範囲でA/D変換器への入力振幅を最大にすることが必要となる。
【0057】
この様なA/D変換による量子化雑音の影響を最小限に抑えるために、高精度の利得制御を行う。この時に、利得制御を図る指標として、ここでは2種類の指標を考える。
第一の指標は、1プリアンブルシンボル区間での電力演算部20の出力(I2+Q2)の中央値もしくは、平均値を取ることにより得られる。
【0058】
プリアンブルシンボルの電力およびそのヒストグラム(及び累積確率分布)を図5および図6に示す。ここで、上記の通り、プリアンブル信号は受信機側で既知の信号であるので(予め決められている特定の信号であるので)、図6に示すヒストグラムと累積確率分布は一意に決まる。よって、予めA/D変換器に対して最適となるレベルのプリアンブル信号のヒストグラムと累積確率分布を求めて、この累積確率分布から判定の基準となる値(ここでは、中央値又は平均値;以下、これらを基準値という)を求めておく。もし、A/D変換器に入力されるプリアンブル信号のレベルが上記最適なものであれば(換言すれば適切な利得であったときには)、このプリアンブル信号に対して算出される中央値又は平均値は、上記基準値と同じになることになる。
【0059】
これより、上記「判定および計測部」21による中央値もしくは平均値の算出結果と、予め設定されている上記基準値とに基づいて、適切な利得を決定できる。すなわち、中央値もしくは平均値が上記基準値より大きい場合には利得を下げる、逆に基準値より小さい場合には利得を上げる、と言う形で制御をかけることが可能となる。これについて以下、詳しく説明する。
【0060】
尚、上述した“A/D変換器に対して最適となるレベルのプリアンブル信号”とは、開発者等が任意に決めてよいものであるが、例えば、ぎりぎり飽和しない程度の信号レベルとすること等が考えられる。すなわち、上述した、A/D変換によるオーバーフローが発生しない範囲でA/D変換器への入力振幅を最大にするものである。尚、飽和しないことに関しては既に上記粗い制御によって担保されている。
【0061】
まず、図5は、図4に示す1プリアンブルシンボル区間での受信信号に対して、電力演算(I2+Q2)の結果(信号電力の瞬時値)として得られるものである。さらに、この信号電力の瞬時値のヒストグラムおよび累積確率分布を示したものが図6となる。
【0062】
尚、ヒストグラムおよび累積確率分布の算出は、「判定および計測部」21が実行する。「判定および計測部」21は、更に、この算出結果に基づいて上記の通り中央値を演算する。これら、ヒストグラム、累積確率分布、中央値の算出処理は、既知のものであり、特に説明しない。
【0063】
プリアンブル31は、従来技術で説明したように、受信機10側で同期を捕捉する為に使用される、受信機10にて既知である信号列である。したがって、その信号電力の瞬時値のヒストグラムおよび累積確率分布は、既知となる(複数種類ある内のいずれかのプリアンブル信号が送信されて来たのかは、従来技術で判別できるので、判別した種類に応じた信号電力のヒストグラムおよび累積確率分布は一意に決まる)。
【0064】
尚、“一意に決まる”とは、例えばA/D変換器に入力したプリアンブル信号レベルが、上述した“A/D変換器に対して最適となるレベルのプリアンブル信号”と同じであれば、両者のヒストグラムおよび累積確率分布は(これより中央値や平均値も)、ほぼ同じになるということである。
【0065】
例えば、仮に図6の例が上述した“A/D変換器に対して最適となるレベルのプリアンブル信号”のヒストグラム(及び累積確率分布)であるとした場合、図6の例において、累積確率が50%となる信号電力、すなわち信号電力の中央値は、(約)1.1になっている。よって、この1.1を上記中央値の基準値として予め記憶しておき、各プリアンブルシンボル区間での信号電力の中央値を求めて、求めた中央値と上記中央値の基準値とに基づいて後述する演算処理を行うことで、最適な利得を求めることが可能となる(信号振幅は2を超えることはないことも図4よりわかるので)。
【0066】
すなわち、受信機10側では、まず、上記の通り、「判定および計測部」21が、1つのプリアンブルシンボルを受信する期間における電力演算結果の中央値を演算する。この中央値の演算結果をsとしたときに、制御部22は、現在の増幅器の利得(=y倍と仮定)に対して、増幅器の利得をy×1.1/sに制御する。
【0067】
一般的な式にすると、上記中央値の基準値をpとすると、
新たな利得=y×p/s
となる。
【0068】
平均値を用いる場合も、同様である(中央値を平均値に置き換えるだけ)。すなわち、平均値の演算結果をtとし、平均値の基準値をqとすると、
新たな利得=y×q/t
となる。
【0069】
尚、上記基準値は、上述した複数種類ある各プリアンブル信号毎に設定されているものであり、送信されてきた信号が複数種類のうちの何れであるかを判定すると、判定した種類に応じた基準値を用いることになる。
【0070】
図7に、第二の指標を用いる実施形態(第2の実施例)の受信機の構成図を示す。
図7に示す構成において、図1に示す構成と同じ構成については同一符号を付してあり、その説明は省略し、図1の構成と異なる点についてのみ説明する。尚、図示の同期検出部42は、同期検出・復調部19における同期検出の部分を抜き出して示しているだけである。
【0071】
図7の構成で図1の構成と異なる点、1つめは、図示の制御部41が、微調整段階に関しては同期検出部42(マッチドフィルタ)の出力に基づいて、利得制御する点である。同期検出部42(マッチドフィルタ)には、A/D変換器17,18の出力が入力している。よく知られているように、同期検出部42(マッチドフィルタ)の出力は、パケット/フレーム同期の検出に用いる。
【0072】
また、図示の「判定および計測部」43は、電力演算部20が出力する瞬時電力値に基づいて、この瞬時電力値が予め定められた閾値を越えるか否かを判定し、閾値(第1の閾値とする)を超える回数を計測する。この点では「判定および計測部」21と同じであるが、「判定および計測部」21とは異なり、平均値や中央値の算出処理は行わない。換言すれば、「判定および計測部」43は、粗調整段階に係る処理のみ実行する。微調整段階に関しては、上記の通り、同期検出部42(マッチドフィルタ)の出力を用いることになる。
【0073】
上記の通り、第2の実施例においても、粗調整段階に係る処理については第1の実施例と同じであるので、ここでは特に説明しないものとし、以下、微調整段階の処理について説明する。
【0074】
図8に、同期検出部42(マッチドフィルタ)の出力例を示す。
図示のように、マッチドフィルタの出力は、各シンボル毎に特定パターンの特定タイミングにおいて鋭いピークを持つことにより(符号パターンが一致すると,ピークパルスが出力される(自己相関という))、同期検出に用いられるが、本手法では、このピークパルス出力を利用して、制御部41が、マッチドフィルタ42のピークパルス出力値(ピーク値;ピーク電圧)が、予め設定される所定値になるように、利得の制御をかけるようにする。
