説明

無線装置、通信方法

【課題】自己の位置を知ることができ他の無線局へ混信を与えない周波数を選択することのできる無線装置、通信方法を提供すること。
【解決手段】使用する周波数帯が第1の無線システムと重複し、該重複した周波数帯を使用する優先順位が第1の無線システムよりも低い第2の無線システムに属する無線装置であって、地名からなり自己の所在地を示す所在地情報を受付ける所在地受付部と、所在地情報に基づいて、該所在地情報に対応する緯度および経度を含む地理座標を取得する地理座標取得部と、地理座標取得部が取得した地理座標を用いて、第1の無線システムに属する無線装置に割当てられた周波数と該無線装置の位置に係る緯度および経度を含む地理座標とを対応づけて格納した周波数サーバにアクセスし、第1の無線システムに属する無線装置に割当てられていない周波数および該無線装置に混信を与えるおそれのない周波数の少なくとも一方を取得して、送受信周波数として設定する周波数設定部とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用する周波数帯を共用する無線システムにおいて混信を予め防止する無線装置、通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電波関連産業において、TVWS(TV White Space:テレビ用空きスペース)を使用するシステムの開発が進められている。TVWSを使用した通信を実現するには、既存の無線通信システムを改修して、これらのシステムの動作を電波関連法規に適合させる必要がある。
【0003】
TVWSを使用するシステムに要求される条件としては、例えば、当該TVWSを使用する優先順位が高い無線局(この場合はTV)が使用している周波数帯(あるいは当該無線局に割当てられた周波数帯)と重複しない周波数(帯)を選択する機能を有することが挙げられる。免許を有し電波監理上優先順位の高い無線局の通信を妨害しないためである。
【0004】
このような機能を実現するには、TVWSにおける電波の利用状況、特に優先順位の高いTVなどの無線局の電波の割当状況を記録したデータベース(周波数データベース)を用意すればよい。通常、周波数データベースは、電波監理当局によって作成され、一般に提供されている。周波数データベースは、TVなど所定の周波数帯について、免許された無線局(放送局)のID、当該無線局に割当てられた周波数(帯)、当該無線局の位置情報などを管理しており、無線局の位置情報は、緯度や経度などからなる位置座標として表されることが多い。TVWSを使用するシステムが使用周波数を選択する場合、かかる周波数データベースにアクセスすれば、優先順位が高い無線局に免許された周波数(帯)を予め避けることができる。
【0005】
周波数データベースを利用して優先順位が高い無線局の有無(あるいは当該無線局へ混信を与える可能性の有無)を判定するには、当該無線局と、TVWSを使用するシステムとの位置関係を知る必要がある。しかし、TVWSを使用するシステムは、免許が不要な小電力システムが想定されているため、事前に当該位置関係を知ることが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Ofcom, Independent regulator and competition authority for the UK communications industries、Digital Dividend: Geolocation for Cognitive Access、[online]、Ofcom 2009、[retrieved on 2010-10-07]、Retrieved from the Internet: <URL: http://stakeholders.ofcom.org.uk/binaries/consultations/cogaccess/summary/cogaccess.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の無線装置、通信方法は、自己の位置を知ることができず優先順位の高い無線局の有無の判定が困難であるという問題がある。