無線通信システム、無線端末及び無線通信方法
【課題】基地局間協調MIMO通信を正常に機能させつつ、フィードバックに伴うオーバヘッドを低減できる無線通信システムを提供する。
【解決手段】無線通信システム1は、無線端末UEと、無線端末UEからのフィードバックに応じて無線信号RS1を無線端末UEに送信する無線基地局BS1と、無線端末UEからのフィードバックに応じて、無線信号RS1と同一の周波数及び同一の時間で無線信号RS2を無線端末UEに送信する無線基地局BS2とを有する。無線基地局BS1において無線信号RS1の送信に用いる送信アンテナが1本である場合、無線端末UEは、無線基地局BS1へのフィードバックを省略する。
【解決手段】無線通信システム1は、無線端末UEと、無線端末UEからのフィードバックに応じて無線信号RS1を無線端末UEに送信する無線基地局BS1と、無線端末UEからのフィードバックに応じて、無線信号RS1と同一の周波数及び同一の時間で無線信号RS2を無線端末UEに送信する無線基地局BS2とを有する。無線基地局BS1において無線信号RS1の送信に用いる送信アンテナが1本である場合、無線端末UEは、無線基地局BS1へのフィードバックを省略する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局間協調MIMO通信が適用される無線通信システム、無線端末及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信システムにおいて周波数利用効率を向上可能な技術の1つとして、無線信号の送信側及び受信側がそれぞれ複数本のアンテナを用い、同一の周波数及び同一の時間で複数の信号系列を伝送するMIMO(Multi-Input Multi-Output)通信が知られている。
【0003】
MIMO通信の性能を発揮させるためには、無線伝搬路の状況に応じて適応的に送信制御を行う必要がある。このため、MIMO通信が導入される無線通信システムにおいては、閉ループ制御が導入されている。具体的には、無線信号の受信側が、無線伝搬路の特性(以下、伝搬路特性)に応じた伝搬路情報を生成し、当該伝搬路情報を送信側にフィードバックする。特に、上下リンクにおける伝搬路特性の相関が無いFDD方式の無線通信システムでは、伝搬路情報のフィードバックが必須となる。
【0004】
近年では、MIMO通信を発展させた技術として、複数の無線基地局が同一の周波数及び同一の時間で1つの無線端末と通信する基地局間協調MIMO通信(“マルチセル協調送受信”とも呼ばれる)が注目されている(例えば、特許文献1参照)。基地局間協調MIMO通信によれば、複数の無線基地局それぞれのアンテナを利用することで、MIMO通信に使用可能なアンテナの本数を増大させることができ、従来のMIMO通信よりも伝送速度の向上や受信品質の改善を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−523665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基地局間協調MIMO通信において閉ループ制御を行う場合には、無線端末から複数の無線基地局それぞれにフィードバックを行うことになり、従来のMIMO通信と比較して、フィードバックに伴うオーバヘッドが大きくなる。すなわち、無線端末と複数の無線基地局それぞれとの間にフィードバック用の制御チャネルを設定することで、アップリンクにおける無線リソースの消費量が大きくなってしまう。
【0007】
あるいは、複数の無線基地局のうち一の無線基地局との間にのみフィードバック用の制御チャネルを設定し、基地局間通信を利用して当該一の無線基地局から他の無線基地局へフィードバックを転送することで、フィードバックに伴うオーバヘッドを低減できる。しかし、一の無線基地局から他の無線基地局へフィードバックを転送する場合には、転送遅延の影響によりフィードバックが間に合わなくなり、基地局間協調MIMO通信が正常に機能しないおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、基地局間協調MIMO通信を正常に機能させつつ、フィードバックに伴うオーバヘッドを低減できる無線通信システム、無線端末及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、無線端末(無線端末UE)と、前記無線端末からのフィードバックに応じて第1無線信号(無線信号RS1)を前記無線端末に送信する第1無線基地局(無線基地局BS1)と、前記無線端末からのフィードバックに応じて、前記第1無線信号と同一の周波数及び同一の時間で第2無線信号(無線信号RS2)を前記無線端末に送信する第2無線基地局(無線基地局BS2)とを有する無線通信システム(無線通信システム1)であって、前記第1無線基地局において前記第1無線信号の送信に用いる送信アンテナが1本である場合、前記無線端末は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略することを要旨とする。
【0010】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記送信アンテナが1本である場合、前記無線端末は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略するとともに、前記第1無線基地局から前記無線端末までの伝搬路特性に応じた第1伝搬路情報(伝播路情報1)と、前記第2無線基地局から前記無線端末までの伝搬路特性に応じた第2伝搬路情報(伝播路情報2)とに基づくフィードバックを前記第2無線基地局に対して行うことを要旨とする。
【0011】
本発明の第3の特徴は、本発明の第2の特徴に係り、前記送信アンテナが1本である場合、前記無線端末は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略するとともに、前記第1伝搬路情報を基準として前記第2伝搬路情報を正規化し、前記正規化された第2伝搬路情報を前記第2無線基地局にフィードバックすることを要旨とする。
【0012】
本発明の第4の特徴は、本発明の第2の特徴に係り、前記送信アンテナが1本である場合、前記無線端末は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略するとともに、前記第1伝搬路情報及び前記第2伝搬路情報を前記第2無線基地局にフィードバックし、前記第2無線基地局は、前記無線端末からフィードバックされた前記第1伝搬路情報を基準として、前記無線端末からフィードバックされた前記第2伝搬路情報を正規化し、前記正規化された第2伝搬路情報に応じて前記第2無線信号を送信することを要旨とする。
【0013】
本発明の第5の特徴は、本発明の第2〜第4の何れかの特徴に係り、前記第1伝搬路情報は、前記第1無線基地局の送信アンテナと前記無線端末の受信アンテナとの間の伝搬路特性を示す情報であり、前記第2伝搬路情報は、前記第2無線基地局の送信アンテナと前記無線端末の受信アンテナとの間の伝搬路特性を示す情報であることを要旨とする。
【0014】
本発明の第6の特徴は、本発明の第2〜第4の何れかの特徴に係り、前記第1伝搬路情報は、前記第1無線信号の位相又は振幅の少なくとも一方の制御に用いられる第1送信アンテナウェイト(送信アンテナウェイト1)、又は、前記第1送信アンテナウェイトを示すインデックスであり、前記第2伝搬路情報は、前記第2無線信号の位相又は振幅の少なくとも一方の制御に用いられる第2送信アンテナウェイト(送信アンテナウェイト2)、又は、前記第2送信アンテナウェイトを示すインデックスであることを要旨とする。
【0015】
本発明の第7の特徴は、本発明の第1〜第6の何れかの特徴に係り、前記無線端末は、前記第1無線信号の受信品質又は伝搬路特性を前記第1無線基地局の送信アンテナ毎に測定し、前記第1無線基地局は、前記測定された受信品質又は前記測定された伝搬路特性に応じて選択される1本の前記送信アンテナを用いて、前記第1無線信号を前記無線端末に送信することを要旨とする。
【0016】
本発明の第8の特徴は、本発明の第1〜第7の何れかの特徴に係り、前記無線端末からのフィードバックが省略される前記第1無線基地局は、前記第2無線基地局よりも、前記無線端末から遠くに位置する無線基地局であることを要旨とする。
【0017】
本発明の第9の特徴は、本発明の第1〜第7の何れかの特徴に係り、前記無線端末からのフィードバックが省略される前記第1無線基地局は、前記第2無線基地局よりも処理性能が高い無線基地局であることを要旨とする。
【0018】
本発明の第10の特徴は、本発明の第1〜第7の何れかの特徴に係り、前記無線端末からのフィードバックが省略される前記第1無線基地局は、前記第2無線基地局よりも処理性能が低い無線基地局であることを要旨とする。
【0019】
本発明の第11の特徴は、本発明の第1〜第7の何れかの特徴に係り、前記無線端末からのフィードバックが省略される前記第1無線基地局は、前記第2無線基地局よりも、前記無線端末との間の伝搬路変動が小さい無線基地局であることを要旨とする。
【0020】
本発明の第12の特徴は、本発明の第1〜第7の何れかの特徴に係り、前記無線端末からのフィードバックが省略される前記第1無線基地局は、前記第2無線基地局よりも、前記無線端末との間の伝搬路損失が大きい無線基地局であることを要旨とする。
【0021】
本発明の第13の特徴は、第1無線基地局(無線基地局BS1)から第1無線信号(無線信号RS1)を受信し、前記第1無線信号と同一の周波数及び同一の時間で第2無線信号(無線信号RS2)を第2無線基地局(無線基地局BS2)から受信する無線端末(無線端末UE)であって、前記第1無線基地局及び前記第2無線基地局へのフィードバックを送信する送信部(送信部122)を有し、前記第1無線基地局において前記第1無線信号の送信に用いる送信アンテナが1本である場合、前記送信部は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略することを要旨とする。
【0022】
本発明の第14の特徴は、無線端末(無線端末UE)からのフィードバックに応じて第1無線信号(無線信号RS1)を前記無線端末に送信する第1無線基地局(無線基地局BS1)と、前記無線端末からのフィードバックに応じて、前記第1無線信号と同一の周波数及び同一の時間で第2無線信号(無線信号RS2)を前記無線端末に送信する第2無線基地局(無線基地局BS2)とを有する無線通信システムであって、前記第1無線基地局において前記第1無線信号の送信に用いる送信アンテナが1本である場合、前記第1無線基地局又は前記第2無線基地局は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略するよう前記無線端末に指示することを要旨とする。
【0023】
本発明の第15の特徴は、無線端末(無線端末UE)からのフィードバックに応じて第1無線基地局(無線基地局BS1)が第1無線信号を前記無線端末に送信するステップと、前記無線端末からのフィードバックに応じて、前記第1無線信号と同一の周波数及び同一の時間で第2無線基地局(無線基地局BS2)が第2無線信号を前記無線端末に送信するステップと、前記第1無線基地局において前記第1無線信号の送信に用いる送信アンテナが1本である場合、前記無線端末が、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略するステップとを有する無線通信方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の特徴によれば、基地局間協調MIMO通信を正常に機能させつつ、フィードバックに伴うオーバヘッドを低減できる無線通信システム、無線端末及び無線通信方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る無線通信システムの概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る無線端末の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る無線基地局(第1無線基地局)の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る無線基地局(第2無線基地局)の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る正規化部によって実行される正規化処理について説明するための図である(その1)。
