説明

無線通信システム

【課題】スマートキーレスシステム性能の向上を図る。
【解決手段】車載機1は、CPU10と、認証コード、認証要求信号の電界強度閾値、及び外乱ノイズの電界強度判定用閾値を記憶するメモリ11と、認証要求信号の送信回路12と、認証応答信号の受信回路13とを備え、携帯機2は、CPU20と、認証コードメモリ22と、認証要求信号の受信回路24と、認証応答信号の送信回路23と、認証要求信号の電界強度と外来ノイズの電界強度を測定する電界強度測定部27とを備え、携帯機2は、車載機1からの認証要求信号を受信し、該認証要求信号の電界強度と外乱ノイズの電界強度を測定して両電界強度を含む認証応答信号を送信し、車載機1は、認証応答信号を受信して、該認証応答信号に含まれる外乱ノイズの電界強度レベルを外乱ノイズの電界強度判定用閾値と比較した結果に応じて認証要求信号の送信出力レベルを変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外乱ノイズの影響を受けにくいスマートキーレスエントリーシステムを実現するための無線通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のドアの施錠や解錠を、自動車のユーザーによって携帯される携帯無線装置からの遠隔操作によって行うことを可能とするキーレスエントリーシステムが知られている。また、携帯無線装置を操作することなく、ドアの施錠や解錠を行うスマートキーレスエントリーシステムが知られている。
【0003】
特許文献1では、車載機と携帯機を有するキーレスエントリーシステムにおいて、携帯機に内蔵したRSSI(Received Signal Strength Indicator)機能を使用して、携帯機と車載機の距離を測定し、あらかじめ定められた距離の閾値を超えるかどうかで、ドアの施解錠の許可・禁止や、イグニション操作の許可・禁止を判断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−319845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、RSSI機能を用いて車載機と携帯機の間の距離を測定する上で、外乱ノイズの影響を受けて、正確な距離測定が困難となり、不本意なドアの施錠・解錠動作や、イグニション操作の許可・禁止や、誤ったブザー吹鳴などの警報出力を行うケースが考えられる。
【0006】
また、スマートキーレスエントリーシステムでは、車内での携帯機の認証通信を行う上で、外乱ノイズの影響を受けることを防ぐために、車載機からの通信電力を大きめに出力する場合があり、これが車内で聴取中のラジオへのノイズ混入の原因になることが考えられる。
【0007】
この発明は、このような背景に鑑みてなされたもので、RSSI機能による距離測定を精度よく実施できるようにし、スマートキーレエントリースシステム性能の向上を実現した無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る無線通信システムは、車両に搭載される、無線通信機能を有する車載機と、車両ユーザーによって携帯される、無線通信機能を有する携帯機とで構成される無線通信システムであって、前記車載機は、CPUと、認証コード、認証要求信号の電界強度閾値、及び外乱ノイズの電界強度判定用閾値を記憶するメモリと、認証要求信号を送信する送信回路と、認証応答信号を受信する受信回路とを備え、前記携帯機は、CPUと、認証コードを記憶するメモリと、前記認証要求信号を受信する受信回路と、前記認証応答信号を送信する送信回路と、前記認証要求信号の電界強度と外来ノイズの電界強度を測定する電界強度測定部とを備え、前記携帯機は、前記車載機から送信された認証要求信号を受信し、前記認証要求信号の電界強度と外乱ノイズの電界強度を測定して前記両電界強度を含む認証応答信号を送信し、前記車載機は、前記認証応答信号を受信して、該認証応答信号に含まれる外乱ノイズの電界強度レベルを前記外乱ノイズの電界強度判定用閾値と比較