以下に説明する実施形態は、かかる課題を解決するためになされたもので、自己の位置を知ることができ他の無線局へ混信を与えない周波数を選択することのできる無線装置、通信方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するため、実施形態に係る無線装置は、使用する周波数帯が第1の無線システムと重複し、該重複した周波数帯を使用する優先順位が第1の無線システムよりも低い第2の無線システムに属する無線装置であって、地名からなり自己の所在地を示す所在地情報を受付ける所在地受付部と、所在地情報に基づいて、該所在地情報に対応する緯度および経度を含む地理座標を取得する地理座標取得部と、地理座標取得部が取得した地理座標を用いて、第1の無線システムに属する無線装置に割当てられた周波数と該無線装置の位置に係る緯度および経度を含む地理座標とを対応づけて格納した周波数サーバにアクセスし、第1の無線システムが使用する周波数帯と重複する第2の無線システムが使用する周波数帯から、第1の無線システムに属する無線装置に割当てられていない周波数および該無線装置に混信を与えるおそれのない周波数の少なくとも一方を取得して、送受信周波数として設定する周波数設定部とを具備している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自己の位置を知ることができ他の無線局へ混信を与えない周波数を選択することのできる無線装置、通信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る無線装置およびシステムの概要を示す概念図である。
【図2】実施形態に係る無線装置およびシステムの構成を示すブロック図である。
【図3】実施形態に係る所在地受付部および地理座標取得部の詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】実施形態に係る所在地受付部が所在地情報を受付ける様子を示す図である。
【図5】実施形態に係る無線装置およびシステムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態の概要)
以下、図面を参照して、実施形態に係る無線装置およびシステムについて詳細に説明する。図1に示すように、この実施形態のシステムでは、互いにインターネットなどの外部ネットワークNWにより接続された無線装置10、地理座標サーバ20、周波数サーバ30、および無線局サーバ40を有している。図1に示す例では、無線装置10は、パソコンPCやプリンタPRTをLANや無線LAN(WLAN)内のクライアントとして収容するアクセスポイントAPとして機能している。無線装置10は、インターネットサービスプロバイダISPを介して、ネットワークNWと接続されている。すなわち、LANやWLANを介して無線装置10と接続されたパソコンPCやプリンタPRTなどの機器は、無線装置10およびインターネットプロバイダISPを通じて、外部ネットワークNWと接続されている。
【0012】
WLANのアクセスポイントとして機能する無線装置10は、プライマリシステムPSに割当てられた周波数帯と重複する周波数帯を使用する。プライマリシステムPS(第1の無線システムに属する無線装置)は、無線装置10(および無線装置10と通信するクライアントとしてのパソコンPCやプリンタPRT)よりも当該周波数帯を使用する優先順位が高く、無線装置10およびそのクライアント(第2の無線システムに属する無線装置)は、プライマリシステムPSに対して混信を与えてはならない状態にある。以下に説明する例では、プライマリシステムPSは、テレビジョン放送の電波を送信する無線システムであるものとして説明する。
【0013】
無線装置10がプライマリシステムPSに割当てられた周波数帯の周波数(以下「チャネル」と呼ぶことがある)を使用する場合、無線装置10は、その周辺領域にプライマリシステムPSが存在するか予め知る必要がある。実施形態の周波数サーバ30は、プライマリシステムPSの識別情報、当該プライマリシステムPSの位置を緯度・経度・標高などを含む地理座標により表した地理的位置情報、および当該プライマリシステムPSに割当てられた周波数(帯)を対応づけて管理している。すなわち、無線装置10が自己の地理的位置情報を周波数サーバ30に送ると、当該無線装置10の周辺に位置するプライマリシステムPSの識別情報および割当てられた周波数情報等が提供される。無線装置10は、提供された周波数情報を参照することで、プライマリシステムPSに混信を与えない周波数等を決定することができる。
【0014】
一方、正式に免許され周波数が割り当てられるプライマリシステムPSと比較して、無線装置10は、規模が小さく免許を要しない装置である。こうした装置を利用するユーザは、自ら装置を購入し自宅などで利用することが考えられる。無線装置10を利用する位置について、周波数サーバ30のクエリとなる地理座標をユーザに準備させるのは現実的ではない。一方、GPSシステムは地理座標を提供するシステムであるが、自宅など屋内では上手く機能しないことがある。そこで、実施形態の地理座標サーバ20は、地名や番地、郵便番号などからなる一般ユーザに馴染みのある位置情報に基づいて、周波数サーバ30にアクセス可能な地理的位置情報を提供する。ユーザが地名などからなる所在地を無線装置10に入力すれば、無線装置10は自立的に緯度・経度・標高その他の地理座標(地理的位置情報)を取得し、さらに周波数サーバ30にアクセスすることが可能になる。
