無線通信システム及び無線通信装置
【課題】高速、且つ高品質のデータ伝送を容易に実現し、それに用いるアンテナを容易に設置する。
【解決手段】無線基地局102にて、互いに直交する2つの偏波特性を持つ複数のアンテナ121−1〜121−nが1/2波長間隔でアレイ状に配置され、無線端末局101にて、2つの偏波特性の中間の偏波特性を持つアンテナ111−1〜111−2が具備される。
【解決手段】無線基地局102にて、互いに直交する2つの偏波特性を持つ複数のアンテナ121−1〜121−nが1/2波長間隔でアレイ状に配置され、無線端末局101にて、2つの偏波特性の中間の偏波特性を持つアンテナ111−1〜111−2が具備される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線にて通信を行う無線通信システム及び無線通信装置に関し、特に複数のアンテナを用いて通信を行う無線通信システム及び無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信技術を用いた無線通信システムにおいて、伝送容量(スループット)の向上が必須の課題になっている。この課題を解決するために、送信装置が有する複数のアンテナからデータを無線上に送信し、複数のアンテナを有する受信装置にて当該データを受信する多入力多出力(MIMO:Multi Input Multi Output)通信方式についての研究及び開発が進められている。この多入力多出力通信方式については、送信装置及び受信装置に複数のアンテナをそれぞれ設置し、複数のアンテナを用いてデータを分割して同時に、つまり並列的に送受信することにより、伝送容量の向上を測ることが目的とされている。
【0003】
図7は、従来の無線通信システムの構成の一例を示す図である。
【0004】
図7に示した従来の無線通信システムは、無線端末局901と、無線基地局902とから構成されている。
【0005】
さらに無線端末局901には、アンテナ911−1〜911−2と、送信部912と、受信部913とが設けられている。
【0006】
アンテナ911−1〜911−2は、無線端末局901と無線基地局902との間における無線信号の送受信を行う垂直偏波特性を有するアンテナである。また、アンテナ911−1とアンテナ911−2との間の距離は、λ/2(λは波長)となっている。
【0007】
送信部912は、上り信号をアンテナ911−1〜911−2を介して無線端末局901から無線基地局902へ送信する。
【0008】
図8は、図7に示した送信部912の一構成例を示す図である。
【0009】
図7に示した送信部912には図8に示すように、変調部914−1〜914−2と、直列−並列変換部915とが設けられている。
【0010】
直列−並列変換部915は、無線端末局901から無線基地局902へ送信する上り信号を直列の信号から並列の信号へ変換する。
【0011】
変調部914−1〜914−2は、直列−並列変換部915にて並列に変換された上り信号を無線上に乗せるための変調を行い、アンテナ911−1〜911−2にそれぞれ出力する。
【0012】
また、受信部913は、無線基地局902から送信された下り信号をアンテナ911−1〜911−2を介して受信する。
【0013】
図9は、図7に示した受信部913の一構成例を示す図である。
【0014】
図7に示した受信部913には図9に示すように、MIMO信号処理部916と、並列−直列変換部917とが設けられている。
【0015】
MIMO信号処理部916は、アンテナ911−1〜アンテナ911−2にて受信された下り信号について従来のMIMO信号処理を行う。
【0016】
並列−直列変換部917は、MIMO信号処理部916にて信号処理された並列の下り信号を直列の信号へ変換する。
【0017】
また、無線基地局902には、アンテナ921−1〜921−2と、送信部922と、受信部923とが設けられている。
【0018】
アンテナ921−1〜921−2は、無線端末局901と無線基地局902との間における無線信号の送受信を行う垂直偏波特性を有するアンテナである。また、アンテナ921−1とアンテナ921−2との間の距離は、10λ(波長の10倍)となっている。これは、フェージング相関を小さくするためにアンテナ間隔を空ける必要があるためである。
【0019】
送信部922は、下り信号をアンテナ921−1〜921−2を介して無線基地局902から無線端末局901へ送信する。
【0020】
図10は、図7に示した送信部922の一構成例を示す図である。
【0021】
図7に示した送信部922には図10に示すように、変調部924−1〜924−2と、直列−並列変換部925とが設けられている。
【0022】
直列−並列変換部925は、無線基地局902から無線端末局901へ送信する下り信号を直列の信号から並列の信号へ変換する。
【0023】
変調部924−1〜924−2は、直列−並列変換部925にて並列に変換された下り信号を無線上に乗せるための変調を行い、アンテナ921−1〜921−2にそれぞれ出力する。
【0024】
また、受信部923は、無線端末局901から送信された上り信号をアンテナ921−1〜921−2を介して受信する。
【0025】
図11は、図7に示した受信部923の一構成例を示す図である。
【0026】
図7に示した受信部923には図11に示すように、MIMO信号処理部926と、並列−直列変換部927とが設けられている。
【0027】
MIMO信号処理部926は、アンテナ921−1〜アンテナ921−2にて受信された上り信号について従来のMIMO信号処理を行う。
【0028】
並列−直列変換部927は、MIMO信号処理部926にて信号処理された並列の上り信号を直列信号へ変換する。
【0029】
なお、図7〜11に示した無線端末局901、無線基地局902、送信部912,922、及び受信部913,923の構成については、本発明の特徴との比較に必要な従来の構成要素のみを示した。
【0030】
以上のように構成された無線端末局901と、無線基地局902との間にて、MIMO通信方式を用いた信号の送受信が行われている。
【0031】
また、無線基地局と無線端末局との間において、互いに同一の偏波特性を有するアンテナ対を複数用いてMIMO伝送を行う技術が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0032】
また、どちらか一方の偏波を選択し、空間的に離れたアンテナグループで独立なデータを送信するMIMO伝送を行う技術が考えられている(例えば、特許文献2参照。)。
【0033】
また、偏波特性を制御することにより、良好なMIMO伝送を行う技術が考えられている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2005−192185号公報