することにより、前記外乱ノイズの電界強度レベルに応じて、認証要求信号の送信出力レベルを変更する機能を有するものである。
【0009】
また、車両に搭載される、無線通信機能を有する車載機と、車両ユーザーによって携帯される、無線通信機能を有する携帯機とで構成される無線通信システムであって、前記車載機は、CPUと、認証コード、認証要求信号の電界強度閾値、及び外乱ノイズの電界強度判定用閾値を記憶するメモリと、認証要求信号を送信する送信回路と、認証応答信号を受信する受信回路とを備え、前記携帯機は、CPUと、認証コードを記憶するメモリと、前記認証要求信号を受信する受信回路と、前記認証応答信号を送信する送信回路と、前記認証要求信号の電界強度と外来ノイズの電界強度を測定する電界強度測定部とを備え、前記携帯機は、前記車載機から送信された認証要求信号を受信し、前記認証要求信号の電界強度と外乱ノイズの電界強度を測定して前記両電界強度を含む認証応答信号を送信し、前記車載機は、前記認証応答信号を受信して、該認証応答信号に含まれる外乱ノイズの電界強度レベルを前記外乱ノイズの電界強度判定用閾値と比較することにより、前記外乱ノイズの電界強度レベルに応じて、認証要求信号の送信出力レベルを変更する機能と、前記携帯機の受信感度を変更する指令を含む認証IDを送信する機能とを有するものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、RSSI機能を用いたスマートキーレスシステムにおいて、車載機は、外乱ノイズが無線通信の妨害となるレベルであると判断された場合、無線信号の送信出力レベルの値を引き上げ、車載機と携帯機の間の距離判定閾値を引き上げて、S/N比を向上させるため、外乱ノイズの高い場合にのみ送信出力を上げることができるので、送信出力を上げる必要が無い場合に使用電力の低減や、ラジオノイズの低減が可能になる。
【0011】
また、車載機は、携帯機で測定した外乱ノイズを、外乱ノイズのレベルを判定する閾値と比較することによって、外乱ノイズがRSSI回路による通信距離測定結果の信頼性を損なうレベルであると判断された場合、RSSI回路を用いた携帯機から車載機までの距離測定方式を中断し、携帯機のCPUを起動できる距離以内にあるかを判断する方式に切り替えることにより、大きな位置推定の誤りを防止することができる。
【0012】
従って、この発明によれば、RSSI機能を用いたスマートキーレスシステムにおいて、外乱ノイズが大きい場合においても、携帯機と車載機との間の無線通信を継続することが可能となり、また、外乱ノイズが低い場合には車載機からの送信出力レベルを低減することが可能となり、車両消費電力の低減、ラジオノイズの低減を実現することが可能な無線通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1に係るスマ−トキーレスエントリーシステムの概略構成図である。
【図2】実施の形態1における車載機の回路構成図である。
【図3】実施の形態1における携帯機の回路構成図である。
【図4】実施の形態1に係るスマ−トキーレスエントリーシステムの動作を説明するフローチャートである。
【図5】実施の形態1に係るスマ−トキーレスエントリーシステムの動作を説明するタイムチャートである。
【図6】この発明の実施の形態2に係るスマ−トキーレスエントリーシステムの動作を説明するフローチャートである。
