説明

無線基地局装置

【課題】制御周期を切り換えることにより効率的にデバイスの温度補正制御を実施し、より多くの機能の搭載することができる無線基地局装置を実現する。
【解決手段】増幅器2のデバイス3の温度レベルは温度センサ4によって常時検出され、デバイス3の温度は周期的なタイマ信号又は割込み信号をトリガとして、所定のタイミングで制御ユニット5の温度レベル差判定部7へ送信される。温度レベル差判定部7は、今回取得したデバイス3の温度レベルとメモリ6に格納されている前回取得したデバイス3の温度レベルとの差分(温度レベル差)を制御周期更新手段8へ送信する。制御周期更新手段8は温度レベル差に応じて温度補正処理の制御周期を更新する。従って、デバイス3の温度補正制御値(デバイス設定値)を最適に決定してデバイス3の温度補正制御処理を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトウエア制御によって作動させる増幅器を備えた無線基地局装置に関し、特に、増幅器に使用されるデバイスの温度を温度補正制御する機能を備えた無線基地局装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
増幅器で使用されるデバイスの中には、温度変化によって特性が変化するデバイスがある。デバイスの特性が、無線基地局装置で使用される温度範囲において許容できないレベルとなった場合は、それぞれの温度レベルに応じてデバイスの制御値を補正する必要がある。
【0003】
図5は、従来の温度補正制御によってデバイスの制御値を補正する制御の流れを示すフローチャートである。図5において、周期的に割込む周期タイマのトリガ信号によって温度補正の制御処理が開始されると、先ず、該当するデバイスの温度レベルが取得される(ステップS31)。
【0004】
次に、取得された温度レベルに対応するデバイス設定値の温度補正値を算出する(ステップS32)。そして、算出された温度補正値に基づいてデバイス設定値である温度補正制御値(ハードウエア制御値)を算出する(ステップS33)。さらに、算出されたデバイス設定値(ハードウエア制御値)を設定するためのハードウエア設定処理を行い(ステップS34)、温度補正の制御処理を終了する。
【0005】
以上のような一連の制御処理は、あらかじめ決められた周期で動作する割込み又はタイマ通知をトリガとすることによって実行される。
【0006】
尚、電力増幅素子の温度レベルを一定周期で観測して冷却用のファンを制御する電力増幅器の冷却制御の技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、デバイスの温度変化に応じて冷却用ファンの動作制御を行うことにより、増幅器の動作停止時の温度変化を緩やかにした冷却制御を行うことができるので、増幅器に使用されるデバイスの熱ストレスや素子劣化を防止することができる。
【特許文献1】特開2003−78356号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図5で示すフローチャートのように、あらかじめ決められた一定の制御周期によってデバイスの設定処理が行われる場合、制御周期が長すぎるときはデバイスの急激な温度変化に追従することができないために、デバイスに対して正常な温度補正処理を実行することができない。また、制御周期が短すぎるときは、増幅器全体のソフトウエア処理における補正処理比率が高くなるために、メモリ容量の関係から無線基地局装置に搭載できる機能が制限されてしまう。
【0008】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、デバイスの温度補正制御処理の制御周期を温度レベルに基づいて切り換えることにより、効率的にデバイスの温度補正制御を実施して、より多くの機能を搭載することができる無線基地局装置を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の無線基地局装置は、入力信号を増幅して出力する増幅器を備え、前記増幅器を構成するデバイスの温度レベルを周期的に取得し、該温度レベルに基づいて所定の制御周期により前記デバイスの温度補正制御処理を行う無線基地局装置であって、前記デバイスの温度レベルを取得する温度センサと、前記温度センサにより周期的に取得される新旧の温度レベルの差を判定する温度レベル差判定部と、前記温度レベル差判定部が判定した温度レベル差に対応して前記温度補正制御処理の制御周期を設定する制御周期設定手段とを備えることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、例えば、実施の形態に示されるように、無線基地局装置の温度レベルに応じたデバイス設定値(温度補正制御値)の設定周期を、デバイスから前回検出した温度レベルと今回検出した温度レベルとの差分(温度レベル差)に基づいて更新することができる。従って、温度レベル差が小さいときはデバイス設定値(温度補正制御値)の設定周期を長くし、温度レベル差が大きいときはデバイス設定値(温度補正制御値)の設定周期を短くすることができるので、制御対象の変動の速さに応じた最適な状態でデバイスの温度補正制御処理を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、無線基地局の増幅器を構成するデバイスの状態変化速度に応じて制御周期を変更することにより、デバイスに対してより効率的な温度補正の制御を実施することができる。その結果、無線基地局装置により多くの機能を搭載することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
