説明

無線通信システム、無線通信装置、プログラムおよび送信方法

【課題】同じデータを、異なる周波数割当で送信したときの送信アンテナ間の干渉を抑え、良好な伝送を行うことができる無線通信システムを提供すること。
【解決手段】複数の送信アンテナを有し、MIMO方式で信号を送信する第1の無線通信装置と、その信号を受信する第2の無線通信装置とを有する無線通信システムであって、第1の無線通信装置は、送信アンテナ数より小さいランクで送信するときは、同一データが送信される送信アンテナについては、同一の周波数割当とすることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、無線通信装置、プログラムおよび送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP(3rd Generation Partnership Project;第3世代パートナーシッププロジェクト)の無線通信規格であるLTE(Long Term Evolution)や、LTEの進化形であるLTE−A(LTE−Advanced)では、下りリンク(基地局から移動局への通信)における伝送方式として、周波数選択性チャネルに強い耐性を持ち、MIMO(Multiple Input Multiple Output;多入力多出力)伝送と親和性が高いOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access;直交周波数分割多重アクセス)が採用されている。
【0003】
一方、上りリンク(移動局から基地局への通信)では、端末(移動局、移動端末)のコストや規模が重要である。しかし、OFDM等のマルチキャリア伝送は送信信号のPAPR(Peak to Average Power Ratio;ピーク対平均電力比)が高く、線形領域の広い電力増幅器が必要となるため、上りリンクの伝送に向かない。つまり、上りリンクで広いカバレッジを維持するには、PAPRの低いシングルキャリア伝送が望ましく、LTEの上りリンクではSC−FDMA(Single Carrier Frequency Division Multiple Access;シングルキャリア周波数分割多重アクセス、DFT−S−OFDMとも称される)が採用されている。
【0004】
LTE−Aでは、LTE以上のシステムスループットを達成するため、上りリンクのアクセス方式として、SC−FDMAに加えてClustered DFT−S−OFDM(Discrete Fourier Transform Spread Orthogonal Frequency Division Multiplexing;離散フーリエ変換拡散直交周波数分割多重)が採用されることが決まっている。Clustered DFT−S−OFDM(以下、Clusteredと称する)は、SC−FDMAでは連続的に配置していた周波数スペクトルを分割し、離散的に配置することが可能となる。離散配置が許容されることで、離散的に存在する利得の高い周波数を積極的に利用することによる周波数利用効率の向上や、基地局における周波数スケジューリングが柔軟になることによるシステム周波数の利用率向上が見込める。
【0005】
しかしながらClusteredでは、SC−FDMAと比較しPAPRが劣化するという問題がある。ここで、基地局付近のユーザは低出力で基地局での受信品質を満たすことができるため、移動端末の増幅器の線形性があまり問題とならない。したがって、基地局から近いユーザはClusteredを用い、基地局から遠いユーザはSC−FDMAを用いて伝送を行なうことで、カバレッジを維持しつつ、高いシステムスループットを達成することができる。
【0006】
また、近年、送受信機の複数アンテナを用いて伝送を行なうMIMOの中でも、移動端末が持つ複数アンテナからそれぞれ独立なデータを同一時刻・同一周波数で送信するシングルユーザMIMOが、ユーザのピークデータレートを向上させることができる技術として注目されている。シングルユーザMIMOでは、受信機でMMSE(Minimum Mean Square Error;最小平均二乗誤差)等の空間フィルタリングやMLD(Maximum Likelihood Detection;最尤検出)等を適用することで、各データの分離が可能となる。また、MIMO伝送とClusteredを併用することで、周波数利用効率を向上させることができる。
【0007】
ところで、LTE−Aにおいて、ClusteredへのMIMOの適用は、送信機の各アンテナの周波数割り当ては同一である。しかしながら、送信アンテナ毎に利得の高い周波数は異なる。したがって、図17のように、アンテナ毎に異なる周波数割り当てを許容することで、より周波数利用効率の高い伝送が可能となることが特許文献1に示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2009/022709号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
MIMO伝送において、端末が持つN本の送信アンテナからR個の独立なデータシンボル(レイヤ、ストリームとも称する)を送信することをランクRの伝送と呼ぶ。特許文献1では、送信機である端末が持つN本のアンテナからN個の異なるデータを送信する、フルランク(R=N)を対象にしている。しかしながらセルエッジの端末は、複数アンテナから同一データを送信することで受信品質を向上させる送信ダイバーシチを適用し、基地局における受信品質を向上させることが望ましい。つまりフルランク以外のR<Nとなる伝送を行なうことがある。
【0010】
ここで、特許文献1にそのまま送信ダイバーシチを適用、つまり同じデータを、異なる周波数割当で送信すると、送信アンテナ間の干渉が発生し、伝送効率が低下するという問題がある。例えば図17のように、送信アンテナ#0と送信アンテナ#1から同じデータを、異なる周波数割当で送信すると、周波数インデックス3では、送信アンテナ#0と送信アンテナ#1から同じ周波数スペクトルが送信されるため、基地局である受信機ではアンテナ間の干渉なしに受信することができる。しかしながら、周波数インデックス7では異なる周波数スペクトルが送信されるため、互いの周波数スペクトルが干渉となる。
【0011】
ここで、受信機におけるMMSEフィルタリングやMLD等の受信処理によって、異なる周波数スペクトルの分離は可能である。周波数スペクトル分離後に、異なる周波数で送信されたスペクトルをアンテナ合成することも考えられる。しかしながら、MMSEやMLDでは干渉が残ってしまうため、伝送特性が劣化してしまうという問題がある。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、同じデータを、異なる周波数割当で送信したときの送信アンテナ間の干渉を抑え、良好な伝送を行うことができる無線通信システム、無線通信装置、プログラムおよび送信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明の無線通信システムは、複数の送信アンテナを有し、MIMO方式で信号を送信する第1の無線通信装置と、前記信号を受信する第2の無線通信装置とを有する無線通信システムであって、前記第1の無線通信装置は、前記送信アンテナ数より小さいランクで送信するときは、同一データが送信される送信アンテナについては、同一の周波数割当とすることを特徴とする。
