説明

無線通信システム、基地局装置、端末装置及び通信方法

【課題】対応する無線周波数帯域を増やした場合においても回路規模の増大を抑圧できる受信機を提供する。
【解決手段】無線通信システムは、基地局装置10が、端末装置に対して送信した信号に対する受信応答信号が干渉せずに受信するように、受信応答信号の送信が制御される制御情報を送信する。端末装置は、基地局装置10が端末装置に対して送信した信号に対する受信応答信号であって、基地局装置10が受信応答信号を干渉せずに受信するように基地局装置10から送信された制御情報に応じて受信応答信号を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線帯域を用いて通信を行う無線通信システム、基地局装置、端末装置及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基地局(図19参照)が複数の周波数チャネルを用いて複数の端末(図20参照)と通信する無線通信システムは、一例として、IEEE802.11規格に準拠した無線LAN(Local Area Network)アクセスポイントと端末からなる構成が挙げられる(例えば、非特許文献1参照。)。IEEE802.11規格では、端末は、基地局から端末方向の下り信号を受信すると、受信した周波数チャネルを用いて受信応答信号(ACK信号)を基地局に送信する(図21参照)。
そのような無線通信システムの中には、基地局は、複数の端末との通信に異なる周波数チャネルを用いて同時に通信する場合が生じる(図22参照)。例えば、免許不要周波数帯である2.4GHz帯と5GHz帯のそれぞれの周波数チャネルを用いる無線LAN製品が存在する(例えば、非特許文献2参照。)。
各端末から送信されるACK信号を基地局が受信する場合、基地局において受信される受信電力は、端末との距離などの影響により異なる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】IEEE Std 802.11TM-2007、2007年7月.
【非特許文献2】”ワイヤレスアクセスポイント「WL-1154」”、[online]、東日本電信電話株式会社、平成22年1月6日検索、インターネット<URL:http://www.ntt-east.co.jp/office/goods/wl1154/method.html#cstart>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、個々の周波数チャネルの電力スペクトル密度が、受信電力の周波数スペクトルにおける周波数マスクを規定通り満足している場合であっても、周波数チャネルが隣接している場合の通信では、干渉が生じうる。例えば、隣接する周波数チャネルのACK信号を同時に受信する場合は、干渉が生じる場合がある(図23参照)。特に、隣接する周波数チャネルにおいて、受信電力のバランスが悪い状態に受信障害が生じる。例えば、受信電力の大きな周波数チャネルのスペクトルにおける帯域外電力が、受信電力の小さな周波数チャネルのスペクトルの中心周波数における電力と同じとなることも生じうる。このような状態が生じると、受信電力の小さな周波数チャネルの受信が困難となる。
そのため、非特許文献2の技術では、2.4GHz帯及び5GHz帯という互いに大きく離れた周波数帯を用いて、干渉が生じないだけの帯域幅を確保する方法を用いる(図22参照)。
しかしながら、隣り合う周波数チャネル間で互いに干渉が生じないように周波数チャネルを配置して、それぞれの帯域外電力の影響を回避するためのガードバンドの帯域幅を確保すると、使用できない周波数チャネルが発生することから周波数利用効率が悪くなる問題や、中心周波数が離れた複数の送信信号を生成することが必要となるためにアナログ回路が複雑化する問題が生じる。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、使用できない周波数チャネルの発生を抑制して、周波数利用効率を向上させることができる無線通信システム、基地局装置、端末装置及び通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、複数の端末装置と、該複数の端末装置と通信する基地局装置とを含む無線通信システムであって、前記基地局装置は、前記端末装置に対して送信した信号に対する受信応答信号が干渉せずに受信するように、前記受信応答信号の送信が制御される制御情報を送信し、前記端末装置は、前記基地局装置が前記端末装置に対して送信した信号に対する受信応答信号であって、前記基地局装置が前記受信応答信号を干渉せずに受信するように、前記基地局装置から送信された制御情報に応じて前記受信応答信号を送信することを特徴とする無線通信システムである。
【0007】
また、本発明は、上記発明において、前記基地局装置は、前記受信応答信号の送信開始時間を制御して、前記受信応答信号を隣接するチャネルを使って同時に受信しないように配置し、前記端末装置は、前記基地局装置から送信された制御情報に応じて指示された送信開始時間に基づいて前記受信応答信号を送信することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記発明において、前記基地局装置は、前記受信応答信号が隣接したチャネルに配置される場合、前記受信応答信号の受信電力が、干渉せずに受信できる電力レベルとなるように隣接するチャネルに配置された前記端末装置からの送信電力を制御し、前記端末装置は、前記基地局装置から送信された制御情報に応じて指示された前記送信電力に基づいて前記受信応答信号を送信することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記基地局装置は、前記受信応答信号の受信電力が、干渉せずに受信できる電力レベルとなるように、前記端末装置が送信する送信波の指向特性を制御し、前記端末装置は、前記基地局装置から送信された制御情報に応じて指示された前記送信波の指向特性に基づいて前記受信応答信号を送信することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記基地局装置から送信された制御情報は、前記端末装置が前記受信応答信号を送信する条件を指示する指示情報を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記基地局装置から送信された制御情報は、前記端末装置が前記受信応答信号を送信する条件を定める情報を含み、前記端末装置は、前記受信応答信号を送信する条件を定める情報に基づいて前記受信応答信号の送信を指示する指示情報を生成することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、複数の端末装置と通信する基地局装置であって、前記基地局装置は、前記端末装置が受信した信号の受信状況に応じて、前記端末装置から送信される受信応答信号を干渉せずに受信するように、前記受信応答信号の送信を制御する制御情報を送信し、該端末装置からの受信応答信号を受信することを特徴とする基地局装置である。
【0013】
また、本発明は、上記発明のいずれかに記載の基地局装置と通信する端末装置であって、前記基地局装置から自装置に対して送信された信号を受信して、その受信状況に応じて送信する受信応答信号を、前記基地局装置が干渉せずに受信するように、前記基地局装置から前記送信された制御情報に応じて前記受信応答信号を送信することを特徴とする端末装置である。
【0014】
また、本発明は、複数の端末装置と、該複数の端末装置と通信する基地局装置とを含む無線通信システムの通信方法であって、前記基地局装置から前記端末装置に対して送信した信号に対する受信応答信号が干渉せずに受信するように、前記受信応答信号の送信が制御される制御情報を送信する過程と、前記基地局装置が前記受信応答信号を干渉せずに受信するように、前記基地局装置から前記送信された制御情報に応じて前記受信応答信号を前記端末装置が送信する過程と、を含むことを特徴とする通信方法である。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、無線通信システムでは、基地局装置は、端末装置に対して送信した信号に対する受信応答信号を干渉せずに受信するように、受信応答信号の送信を制御する制御情報を送信する。端末装置は、基地局装置が端末装置に対して送信した信号に対する受信応答信号であって、基地局装置が受信応答信号を干渉せずに受信するように、基地局装置から送信された制御情報に応じて前記受信応答信号を送信する。
これにより、無線通信システムでは、使用できない周波数チャネルの発生を抑制できることから、周波数利用効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態による無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態による基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態による端末装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態による無線通信システムにおける送信電力を示す図である。
【図5】本実施形態による無線通信システムにおける受信信号の干渉を示す図である。
【図6】本実施形態による無線通信システムにおける受信信号の干渉を示す図である。
【図7】本実施形態による無線通信システムの動作を示すタイミングチャートである。
【図8】第2実施形態による無線通信システムの動作を示すタイミングチャートである。
【図9】第3実施形態による基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図10】本実施形態による端末装置の構成を示すブロック図である。