先ず、本発明の実施の形態における無線基地局装置に搭載される増幅器の温度補正処理の概要について説明する。本発明の無線基地局装置に係る増幅器の温度補正処理においては、制御可能な最短周期において制御周期をチェックし、制御する周期である場合に、増幅器のデバイスに対して温度補正処理の制御を実行する。さらに、デバイスに対して温度補正処理の制御を実行しているときに温度レベルを取得し、前回の取得した温度レベルと今回取得した温度レベルとを比較し、両者の温度レベルの差分に応じてデバイスの温度補正処理の最適な制御周期を決定する。尚、温度補正処理の制御周期は最短周期の倍数で指定される。
【0013】
次に、本発明の無線基地局装置に搭載される増幅器の温度補正処理の実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明に係る無線基地局装置の構成を示すブロック図である。図1において、無線基地局装置1は、オペアンプなどの増幅素子等のデバイス3と抵抗R及びコンデンサCとを組み合わせた回路構成によって電力増幅を行う増幅器2と、デバイス3の温度補正制御を行う制御ユニット5とを備えて構成されている。尚、デバイス3の近傍には温度センサ4が配置され、この温度センサ4がデバイス3の温度レベルを検出して制御ユニット5へ温度レベル情報を送信している。
【0014】
制御ユニット5は、前回検出したデバイス3の温度レベルを格納するメモリ6と、メモリ6から取り出した前回検出のデバイス3の温度レベルと温度センサ4から取得した今回検出したデバイス3の温度レベルとを比較して、両者の温度レベルの差分(以下、温度レベル差という)を判定する温度レベル差判定部7と、温度レベル差判定部7が判定した温度レベル差に対応した最適な制御周期に応じて制御周期を更新する制御周期更新手段8とを備えている。
【0015】
次に、図1に示す無線基地局装置1について、デバイス3の温度補正制御を行うデバイス設定値(つまり、ハードウエア温度補正制御値)の制御処理について概略的に説明する。増幅器2のデバイス3の温度レベルは温度センサ4によって温度レベルとして常時検出され、そのデバイス3の温度レベルは、周期的なタイマ信号又は割込み信号をトリガとして、所定のタイミングで制御ユニット5の温度レベル差判定部7へ送信される。
【0016】
すると、温度レベル差判定部7は、今回取得したデバイス3の温度レベルとメモリ6に格納されている前回取得したデバイス3の温度レベルとの差分(温度レベル差)を算出し、その温度レベル差を制御周期更新手段8へ送信する。すると、制御周期更新手段8は、温度レベル差判定部7から取得した温度レベル差に応じて温度補正処理の制御周期を切り換えて、デバイス3の温度補正制御を行うデバイス設定値(ハードウエア温度補正制御値)を決定してデバイス3の温度補正制御処理を実行する。つまり、無線基地局装置1の温度レベルに応じたデバイス設定値の設定の周期を、前回の温度レベルと今回の温度レベルの差分(温度レベル差)からデバイス設定値の設定周期を変えている。
【0017】
次に、フローチャ−トを用いて、デバイス3の温度レベル補正制御処理の流れを詳細に説明する。図2は、本発明の無線基地局装置に搭載された増幅器において、温度レベル補正制御によってデバイスの制御値を補正する制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0018】
図2において、先ず、制御可能な最短周期での割込み又はタイマ通知によって増幅器の温度レベル補正制御が開始されると、最初に制御周期チェック用の周期カウンタを“1”加算するためのインクリメント処理が行われる(ステップS1)。次に、あらかじめ指定された制御周期とチェック用の制御周期カウンタとが比較され、増幅器の温度レベル補正処理の制御を実行するか否かがチェックされる(ステップS2)。ここで、温度レベル補正処理の制御する周期では無いと判断された(つまり、制御未実行)場合は、増幅器の温度レベル補正の制御処理を終了する。
【0019】
一方、ステップS2において温度レベル補正処理の制御が実行する周期であると判断された(つまり、制御実行)場合は、増幅器の温度レベル補正の制御処理を実行する。すなわち、該当するデバイスの温度レベルが取得され(ステップS3)、次に、取得された温度レベルに対応するデバイス設定値の温度レベル補正値が算出される(ステップS4)。そして、算出された温度レベル補正値に基づいてデバイス設定値(つまり、ハードウエア温度レベル補正制御値)が算出される(ステップS5)。さらに、算出されたデバイス設定値(ハードウエア温度レベル補正制御値)を設定するためのハードウエア設定処理が行われる(ステップS6)。尚、ステップS3からステップS6までの処理は図5に示した従来のデバイス設定処理と同様の処理である。
【0020】
このようにしてデバイス設定処理が実行された後に、制御周期の算出更新処理が実行される。すなわち、最初に、前記のステップS3で行ったデバイス設定処理で取得した温度レベルと、前回のデバイス設定時に取得した温度レベルとを比較し、その差分(温度レベル差)を取得して温度レベルの変化の程度をチェックする(ステップS7)。
【0021】