【0014】
(2)また、本発明の無線通信システムは、上述の無線通信システムであって、前記第2の無線通信装置は、前記周波数割当を決定する割当情報生成部を具備することを特徴とする。
【0015】
(3)また、本発明の無線通信システムは、上述の無線通信システムであって、前記割当情報生成部は、ランク数と同数の周波数割当を決定することを特徴とする。
【0016】
(4)また、本発明の無線通信システムは、上述の無線通信システムであって、前記第2の無線通信装置は、前記送信アンテナからの伝搬路を推定する伝搬路推定部を具備し、割当情報生成部は、前記伝搬路推定部による推定結果に基づき、前記周波数割当を決定することを特徴とする。
【0017】
(5)また、本発明の無線通信装置は、複数の送信アンテナを有し、MIMO方式で信号を送信する無線通信装置であって、前記送信アンテナ数より小さいランクで送信するときは、同一データが送信される送信アンテナについては、同一の周波数割当とすることを特徴とする。
【0018】
(6)また、本発明の無線通信装置は、複数の送信アンテナを有し、MIMO方式で信号を送信する他の無線通信装置からの信号を受信する無線通信装置であって、前記他の無線通信装置が前記送信アンテナ数より小さいランクで送信するときは、同一データが送信される送信アンテナについては、同一の周波数割当となるように、周波数割当を決定する割当情報生成部を具備することを特徴とする。
【0019】
(7)また、本発明のプログラムは、複数の送信アンテナを有し、MIMO方式で信号を送信する他の無線通信装置からの信号を受信する無線通信装置のコンピュータを、前記他の無線通信装置が前記送信アンテナ数より小さいランクで送信するときは、同一データが送信される送信アンテナについては、同一の周波数割当となるように、周波数割当を決定する割当情報生成部として機能させる。
【0020】
(8)また、本発明の送信方法は、複数の送信アンテナを有し、MIMO方式で信号を送信する第1の無線通信装置と、前記信号を受信する第2の無線通信装置とを有する無線通信システムにおける送信方法であって、前記第1の無線通信装置が、前記送信アンテナ数より小さいランクで送信するときは、同一データが送信される送信アンテナについては、同一の周波数割当とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、同じデータを、異なる周波数割当で送信したときの送信アンテナ間の干渉を抑え、良好な伝送を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の第1の実施形態における無線通信システムの構成を示す概略ブロック図である。
【図2】同実施形態による移動局装置200aの構成を示す概略ブロック図である。
【図3】同実施形態における送信処理部208の構成を示す概略ブロック図である。
【図4】同実施形態における基地局装置100の構成を示す概略ブロック図である。
【図5】同実施形態におけるフルランクのときの周波数割り当ての例を示す図である。
【図6】同実施形態におけるプリコーディングマトリックスwとして、(6)式を用いたときの周波数割当の例を示す図である。
【図7】同実施形態におけるプリコーディングマトリックスwとして、(7)式を用いたときの周波数割当の例を示す図である。
【図8】同実施形態におけるプリコーディングマトリックスwとして、(8)式を用いたときの周波数割当の例を示す図である。
【図9】同実施形態における送信アンテナで使用周波数ポイントの数が異なる周波数割当の例を示す図である。
【図10】同実施形態における送信アンテナ数Nが4、ランクRが3の場合の周波数割当の例を示す図である。
【図11】第2の実施形態における移動局装置300aの送信処理部208aの構成を示す概略ブロック図である。
【図12】同実施形態における移動局装置300bの送信処理部208bの構成を示す概略ブロック図である。
【図13】同実施形態における移動局装置300bの時刻tにおける周波数割当の例を示す図である。
【図14】同実施形態における移動局装置300bの時刻t+1における周波数割当の例を示す図である。
【図15】同実施形態における移動局装置300cの送信処理部208cの構成を示す概略ブロック図である。
【図16】同実施形態における移動局装置300dの送信処理部208dの構成を示す概略ブロック図である。
【図17】従来のアンテナ毎に異なる周波数割当の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第1の実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。第1の実施形態では、送信する際にプリコーディングを行なうシングルキャリア伝送において、複数の送信アンテナを有し、MIMO方式で信号を送信する場合について説明する。図1は、本実施形態における無線通信システムの構成を示す概略ブロック図である。本実施形態における無線通信システム10は、基地局装置100と、移動局装置200a、200b、…200cとを備える。基地局装置100は、移動局装置200a、200b、…200cと無線通信する。後述するように、移動局装置200a、200b、…200c(第1の無線通信装置)から基地局装置100(第2の無線通信装置)への通信である上りリンクには、Clustered DFT−S−OFDM方式を用いる。また、基地局装置100から移動局装置200a、200b、…200cへの通信である下りリンクには、例えば、OFDMAなど、マルチアクセス可能な通信方式を用いる。
【0024】
図2は、本実施形態による移動局装置200aの構成を示す概略ブロック図である。なお、その他の移動局装置200b、…200cは、移動局装置200aと同様の構成であるので、説明を省略する。移動局装置200aは、送信アンテナ本数がNであり、最大ランク数はRである。送信する信号に対するプリコーディングには、各送信アンテナで信号の加算を行なわないことで低いピーク電力を全く増大させないCMP(Cubic Metric Preserving)と、各アンテナでの信号加算を許容することで全ての空間多重された信号のアレイゲインを得るCMF(Cubic Metric Friendly)が存在し、CMFであっても本発明は適用できるが、本実施形態ではCMPを例に説明を行なう。
【0025】
また、すべてのアンテナで周波数の離散配置を許容する構成としているが、少なくとも1つのアンテナで周波数の連続配置が適用されてもよい。また、移動局装置200aが、Clustered DFT−S−OFDM(Clustered)方式にて送信する例の説明を行なうが、SC−FDMA(DFT−S−OFDM)等のシングルキャリア伝送や、OFDMやMC−CDMA(Multi-Carrier Code Division Multiple Access)等のマルチキャリア伝送であってもよい。また、上りリンクを例に説明を行なうが、下りリンクにも適用可能である。
【0026】
