説明

無線装置および通信方法

【課題】所定の通信規格に準拠した有線通信を置換する無線通信において、電波通信状況に応じた通信を実行する技術を提供する。
【解決手段】無線伝送路特性取得部40は、第1無線装置10aと第2無線装置10bとの間の無線伝送路特性を取得する。修正部46は、無線伝送路特性をもとに、シンク装置14が使用可能な複数の伝送パラメータ値が示されたテーブルから、使用不可能な伝送パラメータ値を削除することによって、テーブルを修正する。通知部48は、修正したテーブルをソース装置12へ通知する。変復調部36は、通知したテーブルに示された伝送パラメータ値の範囲において、ソース装置12からシンク装置14への無線通信を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関し、特に所定の通信規格に準拠した有線通信を置換するための無線通信を実行する無線装置および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HDMI(High−Definition Multimedia Interface)(登録商標)は、主にデジタル家庭用電化製品向けのインタフェースに関する規格である。HDMIは、非圧縮デジタル形式の音声と映像を伝達するので、音質および画質の劣化を抑制できる。また、HDMIは、映像・音声・制御信号を一体化させることによって、シングルケーブルの使用を可能にするので、配線が簡略化される。HDMIの物理層にはT.M.D.S.(Transition Minimized Differential Signaling)が採用され、暗号化にはHDCP(High−bandwidth Digital Content Protection)が採用されている。
【0003】
また、HDMIの機器間認証にはEDID(Extended display identification data)が採用され、系全体の制御系接続にはCEC(Consumer Electronics Control)が採用されている。特に、EDIDは、物理アドレスや物理パラメータを設定するために使用される。物理パラメータの一例は、スループットである。HDMIに準拠したネットワークでは、例えば、映像信号を提供するためのソース装置と、映像信号を表示するためのシンク装置と、ソース装置とシンク装置とを接続するためのケーブルが含まれる。ネットワークの配線をさらに簡略化されるために、ケーブルの代わりに無線通信の使用が望まれる。例えば、ソース装置とシンク装置のそれぞれに無線アダプタを接続し、無線アダプタ間において無線通信が実行される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第07/094347号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HDMIでは、使用可能なパラメータの値として、スループット値が、EDIDに含められてシンク装置からソース装置へ通知される。ソース装置は、EDIDに含まれたいずれかのスループット値を使用して映像信号を送信する。このスループット値は、無線アダプタを使用する場合の無線区間にも適用される。しかしながら、無線区間の電波通信状況は時間とともに変動するので、スループット値を実現できない場合がありえる。そのため、電波通信状況が悪化することによって、無線区間の実効スループット値が低下する環境下において、映像信号を安定して伝送することが要求される。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、所定の通信規格に準拠した有線通信を置換する無線通信において、電波通信状況に応じた通信を実行する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の無線装置は、ソース装置に接続された無線装置と、シンク装置に接続された無線装置との間の無線伝送路特性に関する情報を取得する無線伝送路特性取得部と、無線伝送路特性取得部において取得した無線伝送路特性に関する情報をもとに、シンク装置が使用可能な複数の伝送パラメータ値が示されたテーブルから、使用不可能な伝送パラメータ値を削除することによって、テーブルを修正する修正部と、修正部において修正したテーブルをソース装置へ通知する通知部と、通知部において通知したテーブルに示された伝送パラメータ値の範囲において、ソース装置からシンク装置への無線通信を実行する通信部と、を備える。
【0008】
この態様によると、無線伝送路特性をもとに、シンク装置が使用可能な複数の伝送パラメータ値が示されたテーブルを修正してソース装置へ通知するので、所定の通信規格に準拠した有線通信を置換する無線通信において、電波通信状況に応じた通信を実行できる。
【0009】