【0015】
周波数サーバ30は、プライマリシステムPSに対する混信防止に寄与するが、プライマリシステムPSと使用周波数(帯)が重複しプライマリシステムPSよりも優先順位が低い無線装置間の混信については何ら寄与しない。実施形態の無線局サーバ40は、プライマリシステムPSよりも優先順位の低い無線装置の識別情報、当該無線装置の位置を緯度・経度・標高その他の地理座標により表した地理的位置情報、および当該無線装置が使用する周波数(帯)を対応づけて管理している。すなわち、無線装置10が自己の地理的位置情報を周波数サーバ30に送ると、当該無線装置10の周辺に位置しプライマリシステムPSよりも優先順位の低い無線装置の識別情報および使用する周波数情報等が提供される。無線装置10は、提供された隣接局に関する隣接局情報を参照することで、プライマリシステムPSと使用周波数が重複し優先順位の低い無線装置に対しても混信を与えない周波数等を決定することができる。
【0016】
このように、実施形態に係る無線装置10は、地理座標サーバ20、周波数サーバ30および無線局サーバ40と連携して使用周波数(帯)を決定するので、プライマリシステムPSだけでなく隣接する無線装置に対しても予め混信を防止することができる。
【0017】
(実施形態の構成)
続いて、図2を参照して、実施形態に係る無線装置10の構成を詳細に説明する。この実施形態における無線装置10は、受信部11、送信部12、LANインタフェース13、NWインタフェース14、およびアクセスポイント制御部15を備えている。
【0018】
受信部11は、クライアントからの信号をアンテナANTを介して受信し、所定の方式で復調してLANインタフェース部13を経由して他のクライアントに送る。また、受信部11は、クライアントからの電波をアンテナANTを介して受信し、所定の方式で復調してNWインタフェース部14を経由してネットワークNWに送る。一方、クライアントPCLANやネットワークNWからの情報は、LANインタフェース部13やNWインタフェース部14を介して送信部12に送られ、送信部12は、当該情報を無線信号に変換してアンテナANTを介してWLANのクライアントPCWLANに送信する。アクセスポイント制御部(AP制御部)15は、受信部11、送信部12、LANインタフェース部(LAN I/F)13およびNWインタフェース部(NW I/F)14を制御して無線装置10をアクセスポイントとして機能させる。
【0019】
受信部11および送信部12は、例えば、IEEE802.11規格に準拠したシステムを用いて実現することができる。なお、受信部11および送信部12が使用する周波数帯は、プライマリシステムPSが使用する周波数帯と少なくとも一部が重複している。
【0020】
また、この実施形態における無線装置10は、所在地受付部16、地理座標取得部17、アクセス周波数設定部18、および隣接局情報取得部19を備えている。
【0021】
所在地受付部16は、無線装置10が使用される位置を示す地名や番地などからなる所在地情報をユーザから受付ける機能を有する。地理座標取得部17は、所在地受付部16が受付けた所在地情報に基づいて、緯度・経度・標高などを含む地理座標(地理的位置)を取得する機能を有する。アクセス周波数設定部18は、地理座標取得部17が取得した地理座標に基づいて受信部11および送信部12が使用する周波数(帯)を決定する機能を有する。隣接局情報取得部19は、地理座標取得部17が取得した地理座標に基づいて無線装置10の周囲に配置され無線装置10と使用周波数(帯)が重複する他の無線装置に関する情報を取得する機能を有する。無線装置10は、例えばIEEE802.11に準拠した100mWモードII装置などにより実現することができる。
【0022】
次に、無線装置10が周波数等の決定に際してアクセスする地理座標サーバ20、周波数サーバ30および無線局サーバ40の構成を説明する。
【0023】
地理座標サーバ20は、都道府県名、市区町村名や番地など地名等からなる所在地情報と、緯度、経度および標高を含む地理座標とを変換するサーバである。地理座標サーバ20は、ネットワークインタフェース(NW I/F)21、位置変換部22および地理情報データベース(地理情報DB)23を有している。ネットワークインタフェース21は、地理座標サーバ20をネットワークNWに接続するインタフェースである。地理情報データベース23は、都道府県名、市区町村名や番地など地名等からなる位置情報と、当該位置情報に対応する地理座標とを対応づけて格納したデータベースである。位置変換部22は、ネットワークインタフェース21を介して送られた所在地情報のクエリに基づいて、地理情報データベース23から対応する地理座標を検索し、問い合わせ元に回答するサーバエンジンである。