移動局装置200aは、S/P変換部201、符号化部202−1〜202−R、変調部203−1〜203−R、DFT部204−1〜204−R、参照信号生成部205、参照信号多重部206−1〜206−R、マッピング部207−1〜207−R、送信処理部208、OFDM信号生成部209−1〜209−N、送信アンテナ210−1〜210−N、受信アンテナ211、受信部212、割当情報取得部213を備える。
【0027】
S/P変換部201は、送信ビット系列TBを、割当情報取得部213から指定されたランク数Rのレイヤに、シリアル−パラレル変換する。S/P変換部201の出力は、レイヤ毎に符号化部202−1〜202−Rに入力される。なお、レイヤ数Rが最大ランク数Rに満たないときは、S/P変換部201の出力は、レイヤ数R分の符号化部、すなわち符号化部202−1〜202−Rに入力され、残りの符号化部には入力されない。また、図ではS/P変換部201の出力が符号化部202−1〜202−Rに入力される構成としているが、逆の構成(1つの符号化部の後、S/P変換)としてもよい。符号化部202−1〜202−Rのうち、S/P変換部201の出力が入力された符号化部202−1〜202−Rは、入力されたビット系列を、誤り訂正符号化する。符号化部202−1〜202−Rの各々は、誤り訂正符号化したビット系列を、対応する変調部203−1〜203−Rに入力する。変調部203−1〜203−Rは、誤り訂正符号化したビット系列を、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)や16QAM(Quadrature Amplitude Modulation)等の変調シンボルへ変換する。
【0028】
変調部203−1〜203−Rの各々の出力は、NDFTシンボル毎に、対応するDFT部204−1〜204−Rに入力される。DFT部204−1〜204−Rは、NDFTシンボルの変調シンボルを、NDFTポイントの離散フーリエ変換(Discrete Fourier Transform、DFT)して、時間領域信号から周波数領域信号に変換する。ここで、DFT部204−iが生成した周波数領域信号を、Di−1(m)(0≦m≦NDFT−1)と表記する。さらに、DFT部204−1〜204−Rが生成した周波数領域信号を併せて、ベクトルD(m)=[D(m)、...、DR−1(m)](0≦m≦NDFT−1)と表記する。ここでTは行列の転置処理を表わす。
【0029】
各DFT部204−1〜204−Rの各々の出力は、データ信号として、対応する参照信号多重部206−1〜206−Rに入力される。参照信号多重部206−1〜206−Rは、データ信号と、参照信号生成部205から入力される参照信号とを、周波数で多重する。ただし図ではDFT後に参照信号の多重を行なう構成としているが、時間領域のデータ信号に対して多重する構成としても良い。参照信号生成部205は、基地局装置100において既知の参照信号であって、各レイヤと基地局装置100の受信アンテナとの間の伝搬路を、それぞれ推定できるような系列からなる参照信号DMRS(Demodulation Reference Signal)を生成する。そのサブキャリアに割り当てる系列にはZadoff−Chu系列などの時間領域に変換した際にピーク電力を増大させない符号が用いられることが多いが、これに限定されない。また、各レイヤの参照信号の直交化については、各レイヤの参照信号に異なるサイクリックシフトを与えることでおこなってもよいし、OCC(Orthogonal Cover Code)を用いた系列を乗算する方法や、IFDM(Interleaved Frequency Division Multiplexing)に基づくサブキャリア配置等、どのような方法が用いられても構わない。
【0030】
参照信号多重部206−1〜206−Rの各々の出力は、対応するマッピング部207−1〜207−Rに入力される。マッピング部207−1〜207−Rは、割当情報取得部213が取得した、対応するレイヤの周波数割当情報に従い、NFFTポイントの周波数のうち、所定のNDFTポイントの周波数に、データ信号および参照信号を割り当てる。なお、割り当てが行われなかった(NFFT−NDFT)ポイントの周波数にはゼロが割り当てられる。割当情報取得部213は、各レイヤの周波数割当情報を、対応するマッピング部207−1〜207−Rに出力し、ランク数RをS/P変換部201に、後述するプリコーディングマトリックスを指定する情報(プリコーディングマトリックスインデックス、PMI)Wを送信処理部208に出力する。なお、本実施形態において、これらの情報は、制御信号として受信側である基地局装置100から通知される構成としているが、送信側である移動局装置200aにおいて決定するようにしてもよい。
【0031】
ここで、マッピング部207−iの出力信号を、Di−1’(k)(0≦k≦NFFT−1)と表記する。さらに、マッピング部207−1〜207−Rの出力信号を併せて、NFFTポイント出力ベクトルD’(k)=[D’(k)、...、DR−1’(k)](0≦k≦NFFT−1)と表記する。このNFFTポイント出力ベクトルD’(k)=[D’(k),...,DR−1’(k)](0≦k≦NFFT−1)は、送信処理部208に入力される。送信処理部208は、このNFFTポイント出力ベクトルD’(k)に対して、送信重み行列(プリコーディングマトリックス)によるプリコーディングを行う。
【0032】
図3は、本実施形態における送信処理部208の構成を示す概略ブロック図である。送信処理部208は、プリコーディング部214、送信重み行列取得部215を備える。送信重み行列取得部215は、割当情報取得部213から情報W(PMI)を受け、コードブック化されたプリコーディングマトリックスの中から、情報Wに応じたプリコーディングマトリックスwを出力する。送信重み行列取得部215は、情報Wの各々に応じたプリコーディングマトリックスwを、予め記憶するようにしてもよいし、後述するように、情報Wをパラメータとして、プリコーディングマトリックスwを算出するようにしてもよい。
【0033】
プリコーディング部214は、マッピング部207−1〜207−Rから入力されたNFFTポイントベクトルD’(k)に対して、送信重み行列取得部215が出力する送信重み行列(プリコーディングマトリックス)wによるプリコーディングを行う。つまり入力されたベクトルD’(k)に、プリコーディングマトリックスwを乗算する。ここでwはN×Rの行列である。本実施形態では、全周波数で同一のプリコーディングを行なう場合を示すが、最適なプリコーディングマトリックスは周波数毎に異なるため、周波数毎に異なるプリコーディングを行なってもよい。プリコーディング部214が出力するベクトルS(k)(0≦k≦NFFT−1)は、(1)式で表わされる。
【0034】
【数1】

【0035】
なお、本実施形態における移動局装置200a(図2)は、周波数領域でプリコーディングを行なっているが、時間領域でプリコーディングを行なう構成としてもよい。