【図7】実施の形態2に係るスマ−トキーレスエントリーシステムの動作を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態としてのスマートキーレスエントリーシステムについて詳細を説明する。図1はこの発明の実施の形態1に係るスマートキーレスエントリーシステムの構成を示している。スマートキーレスエントリーシステム3は、自動車等の車両に搭載されている無線通信装置1(以下、車載機1と称す)と、車両のユーザーによって携帯される無線通信装置2(以下、携帯機2と称す)とを含んで構成される。車載機1は、車両のイグニションスイッチに関する制御とドアの施錠・解錠を制御する装置4(以下、制御装置4と称す)に電気的に接続されている。
【0015】
スマートキーレスエントリーシステム3では、携帯機2から送られてくる信号をRF受信アンテナ15を通して車載機1が受信し、受信した前記信号の内容に応じて、車載機1はイグニッション操作の許可・禁止を判断し、制御装置4にイグニション操作の許可または禁止を指示する。また、車載機1は携帯機2からの信号の内容に応じて、ドアの施錠・解錠を判断し、制御装置4にドアの施錠または解錠を指示する。さらに、車載機1は携帯機2からの信号の内容に応じて、携帯機2が車載機1との通信可能圏内にあるかを判断し、制御装置4に警報用ブザー吹鳴の許可・禁止、警告用ランプの点灯・消灯を指示する。
【0016】
なお、本実施の形態1において、車載機1から携帯機2への通信はLF通信方式(Low Frequency Communication Method)を使用して変調を行った信号を使用するものとして説明する。一方、携帯機2から携帯機1への通信はRF通信方式(Radio Frequency Communication Method)を使用して変調を行った信号を使用するものとして説明する。ただし、前記通信方式はこれに限らず、例えばブルートゥース(Bluetooth:登録商標)やスペクトラム
拡散通信方式(Spectrum Spread Communication)等、他の通信方式を用いることも可能で
ある。
【0017】
図2は実施の形態1の車載機1の回路構成を示している。車載機1は、CPU10、ROMやRAM等からなるメモリ11、LF送信回路12、RF受信回路13を含んで構成され、車載機1にはLF送信アンテナ14a、14b、14c、及びRF受信アンテナ15が接続される。
【0018】
CPU10は、車載機1の統合的な制御を行い、メモリ11に記憶されているプログラムを実行することで各種機能を実現する。
【0019】
メモリ11には、携帯機2から送信されてくるデータを認証するための認証コード110、携帯機2から送信されてくる車載機1と携帯機2との通信距離を判定するのに使用するデータで、車載機1から携帯機2への通信信号の電界強度を示すデータ(以下、FS値と称す)の閾値を記憶したFS値閾値データ111、及び携帯機2から送信されてくる外乱ノイズの電界強度を示すデータ(以下、FN値と称す)の電界強度レベルを判定するための閾値を記憶したFN値判定用閾値データ112がそれぞれ記憶されている。
【0020】
LF送信回路12は、CPU10から出力されてくる信号により、LF周波数帯の搬送波を変調した送信信号を生成する変調回路121と、送信信号を増幅する増幅回路122で構成され、送信信号を気中に送信するLF送信アンテナ14a、14b、14cが接続される。これらアンテナの内、LF送信アンテナ14aは車室内への送信に使用し、LF送信アンテナ14b及び14cは車外への送信に使用する。
【0021】
RF受信回路13は、気中の無線信号を受信するRF受信アンテナ15に接続され、RF受信アンテナ15から入力される受信信号を増幅する増幅回路132と、受信信号を復調することにより生成される復調信号をCPU10に出力する復調回路131で構成され
る。
【0022】
図3は実施の形態1における携帯機2の回路構成を示している。携帯機2は、CPU20、入力回路21、ROMやRAM等からなるメモリ22、LF受信回路24、RF送信回路23、LF受信アンテナ26、RF送信アンテナ25、電界強度測定部であるRSSI(Received Signal Strength Indicator)回路27を含んで構成される。
