説明

無線通信システム

【課題】直接通信中の無線端末装置でも緊急通話は迅速に受信することができるようにした無線通信システムを提供する。
【解決手段】無線基地局2と無線通信チャネル8を介して接続した無線端末装置7に、無線基地局2からの緊急通報を受信する基地局用受信機12と、他の無線端末装置9a,9nと直接通信が可能な直接通信用受信機13と、他の無線端末装置9a,9nと直接通信が可能な送信機14と、基地局用受信機12が緊急通報を受信したことを検出したとき送信機14を基地局用受信機12に接続する切替スイッチ手段18を設け、直接通信状態でも直ちに無線端末装置7を中継して、無線端末装置7と直接通信を行っている他の無線端末装置9a,9nで緊急通報を受信できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線端末装置で緊急通報を受信するように構成した無線通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の無線端末装置で緊急通報を受信するように構成した無線通信システムとして、指令端末装置からの緊急通報を無線基地局からの無線通話チャネルを介して受信する無線端末装置と、無線基地局を経由しないで上述の無線端末装置との間で直接通信可能な他の無線端末装置を使用するものが知られている。このような無線通信システムでは、無線基地局からの緊急通報を受信可能な無線端末装置と、他の無線端末装置との間で直接通信を行っているときに、無線基地局からの緊急通報が送信されると、無線基地局からの緊急通報を受信可能な無線端末装置が直接通信用周波数で使用中であるため、無線基地局からの緊急通報を受信することができない。そこで、従来の無線通信システムでは、緊急通報に先立って指令端末装置から直接通信を強制的に遮断する信号を送信し、その後に、指令端末装置から緊急通報を発するようにしていた(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2007−53572号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の無線通信システムでは、指令端末装置からの緊急通報に先だって直接通信を遮断する信号を送信しなければならず、指令端末装置の構成や処理手順を複雑にしたり、緊急通報の通信遅れを生じさせてしまう。
【0004】
本発明の目的は、直接通信中の無線端末装置でも緊急通話は迅速に受信することができるようにした無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記目的を達成するために、指令端末装置からの緊急通報を所定の無線端末装置に対して送信する無線基地局と、この無線基地局からの無線通信チャネルを介して緊急通報を受信する無線端末装置と、前記無線基地局を経由せずにこの無線端末装置と直接通信可能な他の無線端末装置とを備えた無線通信システムにおいて、前記無線基地局から受信する前記無線端末装置に、前記無線基地局からの緊急通報を受信する基地局用受信機と、前記他の無線端末装置と直接通信が可能な直接通信用受信機と、前記他の無線端末装置と直接通信が可能な送信機と、前記基地局用受信機が緊急通報を受信したことを検出したとき前記送信機と前記基地局用受信機とを接続して緊急通報を他の無線端末装置に中継送信する切替スイッチ手段とを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の無線通信システムによれば、従来のように無線基地局から受信する無線端末装置と他の無線端末装置との間での直接通信を想定して、この直接通信を遮断する信号を送信してから緊急通報を送信するなどの処理を施す必要はなくなり、指令端末装置を複雑にすることなく、直接通信状態を継続しながら直ちに無線基地局から受信する無線端末装置を中継して、これと直接通信を行っている他の無線端末装置でも緊急通報を速やかに受信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の最良の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図2は、本発明の一実施の形態による無線通信システムを示す概略構成図である。
アプローチ線1を介して無線基地局2に接続された回線制御装置3には、アプローチ線4を介して指令端末装置5が接続されている。無線基地局2は、その通信ゾーン6内に在圏する少なくとも一台の無線端末装置7と無線通信チャネル8を介して通信可能に構成され、また、この無線端末装置7は通信ゾーン6内の少なくとも一台の他の無線端末装置9a,9nと無線通信チャネル10により直接通信可能に構成されている。ここで無線端末装置7は、例えば車載無線端末装置であり、他の無線端末装置9a,9nは、例えば携帯無線端末装置である。
【0008】
図1は、上述した無線端末装置7の具体構成を示すブロック構成図である。
無線端末装置7には共用アンテナ11と、無線基地局2からの受信用周波数に設定されて通信信号の受信を行う基地局用受信機12と、他の無線端末装置9a,9nと直接通信が可能な直接通信用周波数に変換処理して通信信号の受信を行う直接通信用受信機13と、他の無線端末装置9a,9nと直接通信が可能な直接通信用周波数に変換処理して通信信号を送信する送信機14と、通信信号を音声変換して出力するスピーカ15と、音声信号を入力するためのマイク16と、スピーカ15と基地局用受信機12または直接通信用受信機13とを切り替え接続する切替スイッチ手段17と、送信機14とマイク16または基地局用受信機12とを切り替え接続する切替スイッチ手段18と、これら両切替スイッチ17,18の切替制御などを行う制御部19とを有している。
【0009】