通信部における無線通信の対象となるデータの種類に関する情報を取得する種類情報取得部をさらに備えてもよい。修正部は、種類情報取得部が取得したデータの種類に関する情報に応じて、データの種類ごとに異なった組合せの伝送パラメータ値が示されたテーブルに対して修正処理を実行してもよい。この場合、データの種類ごとに異なった組合せの伝送パラメータ値が示されたテーブルに対して修正処理を実行するので、データの種類に関する情報に応じた伝送パラメータ値を使用できる。
【0010】
本発明の別の態様は、通信方法である。この方法は、ソース装置に接続された無線装置と、シンク装置に接続された無線装置との間の無線伝送路特性に関する情報を取得するステップと、取得した無線伝送路特性に関する情報をもとに、シンク装置が使用可能な複数の伝送パラメータ値が示されたテーブルから、使用不可能な伝送パラメータ値を削除することによって、テーブルを修正するステップと、修正したテーブルをソース装置へ通知するステップと、通知したテーブルに示された伝送パラメータ値の範囲において、ソース装置からシンク装置への無線通信を実行するステップと、を備える。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、所定の通信規格に準拠した有線通信を置換する無線通信において、電波通信状況に応じた通信を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例に係る通信システムの構成を示す図である。
【図2】図1の決定部に記憶されたテーブルのデータ構造を示す図である。
【図3】図3(a)−(b)は、図1の修正部において処理されるEDIDのデータ構造を示す図である。
【図4】図1の通信システムによる動画像データの伝送手順を示すシーケンス図である。
【図5】図1の第1無線装置による動画像データの伝送手順を示すフローチャートである。
【図6】図1の第2無線装置による動画像データの伝送手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施例は、HDMIに対応したソース装置とシンク装置が含まれた通信システムに関する。また、本実施例においては、ソース装置に第1無線装置が接続され、シンク装置に第2無線装置が接続されており、第1無線装置と第2無線装置との間において無線通信が実行される。このように第1無線装置と第2無線装置とが追加された場合であっても、HDMIに対応するためには、EDIDによる解像度等の制御がシンク装置においてなされる必要がある。
【0015】
無線通信では、一般的に電波通信状況が変動する。電波通信状況が悪化すると、無線通信のスループットが低下するので、ビデオ圧縮のコーデックの圧縮率を増加させる必要がある。さらに、電波通信状況が著しく悪化する場合において、無線通信のスループットが極端に減少し、ビデオ圧縮コーデックの圧縮率も限界付近になると、ブラックアウトや映像のフリーズが発生しやすくなる。そのような状況の発生を抑制するために、電波通信状況に応じたEDIDの使用が望ましい。一方、HDMIに対応している限り、シンク装置による電波通信状況の把握は困難である。HDMIに対応しながら、電波通信状況に応じたEDIDを使用するために、本実施例に係る第1無線装置および第2無線装置は、次の処理を実行する。
【0016】
第1無線装置から送信されたスループット確認用データを受信することによって、第2無線装置は、電波通信状況を測定する。第2無線装置は、電波通信状況をもとに、シンク装置からのEDIDにて示された複数のスループットのうち、使用可能なスループットを決定する。また、第2無線装置は、EDIDにて示された複数のスループットから、使用不可能なスループットを削除するように、EDIDを修正する。さらに、第2無線装置は、第1無線装置を介して、ソース装置へEDIDを送信する。ソース装置は、EDIDにしたがって、第1無線装置、第2無線装置を介してシンク装置へ映像信号を送信する。つまり、無線通信状況に応じて、シンク装置からのEDIDを修正してからソース装置に使用させることによって、HDMIへの対応が維持される。
【0017】
図1は、本発明の実施例に係る通信システム100の構成を示す。通信システム100は、無線装置10と総称される第1無線装置10a、第2無線装置10b、ソース装置12、シンク装置14を含む。また、第1無線装置10aは、受付部18、インタフェース部20、符号化部22、処理部24、変復調部26、RF部28を含み、第2無線装置10bは、インタフェース部30、復号部32、処理部34、変復調部36、RF部38を含む。また、処理部34は、無線伝送路特性取得部40、種類情報取得部42、決定部44、修正部46、通知部48を含む。
【0018】