次に、前記のステップS7で取得した温度レベルの差分に応じた制御周期の値を取得する。すなわち、前回取得した温度レベルと今回取得した温度レベルの差分が小さければ制御周期を長くし、温度レベルの差分が大きければ制御周期を短くするようにしてステップS2の制御周期を更新し(ステップS8)、次回取得する温度レベルと比較するために今回取得した温度レベルを格納して(ステップS9)、制御処理を終了する。
【0022】
図3は、図2のフローチャートに適用される前回取得した温度レベルと今回取得した温度レベルとの差分ごとの制御周期の図表であり、図3の図表を用いて図2のステップS8で示した制御周期の更新処理が行われる。図3に示すように、前回取得した温度レベルと今回取得した温度レベルとの温度レベル差の絶対値の大きさによって、それぞれ異なる制御周期を決定する。
【0023】
例えば、図3において、前回取得した温度レベルと今回取得した温度レベルとの温度レベル差が0〜1℃というように小さいときは次回の制御周期を5secに長くするが、前回取得した温度レベルと今回取得した温度レベルとの差が大きくなるにしたがって制御周期を短くする。すなわち、前回と今回の温度差が10℃というように大きいときは、次回の制御周期を100msecに短くする。
【0024】
また、制御周期を段階的に変化させる処理を行って次回の制御周期を決定してもよい。図4は、制御周期を段階的に変化させて次回の制御周期を決定する処理の流れを示すフローチャートである。
【0025】
図4に示すような段階的な制御周期の処理は、図3の図表で示したような前回(旧)と今回(新)の温度レベル差対応の制御周期をピーク周期として定義し、現在の制御周期(つまり、前回取得した制御周期T1)が今回取得したピーク周期T2よりも小さい(T1<T2)場合は今回取得したピーク周期T2を適用し、それ以外の場合(つまり、前回取得した制御周期T1が今回取得したピーク周期T2以上(T1≧T2)のときには段階的に制御周期を長くしていく。例えば、図3の図表に従えば、100ms、200ms…5secと言うように段階的に制御周期を遅くして行く。
【0026】
ここで、前回取得した制御周期T1が今回取得したピーク周期T2以上で段階的に制御周期を遅くして行く方法は、図4に示すように、制御周期の取得が開始されると、先ず、取得した温度レベル差から、対応する制御周期(a)を取得する(ステップS11)。尚、対応する制御周期とは、図3で定義したような温度レベル差に対応する制御周期である。
【0027】
次に、次期制御周期候補(β)とステップS11で取得した制御周期(a)とを比較する。ここで、次期制御周期候補(β)は現在制御周期(b)から規定の周期時間(α:α=100sec)をインクリメントした値とする。つまり、(β:b+α)をチェックする(ステップS12)。尚、αは制御周期変更量である。
【0028】
次に、a>βの場合は次期制御周期=aとする(ステップS13)。また、a≦βの場合は次期制御周期=βとする(ステップS14)。
【0029】
最後に、次回の制御周期算出用に、今回取得した温度レベルを格納して(ステップS15)、制御周期の取得処理を終了する。以上のような制御処理の方法によって温度レベル変化に応じた制御周期でデバイスの温度補正制御処理を実施する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る無線基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の無線基地局装置に搭載された増幅器において、温度補正制御によってデバイスの制御値を補正する制御処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】図2のフローチャートに適用される前回取得した温度レベルと今回取得した温度レベルとの差分ごとの制御周期の図表である。
【図4】制御周期を段階的に変化させて次回の制御周期を決定する処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】従来の温度補正制御によってデバイスの制御値を補正する制御の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0031】
1 無線基地局装置、2 増幅器、3 デバイス、4 温度センサ、5 制御ユニット、6 メモリ、7 温度レベル差判定部、8 制御周期更新手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を増幅して出力する増幅器を備え、前記増幅器を構成するデバイスの温度レベルを周期的に取得し、該温度レベルに基づいて所定の制御周期により前記デバイスの温度補正制御処理を行う無線基地局装置であって、
前記デバイスの温度レベルを取得する温度センサと、
前記温度センサにより周期的に取得される新旧の温度レベルの差を判定する温度レベル差判定部と、
前記温度レベル差判定部が判定した温度レベル差に対応して前記温度補正制御処理の制御周期を設定する制御周期設定手段と
を備えることを特徴とする無線基地局装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−188472(P2009−188472A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23451(P2008−23451)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】