【図6】本発明の第1実施形態に係る正規化部によって実行される正規化処理について説明するための図である(その2)。
【図7】本発明の第1実施形態に係る無線通信システムの動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2実施形態に係る無線端末の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る無線基地局(第2無線基地局)の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る無線通信システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、図面を参照して、本発明の第1実施形態、第2実施形態、その他の実施形態を説明する。以下の実施形態における図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0027】
[第1実施形態]
第1実施形態においては、(1)無線通信システムの構成、(2)正規化処理、(3)基地局選択処理、(4)アンテナ選択処理、(5)無線通信システムの動作、(6)第1実施形態の効果について説明する。
【0028】
(1)無線通信システムの構成
まず、(1.1)全体概略構成、(1.2)無線端末UEの構成、(1.3)無線基地局BS1の構成、(1.4)無線基地局BS2の構成について説明する。
【0029】
(1.1)全体概略構成
図1は、基地局間協調MIMO通信(マルチセル協調送受信)が導入された無線通信システム1の概略構成図である。
【0030】
無線通信システム1は、例えば第4世代(4G)携帯電話システムとして位置づけられているLTE-Advancedに基づく構成を有している。無線通信システム1には、複信方式としてFDD(Frequency Division Duplex)方式が採用されている。以下においては、主にダウンリンクにおける基地局間協調MIMO通信について説明する。
【0031】
図1に示すように、無線通信システム1は、無線基地局BS1(第1無線基地局)、無線基地局BS2(第2無線基地局)、無線端末UE、及び制御装置11を有する。無線端末UEは、無線基地局BS1によって形成されるセルC1と、無線基地局BS2によって形成されるセルC2との重複部分に位置している。
【0032】
無線基地局BS1及び無線基地局BS2は、マクロセル基地局であってもよく、フェムトセル基地局であってもよい。フェムトセル基地局とは、主に屋内に設置される小型の無線基地局である。
【0033】
無線基地局BS1及び無線基地局BS2は、有線通信網であるバックホールネットワーク10を介して互いに接続されている。制御装置11は、バックホールネットワーク10に設けられ、バックホールネットワーク10を介して無線基地局BS1及び無線基地局BS2を制御する。ただし、無線基地局BS1及び無線基地局BS2は、制御装置11を介さずに、直接的に基地局間通信を行うことができる。
【0034】
無線通信システム1における基地局間協調MIMO通信には、閉ループ制御が導入されている。
【0035】
無線基地局BS1は、無線端末UEからのフィードバックに応じて無線信号RS1(第1無線信号)を無線端末UEに送信する。無線基地局BS2は、無線端末UEからのフィードバックに応じて、無線信号RS1と同一の周波数及び同一の時間で無線信号RS2(第2無線信号)を無線端末UEに送信する。
【0036】
無線基地局BS1は、無線端末UEからのフィードバックに応じて送信信号の重み付け処理(“プリコーディング”と呼ばれる)を行い、重み付け後の送信信号を含む無線信号RS1を送信する。当該重み付け処理により、送信信号(無線信号RS1)の位相や振幅が無線基地局BS1の送信アンテナ毎に制御される。
【0037】
同様に、無線基地局BS2は、無線端末UEからのフィードバックに応じて送信信号の重み付け処理を行い、重み付け後の送信信号に対応する無線信号RS2を送信する。当該重み付け処理により、送信信号(無線信号RS2)の位相や振幅が無線基地局BS2の送信アンテナ毎に制御される。
【0038】
ここで、無線基地局BS1が送信する無線信号RS1に含まれる送信信号系列(“ストリーム”とも呼ばれる)と、無線基地局BS2が送信する無線信号RS2に含まれる送信信号系列とは、同じものであっても、異なるものであってもよい。
【0039】
無線信号RS1に含まれる送信信号系列と無線信号RS2に含まれる送信信号系列とが同じである場合(シングルストリーム伝送時)には、ダイバーシチ効果により受信品質が改善される。図1に示すように、無線端末UEが無線基地局BS1及び無線基地局BS2のセル端に位置しているようなケースでは、シングルストリーム伝送により受信品質を改善させることが好ましい。
【0040】
無線信号RS1に含まれる送信信号系列と無線信号RS2に含まれる送信信号系列とが異なる場合(マルチストリーム伝送時)には伝送速度が向上する。無線基地局BS1又は無線基地局BS2が例えばフェムトセル基地局であり、無線端末UEが無線基地局BS1及び無線基地局BS2の近くに位置しているようなケースでは、マルチストリーム伝送により伝送速度を向上させることが好ましい。
【0041】
無線基地局BS1が無線信号RS1の送信に用いる送信アンテナが1本である場合、無線端末UEは、無線基地局BS1へのフィードバックを省略する。以下においては、無線基地局BS1に対するフィードバックが省略される場合について説明するが、フィードバックが省略される無線基地局は選択可能である。フィードバックが省略される無線基地局の選択方法については後述する。
【0042】
無線端末UEは、無線基地局BS1へのフィードバックを省略するとともに、無線基地局BS1から無線端末UEまでの伝搬路特性に応じた伝播路情報1(第1伝搬路情報)と、無線基地局BS2から無線端末UEまでの伝搬路特性に応じた伝播路情報2(第2伝搬路情報)とに基づくフィードバックを無線基地局BS2に対して行う。伝搬路特性とは、無線信号が無線伝搬路を通過する際に受ける減衰量、位相回転量、遅延量等のパラメータを意味する。
【0043】
(1.2)無線端末UEの構成
図2は、無線端末UEの構成を示すブロック図である。
【0044】
なお、以下においては、本発明との関連がある部分について主に説明する。したがって、無線端末UEは、図示しない或いは説明を省略した構成(電源部など)を備える場合があることに留意されたい。
【0045】
図2に示すように、無線端末UEは、複数本のアンテナ111、送受信部120、制御部130、及び記憶部140を有する。図2の例では無線端末UEが複数本のアンテナ111を有しているが、必ずしも複数本である必要はなく、1本のアンテナ111のみであってもよい。
【0046】
送受信部120は、例えば無線周波数(RF)回路やベースバンド(BB)回路等を用いて構成される。制御部130は、例えばCPUを用いて構成され、無線端末UEが具備する各種の機能を制御する。記憶部140は、例えばメモリを用いて構成され、無線端末UEの制御等に用いられる各種の情報を記憶する。
【0047】
送受信部120は、受信部121及び送信部122を有する。制御部130は、伝搬路情報生成部131及び正規化部132を有する。
【0048】
受信部121は、無線基地局BS1から無線信号RS1を受信するとともに、無線基地局BS2から無線信号RS2を受信する。なお、シングルストリーム伝送時等には、受信部121は、無線信号RS1及び無線信号RS2を同位相で受信することが好ましい。
【0049】
伝搬路情報生成部131は、受信部121が受信した無線信号RS1に含まれる参照信号(パイロット信号)等を用いて、無線基地局BS1の各送信アンテナと無線端末UEの各受信アンテナとの間の伝搬路特性を示す伝搬路推定値(以下、伝搬路推定値1)を算出する処理(いわゆる、チャネル推定)を行う。
【0050】
伝搬路情報生成部131は、受信部121が受信した無線信号RS2に含まれる参照信号(パイロット信号)等を用いて、無線基地局BS2の各送信アンテナと無線端末UEの各受信アンテナとの間の伝搬路特性を示す伝搬路推定値(以下、伝搬路推定値2)を算出する処理を行う。
【0051】
伝搬路情報生成部131は、伝搬路推定値1に基づいて、無線基地局BS1にフィードバックする情報である伝播路情報1を生成する。伝搬路推定値1を伝播路情報1とする場合に限らず、伝播路情報1が、無線基地局BS1における重み付け処理(すなわち、無線信号RS1の位相又は振幅の少なくとも一方の制御)に用いられる送信アンテナウェイト1、又は、当該送信アンテナウェイト1を示すインデックス(“PMI(Pre-coding Matrix Index)”と呼ばれる)であってもよい。
【0052】
伝搬路情報生成部131は、伝搬路推定値2に基づいて、無線基地局BS2にフィードバックする情報である伝播路情報2を生成する。伝搬路推定値2を伝播路情報2とする場合に限らず、伝播路情報2が、無線基地局BS2における重み付け処理(すなわち、無線信号RS2の位相又は振幅の少なくとも一方の制御)に用いられる送信アンテナウェイト2、又は、当該送信アンテナウェイト2を示すインデックスであってもよい。
【0053】
正規化部132は、無線基地局BS1が無線信号RS1の送信に用いる送信アンテナが1本である場合に、伝播路情報1を基準として伝播路情報2を正規化する。正規化処理の詳細については後述する。
【0054】
送信部122は、無線基地局BS1及び無線基地局BS2へのフィードバックを送信する。無線基地局BS1が無線信号RS1の送信に用いる送信アンテナが1本である場合、送信部122は、無線基地局BS1への伝播路情報1のフィードバックを省略するとともに、正規化部132によって正規化された伝播路情報2を無線基地局BS2へフィードバックする。
【0055】
なお、無線基地局BS1が送信アンテナを複数本用いて無線信号RS1を送信する場合、送信部122は、伝播路情報1を無線基地局BS1へフィードバックし、伝播路情報2を無線基地局BS2へフィードバックしてもよい。
【0056】
(1.3)無線基地局BS1の構成
図3は、無線基地局BS1の構成を示すブロック図である。
【0057】
図3に示すように、無線基地局BS1は、複数本のアンテナ211、送受信部220、制御部230、記憶部240、及び有線通信部250を有する。図3の例では無線基地局BS1が複数本のアンテナ211を有しているが、必ずしも複数本である必要はなく、1本のアンテナ211のみであってもよい。
【0058】
送受信部220は、例えばRF回路やBB回路等を用いて構成される。制御部230は、例えばCPUを用いて構成され、無線基地局BS1が具備する各種の機能を制御する。記憶部240は、例えばメモリを用いて構成され、無線基地局BS1の制御等に用いられる各種の情報を記憶する。有線通信部250は、バックホールネットワーク10を介して無線基地局BS2及び制御装置11と通信する。
【0059】
送受信部220は、受信部221及び送信部222を有する。制御部230は、ウェイト制御部231を有する。
【0060】
受信部221は、無線端末UEから伝播路情報1がフィードバックされる場合に、当該フィードバックされる伝播路情報1を受信する。
【0061】
ウェイト制御部231は、無線信号RS1の送信に用いられる送信アンテナウェイト1を制御する。受信部221が伝播路情報1を受信した場合、ウェイト制御部231は、当該伝播路情報1に応じた送信アンテナウェイト1を送信部222に通知する。受信部221が伝播路情報1を受信しない場合、すなわち伝播路情報1のフィードバックが省略されている場合、ウェイト制御部231は、送信アンテナウェイト1を送信部222に通知しない、又は、予め定められた固定の送信アンテナウェイト1を送信部222に通知する。
【0062】
送信部222は、ウェイト制御部231から通知された送信アンテナウェイト1を用いて送信信号を重み付け(プリコーディング)し、重み付けされた送信信号を含む無線信号RS1を送信する。ウェイト制御部231から送信アンテナウェイト1が通知されない場合、送信部222は、重み付けを省略して、送信信号を含む無線信号RS1を送信する。
【0063】
(1.4)無線基地局BS2の構成
図4は、無線基地局BS2の構成を示すブロック図である。
【0064】