【図11】本実施形態による無線通信システムにおける受信信号の干渉を示す図である。
【図12】第4実施形態による無線通信システムの動作を示すタイミングチャートである。
【図13】本実施形態による無線通信システムの動作を示すタイミングチャートである。
【図14】本実施形態による無線通信システムの動作を示すタイミングチャートである。
【図15】第5実施形態による端末装置の構成を示すブロック図である。
【図16】第6実施形態による無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図17】本実施形態による基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図18】本実施形態による無線通信システムの動作を示すタイミングチャートである。
【図19】背景技術における基地局装置の構成を示すブロック図である。
【図20】背景技術における端末装置の構成を示すブロック図である。
【図21】背景技術における無線通信システムの動作を示すタイミングチャート(その1)である。
【図22】背景技術における無線通信システムの動作を示すタイミングチャート(その2)である。
【図23】背景技術における無線通信システムの動作を示すタイミングチャート(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の一実施形態による無線通信システムの構成を示すブロック図である。
この図に示される無線通信システム1は、無線通信回線を用いて通信を行う基地局装置(AP:アクセスポイント)10と、基地局装置10と無線通信回線を用いて通信する端末装置(STA)50を複数備える。この図では、本実施形態の一態様として、2つの端末装置50−1、50−2と通信する基地局装置10を例示する。
また、基地局装置10は、有線回線(有線NW)70によって、他のネットワーク設備と接続される。基地局装置10は、端末装置50に送信する送信データが有線NW70から供給される。また、基地局装置10は、端末装置50から受信した受信データを有線NW70に供給する。
【0019】
図2は、基地局装置の構成を示すブロック図である。
この図に示される基地局装置10は、送信キュー11、送信データ選択部12、変調部13、合成部14、TDD(Time Division Duplex: 時分割多重)スイッチ15、送受信アンテナ16、フレーム検出部17、分配部18、復調部19、誤り検出部20、再送制御部21、チャネルアクセス管理部22及びACKタイミング管理部23を備える。この図では、基地局装置10が送信に利用する周波数チャネル(チャネル)の数をkチャネルとする。
【0020】
送信キュー11は、有線NW70から供給される送信データを、送信データのユーザごとに一時的に保持するキューバッファである。送信キュー11は、#1から#nに分割して設けられ、それぞれがユーザごとに割り当てられる。送信キュー11は、分割して設けられたキューバッファがそれぞれ独立して機能する。
【0021】
送信データ選択部12は、指示される制御情報等にしたがって、送信する送信情報を抽出し、送信する周波数チャネル(周波数帯)を選択する。
送信データ選択部12は、送信キュー11に保持された送信データから、利用できる周波数チャネル(チャネル)数と同数(k個)の送信データの供給を受ける。送信データ選択部12は、その送信データを送信情報として含むデータフレームを抽出する。送信データ選択部12は、再送制御部21から供給されるチャネルごとのACK信号を送信情報として含む制御フレームを抽出する。送信データ選択部12は、端末装置50が送信すべきチャネルを指示するチャネル制御情報をチャネルアクセス管理部22から供給を受ける。送信データ選択部12は、そのチャネル制御情報を送信情報として含む制御フレームを抽出する。送信データ選択部12は、端末装置50が送信すべきACK信号の送信タイミングを遅延させる送信遅延制御指示情報をACKタイミング管理部23から供給を受ける。送信データ選択部12は、その送信遅延制御指示情報を送信情報として含む制御フレームを抽出する。
そして、送信データ選択部12は、その送信データを含むデータフレームと、ACK信号、チャネル制御情報及び送信遅延制御指示情報の少なくともいずれかの情報を含む制御フレームとを変調部13に供給する。送信データ選択部12は、選択した周波数チャネル(周波数帯)をタイミング管理部23に通知する。
【0022】
変調部13は、送信データ選択部12から供給される送信情報を含むデータフレーム又は制御フレームを所定の周波数において変調した変調信号を生成する。変調部13は、隣接して配置される周波数チャネル(チャネル)に対応させて、変調部13−1から13−kとして設けられる。変調部13−1から13−kは、それぞれ独立して機能する。
合成部14は、それぞれのチャネルごとに変調された変調信号に基づいて、無線フレームを生成する。また、合成部14は、それぞれの周波数チャネルに応じて、時間領域、周波数領域及び空間領域の少なくともいずれかの領域において多重化する合成処理を行って送信信号を生成する。この合成処理には、一般的な手法を適用できる。
【0023】
TDDスイッチ15は、合成処理された送信信号を送信アンテナ16に供給する(送信状態)。また、TDDスイッチ15は、送信アンテナ16によって受信した信号を受信信号として供給する(受信状態)。TDDスイッチ15は、送信状態と受信状態とを時分割で切り替える。
送受信アンテナ16は、合成部14から供給される送信信号を無線信号として送信する。また、送受信アンテナ16は、受信した無線信号を検出し受信信号を生成してTDDスイッチに供給する。送受信アンテナは、複数のアンテナを備え、それぞれ独立した信号の送信、受信を行うことができる。
【0024】
フレーム検出部17は、受信信号に基づいて、端末装置50からデータフレーム及び制御フレームとして送信された無線フレームから、無線フレーム情報とACKタイミング情報を抽出する。また、フレーム検出部17は、ACKタイミング管理部23から、端末装置10からの応答信号(ACK信号)が返信されるACKタイミング情報の供給を受ける。そして、フレーム検出部17は、抽出した無線フレーム情報とACKタイミング情報とを、分配部18と復調部19に供給する。
分配部18は、フレーム検出部17から供給される無線フレーム情報とACKタイミング情報に基づいて、各チャネルの受信信号及びACK信号をチャネルごとに分離し、各復調部19に分配する。
復調部19は、フレーム検出部17から供給される無線フレーム情報とACKタイミング情報に基づいて、分配部18によって分配された受信信号を復調する。復調部19は、周波数チャネル(チャネル)に応じて、復調部19−1から復調部19−kに分割して設けられる。復調部19−1から復調部19−kは、それぞれ独立して機能する。
【0025】
誤り検出部20は、復調部19によって復調された信号の誤り検出を行い、端末装置50から送信された情報を誤り無く受信したか否かを判定する。
再送制御部21は、誤り検出部20による判定によって、復調された信号を誤り無く正常に受信した場合、正常に受信した信号に対するACK信号を生成し、送信データ選択部12に供給する。
【0026】
チャネルアクセス管理部22は、受信した受信信号に基づいて受信状態の検出を行い、チャネルごとの受信状態に基づいて、そのチャネルが利用可能か否かを判定する。チャネルアクセス管理部22は、端末装置50に対して、受信状態の判定結果に基づいて、端末装置50が送信すべきチャネルを指示するチャネル制御情報を生成する。チャネルアクセス管理部22は、チャネルが利用可能と判定した場合、送信データ選択部12に利用できるチャネル情報を含むチャネル制御情報を供給する。例えば、チャネルアクセス管理部22において、そのチャネルが利用可能か否かの判定は、そのチャネルの受信信号強度(RSSI)のレベルに基づいて判定し、予め定められる所定の閾値レベルに満たす場合を利用可能なチャネルとして判定する。
【0027】
ACKタイミング管理部23は、端末装置50が送信するACK信号の送信タイミングを管理する。ACKタイミング管理部23は、ACK信号の送信タイミングを、隣接するチャネルを使って送信されるACK信号と干渉しないタイミングで受信できるように管理する。ACKタイミング管理部23は、隣接するチャネルを使って送信されるACK信号と干渉しないタイミングで受信できるようにするには、例えば、以下に示す構成により実現する。
基地局装置10から隣接するチャネルを用いて端末装置50に同じタイミングで信号を送信する場合、端末装置50からのACK信号が同じタイミングで到来することになる。ACKタイミング管理部23は、基地局装置10が隣接するチャネルを用いて複数の端末装置50に対して同じタイミングで信号を送信する場合、隣接する端末装置50からのACK信号の送信タイミングを異なるタイミングにする。ACKタイミング管理部23は、隣接する端末装置50のうち一方の端末装置50からのACK信号の送信タイミングを従来のままとして、他方の端末装置50からの送信タイミングを遅延させる。これにより、基地局装置10は、同じタイミングで受信しないように制御できる。ACKタイミング管理部23は、端末装置50に対するACK信号の送信タイミングを遅延させる送信遅延制御指示情報を生成し、送信データ選択部12に供給する。
【0028】
また、ACKタイミング管理部23は、端末装置50からの受信信号に含まれるACK信号の受信タイミングを遅延して受信する受信遅延指示を生成する。その、受信遅延指示は、端末装置50に対してACK信号の送信タイミングを遅延させる送信遅延制御指示に基づいて生成される。ACKタイミング管理部23は、生成した受信遅延指示をフレーム検出部17に供給する。
【0029】
