説明

無線基地局、無線端末、信号測定方法及びコンピュータプログラム

【課題】周辺セルの基準信号受信強度の測定を簡便に、かつ正確に行うことが可能な無線基地局を提供する。
【解決手段】第1の基地局と、前記第1の基地局より狭い範囲をカバーする第2の基地局との間の干渉を調整するための前記第1の基地局の干渉調整に関する干渉調整情報を外部から取得する干渉情報取得部と、前記干渉情報取得部が外部から取得した前記干渉調整情報を用いて隣接セルの基準信号を測定する基準信号測定部と、を備える、無線基地局が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線基地局、無線端末、信号測定方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)方式やLTE(Long Term Evolution)方式などのデータ通信端末の普及により、データ通信トラフィックは急増している。特に大きな割合を占める、屋内におけるデータ通信のトラフィック対策が急務となっている。
【0003】
屋内用小電力基地局(フェムトセル)は、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)、FTTH(Fiber To The Home)、CATVなどのブロードバンド回線(以下BB回線)を介してインターネットやオペレータのコア・ネットワークに接続するものである。フェムトセルは、コア・ネットワークを介さずにデータ通信端末とインターネット間を接続できるため、上述した急増するトラフィック対策として期待される。
【0004】
またフェムトセルはユーザによって自宅やオフィス内に設置され、使用可能なユーザ(端末)を限定する事ができ、比較的小さいサービスエリア(カバレッジ)内でデータ通信端末と近距離で通信を行う。従って、フェムトセルは、良好な通信品質と高スループットの通信環境を提供する。
【0005】
また小電力基地局としては、フェムトセル以外にも、使用可能ユーザを限定しないピコセルがあり、フェムトセルと同様に良好な通信品質と高スループットの通信環境を提供し、コア・ネットワークへのトラフィックの対策として期待され、このフェムトセルを制御する技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−283756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
フェムトセルは、他の周辺セルとの干渉を回避するようにその最大送信電力を決定する必要があるため、起動時あるいは定期的に、周辺基地局の基準信号受信強度を測定する必要がある。従来のフェムトセルによる基準信号受信強度の測定は、基準信号の送信電力が常に一定であるものと想定されており、複数のサブフレームでの基準信号を測定し平均化するなどして瞬時の電波状況の変化を受けないように測定を行っていた。
【0008】
しかし、他の基地局間で干渉調整方法が取られた場合に、ダウンリンクのセル帯域幅内のサブバンドによって送信電力が異なったり、基準信号が含まれていないサブフレームが存在したりすると、フェムトセルが安定に確度の高い測定を行えなくなる問題がある。
【0009】
またフェムトセルの周辺にピコセルが存在し、このピコセルがマクロセルから大きな干渉を受けている場合に、マクロセルの基準信号やデータが送信されているサブフレームでは、フェムトセルによるピコセルの基準信号の測定が正確に行えない問題がある。
【0010】
そこで、本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的とするところは、周辺セルの基準信号受信強度の測定を簡便に、かつ正確に行うことが可能な、新規かつ改良された無線基地局、無線端末、信号測定方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示によれば、第1の基地局と、前記第1の基地局より狭い範囲をカバーする第2の基地局との間の干渉を調整するための前記第1の基地局の干渉調整に関する干渉調整情報を外部から取得する干渉情報取得部と、前記干渉情報取得部が外部から取得した前記干渉調整情報を用いて隣接セルの基準信号を測定する基準信号測定部と、を備える、無線基地局が提供される。
【0012】
本開示によれば、干渉情報取得部が、第1の基地局と当該第1の基地局より狭い範囲をカバーする第2の基地局との間の干渉を調整するための前記第1の基地局の干渉調整に関する干渉調整情報を外部から取得し、干渉情報取得部が外部から取得した前記干渉調整情報を用いて、基準信号測定部が隣接セルの基準信号を測定する。これにより、周辺セルの基準信号受信強度の測定を簡便に、かつ正確に行うことが可能となる。
【0013】
また、本開示によれば、第1の基地局と、前記第1の基地局より狭い範囲をカバーする第2の基地局との間の干渉を調整するための前記第1の基地局の干渉調整に関する干渉調整情報が通知される小型基地局管理サーバに基地局のセル識別子を指定して前記干渉調整情報を取得する干渉情報取得部と、前記干渉情報取得部が取得した前記干渉調整情報を用いて隣接セルの基準信号を測定する基準信号測定部と、を備える、無線端末が提供される。
【0014】
また、本開示によれば、第1の基地局と、前記第1の基地局より狭い範囲をカバーする第2の基地局との間の干渉を調整するための前記第1の基地局の干渉調整に関する干渉調整情報を外部から取得する干渉情報取得ステップと、前記干渉情報取得ステップで外部から取得された前記干渉調整情報を用いて隣接セルの基準信号を測定する基準信号測定ステップと、を備える、信号測定方法が提供される。
【0015】
また、本開示によれば、コンピュータに、第1の基地局と、前記第1の基地局より狭い範囲をカバーする第2の基地局との間の干渉を調整するための前記第1の基地局の干渉調整に関する干渉調整情報を外部から取得する干渉情報取得ステップと、前記干渉情報取得ステップで外部から取得された前記干渉調整情報を用いて隣接セルの基準信号を測定する基準信号測定ステップと、を実行させる、コンピュータプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本開示によれば、周辺セルの基準信号受信強度の測定を簡便に、かつ正確に行うことが可能な、新規かつ改良された無線基地局、無線端末、信号測定方法及びコンピュータプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一般的な通信システムの構成例を示す説明図である。
【図2】周波数多重(FDD)のLTE方式におけるダウンリンク信号のフレームフォーマットの例を示す説明図である。
【図3】基地局による干渉回避の例を示す説明図である。
【図4】基地局による干渉回避の例を示す説明図である。
【図5】マクロセルの特定のサブフレームにデータやCRSを挿入しないサブフレーム(Almost Blank Subframe(ABS))を示す説明図である。
【図6】ABSのパターンの例を示す説明図である。
【図7】本開示の一実施形態に係るデータ通信システムの全体構成を示す説明図である。
【図8】本開示の一実施形態に係るフェムトセル20に含まれる制御部22の構成を示す説明図である。
【図9】本開示の一実施形態にかかるデータ通信システム1の動作を示す流れ図である。
【図10】本開示の一実施形態にかかるデータ通信システム1の動作を示す流れ図である。
【図11】本開示の一実施形態にかかるデータ通信システム1の動作を示す流れ図である。
【図12】本開示の一実施形態にかかるデータ通信システム1の動作を示す流れ図である。
【図13】本開示の一実施形態にかかるデータ通信システム1の動作を示す流れ図である。
【図14】本開示の一実施形態にかかるフェムトセル20における無線通信部24の構成例を示す説明図である。
【図15】本開示の一実施形態にかかるフェムトセル20における無線通信部24の構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
<1.従来技術及びその問題点>
<2.本開示の一実施形態>
[2−1.データ通信システムの全体構成]
[2−2.データ通信システムの動作]
[2−2−1.第1の動作例]
[2−2−2.第2の動作例]
[2−2−3.第3の動作例]
[2−2−4.第4の動作例]
[2−2−5.第5の動作例]
[2−3.無線通信部の構成例]
<3.まとめ>
【0020】
<1.従来技術及びその問題点>
まず、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明するにあたり、従来技術及びその問題点について説明する。
【0021】
図1は、一般的な通信システムの構成例を示す説明図である。インターネットと、コア・ネットワークA、コア・ネットワークBとが相互に接続されており、コア・ネットワークA、Bには、それぞれマクロセル及びピコセルが接続されている。そして図1には、コア・ネットワークAのマクロセルと通信するマクロセル端末(Macro UE)及びピコセルと通信するピコセル端末(Pico UE)が図示されている。
【0022】
また、図1には、インターネットに接続されているフェムトセルと、そのフェムトセルと通信するフェムトセル端末(Femto UE)とが図示されている。さらに図1には、フェムトセルを管理するためのフェムトセル管理サーバ(SONサーバ)も図示されている。