図2に戻って、プリコーディング部208が出力する第1から第N送信アンテナ用の信号S(k)〜SNt−1(k)の各々は、OFDM信号生成部209−1〜209−Nのうち、対応するOFDM信号生成部に入力される。OFDM信号生成部209−1〜209−Nの各々は、入力された信号に、NFFTポイントの逆高速フーリエ変換(Inverse Fast Fourier Transform、IFFT)を適用し、周波数領域信号から時間領域信号(Clusteredシンボル)への変換を行なう。また、OFDM信号生成部209−1〜209−Nの各々は、基地局装置100において既知の参照信号であって、各送信アンテナ210−1〜210−Nと基地局装置100の受信アンテナとの間の伝搬路を、それぞれ推定できるような系列からなる参照信号SRS(Sounding Reference Signal)を、入力された信号に多重する。なお、この参照信号SRSの多重は、周波数領域の信号に対して行っても良いし、時間領域の信号(Clusteredシンボル)に対して行っても良い。さらに、OFDM信号生成部209−1〜209−Nは、これらClusteredシンボルに、サイクリックプリフィックス(CP;Cyclic Prefix)を挿入する。OFDM信号生成部209−1〜209−Nは、サイクリックプリフィックス挿入後のClusteredシンボルにD/A(ディジタル−アナログ)変換、アナログフィルタリング、ベースバンドから搬送周波数へのアップコンバージョン等を行なった後、対応する送信アンテナ210−1〜210−Nから送信する。
【0036】
移動局装置200aから送信された信号は、無線伝搬路を経由し、基地局装置100のN本の受信アンテナで受信される。図4は、本実施形態における基地局装置100の構成を示す概略ブロック図である。基地局装置100は、受信アンテナ101−1〜101−N、OFDM信号受信部102−1〜102−N、参照信号分離部103−1〜103−Nr、デマッピング部104−1〜104−N、等化部105、IDFT(Inverse Discrete Fourier Transform:逆離散フーリエ変換)部106−1〜106−R、復調部107−1〜107−R、復号部108−1〜108−R、P/S変換部109、伝搬路推定部110、等化重み生成部111、割当情報生成部112、送信部113、送信アンテナ114を備える。
【0037】
本の受信アンテナ101−1〜101−Nで受信された信号は、それぞれOFDM信号受信部102−1〜102−Nに入力される。OFDM信号受信部102−1〜102−Nは、対応する受信アンテナで受信した信号に対し、搬送周波数からベースバンド信号へのダウンコンバート、アナログフィルタリング、A/D(アナログ−ディジタル)変換、Clusteredシンボル毎にサイクリックプリフィックスの除去を行う。さらに、OFDM信号受信部102−1〜102−Nは、サイクリックプリフィックスを除去した信号に、NFFTポイントの高速フーリエ変換(FFT)を適用し、時間領域信号から周波数領域信号への変換を行なう。OFDM信号受信部102−1〜102−Nの各々の出力であるNFFTポイントの周波数スペクトルは、対応する参照信号分離部103−1〜103−Nに入力される。
【0038】
参照信号分離部103−1〜103−Nの各々は、入力された周波数スペクトルを、データ信号と参照信号(DMRSおよびSRS)とに分離し、参照信号を伝搬路推定部110に出力し、データ信号を、対応するデマッピング部104−1〜104−Nに出力する。伝搬路推定部110は、入力された受信参照信号のうち、参照信号SRSを用いて、移動局装置200aの送信アンテナ210−1〜210−Nの各々と、基地局装置100の受信アンテナ101−1〜101Nの各々との間の伝搬路を推定し、推定結果を、割当情報生成部112に出力する。また、伝搬路推定部110は、入力された受信参照信号のうち、参照信号DMRSを用いて、各レイヤと、基地局装置100の受信アンテナ101−1〜101Nの各々との間の伝搬路を推定し、推定結果を、等化重み生成部111に出力する。割当情報生成部112は、各送信アンテナ210−1〜210−Nとの伝搬路の推定結果(伝搬路利得)に基づいて、送信アンテナ毎の周波数割り当て、および移動局装置200aで乗算するプリコーディングマトリックスを決定し、送信部113に入力する。送信部113は、その周波数割り当てとプリコーディングマトリックスのインデックスを、次の伝送機会の制御信号として移動局装置200aに、送信アンテナ114を介して送信する。割当情報生成部112の詳細は後述する。また割当情報生成部112は、次の伝送機会の周波数割当を送信部113を介して移動局装置200aに通知するとともに、前回の伝送機会に生成した周波数割当、つまり受信した信号における周波数割当をデマッピング部104−1〜104−Nに出力する。
【0039】
等化重み生成部111は、ストリーム間干渉およびシンボル間干渉を抑圧する重み行列を生成する。等化重みは、MMSE基準やZF(Zero Forcing)基準等、どのようなものであってもよい。等化重み生成部111で生成された重み行列は等化部105に入力される。
一方、参照信号分離部103−1〜103−Nの各々で分離されたデータ信号は、対応するデマッピング部104−1〜104−Nに入力される。デマッピング部104−1〜104−Nは、割当情報生成部112から受けた割当情報に基づき、移動局装置200aのN本の送信アンテナ210−1〜210−Nのうち、少なくとも1本が送信に利用している周波数を抽出し、等化部105に入力する。等化部105は、N個のデマッピング部104−1〜104−Nの出力に対して等化重みを乗算することで、R個のレイヤの信号を分離する。分離されたR個のレイヤの各々の信号は、それぞれ対応するIDFT部106−1〜106−Rに入力される。なお、レイヤ数Rが最大ランク数Rに満たないときは、等化部105の出力は、レイヤ数R分のIDFT部、すなわちIDFT部106−1〜106−Rに入力され、残りのIDFT部には入力されない。
【0040】
IDFT部106−1〜106−Rは、入力された信号を逆離散フーリエ変換して、時間領域信号に変換する。各レイヤに対応する得られた時間領域信号の各々は、対応する復調部107−1〜107−Rに入力される。復調部107−1〜107−Rは、時間領域信号を復調して、ビットに変換する。復号部108−1〜108−Rは、それぞれ復調部107−1〜107−Rで得られたビットに誤り訂正復号を適用して、ビット系列を得る。P/S変換部109は、復号部108−1〜108−Rにより得られたビット系列を、パラレル−シリアル変換して、受信ビット系列RBを得る。
【0041】
ここで、図4の割当情報生成部112の処理の詳細について説明を行なう。割当情報生成部112は、まず、ランクRを決定し、次に、図2の送信処理部208にて用いるプリコーディングマトリックスを決定する。このプリコーディングマトリックスの決定により、ランクR分のレイヤ各々の送信に用いる送信アンテナが決まる。そして、割当情報生成部112は、最後に、各レイヤの周波数割当を決定する。つまり割当情報生成部112は、ランク数と同じ数の周波数割当情報を制御情報として移動局装置に通知することになる。割当情報生成部112は、これらランクRを示す情報、プリコーディングマトリックスを示す情報W(PMI)、周波数割当を示す情報を、割当情報として、送信部113に出力する。なお、割当情報の数とランク数は一致するため、ランク数を必ずしも送信する必要はない。また、現在標準化が行なわれているLTE−Aにおいて、4送信アンテナ時には、6ビットでランク1〜4のプリコーディングマトリックスインデックス(PMI)を定義しており、指定されたPMIのプリコーディングマトリックスの行数によって、ランク数が算出される構成となっているが、本実施形態では、割当情報数によってランク数が分かるため、従来よりも緻密なプリコーディングを行なうことが可能となったり、従来の特性を維持したまま、PMIのビット数を削減することが可能となる。