続いて、図2に示した基地局装置10の動作を説明する。
まず、基地局装置10から端末装置50に信号を送信する基地局装置10における送信系の動作を示す。
チャネルアクセス管理部22は、各チャネルの利用可否を判定する。この判定には、例えば、IEEE802.11標準において規定されているチャネルアクセス制御であるCSMA/CA (Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)によるキャリアセンス・ランダムバックオフ機能を用いることができる。
チャネルアクセス管理部22は、チャネルが利用可能な状態にあると判定した場合、送信データ選択部12にそのチャネルを用いた送信指示を通知する。
送信データ選択部12は、ユーザごとの送信データを保持する送信キュー11のうち、利用できる周波数チャネル数(kとした)と同数のデータフレームを抽出し、各データフレームを送信する周波数帯を選択する。送信データ選択部12は、ACKタイミング管理部22に選択した周波数帯の情報を供給する。
ACKタイミング管理部22では、隣接チャネルのACKタイミングが同時にならないよう、各データフレームのACKタイミングを決定し送信データ選択部12に供給する。
送信データ選択部12は、各データフレームと、各データフレームに対して応答すべきACK信号のタイミング情報を変調部13−1から13−kにそれぞれ供給する。
変調部13では、供給されたデータフレームを無線信号へと変換する。
合成部14は、複数の無線信号を合成して、広帯域の無線信号とし、送受信アンテナ16により各端末装置に送信する。
【0030】
次に、端末装置50から送信された情報を受信する基地局装置10における受信系の動作を示す。
各端末装置50からACKフレームを受信する際には、フレーム検出部17は、無線フレームが到来する周波数帯及びタイミングを検知する。分配部58は、検知された無線フレームに基づいて、周波数帯ごとに各復調部19−1から19−kへ受信信号を分配する。
また、ACKタイミング管理部23から供給される各チャネルのACKタイミング情報を用いて受信タイミングを決定してもよい。
各復調部19−1から19−kは、供給された信号をそれぞれ復調し、ベースバンド信号に変換する。
復調部19−1から19−kが復調したACKフレームの情報は、誤り検出部20により誤りの有無が判定され、その判定結果が再送制御部21に供給される。受信したACKフレームに対応するデータフレームについては、通信が成功したものとみなされ、送信キュー11から削除される。ACKフレームが受信されないデータフレームについては、再送を行うよう再送制御部21が送信データ選択部22に通知して、再送処理を行わせる。
【0031】
図3は、端末装置の構成を示すブロック図である。
この図に示される端末装置は、送信キュー51、送信データ選択部52、変調部53、TDDスイッチ55、送受信アンテナ56、フレーム検出部57、復調部59、誤り検出部60、再送制御部61、チャネルアクセス管理部62及びACKタイミング制御部63を備える。
【0032】
送信キュー51は、端末装置の通信プロトコルの上位レイヤとして機能するアプリケーションソフトウェアから供給される送信データを、一時的に保持するキューバッファである。
【0033】
送信データ選択部52は、指示される制御情報等にしたがって、送信情報を送信する周波数チャネル(周波数帯)を選択する。送信に用いられる周波数チャネル(周波数帯)は、基地局装置10から指示された周波数チャネルである。
送信データ選択部52は、送信キュー51に保持された送信データから、送信する順にしたがって送信データの供給を受ける送信データ選択部52は、その送信データを送信情報として含むデータフレームを抽出する。送信データ選択部52は、再送制御部61から供給されるチャネルごとのACK信号の供給を受ける。送信データ選択部52は、そのACK信号を送信情報として抽出する。送信データ選択部52は、端末装置50が送信すべきチャネルを指示するチャネル制御情報をチャネルアクセス管理部62から供給を受ける。送信データ選択部52は、そのチャネル制御情報を送信情報として含む制御フレームを抽出する。そして、送信データ選択部52は、その送信データを含むデータフレームと、ACK信号又はチャネル制御情報を含む制御フレームとを変調部53に供給する。
【0034】
変調部53は、送信データ選択部52から供給される送信情報として含むデータフレーム又は制御フレームを所定の周波数において変調した変調信号を生成する。
TDDスイッチ55は、合成処理された送信信号を送信アンテナ56に供給する(送信状態)。また、TDDスイッチ55は、送信アンテナ56によって受信した信号を受信信号として供給する(受信状態)。TDDスイッチ55は、送信状態と受信状態とを時分割で切り替える。
送受信アンテナ56は、変調部53から供給される送信信号を無線信号として送信する。また、送受信アンテナ56は、受信した無線信号を検出し受信信号を生成してTDDスイッチに供給する。送受信アンテナ56は、複数のアンテナを備え、それぞれ独立した信号の送信、受信を行うことができる。
【0035】
フレーム検出部57は、受信信号基づいて、基地局装置10からデータフレーム及び制御フレームとして送信された無線フレームから、無線フレーム情報とACKタイミング情報を抽出する。そして、フレーム検出部57は、抽出した無線フレーム情報とACKタイミング情報とを、復調部59に供給する。
復調部59は、フレーム検出部57から供給される無線フレーム情報とチャネル情報に基づいて受信信号を復調する。
【0036】
誤り検出部60は、復調部59によって復調された信号の誤り検出を行い、基地局装置10から送信された情報を誤り無く受信したか否かを判定する。
再送制御部61は、誤り検出部60による判定によって、復調された信号に誤り無く受信できた場合、正常に受信した信号に対するACK信号を生成し、送信データ選択部52に供給する。
チャネルアクセス管理部62は、受信した受信信号に基づいて受信状態の検出を行い、当該チャネルの受信状態に基づいて、そのチャネルが利用可能か否かを判定する。
チャネルアクセス管理部62は、受信状態の判定結果に基づいて、端末装置50が送信すべきチャネルを指示するチャネル制御情報を生成する。チャネルアクセス管理部62は、チャネルが利用可能と判定した場合、送信データ選択部52に利用できるチャネル情報を含むチャネル制御情報を供給する。例えば、チャネルアクセス管理部62において、そのチャネルが利用可能か否かの判定は、そのチャネルの受信信号強度(RSSI)のレベルに基づいて判定し、予め定められる所定の閾値レベルに満たす場合を利用可能なチャネルとして判定する。
【0037】
ACKタイミング制御部63は、送信するACK信号の送信タイミングを制御する。ACKタイミング制御部63は、ACK信号の送信タイミングの制御を、隣接するチャネルを使って送信されるACK信号と干渉しないタイミングを使って送信するように制御する。ACKタイミング制御部63は、隣接するチャネルを使って送信されるACK信号と干渉しないタイミングで送信するように制御するには、例えば、以下に示す構成により実現する。
ACKタイミング制御部63は、フレーム検出部57によって抽出されたデータフレームのヘッダ情報が存在する場合においては、これを取得する。また、ACKタイミング制御部63は、復調部59の出力として得られる管理フレームに含まれるACKタイミング情報が存在する場合においては、これを取得する。ACKタイミング制御部63は、抽出されたデータフレームのヘッダ情報、及び、管理フレームに含まれるACKタイミング情報の少なくともいずれかを取得した場合においては、取得した情報に基づいて、ACKフレームを送信すべきタイミング情報を生成して送信データ選択部52に供給する。
【0038】
図3に示した端末装置50の動作を説明する。
まず、基地局装置10から送信された信号を受信する受信系の動作を示す。
端末装置50は、基地局装置10から送信された制御フレーム、データフレームを送受信アンテナ56により受信する。
フレーム検出部57は、到来する周波数帯を検知する。復調部59は、検知された周波数帯の変調信号から受信データを生成し、基地局装置10から送信された送信データを復元する。
【0039】
誤り検出部60は、受信データに対してデータの正誤判定を行い、その結果を再送制御部61に供給する。
再送制御部61は、データフレームが正しく受信された場合において、ACKフレーム情報を生成し、送信データ選択機能へ入力する。
ACKタイミング制御部63は、フレーム検出機能によって抽出されたデータフレームのヘッダ情報、或いは復調部59の出力として得られる管理フレームに含まれるACKタイミング情報が存在する場合においてはこれを取得し、ACKフレームが送信されるべきタイミングを送信データ選択部52へ通知する。
送信データ選択部52では、ACKタイミング制御部63によって指定されたタイミングでACKフレームが送信されるよう、再送制御部61から出力されるACKフレームを変調部59へと出力する。
変調部59は、ACKフレームを無線信号へと変換し、送受信アンテナ56を用いて基地局装置10へと送信を行う。
TDDスイッチ55は、送信時は送信信号を送受信アンテナ56へ送出し、受信時には受信した無線信号を各機能へと送出する機能を有する。
【0040】
図を参照し、本実施形態の無線通信システムにおける送信電力について示す。
図4は、本実施形態の無線通信システムにおける送信電力を示す図である。
図に示される波形は、送信信号の送信信号スペクトルを示し、縦軸が電力スペクトル密度(dB:デシベル)を示し、横軸が周波数(MHz:メガヘルツ)を示す。この送信信号は、IEEE802.11a規格に準じたものであり、実際の測定値とともに、IEEE802.11a規格の送信電力スペクトルマスクを示す。