【0023】
CPU20は、携帯機2の統合的な制御を行い、メモリ22に記憶されているプログラムを実行することで各種機能を実現する。メモリ22には、携帯機2から車載機1に送信されて、車載機1において携帯機2を認証するのに必要なデータである認証コード220が記憶されている。
【0024】
RF送信回路23は、CPU20から出力されてくる信号により、RF周波数帯の搬送波を変調した送信信号を生成するRF変調回路231と、送信信号を増幅する増幅回路232を備え、送信信号を気中に送信するRF送信アンテナ25に接続されている。
【0025】
LF受信回路24は、気中の無線信号を受信するLF受信アンテナ26に接続され、LF受信アンテナ26から入力される受信信号を増幅する増幅回路242と、受信信号を復調することにより生成される復調信号をCPU20に入力するLF復調回路241とを含む。
【0026】
入力回路21は、携帯機2のユーザーによる、ドアやトランクを施錠または解錠する操作入力を検出し、操作入力に応じた信号をCPU20へ出力する。
【0027】
電界強度測定部であるRSSI回路27は、増幅回路242から入力される受信信号の電界強度をアナログ電圧信号に変換し、CPU20へ出力する。
【0028】
以上のように構成されている無線通信システムにおいて、図1〜3、及び図4のフローチャートと図5のタイミングチャートを用いて、本実施の形態1に係るスマートキーレスエントリーシステム3の具体的な動作を説明する。なお、図4のフローチャートと図5のタイミングチャートは、携帯機2を持った車両ユーザーが車内においてイグニションスイッチをアクセサリー位置またはエンジン停止状態でIG位置にした状態にして待機している場合を説明している。
【0029】
先ず、イグニションスイッチがアクセサリー位置またはエンジン停止状態でIG位置にあることを制御装置4が検出し、車載機1のCPU10にイグニションスイッチの状態を入力する。前記信号が入力されると、CPU10は携帯機2が車内に存在するかどうかを確認するためにLF送信回路12を制御して、無線信号(以下、認証要求信号と称す)の送信を開始する(S400)。この認証要求信号の送信は一定間隔で繰り返し実施する。
【0030】
ここで、携帯機2が認証要求信号を受信できる範囲内に存在する場合には、携帯機2のLF受信アンテナ26で捕らえられた認証要求信号は、増幅回路242によって増幅され、LF復調回路241によって復調されてCPU20に入力される。
【0031】
CPU20は、認証要求信号が入力されたかどうかを常に監視しており、認証要求信号が受信され始めたことを検出すると(S401:YES)、RSSI回路27からCPU20に入力される認証要求信号の電界強度をCPU20の内部回路でA/D変換し、FS値を算出する(S402)。認証要求信号の受信が完了すると(S403:YES)、CPU20は、RSSI回路27からCPU20に入力される外乱ノイズの電界強度をCPU20の内部回路でA/D変換し、FN値を算出する(S404)。その後、CPU20
は、RF送信回路23を制御して、RF送信アンテナ25から認証応答信号の送信を開始する(S405)。なお、認証応答信号は、メモリ22に記憶された携帯機2の認証コード220と、認証要求信号の電界強度であるFS値と、外乱ノイズの電界強度であるFN値で構成されている。
【0032】
携帯機2から送信された認証応答信号は車載機1のRF受信アンテナ15によって受信される。受信された認証応答信号は、増幅回路132によって増幅された後にRF復調回路131によって復調され、その復調信号がCPU10に入力される。車載機1のCPU10は、認証応答信号が入力されたかどうかを常に監視している(S406)。車載機1のCPU10は前記復調信号が入力されたことを検知すると(S406:YES)、前記の認証応答信号が携帯機2からのデータであるかどうかを、前記の認証応答信号に含まれる認証コード220と車載機1のメモリ11に記憶している認証コード110と比較し(S407)、一致していれば(S407:YES)、前記の認証応答信号に含まれるFN値を、車載機1のメモリ11に記憶しているFN値判定用閾値データ112と比較する(S408)。