【0042】
ランクRの決定については、例えば、伝搬路の品質に基づき決定する。このとき、伝搬路の品質としては、伝搬路推定値に基づき得られるSNR(Signal-to-Noise power Ratio;信号対雑音電力比)の全周波数および送信アンテナと受信アンテナとの全ての組み合わせについての平均値などを用いる。プリコーディングマトリックスについては、例えば、ランクRに応じて、予め決められていてもよいし、伝搬路の品質の低い送信アンテナ同士を組み合わせて、組み合わせた送信アンテナに、同じレイヤが割り当てられるプリコーディングマトリックスを選択するようにしてもよい。このとき、伝搬路の品質としては、SNRの全周波数、全受信アンテナについての平均値などを用いる。各レイヤの周波数割当については、そのレイヤの送信に用いる送信アンテナの各周波数における伝搬路の品質に基づき決定する。このとき、伝搬路の品質としては、SNRの全受信アンテナについての平均値などを用いる。
【0043】
以下、送信アンテナ数N(=R)=ランク数Rであるときと、送信アンテナ数数N>ランクRであるときとについて、割当情報生成部112の処理について説明する。
送信アンテナ数N=ランクRである時(フルランクと呼ばれる)、プリコーディングマトリックス、すなわち(1)式のwとしては、N×Nの単位行列を用いる。割当情報生成部112は、入力された伝搬路推定値に応じて、各レイヤ、すなわち各送信アンテナ210−1〜210−Nで独立に割り当て周波数を決定する。ここで割り当て単位はサブキャリア(直交周波数ポイント)でもよいし、LTEシステムのように12サブキャリアを1RB(リソースブロック)とし、RB単位あるいは複数のRBを1単位として割り当てを行なってもよい。
【0044】
図5は、フルランクのときの周波数割り当ての例を示す図である。図5において、送信アンテナ数N=4であり、送信アンテナ#0〜#3は、それぞれ送信アンテナ210−1〜210−4に対応する。また、D(n)は、i+1番目のレイヤのn+1番目の周波数領域の信号を示す。図5では、送信アンテナ#0については、周波数インデックス0、2、4、5、7、11に、4つのレイヤのうち1番目のレイヤの1番目から6番目の周波数領域の信号(D(0)からD(5))を順に割り当てている。送信アンテナ#1については、周波数インデックス0、3、4、5、9、11に、2番目のレイヤの1番目から6番目の周波数領域の信号(D(0)からD(5))を順に割り当てている。送信アンテナ#2については、周波数インデックス1、2、5、7、8、11に、3番目のレイヤの1番目から6番目の周波数領域の信号(D(0)からD(5))を順に割り当てている。送信アンテナ#3については、周波数インデックス0、3、7、9、10、11に、4番目のレイヤの1番目から6番目の周波数領域の信号(D(0)からD(5))を順に割り当てている。なお、ここで各周波数インデックスは、上述の割り当て単位を表す。
【0045】
割当情報生成部112は、図4の伝搬路推定部110が推定する伝搬路推定値から算出されるSNRを割当基準にして、各送信アンテナの割り当てを決定してもよいし、図4の等化部105でMMSEフィルタを用いている場合は、MMSEフィルタ後の残留アンテナ間干渉を考慮したSINR(Signal-to-Interference plus Noise power Ratio;信号対干渉雑音電力比)を基準に各送信アンテナの割り当てを決定してもよい。
【0046】
送信アンテナ数数N>ランクRであるとき、すなわちランクRが送信アンテナ数Nより小さく設定された場合は、同じ信号を、各送信アンテナで異なる周波数割り当てで送信するとストリーム間干渉が発生してしまう。そこで、ランクRが送信アンテナ数Nより小さく設定された場合は、同一信号を送る送信アンテナでは同じ帯域を用いて送信を行ない、異なる信号を送信する送信アンテナ間は異なる周波数を用いることを許容する。
例えば、送信アンテナ数N=4、ランクR=3のとき、割当情報生成部112は、プリコーディングマトリックスwを、以下の(2−1)から(2−6)式のうちから、一つ選択する。これらの式は、3GPPにおいて考えられているCMPのプリコーディングマトリックスと同様であるが、従来(例えば、LTEの下りリンク)は、プリコーディング後に、アンテナ毎に周波数割当(マッピング)を行うのに対し、本実施形態では、レイヤ毎に周波数割当した後に、(2−1)から(2−6)式の中から選択した一つを用いてプリコーディングを行う点が異なる。
【0047】
【数2】

【0048】
すなわち、6×4=24パターンのプリコーディングマトリックスの中から1つを選択することになる。ここで、jは虚数単位である。本実施形態では、割当情報生成部112は、伝搬路推定部110から入力されるN送信アンテナとN受信アンテナとの間の伝搬路推定値の行列H((3)式)と、(2−1)から(2−6)式に示すプリコーディングマトリックスの1つを乗算し、等価的な伝搬路行列Hチルダ((4)式)を生成し、その等価伝搬路行列を用いて、(5)式から伝搬路容量Cを求める。
【0049】
【数3】

【0050】
【数4】

【0051】
【数5】

【0052】
ここでINtは、N×Nの単位行列である。
以上の処理を、24パターンすべてのプリコーディングマトリックスに対して行ない、最も伝搬路容量Cが大きくなるプリコーディングマトリックスを選択し、制御情報として送信部113を介して移動局装置に送信する。なお、上記では伝搬路容量を評価の対象としたが、受信側での処理(MMSEやZF、あるいはMLD)を考慮した伝搬路容量からプリコーディングマトリックスを決定してもよい。また、全帯域で同一のプリコーディングマトリックスを選択するのではなく、周波数の割当単位(サブキャリア、あるいはRB)毎にプリコーディングを決定してもよい。
図6は、プリコーディングマトリックスwとして、(2−1)式のa=1(すなわち、下記の(6)式)を用いたときの周波数割当の例を示す図である。
【0053】
【数6】

【0054】
図6において、送信アンテナ数N=4であり、送信アンテナ#0〜#3は、それぞれ送信アンテナ210−1〜210−4に対応する。図6では、送信アンテナ#0については、周波数インデックス0、2、4、5、6、10に、1番目のレイヤの1番目から6番目の周波数領域の信号(D(0)からD(5))を順に割り当てている。送信アンテナ#1については、周波数インデックス0、2、4、5、6、10に、1番目のレイヤの1番目から6番目の周波数領域の信号(D(0)からD(5))を順に割り当てている。送信アンテナ#2については、周波数インデックス1、2、5、7、8、11に、2番目のレイヤの1番目から6番目の周波数領域の信号(D(0)からD(5))を順に割り当てている。送信アンテナ#3については、周波数インデックス0、3、7、9、10、11に、3番目のレイヤの1番目から6番目の周波数領域の信号(D(0)からD(5))を順に割り当てている。