周波数が、この図の中心周波数に対して、対称にそれぞれ9MHzまでの帯域範囲では、フラットな周波数特性(0dBr)が許容され、この部分にデータ信号を含むメインローブが存在する。周波数がその帯域幅を越えた9MHzから11MHzにかけて、送信電力スペクトルマスクによって示される許容値は、−20dBrまで急峻に減衰する。周波数が11MHzを越えた範囲では、帯域外放射電力として制限されたる許容値が示される。周波数が11MHzを越え30MHzの範囲では、徐々に許容値が低下するものの、周波数に応じた減衰率は低下する。
【0041】
チャネルを、中心周波数を20MHz間隔で配置して、周波数帯域幅を20MHzとした場合では、この図に示される約10MHzから30MHzまでの範囲が、隣接するチャネルの周波数領域になる。隣接したチャネルを同時に利用する場合には、周波数帯域幅を超えた約10MHzから30MHzまでの範囲の信号レベルが低ければ、隣接チャネルへの影響が低減する。
【0042】
また、本実施形態の無線通信システムにおける受信信号の干渉について示す。
図5は、本実施形態の無線通信システムにおける受信信号の干渉を示す図である。
この図に示される波形は、互いに隣接するチャネルを利用して送信する2つの端末装置からの受信信号の受信スペクトルの例が示される。
この図に示される波形は、端末装置50−1(STA1)の電力スペクトル密度を示す波形PS51と、隣接するチャネルを用いる端末装置50−2(STA2)の電力スペクトル密度を示す波形PS52とを示す。この波形を示すグラフの縦軸が電力スペクトル密度(dB:デシベル)を示し、横軸が周波数(MHz:メガヘルツ)を示す。
【0043】
基地局装置10の受信系の動作としては、周波数帯域f1, f2の双方のチャネルに対してそれぞれ帯域制限フィルタ処理を行い、周波数変換(ダウンコンバート)処理を行うことにより、ベースバンド信号を取得する。
端末装置STA1の帯域外放射電力(波形PS51)は、端末装置STA2からの受信信号(波形PS52)に対して干渉電力となる。この図に示される例では、SIR(Signal-to-Interference Ratio)が20dBを越えて(SIR>20dB)確保できているので、帯域外放射電力の影響は少ない状態である。そのため、基地局装置10は、端末装置STA2のACKフレームを正しく受信することが可能である。また、端末装置STA2の帯域外放射電力に対する端末装置STA1の受信信号についても同様となる。
【0044】
図6は、本実施形態の無線通信システムにおける受信信号の干渉を示す図である。
この図に示される波形は、互いに隣接するチャネルを利用して送信する2つの端末装置からの受信信号の受信スペクトルの例が示される。この図では、図5と異なり、隣接するチャネルの受信電力のバランスが異なる場合を示す。
【0045】
この図に示される波形は、端末装置50−1(STA1)の電力スペクトル密度を示す波形PS61と、隣接するチャネルを用いる端末装置50−2(STA2)の電力スペクトル密度を示す波形PS62とを示す。この波形を示すグラフの縦軸が電力スペクトル密度(dB:デシベル)を示し、横軸が周波数(MHz:メガヘルツ)を示す。
端末装置STA1の受信信号電力に対する端末装置STA2の帯域外放射(波形PS62)は大幅に減少しているため、端末装置STA1の受信信号品質は高くなる。しかし、端末装置STA2の受信信号電力に対して端末装置STA1の帯域外放射電力が相対的に大きくなっており、同時にこの隣接するチャネルを受信した場合では、端末装置STA2の受信信号を受信できないことになる。したがって、同じタイミングで基地局装置10から送信された送信信号をそれぞれの端末装置50が受信できたとしても、端末装置50から同時に送信されるACK信号(ACKフレーム)を受信する際の処理が、互いに干渉することになる。その結果、基地局装置10は、端末装置STA2のACKフレームを正しく受信することができなくなるという状態が生じうる。
【0046】
隣接チャネル干渉を回避するために、端末装置STA1が用いる周波数帯域と端末装置STA2が用いる周波数帯域の間にガードバンドを設ける方法(図21参照)では、周波数利用効率が低下する。図21の場合、ガードバンドは、周波数帯f2が該当し、その周波数帯域を用いることができない。ガードバンドを設ける場合に生成する信号の帯域幅が、隣接するチャネルを用いた並列伝送の場合と比較して広くなる。そのため、ガードバンドを設ける方法では、デジタル回路・アナログ回路の複雑性・コストが向上するため望ましくない。
【0047】
図を参照し、基地局装置10において生じうる隣接チャネルを同時に用いた場合に生じうる問題を解消させる実施態様を以下に説明する。
図7は、本実施形態の無線通信システムの動作を示すタイミングチャートである。
この図に示される縦軸は、隣接して配置される周波数チャネルf1とf2を示し、横軸が時間の経過を示す。図中に示される矩形は、当該時刻にその周波数チャネルを用いて送信されている無線フレームが存在していることを示す。
端末装置STA1とSTA2とは、通信に利用する周波数チャネルを、それぞれ周波数チャネルf1とf2に割り付けられるとする。その端末装置STA1とSTA2とは、基地局装置10から同じタイミングに送信された無線フレーム(FR11とFR21)を受信する。
ここで、基地局装置10は、端末装置STA1とSTA2が受信した無線フレームFR21とFR22に対して応答するACKフレームを、同時に受信しないように制御する。
【0048】
例えば、基地局装置10の制御に応じて、ACKフレームの送信を開始する時刻を遅延させることができる端末装置STA1とSTA2を、本実施形態の端末装置50とする。
そして、基地局装置10は、端末装置STA1がACKフレームを送信する期間と、端末装置STA2がACKフレームを送信する期間とが重複しないように制御する。
さらに、先に応答することになる端末装置STA2がDCF(Distributed Coordination Function)に基づいたチャネルアクセス権を取得した際に、端末装置STA2からの送信データフレームと、端末装置STA1が送信するACKフレームとが重複しないようにする。すなわち、端末装置STA1がACKフレームを送信する時刻を、端末装置STA2がACKフレームを送信し終えたタイミングから起算してSIFS(Short Inter Frame Spacing)の時間長とランダムバックオフの最短時間長が経過した時刻より早くなるように設定する。
【0049】
なお、端末装置STA1とSTA2とは、互いに基地局装置10の制御に応じて、ACKフレームの送信を開始する時刻を遅延させることができることとしたが、図に示される場合では、少なくとも端末装置STA1は、基地局装置10の制御に応じて、ACKフレームの送信を開始する時刻を遅延させることができる必要がある。つまり、端末装置STA2は、ACKフレームを送信するタイミングを制御することができない従来型の端末装置であってもよい。
【0050】
したがって、本実施形態に示した機能を備えない端末装置(従来型端末装置という)が、混在する無線通信システムであっても、後方互換性を維持することができる。本実施形態に示した無線通信システムは、従来型端末装置が混在する場合であっても、ACKフレームの時間的重複に起因する隣接チャネル干渉の発生を回避し、ACKフレームの伝送品質を維持する効果を生み出すことを可能とする。
【0051】
本実施形態では、複数の帯域(周波数チャネル)を用いた伝送において、帯域外放射の影響を低減するために、ACKフレームの送信開始時刻を制御する。ACKフレームの送信開始時刻を制御する際に、実際に送信する時刻を一致させないだけでなく、当該チャネルと隣接するチャネルとに干渉を与えないために、当該チャネルの送信を開始する送信開始時刻を制御する。
これにより、端末装置STA1の送信タイミングを後方にシフトさせることができることから、端末装置STA2がACKフレームをAPに返信する期間において、周波数チャネルf1から帯域外放射が発生しないようにできる。
【0052】
また、既存の技術として、「scheduled ACK」という考え方が存在する。既存の技術として示される「scheduled ACK」による制御では、単一の周波数チャネル上でのタイミング制御であり、本実施形態に示すように、複数の帯域を同時に用いた伝送についての制御方法ではない。仮に、それぞれの帯域(チャネル)に、個別に「scheduled ACK」による制御を適用しても、隣接する周波数チャネルを用いた通信によって生じる干渉を除去できないため、帯域間の干渉の影響を受ける時間が生じることになる。
本実施形態に示す無線通信システムでは、そのような干渉による影響を低減させることが可能となる。
なお、それぞれの帯域(チャネル)に、個別に「scheduled ACK」による制御を適用し、帯域ごとに行われる制御を帯域間で連携させて制御することにより、本実施形態と等価の動作を実現することも可能である。
【0053】
なお、本実施形態では、端末装置50が応答して送信するACKフレームの送信タイミングの制御において、基地局装置10は、端末装置50がACK信号を送付する前に、予め端末装置50に制御情報を通知する。
【0054】
(第2実施形態)
図を参照し、基地局装置10において生じうる隣接チャネルを同時に用いた場合に生じうる問題を解消させる異なる実施態様を以下に説明する。本実施形態では、4つの端末装置と基地局装置とが通信する無線通信システムの場合について示す。
図8は、本実施形態の無線通信システムの動作を示すタイミングチャートである。
この図に示される縦軸は、隣接して配置される周波数チャネルf1、f2、f3及びf4を示し、横軸が時間の経過を示す。図中に示される矩形は、当該時刻にその周波数チャネルを用いて送信されている無線フレームが存在していることを示す。
【0055】