図4に示すように、無線基地局BS2は、複数本のアンテナ311、送受信部320、制御部330、記憶部340、及び有線通信部350を有する。図4の例では無線基地局BS2が複数本のアンテナ211を有しているが、必ずしも複数本である必要はなく、1本のアンテナ211のみであってもよい。
【0065】
送受信部320は、例えばRF回路やBB回路等を用いて構成される。制御部330は、例えばCPUを用いて構成され、無線基地局BS2が具備する各種の機能を制御する。記憶部340は、例えばメモリを用いて構成され、無線基地局BS2の制御等に用いられる各種の情報を記憶する。有線通信部350は、バックホールネットワーク10を介して無線基地局BS1及び制御装置11と通信する。
【0066】
送受信部320は、受信部321及び送信部322を有する。制御部330は、ウェイト制御部331を有する。
【0067】
受信部321は、無線端末UEからフィードバックされる伝播路情報2を受信する。受信部321が受信する伝播路情報2は、正規化されている場合と正規化されていない場合とがある。
【0068】
ウェイト制御部331は、無線信号RS2の送信に用いられる送信アンテナウェイト2を制御する。ウェイト制御部331は、受信部321が受信した伝播路情報2に応じた送信アンテナウェイト2を送信部322に通知する。
【0069】
送信部322は、ウェイト制御部331から通知された送信アンテナウェイト2を用いて送信信号を重み付け(プリコーディング)し、重み付けされた送信信号を含む無線信号RS2を送信する。ウェイト制御部331から送信アンテナウェイト2が通知されない場合、送信部322は、重み付けを省略して、送信信号を含む無線信号RS2を送信する。
【0070】
(2)正規化処理
次に、図5及び図6を参照して、正規化部132によって実行される正規化処理について説明する。まず、伝播路情報1が伝搬路推定値1であり、伝播路情報2が伝搬路推定値2である場合について説明する。
【0071】
伝搬路推定値は、各アンテナ毎(送受信アンテナの組み合わせ毎)に値を持つが、それらの相対関係が維持されれば値自体を変化させても、受信側で適切に処理(信号分離等)できる。例えば、図5(a)に示す伝搬路推定値1 (a, b)及び伝搬路推定値2 (c, d)に対して、図5(b)に示すように、(a x e, b x e, c x e, d x e)のように全伝搬路推定値に定数eを乗算して変換しても、伝搬路推定値1及び伝搬路推定値2の位相の関係が維持され、同位相の関係が保たれるため、特に問題はない。
【0072】
そこで、無線基地局BS1の送信アンテナが1本である場合には、図6(a)に示すように、伝搬路推定値1(a)及び伝搬路推定値2 (b, c, d)それぞれフィードバックが必要であったものを、図6(b)に示すように、伝搬路推定値1で伝搬路推定値2を除算する。具体的には、伝搬路推定値1(a / a) = (1)及び伝搬路推定値2 (b / a, c / a, d / a)と除算により正規化することで、伝搬路推定値1を仮想的に常に(1)固定とすることができ、無線基地局BS1へのフィードバックを不要とすることができる。
【0073】
この例では、伝搬路推定値1で伝搬路推定値2を除算する正規化を行っているが、伝搬路推定値1及び伝搬路推定値2の相対関係が維持される計算方法であれば他の正規化方法であってもよく、例えば伝搬路推定値2から伝搬路推定値1を減算することで正規化してもよい。
【0074】
また、伝播路情報1が送信アンテナウェイト1又はそのインデックスであり、伝播路情報2が送信アンテナウェイト2又はそのインデックスである場合には、上記の処理に加え、例えば、送信アンテナウェイト2の候補(“コードブック”と呼ばれる)の中から、正規化された伝搬路推定値2に対応する送信アンテナウェイト2を選択し、選択された送信アンテナウェイト2又はそのインデックスが無線基地局BS2にフィードバックされる。
【0075】
あるいは、送信アンテナウェイト2のインデックス(ここでは、“PMI”と称する)のリスト(コードブック)の中から最適なPMIを選択するための方法として、次のような方法を採用してもよい。具体的には、伝搬路推定値1及び伝搬路推定値2に基づいて、リスト中のPMIを用いた場合の受信SNRをPMI毎に計算し、計算された各受信SNRのうちで最大の受信SNRに対応するPMIを最適なPMIとして選択する。リスト中のPMIが少ない場合には、このような方法が効果的である。当該方法を採用する場合、正規化部132は、伝搬路推定値1及び伝搬路推定値2に基づいて、無線基地局BS1が1本のアンテナで固定送信をしたと仮定した条件下で、受信SNRが最大となるPMIを無線基地局BS2にフィードバックすべきPMIとして選択(探索)する。
【0076】
(3)基地局選択処理
次に、フィードバックが省略される無線基地局(無線基地局BS1)を選択する処理である基地局選択処理について説明する。基地局選択処理は、無線端末UE、無線基地局BS1、無線基地局BS2、及び制御装置11の何れが実行してもよい。
【0077】
基地局選択処理としては、例えば次の選択方法1〜5の何れかが使用できる。ただし、選択方法1〜5の何れかを固定的に用いる場合に限らず、無線端末UE、無線基地局BS1及び無線基地局BS2の状況等に応じて、選択方法1〜5を適宜切り替えて使用してもよい。
【0078】
(選択方法1)
選択方法1においては、無線端末UEから遠くに位置する無線基地局を無線基地局BS1として選択し、無線端末UEから近くに位置する無線基地局を無線基地局BS2として選択する。これにより、無線端末UEは、無線端末UEから近くに位置する無線基地局BS2へのフィードバックを行い、無線端末UEから遠くに位置する無線基地局BS1へのフィードバックを省略することになり、フィードバック用の送信電力を低減でき、与干渉量を低減できる。無線端末UEの電池残量が少ない場合等には選択方法1が好ましい。なお、選択方法1においては、無線端末UEと無線基地局BS1との間の距離、及び無線端末UEと無線基地局BS2との間の距離の情報が必要となるが、無線端末UEに設けられるGPS等を利用して距離の情報を得ることができる。
【0079】
(選択方法2)
選択方法2においては、処理性能が高い無線基地局(具体的には、マクロセル基地局)を無線基地局BS1として選択し、処理性能が低い無線基地局(具体的には、フェムトセル基地局)を無線基地局BS2として選択する。通常、フェムトセル基地局は、無線端末UEの近くに存在するため、無線端末UEは、無線端末UEから近くに位置する無線基地局BS2へのフィードバックを行い、無線端末UEから遠くに位置する無線基地局BS1へのフィードバックを省略することができる。例えば無線端末UEにGPS等が設けられていない場合には、選択方法2が有効である。
【0080】
(選択方法3)
選択方法3においては、処理性能が低い無線基地局(具体的には、フェムトセル基地局)を無線基地局BS1として選択し、処理性能が高い無線基地局(具体的には、マクロセル基地局)を無線基地局BS2として選択する。処理性能が低い無線基地局に1本アンテナの一定送信を実行させ、処理性能が高い無線基地局にマルチアンテナのマルチストリーム送信をさせることで、高速な伝送速度を得ることができるため、選択方法3は、高速な伝送速度が要求される場合や、無線端末UEの電池残量が多い場合に有効である。
【0081】
(選択方法4)
選択方法4においては、無線端末UEとの間の伝搬路変動が小さい無線基地局を無線基地局BS1として選択し、無線端末UEとの間の伝搬路変動が大きい無線基地局を無線基地局BS2として選択する。これは、無線基地局BS1は1本アンテナの一定送信となるため、伝搬路変動が小さいことが好ましいからである。各無線基地局との間の伝搬路変動に大きな差がある場合には、選択方法4が有効である。
【0082】
(選択方法5)
選択方法5においては、無線端末UEとの間の伝搬路損失が大きい無線基地局を無線基地局BS1として選択し、無線端末UEとの間の伝搬路損失が小さい無線基地局を無線基地局BS2として選択する。伝搬路損失は、無線基地局における送信電力と、無線端末UEにおける受信電力との差として計算され、端末・基地局間の距離を反映している。このため、無線端末UEは、無線端末UEから近くに位置する無線基地局BS2へのフィードバックを行い、無線端末UEから遠くに位置する無線基地局BS1へのフィードバックを省略することができる。伝搬路損失は、送信電力制御等の他の用途に使用され、容易に得ることができるため、選択方法5によれば既存のシステム構成を有効に活用できる。
【0083】
(4)アンテナ選択処理
次に、無線基地局BS1の複数のアンテナ211の中から、無線信号RS1の送信に用いる1本の送信アンテナを選択する処理であるアンテナ選択処理について説明する。
【0084】
まず、無線基地局BS1は、全てのアンテナ211を用いて無線信号RS1を送信する。次に、無線端末UEは、無線信号RS1の受信品質(SNR等)又は伝搬路特性を無線基地局BS1の送信アンテナ(アンテナ211)毎に測定する。
【0085】
無線端末UE又は無線基地局BS1は、測定された受信品質又は測定された伝搬路特性が最も良好な1本の送信アンテナを選択する。そして、無線基地局BS1は、選択された1本の送信アンテナを用いて無線信号RS1を無線端末UEに送信する。これにより、通信品質の向上を図ることができる。
【0086】
なお、測定された受信品質又は測定された伝搬路特性が最も良好な1本の送信アンテナを選択する処理は、制御装置11等が実行してもよい。
【0087】
また、アンテナ選択処理は、所定の時間間隔で実行してもよい。この場合には無線基地局BS1の送信アンテナを選択する度に無線基地局BS1へのフィードバックが発生するが、最適なアンテナを選択することにより通信品質のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0088】
(5)無線通信システムの動作
次に、図7を参照して、第1実施形態に係る無線通信システム1の動作について説明する。
【0089】
基地局間協調MIMO通信が開始されると、ステップS11において、上記の(3)基地局選択処理で説明した処理により、フィードバックが省略される無線基地局BS1が選択される。フィードバックが省略される無線基地局BS1を無線端末UE以外の装置(無線基地局BS1、無線基地局BS2、制御装置11)が選択した場合には、当該装置は、無線基地局BS1への伝播路情報1のフィードバックを省略するよう無線端末UEに指示する。
【0090】
ステップS12において、上記の(4)アンテナ選択処理で説明した処理により、無線基地局BS1の複数のアンテナ211の中から、無線信号RS1の送信に用いる1本の送信アンテナが選択される。そして、無線基地局BS1は、選択された1本の送信アンテナを用いて無線信号RS1を送信する。無線基地局BS2は、1本又は複数本のアンテナ311を用いて無線信号RS2を送信する。無線端末UEの受信部121は、無線基地局BS1から無線信号RS1を受信するとともに、無線基地局BS2から無線信号RS2を受信する。
【0091】
ステップS13において、無線端末UEの伝搬路情報生成部131は、伝播路情報1及び伝播路情報2を生成する。その際、正規化部132は、上記の(2)正規化処理で説明した処理により、伝播路情報1を基準として伝播路情報2を正規化する。
【0092】
ステップS14において、無線端末UEの送信部122は、無線基地局BS1への伝播路情報1のフィードバックを省略するとともに、正規化部132によって正規化された伝播路情報2を無線基地局BS2へフィードバックする。無線基地局BS2の受信部321は、正規化された伝播路情報2を受信する。無線基地局BS2のウェイト制御部331は、受信部321が受信した伝播路情報2に応じた送信アンテナウェイト2を送信部322に通知する。
【0093】
ステップS15において、無線基地局BS2の送信部322は、ウェイト制御部331から通知された送信アンテナウェイト2を用いて送信信号を重み付け(プリコーディング)し、重み付けされた送信信号を含む無線信号RS2を送信する。また、無線基地局BS1の送信部222は、1本の送信アンテナを用いて、送信信号を含む無線信号RS1を一定送信する。
【0094】
(6)第1実施形態の効果
無線基地局BS1が送信アンテナを1本用いて無線信号RS1を送信する場合、無線端末UEは、無線基地局BS1へのフィードバックを省略する。これにより、フィードバックに伴うオーバヘッドを低減できる。すなわち、無線端末UEが無線基地局BS2との間にのみフィードバック用の制御チャネルを設定すればよいため、アップリンクにおける無線リソースの消費量が削減される。
