説明

無線通信システム

【課題】通話中の無線移動局が着信の存在を認識することができる無線通信システムを提供する。
【解決手段】複数の無線移動局と無線通信する無線基地局14を有する無線通信システムであって、発信元の無線移動局から発信先の無線移動局12に着信があり、着信時に発信先の無線移動局12が通話中であった場合、無線基地局14から発信先の無線移動局12に、着信があった旨のショートメッセージを伝送することを特徴とする無線通信システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の無線移動局にサービスを提供する無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の無線通信システムは、2者間で通話中の無線移動局に第3者の無線移動局から着信があると、無線移動局間の無線中継を行う無線基地局が第3者の無線移動局に、通話中の無線移動局への呼接続ができない旨を通知する。
【0003】
また、関連する技術として、以下の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−13302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の無線通信システムでは、前述のように、無線基地局が発信元の無線移動局に通話中の無線移動局と接続できないことを伝えるものの、通話中であった発信先の無線移動局に対しては何ら情報を伝送しない。このため、発信先の無線移動局は発信元の無線移動局から着信があったことを認識することができないという問題がある。
【0006】
本発明は、発信元の無線移動局から着信があったことを、着信時に通話中であった発信先の無線移動局が認識することができる無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様である無線通信システムは、複数の無線移動局と無線通信する無線基地局を有する無線通信システムであって、発信元の無線移動局から発信先の無線移動局に着信があり、該着信時に前記発信先の無線移動局が通話中であった場合、前記無線基地局から発信先の無線移動局に、前記着信があった旨のショートメッセージを伝送する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発信元の無線移動局から着信があったことを、着信時に通話中であった発信先の無線移動局が認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態における無線通信システムの模式図である。
【図2】本実施の形態における無線通信システムの無線移動局のブロック図である。
【図3】本実施の形態における無線通信システムの無線基地局のブロック図である。
【図4】本実施の形態における無線通信システムのショートメッセージ個別伝送のシーケンス図である。
【図5】本実施の形態における無線通信システムのショートメッセージ着信メッセージ内容を示すテーブルである。
【図6】本実施の形態における無線通信システムのショートメッセージ着信応答メッセージ内容を示すテーブルである。
【図7】本実施の形態における無線通信システムの機能チャネル構成を示すテーブルである。
【図8】本実施の形態における無線通信システムの物理チャネル構成を示す図であり、(a)は、無線基地局から無線移動局へ伝送されるフレーム構成図であり、(b)は、無線移動局から無線基地局へ伝送されるフレーム構成図であり、(c)は、無線移動局の無線キャリアの送信タイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1は、本実施の形態における無線通信システム1の模式図である。無線通信システム1は、無線移動局11〜13及び無線基地局14を有する。図2は、本実施の形態における無線通信システム1の無線移動局11〜13のブロック図である。図3は、本実施の形態における無線通信システム1の無線基地局14のブロック図である。
【0011】
無線移動局11〜13は、無線基地局14や無線移動局11〜13間で無線通信を行う局であり、車載型、携帯型及び可搬型等のタイプがある。
【0012】
無線移動局11〜13は、図2に示すように、各々、送信装置21、受信装置22、信号の送受信等をCPU(Central Processing Unit)により制御する制御装置23、無線基地局14から受信したショートメッセージ等の情報を記憶する記憶装置24、及び表示部(不図示)や操作部(不図示)等を有する付属装置25を備える。また、無線移動局11〜13には各々特異な個別番号が付与され、無線基地局14や統制局15により識別されている。なお、本実施の形態では、制御装置23が、ショートメッセージ着信メッセージの受信及びショートメッセージ着信応答メッセージの送受信動作を制御する。