【0075】
また、無線回線が多重反射によるフェージングを影響を受けている場合、この出力が遅れて検出される可能性があるが、このような場合には、マッチドフィルタ出力としてピークパルスが複数出力されるので、これら複数のピーク値の平均を求め、このピーク値の平均値が予め設定される所定値になるように制御をかける事も可能である。
【0076】
第二の指標に用いる同期検出部42(マッチドフィルタ)は、例えば図9のような構成となっている。
【0077】
すなわち、マッチドフィルタは、データに位相差(時間差)を与えるシフトレジスタ51と符号演算部52と加算器(積分器)53とで構成される。そして、例えば制御部41において、加算器53の出力(マッチドフィルタの出力)の絶対値が求められる。
【0078】
ここで、図9に示す符号演算部52に入力される各c1・・・cNは、プリアンブルの信号列である。マッチドフィルタの出力は、プリアンブルと同期が取れた時に鋭いピークを持つようになる。また、そのときのピーク電圧の絶対値(もしくはその2乗)と、マッチドフィルタに入力される信号電力の平均値とは、一対一の関係にある(例えば信号電力の平均値が2倍になれば、ピーク電圧の絶対値も2倍になる等)。従って、第一の指標と同様にして、最適な増幅器の利得を求めることができる。
【0079】
すなわち、例えば、上述した中央値や平均値の場合と同様に、予めA/D変換器に対して最適となるレベルのプリアンブル信号に対応するピーク電圧の絶対値(もしくはその二乗)を求めておき、これをピーク電圧の基準値mとして記憶しておく。
【0080】
そして、例えば、各シンボル毎に、同期検出部42(マッチドフィルタ)の出力のピーク電圧の絶対値uを求めることで、現在の増幅器の利得(=y倍と仮定)とすると、以下の式により最適な利得を求めることができる。絶対値ではなく二乗を用いる場合も同様である。
【0081】
新たな利得=y×m/u
ここまでは、無線回線に多重反射による干渉(マルチパスフェージング)がないと仮定した場合である。実際の無線回線は、壁などの反射によるマルチパスフェージングが発生する為、この時のマッチドフィルタの出力(絶対値)は、例えば図10に示すように、複数のピークパルスが出力されることになる。尚、もしフェージングを影響を受けない場合には、図10に示す各ピークパルスのうち、図示の時間0のピークパルスのみが出力されることになる。
【0082】
このような場合には、マッチドフィルタ出力の複数のピークパルスの絶対値の平均を求め、上記と同様に、この平均値と予め設定される平均値の基準値とに基づいて、増幅器の利得を求める。
【0083】
すなわち、予め複数のピークパルスの絶対値の平均値に対応する基準値nを求めて記憶しておき、任意の入力信号のプリアンブルに応じて求めた上記複数のピークパルスの絶対値の平均値をvとすると、以下の式により最適な利得を求めることができる。
【0084】
新たな利得=y×n/v
以上説明したように、本手法では、累積加算を行うことなく、A/D変換器の出力の二乗により得られる電力値(もしくは絶対値)自体が、ある基準を超えているか否かを判定し、一定期間における基準値を超えた数をカウントする。この為、所要回路は、一定期間にオーバーフローしない程度の大きさのバイナリ(2値)カウンタのみであり、簡単な構成で実現できる。また、上述した通り、高速に、適切な利得を決定することができる。
【0085】
また、PAPRが大きな信号が入力される場合は、最初に“閾値を超えた回数”=“A/D変換器がクリップ(飽和)した(おそれのある)数”として粗い制御を行っておくことで、適正な受信機利得を決定することが可能となる。すなわち、本手法では、上記の通り、粗い精度の利得制御の後に高精度の利得制御を行う。これは、A/D変換器においてオーバーフローおよびそれに伴う信号の歪みが発生した場合は、上記の高精度の利得制御のみでは対応できないからである。一方で、高速に粗い利得制御をかけた結果として、プリアンブルを1シンボル受信するだけでA/D変換器においてオーバーフローが発生していないことが担保できるので、上記様々な指標を利用した最適な利得を求めることが可能となり、結果として高速に利得制御が完了する。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】第1の実施例における受信機の構成図である。
【図2】MB−OFDM方式における標準的なデータフレーム構成を示す図である。
【図3】図2に示すプリアンブル部のフレーム構成を示す図である。
【図4】PLCPプリアンブルの1シンボル区間の信号例である。
【図5】1プリアンブルシンボル区間での信号電力の瞬時値の一例である。
【図6】信号電力の瞬時値のヒストグラムおよび累積確率分布の一例である。
【図7】第2の実施例の受信機の構成図である。
【図8】マッチドフィルタの出力例である。
【図9】マッチドフィルタの構成例である。
【図10】マルチパスフェージング発生時のマッチドフィルタ出力(絶対値)の一例である。
【図11】一般的なダイレクトコンバージョン方式の受信機の構成例である。
【符号の説明】
【0087】
10 受信機
11 LNA(ローノイズアンプ)
12,13 ミキサ(乗算器)
14 Lo(ローカル発振器)
15,16 VGA(可変ゲインアンプ)
17,18 A/D変換器
19 復調部
20 電力演算部
21 判定および計測部
22 制御部
30 データフレーム
31 PLCPプリアンブル
31a パケット/フレーム同期シーケンス
31b チャネル推定シーケンス
32 PLCPヘッダ
33 PSDU(ペイロード)
41 制御部
42 同期検出部(マッチドフィルタ)
43 「判定および計測部」
51 シフトレジスタ
52 符号演算部
53 加算器(積分器)
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線受信装置に係り、特にダイレクトコンバージョン方式を用いる無線受信機等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や無線LANと比較して、近距離を非常に高速に伝送するための無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)が検討されている。WPANを実現するための技術として、3.1GHzから10.6GHzを利用する超広帯域無線(UWB)が有力視されているが、UWBの一方式として、WiMedia Allianceが推進する、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex:直交周波数分割多重)変調と、特定の周波数パターンに沿って搬送波周波数を切り替える周波数ホッピングを組み合わせたマルチバンドOFDM(以下、MB−OFDM)方式が検討されている。
【0003】
MB−OFDM方式に限らず、最近の無線通信回路において、受信機の構成としてはダイレクトコンバージョン方式が用いられることが多い。特にMB−OFDM方式の場合は、搬送波周波数に対して、変調帯域が非常に広帯域であることから、通常、ダイレクトコンバージョン方式を用いられる。