【0095】
第1実施形態では、無線端末UEは、伝播路情報1を基準として伝播路情報2を正規化し、正規化された伝播路情報2を無線基地局BS2にフィードバックする。これにより、無線基地局BS2は、伝播路情報1との相対関係が維持された伝播路情報2に応じて無線信号RS2を送信するため、無線基地局BS1へのフィードバックが省略される場合であっても、基地局間協調MIMO通信を正常に機能させることができる。
【0096】
[第2実施形態]
第1実施形態においては無線端末UEが伝搬路情報の正規化を行っていたが、第2実施形態では、無線基地局BS2が伝搬路情報の正規化を行う。以下において、(1)無線通信システムの構成、(2)無線通信システムの動作、(3)第2実施形態の効果について説明する。ただし、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0097】
(1)無線通信システムの構成
図8は、第2実施形態に係る無線端末UEの構成を示すブロック図である。図9は、第2実施形態に係る無線基地局BS2の構成を示すブロック図である。
【0098】
図8に示すように、無線端末UEは、第1実施形態で説明した正規化部132を有していない。一方、図9に示すように、無線基地局BS2は、第1実施形態で説明した正規化部132と同様の機能を有する正規化部332を有している。その他の構成については、第1実施形態と同様である。
【0099】
(2)無線通信システムの動作
次に、図10を参照して、第2実施形態に係る無線通信システム1の動作について説明する。ただし、ステップS21及びS22の処理は第1実施形態と同様であるため、ステップS23以降の処理について説明する。
【0100】
ステップS23において、無線端末UEの伝搬路情報生成部131は、伝播路情報1及び伝播路情報2を生成する。そして、無線端末UEの送信部122は、無線基地局BS1への伝播路情報1のフィードバックを省略するとともに、伝搬路情報生成部131によって生成された伝播路情報1及び伝播路情報2を無線基地局BS2へフィードバックする。無線基地局BS2の受信部321は、フィードバックされた伝播路情報1及び伝播路情報2を受信する。
【0101】
ステップS24において、無線基地局BS2の正規化部332は、第1実施形態における(2)正規化処理で説明した処理と同様の処理により、伝播路情報1を基準として伝播路情報2を正規化する。無線基地局BS2のウェイト制御部331は、正規化部332によって正規化された伝播路情報2に応じた送信アンテナウェイト2を送信部322に通知する。
【0102】
ステップS25において、無線基地局BS2の送信部322は、ウェイト制御部331から通知された送信アンテナウェイト2を用いて送信信号を重み付け(プリコーディング)し、重み付けされた送信信号を含む無線信号RS2を送信する。また、無線基地局BS1の送信部222は、1本の送信アンテナを用いて、送信信号を含む無線信号RS1を一定送信する。
【0103】
(3)第2実施形態の効果
第2実施形態では、無線基地局BS1が送信アンテナを1本用いて無線信号RS1を送信する場合、無線端末UEは、無線基地局BS1へのフィードバックを省略するとともに、伝播路情報1及び伝播路情報2を無線基地局BS2にフィードバックし、無線基地局BS2は、無線端末UEからフィードバックされた伝播路情報1を基準として、無線端末UEからフィードバックされた伝播路情報2を正規化し、正規化された伝播路情報2に応じて無線信号RS2を送信する。
【0104】
これにより、無線端末UEが無線基地局BS2との間にのみフィードバック用の制御チャネルを設定すればよいため、アップリンクにおける無線リソースの消費量が削減される。また、無線基地局BS2は、伝播路情報1との相対関係が維持された伝播路情報2に応じて無線信号RS2を送信するため、無線基地局BS1へのフィードバックが省略される場合であっても、基地局間協調MIMO通信を正常に機能させることができる。
【0105】
[その他の実施形態]
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0106】
上述した実施形態では、無線基地局BS1が複数本のアンテナ211を有していたが、無線基地局BS1が元々1本のアンテナ211しか有していない場合には、アンテナ選択処理(図7のステップS12、図10のステップS22)は不要となる。
【0107】
上述した実施形態では、フィードバックされる伝搬路情報が伝搬路推定値、送信アンテナウェイト、又はそのインデックスであったが、これらに限らず、伝搬路推定値に基づいて計算される、未来の伝搬路特性を示す伝搬路予測値であってもよい。
【0108】
上述した第2実施形態においては、無線基地局BS2に伝播路情報1及び伝播路情報2がフィードバックされているため、伝播路情報1及び伝播路情報2を無線基地局BS2から無線基地局BS1に転送した上で、送信アンテナを1本とする無線基地局を無線基地局BS1から無線基地局BS2に切り替えるといったことも可能である。
【0109】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0110】
1…無線通信システム、10…バックホールネットワーク、11…制御装置、111…アンテナ、120…送受信部、121…受信部、122…送信部、130…制御部、131…伝搬路情報生成部、132…正規化部、140…記憶部、211…アンテナ、220…送受信部、221…受信部、222…送信部、230…制御部、231…ウェイト制御部、240…記憶部、250…有線通信部、311…アンテナ、320…送受信部、321…受信部、322…送信部、330…制御部、331…ウェイト制御部、332…正規化部、340…記憶部、350…有線通信部
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局間協調MIMO通信が適用される無線通信システム、無線端末及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信システムにおいて周波数利用効率を向上可能な技術の1つとして、無線信号の送信側及び受信側がそれぞれ複数本のアンテナを用い、同一の周波数及び同一の時間で複数の信号系列を伝送するMIMO(Multi-Input Multi-Output)通信が知られている。
【0003】
MIMO通信の性能を発揮させるためには、無線伝搬路の状況に応じて適応的に送信制御を行う必要がある。このため、MIMO通信が導入される無線通信システムにおいては、閉ループ制御が導入されている。具体的には、無線信号の受信側が、無線伝搬路の特性(以下、伝搬路特性)に応じた伝搬路情報を生成し、当該伝搬路情報を送信側にフィードバックする。特に、上下リンクにおける伝搬路特性の相関が無いFDD方式の無線通信システムでは、伝搬路情報のフィードバックが必須となる。
【0004】
近年では、MIMO通信を発展させた技術として、複数の無線基地局が同一の周波数及び同一の時間で1つの無線端末と通信する基地局間協調MIMO通信(“マルチセル協調送受信”とも呼ばれる)が注目されている(例えば、特許文献1参照)。基地局間協調MIMO通信によれば、複数の無線基地局それぞれのアンテナを利用することで、MIMO通信に使用可能なアンテナの本数を増大させることができ、従来のMIMO通信よりも伝送速度の向上や受信品質の改善を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−523665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、基地局間協調MIMO通信において閉ループ制御を行う場合には、無線端末から複数の無線基地局それぞれにフィードバックを行うことになり、従来のMIMO通信と比較して、フィードバックに伴うオーバヘッドが大きくなる。すなわち、無線端末と複数の無線基地局それぞれとの間にフィードバック用の制御チャネルを設定することで、アップリンクにおける無線リソースの消費量が大きくなってしまう。
【0007】
あるいは、複数の無線基地局のうち一の無線基地局との間にのみフィードバック用の制御チャネルを設定し、基地局間通信を利用して当該一の無線基地局から他の無線基地局へフィードバックを転送することで、フィードバックに伴うオーバヘッドを低減できる。しかし、一の無線基地局から他の無線基地局へフィードバックを転送する場合には、転送遅延の影響によりフィードバックが間に合わなくなり、基地局間協調MIMO通信が正常に機能しないおそれがある。
【0008】
そこで、本発明は、基地局間協調MIMO通信を正常に機能させつつ、フィードバックに伴うオーバヘッドを低減できる無線通信システム、無線端末及び無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、無線端末(無線端末UE)と、前記無線端末からのフィードバックに応じて第1無線信号(無線信号RS1)を前記無線端末に送信する第1無線基地局(無線基地局BS1)と、前記無線端末からのフィードバックに応じて、前記第1無線信号と同一の周波数及び同一の時間で第2無線信号(無線信号RS2)を前記無線端末に送信する第2無線基地局(無線基地局BS2)とを有する無線通信システム(無線通信システム1)であって、前記第1無線基地局において前記第1無線信号の送信に用いる送信アンテナが1本である場合、前記無線端末は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略することを要旨とする。
【0010】
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記送信アンテナが1本である場合、前記無線端末は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略するとともに、前記第1無線基地局から前記無線端末までの伝搬路特性に応じた第1伝搬路情報(伝播路情報1)と、前記第2無線基地局から前記無線端末までの伝搬路特性に応じた第2伝搬路情報(伝播路情報2)とに基づくフィードバックを前記第2無線基地局に対して行うことを要旨とする。
【0011】
本発明の第3の特徴は、本発明の第2の特徴に係り、前記送信アンテナが1本である場合、前記無線端末は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略するとともに、前記第1伝搬路情報を基準として前記第2伝搬路情報を正規化し、前記正規化された第2伝搬路情報を前記第2無線基地局にフィードバックすることを要旨とする。
【0012】
本発明の第4の特徴は、本発明の第2の特徴に係り、前記送信アンテナが1本である場合、前記無線端末は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略するとともに、前記第1伝搬路情報及び前記第2伝搬路情報を前記第2無線基地局にフィードバックし、前記第2無線基地局は、前記無線端末からフィードバックされた前記第1伝搬路情報を基準として、前記無線端末からフィードバックされた前記第2伝搬路情報を正規化し、前記正規化された第2伝搬路情報に応じて前記第2無線信号を送信することを要旨とする。
【0013】
本発明の第5の特徴は、本発明の第2〜第4の何れかの特徴に係り、前記第1伝搬路情報は、前記第1無線基地局の送信アンテナと前記無線端末の受信アンテナとの間の伝搬路特性を示す情報であり、前記第2伝搬路情報は、前記第2無線基地局の送信アンテナと前記無線端末の受信アンテナとの間の伝搬路特性を示す情報であることを要旨とする。
【0014】
本発明の第6の特徴は、本発明の第2〜第4の何れかの特徴に係り、前記第1伝搬路情報は、前記第1無線信号の位相又は振幅の少なくとも一方の制御に用いられる第1送信アンテナウェイト(送信アンテナウェイト1)、又は、前記第1送信アンテナウェイトを示すインデックスであり、前記第2伝搬路情報は、前記第2無線信号の位相又は振幅の少なくとも一方の制御に用いられる第2送信アンテナウェイト(送信アンテナウェイト2)、又は、前記第2送信アンテナウェイトを示すインデックスであることを要旨とする。
【0015】