【0024】
すなわち、地理座標サーバ20は、所在地情報を含むクエリに応じて、対応する地理座標を返答する機能を有している。なお、地理座標サーバ20の位置変換部22は、送られた所在地情報を含むクエリが、合理的な場所か否か(例えば陸上に存在するかしないか等)を判定して、不正なクエリか否かを判定してもよい。
あるいは、無線装置10からのクエリは、インターネットサービスプロバイダISPおよびネットワークNWを経由して地理座標サーバ20に到達する。そこで、位置変換部22が、インターネットサービスプロバイダISPに対し無線装置10の所在地情報を問い合わせて、当該ISPからの回答とクエリの内容とを比較・検証することで、所在地情報の真偽や不正の有無を判定することもできる。
【0025】
周波数サーバ30は、地理座標に基づいて、当該地理座標に対応する地域においてプライマリシステムPSが使用する周波数(帯)情報を提供するサーバである。周波数サーバ30は、ネットワークインタフェース(NW I/F)31、周波数検索部32および周波数データベース(周波数DB)33を有している。ネットワークインタフェース31は、周波数サーバ30をネットワークNWに接続するインタフェースである。周波数データベース33は、緯度、経度および標高などからなる地理座標と、当該地理座標に対応する地域に存在し正式に免許されたプライマリシステムPSおよびその使用周波数(帯)とを対応づけて格納したデータベースである。周波数検索部32は、ネットワークインタフェース31を介して送られた地理座標のクエリに基づいて、周波数データベース33から対応する地域のプライマリシステムPSおよびその使用周波数(帯)を検索し、プライマリシステムPSに割当てがない周波数や混信を与えるおそれがない周波数を問い合わせ元に回答するサーバエンジンである。
【0026】
すなわち、周波数サーバ30は、地理座標を含むクエリに応じて、対応する地域の空き周波数情報を返答する機能を有している。地理座標に応じて返答される領域の広さは、無線装置10がプライマリシステムPSに混信を与えるおそれの有無を基準に決定する。周波数サーバ30は、例えば「半径50km」のように一律に所定の範囲を「対応する地域」として検索・返答してもよいし、無線装置10およびプライマリシステムPSの間の距離とそれぞれの実効輻射電力に基づき干渉計算を個々に行った上で、混信可能性が所定以下となる範囲を「対応する地域」として検索・返答してもよい。
【0027】
無線局サーバ40は、地理座標に基づいて、当該地理座標に対応する地域において運用している他の無線局の情報を提供するサーバである。無線局サーバ40は、ネットワークインタフェース(NW I/F)41、隣接局検索部42および隣接局データベース(隣接局DB)43を有している。ネットワークインタフェース41は、無線局サーバ40をネットワークNWに接続するインタフェースである。隣接局データベース43は、緯度、経度および標高などからなる地理座標と、当該地理座標に対応する地域に存在しプライマリシステムPSと使用する周波数(帯)が重複する他の無線装置の情報とを対応づけて格納したデータベースである。隣接局検索部42は、ネットワークインタフェース41を介して送られた地理座標のクエリに基づいて、隣接局データベース43から対応する地域の無線装置および使用周波数(帯)を検索し、他の無線装置が使用中の周波数や混信を与えるおそれがある周波数を問い合わせ元に回答するサーバエンジンである。隣接局データベース43は、緯度、経度および標高などからなる地理座標と、当該地理座標に対応する地域に存在しプライマリシステムPSと使用する周波数(帯)が重複するとともに、当該重複する周波数帯の使用優先順位がプライマリシステムPSよりも低い他の無線装置の情報とを対応づけて格納してもよい。
【0028】
すなわち、無線局サーバ40は、地理座標を含むクエリに応じて、対応する地域でプライマリシステムPSと重複する周波数帯を使用する他の無線局(あるいは、対応する地域でプライマリシステムPSと重複する周波数帯を使用しプライマリシステムPSよりも当該重複周波数帯の使用優先順位が低い他の無線局)の情報を返答する機能を有している。地理座標に応じて返答される領域の広さは、無線装置10が他の無線装置(プライマリシステムPSよりも周波数利用の優先順位が低い無線装置)に混信を与えるおそれの有無を基準に決定する。周波数サーバ30は、例えば「半径50km」のように一律に所定の範囲を「対応する地域」として検索・返答してもよいし、無線装置10および他の無線装置の間の距離とそれぞれの実効輻射電力に基づき干渉計算を個々に行った上で、混信可能性が所定以下となる範囲を「対応する地域」として検索・返答してもよい。