【特許文献2】特開2002−290148号公報
【特許文献3】特開2006−033306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
しかしながら、MIMO通信方式を用いて高速伝送を行うためには、アンテナ間のフェージング相関を低くするために、複数のアンテナ間それぞれの間隔を非常に大きくする必要がある。また、指向性ビームを形成するためには、アンテナ間のフェージング相関を大きくするために、複数のアンテナ間の間隔を小さくする必要がある。そのため、従来の方法ではMIMO伝送と、指向性ビーム形成とを同時に行うことは困難であるという問題がある。
【0035】
そこで、伝送路情報を送信側と受信側とで共有し、送信側及び受信側のアンテナの重み付け係数を算出する固有モード伝送と呼ばれるMIMO伝送方式が考えられている。しかし、このMIMO伝送方式においては、伝送路情報を共有するための仕組みが必要で、また演算も複雑になってしまうという問題がある。
【0036】
また、従来のMIMO伝送を行う場合、複数のアンテナ間のフェージング相関を低くするために、複数のアンテナ間のスペースを非常に大きくとる必要があり、アンテナ設置が困難になってしまうという問題がある。
【0037】
また、特許文献1に記載の技術においては、例えば、ある偏波特性を持つアンテナと、それに直交する偏波特性を持つアンテナとの2種類のアンテナを用いる場合、少なくとも必要な種類の対の数のアンテナを設けなければならないという問題点がある。また、受信特性の良い偏波特性を持つアンテナにおける受信信号のみが有効となり、設けられたアンテナ数に対する有効となるアンテナ数の割合が低くなってしまうという問題点がある。
【0038】
また、特許文献2に記載の技術においては、アンテナグループの中に偏波特性が互いに異なる複数のアンテナを設けなければならないという問題点がある。
【0039】
また、特許文献3に記載の技術においては、偏波特性の制御に関してのみ記載されており、ビーム形成に関しては記載されていない。
【0040】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、高速、且つ高品質のデータ伝送を容易に実現でき、それに用いるアンテナを容易に設置することができる無線通信システム及び無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0041】
上記目的を達成するために本発明は、
互いに無線通信を行う第1及び第2の無線通信装置を有する無線通信システムにおいて、
前記第1の無線通信装置は、互いに直交する2つの偏波特性を持つ複数のアンテナを所定の間隔でアレイ状に配置し、
前記第2の無線通信装置は、前記2つの偏波特性の中間の角度の偏波特性を持つアンテナを有することを特徴とする。
【0042】
また、前記第1の無線通信装置は、右旋円偏波特性と左旋円偏波特性との2つの偏波特性を持つ複数のアンテナを所定の間隔でアレイ状に配置し、
前記第2の無線通信装置は、垂直偏波特性を持つアンテナを有することを特徴とする。
【0043】
また、無線通信を行う無線通信装置であって、
互いに直交する2つの偏波特性を持つ複数のアンテナを所定の間隔でアレイ状に配置する。
【0044】
また、右旋円偏波特性と左旋円偏波特性との2つの偏波特性を持つ複数のアンテナを所定の間隔でアレイ状に配置する。
【0045】
上記のように構成された本発明においては、第1の無線通信装置にて、互いに直交する2つの偏波特性を持つ複数のアンテナが所定の間隔でアレイ状に配置され、第1の無線通信装置と通信を行う第2の無線通信装置にて、2つの偏波特性の中間の角度の偏波特性を持つアンテナが具備される。
【0046】
これにより、指向性ビーム形成とMIMO伝送とを同時に実現することができる。また、伝送損失を補うことができ、また複数のアンテナ間のスペースを大きくする必要はない。
【発明の効果】
【0047】
以上説明したように本発明においては、第1の無線通信装置にて、互いに直交する2つの偏波特性を持つ複数のアンテナを所定の間隔でアレイ状に配置し、第1の無線通信装置と通信を行う第2の無線通信装置にて、2つの偏波特性の中間の角度の偏波特性を持つアンテナを有する構成としたため、高速、且つ高品質のデータ伝送を容易に実現でき、それに用いるアンテナを容易に設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0049】
図1は、本発明の無線通信システムの実施の一形態を示す図である。
【0050】
本形態は図1に示すように、第1の無線通信装置である無線基地局102と、第2の無線通信装置である無線端末局101との2つの無線通信装置から構成されている。無線端末局101は、ビル陰等の見通し外を移動する移動端末とする。
【0051】
さらに無線端末局101には、アンテナ111−1〜111−2と、送信部112と、受信部113とが設けられている。
【0052】
アンテナ111−1〜111−2は、無線端末局101と無線基地局102との間における無線信号の送受信を行う垂直偏波特性を有するアンテナである。また、アンテナ111−1とアンテナ111−2との間の距離は、1/2波長となっている。
【0053】
送信部112は、上り信号をアンテナ111−1〜111−2を介して無線端末局101から無線基地局102へ送信する。
【0054】
図2は、図1に示した送信部112の一構成例を示す図である。
【0055】
図1に示した送信部112には図2に示すように、変調部114−1〜114−2と、直列−並列変換部115とが設けられている。
【0056】
直列−並列変換部115は、無線端末局101から無線基地局102へ送信する上り信号を直列の信号から並列の信号へ変換する。ここでは、1つのデータ系列を任意の2つのデータ系列に分割する。
【0057】
変調部114−1〜114−2は、直列−並列変換部115にて並列に変換された上り信号を無線上に乗せるための変調を行い、アンテナ111−1〜111−2にそれぞれ出力する。
【0058】
また、受信部113は、無線基地局102から送信された下り信号をアンテナ111−1〜111−2を介して受信する。
【0059】
図3は、図1に示した受信部113の一構成例を示す図である。
【0060】
図1に示した受信部113には図3に示すように、MIMO信号処理部116と、並列−直列変換部117とが設けられている。
【0061】
MIMO信号処理部116は、アンテナ111−1〜アンテナ111−2にて受信された下り信号についてMIMO信号処理を行う。このMIMO信号処理は、従来のMIMO信号処理と同様であるため、ここでは説明しない。