本発明の第7の特徴は、本発明の第1〜第6の何れかの特徴に係り、前記無線端末は、前記第1無線信号の受信品質又は伝搬路特性を前記第1無線基地局の送信アンテナ毎に測定し、前記第1無線基地局は、前記測定された受信品質又は前記測定された伝搬路特性に応じて選択される1本の前記送信アンテナを用いて、前記第1無線信号を前記無線端末に送信することを要旨とする。
【0016】
本発明の第8の特徴は、本発明の第1〜第7の何れかの特徴に係り、前記無線端末からのフィードバックが省略される前記第1無線基地局は、前記第2無線基地局よりも、前記無線端末から遠くに位置する無線基地局であることを要旨とする。
【0017】
本発明の第9の特徴は、本発明の第1〜第7の何れかの特徴に係り、前記無線端末からのフィードバックが省略される前記第1無線基地局は、前記第2無線基地局よりも処理性能が高い無線基地局であることを要旨とする。
【0018】
本発明の第10の特徴は、本発明の第1〜第7の何れかの特徴に係り、前記無線端末からのフィードバックが省略される前記第1無線基地局は、前記第2無線基地局よりも処理性能が低い無線基地局であることを要旨とする。
【0019】
本発明の第11の特徴は、本発明の第1〜第7の何れかの特徴に係り、前記無線端末からのフィードバックが省略される前記第1無線基地局は、前記第2無線基地局よりも、前記無線端末との間の伝搬路変動が小さい無線基地局であることを要旨とする。
【0020】
本発明の第12の特徴は、本発明の第1〜第7の何れかの特徴に係り、前記無線端末からのフィードバックが省略される前記第1無線基地局は、前記第2無線基地局よりも、前記無線端末との間の伝搬路損失が大きい無線基地局であることを要旨とする。
【0021】
本発明の第13の特徴は、第1無線基地局(無線基地局BS1)から第1無線信号(無線信号RS1)を受信し、前記第1無線信号と同一の周波数及び同一の時間で第2無線信号(無線信号RS2)を第2無線基地局(無線基地局BS2)から受信する無線端末(無線端末UE)であって、前記第1無線基地局及び前記第2無線基地局へのフィードバックを送信する送信部(送信部122)を有し、前記第1無線基地局において前記第1無線信号の送信に用いる送信アンテナが1本である場合、前記送信部は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略することを要旨とする。
【0022】
本発明の第14の特徴は、無線端末(無線端末UE)からのフィードバックに応じて第1無線信号(無線信号RS1)を前記無線端末に送信する第1無線基地局(無線基地局BS1)と、前記無線端末からのフィードバックに応じて、前記第1無線信号と同一の周波数及び同一の時間で第2無線信号(無線信号RS2)を前記無線端末に送信する第2無線基地局(無線基地局BS2)とを有する無線通信システムであって、前記第1無線基地局において前記第1無線信号の送信に用いる送信アンテナが1本である場合、前記第1無線基地局又は前記第2無線基地局は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略するよう前記無線端末に指示することを要旨とする。
【0023】
本発明の第15の特徴は、無線端末(無線端末UE)からのフィードバックに応じて第1無線基地局(無線基地局BS1)が第1無線信号を前記無線端末に送信するステップと、前記無線端末からのフィードバックに応じて、前記第1無線信号と同一の周波数及び同一の時間で第2無線基地局(無線基地局BS2)が第2無線信号を前記無線端末に送信するステップと、前記第1無線基地局において前記第1無線信号の送信に用いる送信アンテナが1本である場合、前記無線端末が、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略するステップとを有する無線通信方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の特徴によれば、基地局間協調MIMO通信を正常に機能させつつ、フィードバックに伴うオーバヘッドを低減できる無線通信システム、無線端末及び無線通信方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る無線通信システムの概略構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る無線端末の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る無線基地局(第1無線基地局)の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る無線基地局(第2無線基地局)の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る正規化部によって実行される正規化処理について説明するための図である(その1)。
【図6】本発明の第1実施形態に係る正規化部によって実行される正規化処理について説明するための図である(その2)。
【図7】本発明の第1実施形態に係る無線通信システムの動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第2実施形態に係る無線端末の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る無線基地局(第2無線基地局)の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る無線通信システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、図面を参照して、本発明の第1実施形態、第2実施形態、その他の実施形態を説明する。以下の実施形態における図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。
【0027】
[第1実施形態]
第1実施形態においては、(1)無線通信システムの構成、(2)正規化処理、(3)基地局選択処理、(4)アンテナ選択処理、(5)無線通信システムの動作、(6)第1実施形態の効果について説明する。
【0028】
(1)無線通信システムの構成
まず、(1.1)全体概略構成、(1.2)無線端末UEの構成、(1.3)無線基地局BS1の構成、(1.4)無線基地局BS2の構成について説明する。
【0029】
(1.1)全体概略構成
図1は、基地局間協調MIMO通信(マルチセル協調送受信)が導入された無線通信システム1の概略構成図である。
【0030】
無線通信システム1は、例えば第4世代(4G)携帯電話システムとして位置づけられているLTE-Advancedに基づく構成を有している。無線通信システム1には、複信方式としてFDD(Frequency Division Duplex)方式が採用されている。以下においては、主にダウンリンクにおける基地局間協調MIMO通信について説明する。
【0031】
図1に示すように、無線通信システム1は、無線基地局BS1(第1無線基地局)、無線基地局BS2(第2無線基地局)、無線端末UE、及び制御装置11を有する。無線端末UEは、無線基地局BS1によって形成されるセルC1と、無線基地局BS2によって形成されるセルC2との重複部分に位置している。
【0032】
無線基地局BS1及び無線基地局BS2は、マクロセル基地局であってもよく、フェムトセル基地局であってもよい。フェムトセル基地局とは、主に屋内に設置される小型の無線基地局である。
【0033】
無線基地局BS1及び無線基地局BS2は、有線通信網であるバックホールネットワーク10を介して互いに接続されている。制御装置11は、バックホールネットワーク10に設けられ、バックホールネットワーク10を介して無線基地局BS1及び無線基地局BS2を制御する。ただし、無線基地局BS1及び無線基地局BS2は、制御装置11を介さずに、直接的に基地局間通信を行うことができる。
【0034】
無線通信システム1における基地局間協調MIMO通信には、閉ループ制御が導入されている。
【0035】
無線基地局BS1は、無線端末UEからのフィードバックに応じて無線信号RS1(第1無線信号)を無線端末UEに送信する。無線基地局BS2は、無線端末UEからのフィードバックに応じて、無線信号RS1と同一の周波数及び同一の時間で無線信号RS2(第2無線信号)を無線端末UEに送信する。
【0036】
無線基地局BS1は、無線端末UEからのフィードバックに応じて送信信号の重み付け処理(“プリコーディング”と呼ばれる)を行い、重み付け後の送信信号を含む無線信号RS1を送信する。当該重み付け処理により、送信信号(無線信号RS1)の位相や振幅が無線基地局BS1の送信アンテナ毎に制御される。
【0037】
同様に、無線基地局BS2は、無線端末UEからのフィードバックに応じて送信信号の重み付け処理を行い、重み付け後の送信信号に対応する無線信号RS2を送信する。当該重み付け処理により、送信信号(無線信号RS2)の位相や振幅が無線基地局BS2の送信アンテナ毎に制御される。
【0038】
ここで、無線基地局BS1が送信する無線信号RS1に含まれる送信信号系列(“ストリーム”とも呼ばれる)と、無線基地局BS2が送信する無線信号RS2に含まれる送信信号系列とは、同じものであっても、異なるものであってもよい。
【0039】
無線信号RS1に含まれる送信信号系列と無線信号RS2に含まれる送信信号系列とが同じである場合(シングルストリーム伝送時)には、ダイバーシチ効果により受信品質が改善される。図1に示すように、無線端末UEが無線基地局BS1及び無線基地局BS2のセル端に位置しているようなケースでは、シングルストリーム伝送により受信品質を改善させることが好ましい。
【0040】
無線信号RS1に含まれる送信信号系列と無線信号RS2に含まれる送信信号系列とが異なる場合(マルチストリーム伝送時)には伝送速度が向上する。無線基地局BS1又は無線基地局BS2が例えばフェムトセル基地局であり、無線端末UEが無線基地局BS1及び無線基地局BS2の近くに位置しているようなケースでは、マルチストリーム伝送により伝送速度を向上させることが好ましい。
【0041】
無線基地局BS1が無線信号RS1の送信に用いる送信アンテナが1本である場合、無線端末UEは、無線基地局BS1へのフィードバックを省略する。以下においては、無線基地局BS1に対するフィードバックが省略される場合について説明するが、フィードバックが省略される無線基地局は選択可能である。フィードバックが省略される無線基地局の選択方法については後述する。
【0042】
無線端末UEは、無線基地局BS1へのフィードバックを省略するとともに、無線基地局BS1から無線端末UEまでの伝搬路特性に応じた伝播路情報1(第1伝搬路情報)と、無線基地局BS2から無線端末UEまでの伝搬路特性に応じた伝播路情報2(第2伝搬路情報)とに基づくフィードバックを無線基地局BS2に対して行う。伝搬路特性とは、無線信号が無線伝搬路を通過する際に受ける減衰量、位相回転量、遅延量等のパラメータを意味する。
【0043】
(1.2)無線端末UEの構成
図2は、無線端末UEの構成を示すブロック図である。
【0044】
なお、以下においては、本発明との関連がある部分について主に説明する。したがって、無線端末UEは、図示しない或いは説明を省略した構成(電源部など)を備える場合があることに留意されたい。
【0045】
図2に示すように、無線端末UEは、複数本のアンテナ111、送受信部120、制御部130、及び記憶部140を有する。図2の例では無線端末UEが複数本のアンテナ111を有しているが、必ずしも複数本である必要はなく、1本のアンテナ111のみであってもよい。
【0046】
送受信部120は、例えば無線周波数(RF)回路やベースバンド(BB)回路等を用いて構成される。制御部130は、例えばCPUを用いて構成され、無線端末UEが具備する各種の機能を制御する。記憶部140は、例えばメモリを用いて構成され、無線端末UEの制御等に用いられる各種の情報を記憶する。
【0047】
送受信部120は、受信部121及び送信部122を有する。制御部130は、伝搬路情報生成部131及び正規化部132を有する。
【0048】
受信部121は、無線基地局BS1から無線信号RS1を受信するとともに、無線基地局BS2から無線信号RS2を受信する。なお、シングルストリーム伝送時等には、受信部121は、無線信号RS1及び無線信号RS2を同位相で受信することが好ましい。
【0049】