【0023】
無線基地局の最大送信電力とは、許容された周波数帯域内で無線局が送信する総合電力の許容値を指す。例えばLTE方式の基地局が端末へ送信するダウンリンクの物理チャネルおよび信号には、個別ユーザ向けデータを伝送する物理下り共用チャネル(PDSCH)、ダウンリンクの制御情報を伝送する物理下り制御チャネル(PDCCH)、端末がネットワークにアクセスするために必要なシステム情報を伝送する物理報知チャネル(PBCH)、端末に対しトランスポートブロックを再送すべきか否かを示すための確認応答を伝送する物理ハイブリッドARQ通知チャネル(PHICH)、PDCCH復号に必要な情報を伝送する物理制御フォーマット通知チャネル(PCFICH)、端末が変動する下り物理チャネルにおいて同期検波を行うためダウンリンクのチャネル推定に使用されるダウンリンク基準信号(Reference Signal)、端末のセルサーチを助けセルの物理レイヤセルID(PCI)を検出できるようにする第1同期信号(PSS)および第2同期信号(SSS)などがある。物理下り共用チャネルなどは基地局がサービスしているユーザ数などに応じて電力が変動しているが、最大送信電力はこれら全てのチャネルを合わせた総合電力に許容される最大値を示す。
【0024】
端末は、無線基地局が送信する同期用基準信号を受信することにより、同期確立及びチャネル推定等を行い、無線基地局との間でデータの送受信を行う。従って、端末において同期用基準信号を良好な受信品質で受信できるようにすることが、良好な通信品質を提供するために必要となる。この同期用基準信号とは、例えばUMTS方式においては共通パイロットチャネル(CPICH)を指し、LTE方式においてはダウンリンク基準信号の1つであるセル固有基準信号(CRS)を指す。これらの同期用基準信号は最大送信電力に対して固定の電力比(例えば、最大送信電力−10dB)にて一定の送信電力で送信される。
【0025】
広域のカバレッジと大きなユーザ容量を提供する広域基地局(マクロセル)は、詳細な実地調査を行った上で設置場所や最大送信電力を決定する基地局であり、無線ネットワークの設計変更が無い限り、通常はその広域基地局の最大送信電力等は変更されない。一方、フェムトセルはユーザによって任意に設置される基地局であり、動作を開始するタイミングなどをオペレータが把握できないため、最適な最大送信電力などの無線パラメータを自立的に設定する機能がフェムトセルに必要とされる。この無線パラメータには最大送信電力の他にも、例えば、キャリア周波数、基地局ID、さらにUMTS方式の場合にはスクランブルコードなどもある。
【0026】
フェムトセルは使用可能なユーザ(端末)を限定する仕組みを持つため、干渉は重要な問題であり、特に同一周波数で運用されたフェムトセルとマクロセルとの間での干渉回避はフェムトセルには必須となる。フェムトセルにアクセスが許されていないマクロセルからサービスされている端末(マクロセル端末)は、フェムトセルに近づいてマクロセルからのダウンリンク信号よりフェムトセルからのダウンリンク信号が大きくなった場合にも、フェムトセルにハンドオーバーできず、フェムトセルが送信するダウンリンク信号がマクロセル端末にとっては干渉雑音となる。一方、フェムトセルからサービスされている端末(フェムトセル端末)にとっては、マクロセルから送信されるダウンリンク信号が干渉雑音となる。
【0027】
フェムトセルを設置する際には、マクロセル端末がフェムトセルに近づいた際にフェムトセルからの干渉により通信不能とならないように、マクロセルとの干渉を避ける無線パラメータをフェムトセルに設定する必要がある。無線パラメータのうち、キャリア周波数、基地局ID、UMTS方式のスクランブルコードの設定に関しては、例えばフェムトセルがその起動時にフェムトセル管理サーバ(SONサーバ)にアクセスし、同一オペレータが運用するリストを参照し、周辺の基地局による使用状況と重ならないように選択する方法がある。
【0028】
一方、無線パラメータのうち最大送信電力に関しては、周辺基地局が送信する電波の強度をフェムトセルが測定して、これらの周辺基地局との干渉を出来るだけ抑えるようにフェムトセルの最大送信電力を自立的に設定することが必要となる。
【0029】
例えば、3GPP TR 36.921には、LTE方式のフェムトセル(HeNB)の送信電力の決定方法に関するガイドラインが示されている。このガイドラインでは、フェムトセル周辺の同一周波数チャネルを使用する基地局の基準信号の電力を測定し、フェムトセルの最大送信電力を決定する方法の例が次式で示されている。
【0030】
【数1】

【0031】
これらのパラメータは。フェムトセル管理サーバから与えることが可能である。フェムトセルが同一チャネルに他の基地局を検出しなかった場合には、Pmax で許容された値を最大送信電力として採用すれば良い。
【0032】
さらにフェムトセルは、隣接する周波数チャネルを使用する基地局との干渉を抑えるためにも、フェムトセルの最大送信電力を制限する必要がある。特に、隣接する周波数チャネルを別のオペレータが運用している場合には、フェムトセルの電波が隣接チャネルを使用する別のオペレータの端末に干渉を与え、別のオペレータのサービスを妨害しないように、フェムトセルの最大送信電力の制限方法が規格化されている。
【0033】

【0034】
【数2】

【0035】
ダウンリンクの受信機能を持ったフェムトセルは、例えば以下に説明するように、端末と同様の動作で周辺基地局のセルサーチを行って周辺基地局とフレーム同期を取り、報知チャネル等から必要なシステム情報の復号と、基準信号の強度の測定が可能になる。
【0036】
図2は、周波数多重(FDD)のLTE方式におけるダウンリンク信号のフレームフォーマットの例を示す説明図である。フェムトセルは、個々の基地局に割り振られる物理レイヤセルID(PCI)に対応した信号系列を使用した第1同期信号(PSS)及び第2同期信号(SSS)を検出することによって、PCIとフレームタイミングとを検出する。またPSS及びSSSの無線フレーム内の配置は、周波数多重方式(FDD)と時間多重方式(TDD)とでは異なるため、フェムトセルはPSS及びSSSの検出と同時に、サーチしているセルがFDDシステムとTDDシステムのどちらを使用しているかをも判定できる。基地局のシステム帯域幅が未知であっても簡易にセルサーチを可能にするために、同期信号はサービス帯域幅によらず常に中央の6リソースブロックの帯域に配置されている。
【0037】
また、システム情報は、物理報知チャネル(PBCH)と物理下り共用チャネル(PDSCH)にマッピングされている。
【0038】
PBCHには、ダウンリンクのセル帯域幅、送信アンテナ数、制御情報の構造などのマスター情報ブロック(MIB)がマッピングされている。PDSCHには、端末がこのセルに在圏できるかどうかの情報、アップリンクの帯域幅、ランダム・アクセス・チャネルのパラメータ、アップリンク送信電力制御に関するパラメータ、セル再選択に関する情報、隣接セルに関する情報などのシステム情報ブロック(SIB)がマッピングされている。フレームタイミングを検出したフェムトセルは、PBCHにマッピングされたMIBを復号し、MIBからダウンリンクのセル帯域幅を知り、PDCCHを受信してSIBが割り当てられるPDSCHのリソースブロックの位置を知り、対応するPDSCHからSIB情報を復号する。
【0039】
セル固有基準信号(CRS)は、図2に示すように、周波数領域では6サブキャリア間隔で、スロット内の第1番目と最後から3番目のOFDMシンボルに挿入される。物理レイヤセルID(PCI)によってセル固有基準信号が最初に配置されるサブキャリアの位置には数種類のパターンがあり、図2はそのうちの一つの例を示している。また、ダウンリンク複数アンテナ送信の場合に、アンテナごとの基準信号が重ならないようにアンテナポートごとにOFDMシンボルとサブキャリアにオフセットが付加される。
【0040】
フェムトセルは、既に検出したPCIと送信アンテナ数から、検出すべきセル固有基準信号(CRS)の挿入されたリソース・エレメントの位置を知っているので、その受信強度を測定することができる。
【0041】
基地局は、自身のカバレッジ及び通信品質を確保するために、他の基地局との干渉を抑えなければならない。同一のキャリア中心周波数で運用される基地局同士では、例えばLTE方式ではリソースブロック(あるいはサブバンド)の分離と送信電力制御とによって、干渉を抑えられる。また、異なるキャリア中心周波数で運用される基地局同士では、フィルタの周波数選択度による分離と送信電力制御によって、干渉が抑えられる。
【0042】
図3及び図4は、基地局による干渉回避の例を示す説明図である。図3は、同一のキャリア中心周波数で運用されるマクロセル間で、干渉を受ける可能性のあるセル・エッジのユーザに割り当てるサブバンド周波数を、隣接する基地局間で重ならないようにするFractional Frequency Reuse(FFR)による方式の例であり、図4は、Soft Frequency Reuse(SFR)による方式の例である。
【0043】
基地局は、自らが使用するFrequency Reuseの情報として、その基地局が送信するサブバンドごとの送信電力の情報(Relative Narrowband Transmit Power(RNTP))を、隣接する他の基地局へ向けて基地局間バックボーン回線(X2)を用いたメッセージで通知することができる。このメッセージを受信した他の基地局が、セル・エッジのユーザに割り当てるサブバンド周波数を重ならないように配置していくことでネットワーク全体が形成できる。