【0004】
ダイレクトコンバージョン方式は、ゼロIF方式とも呼ばれ、従来、受信機において受信した信号を無線周波数帯から、中間周波数に変換(ダウンコンバート)することなく、一気にベースバンドに変換する方式である。
【0005】
一般的なダイレクトコンバージョン方式の受信機の構成例を、図11に示す。
図11に示す受信機100は、増幅器101、ミキサ(乗算器)102,103、Lo(ローカル発振器)104、A/D変換器105,106、及び復調部107を有する。
【0006】
増幅器101はアンテナからの受信信号を増幅して各ミキサ(乗算器)102,103へ出力する。各ミキサ(乗算器)102,103は、90°位相シフタ(不図示)を備えたローカル発振器(Lo104)によって直交ドライブされ、当該互いに直交するLo発振信号により上記受信信号をベースバンド信号に変換する。尚、Lo(ローカル発振器)104が出力する図示の0°の信号はLoが内部で生成する搬送波であり、図示の90°の信号はこの搬送波を上記90°位相シフタ(不図示)によってπ/2だけ位相シフトした信号である。そして、図示の例では、0°の信号はミキサ(乗算器)102に入力され、90°の信号はミキサ(乗算器)103に入力され、これより上記直交ドライブされることになる。
【0007】
ミキサ(乗算器)102の出力はA/D変換器105に入力し、ミキサ(乗算器)103の出力はA/D変換器106に入力し、それぞれA/D変換が行われる。ここで、A/D変換器105の出力はIチャネル(I成分)、A/D変換器106の出力はQチャネル(Q成分)となる。
【0008】
各A/D変換器105,106の出力は復調部107に入力し、復調部107においてディジタル信号処理にて、復調処理が行われる。
ここで、受信信号の振幅は、無線回線による減衰を受けるため、数十dBと言う広範囲の受信信号電力に対して、A/D変換器105,106への入力信号レベルが適正になるように前段の増幅器の利得を制御する(不図示の制御部などが利得制御している)。
【0009】
この利得制御(AGC制御)は、通常、受信機側で同期を捕捉する為に使用される、OFDM信号に先立って送られる既知の信号列(プリアンブル信号;予め決められている特定の繰り返し信号)の受信時に行われるが、MB−OFDM方式のプリアンブル信号は、実軸(Iチャネル)上にのみ信号成分を持つため、受信機の出力信号は、プリアンブル信号をs(t)、送受信機における搬送波の位相差をφ、無線回線などにおける利得/減衰をKとすると、
I チャネル: K・s(t)・cosφ
Q チャネル: K・s(t)・sinφ
となり、受信信号電力の大きさに関わらず、送信機と受信機の搬送波における位相差により、I/Qチャネル出力振幅は大きく変動する。
【0010】
これら利得制御を含む、MB−OFDM方式の受信回路に関しては、特許文献1および特許文献2などに記載の発明が提案されている。
また、特許文献3の発明は、RSSI信号を得るために、A/D変換部の出力から得られる受信信号の振幅成分を絶対値もしくは二乗することにより得られる電圧・電力成分を、一定時間に亘って累積加算するものである。
【特許文献1】特開2007−19985号公報
【特許文献2】US2006/0007985 Saturation handling during multiband receiver synchronization
【特許文献3】特開平10−322310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献1,2の発明は、受信回路全体の振る舞いについて記述するものであり、利得の制御に関して、特に利得制御を行うのに用いる信号の特性およびA/D変換器の特性を考慮した、具体的な利得制御の手法を提案するものではない。
【0012】
また、MB−OFDM方式を含むOFDM信号のように、PAPR(ピーク対平均電力比)の大きい信号の場合、特許文献3の発明のように累積加算を行うと、A/D変換部に過大入力が入ることにより発生するクリップ(飽和)現象の影響が見え難くなる。また、累積加算に必要な回路構成自体も、
(A/D変換部もしくは内部演算におけるビット数)×(累積期間サンプル数)
のメモリが必要になる等、比較的大規模になる。
【0013】
何れにしても、ダイレクトコンバージョン方式を用いる無線受信装置に関して、特にMB−OFDM方式のようなダイレクトコンバージョン方式(包絡線が一定にならない変調方式による信号のダイレクトコンバージョン方式)に関して、従来技術と比較して、より簡単な構成で高速に、無線受信装置内の増幅器の利得をA/D変換器への入力信号が適切なレベルになるように制御できるようにすることが望ましい。
【0014】
本発明は、例えばMB−OFDM方式等のようなダイレクトコンバージョン方式を用いる無線受信装置において、高速にホッピング、シンボル同期を確立するために、高精度のRSSI(RA/Dio Signal Strength Indicator)回路などの特別な回路を用いることなく、より簡単な構成で且つ高速に、無線受信装置内の増幅器の利得をA/D変換器への入力信号が適切なレベルになるように制御できる無線受信装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の無線受信装置は、ダイレクトコンバージョン方式を用いる無線受信装置において、増幅器により増幅された入力信号をA/D変換するA/D変換器の出力から瞬時電力
値を求める電力演算手段と、前記電力演算手段が求めた各瞬時電力値が所定の第1の閾値を超えた回数を計測し、あるいは所定期間毎に瞬時電力値の平均値又は中央値を算出する計測/算出手段と、前記入力信号がプリアンブル信号であるときの任意の第1の期間において、前記計測された回数が所定の第2の閾値を超えた場合、前記増幅器の利得を予め決められている一定値分下げる制御を行う利得の粗調整手段と、前記利得の粗調整手段による前記利得の制御が行われた後に、前記所定期間毎の前記平均値又は中央値と、予め設定されている該平均値又は中央値の基準値とに基づいて、前記増幅器の利得を求める利得の微調整手段とを有する。
【0016】
前記第1の閾値は、例えば、前記A/D変換器の飽和出力である。
上記構成の無線受信装置では、例えば初期状態においては、受信可能な最小の信号を検出できるようにする為に、予め決められている最大の利得で利得制御しており、まず、利得の粗調整手段において例えばA/D変換器の飽和を判定する毎に利得を一定値分下げる制御を繰り返すことで、飽和の判定が起こらなくなるまで利得を下げ続ける。
【0017】
その後、利得の微調整手段によって高精度に利得を決定する。前記プリアンブル信号は予め決まっている特定の信号であるので、予め平均値又は中央値の基準値を求めて設定しておくことで、最適な利得を求めることができる。
【0018】
利得の微調整手段による利得決定方法は、上記平均値や中央値を用いる手法に限らず、例えば以下の構成としてもよい。