伝搬路情報生成部131は、受信部121が受信した無線信号RS1に含まれる参照信号(パイロット信号)等を用いて、無線基地局BS1の各送信アンテナと無線端末UEの各受信アンテナとの間の伝搬路特性を示す伝搬路推定値(以下、伝搬路推定値1)を算出する処理(いわゆる、チャネル推定)を行う。
【0050】
伝搬路情報生成部131は、受信部121が受信した無線信号RS2に含まれる参照信号(パイロット信号)等を用いて、無線基地局BS2の各送信アンテナと無線端末UEの各受信アンテナとの間の伝搬路特性を示す伝搬路推定値(以下、伝搬路推定値2)を算出する処理を行う。
【0051】
伝搬路情報生成部131は、伝搬路推定値1に基づいて、無線基地局BS1にフィードバックする情報である伝播路情報1を生成する。伝搬路推定値1を伝播路情報1とする場合に限らず、伝播路情報1が、無線基地局BS1における重み付け処理(すなわち、無線信号RS1の位相又は振幅の少なくとも一方の制御)に用いられる送信アンテナウェイト1、又は、当該送信アンテナウェイト1を示すインデックス(“PMI(Pre-coding Matrix Index)”と呼ばれる)であってもよい。
【0052】
伝搬路情報生成部131は、伝搬路推定値2に基づいて、無線基地局BS2にフィードバックする情報である伝播路情報2を生成する。伝搬路推定値2を伝播路情報2とする場合に限らず、伝播路情報2が、無線基地局BS2における重み付け処理(すなわち、無線信号RS2の位相又は振幅の少なくとも一方の制御)に用いられる送信アンテナウェイト2、又は、当該送信アンテナウェイト2を示すインデックスであってもよい。
【0053】
正規化部132は、無線基地局BS1が無線信号RS1の送信に用いる送信アンテナが1本である場合に、伝播路情報1を基準として伝播路情報2を正規化する。正規化処理の詳細については後述する。
【0054】
送信部122は、無線基地局BS1及び無線基地局BS2へのフィードバックを送信する。無線基地局BS1が無線信号RS1の送信に用いる送信アンテナが1本である場合、送信部122は、無線基地局BS1への伝播路情報1のフィードバックを省略するとともに、正規化部132によって正規化された伝播路情報2を無線基地局BS2へフィードバックする。
【0055】
なお、無線基地局BS1が送信アンテナを複数本用いて無線信号RS1を送信する場合、送信部122は、伝播路情報1を無線基地局BS1へフィードバックし、伝播路情報2を無線基地局BS2へフィードバックしてもよい。
【0056】
(1.3)無線基地局BS1の構成
図3は、無線基地局BS1の構成を示すブロック図である。
【0057】
図3に示すように、無線基地局BS1は、複数本のアンテナ211、送受信部220、制御部230、記憶部240、及び有線通信部250を有する。図3の例では無線基地局BS1が複数本のアンテナ211を有しているが、必ずしも複数本である必要はなく、1本のアンテナ211のみであってもよい。
【0058】
送受信部220は、例えばRF回路やBB回路等を用いて構成される。制御部230は、例えばCPUを用いて構成され、無線基地局BS1が具備する各種の機能を制御する。記憶部240は、例えばメモリを用いて構成され、無線基地局BS1の制御等に用いられる各種の情報を記憶する。有線通信部250は、バックホールネットワーク10を介して無線基地局BS2及び制御装置11と通信する。
【0059】
送受信部220は、受信部221及び送信部222を有する。制御部230は、ウェイト制御部231を有する。
【0060】
受信部221は、無線端末UEから伝播路情報1がフィードバックされる場合に、当該フィードバックされる伝播路情報1を受信する。
【0061】
ウェイト制御部231は、無線信号RS1の送信に用いられる送信アンテナウェイト1を制御する。受信部221が伝播路情報1を受信した場合、ウェイト制御部231は、当該伝播路情報1に応じた送信アンテナウェイト1を送信部222に通知する。受信部221が伝播路情報1を受信しない場合、すなわち伝播路情報1のフィードバックが省略されている場合、ウェイト制御部231は、送信アンテナウェイト1を送信部222に通知しない、又は、予め定められた固定の送信アンテナウェイト1を送信部222に通知する。
【0062】
送信部222は、ウェイト制御部231から通知された送信アンテナウェイト1を用いて送信信号を重み付け(プリコーディング)し、重み付けされた送信信号を含む無線信号RS1を送信する。ウェイト制御部231から送信アンテナウェイト1が通知されない場合、送信部222は、重み付けを省略して、送信信号を含む無線信号RS1を送信する。
【0063】
(1.4)無線基地局BS2の構成
図4は、無線基地局BS2の構成を示すブロック図である。
【0064】
図4に示すように、無線基地局BS2は、複数本のアンテナ311、送受信部320、制御部330、記憶部340、及び有線通信部350を有する。図4の例では無線基地局BS2が複数本のアンテナ211を有しているが、必ずしも複数本である必要はなく、1本のアンテナ211のみであってもよい。
【0065】
送受信部320は、例えばRF回路やBB回路等を用いて構成される。制御部330は、例えばCPUを用いて構成され、無線基地局BS2が具備する各種の機能を制御する。記憶部340は、例えばメモリを用いて構成され、無線基地局BS2の制御等に用いられる各種の情報を記憶する。有線通信部350は、バックホールネットワーク10を介して無線基地局BS1及び制御装置11と通信する。
【0066】
送受信部320は、受信部321及び送信部322を有する。制御部330は、ウェイト制御部331を有する。
【0067】
受信部321は、無線端末UEからフィードバックされる伝播路情報2を受信する。受信部321が受信する伝播路情報2は、正規化されている場合と正規化されていない場合とがある。
【0068】
ウェイト制御部331は、無線信号RS2の送信に用いられる送信アンテナウェイト2を制御する。ウェイト制御部331は、受信部321が受信した伝播路情報2に応じた送信アンテナウェイト2を送信部322に通知する。
【0069】
送信部322は、ウェイト制御部331から通知された送信アンテナウェイト2を用いて送信信号を重み付け(プリコーディング)し、重み付けされた送信信号を含む無線信号RS2を送信する。ウェイト制御部331から送信アンテナウェイト2が通知されない場合、送信部322は、重み付けを省略して、送信信号を含む無線信号RS2を送信する。
【0070】
(2)正規化処理
次に、図5及び図6を参照して、正規化部132によって実行される正規化処理について説明する。まず、伝播路情報1が伝搬路推定値1であり、伝播路情報2が伝搬路推定値2である場合について説明する。
【0071】
伝搬路推定値は、各アンテナ毎(送受信アンテナの組み合わせ毎)に値を持つが、それらの相対関係が維持されれば値自体を変化させても、受信側で適切に処理(信号分離等)できる。例えば、図5(a)に示す伝搬路推定値1 (a, b)及び伝搬路推定値2 (c, d)に対して、図5(b)に示すように、(a x e, b x e, c x e, d x e)のように全伝搬路推定値に定数eを乗算して変換しても、伝搬路推定値1及び伝搬路推定値2の位相の関係が維持され、同位相の関係が保たれるため、特に問題はない。
【0072】
そこで、無線基地局BS1の送信アンテナが1本である場合には、図6(a)に示すように、伝搬路推定値1(a)及び伝搬路推定値2 (b, c, d)それぞれフィードバックが必要であったものを、図6(b)に示すように、伝搬路推定値1で伝搬路推定値2を除算する。具体的には、伝搬路推定値1(a / a) = (1)及び伝搬路推定値2 (b / a, c / a, d / a)と除算により正規化することで、伝搬路推定値1を仮想的に常に(1)固定とすることができ、無線基地局BS1へのフィードバックを不要とすることができる。
【0073】
この例では、伝搬路推定値1で伝搬路推定値2を除算する正規化を行っているが、伝搬路推定値1及び伝搬路推定値2の相対関係が維持される計算方法であれば他の正規化方法であってもよく、例えば伝搬路推定値2から伝搬路推定値1を減算することで正規化してもよい。
【0074】
また、伝播路情報1が送信アンテナウェイト1又はそのインデックスであり、伝播路情報2が送信アンテナウェイト2又はそのインデックスである場合には、上記の処理に加え、例えば、送信アンテナウェイト2の候補(“コードブック”と呼ばれる)の中から、正規化された伝搬路推定値2に対応する送信アンテナウェイト2を選択し、選択された送信アンテナウェイト2又はそのインデックスが無線基地局BS2にフィードバックされる。
【0075】
あるいは、送信アンテナウェイト2のインデックス(ここでは、“PMI”と称する)のリスト(コードブック)の中から最適なPMIを選択するための方法として、次のような方法を採用してもよい。具体的には、伝搬路推定値1及び伝搬路推定値2に基づいて、リスト中のPMIを用いた場合の受信SNRをPMI毎に計算し、計算された各受信SNRのうちで最大の受信SNRに対応するPMIを最適なPMIとして選択する。リスト中のPMIが少ない場合には、このような方法が効果的である。当該方法を採用する場合、正規化部132は、伝搬路推定値1及び伝搬路推定値2に基づいて、無線基地局BS1が1本のアンテナで固定送信をしたと仮定した条件下で、受信SNRが最大となるPMIを無線基地局BS2にフィードバックすべきPMIとして選択(探索)する。
【0076】
(3)基地局選択処理
次に、フィードバックが省略される無線基地局(無線基地局BS1)を選択する処理である基地局選択処理について説明する。基地局選択処理は、無線端末UE、無線基地局BS1、無線基地局BS2、及び制御装置11の何れが実行してもよい。
【0077】
基地局選択処理としては、例えば次の選択方法1〜5の何れかが使用できる。ただし、選択方法1〜5の何れかを固定的に用いる場合に限らず、無線端末UE、無線基地局BS1及び無線基地局BS2の状況等に応じて、選択方法1〜5を適宜切り替えて使用してもよい。
【0078】
(選択方法1)
選択方法1においては、無線端末UEから遠くに位置する無線基地局を無線基地局BS1として選択し、無線端末UEから近くに位置する無線基地局を無線基地局BS2として選択する。これにより、無線端末UEは、無線端末UEから近くに位置する無線基地局BS2へのフィードバックを行い、無線端末UEから遠くに位置する無線基地局BS1へのフィードバックを省略することになり、フィードバック用の送信電力を低減でき、与干渉量を低減できる。無線端末UEの電池残量が少ない場合等には選択方法1が好ましい。なお、選択方法1においては、無線端末UEと無線基地局BS1との間の距離、及び無線端末UEと無線基地局BS2との間の距離の情報が必要となるが、無線端末UEに設けられるGPS等を利用して距離の情報を得ることができる。
【0079】
(選択方法2)
選択方法2においては、処理性能が高い無線基地局(具体的には、マクロセル基地局)を無線基地局BS1として選択し、処理性能が低い無線基地局(具体的には、フェムトセル基地局)を無線基地局BS2として選択する。通常、フェムトセル基地局は、無線端末UEの近くに存在するため、無線端末UEは、無線端末UEから近くに位置する無線基地局BS2へのフィードバックを行い、無線端末UEから遠くに位置する無線基地局BS1へのフィードバックを省略することができる。例えば無線端末UEにGPS等が設けられていない場合には、選択方法2が有効である。
【0080】
(選択方法3)
選択方法3においては、処理性能が低い無線基地局(具体的には、フェムトセル基地局)を無線基地局BS1として選択し、処理性能が高い無線基地局(具体的には、マクロセル基地局)を無線基地局BS2として選択する。処理性能が低い無線基地局に1本アンテナの一定送信を実行させ、処理性能が高い無線基地局にマルチアンテナのマルチストリーム送信をさせることで、高速な伝送速度を得ることができるため、選択方法3は、高速な伝送速度が要求される場合や、無線端末UEの電池残量が多い場合に有効である。
【0081】
(選択方法4)
選択方法4においては、無線端末UEとの間の伝搬路変動が小さい無線基地局を無線基地局BS1として選択し、無線端末UEとの間の伝搬路変動が大きい無線基地局を無線基地局BS2として選択する。これは、無線基地局BS1は1本アンテナの一定送信となるため、伝搬路変動が小さいことが好ましいからである。各無線基地局との間の伝搬路変動に大きな差がある場合には、選択方法4が有効である。
【0082】