【0044】
マクロセル同士は、それぞれ同じような大きさのカバーエリアであり、複数のマクロセルで広域をカバーする、図3に示したような配置を取る。一方ピコセルは、マクロセルに比べてカバーエリアが小さく、局所的な地域をカバーさせる目的のため、図1に示したようにマクロセルとオーバーレイする配置となる。従って、マクロセルとピコセルとの間の干渉は非常に厳しくなる。
【0045】
従って、ピコセルのユーザが使用する制御チャネルをマクロセルからの干渉から守るため、図5に示すように、マクロセルの特定のサブフレームにデータやCRSを挿入しないサブフレーム(Almost Blank Subframe(ABS))を使用し、ピコセルは重要な信号をこの時間に端末に伝送することができる。
【0046】
マクロセルは、自らが使用するAlmost Blank Subframe(ABS)のサブフレーム番号を、マクロセルのカバーエリア内にあるピコセルへ向けて基地局間バックボーン回線(X2)を用いたメッセージ(ABS情報)で通知することができる。このメッセージを受信したピコセルは、ピコセルのユーザへの重要な情報をこのサブフレームに割り当てることで、干渉回避を行うことができる。
【0047】
LTE方式のトランスポートブロックの再送確認応答の周期の関係により、ABSを使用するサブフレームのパターンは40msで繰り返している。図6は、ABSのパターンの例を示す説明図である。図6には、ABSの必要頻度に合わせた4種のABSのパターン例が示されている。例えばFDDの場合、端末から送信するアップリンクデータに対するピコセルからの再送確認応答(ACK/NACK)は8サブフレーム(8ms)ごとに出るので、ACK/NACKをマクロセルからの厳しい干渉から保護するためにはABSが8msで発生するのが望ましい。サブフレーム#5はシステム情報ブロックを送信するサブフレームであるためABSには設定できない。図6に示したような40ms間の40の個々のサブフレームがABSか否かをビットマップで表したものがABS情報として基地局間で通知される。
【0048】
端末は、自らが在圏するマクロセルやピコセルなどの基地局(サービングセル)に対し、サービングセルの基準信号受信強度および隣接セルの基準信号受信強度を測定し報告しなければならない。これはセルラーシステムが、端末の移動に伴って端末が最適な基地局を選択するのを助け、端末が移動しながらデータ通信を継続することサポートするためである。隣接セルに関する情報はサービングセルのシステム情報ブロックに報知されており端末は容易に隣接セル情報を取得できる。また、干渉調整が行われている基地局をサービングセルとする端末は、測定すべきサブバンドやサブフレームの情報(測定対象情報)をサービングセルから上位レイヤのシグナリングで受けることが出来る。この測定対象情報に例えば基地局が使用するABSのパターン等が示される。
【0049】
フェムトセルは、他の周辺セルとの干渉を回避するようにその最大送信電力を決定する必要があるため、起動時あるいは定期的に、周辺基地局の基準信号受信強度を測定する必要がある。従来のフェムトセルによる基準信号受信強度の測定は、基準信号の送信電力が常に一定であるものと想定されており、複数のサブフレームでの基準信号を測定し平均化するなどして瞬時の電波状況の変化を受けないように測定を行っていた。
【0050】
しかし、他の基地局間で干渉調整方法が取られた場合に、ダウンリンクのセル帯域幅内のサブバンドによって送信電力が異なったり、基準信号が含まれていないサブフレームが存在したりすると、フェムトセルが安定に確度の高い測定を行えなくなる問題がある。
【0051】
またフェムトセルの周辺にピコセルが存在しこのピコセルがマクロセルから大きな干渉を受けている場合に、マクロセルの基準信号やデータが送信されているサブフレームでは、フェムトセルによるピコセルの基準信号の測定が正確に行えない問題がある。
【0052】
マクロセル内のフェムトセル数は膨大であり、またフェムトセルはユーザが設置・起動を行うため、オペレータからはフェムトセルの詳細な存在が把握できない、マクロセルとフェムトセル間に高速バックボーン回線も用意されていない、などの理由でマクロセルから干渉調整に関する情報をフェムトセル起動時にフェムトセルに通知することは困難となる。
【0053】
また隣接周波数チャネルの別のオペレータ間では、標準化されていない特殊なメッセージをやり取りすることができず、別事業者のマクロセルから干渉調整に関する情報をフェムトセルに通知することは困難となる。
【0054】
マクロセルにおけるFrequency Reuse(同一の周波数を空間的に再利用すること)の使用状況は、フェムトセルがリソースブロックごとの基準信号強度を綿密に測定すれば分かるが、この作業によってオーバーヘッドが大きくなる。適切なオーバーヘッドで確度の高い基準信号の測定のためには、周辺基地局の基準信号の電力やサブフレームに関する情報(干渉調整に関する情報)を、フェムトセルが得る方法が必要になる。
【0055】
そこで本開示は、このような背景においてなされたものであり、干渉を与えるかあるいは干渉を受ける基地局や端末同士間でのみ干渉調整に関する情報を伝送するだけでなく、干渉調整に直接関わらない基地局や端末が周辺基地局の使用する干渉調整に関する情報を検出できるようにして周辺基地局の強度測定を正確に行えるようにしたことを特徴とするものである。
【0056】
例えばフェムトセルが、周辺セルにおけるリソースブロックに対する基準信号の送信電力に関する情報および基準信号が含まれるサブフレーム番号に関する情報を、フェムトセル管理サーバを介して入手することで、フェムトセルによる周辺セルの基準信号受信強度の測定を簡便に正確に行うことを可能とすることを特徴とするものである。
【0057】
以上、従来技術及びその問題点、そして本開示の特徴について説明した。次に、本開示の一実施形態にかかるデータ通信システムの全体構成について説明する。
【0058】
<2.本開示の一実施形態>
[2−1.データ通信システムの全体構成]
図7は、本開示の一実施形態に係るデータ通信システムの全体構成を示す説明図である。以下、図7を用いて本開示の一実施形態に係るデータ通信システムの全体構成について説明する。
【0059】
図7に示したデータ通信システム1は、フェムトセルを含むデータ通信システムである。図7に示したように、本開示の一実施形態に係るデータ通信システム1は、データ通信端末10a、10b、10cと、フェムトセル(屋内小型基地局)20と、インターネット31と、フェムトセルゲートウェイ32と、コア・ネットワーク33と、BB回線モデム34と、マクロセル(屋外基地局)35と、ピコセル36と、加入者情報サーバ37と、フェムトセル管理サーバ40と、を含んで構成される。
【0060】
マクロセル(屋外基地局)35は、セル半径が数百mから数十kmの比較的広い範囲をカバーする基地局である。フェムトセル(屋内小型基地局)20は、セル半径が数十m程度の送信電力の小さい基地局である。フェムトセル20は、マクロセルの電波が届きにくい屋内に設置して使用できる。フェムトセル20は例えば、BB回線モデム34、BB回線、インターネット31、フェムトセルゲートウェイ32を経由してコア・ネットワーク33と接続する。
【0061】
フェムトセル20と、フェムトセルゲートウェイ32の間の通信インタフェースは、例えばIuh(3GPP TS 25.467)という標準インタフェースで定義されている。
【0062】
フェムトセル20は、データ通信端末10aと無線通信を行う無線通信部24と、フェムトセル管理サーバ40やフェムトセルゲートウェイ32と有線通信を行うIP通信部25と、周辺基地局のダウンリンク電波の測定のための無線通信部の周波数切替えの制御や、基準信号の測定制御などを行う制御部22と、フェムトセル管理サーバ40のアドレスやフェムトセルゲートウェイ32のアドレス、フェムトセル20にアクセス可能な端末のID(Allowed CSG List)などを記憶している記憶部26と、を含んで構成される。また記憶部26には、キャリア周波数や最大送信電力などのフェムトセル20の無線パラメータも記憶されている。
【0063】
フェムトセル管理サーバ40は、一つの事業者が扱うフェムトセルの立ち上げ準備やメンテナンスなどを行うサーバであり、複数のフェムトセルとの間の通信などを行うIP通信部42と、記憶部41と、を含んで構成される。記憶部41には、フェムトセル管理サーバ40が管理するフェムトセルが使用している物理セルID、キャリア周波数、隣接セル情報、位置情報などが記憶されている。図7には、ある事業者(例えば事業者Aとする)が運用する1つのフェムトセル管理サーバ40のみを記載しているが、他の事業者も同様のサーバを運用している。なお、本開示においては、複数の事業者が管理するフェムトセルを1つのフェムトセル管理サーバで管理するようにしてもよい。
【0064】
事業者Aの運用するフェムトセル20はフェムトセルゲートウェイ32を介しコア・ネットワーク33に接続している。同様に、マクロセル35は事業者Aの運用するマクロセルであり、ピコセル36は事業者Aの運用するピコセルである。事業者Aはダウンリンクキャリア周波数Aを運用しており、マクロセル35、ピコセル36、フェムトセル20はダウンリンクにキャリア周波数Aを送信している。