【0062】
並列−直列変換部117は、MIMO信号処理部116にて信号処理された並列の下り信号を直列の信号へ変換する。ここでは、2つのデータ系列を1つのデータ系列に変換する。
【0063】
また、無線基地局102には、アンテナ121−1〜121−nと、送信部122と、受信部123とが設けられている。
【0064】
アンテナ121−1〜121−nは、無線端末局101と無線基地局102との間における無線信号の送受信を行う。また、アンテナ121−1〜121−nは、それぞれアンテナ111−1〜111−2の偏波方向に対して−45度及び+45度の角度を持った偏波特性をそれぞれ有している。それらは、−45度の偏波のポートと+45度の偏波のポートとを有し、それらのポートがそれぞれ送信部122及び受信部123に接続されている。また、アンテナ121−1〜121−nは、波長の1/2間隔(λ/2)でアレイ状に配置されている。また、アンテナ121−1〜121−nは一般的に無線基地局102の高所に設置される。
【0065】
送信部122は、下り信号をアンテナ121−1〜121−nを介して無線基地局102から無線端末局101へ送信する。
【0066】
図4は、図1に示した送信部122の一構成例を示す図である。
【0067】
図1に示した送信部122には図4に示すように、変調部124−1〜124−2と、直列−並列変換部125と、送信ビーム生成部129−1〜129−2が設けられている。
【0068】
直列−並列変換部125は、無線基地局102から無線端末局101へ送信する下り信号を直列の信号から並列の信号へ変換する。ここでは、1つのデータ系列を任意の2つのデータ系列に分割する。
【0069】
変調部124−1〜124−2は、直列−並列変換部125にて並列に変換された下り信号を無線上に乗せるための変調を行い、送信ビーム生成部129−1〜129−2へそれぞれ出力する。
【0070】
送信ビーム生成部129−1〜129−2は、変調部124−1〜124−2から出力された下り信号について指向性ビームを生成し、2つのデータ系列をアンテナ121−1〜121−nがそれぞれ有する−45度の偏波のポートと+45度の偏波のポートとにそれぞれ出力する。
【0071】
また、受信部123は、無線端末局101から送信された上り信号をアンテナ121−1〜121−nを介して受信する。
【0072】
図5は、図1に示した受信部123の一構成例を示す図である。
【0073】
図1に示した受信部123には図5に示すように、MIMO信号処理部126と、並列−直列変換部127と、受信ビーム生成部128−1〜128−2とが設けられている。
【0074】
受信ビーム生成部128−1〜128−2は、アンテナ121−1〜121−nがそれぞれ有する−45度の偏波のポートと+45度の偏波のポートとから出力された上り信号について指向性ビームを生成し、MIMO信号処理部126に出力する。
【0075】
MIMO信号処理部126は、受信ビーム生成部128−1〜128−2から出力された上り信号についてMIMO信号処理を行う。このMIMO信号処理は、従来のMIMO信号処理と同様であるため、ここでは説明しない。
【0076】
並列−直列変換部127は、MIMO信号処理部126にて信号処理された並列の上り信号を直列信号へ変換する。ここでは、2つのデータ系列を1つのデータ系列に変換する。
【0077】
なお、図1〜5に示した無線端末局101、無線基地局102、送信部112,122、及び受信部113,123の構成については、本発明に関する構成要素のみを示した。
【0078】
以下に、図1〜5に示すように構成された直交偏波を用いた無線通信システムにおける処理について説明する。
【0079】
まずは、無線端末局101から無線基地局102へ上り信号が送信される際の処理について説明する。
【0080】
直列−並列変換部115に入力された上り信号である1つのデータ系列が任意の2つのデータ系列に分割され、分割された2つのデータ系列が直列−並列変換部115から変調部114−1〜114−2へそれぞれ出力される。
【0081】
変調部114−1〜114−2に入力された上り信号は、無線上に乗せるための変調が行われ、アンテナ111−1〜111−2を介して無線基地局102へ送信される。
【0082】
ここで、アンテナ111−1とアンテナ111−2との間隔は1/2波長であるが、見通し外を移動するためフェージング相関が小さく、MIMO伝送の条件を満足している。
【0083】
その後、無線端末局101から送信された上り信号が無線基地局102にて受信される。
【0084】
ここで、アンテナ121−1〜121−nは無線基地局102の高所に設置され、1/2波長の間隔でアレイ状に配置されているため高いフェージング相関を持つ。そのため、受信ビーム生成部128−1〜128−2によって、+45度の偏波と−45度の偏波とにおける指向性ビームが生成されることとなる。受信ビーム生成部128−1〜128−2は一般的な適応アレイアンテナ処理を行うことにより、ビームステアリングやヌルステアリングを行うことができる。これにより、高品質な伝送路を確保することができる。
【0085】
無線端末局101から送信された上り信号が、アンテナ121−1〜121−nにて受信されると、上り信号が+45度の偏波特性で受信された場合、+45度の偏波のポートから出力され、また、上り信号が−45度の偏波特性で受信された場合は、−45度の偏波のポートから出力される。
【0086】
それぞれのポートから出力された上り信号について、受信ビーム生成部128−1〜128−2によって、+45度の偏波または−45度の偏波における指向性ビームが生成され、MIMO信号処理部126へ出力される。
【0087】
そして、MIMO信号処理部126にて入力された上り信号は、MIMO信号処理部126にてMIMO信号処理され、2つのデータ系列に分離される。ここで、受信ビーム生成部128−1〜128−2は、±45度の直交偏波を受信しており、その信号のフェージング相関は小さいため、MIMO信号処理部126によって送信側から送信された2つのデータ系列にきれいに分離することができる。
【0088】
MIMO信号処理部126によって分離された2つのデータ系列は、並列−直列変換部127によって1つのデータ系列に変換される。
【0089】
次に、無線基地局102から無線端末局101へ下り信号が送信される際の処理について説明する。
【0090】
直列−並列変換部125に入力された下り信号である1つのデータ系列が任意の2つのデータ系列に分割され、分割された2つのデータ系列が直列−並列変換部125から変調部124−1〜124−2へそれぞれ出力される。
【0091】