(選択方法5)
選択方法5においては、無線端末UEとの間の伝搬路損失が大きい無線基地局を無線基地局BS1として選択し、無線端末UEとの間の伝搬路損失が小さい無線基地局を無線基地局BS2として選択する。伝搬路損失は、無線基地局における送信電力と、無線端末UEにおける受信電力との差として計算され、端末・基地局間の距離を反映している。このため、無線端末UEは、無線端末UEから近くに位置する無線基地局BS2へのフィードバックを行い、無線端末UEから遠くに位置する無線基地局BS1へのフィードバックを省略することができる。伝搬路損失は、送信電力制御等の他の用途に使用され、容易に得ることができるため、選択方法5によれば既存のシステム構成を有効に活用できる。
【0083】
(4)アンテナ選択処理
次に、無線基地局BS1の複数のアンテナ211の中から、無線信号RS1の送信に用いる1本の送信アンテナを選択する処理であるアンテナ選択処理について説明する。
【0084】
まず、無線基地局BS1は、全てのアンテナ211を用いて無線信号RS1を送信する。次に、無線端末UEは、無線信号RS1の受信品質(SNR等)又は伝搬路特性を無線基地局BS1の送信アンテナ(アンテナ211)毎に測定する。
【0085】
無線端末UE又は無線基地局BS1は、測定された受信品質又は測定された伝搬路特性が最も良好な1本の送信アンテナを選択する。そして、無線基地局BS1は、選択された1本の送信アンテナを用いて無線信号RS1を無線端末UEに送信する。これにより、通信品質の向上を図ることができる。
【0086】
なお、測定された受信品質又は測定された伝搬路特性が最も良好な1本の送信アンテナを選択する処理は、制御装置11等が実行してもよい。
【0087】
また、アンテナ選択処理は、所定の時間間隔で実行してもよい。この場合には無線基地局BS1の送信アンテナを選択する度に無線基地局BS1へのフィードバックが発生するが、最適なアンテナを選択することにより通信品質のさらなる向上を図ることが可能となる。
【0088】
(5)無線通信システムの動作
次に、図7を参照して、第1実施形態に係る無線通信システム1の動作について説明する。
【0089】
基地局間協調MIMO通信が開始されると、ステップS11において、上記の(3)基地局選択処理で説明した処理により、フィードバックが省略される無線基地局BS1が選択される。フィードバックが省略される無線基地局BS1を無線端末UE以外の装置(無線基地局BS1、無線基地局BS2、制御装置11)が選択した場合には、当該装置は、無線基地局BS1への伝播路情報1のフィードバックを省略するよう無線端末UEに指示する。
【0090】
ステップS12において、上記の(4)アンテナ選択処理で説明した処理により、無線基地局BS1の複数のアンテナ211の中から、無線信号RS1の送信に用いる1本の送信アンテナが選択される。そして、無線基地局BS1は、選択された1本の送信アンテナを用いて無線信号RS1を送信する。無線基地局BS2は、1本又は複数本のアンテナ311を用いて無線信号RS2を送信する。無線端末UEの受信部121は、無線基地局BS1から無線信号RS1を受信するとともに、無線基地局BS2から無線信号RS2を受信する。
【0091】
ステップS13において、無線端末UEの伝搬路情報生成部131は、伝播路情報1及び伝播路情報2を生成する。その際、正規化部132は、上記の(2)正規化処理で説明した処理により、伝播路情報1を基準として伝播路情報2を正規化する。
【0092】
ステップS14において、無線端末UEの送信部122は、無線基地局BS1への伝播路情報1のフィードバックを省略するとともに、正規化部132によって正規化された伝播路情報2を無線基地局BS2へフィードバックする。無線基地局BS2の受信部321は、正規化された伝播路情報2を受信する。無線基地局BS2のウェイト制御部331は、受信部321が受信した伝播路情報2に応じた送信アンテナウェイト2を送信部322に通知する。
【0093】
ステップS15において、無線基地局BS2の送信部322は、ウェイト制御部331から通知された送信アンテナウェイト2を用いて送信信号を重み付け(プリコーディング)し、重み付けされた送信信号を含む無線信号RS2を送信する。また、無線基地局BS1の送信部222は、1本の送信アンテナを用いて、送信信号を含む無線信号RS1を一定送信する。
【0094】
(6)第1実施形態の効果
無線基地局BS1が送信アンテナを1本用いて無線信号RS1を送信する場合、無線端末UEは、無線基地局BS1へのフィードバックを省略する。これにより、フィードバックに伴うオーバヘッドを低減できる。すなわち、無線端末UEが無線基地局BS2との間にのみフィードバック用の制御チャネルを設定すればよいため、アップリンクにおける無線リソースの消費量が削減される。
【0095】
第1実施形態では、無線端末UEは、伝播路情報1を基準として伝播路情報2を正規化し、正規化された伝播路情報2を無線基地局BS2にフィードバックする。これにより、無線基地局BS2は、伝播路情報1との相対関係が維持された伝播路情報2に応じて無線信号RS2を送信するため、無線基地局BS1へのフィードバックが省略される場合であっても、基地局間協調MIMO通信を正常に機能させることができる。
【0096】
[第2実施形態]
第1実施形態においては無線端末UEが伝搬路情報の正規化を行っていたが、第2実施形態では、無線基地局BS2が伝搬路情報の正規化を行う。以下において、(1)無線通信システムの構成、(2)無線通信システムの動作、(3)第2実施形態の効果について説明する。ただし、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0097】
(1)無線通信システムの構成
図8は、第2実施形態に係る無線端末UEの構成を示すブロック図である。図9は、第2実施形態に係る無線基地局BS2の構成を示すブロック図である。
【0098】
図8に示すように、無線端末UEは、第1実施形態で説明した正規化部132を有していない。一方、図9に示すように、無線基地局BS2は、第1実施形態で説明した正規化部132と同様の機能を有する正規化部332を有している。その他の構成については、第1実施形態と同様である。
【0099】
(2)無線通信システムの動作
次に、図10を参照して、第2実施形態に係る無線通信システム1の動作について説明する。ただし、ステップS21及びS22の処理は第1実施形態と同様であるため、ステップS23以降の処理について説明する。
【0100】
ステップS23において、無線端末UEの伝搬路情報生成部131は、伝播路情報1及び伝播路情報2を生成する。そして、無線端末UEの送信部122は、無線基地局BS1への伝播路情報1のフィードバックを省略するとともに、伝搬路情報生成部131によって生成された伝播路情報1及び伝播路情報2を無線基地局BS2へフィードバックする。無線基地局BS2の受信部321は、フィードバックされた伝播路情報1及び伝播路情報2を受信する。
【0101】
ステップS24において、無線基地局BS2の正規化部332は、第1実施形態における(2)正規化処理で説明した処理と同様の処理により、伝播路情報1を基準として伝播路情報2を正規化する。無線基地局BS2のウェイト制御部331は、正規化部332によって正規化された伝播路情報2に応じた送信アンテナウェイト2を送信部322に通知する。
【0102】
ステップS25において、無線基地局BS2の送信部322は、ウェイト制御部331から通知された送信アンテナウェイト2を用いて送信信号を重み付け(プリコーディング)し、重み付けされた送信信号を含む無線信号RS2を送信する。また、無線基地局BS1の送信部222は、1本の送信アンテナを用いて、送信信号を含む無線信号RS1を一定送信する。
【0103】
(3)第2実施形態の効果
第2実施形態では、無線基地局BS1が送信アンテナを1本用いて無線信号RS1を送信する場合、無線端末UEは、無線基地局BS1へのフィードバックを省略するとともに、伝播路情報1及び伝播路情報2を無線基地局BS2にフィードバックし、無線基地局BS2は、無線端末UEからフィードバックされた伝播路情報1を基準として、無線端末UEからフィードバックされた伝播路情報2を正規化し、正規化された伝播路情報2に応じて無線信号RS2を送信する。
【0104】
これにより、無線端末UEが無線基地局BS2との間にのみフィードバック用の制御チャネルを設定すればよいため、アップリンクにおける無線リソースの消費量が削減される。また、無線基地局BS2は、伝播路情報1との相対関係が維持された伝播路情報2に応じて無線信号RS2を送信するため、無線基地局BS1へのフィードバックが省略される場合であっても、基地局間協調MIMO通信を正常に機能させることができる。
【0105】
[その他の実施形態]
上記のように、本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなる。
【0106】
上述した実施形態では、無線基地局BS1が複数本のアンテナ211を有していたが、無線基地局BS1が元々1本のアンテナ211しか有していない場合には、アンテナ選択処理(図7のステップS12、図10のステップS22)は不要となる。
【0107】
上述した実施形態では、フィードバックされる伝搬路情報が伝搬路推定値、送信アンテナウェイト、又はそのインデックスであったが、これらに限らず、伝搬路推定値に基づいて計算される、未来の伝搬路特性を示す伝搬路予測値であってもよい。
【0108】
上述した第2実施形態においては、無線基地局BS2に伝播路情報1及び伝播路情報2がフィードバックされているため、伝播路情報1及び伝播路情報2を無線基地局BS2から無線基地局BS1に転送した上で、送信アンテナを1本とする無線基地局を無線基地局BS1から無線基地局BS2に切り替えるといったことも可能である。
【0109】
このように本発明は、ここでは記載していない様々な実施形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0110】
1…無線通信システム、10…バックホールネットワーク、11…制御装置、111…アンテナ、120…送受信部、121…受信部、122…送信部、130…制御部、131…伝搬路情報生成部、132…正規化部、140…記憶部、211…アンテナ、220…送受信部、221…受信部、222…送信部、230…制御部、231…ウェイト制御部、240…記憶部、250…有線通信部、311…アンテナ、320…送受信部、321…受信部、322…送信部、330…制御部、331…ウェイト制御部、332…正規化部、340…記憶部、350…有線通信部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線端末と、
前記無線端末からのフィードバックに応じて第1無線信号を前記無線端末に送信する第1無線基地局と、
前記無線端末からのフィードバックに応じて、前記第1無線信号と同一の周波数及び同一の時間で第2無線信号を前記無線端末に送信する第2無線基地局と
を有する無線通信システムであって、
前記第1無線基地局において前記第1無線信号の送信に用いる送信アンテナが1本である場合、前記無線端末は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略する無線通信システム。
【請求項2】
前記送信アンテナが1本である場合、前記無線端末は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略するとともに、前記第1無線基地局から前記無線端末までの伝搬路特性に応じた第1伝搬路情報と、前記第2無線基地局から前記無線端末までの伝搬路特性に応じた第2伝搬路情報とに基づくフィードバックを前記第2無線基地局に対して行う請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記送信アンテナが1本である場合、前記無線端末は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略するとともに、前記第1伝搬路情報を基準として前記第2伝搬路情報を正規化し、前記正規化された第2伝搬路情報を前記第2無線基地局にフィードバックする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記送信アンテナが1本である場合、前記無線端末は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略するとともに、前記第1伝搬路情報及び前記第2伝搬路情報を前記第2無線基地局にフィードバックし、