すなわち、本発明の他の無線受信装置は、ダイレクトコンバージョン方式を用いる無線受信装置において、増幅器により増幅された入力信号をA/D変換するA/D変換器の出力から瞬時電力値を求める電力演算手段と、前記電力演算手段が求めた各瞬時電力値が所定の第1の閾値を超えた回数を計測する計測手段と、前記A/D変換器の出力を入力して同期検出信号を出力するマッチドフィルタと、前記入力信号がプリアンブル信号であるときの任意の第1の期間において、前記計測された回数が所定の第2の閾値を超えた場合、前記増幅器の利得を予め決められている一定値分下げる制御を行う利得の粗調整手段と、前記利得の粗調整手段による前記利得の制御が行われた後に、前記マッチドフィルタの出力のピークパルス値と、予め設定されている該ピークパルス値の基準値とに基づいて、前記増幅器の利得を求める利得の微調整手段とを有する。
【0019】
あるいは、前記利得の微調整手段は、マルチパスフェージングにより前記マッチドフィルタの出力として複数のピークパルスが発生する場合、該複数のピークパルス値の平均値を求め、該平均値と予め設定されている該平均値に対応する基準値とに基づいて、前記利得を求めるようにしてもよい。
【0020】
また、例えば、前記第1の期間は前記プリアンブル信号の最初のシンボル区間であり、前記利得の粗調整手段は、該最初のシンボル区間を複数に分割した各第2の期間毎に前記第2の閾値を超えるか否かの判定を行うものであり、前記一定値と、前記第2の期間の数を、前記最初のシンボル区間内で前記利得の粗調整手段による前記利得の制御が完了できるように設定することで、高速に利得の粗調整を行えるようにし、以って全体としても高速に利得の調整を行えるようにすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の無線受信装置等によれば、特にMB−OFDM方式等のようなダイレクトコンバージョン方式を用いる無線受信装置において、比較的簡単な構成にて高速に、A/D変換器への入力信号が適切なレベルになるように利得制御を実施することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1に、本例の第1の実施例における無線受信装置(無線受信機)の構成図を示す。
図示の受信機10は、例えば上記従来で説明したMB−OFDM変調方式による無線受信機であるが、この例に限らず、ダイレクトコンバージョン方式を用いる無線受信機であれば何でもよい。但し、特に、MB−OFDM変調方式のような包絡線が一定にならない変調方式による信号のダイレクトコンバージョン方式の無線受信機に関して、本手法は顕著な効果が得られる。
【0023】
図1に示す受信機10は、LNA(ローノイズアンプ)11、ミキサ(乗算器)12,13、Lo(ローカル発振器)14、VGA(可変ゲインアンプ)15、16、A/D変換器17,18、同期検出・復調部19、電力演算部20、判定および計測部21、制御部22を有する。
【0024】
AGC機能部である電力演算部20、判定および計測部21、及び制御部22の後述する機能は、例えば、不図示のCPU/MPU等の演算プロセッサが、不図示のメモリ等に予め記憶されている所定のアプリケーション・プログラムを読み出し・実行することにより実現される。また、判定および計測部21に関してはバイナリカウンタ等も用いられる。但し、この様な例に限らず、上記AGC機能部の機能の一部又は全部を、プログラムではなく回路により実現してもよい。
【0025】
上記構成のうち、ミキサ(乗算器)12,13、Lo(ローカル発振器)14、A/D変換器17,18、及び同期検出・復調部19は、上記従来の図11に示すミキサ(乗算器)102,103、Lo(ローカル発振器)104、A/D変換器105,106、及び復調部107と略同様の構成であってよく、その説明は省略する。また、LNA11も、従来の増幅器101に相当するものと考えてもよい。同期検出・復調部19は、同期検出と復調を行う。尚、従来の復調部107でも同期検出は行っている。同期検出・復調部19における同期検出は、例えばマッチドフィルタ等により行われる。
【0026】
また、図11には示していないが、従来でも、各A/D変換器17,18の前段に、それぞれ、上記VGA15,16が設けられている構成は存在する。特に、MB−OFDM変調方式の場合、この様な構成とする場合が多い。従って、従来でも、利得制御は、LNA11及びVGA15,16に対して行っており、この点で特に違いがあるわけではない。
【0027】
そして、図1の構成では、まず、各A/D変換器17,18は、上記従来のA/D変換器105,106と同様、それぞれ、受信信号のIチャネル(I成分)、Qチャネル(Q成分)の信号成分をディジタル出力する。以下、A/D変換器17の出力値を‘I’、A/D変換器18の出力値を‘Q’と記すものとする。
【0028】
電力演算部20は、上記各A/D変換器17,18の出力値I、Qを入力して、瞬時電力値(I2+Q2)を所定のサンプル間隔(一例を後に示す)で演算する。そして、この瞬時電力値を「判定および計測部」21へ出力する。
【0029】
「判定および計測部」21は、この瞬時電力値が予め定められた所定の閾値(第1の閾値とする)を越えるか否かを判定し、瞬時電力値が第1の閾値を超える回数を計測する。更に、瞬時電力値の各プリアンブルシンボル区間における平均値又は中央値を算出する。そして、この計測結果、算出結果を、制御部22へ出力する。
【0030】
制御部22は、上記「判定および計測部」21による計測結果/算出結果に基づいて、LNA(ローノイズアンプ)11とVGA(可変ゲインアンプ)15、16の利得(ゲイ
ン)制御を行う。以下、制御部22による利得(ゲイン)制御処理について説明する。
【0031】
本例の制御部22による利得制御は、高速であるが精度の粗い利得調整段階(粗調整段階)と、この粗調整終了後に、高い精度の利得の補正を行う段階(微調整段階)とに分けて実施する。
【0032】
粗調整段階においては、制御部22では、例えば、予め定められた一定時間内に上記第1の閾値を超えた回数が一定数を越えた場合等には(後述するように、この例に限らない)、利得を予め定められた値だけ下げるように制御をかける。
【0033】
この粗調整段階の利得調整は、短時間で(特に後述するように最初のシンボルで)完了するように制御することで、利得(ゲイン)制御処理全体の高速化に貢献させる。
微調整段階においては、第1の実施例においては、制御部22は、例えば上記最初のシンボルの次のプリアンブルシンボル区間(例えば後述する図3に示すSymbol1)において、上記「判定および計測部」21による中央値もしくは平均値の算出結果に基づいて、これが予め定められた値(基準値)となるように利得の制御をかける。第2の実施例においては、上記Symbol1等において、パケット/フレーム同期に使用されるマッチドフィルタの出力(シンボル毎に現れるピーク電圧値)もしくはその平均値に基づいて、これらピーク電圧値またはその平均値が、一定(予め定められた値(基準値))になるように利得の制御を行う。
【0034】