変調部124−1〜124−2に入力された下り信号は、無線上に乗せるための変調が行われ、送信ビーム生成部129−1〜129−2へ出力される。
【0092】
ここで、アンテナ121−1〜121−nは無線基地局102の高所に設置され、1/2波長の間隔でアレイ状に配置されているため高いフェージング相関を持つ。そのため、送信ビーム生成部129−1〜129−2によって+45度の偏波と−45度の偏波において指向性ビームが生成されることとなる。送信ビーム生成部129−1〜129−2は一般的な適応アレイアンテナ処理を行うことにより、ビームステアリングやヌルステアリングを行うことができる。これにより、高品質な伝送路を確保することができる。
【0093】
送信ビーム生成部129−1〜129−2に入力された下りデータについて、指向性ビームが生成される。指向性ビームが生成された2つのデータ系列は、それぞれ+45度の偏波または−45度の偏波でアンテナ121−1〜121−nを介して無線端末局101へ送信される。+45度の偏波と−45度の偏波とは直交しているためフェージング相関は低く、MIMO伝送の条件を満足している。
【0094】
無線基地局102から送信された下りデータが、アンテナ111−1〜111−2にて受信されると、受信された下りデータがMIMO信号処理部116にてMIMO信号処理され、2つのデータ系列に分離される。ここで、アンテナ111−1〜111−2は見通し外を移動するため1/2波長の間隔でもフェージング相関は小さいため、MIMO信号処理部116によって、無線基地局102から送信された2つのデータ系列にきれいに分離することができる。
【0095】
そして、MIMO信号処理部116にて分離された2つのデータ系列は、並列−直列変換部117によって無線基地局102から送信された1つのデータ系列に変換される。
【0096】
以上説明したように、無線基地局102にて直交する2つの偏波特性を有するアンテナ121−1〜121−nを用いて、また、無線端末局101にてその中間の偏波特性を有するアンテナ111−1〜111−2を用いて、空間的に離したアンテナをMIMOのアンテナとして用いる。これにより、無線基地局102と無線端末局101との間にて偏波がずれていることによる伝送損失が発生するが、無線基地局102のアンテナ121−1〜121−nをアレイアンテナ化することにより損失を補い、さらに利得を得ることができる。
【0097】
また、無線基地局102ではアンテナ121−1〜121−nの間隔を広くとる必要がなく、複数のアンテナ121−1〜121−nを用いて指向性ビーム形成を行うことができる。つまり、指向性ビーム形成とMIMO伝送とを同時に実現することができる。
【0098】
また、無線基地局102にて、+45度の偏波特性及び−45度の偏波特性を有するアンテナの代わりに、右旋円偏波特性及び左旋円偏波特性を有するアンテナを用いたものであっても良い。
【0099】
図6は、無線基地局102にて、+45度の偏波特性及び−45度の偏波特性を有するアンテナの代わりに、右旋円偏波特性及び左旋円偏波特性を有するアンテナを用いた無線通信システムの一形態を示す図である。
【0100】
本形態は図6に示すように、図1に示した+45度の偏波特性及び−45度の偏波特性を有するアンテナ121−1〜121−nの代わりに右旋円偏波特性及び左旋円偏波特性を有するアンテナ130−1〜130−nが配置されている。
【0101】
これにより、上述したような+45度の偏波特性及び−45度の偏波特性を有するアンテナ121−1〜121−nを用いた形態と同様の効果が得られる。
【0102】
また、無線端末局101のアンテナ111−1〜111−2として、偏波特性が水平偏波特性を有するアンテナを用いた場合であっても、同じ効果を得ることは言うまでもない。
【0103】
なお、無線通信装置として、無線端末局と無線基地局とを例に挙げて説明したが、無線通信を行う装置であれば良く、無線端末局と無線基地局とに限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の無線通信システムの実施の一形態を示す図である。
【図2】図1に示した無線端末局の送信部の一構成例を示す図である。
【図3】図1に示した無線端末局の受信部の一構成例を示す図である。
【図4】図1に示した無線基地局の送信部の一構成例を示す図である。
【図5】図1に示した無線基地局の受信部の一構成例を示す図である。
【図6】無線基地局にて、+45度の偏波特性及び−45度の偏波特性を有するアンテナの代わりに、右旋円偏波特性及び左旋円偏波特性を有するアンテナを用いた無線通信システムの一形態を示す図である。
【図7】従来の無線通信システムの構成の一例を示す図である。
【図8】図7に示した無線端末局の送信部の一構成例を示す図である。
【図9】図7に示した無線端末局の受信部の一構成例を示す図である。
【図10】図7に示した無線基地局の送信部の一構成例を示す図である。
【図11】図7に示した無線基地局の受信部の一構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0105】
101 無線端末局
102 無線基地局
111−1〜111−2,121−1〜121−n,130−1〜130−n アンテナ
112,122 送信部
113,123 受信部
114−1〜114−2,124−1〜124−2 変調部
115,125 直列−並列変換部
116,126 MIMO信号処理部
117,127 並列−直列変換部
128−1〜128−2 受信ビーム生成部
129−1〜129−2 送信ビーム生成部
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線にて通信を行う無線通信システム及び無線通信装置に関し、特に複数のアンテナを用いて通信を行う無線通信システム及び無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信技術を用いた無線通信システムにおいて、伝送容量(スループット)の向上が必須の課題になっている。この課題を解決するために、送信装置が有する複数のアンテナからデータを無線上に送信し、複数のアンテナを有する受信装置にて当該データを受信する多入力多出力(MIMO:Multi Input Multi Output)通信方式についての研究及び開発が進められている。この多入力多出力通信方式については、送信装置及び受信装置に複数のアンテナをそれぞれ設置し、複数のアンテナを用いてデータを分割して同時に、つまり並列的に送受信することにより、伝送容量の向上を測ることが目的とされている。
【0003】
図7は、従来の無線通信システムの構成の一例を示す図である。
【0004】
図7に示した従来の無線通信システムは、無線端末局901と、無線基地局902とから構成されている。