本実施形態に示す無線通信システムに適用される基地局装置10及び端末装置50は、図1、図2、図3に示したものと同じ構成を適用でき、同時に利用するチャネル数が異なる。
4つの端末装置50を、端末装置STA1、STA2、STA3及びSTA4として示す。
端末装置STA1、STA2、STA3及びSTA4は、通信に利用する周波数チャネルを、それぞれ周波数チャネルf1、f2、f3及びf4に割り付けられることとする。その端末装置STA1、STA2、STA3及びSTA4は、基地局装置10から同じタイミングに送信された無線フレーム(FR11、FR21、FR31及びFR41)を受信する。
ここで、端末装置STA1、STA2、STA3及びSTA4が受信した無線フレームFR11、FR21、FR31及びFR41に対して応答するACKフレームを基地局装置10が同時に受信しないように制御する。
例えば、基地局装置10は、端末装置STA2とSTA4に対して、ACKフレームの送信を開始する時刻を遅延させることとする。端末装置STA1とSTA3は、本実施形態に示す遅延制御を行わないこととする。つまり、この図に示したチャネル配置では、隣接していないチャネル同士は同時に送信を行うことが可能となる。
【0056】
このように、周波数チャネルの割り付けと、制御対象とする端末装置を選択することにより、隣接する周波数チャネル同士の干渉を避けることができる。
また、同時に複数の端末装置が、同時にACKフレームを送信することが可能となり、端末装置ごとに異なる遅延時間を割り当てて、その順に1つずつ端末装置がACKフレームを個別に送信する場合に比べ、応答時間を短縮することができる。
この図では、4つの端末装置を例示したが、必要に応じてその数を設定することが可能となる。
【0057】
なお、データフレームとACKフレームとの間隔、及び、ACKフレーム同士の間隔は、例えば、SIFS(Short Inter Frame Spacing: IEEE802.11n規格では16μs)として定められる期間を確保した間隔を設けることにより、フレーム間干渉を回避することが可能となる。
また、端末装置STA2とSTA4の送信タイミングを後方にシフトさせることにより、既存端末である端末装置STA1がACKフレームを基地局装置10に返信する期間において、周波数チャネルf2から対域外放射が発生しないようにできる。
【0058】
(第3実施形態)
図を参照し、本実施形態における異なる態様を示す。
本実施形態に示す無線通信システムは、図1に示した基地局装置10と端末装置50に代え、基地局装置10aと端末装置50aを備える。
【0059】
図9は、基地局装置の構成を示すブロック図である。
この図に示される基地局装置10aは、送信キュー11、送信データ選択部12a、変調部13、合成部14、TDDスイッチ15、送受信アンテナ16、フレーム検出部17a、分配部18、復調部19、誤り検出部20、再送制御部21、チャネルアクセス管理部22及びチャネル利得推定部24を備える。図2と同じ構成には同じ符号を付す。
【0060】
送信データ選択部12aは、指示される制御情報等にしたがって、送信する送信情報を抽出し、送信する周波数チャネル(周波数帯)を選択する。
送信データ選択部12aは、送信キュー11に保持された送信データから、利用できる周波数チャネル(チャネル)数と同数(k個)の送信データの供給を受ける。送信データ選択部12aは、その送信データを送信情報として含むデータフレームを抽出する。送信データ選択部12aは、再送制御部21から供給されるチャネルごとのACK信号を送信情報として含む制御フレームを抽出する。送信データ選択部12aは、端末装置50が送信すべきチャネルを指示するチャネル制御情報をチャネルアクセス管理部22から供給を受ける。送信データ選択部12aは、そのチャネル制御情報を送信情報として含む制御フレームを抽出する。
【0061】
送信データ選択部12aは、チャネル利得推定部24が選択した周波数チャネルのチャネル利得情報をチャネル利得推定部24から供給を受ける。送信データ選択部12aは、再送制御部21から供給されるチャネルごとのACK信号を送信情報として含む制御フレームを抽出する。送信データ選択部12aは、チャネル利得推定部24から供給されたチャネル利得情報を送信情報として含む制御フレームを抽出する。
また、送信データ選択部12aは、チャネル利得推定部24によって選択された周波数チャネルを選択し、その送信データを含むデータフレームと、ACK信号、チャネル制御情報及びチャネル利得情報の少なくともいずれかの情報を含む制御フレームとを変調部13に供給する。
フレーム検出部17a、受信信号に含まれる端末装置50aから送信されたデータフレーム及び制御フレームから無線フレーム情報とACKタイミング情報を抽出する。そして、フレーム検出部17は、抽出した無線フレーム情報とACKタイミング情報の両方を、分配部18と復調部19に供給する。
【0062】
チャネル利得推定部24は、端末装置50aから送信される無線フレームの受信電力を検出する。チャネル利得推定部24は、内部に記憶領域を有し、検出した無線フレームの受信電力の値を検出した時間に応じて記憶する。記憶する受信電力は、周波数チャネルごとに記憶することとする。チャネル利得推定部24は、記憶した受信電力の値を参照し、履歴情報とすることができる。チャネル利得推定部24は、受信電力の時間的な変動を検出し、時間に応じて変動する受信環境の変化を推定する。チャネル利得推定部24は、その推定結果に応じて、利用する周波数チャネルの選択行う。チャネル利得推定部24は、選択した周波数チャネルのチャネル利得情報をデータ選択部12aに供給する。
【0063】
図9に示した基地局装置10の動作を説明する。
チャネル利得推定部24では、端末装置50(STA)から送信される無線フレームの受信電力を検出し、検出した受信電力の値を内部に備える記憶領域に時系列に記憶する。チャネル利得推定部24は、記憶された受信電力から履歴情報を生成する。
チャネルアクセス管理部22は、チャネルが利用可能か否かを判定する。その判定には、例えば、CSMA/CAによるキャリアセンス・ランダムバックオフ機能を適用できる。
【0064】
チャネルが利用可能と判定した場合は、チャネルアクセス管理部22は、送信データ選択部12aに通知を行う。
送信データ選択部12aは、ユーザごとの送信キュー11のうち、利用できる周波数チャネル数(kとした)と同数のデータフレームを抽出し、各データフレームが送信される周波数帯を選択し、変調部13−1から13−kに供給する。
この際に、チャネル利得推定部24は、各データフレームの送信先である端末装置50aから送信された信号を受信した受信信号から検出された受信信号利得を、内部の記憶領域に記憶している値を参照する。
【0065】
チャネル利得推定部24は、参照した情報から、端末装置50a(STA)が送信するACKフレームの基地局装置10a(AP)における受信電力が全てのチャネルで均一となるよう、各STAの送信電力を決定する。この情報を変調部13−1から13−kに供給する。
変調部13−1から13−kでは、データフレームを無線信号へと変換する。
各周波数帯の送信信号は複数の無線信号を合成部14により広帯域の無線信号に変換し、送受信アンテナ16により各端末装置50a(STA)に送信する。
各端末装置50aからACKフレームを同時に受信する際の動作は、従来例として示される一般的な動作と同じであってもよい。また、第1実施形態に示したように、ACKフレームの応答時間を遅延させる制御を行ってもよい。
【0066】
図10は、端末装置の構成を示すブロック図である。
この図に示される端末装置50aは、送信キュー51、送信データ選択部52、変調部53、送信電力制御部54、TDDスイッチ55、送受信アンテナ56、フレーム検出部57a、復調部59、誤り検出部60、再送制御部61、チャネルアクセス管理部62及びACK送信電力保持部64を備える。図3と同じ構成には同じ符号を付す。
【0067】
送信電力制御部54は、基地局装置10aから指示された電力にしたがって、送信する信号の送信電力を制御する。
フレーム検出部57aは、図3に示したフレーム検出部57の構成に加え、抽出した無線フレーム情報とACKタイミング情報の両方を、ACK送信電力保持部64に供給する。
ACK送信電力保持部64は、フレーム検出部57aにより抽出されたデータフレームのヘッダ部、或いは、データフレームの受信に先立ち受信した制御フレーム部に基づいて、ACKフレームの送信電力情報を取得する。ACK送信電力保持部64は、取得した送信電力情報を、内部に備える記憶領域に記憶する。記憶される送信電力情報は、基地局装置10aから新たな情報が通知された場合に更新される。ACK送信電力保持部64は、記憶した送信電力情報を送信電力制御部54に供給する。
【0068】
図10に示した端末装置50aの動作を説明する。
基地局装置10a(AP)から送信された制御フレーム、データフレームを送受信アンテナ56により受信し、フレーム検出部57aにより到来する周波数帯を検知した上で復調部59によりデータを復元する。
受信したデータに対して、誤り検出部60は、正誤判定を行う。その判定の結果が、再送制御部61並びにチャネルアクセス部62へ供給される。
【0069】
再送制御部61は、データフレームが正しく受信された場合において、ACKフレーム情報を生成し、送信データ選択機能へ入力する。
チャネルアクセス管理部62は、ACKフレームを、データフレームの受信後から既定の時間経過したタイミングにおいて送信するよう、送信データ選択部52を制御する。
チャネルアクセス管理部62は、例えば、IEEE802.11n規格の無線LANシステムのように、データフレームを受信後SIFS(Short Inter Frame Spacing)という時間間隔をあけてACKフレームを送信させる。