【0065】
データ通信端末10a、10b、10cは、いずれもコア・ネットワーク33を運用する事業者Aと契約した端末であり、データ通信端末10aはフェムトセル20を利用可能な屋内にあり、データ通信端末10bはピコセル36を介して通信しており、データ通信端末10cはマクロセル35を介して通信している。
【0066】
マクロセル35が送信するダウンリンク信号は、データ通信端末10bにとって干渉雑音である。従って、マクロセル35とピコセル36との間で干渉調整が行われ、マクロセル35が使用するABSの情報がピコセル36に通知される。ピコセル36は、データ通信端末10bへの重要なダウンリンク信号を、マクロセル35でABSに指定されたサブフレームの時間に相当するピコセル36のダウンリンクのサブフレームに割り当てて送信する。
【0067】
フェムトセル20の電源が投入されると、フェムトセル20はマクロセル35を含む周辺基地局の電波をサーチし受信電力を測定し、基地局の報知情報を受信して入手する。またフェムトセル20は、フェムトセル管理サーバ40に接続し、予め登録してある位置情報の周辺にあたる基地局の情報を入手し、フェムトセル20の測定結果と照合して位置を確認し、周辺基地局が使用する無線パラメータと重ならないような最適な無線パラメータを選択する。
【0068】
フェムトセル20が送信するダウンリンク信号はデータ通信端末10cにとって干渉雑音であり、フェムトセルは定期的に周辺基地局の基準信号の強度の測定結果に従って干渉を最低限に抑えるようにフェムトセルの最大送信電力を決定する。
【0069】
以上、図7を用いて本開示の一実施形態に係るデータ通信システムの全体構成について説明した。次に、本開示の一実施形態に係るフェムトセル20aに含まれる制御部22aの構成について説明する。
【0070】
図8は、本開示の一実施形態に係るフェムトセル20に含まれる制御部22の構成を示す説明図である。以下、図8を用いて本開示の一実施形態に係るフェムトセル20に含まれる制御部22の構成について説明する。
【0071】
図8に示したように、本開示の一実施形態に係るフェムトセル20に含まれる制御部22は、干渉情報取得部51と、基準信号測定部52と、電力設定部53と、を含んで構成される。
【0072】
干渉情報取得部51は、フェムトセル管理サーバ40に対して、マクロセル55から通知される干渉調整に関する情報である干渉調整情報を要求することで、干渉調整情報を取得する。フェムトセル管理サーバ40は、干渉情報取得部51から干渉調整情報の要求があると、そのフェムトセル20に対して干渉調整情報を返す。
【0073】
基準信号測定部52は、干渉情報取得部51がフェムトセル管理サーバ40から取得した干渉調整情報を用いて隣接セルの基準信号を測定する。電力設定部53は、基準信号測定部52が測定した隣接セルの基準信号を用いて、フェムトセル20の送信電力を決定する。基準信号測定部52による、干渉調整情報を用いた隣接セルの基準信号を測定方法と、電力設定部53による、フェムトセル20の送信電力の決定方法については、後に詳述する。
【0074】
以上、図8を用いて本開示の一実施形態に係るフェムトセル20に含まれる制御部22の構成について説明した。なお、制御部22は、例えば、制御部22が、記憶部26に格納されているコンピュータプログラムを読みだして実行することで、図8に示したような機能構成を有することができる。
【0075】
次に、本開示の一実施形態に係るフェムトセル20を含んだデータ通信システムの動作について説明する。
【0076】
[2−2.データ通信システムの動作]
[2−2−1.第1の動作例]
第1の動作例として、マクロセルが周辺のSONサーバにRNTP情報、ABS情報を通知する方法について説明する。具体的には、複数のフェムトセル20の設置や保守を管理するフェムトセル管理サーバ(SONサーバ)40が、フェムトセル20がシステム情報ブロックで報知する隣接セル情報と、マクロセル35が適宜アップデートする各マクロセル35の干渉調整情報を保持している。そして、フェムトセル20がフェムトセル管理サーバ40に周辺基地局の干渉調整情報を問い合わせると、フェムトセル管理サーバ40がフェムトセル20の周辺にあるマクロセル35の干渉調整情報をフェムトセル20に通知する。以下にその動作を説明する。
【0077】
隣接セルに関する情報は、サービングセルのシステム情報ブロックで報知しており、端末は隣接セル情報を容易に得ることができる。また端末が測定する必要のある隣接セルに関する情報は、サービングセルから上位レイヤのシグナリングで端末に通知される。隣接セル情報には、周辺基地局のキャリア周波数、基地局の物理レイヤセルID(PCI)、測定値を比較し順位を決める際のオフセット値などが対応付けられており、端末は隣接セル情報を得ることで効率的に周辺セルの測定を行うことができる。マクロセルが報知する隣接セル情報には同エリアに多数存在するフェムトセルの情報を載せることができない。しかし、フェムトセルの報知する隣接セル情報には、周辺のマクロセル情報を載せることができる。
【0078】
フェムトセル管理サーバ(SONサーバ)40は、フェムトセル20の無線パラメータの設定や管理、メンテナンスといった、複数のフェムトセル20の管理を行っている。フェムトセル20は、フェムトセル管理サーバ40のアドレスを記憶しており、起動時にフェムトセル管理サーバ40にアクセスして必要な情報を入手できる。フェムトセル20が報知する隣接セル情報も、フェムトセル管理サーバ40に記憶されており、フェムトセル管理サーバ40は、あるフェムトセルの周辺にどのマクロセルが存在するかを把握している。
【0079】
図9は、本開示の一実施形態にかかるデータ通信システム1の動作を示す流れ図である。マクロセル35が、例えばピコセル端末への干渉を軽減するため干渉調整機能を開始したり、干渉調整情報を変更したりする際は(ステップS101)、干渉調整を行う対象であるピコセルに干渉調整情報を通知する(ステップS102)だけでなく、フェムトセル管理サーバ40にも干渉調整に関する情報を通知する(ステップS103)。マクロセル35は、同じ基地局エリア内の多数のフェムトセル20に干渉調整情報を通知することは難しい。しかし、フェムトセル管理サーバ40は数も少なく、予めアドレスが分かっているので、マクロセル35は、フェムトセル管理サーバ40に干渉調整に関する情報を通知することが可能となる。
【0080】
フェムトセル20は、起動時に、フェムトセル管理サーバ40に周辺セルの干渉調整情報を要求する(ステップS104)。フェムトセル管理サーバ40は、このフェムトセル用に保持しているマクロセルに関する干渉調整情報を抽出し(ステップS105)、抽出した情報を要求のあったフェムトセル20へ返す(ステップS106)。フェムトセル20は、マクロセルに関する干渉調整情報を取得すると、周辺セルの測定を行い(ステップS107)、周辺セルの測定結果に基づいて、最大送信電力のアップデートを行う(ステップS108)。
【0081】
フェムトセル20がフェムトセル管理サーバ40から得た干渉調整情報が、例えばサブバンドに対する送信電力の情報(RNTP情報)の場合は、フェムトセル20は、マクロセル35のダウンリンクの測定したサブバンドの基準信号強度と、RNTP情報にある同サブバンドの送信電力とから、マクロセル35とフェムトセル20との間の伝播損失(パスロス)を求め、フェムトセル20の位置がマクロセルエリアのセル・サイトかセル・エッジかを判断する。そしてフェムトセル20は、これに対応するサブバンドを選択し、選択したサブバンドの基準信号の測定値を基に、最大送信電力を決定することが可能となる。
【0082】
フェムトセル20がフェムトセル管理サーバ40から得た干渉調整情報が、例えばデータやCRSを挿入しないサブフレーム番号の情報(ABS情報)の場合は、フェムトセル20はABSに設定されていない(つまりCRSが挿入されている)マクロセルのダウンリンクのサブフレームの基準信号のみを測定する。そしてフェムトセル20は、この測定値を基に最大送信電力を決定することが可能となる。
【0083】
初めてフェムトセル20が起動した場合で、フェムトセル管理サーバ40に隣接セル情報が無い場合は、フェムトセル20がセルサーチを行い、周辺基地局のPCIを検出し、このPCIに対する干渉調整情報を要求することにより、対応する情報を得ることが可能になる。
【0084】
図10は、本開示の一実施形態にかかるデータ通信システム1の動作を示す流れ図である。マクロセル35が、例えばピコセル端末への干渉を軽減するため干渉調整機能を開始したり、干渉調整情報を変更したりする際は(ステップS111)、干渉調整を行う対象であるピコセルに干渉調整情報を通知する(ステップS112)だけでなく、フェムトセル管理サーバ40にも干渉調整に関する情報を通知する(ステップS113)。
【0085】
そして、初めてフェムトセル20が起動した場合で、フェムトセル管理サーバ40に隣接セル情報が無い場合は、フェムトセル20はセルサーチを行って(ステップS114)、周辺基地局のPCIを検出し、このPCIに対する干渉調整情報をフェムトセル管理サーバ40に要求する(ステップS115)。
【0086】
フェムトセル管理サーバ40は、上記ステップS115でフェムトセル20から要求のあったPCIに対応する干渉調整情報を抽出し(ステップS116)、抽出した情報を要求のあったフェムトセル20へ返す(ステップS117)。フェムトセル20は、マクロセルに関する干渉調整情報を取得すると、周辺セルの測定を行い(ステップS118)、周辺セルの測定結果に基づいて、最大送信電力の設定を行う(ステップS119)。