【0005】
さらに無線端末局901には、アンテナ911−1〜911−2と、送信部912と、受信部913とが設けられている。
【0006】
アンテナ911−1〜911−2は、無線端末局901と無線基地局902との間における無線信号の送受信を行う垂直偏波特性を有するアンテナである。また、アンテナ911−1とアンテナ911−2との間の距離は、λ/2(λは波長)となっている。
【0007】
送信部912は、上り信号をアンテナ911−1〜911−2を介して無線端末局901から無線基地局902へ送信する。
【0008】
図8は、図7に示した送信部912の一構成例を示す図である。
【0009】
図7に示した送信部912には図8に示すように、変調部914−1〜914−2と、直列−並列変換部915とが設けられている。
【0010】
直列−並列変換部915は、無線端末局901から無線基地局902へ送信する上り信号を直列の信号から並列の信号へ変換する。
【0011】
変調部914−1〜914−2は、直列−並列変換部915にて並列に変換された上り信号を無線上に乗せるための変調を行い、アンテナ911−1〜911−2にそれぞれ出力する。
【0012】
また、受信部913は、無線基地局902から送信された下り信号をアンテナ911−1〜911−2を介して受信する。
【0013】
図9は、図7に示した受信部913の一構成例を示す図である。
【0014】
図7に示した受信部913には図9に示すように、MIMO信号処理部916と、並列−直列変換部917とが設けられている。
【0015】
MIMO信号処理部916は、アンテナ911−1〜アンテナ911−2にて受信された下り信号について従来のMIMO信号処理を行う。
【0016】
並列−直列変換部917は、MIMO信号処理部916にて信号処理された並列の下り信号を直列の信号へ変換する。
【0017】
また、無線基地局902には、アンテナ921−1〜921−2と、送信部922と、受信部923とが設けられている。
【0018】
アンテナ921−1〜921−2は、無線端末局901と無線基地局902との間における無線信号の送受信を行う垂直偏波特性を有するアンテナである。また、アンテナ921−1とアンテナ921−2との間の距離は、10λ(波長の10倍)となっている。これは、フェージング相関を小さくするためにアンテナ間隔を空ける必要があるためである。
【0019】
送信部922は、下り信号をアンテナ921−1〜921−2を介して無線基地局902から無線端末局901へ送信する。
【0020】
図10は、図7に示した送信部922の一構成例を示す図である。
【0021】
図7に示した送信部922には図10に示すように、変調部924−1〜924−2と、直列−並列変換部925とが設けられている。
【0022】
直列−並列変換部925は、無線基地局902から無線端末局901へ送信する下り信号を直列の信号から並列の信号へ変換する。
【0023】
変調部924−1〜924−2は、直列−並列変換部925にて並列に変換された下り信号を無線上に乗せるための変調を行い、アンテナ921−1〜921−2にそれぞれ出力する。
【0024】
また、受信部923は、無線端末局901から送信された上り信号をアンテナ921−1〜921−2を介して受信する。
【0025】
図11は、図7に示した受信部923の一構成例を示す図である。
【0026】
図7に示した受信部923には図11に示すように、MIMO信号処理部926と、並列−直列変換部927とが設けられている。
【0027】
MIMO信号処理部926は、アンテナ921−1〜アンテナ921−2にて受信された上り信号について従来のMIMO信号処理を行う。
【0028】
並列−直列変換部927は、MIMO信号処理部926にて信号処理された並列の上り信号を直列信号へ変換する。
【0029】
なお、図7〜11に示した無線端末局901、無線基地局902、送信部912,922、及び受信部913,923の構成については、本発明の特徴との比較に必要な従来の構成要素のみを示した。
【0030】
以上のように構成された無線端末局901と、無線基地局902との間にて、MIMO通信方式を用いた信号の送受信が行われている。
【0031】
また、無線基地局と無線端末局との間において、互いに同一の偏波特性を有するアンテナ対を複数用いてMIMO伝送を行う技術が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【0032】
また、どちらか一方の偏波を選択し、空間的に離れたアンテナグループで独立なデータを送信するMIMO伝送を行う技術が考えられている(例えば、特許文献2参照。)。
【0033】
また、偏波特性を制御することにより、良好なMIMO伝送を行う技術が考えられている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開2005−192185号公報
【特許文献2】特開2002−290148号公報
【特許文献3】特開2006−033306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
しかしながら、MIMO通信方式を用いて高速伝送を行うためには、アンテナ間のフェージング相関を低くするために、複数のアンテナ間それぞれの間隔を非常に大きくする必要がある。また、指向性ビームを形成するためには、アンテナ間のフェージング相関を大きくするために、複数のアンテナ間の間隔を小さくする必要がある。そのため、従来の方法ではMIMO伝送と、指向性ビーム形成とを同時に行うことは困難であるという問題がある。
【0035】
そこで、伝送路情報を送信側と受信側とで共有し、送信側及び受信側のアンテナの重み付け係数を算出する固有モード伝送と呼ばれるMIMO伝送方式が考えられている。しかし、このMIMO伝送方式においては、伝送路情報を共有するための仕組みが必要で、また演算も複雑になってしまうという問題がある。
【0036】
また、従来のMIMO伝送を行う場合、複数のアンテナ間のフェージング相関を低くするために、複数のアンテナ間のスペースを非常に大きくとる必要があり、アンテナ設置が困難になってしまうという問題がある。
【0037】
また、特許文献1に記載の技術においては、例えば、ある偏波特性を持つアンテナと、それに直交する偏波特性を持つアンテナとの2種類のアンテナを用いる場合、少なくとも必要な種類の対の数のアンテナを設けなければならないという問題点がある。また、受信特性の良い偏波特性を持つアンテナにおける受信信号のみが有効となり、設けられたアンテナ数に対する有効となるアンテナ数の割合が低くなってしまうという問題点がある。
【0038】