【0029】
ここで、図3を参照して、実施形態に係る所在地受付部および地理座標取得部の構成を詳細に説明する。
【0030】
図3に示すように、実施形態の所在地受付部16は、(ユーザ)インタフェース16aおよび受付サーバ16bを有している。インタフェース16aは、例えばスイッチやキーボード、液晶表示装置などのユーザインタフェースである。インタフェース16aは、ユーザから無線装置10の各種設定や所在地情報を受付ける機能を有している。受付サーバ16bは、LANインタフェース部13に接続されたクライアントPCLANと通信し、クライアントPCLANを介してユーザから無線装置10の各種設定や所在地に関する情報を受け取るサーバである。すなわち、受付サーバ16bは、クライアントPCLANを介してユーザに対し無線装置10の所在地名の入力を促す表示を行い、クライアントPCLANに入力された所在地の情報を取り込む作用をする。受付サーバ16bは、例えばhttpプロトコルを使ったwebサーバなどにより実現することができる。
【0031】
また、この実施形態の地理座標取得部17は、記憶部17a、入力補助部17b、不正判定部17cおよびデータベースアクセス部(DBアクセス部)17dを有している。
【0032】
記憶部17aは、例えば不揮発性メモリなどにより構成され、入力補助部17bや不正判定部17cが判定等に用いるデータや、取得した地理座標などを記憶する。入力補助部17bは、インタフェース16aや受付サーバ16bが受付けた所在地に関する情報について、誤入力を検出し当該情報の再入力を受付ける機能を有する。不正判定部17cは、インタフェース16aや受付サーバ16bが受付けた所在地に関する情報が真正であるか判定する機能を有する。データベースアクセス部17dは、誤入力が修正され真正と判定された所在地に関する情報をクエリとして地理座標サーバ20に送るとともに、地理座標サーバ20から受け取った地理座標を記憶部17aに格納する機能を有する。
【0033】
(実施形態の動作)
続いて、図1ないし5を参照して、実施形態に係る無線装置およびシステムの動作を説明する。実施形態に係る無線装置は、所在地情報の受付と検証、地理座標の取得、許可周波数の取得、隣接局情報の取得、および、使用周波数の決定の各手順を経て使用周波数等を決定する。
【0034】
[所在地情報の受付と検証]
この実施形態の無線装置10は、プライマリシステムPSと使用する周波数(帯)が重複するため、利用に先立って使用周波数(帯)の設定を行う必要がある。ユーザは、インタフェース16aやクライアントPCLANを介して、無線装置10を使用する所在地の地名や番地、郵便番号などを入力する。クライアントPCLANを介して入力する場合、受付サーバ16bは、図4に示すような設定フォームをクライアントPCLANのディスプレイに表示させ、所定項目の入力を促す。図4に示す例では、国名、都道府県名、市町村名、番地、マンション名等、氏名、電子メール、電話番号、インターネットプロバイダ名(ISP)、郵便番号などの入力を促している。受付サーバ16bは、ユーザが設定フォームに入力した所在地情報等を地理座標取得部17の記憶部17aに格納する。このとき、記憶部17aに地図情報を予め格納しておき、ユーザが設定フォームに入力した後、入力補助部17bが入力した所在地情報に対応する地図情報を記憶部17aから検索し、受付サーバ16bを介してクライアントPCLANのディスプレイに表示させてもよい。これにより、ユーザの誤入力を未然に防ぐことができる。ユーザがインタフェース16aに直接所在地情報を入力した場合は、インタフェース16aは、受付けた所在地情報等を地理座標取得部17の記憶部17aに格納する(S101)。
【0035】
所在地情報等が記憶部17aに格納されると、入力補助部17bは、所在地情報等の入力が初回か否かを判定する(S102)。
【0036】
所在地情報等の入力が初回である場合、すなわち新規入力である場合(S102のYes)、入力補助部17bは、記憶部17aに格納した所在地情報について矛盾点の有無を判定する(S103)。この判定は、様々な方法を用いることができる。例えば、郵便番号と位置情報とを対比させたテーブルを予め記憶部17aに格納しておき、入力補助部17bが、当該テーブルを用いて所在地情報の地名等と郵便番号とが正しいか否かを判定することができる。すなわち、ユーザの誤入力に対し修正を促すことができる。一方、不正判定部17cが、無線装置10と接続されたISPに対して、記憶部17aに格納された所在地情報とISPに登録された加入者住所との整合性を照会してもよい。この場合、不正判定部17cは、ISPに登録された住所と所在地受付部16が受付けた所在地情報とを照合するので、当該所在地情報の真偽や不正な入力を判定することができる。所在地情報に矛盾点が見つかると(S103のYes)、入力補助部17bまたは不正判定部17cは、記憶部17aに格納された所在地情報を消去し、所在地受付部16は、再度ユーザに対し所在地情報等の入力を促す(S101)。