【0033】
前記の認証応答信号に含まれるFN値が車載機1のメモリ11に記憶しているFN値判定用閾値データ112よりも大きい場合は(S408:YES)、認証要求信号の出力レベルが上げられている(アップ済み)かを判断し(S409)、認証要求信号の出力レベルが上げられていない場合は(S409:NO)、外乱ノイズが高いと判断して車載機1のCPU10の増幅率切替信号によりLF送信回路12の増幅回路122の増幅率を上げることで認証要求信号の出力レベルを上げ(アップさせ)(S410)、FS値閾値データ111の閾値を上げる(S411)。前記の認証応答信号に含まれるFN値が車載機1のメモリ11に記憶しているFN値判定用閾値データ112よりも小さい場合は(S408:NO)、認証要求信号の出力レベルを上げること及びFS値閾値データ111の閾値を上げることはしない。
【0034】
車載機1は、前記の通信距離が車外に至る(達する)距離であるかどうかを確認するために、前記FS値とFS値閾値データ111とを比較し(S412)、前記FS値がFS値閾値データ111よりも小さい場合は(S412:YES)、前記の通信距離が車外に至る距離であると判断し、車載機1から制御装置4に車外持ち出し禁止警報信号を送信し(S413)、制御装置4は持ち出し禁止警報としてブザーの吹鳴や警告ランプの点灯を行う。前記の通信距離が車外に至らない距離である場合は(S412:NO)、LF送信回路12を制御して、再び認証要求信号を送信する(S400)。
【0035】
前記のステップ(S406)において、車載機1のCPU10は前記復調信号が入力されたことを検知しなかった場合(S406:NO)、認証要求信号の出力レベルが上げられているかを判断し(S414)、認証要求信号の出力レベルが上げられていない場合は(S414:NO)、車載機1のCPU10の増幅率切替信号によりLF送信回路12の増幅回路122の増幅率をアップすることで認証要求信号の出力レベルを上げ(S415)、FS値閾値データ111の閾値を上げ(S416)、ステップS417に進む。認証要求信号の出力レベルが上げられている場合は(S414:YES)、認証応答信号の待ち時間が規定時間を経過したかどうかを確認し(S417)、認証応答信号の待ち時間が規定時間を経過していなければ(S417:NO)、再び認証要求信号を送信する(S400)。
【0036】
前記のステップ(S407)において、前記の認証応答信号に含まれる認証コード220と車載機1のメモリ11に記憶している認証コード110が一致しなかった場合(S407:NO)は、認証応答信号の待ち時間が規定時間を経過したかどうかを確認し(S417)、認証応答信号の待ち時間が規定時間を経過していなければ(S417:NO)、
再び認証要求信号を送信する(S400)。認証要求信号の通信時間が規定時間を経過していれば(S417:YES)、車載機1から制御装置4に車外持ち出し禁止警報信号を送信し(S413)、制御装置4は持ち出し禁止警報としてブザーの吹鳴や警告ランプの点灯を行う。
【0037】
このように、車載機1は、認証要求信号の送信に対して認証応答信号を受信できなかった場合には、認証要求信号の出力レベルを上げることによって双方向の無線通信を継続することが可能になり、さらに認証要求信号の電界強度FSの判定閾値を、外乱ノイズの電界強度FNの値から判断して上げることにより、正確な通信距離を算出することが可能となるため、携帯機2が車内に在るにもかかわらず、誤って車載機1から制御装置4に車外持ち出し禁止警報信号を送信することを防止することができる。
【0038】
実施の形態2.