【0087】
1つのマクロセル35のエリアに多数のフェムトセル20が存在しているので、一つのマクロセル35の干渉調整情報が多数のフェムトセル20で共有される。つまり、フェムトセル管理サーバ40がマクロセル35の干渉調整情報を仲介することで、コア・ネットワーク内に膨大なシグナリング量を必要とせず、効率よく情報を共有できる。
【0088】
そして、フェムトセル管理サーバ40のアドレスや、干渉調整情報の要求方法をインターネット上に公開することによって、隣接周波数の他オペレータのフェムトセルからの干渉調整情報の問い合わせにも対応でき、またセルラー端末以外の端末(例えば測位用端末)であっても、周辺基地局のPCIを検出して干渉調整情報をフェムトセル管理サーバ40に問い合わせることで、正確に基準信号を測定することが可能になる。すなわち、セルラー端末以外の端末(例えば測位用端末)が、図8に示したような制御部22の構成を有することで、周辺基地局のPCIを検出して干渉調整情報をフェムトセル管理サーバ40に問い合わせることで、正確に基準信号を測定することができる。
【0089】
[2−2−2.第2の動作例]
第2の動作例として、サブバンドごとの送信電力の情報、基準信号が含まれないサブフレームの情報を報知チャネルで通知する方法について説明する。この方法は、基地局が送信するサブバンドごとの送信電力の情報(RNTP情報)、データやCRSを挿入しないサブフレーム(Almost Blank Subframe(ABS))を、基地局がどのサブフレーム番号に使用しているかの情報(ABS情報)、などの干渉調整に関する情報を、その基地局の報知チャネルを使用したシステム情報として報知する方法である。
【0090】
ダウンリンクの受信機能を持ったフェムトセル20は、セルサーチの手順を使用して、測定しようとする基地局の第1同期信号(PSS)および第2同期信号(SSS)を検出して、PCIとフレームタイミングを検出し、物理報知チャネル(PBCH)にマッピングされたダウンリンクのセル帯域幅、送信アンテナ数、制御情報の構造などのマスター情報ブロック(MIB)を検出する。そしてフェムトセル20は、PDCCHを受信して、RNTP情報やABS情報の含まれるシステム情報ブロック(SIB)が割り当てられるPDSCHのリソースブロックの位置を知り、対応するPDSCHからシステム情報ブロックを復号することで、干渉調整に関する情報を得ることができる。
【0091】
つまり、基地局に端末として位置登録してシグナリングを受けなくても、上記の手順を行う受信機能をフェムトセル20に持たせることで、フェムトセル20は、干渉調整に関する情報を得られる。干渉調整に関する情報を用いて、上述の第1の動作例と同様に、フェムトセル20は周辺基地局の基準信号の正確な測定が可能になる。なお、ダウンリンクの受信機能を持ったフェムトセル20の構成例については後に詳述する。
【0092】
[2−2−3.第3の動作例]
第3の動作例として、フェムトセルがUE機能を持ち、一時的にマクロセルから測定対象情報を得る方法について説明する。この方法は、フェムトセル20が、測定すべきサブバンドやサブフレームの情報(測定対象情報)を、マクロセル35のシグナリングによって得るのに必要な最低限の端末としての通信機能を持ち、起動時にマクロセル35に一時的に端末としてアクセスし、測定対象情報をマクロセルから上位レイヤのシグナリングで受ける方法である。そして、フェムトセル20は、測定対象情報をもとにマクロセル35の基準信号の正確な測定を行って測定値を記憶し、その後端末の機能をOFFにし、測定値を最大送信電力の決定に使用する方法である。
【0093】
図11は、本開示の一実施形態にかかるデータ通信システム1の動作を示す流れ図である。フェムトセルは端末機能をONにすると(ステップS121)、セルサーチを開始し(ステップS122)、一番近いマクロセルのダウンリンクと同期を取る。フェムトセル20の端末機能がアップリンクの物理ランダムアクセスチャネル(PRACH)を使用してランダムアクセスプリアンブルをマクロセル35に送信すると(ステップS123)、マクロセル35は、ランダムアクセス応答(ステップS124)でフェムトセル端末機能の送信タイミング調整値と、次のアップリンクリソースの割り当てを返す。
【0094】
フェムトセル20は、端末機能を用いて、RRC接続要求(ステップS125)で端末識別子をネットワークに送る。マクロセル35からは、ランダムアクセスに成功した確認応答が返却される(ステップS126)。そして、マクロセル35が他の基地局と干渉調整を行っていれば、マクロセル35は、RRCメッセージで、フェムトセル20の端末機能が測定すべきサブバンドやサブフレームの情報(測定対象情報)を通知する(ステップS127)。
【0095】
フェムトセル20は、端末機能を用いて、上記ステップS127で通知される測定対象情報に従って周辺セルの測定を行い(ステップS128)、その測定対象情報および測定値をフェムトセル20の記憶部26に記憶する(ステップS129)。その後フェムトセル20は、端末機能をOFFにし、最大送信電力の設定を、先に記憶した周辺セルの測定値に基づいて行う(ステップS130)。
【0096】
フェムトセル20は、この方法で得たマクロセルの干渉調整に関する情報をフェムトセル管理サーバ40に通知してもよい。フェムトセル管理サーバ40がこれらフェムトセル20から通知されてくる情報を集めて、複数のフェムトセル間でマクロセルの干渉調整に関する情報を共有することができる。
【0097】
[2−2−4.第4の動作例]
第4の動作例として、フェムトセルの測定によりABSパターンを検出する方法について説明する。この方法は、ダウンリンクの受信機能を持ったフェムトセルが、ABSのパターンに従ってABSに設定されていないサブフレームの基準信号を測定する方法である。
【0098】
ダウンリンクの受信機能を持ったフェムトセル20は、セルサーチの手順を使用して、測定しようとする基地局の第1同期信号(PSS)および第2同期信号(SSS)を検出して、PCIとフレームタイミングを検出し、物理報知チャネル(PBCH)にマッピングされたダウンリンクのセル帯域幅、送信アンテナ数、制御情報の構造などのマスター情報ブロック(MIB)を検出する。フェムトセル20は、マクロセル35が送信するダウンリンクの、一定期間のサブフレームごとの基準信号受信強度を複数回測定し、ABSが実施されているサブフレーム番号のパターンを検出する。LTE方式のトランスポートブロックの再送確認応答の周期の関係により、ABSを使用するアブフレームのパターンは図5のように40msで繰り返している。従って、40ms間のサブフレームごとの基準信号強度を測定すれば、ABSのパターンが判別できる。
【0099】
このABSパターンが一定の時間繰り返し使用されることを想定し、フェムトセル20は、ABSのパターンを検出した後、予め定める一定期間、このABSのパターンに従ってABSに設定されていないサブフレームの基準信号を測定する。
【0100】
フェムトセル20は、この方法で得たマクロセルの干渉調整に関する情報をフェムトセル管理サーバ40に通知してもよい。フェムトセル管理サーバ40がこれらフェムトセル20から通知されてくる情報を集めて、複数のフェムトセル間でマクロセルの干渉調整に関する情報を共有することができる。
【0101】
ABSのパターンを検出するまでには、40ms間の測定を何度かする必要があるので時間が掛かる。一方、検出したABSのパターンをマクロセル35がそれだけ継続して使用するかはフェムトセル20からは分からない。図5に示したABSパターンにおいて、システム情報を送信するサブフレーム#5はABSに設定されないので、フェムトセル20は、上記の測定により、ABSが使用されていることが検出された時点で、サブフレーム#5などのABSが設定されない特定のサブフレームのみを基準信号強度の測定対象とする方法でもよい。またフェムトセル20は、図5に示したABSパターンを参照し、マクロセル35の基準信号が含まれない無線フレームに対応するマクロセル36の無線フレームの基準信号を測定する方法を用いても良い。
【0102】
[2−2−5.第5の動作例]
第5の動作例として、フェムトセル端末を一時的にマクロセルに移動させ干渉調整情報を得る方法について説明する。フェムトセル20は、アクセス可能な端末を制限できる基地局である。端末がフェムトセル20にアクセスできるか否かは、フェムトセル20にアクセス可能な端末のリスト(Allowed CSG List)によって制御される。Allowed CSG List (ACL)は、コア・ネットワーク33に接続されている加入者情報サーバ37に、ユーザの加入者情報に対するユーザがアクセス可能なフェムトセルのセルID(PCI)の関係として保管されている。加入者情報サーバ37に保管されている情報は、必要に応じてコア・ネットワーク33に接続されている各ノード、フェムトセル、端末のUIMにコピーされて、アクセス制御に使用される。PCIの追加や削除などのAllowed CSG Listの管理はオペレータによっても、フェムトセルのオーナーによっても可能となっている。
【0103】