ソース装置12は、HDMIに対応しながら、映像信号を送信する。ここで、映像信号には、動画像データや音声データが含まれている。以下では、映像信号、動画像データ、音声データを明確に区別せずに使用する。シンク装置14は、HDMIに対応しながら、映像信号を受信するとともに、映像信号を再生して表示する。そのため、シンク装置14は、モニタ機能を含む。第1無線装置10aは、HDMIに対応したケーブルによってソース装置12に接続され、第2無線装置10bは、HDMIに対応したケーブルによってシンク装置14に接続される。
【0019】
処理部24は、ソース装置12がEDIDを受信する前の段階において、第2無線装置10bに電波通信状況を測定させるためのスループット確認用データを変復調部26へ出力する。スループット確認用データは、第2無線装置10bにとってパターンが既知の信号であり、トレーニング信号に相当する。また、処理部24は、スループット確認用データを予め記憶する。変復調部26は、処理部24からのスループット確認用データを入力し、スループット確認用データを変調する。変復調部26は、変調したスループット確認用データ(以下、これもまた「スループット確認用データ」という)をRF部28へ出力する。RF部28は、変復調部26からのスループット確認用データを無線周波数へ周波数変換するとともに、増幅し、無線周波数のスループット確認用データ(以下、これもまた「スループット確認用データ」という)をアンテナから送信する。
【0020】
RF部38は、第1無線装置10aからのスループット確認用データをアンテナにて受信する。RF部38は、受信したスループット確認用データを中間周波数へ周波数変換して、中間周波数のスループット確認用データ(以下、これもまた「スループット確認用データ」という)を変復調部36へ出力する。変復調部36は、RF部38からのスループット確認用データを復調し、復調したスループット確認用データ(以下、これもまた「スループット確認用データ」という)を処理部34へ出力する。
【0021】
処理部34のうちの無線伝送路特性取得部40は、スループット確認用データをもとに電波通信状況を測定する。具体的には、無線伝送路特性取得部40は、スループット確認用データに対する誤り率を測定する。誤り率には、BER(Bit Error Rate)、PER(Packet Error Rate)があるが、これらを測定するために、第1無線装置10aから複数のスループット確認用データが送信されてもよい。誤り率を測定するために、無線伝送路特性取得部40は、変復調部36からのスループット確認用データと、予め記憶したスループット確認用データとを比較する。無線伝送路特性取得部40は、測定した誤り率を電波通信状況として決定部44へ出力する。なお、無線伝送路特性取得部40は、CNR(Carrier to Noise Ratio)や電界強度等を測定して、これらを電波通信状況としてもよい。つまり、無線伝送路特性取得部40は、第1無線装置10aと第2無線装置10bとの間の無線伝送路特性を取得する。
【0022】
決定部44は、無線伝送路特性取得部40からの電波通信状況に関する情報を入力する。決定部44は、電波通信状況に関する情報としきい値とを比較して、第1無線装置10aと第2無線装置10bとの間において使用可能な無線伝送スループットを決定する。決定部44は、複数のしきい値をテーブルの形式にて記憶する。図2は、決定部44に記憶されたテーブルのデータ構造を示す。図示のごとく、しきい値欄200、無線伝送スループット欄202が含まれる。しきい値欄200では、C1からCLのような複数のしきい値が示される。電波通信状況が誤り率である場合、しきい値は誤り率として規定される。
【0023】
無線伝送スループット欄202では、各しきい値に対応した無線伝送スループットが示される。なお、通信システム100では、複数の無線伝送スループットが規定されている。また、ひとつの無線伝送スループット、例えば、「D1」には、使用可能な無線伝送スループットが複数含まれてもよい。悪化した電波通信状況に対応したしきい値ほど、低速な無線伝送スループットのみに対応する。図1に戻る。電波通信状況が誤り率である場合、決定部44は、しきい値欄200に含まれた複数のしきい値のそれぞれと、誤り率とを比較し、誤り率よりも大きくなっているしきい値のうち、最も小さいしきい値を特定する。また、決定部44は、特定したしきい値に対応した無線伝送スループットを特定する。決定部44は、特定した無線伝送スループットを修正部46へ出力する。
【0024】
ソース装置12から送信すべき映像信号のモードとして、複数種類のモードが規定されている。受付部18は、ユーザから、使用すべき映像信号のモードの情報を受けつける。ここでは、複数種類の映像信号モードとして、ゲームモードと高解像度モードが規定されており、受付部18は、ゲームモードあるいは高解像度モードに関する情報を受けつける。例えば、ゲームモードでは、映像遅延を最小限にするために、解像度より映像遅延を下げることを優先させる目的で、動画圧縮率の最上限が下げられる。その結果、演算時間が短縮される。一方、高解像度モードでは、解像度を優先するために、映像遅延を無視しても最大限高解像度の映像を優先させる目的で、動画圧縮率の最上限がゲームモードよりも上げられる。このような使用すべき映像信号のモードの情報は、無線通信の対象となるデータの種類に関する情報ともいえる。受付部18は、受けつけた映像信号のモードの情報(以下、「動画像モード選択情報」という)を処理部24へ出力する。