【0013】
無線基地局14は、無線移動局11〜13との無線通信を行う局であり、有線回線又はリンク無線回線等のエントランス回線を用いて統制局15の回線制御装置と接続されている。無線基地局14は、図3に示すように、信号の送信装置14a、受信装置14b、送信装置14a及び受信装置14b等をCPUにより制御する基地局制御装置14c、無線移動局11〜13からの発信要求情報等の情報を記憶する記憶装置14d、統制局15とデータの送受信を行う伝送装置14e及び監視装置14fを備える。なお、本実施の形態では、基地局制御装置14cがショートメッセージ着信メッセージの発信及びショートメッセージ着信応答メッセージの受信動作を制御する。
【0014】
次に、本実施の形態にかかる無線通信システム1の動作について説明する。以下には、無線移動局11と通話中の無線移動局12に無線移動局13から着信があったことを伝送する動作について説明する。図4は、本実施の形態における無線通信システム1のショートメッセージ個別伝送のシーケンス図である。図5は、本実施の形態における無線通信システム1のショートメッセージ着信メッセージ内容を示すテーブルである。図6は、本実施の形態における無線通信システム1のショートメッセージ着信応答メッセージ内容を示すテーブルである。
【0015】
まず、2者間で通話中の無線移動局11及び12は、(社)電波産業界策定の標準規格ARIB STD−T79に記載の複信個別通信のシーケンス(不図示)に従い無線基地局14を介して通話している。そして、第3者の無線移動局13は無線移動局12に対して通話要求を伝送する。この際、無線移動局12は通話中であるため通信リンクが解放されず、無線移動局13からの通話要求に対応することができない。
【0016】
そこで、無線移動局12は、無線基地局14を介して無線移動局13に通話中である旨の応答を伝送する。この応答を受信した無線移動局13は、無線移動局12が通話中である旨の音や振動等を発生し、無線移動局13の操作者に通話要求の無線チャネル切断を促す。
【0017】
一方、無線基地局14は、無線移動局13から無線移動局12への通話要求を受信するとともに、この通話要求を通話管理情報として記憶装置14dに記憶する。そして、無線基地局14は、無線移動局11及び12の通話が終了した後に無線移動局11及び12間の通信リンクを解放する。
【0018】
その後、無線基地局14は、記憶装置14dから通話管理情報を読み出した後、図4に示すシーケンス図に従い、図5に示すショートメッセージ着信メッセージ内容を無線移動局12に伝送する(S1)。そして、無線移動局12は、ショートメッセージ着信メッセージ内容を受信し記憶装置24に記憶した後、図6に示すショートメッセージ着信応答メッセージ内容を無線基地局14に伝送する(S2)。尚、図4に示すUIとは、非番号制情報(Unnumbered Information)であり、シーケンス番号を使用しない情報を表す。
【0019】
ここで、図5及び図6に示すショートメッセージ着信メッセージ及びショートメッセージ着信応答メッセージ(以下、適宜「ショートメッセージ」と称する)の情報要素について説明する。メッセージ種別はショートメッセージの機能を識別するために用いる情報であり、ショートメッセージの種別情報等を有する。発信者識別はショートメッセージの発信元を識別するために用いる情報であり、発信者識別内容長や発信者の市内番号や短縮番号の情報等を有する。
【0020】
呼出番号はショートメッセージの着信先を識別するために用いる情報要素である。呼出番号は、無線基地局14から無線移動局12に発信される場合、着信先の無線移動局12の個別番号となる。また、呼出番号は、無線移動局12から無線基地局14に発信される場合、無線基地局14の呼出番号となる。
【0021】
メッセージ番号はショートメッセージ伝送において受信者側で表示するメッセージ番号に関する情報であり、共通定型文メッセージ等を有する。警告・表示は、ショートメッセージ伝送において受信者側で警報制御、表示制御及び発信者識別を行うために用いる情報であり、警報音を発生させる情報やメッセージを表示させる情報等を有する。理由表示は、呼接続中断の理由を表すための情報であり、無線移動局12が未登録である情報や利用可能チャネルがない旨の情報等を有する。
【0022】