【0037】
[地理座標の取得]
所在地情報に矛盾点がない場合(S103のNo)、DBアクセス部17dは、記憶部17aに格納された所在地情報を地理座標サーバ20に送る(S104)。
【0038】
地理座標サーバ20は、ISPおよびネットワークNWを介して無線装置10が発した所在地情報を受け取る(S105)。所在地情報を受けると、位置変換部22は、受け取った所在地情報が真正なものであるか判定する(S106)。例えば、位置変換部22は、所在地情報に含まれ通信経路を示す経路情報や無線装置10のネットワーク上のアドレス情報などを参照し、所在地情報と比較することによって内容の正否を大まかに判定することができる。同様に、位置変換部22は、例えばMACアドレスのような無線装置10固有の識別情報と所在地情報とを比較することによっても大まかな判定を行うことができる。
【0039】
判定の結果、所在地情報の真偽が疑われる場合(S106のNo)、位置変換部22は、エラー信号を無線装置10に返信する(S107)。エラー信号を受け取った無線装置10は、再度ユーザに所在地情報の入力を促す(S101)。
【0040】
判定の結果、所在地情報が真正のものである場合(S106のYes)、位置変換部22は、所在地情報に基づいて地理情報データベース23を検索し、対応する地理座標を取得する(S108)。地理座標を取得すると、位置変換部22は、無線装置10に対し取得した地理座標を返信する(S109)。無線装置10は、ネットワークNWおよびISPを介して地理座標を受け取る(S110)。
【0041】
[割当済周波数の取得]
地理座標を受け取ると、DBアクセス部17dは、受け取った地理座標を記憶部17aに格納し、アクセス周波数設定部18は、周波数サーバ30に当該地理座標をクエリとして送信する(S111)。なお、ステップ102において所在地情報の入力が初回でない場合においても(S102のNo)、地理座標は既に記憶部17aに格納済であるから、アクセス周波数設定部18は、周波数サーバ30に当該地理座標をクエリとして送信する。
【0042】
周波数サーバ30は、ISPおよびネットワークNWを介して無線装置10が発した地理座標を受け取る(S112)。地理座標を受け取ると、周波数検索部32は、受け取った地理座標を無線装置10の識別情報とともに周波数データベース33に登録するとともに(S113)、地理座標をクエリとして対応する地域に存在するプライマリシステムPSの周波数(帯)の情報を周波数データベース33から検索する(S114)。すなわち、当該地域において既にプライマリシステムPSに割り当てられている周波数(帯)を検索する。
【0043】
割当済の周波数(帯)が得られると、周波数検索部32は、無線装置10が使用可能な周波数(帯)を示す許可情報を生成し(S115)、無線装置10に送信する(S116)。なお、当該地域において無線装置10が使用可能な周波数(帯)がない場合は、不許可を示す情報となる。無線装置10は、ネットワークNWおよびISPを介して割当情報を受け取る(S117)。
【0044】
[隣接局情報の取得]
許可情報を受け取ると、隣接局情報取得部19は、記憶部17aから地理座標を読出して無線局サーバ40にクエリとして送信する(S118)。
【0045】
無線局サーバ40は、ISPおよびネットワークNWを介して無線装置10が発した地理座標を受け取る(S119)。地理座標を受け取ると、隣接局検索部42は、地理座標をクエリとして対応する地域に存在しプライマリシステムPSの周波数(帯)を使用する他の無線装置と使用する周波数(帯)に関する隣接局情報を隣接局データベース43から検索する(S120)。すなわち、当該地域においてプライマリシステムPSに割り当てられている周波数(帯)をプライマリシステムPSよりも低い優先順位で使用する他の無線装置の有無を検索する。
【0046】
当該地域における隣接局情報が得られると、隣接局検索部42は、当該隣接局情報を無線装置10に送信する(S121)。無線装置10は、ネットワークNWおよびISPを介して隣接局情報を受け取る(S122)
【0047】
[使用周波数の決定]