実施の形態2に係る無線通信システムの構成は、図1〜図3と同じである。実施の形態2によるスマートキーレスエントリーシステム3の具体的な動作を、図6のフローチャートと図7のタイミングチャートを用いて説明する。なお、図6のフローチャートと図7のタイミングチャートは、携帯機2を持った車両ユーザーが車内においてイグニションスイッチをアクセサリー位置またはエンジン停止状態でIG位置にした状態にして待機している場合を説明している。
【0039】
まず、イグニションスイッチがアクセサリー位置またはエンジン停止状態でIG位置にあることを制御装置4が検出し、車載機1のCPU10にイグニションスイッチの状態を入力する。前記信号が入力されると、CPU10は携帯機2が車内に存在するかどうかを確認するためにLF送信回路12を制御して、認証IDを含んだ無線信号(以下、認証要求信号と称す)の送信を開始する(S500)。この認証要求信号の送信は、一定間隔で繰り返し実施する。認証IDには第1IDと第2IDの2種類があり、第1IDでは携帯機2側のRSSI回路27の受信感度を通常感度(以下、受信感度1と称す)に切り替える指令が含まれており、第2IDでは携帯機2側のRSSI回路27の受信感度を通常よりも低い感度(以下、受信感度2と称す)に切り替える指令が含まれている。ステップS500では第1IDを含んだ認証要求信号を送信する。
【0040】
ここで、携帯機2が認証要求信号を受信できる範囲内に存在する場合には、携帯機2のLF受信アンテナ26を通して受信された認証要求信号は、増幅回路242によって増幅され、LF復調回路241によって復調されてCPU20に入力される。
【0041】
CPU20は、認証要求信号が入力されたかどうかを常に監視しており、認証要求信号が受信され始めたことを検出すると(S501:YES)、第1ID認証要求信号を受信したかどうかをRSSI回路27が判定し(S502)、第1ID認証要求信号を受信した場合は(S502:YES)、受信信号レベルが受信感度1以上であるかを判定し(S504)、受信感度1未満であれば(S504:NO)ステップS501に戻り認証要求信号の受信開始待ちとなる。
【0042】
受信感度1以上であれば(S504:YES)、RSSI回路27からCPU20に入力される認証要求信号の電界強度をCPU20の内部回路でA/D変換し、FS値を算出する(S506)。認証IDが第1IDでない場合は(S502:NO)、第2ID認証要求信号を受信したかどうかをRSSI回路27が判定し(S503)、認証IDが第2IDである場合は(S503:YES)、受信信号レベルが受信感度2以上であるかを判定し(S505)、受信感度2未満であれば(S505:NO)ステップS501に戻り認証要求信号の受信開始待ちとなる。受信感度2以上であれば(S505:YES)、RSSI回路27からCPU20に入力される認証要求信号の電界強度をCPU20の内部
回路でA/D変換し、FS値を算出する(S506)。
【0043】
認証要求信号の受信が完了すると(S507:YES)、RSSI回路27からCPU20に入力される外乱ノイズの電界強度をCPU20の内部回路でA/D変換し、FN値を算出する(S508)。その後、CPU20は、RF送信回路23を制御して、認証応答信号の送信を開始する(S509)。なお、認証応答信号は、メモリ22に記憶された携帯機2の認証コード220と、認証要求信号の電界強度であるFS値と、外乱ノイズの電界強度であるFN値で構成されている。
【0044】
携帯機2から送信された認証応答信号は車載機1にRF受信アンテナ15を通して受信される。受信された認証応答信号は、増幅回路132によって増幅された後にRF復調回路131によって復調され、その復調信号がCPU10に入力される。
【0045】
車載機1のCPU10は、認証応答信号が入力されたかどうかを常に監視している(S510)。車載機1のCPU10は、前記復調信号が入力されたことを検知すると(S510:YES)、前記の認証応答信号が携帯機2からのデータであるかどうかを、前記の認証応答信号に含まれる認証コード220と車載機1のメモリ11に記憶している認証コード110と比較し(S511)、一致していれば(S511:YES)前記の認証応答信号に含まれるFN値を、車載機1のメモリ11に記憶しているFN値判定用閾値データ112と比較する(S512)。前記の認証応答信号に含まれるFN値が車載機1のメモリ11に記憶しているFN値判定用閾値データ112よりも大きい場合は(S512:YES)、外乱ノイズが過大であると判断し、車載機1のCPU10の増幅率切替信号によりLF送信回路12の増幅回路122の増幅率をアップし、送信電力1に切り替える(S513)。
【0046】