【0025】
処理部24は、スループット確認用データと同様に、動画像モード選択情報を変復調部26へ出力する。変復調部26は、スループット確認用データと同様に、動画像モード選択情報を変調し、変調した動画像モード選択情報(以下、これもまた「動画像モード選択情報」という)をRF部28へ出力する。RF部28は、スループット確認用データと同様に、無線周波数の動画像モード選択情報(以下、これもまた「動画像モード選択情報」という)をアンテナから送信する。
【0026】
RF部38は、スループット確認用データと同様に、第1無線装置10aからの動画像モード選択情報をアンテナにて受信し、中間周波数の動画像モード選択情報(以下、これもまた「動画像モード選択情報」という)を変復調部36へ出力する。変復調部36は、スループット確認用データと同様に、復調した動画像モード選択情報(以下、これもまた「動画像モード選択情報」という)を処理部34へ出力する。種類情報取得部42は、変復調部36から、動画像モード選択情報を取得する。種類情報取得部42は、動画像モード選択情報を修正部46へ出力する。
【0027】
修正部46は、決定部44からの無線伝送スループットを入力するとともに、種類情報取得部42からの動画像モード選択情報を入力する。修正部46は、無線伝送スループットをもとに、映像信号を伝送するために必要な動画圧縮率および可能ビデオ伝送スループットを導出する。ここでは、この処理を具体的に説明する。可能ビデオ伝送スループットとは、ソース装置12からシンク装置14へ伝送可能な映像信号のスループットである。これは、非圧縮処理の状態における動画像データのスループットといえる。前述の高解像度モードでは、ゲームモードよりも、高い可能ビデオ伝送スループットが望まれる。
【0028】
動画圧縮率は、可能ビデオ伝送スループットの映像信号を無線伝送スループットにて伝送するために、映像信号を圧縮する際の圧縮率である。動画圧縮率は、可能ビデオ伝送スループット/無線伝送スループットによって導出される。前述のゲームモードでは、高解像度モードよりも、低い動画圧縮率が望まれる。決定部44から複数の無線伝送スループットを入力した場合、修正部46は、各無線伝送スループットに対応した動画圧縮率および可能ビデオ伝送スループットを導出する。なお、無線伝送スループットに対して、動画圧縮率および可能ビデオ伝送スループットが一意的に特定される場合、これらの関係をテーブルとして記憶しておけば、修正部46は、計算を実行せずに、無線伝送スループットから、動画圧縮率および可能ビデオ伝送スループットを特定できる。
【0029】
その後、修正部46は、インタフェース部30を介して、HDMI規格にしたがってシンク装置14へEDID要求信号を送信する。その後、修正部46は、インタフェース部30を介して、シンク装置14からEDIDを受信する。EDIDには、シンク装置14において使用可能なスループットの値が、少なくともひとつ示されている。なお、EDIDは、テーブル形式にて構成されている。ここでは、スループットの値が可能ビデオ伝送スループットであるとする。
【0030】
修正部46は、動画像モード選択情報をもとに、EDIDを修正する。ゲームモードでは低い動画圧縮率が望まれるので、動画像モード選択情報がゲームモードである場合、修正部46は、EDIDに含まれた複数の可能ビデオ伝送スループットのうち、高い動画圧縮率に対応した可能ビデオ伝送スループットを削除する。一方、高解像度モードでは解像度が優先されるので、動画像モード選択情報が高解像度モードである場合、修正部46は、EDIDに含まれた複数の可能ビデオ伝送スループットのうち、解像度の低い可能ビデオ伝送スループットを削除する。
【0031】
これらの処理によって、もとのEDIDから、ゲームモード用EDIDあるいは高解像度モード用EDIDが生成される。以下では、ゲームモード用EDIDおよび高解像度モード用EDIDもまた、「EDID」と総称される。以上の処理に続いて、修正部46は、EDIDに含まれた可能ビデオ伝送スループットと、無線伝送スループットから特定された可能ビデオ伝送スループットとを比較する。修正部46は、後者とは異なった可能ビデオ伝送スループットをEDIDから削除することによって、EDIDを修正する。
【0032】
つまり、修正部46は、電波通信状況をもとに、EDIDから、使用不可能な可能ビデオ伝送スループットを削除することによって、EDIDを修正する。これは、電波通信状況が悪いために、EDIDに含まれた可能ビデオ伝送スループットをシンク装置14が表示できない場合に相当する。また、このような修正処理は、動画像モード選択情報に応じて、データの種類ごとに規定されたEDIDに対してなされる。一方、後者とは異なった可能ビデオ伝送スループットがEDIDに含まれていない場合、修正部46は、EDIDをそのままにする。