また、特許文献2に記載の技術においては、アンテナグループの中に偏波特性が互いに異なる複数のアンテナを設けなければならないという問題点がある。
【0039】
また、特許文献3に記載の技術においては、偏波特性の制御に関してのみ記載されており、ビーム形成に関しては記載されていない。
【0040】
本発明は、上述したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであって、高速、且つ高品質のデータ伝送を容易に実現でき、それに用いるアンテナを容易に設置することができる無線通信システム及び無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0041】
上記目的を達成するために本発明は、
互いに無線通信を行う第1及び第2の無線通信装置を有する無線通信システムにおいて、
前記第1の無線通信装置は、互いに直交する2つの偏波特性を持つ複数のアンテナを所定の間隔でアレイ状に配置し、
前記第2の無線通信装置は、前記2つの偏波特性の中間の角度の偏波特性を持つアンテナを有することを特徴とする。
【0042】
また、前記第1の無線通信装置は、右旋円偏波特性と左旋円偏波特性との2つの偏波特性を持つ複数のアンテナを所定の間隔でアレイ状に配置し、
前記第2の無線通信装置は、垂直偏波特性を持つアンテナを有することを特徴とする。
【0043】
また、無線通信を行う無線通信装置であって、
互いに直交する2つの偏波特性を持つ複数のアンテナを所定の間隔でアレイ状に配置する。
【0044】
また、右旋円偏波特性と左旋円偏波特性との2つの偏波特性を持つ複数のアンテナを所定の間隔でアレイ状に配置する。
【0045】
上記のように構成された本発明においては、第1の無線通信装置にて、互いに直交する2つの偏波特性を持つ複数のアンテナが所定の間隔でアレイ状に配置され、第1の無線通信装置と通信を行う第2の無線通信装置にて、2つの偏波特性の中間の角度の偏波特性を持つアンテナが具備される。
【0046】
これにより、指向性ビーム形成とMIMO伝送とを同時に実現することができる。また、伝送損失を補うことができ、また複数のアンテナ間のスペースを大きくする必要はない。
【発明の効果】
【0047】
以上説明したように本発明においては、第1の無線通信装置にて、互いに直交する2つの偏波特性を持つ複数のアンテナを所定の間隔でアレイ状に配置し、第1の無線通信装置と通信を行う第2の無線通信装置にて、2つの偏波特性の中間の角度の偏波特性を持つアンテナを有する構成としたため、高速、且つ高品質のデータ伝送を容易に実現でき、それに用いるアンテナを容易に設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0049】
図1は、本発明の無線通信システムの実施の一形態を示す図である。
【0050】
本形態は図1に示すように、第1の無線通信装置である無線基地局102と、第2の無線通信装置である無線端末局101との2つの無線通信装置から構成されている。無線端末局101は、ビル陰等の見通し外を移動する移動端末とする。
【0051】
さらに無線端末局101には、アンテナ111−1〜111−2と、送信部112と、受信部113とが設けられている。
【0052】
アンテナ111−1〜111−2は、無線端末局101と無線基地局102との間における無線信号の送受信を行う垂直偏波特性を有するアンテナである。また、アンテナ111−1とアンテナ111−2との間の距離は、1/2波長となっている。
【0053】
送信部112は、上り信号をアンテナ111−1〜111−2を介して無線端末局101から無線基地局102へ送信する。
【0054】
図2は、図1に示した送信部112の一構成例を示す図である。
【0055】
図1に示した送信部112には図2に示すように、変調部114−1〜114−2と、直列−並列変換部115とが設けられている。
【0056】
直列−並列変換部115は、無線端末局101から無線基地局102へ送信する上り信号を直列の信号から並列の信号へ変換する。ここでは、1つのデータ系列を任意の2つのデータ系列に分割する。
【0057】
変調部114−1〜114−2は、直列−並列変換部115にて並列に変換された上り信号を無線上に乗せるための変調を行い、アンテナ111−1〜111−2にそれぞれ出力する。
【0058】
また、受信部113は、無線基地局102から送信された下り信号をアンテナ111−1〜111−2を介して受信する。
【0059】
図3は、図1に示した受信部113の一構成例を示す図である。
【0060】
図1に示した受信部113には図3に示すように、MIMO信号処理部116と、並列−直列変換部117とが設けられている。
【0061】
MIMO信号処理部116は、アンテナ111−1〜アンテナ111−2にて受信された下り信号についてMIMO信号処理を行う。このMIMO信号処理は、従来のMIMO信号処理と同様であるため、ここでは説明しない。
【0062】
並列−直列変換部117は、MIMO信号処理部116にて信号処理された並列の下り信号を直列の信号へ変換する。ここでは、2つのデータ系列を1つのデータ系列に変換する。
【0063】
また、無線基地局102には、アンテナ121−1〜121−nと、送信部122と、受信部123とが設けられている。
【0064】
アンテナ121−1〜121−nは、無線端末局101と無線基地局102との間における無線信号の送受信を行う。また、アンテナ121−1〜121−nは、それぞれアンテナ111−1〜111−2の偏波方向に対して−45度及び+45度の角度を持った偏波特性をそれぞれ有している。それらは、−45度の偏波のポートと+45度の偏波のポートとを有し、それらのポートがそれぞれ送信部122及び受信部123に接続されている。また、アンテナ121−1〜121−nは、波長の1/2間隔(λ/2)でアレイ状に配置されている。また、アンテナ121−1〜121−nは一般的に無線基地局102の高所に設置される。
【0065】
送信部122は、下り信号をアンテナ121−1〜121−nを介して無線基地局102から無線端末局101へ送信する。
【0066】
図4は、図1に示した送信部122の一構成例を示す図である。
【0067】
図1に示した送信部122には図4に示すように、変調部124−1〜124−2と、直列−並列変換部125と、送信ビーム生成部129−1〜129−2が設けられている。
【0068】
直列−並列変換部125は、無線基地局102から無線端末局101へ送信する下り信号を直列の信号から並列の信号へ変換する。ここでは、1つのデータ系列を任意の2つのデータ系列に分割する。
【0069】
変調部124−1〜124−2は、直列−並列変換部125にて並列に変換された下り信号を無線上に乗せるための変調を行い、送信ビーム生成部129−1〜129−2へそれぞれ出力する。