次に、本実施の形態における無線通信システム1の通信方式について説明する。無線通信システム1は、無線回線の通信をTDM(Time Division Multiplexer)/TDMA(Time Division Multiple Access)方式により行う。TDM/TDMA方式では、無線キャリアを一定時間間隔のフレームに区切り、そのフレームをスロットに分割している。
【0023】
続いて、本実施の形態における無線通信システム1の無線回路構成について説明する。図7は、本実施の形態における無線通信システム1の機能チャネル構成を示すテーブルである。図8は、本実施の形態における無線通信システム1の物理チャネル構成を示す図であり、図8(a)は、無線基地局14から無線移動局11〜13へ(下り)伝送されるフレーム構成図であり、図8(b)は、無線移動局11〜13から無線基地局14(上り)へ伝送されるフレーム構成図であり、図8(c)は、無線移動局11〜13の無線キャリアの送信タイミングを示す図である。
【0024】
無線通信システム1の通信に使用される無線チャネルは、制御用チャネルと通信用チャネルとで構成される。これらは、無線チャネルを構成するスロットの種類により分類される。
【0025】
制御用チャネルは回線の接続制御を行う物理チャネルである。制御用チャネルで伝送される機能チャネルは、図7に示す機能チャネル構成中の共通アクセスチャネルとなる。
【0026】
通信用チャネルは、無線基地局14から無線移動局11〜13に対して個別に割り当てられ、データ、ファクシミリ等の非音声系の信号伝送や通話が行われる物理チャネルである。通信用チャネルで伝送される機能チャネルは、図7に示す機能チャネル構成中のユーザ個別チャネルとなる。以下に、本実施の形態における機能チャネル構成を、図7を用いて説明する。
【0027】
無線通信システム1の機能チャネルは、共通アクセスチャネル(CAC:Common Access Channel)とユーザ個別チャネル(USC:User Specific Channel)を有する。共通アクセスチャネルは、情報報知及び呼接続等のために移動無線局11〜13を扱う各操作者が共通に使用するチャネルである。ユーザ個別チャネルは、各操作者が通信のために専用に使用するチャネルである。以下に、共通アクセスチャネル及びユーザ個別チャネルの機能チャネル構成について詳述する。
【0028】
共通アクセスチャネルは、報知チャネル(BCCH:Broadcast Control Channel)、共通制御チャネル(CCCH:Common Control Channel)及びユーザパケットチャネル(UPCH:User Packet Channel)を有する。報知チャネルとは、無線基地局14から無線移動局11〜13に対して制御情報を報知するための片方向チャネルを表し、チャネル構造に関する情報、システム情報、規制情報等を無線基地局14から無線移動局11〜13に転送する。
【0029】
共通制御チャネルは、呼接続に必要な制御情報転送を行うポイント−マルチポイントの双方向チャネルである。また、共通制御チャネルは、無線移動局11〜13の間欠受信動作を実現するため、一斉呼出チャネル(PCH:Paging Channel)及び個別ゾーン用シグナリングチャネル(SCCH:Signaling Control Channel)に分類される。一斉呼出チャネルは、一斉呼出エリア内の全無線基地局から全無線移動局に対して、一斉呼出しのために用いる片方向チャネルである。個別ゾーン用シグナリングチャネルは、無線基地局14と無線移動局11〜13とが情報を転送するための双方向チャネルであり、無線ゾーン毎に独立の情報を転送する機能を有する。
【0030】
ユーザパケットチャネルは、ポイント−マルチポイントの双方向チャネルであり、通信システム1に関する制御データを無線基地局14と無線基地局11〜13との間で転送する。
【0031】
ユーザ個別チャネルには、トラヒックチャネル(TCH:Traffic Channel)、付随制御チャネル(ACCH:Associated Control Channel)、ハウスキーピングチャネル(RCH:Radio Channel)及び同期バースト(SB:Synchronous Burst)を有する。
【0032】