【0033】
図3(a)−(b)は、修正部46において処理されるEDIDのデータ構造を示す。図3(a)は、ゲームモード用EDIDに相当し、図3(b)は、高解像度モード用EDIDに相当する。また、これらは、無線伝送スループットから特定された可能ビデオ伝送スループットによる修正がなされた結果に相当する。図示のごとく、ゲームモード用EDIDと高解像度モード用EDIDとには、ID欄210、有効画素数欄212、可能ビデオ伝送スループット欄214、必要データ削減量欄216、無線伝送スループット欄218が含まれる。ID欄210には、EDIDに含まれた複数の可能ビデオ伝送スループットを識別するための番号が示される。
【0034】
有効画素数欄212には、動画像の有効画素数が示される。必要データ削減量欄216には、圧縮率が示される。圧縮率の値が小さいほど、圧縮率が高いといえる。図示のごとく、ゲームモードでは低い動画圧縮率が望まれるので、図3(a)での必要データ削減量欄216の最小値は、図3(b)での必要データ削減量欄216の最小値よりも大きい。また、高解像度モードでは解像度が優先されるので、図3(b)での有効画素数欄212の最小値は、図3(a)での有効画素数欄212の最小値よりも大きい。図1に戻る。修正部46は、EDIDを通知部48へ出力する。
【0035】
通知部48は、修正部46からのEDIDを入力する。通知部48は、EDIDをソース装置12へ通知するために、EDIDを変復調部36へ出力する。変復調部36は、通知部48からのEDIDを入力すると、EDIDを変調し、変調したEDID(以下、これもまた「EDID」という)をRF部38へ出力する。RF部38は、変復調部36からのEDIDを無線周波数へ周波数変換するとともに、増幅し、無線周波数のEDID(以下、これもまた「EDID」という)をアンテナから送信する。
【0036】
RF部28は、第2無線装置10bからのEDIDをアンテナにて受信する。RF部28は、受信したEDIDを中間周波数へ周波数変換して、中間周波数のEDID(以下、これもまた「EDID」という)を変復調部26へ出力する。変復調部26は、RF部28からのEDIDを復調し、復調したEDID(以下、これもまた「EDID」という)を処理部24へ出力する。処理部24は、インタフェース部20を介してソース装置12へEDIDを出力する。
【0037】
ソース装置12は、EDIDに示された可能ビデオ伝送スループットの範囲において映像信号を生成し、生成した映像信号をインタフェース部20へ出力する。この処理には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。インタフェース部20は、映像信号を符号化部22へ出力する。符号化部22は、インタフェース部20からの映像信号を符号化し、処理部24を介して、符号化した映像信号(以下、これもまた「映像信号」という)を変復調部26へ出力する。変復調部26、RF部28は、これまでと同様の処理を実行することによって、無線周波数の映像信号(以下、これもまた「映像信号」という)をアンテナから送信する。
【0038】
RF部38は、第1無線装置10aからの映像信号を受信する。RF部38、変復調部36は、これまで同様の処理を実行することによって、処理部34を介して、復調した映像信号を復号部32へ出力する。復号部32は、映像信号を復号し、復号した映像信号(以下、これもまた「映像信号」という)をインタフェース部30経出力する。インタフェース部30は、復号部32からの映像信号をシンク装置14へ出力する。シンク装置14は、映像をモニタ等に表示する。つまり、RF部28やRF部38等は、通知部48において通知したEDIDに示された可能ビデオ伝送スループットの範囲において、ソース装置12からシンク装置14への無線通信を実行する。
【0039】
なお、ソース装置12からシンク装置14へ映像信号を送信しているときに、電波通信状況が変化することによって、無線伝送スループットに変化が生じることがありえる。その際、可能ビデオ伝送スループットにも変化が生じる。その結果、EDIDの再修正が必要になる。無線伝送路特性取得部40および決定部44が、第1無線装置10aから適宜送信されるスループット確認用データをもとに電波通信状況の変動を検出すると、インタフェース部30を介して、その旨をシンク装置14へ出力する。シンク装置14は、「ビデオフォーマット情報を書き換え中しばらくおまちください。」のメッセージを表示し、第2無線装置10bへEDIDを送信する。第2無線装置10bは、これまで処理を繰り返し実行することによって、EDIDを再び修正する。
【0040】