図12は、本開示の一実施形態にかかるデータ通信システム1の動作を示す流れ図である。図12には、フェムトセル端末(データ通信端末10a)が一時的にマクロセル35に移動し、測定対象情報を得るシーケンス例が示されている。図12では、フェムトセル端末がデータ通信中のコネクテッドモードの場合を図示しているが、アイドルモード(データ通信中でない状態)であってもハンドオーバーの動作がセル再選択となるだけで同様の効果が期待できる。
【0104】
フェムトセル20が、加入者情報サーバ37にAllowed CSG Listの編集に関するメッセージを通知する(ステップS131)と、加入者情報サーバ37はACLの修正を実行し(ステップS132)、フェムトセル20及びデータ通信端末10aへアップデートしたACLを送信する(ステップS133、S134)。これにより、フェムトセル20の圏内にあってフェムトセル20からサービスを受けているデータ通信端末10aは、フェムトセル20へのアクセスを一時的に許可されなくなる。
【0105】
データ通信端末10aは、フェムトセル20から隣接基地局(マクロセル35)への移動を指示される。データ通信端末10aは、ハンドオーバー手順によって一時的にマクロセル35に移動し、マクロセル35から継続して通信サービスの提供を受ける。具体的には、データ通信端末10aはフェムトセル20にメジャメントレポートを送信すると(ステップS135)、フェムトセル20はマクロセル35に対してハンドオーバー要求を送信する(ステップS136)。そしてマクロセル35はフェムトセル20へハンドオーバー承認を送信し(ステップS137)、フェムトセル20はデータ通信端末10aへハンドオーバー命令を送信する(ステップS138)。フェムトセル20からのハンドオーバー命令を受信したデータ通信端末10aは、マクロセル35とのダウンリンク同期を取る(ステップS139)。
【0106】
データ通信端末10aは、マクロセル35に対して接続要求を送信すると(ステップS140)、マクロセル35は、データ通信端末10aに対して接続許可を返す(ステップS141)。そしてデータ通信端末10aは、マクロセル35から、データ通信端末10aが測定すべきサブバンドやサブフレームの情報(測定対象情報)を上位レイヤのシグナリングで受け取り(ステップS142)、測定対象情報を記憶しておく。
【0107】
一定期間をおいた後、フェムトセル20は加入者情報サーバ37に、データ通信端末10aをAllowed CSG Listに追加するよう、Allowed CSG Listの編集に関するメッセージを通知し(ステップS143)、データ通信端末10aのフェムトセル20へのアクセスを許可に戻す。加入者情報サーバ37はACLの修正を実行し(ステップS144)、フェムトセル20及びデータ通信端末10aへアップデートしたACLを送信する(ステップS145、S146)。
【0108】
もともとデータ通信端末10aは、フェムトセル20の圏内にあって、フェムトセル20の電波強度の強い場所にいる。従って、データ通信端末10aが周辺セル測定を行って(ステップS147)、メジャメントレポートをマクロセル35に送ると(ステップS148)、マクロセル35はメジャメントレポートに示されたフェムトセルのセルIDを参照し、フェムトセル20へのハンドオーバーを判定する(HO判定、ステップS149)。
【0109】
マクロセル35からハンドオーバー要求が、例えば加入者情報サーバ37に送られると(ステップS150)、加入者情報サーバ37は、Allowed CSG ListのフェムトセルのセルID、端末識別ID、加入者情報を照合して(アクセスチェック、ステップS151)、フェムトセル20にハンドオーバー要求を転送する(ステップS152)。
【0110】
フェムトセル20がマクロセル35にハンドオーバー承認を送信すると(ステップS153)、マクロセル35はデータ通信端末10aにフェムトセル20へのハンドオーバー命令を送信する(ステップS154)。ハンドオーバー命令を受信したデータ通信端末10aは、再度フェムトセルにハンドオーバーする。具体的には、データ通信端末10aはフェムトセル20との間でダウンリンク同期を取り(ステップS155)、フェムトセル20に接続要求を送信すると(ステップS156)、フェムトセル20はデータ通信端末10aに接続許可を返す(ステップS157)。
【0111】
フェムトセル20は、データ通信端末10aに測定対象情報を要求する(ステップS158)。データ通信端末10aは、上記ステップS142でマクロセル35から受け取ったマクロセルの測定対象情報を、フェムトセル20に転送する(ステップS159)。この測定対象情報は、すなわちマクロセル35の干渉調整情報に対応しており、フェムトセルが容易に干渉調整情報に変換できる。そしてフェムトセル20は、最大送信電力をアップデートする(ステップS160)。
【0112】
このように、フェムトセル20は、干渉調整に関する情報を用いて、上述の動作例1等と同様に、周辺基地局の基準信号の正確な測定が可能になる。データ通信端末10aがマクロセル35から受け取ったマクロセル35の測定対象情報をフェムトセル20に転送する際、同時にデータ通信端末10aによる周辺セル測定値を転送しても良い。データ通信端末10aが周辺セル測定値を転送した場合には、フェムトセル20は、周辺セル測定を行うことなく、データ通信端末10aの測定値を使用して最大送信電力を決定できる。
【0113】
図13は、本開示の一実施形態にかかるデータ通信システム1の動作を示す流れ図である。図13には、フェムトセル端末(データ通信端末10a)が一時的にマクロセル35に移動し、マクロセル35からフェムトセル20への干渉調整機能をトリガさせて、フェムトセル20が測定対象情報を得るシーケンス例が示されている。
【0114】
フェムトセル20が、加入者情報サーバ37にAllowed CSG Listの編集に関するメッセージを通知する(ステップS161)と、加入者情報サーバ37はACLの修正を実行し(ステップS162)、フェムトセル20及びデータ通信端末10aへアップデートしたACLを送信する(ステップS163、S164)。これにより、フェムトセル20の圏内にあってフェムトセル20からサービスを受けているデータ通信端末10aは、フェムトセル20へのアクセスを一時的に許可されなくなる。
【0115】
データ通信端末10aは、フェムトセル20から隣接基地局(マクロセル35)への移動を指示される。データ通信端末10aは、ハンドオーバー手順によって一時的にマクロセル35に移動し、マクロセル35から継続して通信サービスの提供を受ける。具体的には、データ通信端末10aはフェムトセル20にメジャメントレポートを送信すると(ステップS165)、フェムトセル20はマクロセル35に対してハンドオーバー要求を送信する(ステップS166)。そしてマクロセル35はフェムトセル20へハンドオーバー承認を送信し(ステップS167)、フェムトセル20はデータ通信端末10aへハンドオーバー命令を送信する(ステップS168)。フェムトセル20からのハンドオーバー命令を受信したデータ通信端末10aは、マクロセル35とのダウンリンク同期を取る(ステップS169)。
【0116】
データ通信端末10aは、マクロセル35に対して接続要求を送信すると(ステップS170)、マクロセル35は、データ通信端末10aに対して接続許可を返す(ステップS171)。そしてデータ通信端末10aは、マクロセル35から、データ通信端末10aが測定すべきサブバンドやサブフレームの情報(測定対象情報)を上位レイヤのシグナリングで受け取る(ステップS172)。このシーケンスでは、データ通信端末10aは測定対象情報を記憶しておく必要は無い。
【0117】
もともとデータ通信端末10aはフェムトセル圏内にあってフェムトセルの電波強度の強い場所にいるので、データ通信端末10aが周辺セル測定を行って(ステップS173)、メジャメントレポート(PCI)をマクロセル35に送ると(ステップS174)、マクロセル35はメジャメントレポートに示されたフェムトセルのセルIDを参照し、フェムトセルへのハンドオーバーを判定する(HO判定、ステップS175)。
【0118】
マクロセル35からハンドオーバー要求が、例えば加入者情報サーバ37に送られると(ステップS176)、加入者情報サーバ37は、Allowed CSG ListのフェムトセルのセルID、端末識別ID、加入者情報を照合する(アクセスチェック、ステップS177)。この時点ではデータ通信端末10aのフェムトセル20へのアクセスは不許可となっているので、加入者情報サーバ37はマクロセル35へアクセス不許可である旨を返信する(ステップS178)。
【0119】
データ通信端末10aのフェムトセル20へのアクセスは不許可となっているので、マクロセル35のハンドオーバー要求は拒否され、マクロセル35はフェムトセル20に対しABSの使用を求める干渉調整要求を通知する(ステップS179)。マクロセル35が送出する干渉調整要求には、マクロセル35が使用するABS情報などの干渉調整情報を含んでいる。干渉調整情報を受け取ったフェムトセル20は、周辺セル(マクロセル35)の基準信号を測定し(ステップS180)、測定結果に基づいて、最大送信電力の設定を更新する(ステップS181)。フェムトセル20は、干渉調整情報を用いて周辺セル(マクロセル35)の基準信号を正確に測定出来る。
【0120】