引き続き、CPU10は、携帯機2が車内に存在するかどうかを確認するためにLF送信回路12を制御して、第2IDを含んだ認証要求信号の送信を開始する(S514)。引き続き、車載機1のCPU10は、認証応答信号が入力されたかどうかを常に監視し(S515)、車載機1のCPU10は前記復調信号が入力されたことを検知すると(S515:YES)、前記の認証応答信号が携帯機2からのデータであるかどうかを、前記の認証応答信号に含まれる認証コード220と車載機1のメモリ11に記憶している認証コード110と比較し(S516)、一致していれば(S516:YES)、繰り返し第2IDを含んだ認証要求信号の送信を実施する(S514)。携帯機2の受信感度はステップS508で低感度である受信感度2に設定されているため、携帯機2が認証応答信号を車載機1へ返信できる通信距離が、車内のような狭いエリアに限定される。
【0047】
その後、認証応答信号の待ち時間が規定時間を経過したかどうかを確認し(S517)、認証応答信号の待ち時間が規定時間を経過した場合は(S517:YES)、前記の通信距離が車外に至る距離であると判断し、車載機1から制御装置4に車外持ち出し禁止警報信号を送信し(S519)、制御装置4は持ち出し禁止警報としてブザーの吹鳴や警告ランプの点灯を行う。
【0048】
前記のステップ(S510)において、車載機1のCPU10は前記復調信号が入力されたことを検知しなかった場合(S510:NO)、認証応答信号の待ち時間が規定時間を経過していなければ(S520:NO)、再び認証要求信号を送信する(S500)。前記のステップ(S511)において、前記の認証応答信号に含まれる認証コード220と車載機1のメモリ11に記憶している認証コード110が一致しなかった場合(S511:NO)は、認証応答信号の待ち時間が規定時間を経過したかどうかを確認し(S520)、認証応答信号の待ち時間が規定時間を経過していなければ(S520:NO)、再び認証要求信号を送信する(S500)。認証応答信号の待ち時間が規定時間を経過して
いれば(S520:YES)、車載機1から制御装置4に車外持ち出し禁止警報信号を送信し(S519)、制御装置4は持ち出し禁止警報としてブザーの吹鳴や警告ランプの点灯を行う。
【0049】
前記のステップ(S512)において、前記の認証応答信号に含まれるFN値が車載機1のメモリ11に記憶しているFN値判定用閾値データ112よりも小さい場合は(S512:NO)、車載機1は、前記の通信距離が車外に至る距離であるかどうかを確認するために前記FS値とFS値閾値データ112とを比較し(S518)、前記FS値がFS値閾値データ112よりも小さい場合は(S518:YES)、前記の通信距離が車外に至る距離であると判断し、車載機1から制御装置4に車外持ち出し禁止警報信号を送信し(S519)、制御装置4は持ち出し禁止警報としてブザーの吹鳴や警告ランプの点灯を行う。前記の通信距離が車外に至らない距離である場合は(S518:NO)、LF送信回路12を制御して、再び認証要求信号を送信する(S500)。
【0050】
このように、車載機1が、外乱ノイズが過大であると判断した場合は、RSSI方式を用いず、通信可能エリアを限定した無線通信方式に切り替えることによって双方向の無線通信を継続することが可能になり、携帯機2が車内に在るにもかかわらず、誤って車載機1から制御装置4に車外持ち出し禁止警報信号を送信することを防止することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 車載機、 2 携帯機、
3 スマートキーレスエントリーシステム概略構成、
4 制御装置、 10 CPU、
11 メモリ、 12 LF送信回路、
13 RF受信回路、 14a LF送信アンテナ、
14b LF送信アンテナ、 14c LF送信アンテナ、
15 RF受信アンテナ、 20 CPU、
21 入力回路、 22 メモリ、
23 RF送信回路、 24 LF受信回路、
25 RF送信アンテナ、 26 LF受信アンテナ、
27 RSSI回路、 110 認証コード、
111 FS値閾値データ、 112 FN値判定用閾値データ、
121 変調回路、 122 増幅回路、
131 復調回路、 132 増幅回路、
220 認証コード、 231 変調回路、
232 増幅回路、 241 復調回路、