この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0041】
以上の構成による通信システム100の動作を説明する。図4は、通信システム100による動画像データの伝送手順を示すシーケンス図である。第1無線装置10aは、第2無線装置10bへスループット確認用データを送信する(S10)。第1無線装置10aは、第2無線装置10bへ動画像モード選択情報を送信する(S12)。第2無線装置10bは、可能ビデオ伝送スループットを決定する(S14)。シンク装置14は、第2無線装置10bへEDID情報を送信する(S16)。第2無線装置10bは、EDID情報を修正する(S18)。
【0042】
第2無線装置10bは、第1無線装置10aへEDID情報を送信する(S20)。第1無線装置10aは、ソース装置12へEDID情報を送信する(S22)。ソース装置12は、可能ビデオ伝送スループットを選択する(S24)。ソース装置12は、第1無線装置10aへ映像信号を送信する(S26)。第1無線装置10aは、第2無線装置10bへ映像信号を送信する(S28)。第2無線装置10bは、シンク装置14へ映像信号を送信する(S30)。シンク装置14は、映像を表示する(S32)。
【0043】
図5は、第1無線装置10aによる動画像データの伝送手順を示すフローチャートである。処理部24は、変復調部26、RF部28を介して、スループット確認用データを送信する(S50)。受付部18は、動画像モード選択情報を受けつける(S52)。処理部24は、変復調部26、RF部28を介して、動画像モード選択情報を送信する(S54)。処理部24は、RF部28、変復調部26を介してEDID情報を受信しなければ(S56のN)、待機する。
【0044】
一方、処理部24は、RF部28、変復調部26を介してEDID情報を受信すれば(S56のY)、インタフェース部20を介してEDID情報を送信する(S58)。処理部24は、インタフェース部20、符号化部22を介して映像信号を受信しなければ(S60のN)、待機する。処理部24は、インタフェース部20、符号化部22を介して映像信号を受信すれば(S60のY)、変復調部26、RF部28を介して映像信号を送信する(S62)。
【0045】
図6は、第2無線装置10bによる動画像データの伝送手順を示すフローチャートである。無線伝送路特性取得部40は、RF部38、変復調部36を介してスループット確認用データを受信しなければ(S80のN)、待機する。無線伝送路特性取得部40が、RF部38、変復調部36を介してスループット確認用データを受信すれば(S80のY)、決定部44は、無線伝送スループットを決定する(S82)。種類情報取得部42は、RF部38、変復調部36を介して動画像モード選択情報を受信しなければ(S84のN)、待機する。種類情報取得部42が、RF部38、変復調部36を介して動画像モード選択情報を受信すれば(S84のY)、修正部46は、可能ビデオ伝送スループットを決定する(S86)。
【0046】
修正部46は、インタフェース部30を介してEDID情報を取得する(S88)。EDID情報に修正が必要であれば(S90のY)、修正部46は、EDID情報を修正する(S92)。一方、EDID情報に修正が必要でなければ(S90のN)、ステップ92をスキップする。通知部48は、変復調部36、RF部38を介してEDID情報を送信する(S94)。処理部34は、RF部38、変復調部36を介して映像信号を受信しなければ(S96のN)、待機する。処理部34は、RF部38、変復調部36を介して映像信号を受信すれば(S96のY)、復号部32、インタフェース部30を介して映像信号を送信する(S98)。
【0047】
本発明の実施例によれば、電波通信状況をもとに、シンク装置が使用可能な複数の可能ビデオ伝送スループットが示されたEDIDを修正してソース装置へ通知するので、HDMIに準拠した有線通信を置換する無線通信において、電波通信状況に応じた通信を実行できる。また、データの種類ごとに異なった組合せの可能ビデオ伝送スループットが示されたEDIDに対して修正処理を実行するので、動画像モード選択情報に応じた可能ビデオ伝送スループットを使用できる。また、スループット確認用データを適時監視するので、電波通信状況が悪化しても、画像が表示されない等の状況の発生頻度を低減できる。また、画像が表示されない等の状況の発生頻度が低減されるので、無線画像・音声伝送を安定して実行できる。また、電波通信状況が悪化した場合であっても、変調方式を固定にするので、変調方式の変更による受信性能悪化や通信距離短縮等の影響を回避できる。
【0048】