【0055】
式(6)のプリコーディングマトリックスwを用いると、送信アンテナ#0と送信アンテナ#1から同一の信号ベクトルD(D(0)からD(5))が送信されるが、送信アンテナ#0と送信アンテナ#1で異なる周波数割当を用いて送信を行なうと、同じ信号を送信しているにも関わらず、ストリーム間干渉が発生してしまう。そこで、本実施形態では、図6に示すように、送信アンテナ#0と送信アンテナ#1では同一の周波数を用いて送信を行なうように、割当情報生成部112は、レイヤ毎に周波数割当を決定する。これにより、受信側(基地局装置100)では、送信アンテナ毎に信号を分離するのではなく、レイヤ毎に信号を分離することができる。
【0056】
なお、送信アンテナ#2および送信アンテナ#3では、信号ベクトルDとDが送信されるが、送信アンテナ#0と送信アンテナ#1と同じ周波数割り当てとしても、送信信号が異なるため受信側で信号分離処理を行なわなければならない。したがって、送信アンテナ#2と送信アンテナ#3では、送信アンテナ#0と送信アンテナ#1の割り当てにかかわらず、受信品質が最も良くなるように周波数(スペクトル)を割り当てればよい。なお割り当ての際、受信側の等化部105での信号分離処理を考慮して割り当てを決定してもよい。例えば、MMSEフィルタリングを行なう場合は、MMSE後のSINRが最大となるように割り当ててもよいし、等化部105に干渉キャンセラ等を含む場合は、SNRが最大となるような割り当てを行なってもよい。
【0057】
送信アンテナ数数N>ランクRであるときのもう1つの例として、送信アンテナ数N=4、ランクR=2のときについて説明する。送信アンテナ数N=4、ランクR=2のとき、割当情報生成部112は、プリコーディングマトリックスwとして、以下の(7)式を用いる。
【0058】
【数7】

【0059】
図7は、プリコーディングマトリックスwとして、(7)式を用いたときの周波数割当の例を示す図である。図7において、送信アンテナ数N=4であり、送信アンテナ#0〜#3は、それぞれ送信アンテナ210−1〜210−4に対応する。図7では、送信アンテナ#0と送信アンテナ#1とについては、周波数インデックス0、2、4、5、6、10に、1番目のレイヤの1番目から6番目の周波数領域の信号(D(0)からD(5))を順に割り当てている。送信アンテナ#2と送信アンテナ#3とについては、周波数インデックス2、3、7、8、10、11に、2番目のレイヤの1番目から6番目の周波数領域の信号(D(0)からD(5))を順に割り当てている。
【0060】
このように、(7)式を用いることで、送信アンテナ#0と送信アンテナ#1から同一の信号ベクトルDが送信されるが、送信アンテナ#0と送信アンテナ#1では同一の周波数を用いて送信を行なうように、割当情報生成部112は、レイヤ毎に周波数割当を決定する。また、(7)式が示すように、送信アンテナ#2および送信アンテナ#3からは、信号ベクトルDが送信されるが、割当情報生成部112がレイヤ毎に周波数割当を決定しているので、送信アンテナ#2と送信アンテナ#3では同一の周波数を用いて送信を行なう。送信アンテナ#0と送信アンテナ#0の周波数割当、すなわち1番目のレイヤの周波数割当と、送信アンテナ#2と送信アンテナ#3の周波数割当、すなわち2番目のレイヤの周波数割当では、異なる割り当てを用いることができる。また、他の例として、プリコーディングマトリックスwとして、以下の(8)式を用いるようにしてもよい。
【0061】
【数8】

【0062】
(8)式を用いる場合は、送信アンテナ#0から送信アンテナ#2の周波数割当において同一の割り当てが行われ、これらの送信アンテナを用いて、2番目のレイヤの信号が送信される。そして、送信アンテナ#3の周波数割当のみ、送信アンテナ#0から送信アンテナ#2の周波数割当と異なることが許容される。
送信アンテナ数数N>ランクRであるときのその他の例として、送信アンテナ数N=4、ランクR=1のときについて説明する。図8は、プリコーディングマトリックスwとして、(9)式を用いたときの周波数割当の例を示す図である。
【0063】
【数9】

【0064】
図8において、送信アンテナ数N=4であり、送信アンテナ#0〜#3は、それぞれ送信アンテナ210−1〜210−4に対応する。図8では、送信アンテナ#0から送信アンテナ#3については、周波数インデックス2、4、6、7、10、11に、1番目のレイヤの1番目から6番目の周波数領域の信号(D(0)からD(5))を順に割り当てている。このように、送信アンテナ#0から送信アンテナ#3の全てから同一の信号ベクトルDが送信される。この結果、移動局装置200aは、受信側でアンテナ間干渉を起こさないように送信を行なうことができる。
【0065】
ここで、図5から図8の例では各送信アンテナから送信されるスペクトル数が同一の場合を例に示したが、各送信アンテナの性能や、移動局装置200aの電力増幅器の性能、あるいは瞬時の伝搬路状態を考慮し、各送信アンテナから送信されるスペクトル数を変更してもよい。この場合、割当情報生成部112では、送信アンテナ数Nが4でランクRが4のときに、図9のように、各送信アンテナで使用周波数ポイントの数が異なる割り当てとすることができる。この時、図2のDFT部204−1〜204−RのDFTポイント数は、レイヤ毎に異なる値になる。
【0066】
図10は、送信アンテナ数Nが4、ランクRが3の場合の周波数割当の例を示す図である。図10では、送信アンテナ#0と送信アンテナ#2から同じデータ(レイヤ)の信号を送信している。このとき、送信アンテナ#0と送信アンテナ#2の周波数割当は同一となる。周波数割当が同じになるため、図2の送信アンテナ#0と送信アンテナ#2におけるDFT部のそれぞれのDFTポイント数は同一となる。しかし、送信アンテナ#1と送信アンテナ#3は、送信アンテナ#0と送信アンテナ#2の周波数割り当ては同一とする必要はなく、また、使用する周波数ポイント数が異なってもよい。ランクRが2、および1のときについては、詳細な説明は省略するが、同じデータを送信する送信アンテナでは使用する周波数ポイント数を同一とするが、異なるデータを送信するアンテナは、使用する周波数ポイントが異なっても構わない。
【0067】
このように、各送信アンテナで異なる周波数割り当てを許容する通信システムにおいて、ランク数に応じて、各送信アンテナの周波数割当を同一にする。具体的には、プリコーディングマトリックスを列ベクトルに分解した際、ゼロ以外の値を複数もつレイヤに関して、該ゼロ以外の値を持つ送信アンテナでは、周波数割り当てを同一とする。割当情報生成部112内での処理を上記のようにすることで、各送信アンテナで異なる周波数割り当てを許容する通信システムにおいてフルランクでないときに、ストリーム間干渉を抑え、良好な伝送を行なうことできる。