トラヒックチャネルは、ユーザ情報をエンド−エンドに転送する双方向チャネルである。付随制御チャネルは、ユーザ個別チャネルに割り当てられたトラヒックチャネルに付随して、無線基地局14と無線移動局11〜13との間で転送される双方向チャネルである。また、付随制御チャネルは、高速付随制御チャネル(FACCH:Fast Associated Control Channel)及び低速付随制御チャネル(SACCH:Slow Associated Control Channel)に分類される。高速付随制御チャネルは、一時的にトラヒックチャネル又はユーザパケットチャネルをスチールして高速のデータ伝送を行うチャネルである。低速付随制御チャネルは、トラヒックチャネルに付随し低速データ伝送を行うチャネルである。
【0033】
ハウスキーピングチャネルは、トラヒックチャネルに付随し、無線チャネルの維持のために使用されるチャネルである。同期バーストは、通信用物理チャネルの設定時とチャネルの切り替え時に同期確立のために送信する信号である。
【0034】
本実施の形態におけるショートメッセージは、図7に記載の共通アクセスチャネルの個別ゾーン用シグナリングチャネルにより伝送される。
【0035】
次に、本実施の形態における無線通信システム1の物理チャネル構成を、図8を用いて説明する。
【0036】
無線通信システム1の物理チャネルは、図8(a)及び(b)に示すように、無線キャリア上の多重数が4であるため、4スロット長(40msec)を基本フレーム長として構成される。無線基地局14から無線移動局11〜13への下りフレームと、無線移動局11〜13から無線基地局14への上りフレームとは対の関係を有する。尚、図8(a)中、送信オフセットとは下りフレームに対する上りフレームの時間的な遅れを表す。フレームオフセットとは、上りフレームに対する下りフレームの時間的な遅れを表す。本実施の形態では、いずれのオフセットも20msecである。また、図8(c)に記載のCH1〜CH4はスロットを表す。Rx及びTxは、各々無線キャリアの受信タイミング及び送信タイミングを表す。
【0037】
以上のように、本実施の形態にかかる無線通信システム1は、無線移動局11と通話している無線移動局12に第3者の無線移動局13から着信があった場合、通話終了後に無線基地局14から無線移動局12へショートメッセージを伝送する。このため、無線移動局12は、無線移動局11との通話中に着信があったことを認識することができる。
【0038】
本実施の形態における無線通信システム1は、無線移動局12の通話が終了した後に、無線基地局14が無線移動局12へショートメッセージを伝送するが、無線移動局12の通話中にショートメッセージを伝送することも可能である。この態様では、通話中にショートメッセージを受信した無線移動局12は、通話中であっても、音や振動等により無線移動局12の操作者に着信があった旨を知らせることができる。さらに、無線移動局12は、通話中にショートメッセージを付属装置25の表示部に表示することができる。このため、無線移動局12は、通話中であっても直ちに無線移動局13から着信があったことを認識することができる。また、無線移動局12は、無線移動局13との通話を優先させたい場合には、無線移動局11との通話を保留又は終了し、無線移動局13と通話を行うことができる。
【0039】
尚、無線基地局14はショートメッセージを通話中の無線移動局12に伝送する場合、共通アクセスチャネルの個別ゾーン用シグナリングチャネルではショートメッセージを認識することができない。このため、無線基地局14は、図7に記載のユーザ個別チャネルの付随制御チャネルを用いて、通話中の無線移動局12にショートメッセージを伝送することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 無線通信システム、11〜13 無線移動局、14 無線基地局、14a及び21 送信装置、14b及び22 受信装置、14c 基地局制御装置、14d及び24 記憶装置、14e 伝送装置、14f 監視装置、15 統制局、23 制御装置、25 付属装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線移動局と無線通信する無線基地局を有する無線通信システムであって、
発信元の無線移動局から発信先の無線移動局に着信があり、該着信時に前記発信先の無線移動局が通話中であった場合、前記無線基地局から発信先の無線移動局に、前記着信があった旨のショートメッセージを伝送することを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−217220(P2011−217220A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84840(P2010−84840)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】