242 増幅回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される、無線通信機能を有する車載機と、車両ユーザーによって携帯される、無線通信機能を有する携帯機とで構成される無線通信システムであって、前記車載機は、CPUと、認証コード、認証要求信号の電界強度閾値、及び外乱ノイズの電界強度判定用閾値を記憶するメモリと、認証要求信号を送信する送信回路と、認証応答信号を受信する受信回路とを備え、前記携帯機は、CPUと、認証コードを記憶するメモリと、前記認証要求信号を受信する受信回路と、前記認証応答信号を送信する送信回路と、前記認証要求信号の電界強度と外来ノイズの電界強度を測定する電界強度測定部とを備え、前記携帯機は、前記車載機から送信された認証要求信号を受信し、前記認証要求信号の電界強度と外乱ノイズの電界強度を測定して前記両電界強度を含む認証応答信号を送信し、前記車載機は、前記認証応答信号を受信して、該認証応答信号に含まれる外乱ノイズの電界強度レベルを前記外乱ノイズの電界強度判定用閾値と比較することにより、前記外乱ノイズの電界強度レベルに応じて、認証要求信号の送信出力レベルを変更する機能を有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
車両に搭載される、無線通信機能を有する車載機と、車両ユーザーによって携帯される、無線通信機能を有する携帯機とで構成される無線通信システムであって、前記車載機は、CPUと、認証コード、認証要求信号の電界強度閾値、及び外乱ノイズの電界強度判定用閾値を記憶するメモリと、認証要求信号を送信する送信回路と、認証応答信号を受信する受信回路とを備え、前記携帯機は、CPUと、認証コードを記憶するメモリと、前記認証要求信号を受信する受信回路と、前記認証応答信号を送信する送信回路と、前記認証要求信号の電界強度と外来ノイズの電界強度を測定する電界強度測定部とを備え、前記携帯機は、前記車載機から送信された認証要求信号を受信し、前記認証要求信号の電界強度と外乱ノイズの電界強度を測定して前記両電界強度を含む認証応答信号を送信し、前記車載機は、前記認証応答信号を受信して、該認証応答信号に含まれる外乱ノイズの電界強度レベルを前記外乱ノイズの電界強度判定用閾値と比較することにより、前記外乱ノイズの電界強度レベルに応じて、認証要求信号の送信出力レベルを変更する機能と、前記携帯機の受信感度を変更する指令を含む認証IDを送信する機能とを有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
前記認証要求信号は、前記携帯機の受信感度を通常感度に指令する認証IDと、通常感度より低い感度に指令する認証IDとを含むものからなることを特徴とする請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記電界強度測定部は、RSSI(Received Signal Strength Indicator)回路を用いて構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記車載機は、警報用ブザーの吹鳴、及び/または警告用ランプの点灯を制御する制御装置に接続され、前記外乱ノイズの電界強度レベルと前記外乱ノイズの電界強度判定用閾値との比較結果に応じて、前記制御装置に警報用のブザー及び/または警告ランプの動作を指示する信号を送信するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記車載機は、車両のイグニション操作に関する制御を行う制御装置に接続され、前記外乱ノイズの電界強度レベルと前記外乱ノイズの電界強度判定用閾値との比較結果に応じて、前記制御装置に前記イグニション操作の許可・禁止を指示する信号を送信するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の無線通信システム。
【請求項7】
前記車載機は、車両のドアの施錠・解錠を制御する制御装置に接続され、前記外乱ノイ
ズの電界強度レベルと前記外乱ノイズの電界強度判定用閾値との比較結果に応じて、前記制御装置に前記ドアの施錠・解錠を指示する信号を送信するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記外乱ノイズの電界強度判定用閾値は、無信号状態での空間の外乱ノイズの電界強度を判定するための値であって、前記車載機と前記携帯機間の通信距離の測定精度に影響を及ぼす電界強度値であることを特徴とする請求項1または2に記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−223499(P2011−223499A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93059(P2010−93059)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】