【0068】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、送信側でプリコーディングを行なうシングルキャリア伝送(Clustered DFT−S−OFDM)の例を示したが、低速移動以外では、基地局装置でのプリコーディングマトリックスの決定時と、実際に移動局装置がプリコーディングを行なう時とで、最適なプリコーディングが異なるため、プリコーディングによるゲインが得られない可能性がある。したがって高速移動時には、STBC(Space Time Block Code)やSFBC(Space Frequency Block Code),CDD(Cyclic Delay Diversity)等の開ループ型の送信ダイバーシチが適用されることが考えられる。そこで本実施形態では、開ループ型の送信ダイバーシチとしてSTBCを適用した場合について説明する。
【0069】
本実施形態における移動局装置300aから300dの構成は、第1の実施形態における移動局装置200aの構成とほぼ同じである。ただし、送信処理部208に替えて、送信処理部208aから208dのいずれかを備え、周波数領域の信号に対して施す処理が異なる。第2の実施形態における移動局装置300aから300d各々の送信処理部208aから208dの構成について図11から図14を用いて説明する。ここで、送信アンテナ数Nは4である。
【0070】
図11は、移動局装置300aの送信処理部208aの構成を示す概略ブロック図である。移動局装置300bの送信アンテナ数NとランクRは、4で一致している。送信処理部208aは、信号処理を行なわず、入力された周波数領域の信号を、そのまま出力する。なお、図11ではそのまま出力しているが、Clusteredシンボル単位、スロット単位、あるいはサブフレーム単位で、レイヤ間で送信する送信アンテナを切り替えたり(レイヤシフトと呼ばれる)、出力数が変わらないような4×4のプリコーディングおこなったりしてもよい。割当情報生成部112は、移動局装置300aに対しては、送信アンテナ毎に、独立して周波数割当を行う。
【0071】
図12は、移動局装置300bの送信処理部208bの構成を示す概略ブロック図である。移動局装置300bの送信アンテナ数Nは、4で、ランクRは、3である。送信処理部208bは、1番目のレイヤの信号に対して、STBC符号化を行うSTBC符号化部216を備える。STBC符号化部216は、1番目のレイヤの時刻tにおける信号A(m)(0≦m≦NDFT−1)と時刻t+1における信号B(m)(0≦m≦NDFT−1)に対してSTBC符号化を行なう。また、2番目のレイヤの時刻tにおける信号A(m)および3番目のレイヤの時刻tにおける信号A(m)については、STBC符号化部216に入力されず、そのまま出力される。また、2番目のレイヤの時刻t+1における信号B(m)および3番目のレイヤの時刻t+1における信号B(m)についても、STBC符号化部216に入力されず、そのまま出力される。
【0072】
図13、図14に、割当情報生成部112による周波数割当の例を示す。図13は、移動局装置300bの時刻tにおける周波数割当の例を示す図であり、図14は、移動局装置300bの時刻t+1における周波数割当の例を示す図である。図13、図14において、送信アンテナ数N=4であり、送信アンテナ#0〜#3は、それぞれ送信アンテナ210−1〜210−4に対応する。移動局装置300bは、上述のように、送信アンテナ#0と送信アンテナ#1からは、STBC符号化した信号を送信し、送信アンテナ#2と送信アンテナ#3からは独立なデータの信号を送信する。
【0073】
すなわち、時刻tには、図13に示すように、送信アンテナ#0については、周波数インデックス0、2、4、5、6、10に、1番目のレイヤの時刻tにおける1番目から6番目の周波数領域の信号(A(0)からA(5))を順に割り当てている。送信アンテナ#1については、周波数インデックス0、2、4、5、6、10に、1番目のレイヤの時刻t+1における1番目から6番目の周波数領域の信号(B(0)からB(5))を順に割り当てている。送信アンテナ#2については、周波数インデックス1、2、5、7、8、11に、2番目のレイヤの時刻tにおける1番目から6番目の周波数領域の信号(A(0)からA(5))を順に割り当てている。送信アンテナ#3については、周波数インデックス0、3、7、9、10、11に、3番目のレイヤの時刻tにおける1番目から6番目の周波数領域の信号(A(0)からA(5))を順に割り当てている。
【0074】
さらに、時刻t+1には、図14に示すように、送信アンテナ#0については、周波数インデックス0、2、4、5、6、10に、1番目のレイヤの時刻t+1における1番目から6番目の周波数領域の信号(B(0)からB(5))の複素共役にマイナスを乗じた値(−B(0)からB(5))を順に割り当てている。送信アンテナ#1については、周波数インデックス0、2、4、5、6、10に、1番目のレイヤの時刻tにおける1番目から6番目の周波数領域の信号(A(0)からA(5))の複素共役(A(0)からA(5))を順に割り当てている。送信アンテナ#2については、周波数インデックス1、2、5、7、8、11に、2番目のレイヤの時刻t+1における1番目から6番目の周波数領域の信号(B(0)からB(5))を順に割り当てている。送信アンテナ#3については、周波数インデックス0、3、7、9、10、11に、3番目のレイヤの時刻t+1における1番目から6番目の周波数領域の信号(B(0)からB(5))を順に割り当てている。
【0075】
割当情報生成部112は、移動局装置300bに対しては、図13および図14に示すように送信アンテナ#0と送信アンテナ#1については同一となるように、周波数割当を行い、送信アンテナ#2と送信アンテナ#3とについては、それぞれ独立して、任意の周波数割当を行う。なお、STBC符号化として、図13、図14に示す符号化を行なったが、時刻t+1においてマイナスを送信アンテナ#0ではなく送信アンテナ#1につけたり、時刻t+1において送信アンテナ#0についている複素共役を時刻tにおける送信アンテナ#1につけたりしてもよい。
【0076】
図15は、移動局装置300cの送信処理部208cの構成を示す概略ブロック図である。移動局装置300bの送信アンテナ数Nは、4で、ランクRは、2である。送信処理部208cは、STBC符号化部217、STBC符号化部218を備える。STBC符号化部217は、1番目のレイヤに対してSTBC符号化を行い、STBC符号化部218は、2番目のレイヤに対してSTBC符号化を行なう。割当情報生成部112は、移動局装置300cに対しては、送信アンテナ#0と送信アンテナ#1とで周波数割当が同一であり、送信アンテナ#2と送信アンテナ#3とで周波数割当が同一となるように、周波数割当を決定する。
【0077】
なお、移動局装置300cでは2つのレイヤを、それぞれ2つの送信アンテナから送信するSTBCを用いる例を示しているが、1つのレイヤは、3つの送信アンテナ(例えば、送信アンテナ#0、#1、#2)から送信し、残りの1つレイヤは、1つの送信アンテナ(例えば、送信アンテナ#3)から送信する構成をとってもよい。この場合、割当情報生成部112は、移動局装置300cに対しては、送信アンテナ#0と送信アンテナ#1と送信アンテナ#2とで周波数割当が同一となるように、周波数割当を決定する。
【0078】