上記のように、本手法では、プリアンブル信号の最初の2つのシンボル(後述する図3に示すSymbol0、Symbol1)のみで、利得の調整を完了することが可能である。但し、これは搬送波周波数が1種類の場合である。MB−OFDM方式では、搬送波周波数を切り替える周波数ホッピングを行っていることから(通常、3種類の搬送波周波数)、各搬送波周波数に応じた利得の調整を行うことになる。また、微調整段階は、Symbol1のみで実行する例に限らず、更にその後の各プリアンブルシンボル区間(Symbol2以降)においても実行するようにしてもよい。但し、Symbol1のみにおける調整でも、ほぼ適切な利得を決定することができる。
【0035】
ここで、上記プリアンブルシンボル区間について、図2、図3を参照して説明する。
図2は、MB−OFDM方式における標準的なデータフレーム構成を示す図である。
図2に示すMB−OFDM方式のデータフレーム30は、PLCP(Physical Layer Convergence Protocol)プリアンブル31、PLCPヘッダ32およびPSDU(ペイロード)33の3つの部分から構成される。
【0036】
図示の通り、まず、先頭にはPLCP(Physical Layer Convergence Protocol)プリアンブル31と呼ばれる信号が存在する。これが従来で説明した、OFDM信号に先立って送られる既知の信号列(予め決まっている特定の繰り返し信号)に相当する。
【0037】
このPLCPプリアンブル31は、図3に示すように、パケットの同期即ちパケットの有無を確認する為のシンボル同期、フレーム同期に必要なシンボル群であるパケット/フレーム同期シーケンス31aと、無線通信路の状態の推定を行う為に必要なシンボル群であるチャネル推定シーケンス31bから構成される。
【0038】
次のPLCPヘッダ32には、受信機がデータ本体であるPSDU(PLCP Service Data Unit)33をデコードするために必要な情報(PHY及びMACの両方に関する情報)が付加されている。この情報には、通信のデータレート(WiMediaでは53.3Mbpsから480Mbpsまでデータレートが可変である)や、フレームのペイロードの長さ(尚、データの大きさをペイロード長という)等の情報が含まれている。最後のPSDU33はデータ本体であり、
当然、そのデータ量は可変である。
【0039】
上記の通り、PLCPプリアンブル部31は、図3に示すパケット/フレーム同期シーケンス31aと、チャネル推定シーケンス31bの2つから構成され、それぞれのシーケンスにて周波数パケット/フレーム同期、および無線回線の伝達関数の推定を行う。
【0040】
ここで、受信機の利得はチャネル推定シーケンス31bの前までには決定しなければならず、またパケット同期をとる際にもある程度の利得制御がかかってない状態では、同期をとる事は難しい。
【0041】
また、パケット/フレーム同期シーケンス31aと、チャネル推定シーケンス31bは、それぞれ、複数のシンボル(図示のSymbol0〜Symbol23とSymbol24〜Symbol29)から構成され、上記の通りSymbol0が最も最初に受信され、続いてSymbol1、Symbol2、・・・等と受信されていく)。これら各シンボルが上記プリアンブルシンボル区間に相当する(各シンボルの信号を受信する時間帯が上記プリアンブルシンボル区間に相当する)。
【0042】
尚、パケット/フレーム同期シーケンス31bは全体で24シンボルあり、例えば1シンボルの時間が312.5nsであることから、トータル約7usとなる。この例では、312.5ns毎に上記平均値又は中央値の算出を行うことになる。
【0043】
図4に、PLCPプリアンブルの1シンボル区間の信号例を示す。図示のように、プリアンブルシンボルの信号は、OFDMシンボルの信号とは異なるものの、一定の包絡線を持たない点では同じである。
【0044】
本例による上記受信機10は、OFDMなど、包絡線が一定にならない変調方式による信号のダイレクトコンバージョン方式による受信装置であり、送受信機間の同期を確立するために、不図示の送信装置が、既知の特定信号(PLCPプリアンブル部31)を情報信号(ヘッダ部やPSDU)の前に送信している。そして、受信機10側では、PLCPプリアンブル部31の信号を用いて利得制御を行う。この利得制御は、本手法では、まず上記粗い利得制御(粗調整段階)を行い、その後に上記の高い精度の利得制御(微調整段階)と行うという2段階の制御を行う。
【0045】
粗い利得制御は、上記の通り、例えば、受信機10のA/D変換器17,18の出力電力が上記第1の閾値を超えた回数に基づき、例えばこの回数が一定期間内にある値を超えた場合に、過大利得であると判定して、利得を下げる制御をかける。この制御は上記の通り短時間で行う。
【0046】
そして、上記粗い利得制御を行った後に、A/D変換器17,18の出力電力を、粗い利得制御の場合より長い期間で監視し(粗い利得制御が例えば後述する20サンプル単位で判定・制御するのに対して、1シンボル(後述する128サンプル)単位で判定・制御する)、その中央値もしくは平均値が所定の一定値となるように利得の制御を行う。
【0047】
あるいは、上記粗い利得制御を行った後に、同期捕捉を行うためのマッチドフィルタの出力(ピーク電圧値)もしくはその平均値を監視し、これらピーク値又はその平均値が、所定の一定値となるように利得を制御する。
【0048】
以下、まず、上記粗い利得制御(粗調整段階)について、更に具体的・詳細に説明する。
まず、受信機10の制御部22は、初期状態においては、受信可能な最小の信号を検出
できるようにするために、予め決められている最大の利得で利得制御している。この状態で、最小受信感度を大きく超えた受信信号が受信機10に入力された場合、IチャネルもしくはQチャネルのA/D変換器17、18の出力は、上述した搬送波の位相差に応じて、飽和してしまう。
【0049】
ここでは上記第1の閾値は、飽和の判定閾値とする。すなわち、第1の閾値の一例を、Isat2(Isat;A/D変換器17の出力の最大値=飽和出力)とする。尚、第1の閾値の一例をQsat2(Qsat;A/D変換器18の出力の最大値=飽和出力)としてもよい。
【0050】
これより、「判定および計測部」21は、電力演算部20から上記演算結果(I2+Q2)が出力される毎に、
(I2+Q2)>= Isat2
であるか否かを判定する。すなわち第1の閾値を超えたか否か(飽和したか否か)を判定する。そして、飽和したと判断した場合には、上記「第1の閾値を超えた回数」を+1インクリメントする。
【0051】
尚、この場合、Iチャネル、Qチャネルいずれの出力も飽和していなくても、「判定および計測部」21において飽和したと判定される可能性があるが、この場合も受信機入力電力が十分大きいと考えてよいため、飽和していると判断するものであってよい。
【0052】