一定期間をおいて、フェムトセル20は加入者情報サーバ37に、データ通信端末10aをAllowed CSG Listに追加するよう、Allowed CSG Listの編集に関するメッセージを通知し(ステップS182)、データ通信端末10aのフェムトセル20へのアクセスを許可に戻す。加入者情報サーバ37はACLの修正を実行し(ステップS183)、フェムトセル20及びデータ通信端末10aへアップデートしたACLを送信する(ステップS184、S185)。
【0121】
もともとデータ通信端末10aは、フェムトセル20の圏内にあって、フェムトセル20の電波強度の強い場所にいる。従って、データ通信端末10aが周辺セル測定を行って(ステップS186)、メジャメントレポートをマクロセル35に送ると(ステップS187)、マクロセル35はメジャメントレポートに示されたフェムトセルのセルIDを参照し、フェムトセル20へのハンドオーバーを判定する(HO判定、ステップS188)。
【0122】
マクロセル35からハンドオーバー要求が、例えば加入者情報サーバ37に送られると(ステップS189)、加入者情報サーバ37は、Allowed CSG ListのフェムトセルのセルID、端末識別ID、加入者情報を照合して(アクセスチェック、ステップS190)、フェムトセル20にハンドオーバー要求を転送する(ステップS191)。
【0123】
フェムトセル20がマクロセル35にハンドオーバー承認を送信すると(ステップS192)、マクロセル35はデータ通信端末10aにフェムトセル20へのハンドオーバー命令を送信する(ステップS193)。ハンドオーバー命令を受信したデータ通信端末10aは、再度フェムトセルにハンドオーバーする。具体的には、データ通信端末10aはフェムトセル20との間でダウンリンク同期を取り(ステップS194)、フェムトセル20に接続要求を送信すると(ステップS195)、フェムトセル20はデータ通信端末10aに接続許可を返す(ステップS196)。
【0124】
以上、本開示の一実施形態に係るフェムトセル20を含んだデータ通信システムの動作について説明した。上述したように、本開示の一実施形態に係るフェムトセル20を含んだデータ通信システムが動作することによって、本開示の一実施形態に係るフェムトセル20は、マクロセルの基準信号の測定を簡便に、かつ正確に行うことができる。そして、本開示の一実施形態に係るフェムトセル20は、マクロセルの基準信号を測定することで、干渉を最低限に抑えるように最大送信電力を決定することができる。
【0125】
[2−3.無線通信部の構成例]
次に、本開示の一実施形態に係るフェムトセル20における、無線通信部24の構成例について説明する。図14は、本開示の一実施形態にかかるフェムトセル20における無線通信部24の構成例を示す説明図である。図14に示したように、無線通信部24は、アンテナ101と、デュプレクサ102と、ダウンリンク受信用アンテナ103と、ダウンリンク受信RFフィルタ104と、受信処理部110と、送信処理部120と、ベースバンド処理部130と、ダウンリンク受信部140と、水晶発振器150と、周波数シンセサイザ160と、を含んで構成される。
【0126】
受信処理部110は、受信増幅器111と、受信RFフィルタ112と、直交復調器113と、を含んで構成される。また送信処理部120は、直交変調器121と、送信可変利得増幅器122と、送信RFフィルタ123と、送信電力増幅器124と、アイソレータ125と、を含んで構成される。ダウンリンク受信部140は、受信増幅器141と、ダウンリンク受信RFフィルタ142と、直交復調器143と、を含んで構成される。
【0127】
アンテナ101で受信された信号はデュプレクサ102を経由して受信処理部110に送られる。受信処理部110は、デュプレクサ102から送られてきた信号を、受信増幅器111で増幅し、受信RFフィルタ112で所定のフィルタリングを実行し、直交復調器113で復調する。復調された信号はベースバンド処理部130に送られる。
【0128】
また、ベースバンド処理部130から送信処理部120に送られてきた信号は、直交変調器121で変調され、送信可変利得増幅器122で増幅され、送信RFフィルタ123で所定のフィルタリングが行われ、送信電力増幅器124で増幅され、信号の逆流を防ぐアイソレータ125を介してデュプレクサ102に送られる。そして、デュプレクサ102に送られた信号はアンテナ101から送信される。
【0129】
本開示の一実施形態に係るフェムトセル20は、図14に示すような無線通信部24を備えることで、マクロセル35からのダウンリンク信号を受信することができ、マクロセルの基準信号を測定して干渉を最低限に抑えるように最大送信電力を決定することができる。
【0130】
図15は、本開示の一実施形態にかかるフェムトセル20における無線通信部24の構成例を示す説明図である。図15に示したように、無線通信部24は、アンテナ101、201と、デュプレクサ102、202と、受信処理部110と、送信処理部120と、ベースバンド処理部130と、水晶発振器150と、周波数シンセサイザ160、260と、ダウンリンク受信部210と、アップリンク送信部220と、を含んで構成される。
【0131】
受信処理部110は、受信増幅器111と、受信RFフィルタ112と、直交復調器113と、を含んで構成される。また送信処理部120は、直交変調器121と、送信可変利得増幅器122と、送信RFフィルタ123と、送信電力増幅器124と、アイソレータ125と、を含んで構成される。
【0132】
ダウンリンク部210は、受信増幅器211と、ダウンリンク受信RFフィルタ212と、直交復調器213と、を含んで構成される。またアップリンク送信部220は、直交変調器221と、送信可変利得増幅器222と、アップリンク送信RFフィルタ223と、送信電力増幅器224と、アイソレータ225と、を含んで構成される。
【0133】
アンテナ101で受信された信号はデュプレクサ102を経由して受信処理部110に送られる。受信処理部110は、デュプレクサ102から送られてきた信号を、受信増幅器111で増幅し、受信RFフィルタ112で所定のフィルタリングを実行し、直交復調器113で復調する。復調された信号はベースバンド処理部130に送られる。
【0134】
また、ベースバンド処理部130から送信処理部120に送られてきた信号は、直交変調器121で変調され、送信可変利得増幅器122で増幅され、送信RFフィルタ123で所定のフィルタリングが行われ、送信電力増幅器124で増幅され、信号の逆流を防ぐアイソレータ125を介してデュプレクサ102に送られる。そして、デュプレクサ102に送られた信号はアンテナ101から送信される。
【0135】
アンテナ201で受信されたマクロセル35からのダウンリンク信号はデュプレクサ102を経由してダウンリンク部210に送られる。ダウンリンク部210は、アンテナ201で受信された信号を受信増幅器211で増幅し、受信RFフィルタ212で所定のフィルタリングを実行し、直交復調器213で復調する。復調された信号はベースバンド処理部230に送られる。
【0136】
また、ベースバンド処理部130からアップリンク送信部220に送られてきたアップリンク信号は、直交変調器221で変調され、送信可変利得増幅器222で増幅され、送信RFフィルタ223で所定のフィルタリングが行われ、送信電力増幅器224で増幅され、信号の逆流を防ぐアイソレータ225を介してデュプレクサ202に送られる。そして、デュプレクサ202に送られたアップリンク信号はアンテナ201から送信される。
【0137】
本開示の一実施形態に係るフェムトセル20は、図15に示すような無線通信部24を備えることで、マクロセル35からのダウンリンク信号を受信することができ、マクロセルの基準信号を測定して干渉を最低限に抑えるように最大送信電力を決定することができる。
【0138】
以上、本開示の一実施形態に係るフェムトセル20における、無線通信部24の構成例について説明した。
【0139】
<3.まとめ>
以上説明したように本開示の一実施形態によれば、フェムトセル20が、周辺基地局(例えばマクロセル35)のダウンリンク基準信号電力を測定し、周辺基地局との干渉を軽減するためのフェムトセルの適正な最大送信電力を自立的に決定する。かかる方法において、フェムトセル20は、予め周辺基地局における基準信号を含むサブフレームのパターン、周辺基地局における無線リソースごとの送信電力パターンを知ることで、フェムトセルによる測定を簡便に正確に行うことが可能になる。
【0140】
また本開示の一実施形態によれば、フェムトセル20は、周辺基地局とセル間干渉制御を行っている他の基地局のダウンリンク基準信号の測定も正確に行えるようになる。
【0141】
本開示の一実施形態によれば、ネットワーク全体の干渉に対する調整が素早く安定し、ネットワーク全体のキャパシティが向上する。すなわち、大量のフェムトセルが起動する度に、それぞれのフェムトセルに対して周辺基地局が干渉調整情報等を通知する必要が無く、シグナリングによるオーバーヘッドを増やさすこと無く、ネットワーク全体の干渉調整を効率的に行える。また、フェムトセル以外のダウンリンク基準信号電力を測定する端末(例えば測位用端末)の測定精度も高まる。
【0142】
なお、本明細書において説明した各装置による一連の制御処理は、ソフトウェア、ハードウェア、及びソフトウェアとハードウェアとの組合せのいずれを用いて実現されてもよい。ソフトウェアを構成するプログラムは、例えば、各装置の内部又は外部に設けられる記憶媒体に予め格納される。そして、各プログラムは、例えば、実行時にRAMに読み込まれ、プロセッサにより実行される。