この制御部19は、周知の制御の他に、他の無線端末装置9a,9nとの直接通信時に切替スイッチ手段17,18を実線側に切り替えて保持し、スピーカ15を直接通信用受信機13に接続し、また送信機14をマイク16に接続する。また、この制御部19は、基地局用受信機12が無線通信チャネル8を介して無線基地局2からの緊急通報を受信したことを検出したとき切替スイッチ手段17,18を点線側に切り替えて、スピーカ15を基地局用受信機12に接続し、また送信機14を基地局用受信機12に接続する。
【0010】
次に、指令端末装置3から緊急通報が発せられた場合の無線端末装置7の動作について説明する。
指令端末装置5で緊急通信開始操作を行って無線端末装置7に対して緊急通報を行うと、この緊急通報信号は、アプローチ線4、回線制御装置3およびアプローチ線1を介して無線基地局2に送られ、無線基地局2からは無線通信チャネル8を介して通信ゾーン6内に在圏する無線端末装置7に送信される。このとき、無線端末装置7と他の無線端末装置9a,9nが直接通信状態にある場合、無線端末装置7は、図2に示したように制御部19によって切替スイッチ手段17,18を実線側に切り替えられて、スピーカ15が直接通信用受信機13に接続され、また送信機14がマイク16に接続されている。
【0011】
しかしながら、無線端末装置7の基地局用受信機12が無線通信チャネル8を介して無線基地局2からの緊急通報を受信したことを検出すると、制御部19は切替スイッチ手段17,18を点線側に切り替えて、スピーカ15を基地局用受信機12に接続し、また送信機14を基地局用受信機12に接続する。
【0012】
従って、受信した緊急通報は、基地局用受信機12から切替スイッチ手段17を介して無線端末装置7のスピーカ15から音声出力される。また、基地局用受信機12からの緊急通報信号が切替スイッチ手段18を介して送信機14に送られ、この送信機14から直接通信していた他の無線端末装置9a,9nに送出されることになる。このため、他の無線端末装置9a,9nは無線端末装置7との直接通信を遮断することなく、その直接通信状態で直ちに無線端末装置7を中継して緊急通報を受信することができる。
【0013】
上述したように、指令端末装置5からの緊急通報を無線通信チャネル8から送信する無線基地局2と、この無線基地局2からの無線通信チャネル8を介して送信された緊急通報を受信する無線端末装置7と、無線基地局2を経由することなく無線端末装置7との間で直接通信を行う他の無線端末装置9a,9nとを備えて無線通信システムを構成し、上述した無線端末装置7に、無線基地局2からの緊急通報を受信する基地局用受信機12と、他の無線端末装置9a,9nと直接通信が可能な直接通信用受信機13と、他の無線端末装置9a,9nと直接通信が可能な送信機14と、基地局用受信機12が無線通話チャネル8を介して無線基地局2からの緊急通報を受信したことを検出したとき送信機14を基地局用受信機12に接続する切替スイッチ手段18を設けているため、従来のように無線端末装置7と他の無線端末装置9a,9nとの間での直接通信を想定して、この直接通信を遮断する信号を送信してから緊急通報を送信するなどの処理を施す必要はなくなり、指令端末装置5を複雑にすることなく、直接通信状態で直ちに無線端末装置7を中継して、無線端末装置7と直接通信を行っている他の無線端末装置9a,9nでも緊急通報を受信することができる。
【0014】
上述した無線端末装置7は、例えば車載無線端末装置として構成されるため、収納スペースや電源容量を容易に確保することができ、この無線端末装置7に、無線基地局2からの受信用周波数に設定されて通信信号の受信を行う基地局用受信機12と、他の無線端末装置9a,9nと直接通信が可能な直接通信用周波数に設定して通信信号の受信を行う直接通信用受信機13と、他の無線端末装置9a,9nと直接通信が可能な直接通信用周波数に変換処理して通信信号を送信する送信機14と、基地局用受信機12が緊急通報を受信したことを検出したとき送信機14と基地局用受信機12を接続する切替スイッチ手段18とを容易に付設することができる。
【産業上の利用可能性】
【0015】
本発明による無線通信システムは、図1に示した構成以外の他の構成にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態における無線通信システムで使用する無線端末装置を示すブロック構成図である。
【図2】図1に示した無線端末装置を使用した無線通信システムを示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0017】
1 アプローチ線
2 無線基地局
3 回線制御装置
4 アプローチ線
5 指令端末装置
6 通信ゾーン
7 無線端末装置
8 無線通話チャネル
9a,9n 無線端末装置
10 無線通話チャネル
12 基地局用受信機
13 直接通信用受信機
14 送信機
15 スピーカ
16 マイク
17,18 切替スイッチ
19 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指令端末装置からの緊急通報を所定の無線端末装置に対して送信する無線基地局と、この無線基地局からの無線通信チャネルを介して緊急通報を受信する無線端末装置と、前記無線基地局を経由せずにこの無線端末装置と直接通信可能な他の無線端末装置とを備えた無線通信システムにおいて、前記無線基地局から受信する前記無線端末装置に、前記無線基地局からの緊急通報を受信する基地局用受信機と、前記他の無線端末装置と直接通信が可能な直接通信用受信機と、前記他の無線端末装置と直接通信が可能な送信機と、前記基地局用受信機が緊急通報を受信したことを検出したとき前記送信機と前記基地局用受信機とを接続して緊急通報を他の無線端末装置に中継送信する切替スイッチ手段とを設けたことを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−68192(P2010−68192A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231908(P2008−231908)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】