「判定および計測部」21における飽和の判断(上記「第1の閾値を超えた回数」)が、予め決められている所定の数だけ継続した場合、もしくはある時間内に上記回数が所定の閾値(第2の閾値とする)を超えた場合は、制御部22は、受信機の利得が過大であると判断して、利得を下げるように制御する。本例では、この利得の下げ幅は一定であるとする。
【0053】
以下の説明では上記「ある所定時間内に上記回数が所定の閾値(第2の閾値とする)を超えた場合」を例にする。
ここで、上記粗い利得制御は上記の通り短時間で完了させるものであり、ここでは特にパケット/フレーム同期シーケンス31aの最初のシンボル(図3のSymbol0)で完了させるものとする。上記“所定時間”及び“利得の下げ幅”は、この目的を満たすように設定する。
【0054】
例えば、1プリアンブルシンボル区間=128サンプル(サンプリング周波数:528MHz)として上記瞬時電力値のサンプリングを行う場合には、上記“所定時間”は20サンプル程度(21サンプル等であってもよい)のサンプリング時間とし、上記“利得の下げ幅”は12dBに設定する。つまり、20サンプル毎に利得が過大であるか否かを判断して、過大である場合に12dBずつ利得を下げるように制御をかける。尚、上記第1の閾値を超えた回数は、20サンプル毎に‘0’にリセットする。
【0055】
この様にすると、1つのプリアンブルシンボル区間の信号を受信する間に最大で72dBのダイナミックレンジをカバーすることが出来る。これは、通常の使用範囲内では十分な値であり(送信出力の平均電力が約-14dBmで、受信機の最小受信感度が約-80dBmであることから、所要最大ダイナミックレンジは約66dB(実際にはそれよりも小さくなる))、かつA/D変換器のダイナミックレンジを考慮すれば、これにより最初のプリアンブルシンボル区間内で粗い精度の利得制御完了が可能となる。
【0056】
既に述べたように、粗い精度の利得制御が終了したら、続いて、高い精度の利得の補正を行う。
ここで、A/D変換器の出力には、入力信号の振幅に依らず、量子化雑音が付加される
。従って、A/D変換後のS/N比を最大にするためには、A/D変換によるオーバーフロー(結果として、出力信号の歪み)が発生しない範囲でA/D変換器への入力振幅を最大にすることが必要となる。
【0057】
この様なA/D変換による量子化雑音の影響を最小限に抑えるために、高精度の利得制御を行う。この時に、利得制御を図る指標として、ここでは2種類の指標を考える。
第一の指標は、1プリアンブルシンボル区間での電力演算部20の出力(I2+Q2)の中央値もしくは、平均値を取ることにより得られる。
【0058】
プリアンブルシンボルの電力およびそのヒストグラム(及び累積確率分布)を図5および図6に示す。ここで、上記の通り、プリアンブル信号は受信機側で既知の信号であるので(予め決められている特定の信号であるので)、図6に示すヒストグラムと累積確率分布は一意に決まる。よって、予めA/D変換器に対して最適となるレベルのプリアンブル信号のヒストグラムと累積確率分布を求めて、この累積確率分布から判定の基準となる値(ここでは、中央値又は平均値;以下、これらを基準値という)を求めておく。もし、A/D変換器に入力されるプリアンブル信号のレベルが上記最適なものであれば(換言すれば適切な利得であったときには)、このプリアンブル信号に対して算出される中央値又は平均値は、上記基準値と同じになることになる。
【0059】
これより、上記「判定および計測部」21による中央値もしくは平均値の算出結果と、予め設定されている上記基準値とに基づいて、適切な利得を決定できる。すなわち、中央値もしくは平均値が上記基準値より大きい場合には利得を下げる、逆に基準値より小さい場合には利得を上げる、と言う形で制御をかけることが可能となる。これについて以下、詳しく説明する。
【0060】
尚、上述した“A/D変換器に対して最適となるレベルのプリアンブル信号”とは、開発者等が任意に決めてよいものであるが、例えば、ぎりぎり飽和しない程度の信号レベルとすること等が考えられる。すなわち、上述した、A/D変換によるオーバーフローが発生しない範囲でA/D変換器への入力振幅を最大にするものである。尚、飽和しないことに関しては既に上記粗い制御によって担保されている。
【0061】
まず、図5は、図4に示す1プリアンブルシンボル区間での受信信号に対して、電力演算(I2+Q2)の結果(信号電力の瞬時値)として得られるものである。さらに、この信号電力の瞬時値のヒストグラムおよび累積確率分布を示したものが図6となる。
【0062】
尚、ヒストグラムおよび累積確率分布の算出は、「判定および計測部」21が実行する。「判定および計測部」21は、更に、この算出結果に基づいて上記の通り中央値を演算する。これら、ヒストグラム、累積確率分布、中央値の算出処理は、既知のものであり、特に説明しない。
【0063】
プリアンブル31は、従来技術で説明したように、受信機10側で同期を捕捉する為に使用される、受信機10にて既知である信号列である。したがって、その信号電力の瞬時値のヒストグラムおよび累積確率分布は、既知となる(複数種類ある内のいずれかのプリアンブル信号が送信されて来たのかは、従来技術で判別できるので、判別した種類に応じた信号電力のヒストグラムおよび累積確率分布は一意に決まる)。
【0064】
尚、“一意に決まる”とは、例えばA/D変換器に入力したプリアンブル信号レベルが、上述した“A/D変換器に対して最適となるレベルのプリアンブル信号”と同じであれば、両者のヒストグラムおよび累積確率分布は(これより中央値や平均値も)、ほぼ同じになるということである。
【0065】
例えば、仮に図6の例が上述した“A/D変換器に対して最適となるレベルのプリアンブル信号”のヒストグラム(及び累積確率分布)であるとした場合、図6の例において、累積確率が50%となる信号電力、すなわち信号電力の中央値は、(約)1.1になっている。よって、この1.1を上記中央値の基準値として予め記憶しておき、各プリアンブルシンボル区間での信号電力の中央値を求めて、求めた中央値と上記中央値の基準値とに基づいて後述する演算処理を行うことで、最適な利得を求めることが可能となる(信号振幅は2を超えることはないことも図4よりわかるので)。
【0066】
すなわち、受信機10側では、まず、上記の通り、「判定および計測部」21が、1つのプリアンブルシンボルを受信する期間における電力演算結果の中央値を演算する。この中央値の演算結果をsとしたときに、制御部22は、現在の増幅器の利得(=y倍と仮定)に対して、増幅器の利得をy×1.1/sに制御する。
【0067】
一般的な式にすると、上記中央値の基準値をpとすると、
新たな利得=y×p/s
となる。
【0068】
平均値を用いる場合も、同様である(中央値を平均値に置き換えるだけ)。すなわち、平均値の演算結果をtとし、平均値の基準値をqとすると、
新たな利得=y×q/t
となる。
【0069】
尚、上記基準値は、上述した複数種類ある各プリアンブル信号毎に設定されているものであり、送信されてきた信号が複数種類のうちの何れであるかを判定すると、判定した種類に応じた基準値を用いることになる。
【0070】
