説明

無線通信システム

【課題】子器の消費電力をさらに低減した無線通信システムを提供する。
【解決手段】親器A1と子器Bとの間の通信には、子器B毎に割り当てられた定期通信期間に行われる定期通信と、定期通信時間帯以外で通信データのある子器Bが行う不定期通信がある。子器Bは、無線通信部21と、通信時間帯判断部24と、演算部26とを備えている。無線通信部21は親器A1との間で通信を行う。通信時間帯判断部24は、定期通信時間帯内で自機に割り当てられた定期通信期間を判断するとともに、不定期通信時間帯の開始時間を判断する。演算部26は、通信時間帯判断部24で判断された定期通信期間に無線通信部21による定期通信を行わせるとともに、定期通信時間帯内で上記の定期通信期間以外では無線通信部21による通信を停止させ、且つ、通信時間帯判断部24で判断された不定期通信時間帯に、無線通信部21による不定期通信を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ネットワークに接続された親器と、複数台の子器とで構成される無線通信システムがあった(例えば特許文献1参照)。この無線通信システムでは、子器は、親器との間で無線通信を行い、親器を介してネットワークに接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−86776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に記載された無線通信システムの子器は電池を電源として動作するものであり、受信回路の消費電力を低減したいという課題がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、子器の消費電力をさらに低減した無線通信システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願の無線通信システムは、親器と、通信順を示す通信番号が割り当てられた複数台の子器とで構成される。親器と子器との通信は、子器毎に割り当てられた定期通信期間の集合からなる定期通信時間帯での定期通信と、定期通信時間帯以外で、通信データのある子器がキャリアセンスを行い、衝突検知がなければ通信を行う不定期通信時間帯での不定期通信とを含む。親器は、子器との間で通信を行う第1通信部を備える。子器は、第2通信部と、定期通信期間判断部と、不定期通信期間判断部と、通信制御部とを備える。第2通信部は親器との間で通信を行う。定期通信期間判断部は、定期通信時間帯内で自機に割り当てられた定期通信期間を判断する。不定期通信期間判断部は、不定期通信時間帯の開始時間を判断する。通信制御部は、定期通信期間判断部で判断された定期通信期間に第2通信部による定期通信を行わせるとともに、定期通信時間帯内で定期通信期間以外では第2通信部による通信を停止させ、且つ、不定期通信期間判断部で判断された不定期通信時間帯に、第2通信部による不定期通信を行わせる。
【0007】
この無線通信システムにおいて、複数の子器には連続する通信番号が割り当てられ、定期通信時間帯において、複数の子器は通信番号の順番で定期通信を行うことも好ましい。定期通信期間判断部は、自機に割り当てられた通信番号と、子器1台当たりの定期通信期間とに基づいて、定期通信時間帯内で自機に割り当てられた定期通信期間を判断する。
【0008】
この無線通信システムにおいて、親器は、この親器と通信する子器の台数を検出する台数検出部を備え、第1通信部は、台数検出部で検出された台数を子器に送信している。そして、子器の不定期通信期間判断部では、定期通信時間帯の開始時間と、親器から送信された台数と、子器1台当たりの定期通信期間とに基づいて、不定期通信時間帯の開始時間を判断することも好ましい。
【0009】
この無線通信システムにおいて、複数の子器には連続する通信番号が割り当てられており、不定期通信時間帯において、複数の子器は、自機の通信番号に応じた順番で不定期通信を行うことも好ましい。
【0010】
この無線通信システムにおいて、子器の不定期通信期間判断部では、不定期通信時間帯の開始時間と、1回の不定期通信に必要な通信時間と、自機に割り当てられた通信番号とに基づいて、不定期通信時間帯内で自機が不定期通信を行う不定期通信期間を決定し、不定期通信期間が来ると不定期通信を行うことも好ましい。
【0011】
この無線通信システムにおいて、以下の構成を追加して備えることも好ましい。子器の不定期通信期間判断部では、不定期通信時間帯の開始時間と、1回の不定期通信に必要な通信時間とに基づいて、不定期通信を行う不定期通信期間の開始時間を求め、不定期通信期間の開始時間から実際に通信を開始するまでの送信待ち時間を自機の通信番号に応じて決定する。第2通信部は、開始時間から送信待ち時間が経過したタイミングでキャリアセンスを行って、衝突検知がなければ不定期通信を行う。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、子器の消費電力をさらに低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の無線通信システムのシステム構成図である。
【図2】同上を適用した管理システムの概略図である。
【図3】(a)〜(c)は同上の通信動作を説明するタイムチャートである。
【図4】同上の初期設定動作を説明するフロー図である。
【図5】同上の定期通信動作を説明するフロー図である。