ACK送信電力保持部64は、フレーム検出部57aにより抽出されたデータフレームのヘッダ部、或いは、データフレームの受信に先立ち受信した制御フレームからACKフレームの送信電力情報を取得し保持する。
【0070】
変調部59は、ACKフレームを無線信号へと変換する。送信電力制御部54は、ACK送信電力保持部64からACKフレームの送信電力を検出する。変調部59は、無線信号の送信電力をその値に設定する。送受信アンテナ56を用いて、基地局装置10aへとACKフレームの送信を行う。
TDDスイッチ55は、送信時は送信信号を送受信アンテナ56へ送出し、受信時には受信した無線信号を各機能へと送出する。
【0071】
図を参照し、本実施形態に示す無線通信システムの動作を説明する。
図11は、本実施形態の無線通信システムにおける受信信号の干渉を示す図である。
この図に示される波形は、互いに隣接するチャネルを利用して送信する2つの端末装置からの受信信号の受信スペクトルの例が示される。この図では、図5、図6と異なり、隣接するチャネルの受信電力のバランスが異なる場合に、端末装置50aから送信する送信電力を変更することにより、基地局装置10aにおける受信電力のバランスを確保させる一態様を示す。
【0072】
この図に示される波形は、端末装置50a−1(STA1)の電力スペクトル密度を示す波形PS111と、隣接するチャネルを用いる端末装置50a−2(STA2)の電力スペクトル密度を示す波形PS112とを示す。この波形を示すグラフの縦軸が電力スペクトル密度(dB:デシベル)を示し、横軸が周波数(MHz:メガヘルツ)を示す。
【0073】
2つの端末装置50aがそれぞれ送信するACKフレームの送信タイミングは同じとする。
端末装置STA1が送信するACKフレームのAPにおける受信電力と端末装置STA2が送信するACKフレームのAPにおける受信電力とが等しくなるように、端末装置STA2の送信電力を制御した上で、同一のタイミングでACKフレームの送信を行う。
互いのACKフレームの受信信号電力を等しくすることにより、隣接チャネル干渉の影響を低減する。
例えば、端末装置STA2の送信電力がP, 端末装置STA2から基地局装置10a(AP)の伝搬損がL2, 端末装置STA1から基地局装置10a(AP)の伝搬損がL1であるとすると、端末装置STA1の送信電力を、(P×L2/L1)に設定する。
図は、端末装置STA1とSTA2とが送信したACKフレームの電力差が20dBである場合を示す例である。この場合、端末装置STA1の送信電力を20dB低減させることにより、端末装置STA1とSTA2の受信電力差を無くし、端末装置STA2からのACKフレームを正しく受信することができる。
【0074】
これにより、端末装置STA2との後方互換性を維持しつつ、ACKフレームの時間的重複に起因する隣接チャネル干渉量を低減することができることから、ACKフレームの伝送品質を維持する効果を生み出すことができる。
【0075】
なお、本実施形態では、端末装置50a−2が送信するACKフレームの送信電力の制御において、基地局装置10aが通知する制御情報は、端末装置50a−2がACK信号を送付する前に、予め端末装置50a−2に通知されていることとした。
【0076】
(第4実施形態)
図を参照し、基地局装置から端末装置に対する制御フレームの送信タイミングについて示す。
図12は、本実施形態の無線通信システムの動作を示すタイミングチャートである。
この図に示される縦軸は、隣接して配置される周波数チャネルf1とf2を示し、横軸が時間の経過を示す。図中に示される矩形は、当該時刻にその周波数チャネルを用いて送信されている無線フレームが存在していることを示す。
端末装置STA1とSTA2とは、通信に利用する周波数チャネルを、それぞれ周波数チャネルf1とf2に割り付けられるとする。その端末装置STA1とSTA2とは、基地局装置10から同じタイミングに送信された制御フレーム(FC11とFC21)及び無線フレーム(FR11とFR21)をそれぞれ受信する。
ここで、端末装置STA1とSTA2が受信した制御フレームFC11とFC21に含まれる制御情報に応じた動作を行う。端末装置STA1とSTA2が受信した無線フレームFR21とFR22に対して応答するACKフレーム(FA11とFA21)を基地局装置10において干渉しないように制御して送信する。
【0077】
例えば、基地局装置10aの制御に応じて、ACKフレーム(FA11とFA21)の送信電力を制御できる端末装置STA1とSTA2を、本実施形態に示す端末装置50aとする。
そして、基地局装置10は、端末装置STA1がACKフレーム(FA11)を送信する送信電力と、端末装置STA2がACKフレーム(FA21)を送信する送信電力とが干渉しないように制御する。送信電力の制御の詳細については、第3実施形態を参照する。
【0078】
基地局装置10aは、周波数チャネルf1とf2とを用いて、それぞれ同一の制御フレームFC11,FC21を送信する。
端末装置50aは、周波数チャネルf1、f2のいずれかの周波数チャネルの信号を受信して、制御フレームFC11又はFC21を検出する。
これにより、端末装置50aは、周波数チャネルf1には、制御フレームFC11の後に、基地局装置10aから端末装置50a−1(STA1)に向けてのデータフレームFR11(AP→STA1)の信号が続いて送信されることを検出する。また、端末装置50aは、周波数チャネルf1には、制御フレームFC21の後に、基地局装置10aから端末装置50a−2(STA2)に向けてのデータフレームFR21(AP→STA2)の信号が続いて送信されることを検出する。
端末装置50a−1と50a−2は、それぞれ受信した制御フレームに含まれる制御情報に応じて送信電力の制御を行うことができる。
【0079】
なお、制御フレームの送出を特定の周波数チャネルを特定することとしてもよい。
図13は、本実施形態の無線通信システムの動作を示すタイミングチャートである。
この図に示されるシーケンスでは、図12に示したシーケンスに含まれた周波数チャネルf2における制御フレームFC21を削除した点が異なる。
【0080】
この実施態様では、制御フレームが、周波数チャネルf1を用いて送信される構成を例として示す。
各端末装置50aでは、受信待機状態時に、初めに周波数チャネルf1を用いて送信される制御フレームFC11を受信する。各端末装置50aは、受信した制御フレームFC11によって通知される周波数チャネルの割り付け情報を参照し、割り付けられた周波数チャネルを判定する。端末装置50aは、その判定の結果、割り付けられた周波数チャネルを用いて送信されるデータフレームFR11、FR21がいずれの周波数チャネルf1、f2を用いるかを予め判定することができる。このような手順を用いることにより、基地局装置10aから送信されるデータフレームFR11、FR21が任意の周波数チャネルに割り付けられても、そのデータフレームを受信することが可能となる。
なお、このような制御方法は、IEEE802.11n規格のような、プライマリ・チャネル/セカンダリ・チャネルの概念があるようなシステムに適する。
【0081】
また、制御情報の送信に制御フレームを用いること無く、データフレームのヘッダ情報部を用いて伝送することとしてもよい。
図14は、本実施形態の無線通信システムの動作を示すタイミングチャートである。
データフレームと制御情報をひとつのフレーム(FCR11とFCR21)として伝送することが可能となることから、周波数の利用効率を高めることが可能となる。
【0082】
以上の説明は、送信電力を制御可能な基地局装置10aと端末装置50aを例示して、本実施形態について説明したが、第1、第2実施形態のようにACKフレーム(FA11とFA21)の送信時間制御を行う端末装置にも適用することが可能である。
なお、送信電力を制御する制御情報は、いずれの周波数チャネルを用いて送信してもよい。
また、その送信電力は、周波数チャネルf1に割り当てられた端末装置の送信電力を制御する態様に制限されず、周波数チャネルf2に割り当てられた端末装置の送信電力を制御する態様としてもよい。
さらに、基地局装置(アクセスポイント)における受信電力がある目標値になるように、隣接する周波数チャネルに割り当てられた双方の端末装置の送信電力をそれぞれ制御することとしてもよい。すなわち、基地局装置は、検出した受信電力を、基準とする目標値と比較した結果に基づいて、端末装置に対する制御情報をそれぞれ送信する。その制御情報にしたがって、それぞれの端末が送信電力を制御することが可能となる。
【0083】
(第5実施形態)
図15は、端末装置の構成を示すブロック図である。
この図に示される端末装置50bは、送信キュー51、送信データ選択部52、変調部53、送信電力制御部54、TDDスイッチ55、送受信アンテナ56、フレーム検出部57、復調部59、誤り検出部60、再送制御部61、チャネルアクセス管理部62及びACK送信電力設定部65を備える。図3、図10と同じ構成には同じ符号を付す。
【0084】
ACK送信電力設定部65は、データフレームの受信電力を検出する。ACK送信電力設定部65は、検出されたデータフレームの受信電力に基づいて、ACKフレームの送信電力を決定する。ACK送信電力設定部65は、決定した送信電力情報を送信電力制御部54に供給する。
【0085】
図15に示した端末装置50bの動作を説明する。
基地局装置10a(AP)から送信された制御フレーム、データフレームを送受信アンテナ56により受信し、フレーム検出部57により到来する周波数帯を検知した上で復調部59によりデータを復元する。
受信データに対して、誤り検出部60は、受信したデータの正誤判定を行う。その判定の結果が、再送制御部61並びにチャネルアクセス部62へ供給される。
【0086】
再送制御部61は、データフレームが正しく受信された場合において、ACKフレーム情報を生成し、送信データ選択機能へ入力する。