図7に、第二の指標を用いる実施形態(第2の実施例)の受信機の構成図を示す。
図7に示す構成において、図1に示す構成と同じ構成については同一符号を付してあり、その説明は省略し、図1の構成と異なる点についてのみ説明する。尚、図示の同期検出部42は、同期検出・復調部19における同期検出の部分を抜き出して示しているだけである。
【0071】
図7の構成で図1の構成と異なる点、1つめは、図示の制御部41が、微調整段階に関しては同期検出部42(マッチドフィルタ)の出力に基づいて、利得制御する点である。同期検出部42(マッチドフィルタ)には、A/D変換器17,18の出力が入力している。よく知られているように、同期検出部42(マッチドフィルタ)の出力は、パケット/フレーム同期の検出に用いる。
【0072】
また、図示の「判定および計測部」43は、電力演算部20が出力する瞬時電力値に基づいて、この瞬時電力値が予め定められた閾値を越えるか否かを判定し、閾値(第1の閾値とする)を超える回数を計測する。この点では「判定および計測部」21と同じであるが、「判定および計測部」21とは異なり、平均値や中央値の算出処理は行わない。換言すれば、「判定および計測部」43は、粗調整段階に係る処理のみ実行する。微調整段階に関しては、上記の通り、同期検出部42(マッチドフィルタ)の出力を用いることになる。
【0073】
上記の通り、第2の実施例においても、粗調整段階に係る処理については第1の実施例と同じであるので、ここでは特に説明しないものとし、以下、微調整段階の処理について説明する。
【0074】
図8に、同期検出部42(マッチドフィルタ)の出力例を示す。
図示のように、マッチドフィルタの出力は、各シンボル毎に特定パターンの特定タイミングにおいて鋭いピークを持つことにより(符号パターンが一致すると,ピークパルスが出力される(自己相関という))、同期検出に用いられるが、本手法では、このピークパルス出力を利用して、制御部41が、マッチドフィルタ42のピークパルス出力値(ピーク値;ピーク電圧)が、予め設定される所定値になるように、利得の制御をかけるようにする。
【0075】
また、無線回線が多重反射によるフェージングを影響を受けている場合、この出力が遅れて検出される可能性があるが、このような場合には、マッチドフィルタ出力としてピークパルスが複数出力されるので、これら複数のピーク値の平均を求め、このピーク値の平均値が予め設定される所定値になるように制御をかける事も可能である。
【0076】
第二の指標に用いる同期検出部42(マッチドフィルタ)は、例えば図9のような構成となっている。
【0077】
すなわち、マッチドフィルタは、データに位相差(時間差)を与えるシフトレジスタ51と符号演算部52と加算器(積分器)53とで構成される。そして、例えば制御部41において、加算器53の出力(マッチドフィルタの出力)の絶対値が求められる。
【0078】
ここで、図9に示す符号演算部52に入力される各c1・・・cNは、プリアンブルの信号列である。マッチドフィルタの出力は、プリアンブルと同期が取れた時に鋭いピークを持つようになる。また、そのときのピーク電圧の絶対値(もしくはその2乗)と、マッチドフィルタに入力される信号電力の平均値とは、一対一の関係にある(例えば信号電力の平均値が2倍になれば、ピーク電圧の絶対値も2倍になる等)。従って、第一の指標と同様にして、最適な増幅器の利得を求めることができる。
【0079】
すなわち、例えば、上述した中央値や平均値の場合と同様に、予めA/D変換器に対して最適となるレベルのプリアンブル信号に対応するピーク電圧の絶対値(もしくはその二乗)を求めておき、これをピーク電圧の基準値mとして記憶しておく。
【0080】
そして、例えば、各シンボル毎に、同期検出部42(マッチドフィルタ)の出力のピーク電圧の絶対値uを求めることで、現在の増幅器の利得(=y倍と仮定)とすると、以下の式により最適な利得を求めることができる。絶対値ではなく二乗を用いる場合も同様である。
【0081】
新たな利得=y×m/u
ここまでは、無線回線に多重反射による干渉(マルチパスフェージング)がないと仮定した場合である。実際の無線回線は、壁などの反射によるマルチパスフェージングが発生する為、この時のマッチドフィルタの出力(絶対値)は、例えば図10に示すように、複数のピークパルスが出力されることになる。尚、もしフェージングを影響を受けない場合には、図10に示す各ピークパルスのうち、図示の時間0のピークパルスのみが出力されることになる。
【0082】
このような場合には、マッチドフィルタ出力の複数のピークパルスの絶対値の平均を求め、上記と同様に、この平均値と予め設定される平均値の基準値とに基づいて、増幅器の利得を求める。
【0083】
すなわち、予め複数のピークパルスの絶対値の平均値に対応する基準値nを求めて記憶しておき、任意の入力信号のプリアンブルに応じて求めた上記複数のピークパルスの絶対値の平均値をvとすると、以下の式により最適な利得を求めることができる。
【0084】
新たな利得=y×n/v
以上説明したように、本手法では、累積加算を行うことなく、A/D変換器の出力の二乗により得られる電力値(もしくは絶対値)自体が、ある基準を超えているか否かを判定し、一定期間における基準値を超えた数をカウントする。この為、所要回路は、一定期間にオーバーフローしない程度の大きさのバイナリ(2値)カウンタのみであり、簡単な構成で実現できる。また、上述した通り、高速に、適切な利得を決定することができる。
【0085】
また、PAPRが大きな信号が入力される場合は、最初に“閾値を超えた回数”=“A/D変換器がクリップ(飽和)した(おそれのある)数”として粗い制御を行っておくことで、適正な受信機利得を決定することが可能となる。すなわち、本手法では、上記の通り、粗い精度の利得制御の後に高精度の利得制御を行う。これは、A/D変換器においてオーバーフローおよびそれに伴う信号の歪みが発生した場合は、上記の高精度の利得制御のみでは対応できないからである。一方で、高速に粗い利得制御をかけた結果として、プリアンブルを1シンボル受信するだけでA/D変換器においてオーバーフローが発生していないことが担保できるので、上記様々な指標を利用した最適な利得を求めることが可能となり、結果として高速に利得制御が完了する。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】第1の実施例における受信機の構成図である。
【図2】MB−OFDM方式における標準的なデータフレーム構成を示す図である。
【図3】図2に示すプリアンブル部のフレーム構成を示す図である。
【図4】PLCPプリアンブルの1シンボル区間の信号例である。
【図5】1プリアンブルシンボル区間での信号電力の瞬時値の一例である。
【図6】信号電力の瞬時値のヒストグラムおよび累積確率分布の一例である。
【図7】第2の実施例の受信機の構成図である。
【図8】マッチドフィルタの出力例である。
【図9】マッチドフィルタの構成例である。
【図10】マルチパスフェージング発生時のマッチドフィルタ出力(絶対値)の一例である。