前記第2無線基地局は、前記無線端末からフィードバックされた前記第1伝搬路情報を基準として、前記無線端末からフィードバックされた前記第2伝搬路情報を正規化し、前記正規化された第2伝搬路情報に応じて前記第2無線信号を送信する請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記第1伝搬路情報は、前記第1無線基地局の送信アンテナと前記無線端末の受信アンテナとの間の伝搬路特性を示す情報であり、
前記第2伝搬路情報は、前記第2無線基地局の送信アンテナと前記無線端末の受信アンテナとの間の伝搬路特性を示す情報である請求項2〜4の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記第1伝搬路情報は、前記第1無線信号の位相又は振幅の少なくとも一方の制御に用いられる第1送信アンテナウェイト、又は、前記第1送信アンテナウェイトを示すインデックスであり、
前記第2伝搬路情報は、前記第2無線信号の位相又は振幅の少なくとも一方の制御に用いられる第2送信アンテナウェイト、又は、前記第2送信アンテナウェイトを示すインデックスである請求項2〜4の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記無線端末は、前記第1無線信号の受信品質又は伝搬路特性を前記第1無線基地局の送信アンテナ毎に測定し、
前記第1無線基地局は、前記測定された受信品質又は前記測定された伝搬路特性に応じて選択される1本の前記送信アンテナを用いて、前記第1無線信号を前記無線端末に送信する請求項1〜6の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記無線端末からのフィードバックが省略される前記第1無線基地局は、前記第2無線基地局よりも、前記無線端末から遠くに位置する無線基地局である請求項1〜7の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項9】
前記無線端末からのフィードバックが省略される前記第1無線基地局は、前記第2無線基地局よりも処理性能が高い無線基地局である請求項1〜7の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項10】
前記無線端末からのフィードバックが省略される前記第1無線基地局は、前記第2無線基地局よりも処理性能が低い無線基地局である請求項1〜7の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項11】
前記無線端末からのフィードバックが省略される前記第1無線基地局は、前記第2無線基地局よりも、前記無線端末との間の伝搬路変動が小さい無線基地局である請求項1〜7の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項12】
前記無線端末からのフィードバックが省略される前記第1無線基地局は、前記第2無線基地局よりも、前記無線端末との間の伝搬路損失が大きい無線基地局である請求項1〜7の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項13】
第1無線基地局から第1無線信号を受信し、前記第1無線信号と同一の周波数及び同一の時間で第2無線信号を第2無線基地局から受信する無線端末であって、
前記第1無線基地局及び前記第2無線基地局へのフィードバックを送信する送信部を有し、
前記第1無線基地局において前記第1無線信号の送信に用いる送信アンテナが1本である場合、前記送信部は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略する無線端末。
【請求項14】
無線端末からのフィードバックに応じて第1無線信号を前記無線端末に送信する第1無線基地局と、
前記無線端末からのフィードバックに応じて、前記第1無線信号と同一の周波数及び同一の時間で第2無線信号を前記無線端末に送信する第2無線基地局と
を有する無線通信システムであって、
前記第1無線基地局において前記第1無線信号の送信に用いる送信アンテナが1本である場合、前記第1無線基地局又は前記第2無線基地局は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略するよう前記無線端末に指示する無線通信システム。
【請求項15】
無線端末からのフィードバックに応じて第1無線基地局が第1無線信号を前記無線端末に送信するステップと、
前記無線端末からのフィードバックに応じて、前記第1無線信号と同一の周波数及び同一の時間で第2無線基地局が第2無線信号を前記無線端末に送信するステップと、
前記第1無線基地局において前記第1無線信号の送信に用いる送信アンテナが1本である場合、前記無線端末が、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略するステップと
を有する無線通信方法。
【請求項1】
無線端末と、
前記無線端末からのフィードバックに応じて第1無線信号を前記無線端末に送信する第1無線基地局と、
前記無線端末からのフィードバックに応じて、前記第1無線信号と同一の周波数及び同一の時間で第2無線信号を前記無線端末に送信する第2無線基地局と
を有する無線通信システムであって、
前記第1無線基地局において前記第1無線信号の送信に用いる送信アンテナが1本である場合、前記無線端末は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略する無線通信システム。
【請求項2】
前記送信アンテナが1本である場合、前記無線端末は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略するとともに、前記第1無線基地局から前記無線端末までの伝搬路特性に応じた第1伝搬路情報と、前記第2無線基地局から前記無線端末までの伝搬路特性に応じた第2伝搬路情報とに基づくフィードバックを前記第2無線基地局に対して行う請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記送信アンテナが1本である場合、前記無線端末は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略するとともに、前記第1伝搬路情報を基準として前記第2伝搬路情報を正規化し、前記正規化された第2伝搬路情報を前記第2無線基地局にフィードバックする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記送信アンテナが1本である場合、前記無線端末は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略するとともに、前記第1伝搬路情報及び前記第2伝搬路情報を前記第2無線基地局にフィードバックし、
前記第2無線基地局は、前記無線端末からフィードバックされた前記第1伝搬路情報を基準として、前記無線端末からフィードバックされた前記第2伝搬路情報を正規化し、前記正規化された第2伝搬路情報に応じて前記第2無線信号を送信する請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記第1伝搬路情報は、前記第1無線基地局の送信アンテナと前記無線端末の受信アンテナとの間の伝搬路特性を示す情報であり、
前記第2伝搬路情報は、前記第2無線基地局の送信アンテナと前記無線端末の受信アンテナとの間の伝搬路特性を示す情報である請求項2〜4の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記第1伝搬路情報は、前記第1無線信号の位相又は振幅の少なくとも一方の制御に用いられる第1送信アンテナウェイト、又は、前記第1送信アンテナウェイトを示すインデックスであり、
前記第2伝搬路情報は、前記第2無線信号の位相又は振幅の少なくとも一方の制御に用いられる第2送信アンテナウェイト、又は、前記第2送信アンテナウェイトを示すインデックスである請求項2〜4の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記無線端末は、前記第1無線信号の受信品質又は伝搬路特性を前記第1無線基地局の送信アンテナ毎に測定し、
前記第1無線基地局は、前記測定された受信品質又は前記測定された伝搬路特性に応じて選択される1本の前記送信アンテナを用いて、前記第1無線信号を前記無線端末に送信する請求項1〜6の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記無線端末からのフィードバックが省略される前記第1無線基地局は、前記第2無線基地局よりも、前記無線端末から遠くに位置する無線基地局である請求項1〜7の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項9】
前記無線端末からのフィードバックが省略される前記第1無線基地局は、前記第2無線基地局よりも処理性能が高い無線基地局である請求項1〜7の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項10】
前記無線端末からのフィードバックが省略される前記第1無線基地局は、前記第2無線基地局よりも処理性能が低い無線基地局である請求項1〜7の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項11】
前記無線端末からのフィードバックが省略される前記第1無線基地局は、前記第2無線基地局よりも、前記無線端末との間の伝搬路変動が小さい無線基地局である請求項1〜7の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項12】
前記無線端末からのフィードバックが省略される前記第1無線基地局は、前記第2無線基地局よりも、前記無線端末との間の伝搬路損失が大きい無線基地局である請求項1〜7の何れか一項に記載の無線通信システム。
【請求項13】
第1無線基地局から第1無線信号を受信し、前記第1無線信号と同一の周波数及び同一の時間で第2無線信号を第2無線基地局から受信する無線端末であって、
前記第1無線基地局及び前記第2無線基地局へのフィードバックを送信する送信部を有し、
前記第1無線基地局において前記第1無線信号の送信に用いる送信アンテナが1本である場合、前記送信部は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略する無線端末。
【請求項14】
無線端末からのフィードバックに応じて第1無線信号を前記無線端末に送信する第1無線基地局と、
前記無線端末からのフィードバックに応じて、前記第1無線信号と同一の周波数及び同一の時間で第2無線信号を前記無線端末に送信する第2無線基地局と
を有する無線通信システムであって、
前記第1無線基地局において前記第1無線信号の送信に用いる送信アンテナが1本である場合、前記第1無線基地局又は前記第2無線基地局は、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略するよう前記無線端末に指示する無線通信システム。
【請求項15】
無線端末からのフィードバックに応じて第1無線基地局が第1無線信号を前記無線端末に送信するステップと、
前記無線端末からのフィードバックに応じて、前記第1無線信号と同一の周波数及び同一の時間で第2無線基地局が第2無線信号を前記無線端末に送信するステップと、
前記第1無線基地局において前記第1無線信号の送信に用いる送信アンテナが1本である場合、前記無線端末が、前記第1無線基地局へのフィードバックを省略するステップと
を有する無線通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−278672(P2010−278672A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128164(P2009−128164)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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