チャネルアクセス管理部62は、ACKフレームを、データフレームの受信後から既定の時間経過したタイミングにおいて送信するよう、送信データ選択部52を制御する。
チャネルアクセス管理部62は、例えば、IEEE802.11規格の無線LANシステムのように、データフレームを受信後SIFS(Short Inter Frame Spacing)という時間間隔をあけてACKフレームを送信させる。
【0087】
ACK送信電力設定部65は、データフレームの受信電力を参照した上でACKフレームの受信電力を決定する。ACK送信電力設定部65は、ACKフレームの受信電力を、例えば、データフレームの受信電力に反比例させ、比例係数は既定の値を設定する。
変調部59は、ACKフレームを無線信号へと変換し、送信電力制御部54は、ACK送信電力設定部65に保持されるACKフレームの送信電力の値を参照し、無線信号の送信電力をその値に設定する。送信電力制御部54は、送受信アンテナ56を用いて基地局装置(AP)へとACKフレームの送信を行う。
【0088】
TDDスイッチ55は、送信時は送信信号を送受信アンテナ56へ送出し、受信時には受信した無線信号を各機能へと送出する機能を有する。
なお、本実施形態における基地局装置は、従来と同じ方式を用いた基地局装置を適用してもよい。
【0089】
(第6実施形態)
図16は、本発明の一実施形態による無線通信システムの構成を示すブロック図である。
この図に示される無線通信システム1は、無線通信回線30−1、30−2を用いて通信を行う基地局装置(AP:アクセスポイント)10bと、基地局装置10bと無線通信回線を用いて通信する端末装置(STA)50bを複数備える。この図では、本実施形態の一態様として、2つの端末装置50b−1、50b−2と通信する基地局装置10bを例示する。
基地局装置10bは、有線回線(有線NW)70によって、他のネットワーク設備と接続される。基地局装置10bは、端末装置50b−1、50b−2に送信する送信データが有線NW70から供給される。また、基地局装置10bは、端末装置50b−1、50b−2から受信した受信データを有線NW70に供給する。
【0090】
この図に示される無線通信回線30−1は、基地局装置10bが端末装置(STA1)へ送信するデータフレームに対して、端末装置(STA2)の方向へヌルが向くアンテナ指向性を形成して構成される。また、無線通信回線30−2は、基地局装置10bが端末装置(STA2)へ送信するデータフレームに対して、端末装置(STA1)の方向へヌルが向くアンテナ指向性を形成して構成される。
この図に示される無線通信システム1bでは、基地局装置10bが持つ空間自由度を隣接チャネル干渉の低減を目的として用いる。これにより、端末装置STA1とSTA2が受信した信号に含まれる隣接チャネル干渉量を低減させることが可能となるため、下りリンクの伝送品質が向上する。
【0091】
図を参照し、本実施形態における異なる態様を示す。
本実施形態に示す無線通信システムは、図1に示した基地局装置10と端末装置50に代え、基地局装置10bと端末装置50aを備える。
【0092】
図17は、基地局装置の構成を示すブロック図である。
この図に示される基地局装置10bは、送信キュー11、送信データ選択部12a、変調部13、合成部14、TDDスイッチ15、送受信アンテナ16、フレーム検出部17a、分配部18、復調部19、誤り検出部20、再送制御部21、チャネルアクセス管理部22、送信指向性制御部25、チャネル推定部26及び送信指向性計算部27を備える。図2、図9と同じ構成には同じ符号を付す。
【0093】
送信指向性制御部25は、送信指向性計算部27からの制御信号にしたがって、変調部13から供給される変調信号に対して、周波数ごとに異なるゲイン及び位相の制御を行う。この送信指向性制御によって変調された信号は、送受信アンテナ16を介して送信されると、所望の端末装置の方向にビームを向けることができる。
【0094】
チャネル推定部26は、端末装置50aから送信される無線フレームの受信電力を検出する。チャネル推定部26は、内部に記憶領域を有し、検出した無線フレームの受信電力の値を検出した時間に応じて記憶する。記憶する受信電力は、周波数チャネルごとに記憶することとする。チャネル推定部26は、記憶した受信電力の値を参照し、履歴情報とすることができる。
【0095】
送信指向性計算部27は、周波数チャネルごとの受信電力の時間的な変動を検出し、端末装置が存在する方向を検出する。端末装置が存在する方向の検出は、一般的な手法を用いて実現する。送信指向性計算部27は、検出した端末装置の方向に送信する電波の指向性が向くように、送信指向性制御部25を制御する。
端末装置との間の無線通信回線に使用する電波の伝播特性に指向性を設定することができるので、所望の信号以外の混信を減らすとともに、所望の信号を検出できるゲインを高めることができる。
【0096】
図17に示した基地局装置10bの動作を説明する。
チャネル推定部26は、端末装置50aから送信される無線フレームの受信電力を検出する。チャネル推定部26は、内部に記憶領域を有し、検出した無線フレームの受信電力の値を検出した時間に応じて記憶する。
チャネルアクセス管理部22は、各チャネルの利用可否を判定する。この判定には、例えば、CSMA/CAによるキャリアセンス・ランダムバックオフ機能を用いることができる。
チャネルアクセス管理部22は、チャネルが利用可能な状態にあると判定した場合、送信データ選択部12にそのチャネルを用いた送信指示を通知する。
送信データ選択部12は、ユーザごとの送信データを保持する送信キュー11のうち、利用できる周波数チャネル数(kとした)と同数のデータフレームを抽出し、各データフレームを送信する周波数帯を選択する。送信データ選択部12は、ACKタイミング管理部22に選択した周波数帯の情報を供給する。
【0097】
この際に、チャネル推定部26は、各データフレームが送信される端末装置の受信信号利得を端末装置50aから送信される無線フレームの受信電力から検出し記憶する。チャネル推定部26は、記憶した受信電力の値を参照し、この情報から、各端末装置50aが送信する送信電力を決定する。チャネル推定部26は、その送信電力の値をACKフレームが、基地局装置(AP)における受信電力が全てのチャネルで均一となるように制御する。
【0098】
送信指向性計算部27は、各端末装置が送信する送信電力を決定し、この情報を変調部13−1から13−kに供給する。
変調部13−1から13−kでは、データフレームを無線信号へと変換する。
各周波数帯の送信信号は複数の無線信号を合成部14により広帯域の無線信号とし、送受信アンテナ16により各STAへ送信する。
なお、各端末装置からACKフレームを同時受信する際の動作は従来例と同様とする。
【0099】
図を参照し、基地局装置から端末装置に対する制御フレームの送信タイミングについて示す。
図18は、本実施形態の無線通信システムの動作を示すタイミングチャートである。
この図に示される縦軸は、隣接して配置される周波数チャネルf1とf2を示し、横軸が時間の経過を示す。図中に示される矩形は、当該時刻にその周波数チャネルを用いて送信されている無線フレームが存在していることを示す。
端末装置STA1とSTA2とは、通信に利用する周波数チャネルを、それぞれ周波数チャネルf1とf2に割り付けられるとする。その端末装置STA1とSTA2とは、基地局装置10から同じタイミングに送信された制御フレーム(FC11,FC21)及び無線フレーム(FR11とFR21)をそれぞれ受信する。
また、基地局装置10bは、端末装置から異なるタイミングに送信された制御フレーム(FC12からFC13,FC22からFC23)をそれぞれ受信する。
【0100】
ここで、端末装置STA1とSTA2は、受信した制御フレームFC11とFC21に含まれる制御情報に応じた動作を行う。端末装置STA1とSTA2は、順に制御フレームを基地局装置10bに送信する。
まず、端末装置STA1が、周波数チャネルf2を利用して、制御フレームFC22を送信する。この制御フレームを受信した基地局装置10bは、周波数チャネルf2における端末装置STA1からの伝送路特性を推定する。端末装置STA2が、周波数チャネルf1を利用して、制御フレームFC12を送信する。この制御フレームを受信した基地局装置10bは、周波数チャネルf1における端末装置STA2からの伝送路特性を推定する。端末装置STA1が、周波数チャネルf1を利用して、制御フレームFC13を送信する。この制御フレームを受信した基地局装置10bは、周波数チャネルf1における端末装置STA1からの伝送路特性を推定する。端末装置STA2が、周波数チャネルf2を利用して、制御フレームFC23を送信する。この制御フレームを受信した基地局装置10bは、周波数チャネルf2における端末装置STA2からの伝送路特性を推定する。
【0101】
基地局装置10bは、図に示される手順にしたがって、制御フレームの交換を行うことにより、端末装置に応じて周波数チャネルごとに伝送路特性を検出することができる。この検出処理が終わるまで、他の制御フレーム並びにデータフレームは、送信されない。そのため、基地局装置10bは、混信による影響を受けずに検出することができるため、検出精度を高めた伝送路推定を行うことができる。
基地局装置10bは、この伝送路推定処理に基づいて、無線通信回線30−1と30−2の指向特性を定めることができる。
【0102】
なお、端末装置STA1とSTA2とは、互いに基地局装置10bの制御に応じて、ACKフレームの送信を開始する時刻を遅延させることができる。そのためには、図に示される場合では、少なくとも端末装置STA1は、基地局装置10bの制御に応じて、ACKフレームの送信を開始する時刻を遅延させることが必要である。つまり、端末装置STA2は、ACKフレームを送信するタイミングを制御することができない従来型の端末装置であってもよい。