隣接局情報を受け取ると、隣接局情報取得部19は、受け取った隣接局情報をアクセス周波数設定部18に渡し、アクセス周波数設定部18は、許可情報および隣接局情報に基づいて、受信部11および送信部12が使用する周波数(帯)を決定する(S123)。例えば、受信部11および送信部12が使用する周波数として、チャネルA/B/C/D/Eがあったと仮定した場合、許可情報としてチャネルA/B/E、隣接局情報としてチャネルA/B/Cが含まれていたとすると、プライマリシステムPSとの関係で利用可能なチャネルはA/B/E、近隣の他の無線装置との関係で利用できないチャネルはA/B/Cということになる。すなわち、隣接局が使用せずプライマリシステムPSに割り当てられていないチャネルはEとして求めることができる。なお、アクセス周波数設定部18は、受信部11および送信部12が使用する周波数(帯)に加えて、送信部12の送信電力を決定しても構わない。このとき、アクセス周波数設定部18は、隣接局情報から隣接局の位置情報を取得し、隣接局と無線装置10との間の距離に基づいて送信電力を決定することができる。
【0048】
無線装置10が使用する周波数等が決定されると、隣接局情報取得部19は、決定した周波数等を無線局サーバ40に送信する(S124)。無線局サーバ40は、ISPおよびネットワークNWを介して決定した周波数等を受け取る(S125)。
【0049】
無線装置10から使用を決定した周波数等を受け取ると、隣接局検索部42は、無線装置10の識別情報および使用する周波数等の情報を新たな隣接局情報として隣接局データベース43に登録する(S126)。隣接局データベース43に登録されると、隣接局検索部42は、登録した旨を無線装置10に通知する(S127)。
【0050】
使用する周波数等が無線局サーバ40の隣接局データベース43に登録されると、アクセス周波数設定部18は、アクセスポイント制御部15を介して受信部11および送信部12が使用する周波数および電力を設定する(S128)。
【0051】
このように、実施形態に係る無線装置では、地理座標サーバにアクセスする地理座標取得部を備えたので、ユーザが周波数サーバの受付可能な地理座標を知らなくても、プライマリシステムに混信を与えない周波数を容易に選択することができる。また、実施形態に係る無線装置では、プライマリシステムの周波数情報を管理する周波数サーバだけでなく、プライマリシステムよりも優先順位の低い近接する無線装置の情報を管理する無線局サーバにもアクセス可能としたので、混信を生じない周波数を容易に設定することができる。
【0052】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、上記実施形態では、プライマリシステムPSの不存在を示す許可情報と他の無線局の存在を示す隣接局情報とにより周波数等の設定を行っているが、これには限定されない。プライマリシステムPSの存在を示す不許可情報や他の無線局の不存在を示す未利用情報を利用したり、これらを組み合わせて周波数等の設定を行ってもよい。さらに、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。そして、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0053】
10…無線装置、11…受信部、12…送信部、13…LANインタフェース、14…NWインタフェース、15…アクセスポイント制御部、16…所在地受付部、17…地理座標取得部、18…アクセス周波数設定部、19…隣接局情報取得部、20…地理座標サーバ、21…NWインタフェース、22…位置変換部、23…地理情報データベース、30…周波数サーバ、31…NWインタフェース、32…周波数検索部、33…周波数データベース、40…無線局サーバ、41…NWインタフェース、42…隣接局検索部、43…隣接局データベース、NW…ネットワーク、ISP…インターネットプロバイダ、PCWLAN・PCLAN…クライアントPC。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用する周波数帯が第1の無線システムと重複し、該重複した周波数帯を使用する優先順位が前記第1の無線システムよりも低い第2の無線システムに属する無線装置であって、
地名からなり自己の所在地を示す所在地情報を受付ける所在地受付部と、
前記所在地情報に基づいて、該所在地情報に対応する緯度および経度を含む地理座標を取得する地理座標取得部と、
前記地理座標取得部が取得した地理座標を用いて、前記第1の無線システムに属する無線装置に割当てられた周波数と該無線装置の位置に係る緯度および経度を含む地理座標とを対応づけて格納した周波数サーバにアクセスし、前記第1の無線システムが使用する周波数帯と重複する前記第2の無線システムが使用する周波数帯から、前記第1の無線システムに属する無線装置に割当てられていない周波数および該無線装置に混信を与えるおそれのない周波数の少なくとも一方を取得して、送受信周波数として設定する周波数設定部と