また、HDMI規格に準拠したソース装置とシンク装置の間に、無線装置を挿入するだけで、電波通信状況に応じたEDIDの修正を実行するので、HDMI規格に適合した無線通信を簡易に実行できる。また、修正したEDIDをソース装置に通知するので、ソース装置に安定したEDIDを選択させることができる。また、ソース装置が、安定したEDIDを選択するので、シンク装置における映像破綻等の発生を抑制できる。また、HDMIインタフェースを具備したソース装置とシンク装置であれば、一切変更・改修することなく、無線装置を導入することによって、無線通信を実現できる。通信システムにおいて、動画圧縮率に対して、ゲームモードや高解像度モードが選択されるので、ユーザの要望に応じた低遅延映像や高解像度映像を取得できる。
【0049】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0050】
本発明の実施例において、第2無線装置10bがEDIDを修正している。しかしながらこれに限らず例えば、第1無線装置10aがEDIDを修正してもよい。その際、種類情報取得部42、決定部44、修正部46、通知部48は、第1無線装置10aに含まれる。第2無線装置10bの無線伝送路特性取得部40は、電波通信状況を取得すると、これを第1無線装置10aへ送信する。なお、無線伝送路特性取得部40も第1無線装置10aに含まれてもよい。その際、第2無線装置10bから第1無線装置10aへの電波通信状況が、第1無線装置10aから第2無線装置10bへの電波通信状況に等しいとして処理が実行される。本変形例によれば、第2無線装置10bの構成を簡易にできる。
【0051】
本発明の実施例において、通信システム100は、ゲームモードと高解像度モードとのふたつのモードを規定している。しかしながらこれに限らず例えば、3つ以上のモードが規定されてもよい。本変形例によれば、可能ビデオ伝送スループットを詳細に設定できる。
【0052】
本発明の実施例において、第1無線装置10aと第2無線装置10bとは、異なった構成を有する。しかしながらこれに限らず例えば、第1無線装置10aの構成と第2無線装置10bの構成とを含むように、無線装置10が構成されてもよい。その際、無線装置10には、第1無線装置10aに対応した動作を実行するか、第2無線装置10bに対応した動作を実行するかを選択するためのスイッチが設けられる。本変形例によれば、1種類の無線装置10によって、HDMIを無線化できる。
【符号の説明】
【0053】
10 無線装置、 12 ソース装置、 14 シンク装置、 18 受付部、 20 インタフェース部、 22 符号化部、 24 処理部、 26 変復調部、 28 RF部、 30 インタフェース部、 32 復号部、 34 処理部、 36 変復調部、 38 RF部、 40 無線伝送路特性取得部、 42 種類情報取得部、 44 決定部、 46 修正部、 48 通知部、 100 通信システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソース装置に接続された無線装置と、シンク装置に接続された無線装置との間の無線伝送路特性に関する情報を取得する無線伝送路特性取得部と、
前記無線伝送路特性取得部において取得した無線伝送路特性に関する情報をもとに、シンク装置が使用可能な複数の伝送パラメータ値が示されたテーブルから、使用不可能な伝送パラメータ値を削除することによって、テーブルを修正する修正部と、
前記修正部において修正したテーブルをソース装置へ通知する通知部と、
前記通知部において通知したテーブルに示された伝送パラメータ値の範囲において、ソース装置からシンク装置への無線通信を実行する通信部と、
を備えることを特徴とする無線装置。
【請求項2】
前記通信部における無線通信の対象となるデータの種類に関する情報を取得する種類情報取得部をさらに備え、
前記修正部は、前記種類情報取得部が取得したデータの種類に関する情報に応じて、データの種類ごとに異なった組合せの伝送パラメータ値が示されたテーブルに対して修正処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の無線装置。
【請求項3】
ソース装置に接続された無線装置と、シンク装置に接続された無線装置との間の無線伝送路特性に関する情報を取得するステップと、
取得した無線伝送路特性に関する情報をもとに、シンク装置が使用可能な複数の伝送パラメータ値が示されたテーブルから、使用不可能な伝送パラメータ値を削除することによって、テーブルを修正するステップと、
修正したテーブルをソース装置へ通知するステップと、
通知したテーブルに示された伝送パラメータ値の範囲において、ソース装置からシンク装置への無線通信を実行するステップと、
を備えることを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−109736(P2012−109736A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256110(P2010−256110)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】