【0103】
本実施形態では、複数の帯域(周波数チャネル)を用いた伝送において、帯域外放射の影響を低減するために、ACKフレームの送信開始時刻を制御する。ACKフレームの送信開始時刻を制御する際に、実際に送信する時刻を一致させないだけでなく、当該周波数チャネルと隣接する周波数チャネルに干渉を与えないために、当該チャネルの送信を開始する送信開始時刻を制御する。
これにより、端末装置STA1の送信タイミングを後方にシフトさせることができることから、端末装置STA2がACKフレームを基地局装置10bに返信する期間において、周波数チャネルf1から帯域外放射が発生しないようにできる。
【0104】
上記の実施形態に示した構成は、一実施形態として示したものであり、本願発明の特徴を変えない範囲で、数量、組合せなどを変更することができる。
受信応答信号(ACKフレーム)を制御する制御フレームを送信するタイミングについては、実施形態に示したそれぞれの制御方法において、各ユーザが利用するチャネル情報と、受信応答信号(ACKフレーム)を制御する制御情報とを合わせた制御フレームとして端末装置に送信してもよい。
【0105】
また、基地局装置10が送信する制御情報は、端末装置50が受信応答信号を送信する条件を直接的に指示する指示情報を含むこととしてもよい。或いは、基地局装置10が送信する制御情報は、端末装置50が受信応答信号を送信する条件を間接的に定める情報を含み、端末装置50は、受信応答信号を送信する条件を定める情報に基づいて受信応答信号の送信を指示する指示情報を生成する。例えば、端末装置50が受信応答信号を送信する条件を間接的に定める情報は、基地局装置10が受信した各端末装置50からの受信信号の受信レベル、又は、その受信レベルを示す情報としてもよい。
【0106】
なお、本実施形態の基地局装置10は、端末装置50に対して送信した信号に対する受信応答信号が干渉せずに受信するように、受信応答信号(ACKフレーム)の送信が制御される信号(制御情報)を送信する。端末装置50は、基地局装置10が端末装置50に対して送信した信号に対する受信応答信号であって、基地局装置10が受信応答信号を干渉せずに受信するように、基地局装置10から送信された制御情報に応じて受信応答信号を送信する。
これにより、無線通信システムでは、ガードバンドを大きく取る必要が無くなり、使用できない周波数チャネルの発生を抑圧できることから、周波数利用効率を向上させることが可能となる。
【0107】
また、本実施形態の基地局装置10は、受信応答信号の送信開始時間を制御して、受信応答信号を隣接するチャネルを使って同時に受信しないように配置する。端末装置50は、基地局装置10から送信された制御情報に応じて指示された送信開始時間に基づいて受信応答信号を送信する。
これにより、さらに、無線通信システムでは、ACKフレームの送信開始時刻を制御することにより、干渉が生じる期間を避けて検出することが可能となる。
【0108】
また、本実施形態の基地局装置10は、受信応答信号が隣接したチャネルに配置される場合、受信応答信号の受信電力が、干渉せずに受信できる電力レベルとなるように隣接するチャネルに配置された端末装置50からの送信電力を制御する。端末装置50は、基地局装置10から送信された制御情報に応じて指示された送信電力に基づいて受信応答信号を送信する。
これにより、さらに、無線通信システムでは、ACKフレームを送信する送信電力を制御することにより、干渉が生じるようなレベル差が発生せず、隣接する周波数チャネルの信号も受信可能となる。
【0109】
また、本実施形態の基地局装置10は、受信応答信号の受信電力が、干渉せずに受信できる電力レベルとなるように、端末装置50が送信する送信波の指向特性を制御する。端末装置50は、基地局装置10から送信された制御情報に応じて指示された送信波の指向特性に基づいて受信応答信号を送信する。
これにより、さらに、無線通信システムでは、ACKフレームを送信する所望の端末装置との無線通信回線の指向特性を制御することにより、不要な混信を避け、ゲインを高めた回線を確保することが可能となる。
【0110】
また、本実施形態の基地局装置10から送信された制御情報は、端末装置50が受信応答信号を送信する条件を指示する指示情報を含む。
これにより、さらに、無線通信システムでは、端末装置50は、基地局装置10から送信される制御情報に含まれる指示情報に基づく指示にしたがって、ACKフレームを送信することが可能となる。
【0111】
また、本実施形態の基地局装置10から送信された制御情報は、端末装置50が受信応答信号を送信する条件を定める情報を含み、端末装置50は、受信応答信号を送信する条件を定める情報に基づいて受信応答信号の送信を指示する指示情報を生成する。
これにより、さらに、無線通信システムでは、端末装置50は、基地局装置10から送信される制御情報に基づいて、端末装置50が生成した指示情報に基づく指示にしたがって、ACKフレームを送信することが可能となる。
【符号の説明】
【0112】
10 基地局装置
11 送信キュー
12 送信データ選択部
13 変調部
14 合成部
15 TDDスイッチ
16 送受信アンテナ
17 フレーム検出部
18 分配部
19 復調部
20 誤り検出部
21 再送制御部
22 チャネルアクセス管理部
23 ACKタイミング管理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末装置と、該複数の端末装置と通信する基地局装置とを含む無線通信システムであって、
前記基地局装置は、
前記端末装置に対して送信した信号に対する受信応答信号が干渉せずに受信するように、前記受信応答信号の送信が制御される制御情報を送信し、
前記端末装置は、
前記基地局装置が前記端末装置に対して送信した信号に対する受信応答信号であって、前記基地局装置が前記受信応答信号を干渉せずに受信するように、前記基地局装置から送信された制御情報に応じて前記受信応答信号を送信する
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記基地局装置は、
前記受信応答信号の送信開始時間を制御して、前記受信応答信号を隣接するチャネルを使って同時に受信しないように配置し、
前記端末装置は、
前記基地局装置から送信された制御情報に応じて指示された送信開始時間に基づいて前記受信応答信号を送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記基地局装置は、
前記受信応答信号が隣接したチャネルに配置される場合、前記受信応答信号の受信電力が、干渉せずに受信できる電力レベルとなるように隣接するチャネルに配置された前記端末装置からの送信電力を制御し、
前記端末装置は、
前記基地局装置から送信された制御情報に応じて指示された前記送信電力に基づいて前記受信応答信号を送信する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記基地局装置は、
前記受信応答信号の受信電力が、干渉せずに受信できる電力レベルとなるように、前記端末装置が送信する送信波の指向特性を制御し、
前記端末装置は、
前記基地局装置から送信された制御情報に応じて指示された前記送信波の指向特性に基づいて前記受信応答信号を送信する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記基地局装置から送信された制御情報は、前記端末装置が前記受信応答信号を送信する条件を指示する指示情報を含む
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記基地局装置から送信された制御情報は、前記端末装置が前記受信応答信号を送信する条件を定める情報を含み、
前記端末装置は、前記受信応答信号を送信する条件を定める情報に基づいて前記受信応答信号の送信を指示する指示情報を生成する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の無線通信システム。
【請求項7】
複数の端末装置と通信する基地局装置であって、
前記基地局装置は、
前記端末装置が受信した信号の受信状況に応じて、前記端末装置から送信される受信応答信号を干渉せずに受信するように、前記受信応答信号の送信が制御される制御情報を送信し、該端末装置からの受信応答信号を受信する
ことを特徴とする基地局装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の基地局装置と通信する端末装置であって、
前記基地局装置から自装置に対して送信された信号を受信して、その受信状況に応じて送信する受信応答信号を、前記基地局装置が干渉せずに受信するように、前記基地局装置から前記送信された制御情報に応じて前記受信応答信号を送信する
ことを特徴とする端末装置。
【請求項9】
複数の端末装置と、該複数の端末装置と通信する基地局装置とを含む無線通信システムの通信方法であって、
前記基地局装置から前記端末装置に対して送信した信号に対する受信応答信号が干渉せずに受信するように、前記受信応答信号の送信が制御される制御情報を送信する過程と、
前記基地局装置が前記受信応答信号を干渉せずに受信するように、前記基地局装置から前記送信された制御情報に応じて前記受信応答信号を前記端末装置が送信する過程と、
を含むことを特徴とする通信方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−146988(P2011−146988A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6984(P2010−6984)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】