【図11】一般的なダイレクトコンバージョン方式の受信機の構成例である。
【符号の説明】
【0087】
10 受信機
11 LNA(ローノイズアンプ)
12,13 ミキサ(乗算器)
14 Lo(ローカル発振器)
15,16 VGA(可変ゲインアンプ)
17,18 A/D変換器
19 復調部
20 電力演算部
21 判定および計測部
22 制御部
30 データフレーム
31 PLCPプリアンブル
31a パケット/フレーム同期シーケンス
31b チャネル推定シーケンス
32 PLCPヘッダ
33 PSDU(ペイロード)
41 制御部
42 同期検出部(マッチドフィルタ)
43 「判定および計測部」
51 シフトレジスタ
52 符号演算部
53 加算器(積分器)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイレクトコンバージョン方式を用いる無線受信装置において、
増幅器により増幅された入力信号をA/D変換するA/D変換器の出力から瞬時電力値を求める電力演算手段と、
前記電力演算手段が求めた各瞬時電力値が所定の第1の閾値を超えた回数を計測し、あるいは所定期間毎に瞬時電力値の平均値又は中央値を算出する計測/算出手段と、
前記入力信号がプリアンブル信号であるときの任意の第1の期間において、前記計測された回数が所定の第2の閾値を超えた場合、前記増幅器の利得を予め決められている一定値分下げる制御を行う利得の粗調整手段と、
前記利得の粗調整手段による前記利得の制御が行われた後に、前記所定期間毎の前記平均値又は中央値と、予め設定されている該平均値又は中央値の基準値とに基づいて、前記増幅器の利得を求める利得の微調整手段と、
を有することを特徴とする無線受信装置。
【請求項2】
ダイレクトコンバージョン方式を用いる無線受信装置において、
増幅器により増幅された入力信号をA/D変換するA/D変換器の出力から瞬時電力値を求める電力演算手段と、
前記電力演算手段が求めた各瞬時電力値が所定の第1の閾値を超えた回数を計測する計測手段と、
前記A/D変換器の出力を入力して同期検出信号を出力するマッチドフィルタと、
前記入力信号がプリアンブル信号であるときの任意の第1の期間において、前記計測された回数が所定の第2の閾値を超えた場合、前記増幅器の利得を予め決められている一定値分下げる制御を行う利得の粗調整手段と、
前記利得の粗調整手段による前記利得の制御が行われた後に、前記マッチドフィルタの出力のピークパルス値と、予め設定されている該ピークパルス値の基準値とに基づいて、前記増幅器の利得を求める利得の微調整手段と、
を有することを特徴とする無線受信装置。
【請求項3】
前記利得の微調整手段は、マルチパスフェージングにより前記マッチドフィルタの出力として複数のピークパルスが発生する場合、該複数のピークパルス値の平均値を求め、該平均値と予め設定されている該平均値に対応する基準値とに基づいて、前記利得を求めることを特徴とする請求項2記載の無線受信装置。
【請求項4】
前記第1の期間は前記プリアンブル信号の最初のシンボル区間であり、
前記利得の粗調整手段は、該最初のシンボル区間を複数に分割した各第2の期間毎に前記第2の閾値を超えるか否かの判定を行うものであり、
前記一定値と、前記第2の期間の数を、前記最初のシンボル区間内で前記利得の粗調整手段による前記利得の制御が完了できるように設定することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の無線受信装置。
【請求項5】
前記第1の閾値は、前記A/D変換器の飽和出力とすることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の無線受信装置。
【請求項1】
ダイレクトコンバージョン方式を用いる無線受信装置において、
増幅器により増幅された入力信号をA/D変換するA/D変換器の出力から瞬時電力値を求める電力演算手段と、
前記電力演算手段が求めた各瞬時電力値が所定の第1の閾値を超えた回数を計測し、あるいは所定期間毎に瞬時電力値の平均値又は中央値を算出する計測/算出手段と、
前記入力信号がプリアンブル信号であるときの任意の第1の期間において、前記計測された回数が所定の第2の閾値を超えた場合、前記増幅器の利得を予め決められている一定値分下げる制御を行う利得の粗調整手段と、
前記利得の粗調整手段による前記利得の制御が行われた後に、前記所定期間毎の前記平均値又は中央値と、予め設定されている該平均値又は中央値の基準値とに基づいて、前記増幅器の利得を求める利得の微調整手段と、
を有することを特徴とする無線受信装置。
【請求項2】
ダイレクトコンバージョン方式を用いる無線受信装置において、
増幅器により増幅された入力信号をA/D変換するA/D変換器の出力から瞬時電力値を求める電力演算手段と、
前記電力演算手段が求めた各瞬時電力値が所定の第1の閾値を超えた回数を計測する計測手段と、
前記A/D変換器の出力を入力して同期検出信号を出力するマッチドフィルタと、
前記入力信号がプリアンブル信号であるときの任意の第1の期間において、前記計測された回数が所定の第2の閾値を超えた場合、前記増幅器の利得を予め決められている一定値分下げる制御を行う利得の粗調整手段と、
前記利得の粗調整手段による前記利得の制御が行われた後に、前記マッチドフィルタの出力のピークパルス値と、予め設定されている該ピークパルス値の基準値とに基づいて、前記増幅器の利得を求める利得の微調整手段と、
を有することを特徴とする無線受信装置。
【請求項3】
前記利得の微調整手段は、マルチパスフェージングにより前記マッチドフィルタの出力として複数のピークパルスが発生する場合、該複数のピークパルス値の平均値を求め、該平均値と予め設定されている該平均値に対応する基準値とに基づいて、前記利得を求めることを特徴とする請求項2記載の無線受信装置。
【請求項4】
前記第1の期間は前記プリアンブル信号の最初のシンボル区間であり、
前記利得の粗調整手段は、該最初のシンボル区間を複数に分割した各第2の期間毎に前記第2の閾値を超えるか否かの判定を行うものであり、
前記一定値と、前記第2の期間の数を、前記最初のシンボル区間内で前記利得の粗調整手段による前記利得の制御が完了できるように設定することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の無線受信装置。
【請求項5】
前記第1の閾値は、前記A/D変換器の飽和出力とすることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の無線受信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−65312(P2009−65312A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229708(P2007−229708)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]