を具備したことを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記地理座標取得部が取得した地理座標を用いて、前記第2の無線システムに属する無線装置が使用する周波数と該無線装置の位置に係る緯度および経度を含む地理座標とを対応づけて格納した無線局サーバにアクセスし、前記第2の無線システムが使用する周波数帯から、前記第2の無線システムに属する無線装置が使用している周波数および該無線装置に混信を与えるおそれのある周波数の少なくとも一方を示す使用情報を取得する隣接局情報取得部をさらに備え、
前記周波数設定部は、前記周波数サーバから取得した周波数および前記使用情報に基づいて前記送受信周波数を決定すること
を特徴とする請求項1記載の無線装置。
【請求項3】
前記周波数設定部は、前記周波数サーバおよび前記無線局サーバにアクセスした後、前記周波数サーバから取得した周波数および前記未使用情報に基づいて決定した送受信周波数を前記無線局サーバに登録することを特徴とする請求項2記載の無線装置。
【請求項4】
前記周波数サーバは、前記第1の無線システムに属する無線装置に割当てられた周波数と、該無線装置の位置に係る緯度、経度および標高からなる地理座標とを対応づけて格納し、
前記地理座標取得部は、前記所在地情報に基づいて、前記所在地情報に対応する緯度、経度および標高を含む地理座標を取得すること
を特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の無線装置。
【請求項5】
自己と接続され前記周波数サーバへのアクセスを担うネットワークプロバイダにアクセスし、前記所在地受付部が受け付けた所在地情報の真偽を判定する不正判定部をさらに備え、
前記地理座標取得部は、前記不正判定部が前記所在地受付部の受け付けた所在地情報を正しいと判定した場合に前記地理座標を取得すること
を特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の無線装置。
【請求項6】
使用する周波数帯が第1の無線システムと重複し、該第1の無線システムよりも前記重複した周波数帯を使用する優先順位が低い第2の無線システムに属する無線装置による通信方法であって、
地名からなり自己の所在地を示す所在地情報を受付ける所在地受付ステップと、
前記所在地情報に基づいて、前記所在地情報に対応する緯度および経度を含む地理座標を取得する地理座標取得ステップと、
前記地理座標取得ステップで取得した地理座標を用いて、前記第1の無線システムに属する無線装置に割当てられた周波数と該無線装置の位置に係る緯度および経度を含む地理座標とを対応づけて格納した周波数サーバにアクセスし、前記第1の無線システムが使用する周波数帯と重複する前記第2の無線システムが使用する周波数帯から、前記第1の無線システムに属する無線装置に割当てられていない周波数および該無線装置に混信を与えるおそれのない周波数の少なくとも一方を示す許可情報を取得する周波数情報取得ステップと、
前記周波数情報取得ステップで取得した許可情報に基づき送受信周波数を設定する周波数設定ステップと
を有することを特徴とする通信方法。
【請求項7】
前記地理座標取得ステップで取得した地理座標を用いて、前記第2の無線システムに属する無線装置が使用する周波数と該無線装置の位置に係る緯度および経度を含む地理座標とを対応づけて格納した無線局サーバにアクセスし、前記第2の無線システムが使用する周波数帯から、前記第2の無線システムに属する無線装置が使用していない周波数および該無線装置に混信を与えるおそれのない周波数の少なくとも一方を示す使用中情報を取得する無線局情報取得ステップをさらに有し、
前記周波数設定ステップは、前記周波数情報取得ステップで取得した許可情報および前記無線局情報取得ステップで取得した使用中情報に基づき送受信周波数を決定すること
を特徴とする請求項6記載の通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−104896(P2012−104896A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249198(P2010−249198)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)総務省委託「電波資源拡大のための研究開発」の一環、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】