【0070】
送信ビーム生成部129−1〜129−2は、変調部124−1〜124−2から出力された下り信号について指向性ビームを生成し、2つのデータ系列をアンテナ121−1〜121−nがそれぞれ有する−45度の偏波のポートと+45度の偏波のポートとにそれぞれ出力する。
【0071】
また、受信部123は、無線端末局101から送信された上り信号をアンテナ121−1〜121−nを介して受信する。
【0072】
図5は、図1に示した受信部123の一構成例を示す図である。
【0073】
図1に示した受信部123には図5に示すように、MIMO信号処理部126と、並列−直列変換部127と、受信ビーム生成部128−1〜128−2とが設けられている。
【0074】
受信ビーム生成部128−1〜128−2は、アンテナ121−1〜121−nがそれぞれ有する−45度の偏波のポートと+45度の偏波のポートとから出力された上り信号について指向性ビームを生成し、MIMO信号処理部126に出力する。
【0075】
MIMO信号処理部126は、受信ビーム生成部128−1〜128−2から出力された上り信号についてMIMO信号処理を行う。このMIMO信号処理は、従来のMIMO信号処理と同様であるため、ここでは説明しない。
【0076】
並列−直列変換部127は、MIMO信号処理部126にて信号処理された並列の上り信号を直列信号へ変換する。ここでは、2つのデータ系列を1つのデータ系列に変換する。
【0077】
なお、図1〜5に示した無線端末局101、無線基地局102、送信部112,122、及び受信部113,123の構成については、本発明に関する構成要素のみを示した。
【0078】
以下に、図1〜5に示すように構成された直交偏波を用いた無線通信システムにおける処理について説明する。
【0079】
まずは、無線端末局101から無線基地局102へ上り信号が送信される際の処理について説明する。
【0080】
直列−並列変換部115に入力された上り信号である1つのデータ系列が任意の2つのデータ系列に分割され、分割された2つのデータ系列が直列−並列変換部115から変調部114−1〜114−2へそれぞれ出力される。
【0081】
変調部114−1〜114−2に入力された上り信号は、無線上に乗せるための変調が行われ、アンテナ111−1〜111−2を介して無線基地局102へ送信される。
【0082】
ここで、アンテナ111−1とアンテナ111−2との間隔は1/2波長であるが、見通し外を移動するためフェージング相関が小さく、MIMO伝送の条件を満足している。
【0083】
その後、無線端末局101から送信された上り信号が無線基地局102にて受信される。
【0084】
ここで、アンテナ121−1〜121−nは無線基地局102の高所に設置され、1/2波長の間隔でアレイ状に配置されているため高いフェージング相関を持つ。そのため、受信ビーム生成部128−1〜128−2によって、+45度の偏波と−45度の偏波とにおける指向性ビームが生成されることとなる。受信ビーム生成部128−1〜128−2は一般的な適応アレイアンテナ処理を行うことにより、ビームステアリングやヌルステアリングを行うことができる。これにより、高品質な伝送路を確保することができる。
【0085】
無線端末局101から送信された上り信号が、アンテナ121−1〜121−nにて受信されると、上り信号が+45度の偏波特性で受信された場合、+45度の偏波のポートから出力され、また、上り信号が−45度の偏波特性で受信された場合は、−45度の偏波のポートから出力される。
【0086】
それぞれのポートから出力された上り信号について、受信ビーム生成部128−1〜128−2によって、+45度の偏波または−45度の偏波における指向性ビームが生成され、MIMO信号処理部126へ出力される。
【0087】
そして、MIMO信号処理部126にて入力された上り信号は、MIMO信号処理部126にてMIMO信号処理され、2つのデータ系列に分離される。ここで、受信ビーム生成部128−1〜128−2は、±45度の直交偏波を受信しており、その信号のフェージング相関は小さいため、MIMO信号処理部126によって送信側から送信された2つのデータ系列にきれいに分離することができる。
【0088】
MIMO信号処理部126によって分離された2つのデータ系列は、並列−直列変換部127によって1つのデータ系列に変換される。
【0089】
次に、無線基地局102から無線端末局101へ下り信号が送信される際の処理について説明する。
【0090】
直列−並列変換部125に入力された下り信号である1つのデータ系列が任意の2つのデータ系列に分割され、分割された2つのデータ系列が直列−並列変換部125から変調部124−1〜124−2へそれぞれ出力される。
【0091】
変調部124−1〜124−2に入力された下り信号は、無線上に乗せるための変調が行われ、送信ビーム生成部129−1〜129−2へ出力される。
【0092】
ここで、アンテナ121−1〜121−nは無線基地局102の高所に設置され、1/2波長の間隔でアレイ状に配置されているため高いフェージング相関を持つ。そのため、送信ビーム生成部129−1〜129−2によって+45度の偏波と−45度の偏波において指向性ビームが生成されることとなる。送信ビーム生成部129−1〜129−2は一般的な適応アレイアンテナ処理を行うことにより、ビームステアリングやヌルステアリングを行うことができる。これにより、高品質な伝送路を確保することができる。
【0093】
送信ビーム生成部129−1〜129−2に入力された下りデータについて、指向性ビームが生成される。指向性ビームが生成された2つのデータ系列は、それぞれ+45度の偏波または−45度の偏波でアンテナ121−1〜121−nを介して無線端末局101へ送信される。+45度の偏波と−45度の偏波とは直交しているためフェージング相関は低く、MIMO伝送の条件を満足している。
【0094】
無線基地局102から送信された下りデータが、アンテナ111−1〜111−2にて受信されると、受信された下りデータがMIMO信号処理部116にてMIMO信号処理され、2つのデータ系列に分離される。ここで、アンテナ111−1〜111−2は見通し外を移動するため1/2波長の間隔でもフェージング相関は小さいため、MIMO信号処理部116によって、無線基地局102から送信された2つのデータ系列にきれいに分離することができる。
【0095】
そして、MIMO信号処理部116にて分離された2つのデータ系列は、並列−直列変換部117によって無線基地局102から送信された1つのデータ系列に変換される。
【0096】