【0143】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示はかかる例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0144】
なお、本技術は以下のような構成も取ることができる。
(1)
第1の基地局と、前記第1の基地局より狭い範囲をカバーする第2の基地局との間の干渉を調整するための前記第1の基地局の干渉調整に関する干渉調整情報を外部から取得する干渉情報取得部と、
前記干渉情報取得部が外部から取得した前記干渉調整情報を用いて隣接セルの基準信号を測定する基準信号測定部と、
を備える、無線基地局。
(2)
前記干渉情報取得部は、前記干渉調整情報が前記第1の基地局から通知される小型基地局管理サーバから前記干渉調整情報を取得する、前記(1)に記載の無線基地局。
(3)
前記干渉情報取得部は、前記干渉調整情報を、一時的に前記第1の基地局へアクセスして該第1の基地局から取得する、前記(1)または(2)に記載の無線基地局。
(4)
前記干渉情報取得部は、前記第1の基地局と前記第2の基地局との間の干渉を調整するための前記第1の基地局の干渉調整に関する干渉調整情報がシステム情報として報知される前記第1の基地局の報知チャネルから前記干渉調整情報を取得する、前記(1)から(3)のいずれかに記載の無線基地局。
(5)
前記第1の基地局からのダウンリンクを受信するダウンリンク受信部をさらに備え、
前記基準信号測定部は、前記ダウンリンク受信部が受信したダウンリンクにおける、前記第1の基地局の、予め定めた期間の無線フレームごとの基準信号を測定する、前記(1)から(4)のいずれかに記載の無線基地局。
(6)
前記基準信号測定部は、前記第1の基地局が基準信号を含まない無線フレームを使用していることを検出すると、基準信号が含まれていることが予め分かっている特定の無線フレームのみを測定対象とする、前記(5)に記載の無線基地局。
(7)
前記干渉情報取得部は、前記無線基地局に接続する端末の前記無線基地局へのアクセスを一時的に不許可に設定して該端末を前記第1の基地局に接続させて前記第1の基地局から前記干渉調整情報を取得させた後に前記無線基地局へのアクセスを許可に戻し、該端末が取得した前記干渉調整情報を該端末から取得する、前記(1)から(6)のいずれかに記載の無線基地局。
(8)
前記基準信号測定部は、前記第1の基地局の基準信号が含まれない無線フレームに対応する前記第2の無線基地局の無線フレームの基準信号を測定する、前記(1)から(7)のいずれかに記載の無線基地局。
(9)
前記干渉調整情報は、基準信号が含まれない無線フレームの位置を示す情報である、前記(1)から(8)のいずれかに記載の無線基地局。
(10)
前記干渉調整情報は、前記第1の基地局の送信周波数帯域の中の部分的な周波数帯域に対する基準信号の送信電力を示す情報である、前記(1)から(9)のいずれかに記載の無線基地局。
(11)
第1の基地局と、前記第1の基地局より狭い範囲をカバーする第2の基地局との間の干渉を調整するための前記第1の基地局の干渉調整に関する干渉調整情報が通知される小型基地局管理サーバに基地局のセル識別子を指定して前記干渉調整情報を取得する干渉情報取得部と、
前記干渉情報取得部が取得した前記干渉調整情報を用いて隣接セルの基準信号を測定する基準信号測定部と、
を備える、無線端末。
(12)
第1の基地局と、前記第1の基地局より狭い範囲をカバーする第2の基地局との間の干渉を調整するための前記第1の基地局の干渉調整に関する干渉調整情報を外部から取得する干渉情報取得ステップと、
前記干渉情報取得ステップで外部から取得された前記干渉調整情報を用いて隣接セルの基準信号を測定する基準信号測定ステップと、
を備える、信号測定方法。
(13)
コンピュータに、
第1の基地局と、前記第1の基地局より狭い範囲をカバーする第2の基地局との間の干渉を調整するための前記第1の基地局の干渉調整に関する干渉調整情報を外部から取得する干渉情報取得ステップと、
前記干渉情報取得ステップで外部から取得された前記干渉調整情報を用いて隣接セルの基準信号を測定する基準信号測定ステップと、
を実行させる、コンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0145】
1 データ通信システム
10a、10b、10c データ通信端末
20 フェムトセル
31 インターネット
32 フェムトセルゲートウェイ
33 コア・ネットワーク
34 BB回線モデム
35 マクロセル
40 フェムトセル管理サーバ
51 干渉情報取得部
52 基準信号測定部
53 電力設定部
101 アンテナ
102 デュプレクサ
103 ダウンリンク受信用アンテナ
110 受信処理部
111 受信増幅器
112 受信RFフィルタ
113 直交復調器
120 送信処理部
121 直交変調器
122 送信可変利得増幅器
123 送信RFフィルタ
124 送信電力増幅器
125 アイソレータ
130 ベースバンド処理部
150 水晶発振器
160 周波数シンセサイザ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基地局と、前記第1の基地局より狭い範囲をカバーする第2の基地局との間の干渉を調整するための前記第1の基地局の干渉調整に関する干渉調整情報を外部から取得する干渉情報取得部と、
前記干渉情報取得部が外部から取得した前記干渉調整情報を用いて隣接セルの基準信号を測定する基準信号測定部と、
を備える、無線基地局。
【請求項2】
前記干渉情報取得部は、前記干渉調整情報が前記第1の基地局から通知される小型基地局管理サーバから前記干渉調整情報を取得する、請求項1に記載の無線基地局。
【請求項3】
前記干渉情報取得部は、前記干渉調整情報を、一時的に前記第1の基地局へアクセスして該第1の基地局から取得する、請求項1に記載の無線基地局。
【請求項4】
前記干渉情報取得部は、前記第1の基地局と前記第2の基地局との間の干渉を調整するための前記第1の基地局の干渉調整に関する干渉調整情報がシステム情報として報知される前記第1の基地局の報知チャネルから前記干渉調整情報を取得する、請求項1に記載の無線基地局。
【請求項5】
前記第1の基地局からのダウンリンクを受信するダウンリンク受信部をさらに備え、
前記基準信号測定部は、前記ダウンリンク受信部が受信したダウンリンクにおける、前記第1の基地局の、予め定めた期間の無線フレームごとの基準信号を測定する、請求項1に記載の無線基地局。
【請求項6】
前記基準信号測定部は、前記第1の基地局が基準信号を含まない無線フレームを使用していることを検出すると、基準信号が含まれていることが予め分かっている特定の無線フレームのみを測定対象とする、請求項5に記載の無線基地局。
【請求項7】
前記干渉情報取得部は、前記無線基地局に接続する端末の前記無線基地局へのアクセスを一時的に不許可に設定して該端末を前記第1の基地局に接続させて前記第1の基地局から前記干渉調整情報を取得させた後に前記無線基地局へのアクセスを許可に戻し、該端末が取得した前記干渉調整情報を該端末から取得する、請求項1に記載の無線基地局。
【請求項8】
前記基準信号測定部は、前記第1の基地局の基準信号が含まれない無線フレームに対応する前記第2の無線基地局の無線フレームの基準信号を測定する、請求項1に記載の無線基地局。
【請求項9】
前記干渉調整情報は、基準信号が含まれない無線フレームの位置を示す情報である、請求項1に記載の無線基地局。
【請求項10】
前記干渉調整情報は、前記第1の基地局の送信周波数帯域の中の部分的な周波数帯域に対する基準信号の送信電力を示す情報である、請求項1に記載の無線基地局。
【請求項11】
第1の基地局と、前記第1の基地局より狭い範囲をカバーする第2の基地局との間の干渉を調整するための前記第1の基地局の干渉調整に関する干渉調整情報が通知される小型基地局管理サーバに基地局のセル識別子を指定して前記干渉調整情報を取得する干渉情報取得部と、
前記干渉情報取得部が取得した前記干渉調整情報を用いて隣接セルの基準信号を測定する基準信号測定部と、
を備える、無線端末。
【請求項12】
第1の基地局と、前記第1の基地局より狭い範囲をカバーする第2の基地局との間の干渉を調整するための前記第1の基地局の干渉調整に関する干渉調整情報を外部から取得する干渉情報取得ステップと、
前記干渉情報取得ステップで外部から取得された前記干渉調整情報を用いて隣接セルの基準信号を測定する基準信号測定ステップと、
を備える、信号測定方法。
【請求項13】
コンピュータに、
第1の基地局と、前記第1の基地局より狭い範囲をカバーする第2の基地局との間の干渉を調整するための前記第1の基地局の干渉調整に関する干渉調整情報を外部から取得する干渉情報取得ステップと、
前記干渉情報取得ステップで外部から取得された前記干渉調整情報を用いて隣接セルの基準信号を測定する基準信号測定ステップと、
を実行させる、コンピュータプログラム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−38586(P2013−38586A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172928(P2011−172928)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】