図16は、移動局装置300dの送信処理部208dの構成を示す概略ブロック図である。移動局装置300dの送信アンテナ数Nは、4で、ランクRは、1である。送信処理部208dは、STBC符号化部219を備える。STBC符号化部219は、1番目のレイヤにSTBC符号化を適用し、4つの送信アンテナから送信を行なう。割当情報生成部112は、移動局装置300dに対しては、送信アンテナ#0から送信アンテナ#3で同一の周波数割当となるように、周波数割当を決定する。
【0079】
なお、本実施形態では周波数領域でSTBCを適用したが、送信処理部208aから208dをIFFT後に配置し、時間領域でSTBCを適用してもよい。またSTBCの例を示したが、SFBC、CDD等、同一データに関する情報を同一時刻・同一周波数で異なるアンテナから送る技術であれば適用可能である。さらに上記技術に第1の実施形態で示したようなプリコーディングマトリックスをさらに乗算したり、各レイヤ間で送信するアンテナを切り換えたりする技術(レイヤーシフト)を併用することも可能である。また、例えば図15では送信処理部208c内に2つのSTBC符号化部217、218を持つ構成としたが、STBCとSFBC等、異なる送信ダイバーシチ技術が送信処理部208c内に存在してもよい。
【0080】
このように、送信するランクに応じて周波数割り当てに制限をかけることで、すなわち、同一データが送信される送信アンテナについては同一の周波数割当とすることで、アンテナ間干渉を発生させないようにデータを送信することができる。この結果、ユーザスループットを向上させることができる。
【0081】
また、上述した各実施形態における移動局装置および基地局装置の一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムを、各装置が備えるコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、上記の機能を実現するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0082】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0083】
また、上述した各実施形態における移動局装置および基地局装置の一部、または全部を典型的には集積回路であるLSIとして実現してもよい。移動局装置および基地局装置の各機能ブロックは個別にチップ化してもよいし、一部、または全部を集積してチップ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現しても良い。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いることも可能である。
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0084】
10…無線通信システム
100…基地局装置
101−1、・・・101−N…受信アンテナ
102−1、・・・102−N…OFDM信号受信部
103−1、・・・103−N…参照信号分離部
104−1、・・・104−N…デマッピング部
105…等化部
106−1、・・・106−R…IDFT部
107−1、・・・107−R…復調部
108−1、・・・108−R…復号部
109…P/S変換部
110…伝搬路推定部
111…等化重み生成部
112…割当情報生成部
113…送信部
114…送信アンテナ
200a、200b、200c…移動局装置
201…S/P変換部
202−1、・・・202−R…符号化部
203−1、・・・203−R…変調部
204−1、・・・204−R…DFT部
205…参照信号生成部
206−1、・・・206−R…参照信号多重部
207−1、・・・207−R…マッピング部
208…送信処理部
209−1、・・・209−R…OFDM信号生成部
210−1、・・・210−R…送信アンテナ
211…受信アンテナ
212…受信部
213…割当情報取得部
214…プリコーディング部
215…送信重み行列取得部
300a、300b、300c、300d…移動局装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送信アンテナを有し、MIMO方式で信号を送信する第1の無線通信装置と、前記信号を受信する第2の無線通信装置とを有する無線通信システムであって、
前記第1の無線通信装置は、前記送信アンテナ数より小さいランクで送信するときは、同一データが送信される送信アンテナについては、同一の周波数割当とすること
を特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記第2の無線通信装置は、前記周波数割当を決定する割当情報生成部を具備すること
を特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記割当情報生成部は、ランク数と同数の周波数割当を決定することを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記第2の無線通信装置は、前記送信アンテナからの伝搬路を推定する伝搬路推定部を具備し、
割当情報生成部は、前記伝搬路推定部による推定結果に基づき、前記周波数割当を決定すること
を特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項5】
複数の送信アンテナを有し、MIMO方式で信号を送信する無線通信装置であって、
前記送信アンテナ数より小さいランクで送信するときは、同一データが送信される送信アンテナについては、同一の周波数割当とすること
を特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
複数の送信アンテナを有し、MIMO方式で信号を送信する他の無線通信装置からの信号を受信する無線通信装置であって、
前記他の無線通信装置が前記送信アンテナ数より小さいランクで送信するときは、同一データが送信される送信アンテナについては、同一の周波数割当となるように、周波数割当を決定する割当情報生成部を具備すること
を特徴とする無線通信装置。
【請求項7】
複数の送信アンテナを有し、MIMO方式で信号を送信する他の無線通信装置からの信号を受信する無線通信装置のコンピュータを、
前記他の無線通信装置が前記送信アンテナ数より小さいランクで送信するときは、同一データが送信される送信アンテナについては、同一の周波数割当となるように、周波数割当を決定する割当情報生成部
として機能させるプログラム。
【請求項8】
複数の送信アンテナを有し、MIMO方式で信号を送信する第1の無線通信装置と、前記信号を受信する第2の無線通信装置とを有する無線通信システムにおける送信方法であって、
前記第1の無線通信装置が、前記送信アンテナ数より小さいランクで送信するときは、同一データが送信される送信アンテナについては、同一の周波数割当とすること
を特徴とする送信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−228786(P2011−228786A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−94037(P2010−94037)
【出願日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】