以上説明したように、無線基地局102にて直交する2つの偏波特性を有するアンテナ121−1〜121−nを用いて、また、無線端末局101にてその中間の偏波特性を有するアンテナ111−1〜111−2を用いて、空間的に離したアンテナをMIMOのアンテナとして用いる。これにより、無線基地局102と無線端末局101との間にて偏波がずれていることによる伝送損失が発生するが、無線基地局102のアンテナ121−1〜121−nをアレイアンテナ化することにより損失を補い、さらに利得を得ることができる。
【0097】
また、無線基地局102ではアンテナ121−1〜121−nの間隔を広くとる必要がなく、複数のアンテナ121−1〜121−nを用いて指向性ビーム形成を行うことができる。つまり、指向性ビーム形成とMIMO伝送とを同時に実現することができる。
【0098】
また、無線基地局102にて、+45度の偏波特性及び−45度の偏波特性を有するアンテナの代わりに、右旋円偏波特性及び左旋円偏波特性を有するアンテナを用いたものであっても良い。
【0099】
図6は、無線基地局102にて、+45度の偏波特性及び−45度の偏波特性を有するアンテナの代わりに、右旋円偏波特性及び左旋円偏波特性を有するアンテナを用いた無線通信システムの一形態を示す図である。
【0100】
本形態は図6に示すように、図1に示した+45度の偏波特性及び−45度の偏波特性を有するアンテナ121−1〜121−nの代わりに右旋円偏波特性及び左旋円偏波特性を有するアンテナ130−1〜130−nが配置されている。
【0101】
これにより、上述したような+45度の偏波特性及び−45度の偏波特性を有するアンテナ121−1〜121−nを用いた形態と同様の効果が得られる。
【0102】
また、無線端末局101のアンテナ111−1〜111−2として、偏波特性が水平偏波特性を有するアンテナを用いた場合であっても、同じ効果を得ることは言うまでもない。
【0103】
なお、無線通信装置として、無線端末局と無線基地局とを例に挙げて説明したが、無線通信を行う装置であれば良く、無線端末局と無線基地局とに限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の無線通信システムの実施の一形態を示す図である。
【図2】図1に示した無線端末局の送信部の一構成例を示す図である。
【図3】図1に示した無線端末局の受信部の一構成例を示す図である。
【図4】図1に示した無線基地局の送信部の一構成例を示す図である。
【図5】図1に示した無線基地局の受信部の一構成例を示す図である。
【図6】無線基地局にて、+45度の偏波特性及び−45度の偏波特性を有するアンテナの代わりに、右旋円偏波特性及び左旋円偏波特性を有するアンテナを用いた無線通信システムの一形態を示す図である。
【図7】従来の無線通信システムの構成の一例を示す図である。
【図8】図7に示した無線端末局の送信部の一構成例を示す図である。
【図9】図7に示した無線端末局の受信部の一構成例を示す図である。
【図10】図7に示した無線基地局の送信部の一構成例を示す図である。
【図11】図7に示した無線基地局の受信部の一構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0105】
101 無線端末局
102 無線基地局
111−1〜111−2,121−1〜121−n,130−1〜130−n アンテナ
112,122 送信部
113,123 受信部
114−1〜114−2,124−1〜124−2 変調部
115,125 直列−並列変換部
116,126 MIMO信号処理部
117,127 並列−直列変換部
128−1〜128−2 受信ビーム生成部
129−1〜129−2 送信ビーム生成部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに無線通信を行う第1及び第2の無線通信装置を有する無線通信システムにおいて、
前記第1の無線通信装置は、互いに直交する2つの偏波特性を持つ複数のアンテナを所定の間隔でアレイ状に配置し、
前記第2の無線通信装置は、前記2つの偏波特性の中間の角度の偏波特性を持つアンテナを有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
互いに無線通信を行う第1及び第2の無線通信装置を有する無線通信システムにおいて、
前記第1の無線通信装置は、右旋円偏波特性と左旋円偏波特性との2つの偏波特性を持つ複数のアンテナを所定の間隔でアレイ状に配置し、
前記第2の無線通信装置は、垂直偏波特性を持つアンテナを有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
無線通信を行う無線通信装置であって、
互いに直交する2つの偏波特性を持つ複数のアンテナを所定の間隔でアレイ状に配置する無線通信装置。
【請求項4】
無線通信を行う無線通信装置であって、
右旋円偏波特性と左旋円偏波特性との2つの偏波特性を持つ複数のアンテナを所定の間隔でアレイ状に配置する無線通信装置。
【請求項1】
互いに無線通信を行う第1及び第2の無線通信装置を有する無線通信システムにおいて、
前記第1の無線通信装置は、互いに直交する2つの偏波特性を持つ複数のアンテナを所定の間隔でアレイ状に配置し、
前記第2の無線通信装置は、前記2つの偏波特性の中間の角度の偏波特性を持つアンテナを有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
互いに無線通信を行う第1及び第2の無線通信装置を有する無線通信システムにおいて、
前記第1の無線通信装置は、右旋円偏波特性と左旋円偏波特性との2つの偏波特性を持つ複数のアンテナを所定の間隔でアレイ状に配置し、
前記第2の無線通信装置は、垂直偏波特性を持つアンテナを有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
無線通信を行う無線通信装置であって、
互いに直交する2つの偏波特性を持つ複数のアンテナを所定の間隔でアレイ状に配置する無線通信装置。
【請求項4】
無線通信を行う無線通信装置であって、
右旋円偏波特性と左旋円偏波特性との2つの偏波特性を持つ複数のアンテナを所定の間隔でアレイ状に配置する無線通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−124974(P2008−124974A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308982(P2006−308982)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】
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