【図6】同上の不定期通信動作を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本願の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図2は、本実施形態の無線通信システムを、放牧中の家畜(例えば牛など)の飼育状態を無線通信により収集し、管理する管理システムに適用した例を示している。
【0016】
この無線通信システムは親器A1と複数台(例えば最大100台)の子器B1…B100とで構成される。尚、本実施形態では子器B1…B100の台数を最大100台としているが、子器の台数は100台に限定されるものではなく、使用用途などに応じて台数を増減してもよい。また、以下の説明において子器の全般的な説明を行う場合は子器Bと表記し、個々の子器について説明する場合は子器B1、子器B2…子器B100と表記する。
【0017】
子器Bは、例えば家畜Cの首にぶら下げるなどして家畜Cに装着され、この家畜Cの飼育データをセンサにより収集し、収集した飼育データを定期的に親器A1へ送信する。
【0018】
親器A1は、家畜Cが放牧される放牧地に設置されており、通信可能範囲にある複数台の子器Bとの間で無線通信を行い、各子器Bから送信された飼育データを蓄積する。尚、図2では親器A1が1台しか図示されていないが、家畜Cの移動範囲が、親器A1の通信可能範囲よりも広い場合は、家畜Cの移動範囲をカバーできるように中継器を1乃至複数台設置し、中継器にてホッピングしてもよい。
【0019】
次に、親器A1及び子器Bの構成を図1のブロック図を参照して説明する。
【0020】
親器A1は、第1通信部たる無線通信部11と、計時部12と、記憶部13と、演算部14とを主要な構成として備えている。
【0021】
無線通信部11は、例えば特定小電力無線モジュールからなり、複数台の子器Bとの間で無線通信を行う。
【0022】
計時部12は現在の時刻を計時しており、計時部12で計時された時刻が、各子器Bを連動して動作させる基準の時刻(システム時刻)となる。
【0023】
記憶部13は、例えば電源がバックアップされたRAMや書き換え可能な不揮発性のメモリで構成されている。記憶部13は、自機の通信可能範囲にあり、自機と通信を行う子機Bに割り当てられている識別番号(例えばプライベートアドレスやMACアドレスなど)や、各子器Bの通信順を示す通信番号や、各子器Bからの送信データ(例えば飼育データなど)を記憶する。記憶部13としては、一定期間分の飼育データを記憶できる容量のものが使用されており、空き容量が少なくなると、古い飼育データに上書きして新しい飼育データを記憶できるようになっている。
【0024】
演算部14は例えばCPUからなり、親器A1の全体的な制御を行う。また演算部14は、無線通信部11の通信結果をもとに、自機と通信可能な子機Bの台数を検出する台数検出部としての機能を備えており、子機Bの接続台数を検出すると、無線通信部11から全ての子器Bに送信させる。
【0025】
親器A1は、上記のような構成を有しており、所定の時間間隔で子器Bから送信されたデータを受信すると、受信したデータを記憶部13に記憶させており、子器Bで測定されたデータ(例えば家畜Cの飼育データなど)を管理する。
【0026】
子器Bは、第2通信部たる無線通信部21と、計時部22と、記憶部23と、通信時間帯判断部24(定期通信期間判断部、不定期通信期間判断部)と、計測部25と、演算部26(通信制御部)とを主要な構成として備えている。
【0027】
無線通信部21は、例えば特定小電力無線モジュールからなり、親器A1との間で無線通信を行う。
【0028】
計時部22は現在の時刻を計時しており、親器A1からシステム時刻が送信されると、このシステム時刻に自機の時刻を一致させている。
【0029】
記憶部23は、例えば電源がバックアップされたRAMや書き換え可能な不揮発性のメモリからなり、自機の識別番号(例えばプライベートアドレス)及び通信番号や、親器A1から送信された子器Bの台数や、後述の計測部25で測定された計測データ(例えば家畜Cの飼育データ)などを記憶する。尚、子器Bの識別番号は予めディップスイッチ等で設定するようにしてもよい。
【0030】
通信時間帯判断部24は、全ての子器Bが親器A1との間で定期的な通信を行う定期通信時間帯W2、及び、定期通信以外で通信を行う必要がある任意の子器Bが親器A1と不定期に通信を行う不定期通信時間帯W3を判断する(図3参照)。ここで、子器Bの台数によって定期通信時間帯W2及び不定期通信時間帯W3の時間長はそれぞれ変化するが、定期通信時間帯W2と不定期通信時間帯W3とを合計した時間W1は一定の時間となっている。したがって、定期通信時間帯W2及び不定期通信時間帯W3は一定の周期W1で繰り返される。
【0031】
計測部25は、家畜Cの生態情報や、家畜Cの飼育環境に関するデータ(例えば気温や湿度)など、各種の飼育データを計測するセンサからなり、その計測結果は記憶部23に蓄積される。
【0032】
演算部26は例えばCPUからなり、子器Bの全体的な制御を行っている。
【0033】
子器Bは、以上のような構成を有しており、所定のサンプリング間隔で計測部25によって計測された測定データを記憶部23に蓄積するとともに、所定の送信間隔で、記憶部23に蓄積された測定データを親器A1に送信させている。また子器Bは電池(図示せず)を電源として動作する。
【0034】
次に、親器A1と子器B(B1…B100)との間で行われる通信について以下に説明する。
【0035】
親器A1は、子器Bから定期的にデータ収集を行うのであるが、親器A1と子器Bとの間で行われる通信には、定期通信時間帯W2での定期通信と、定期通信時間帯W2以外で不定期に行われる不定期通信とがある。ここで、定期通信時間帯W2では、全ての子器Bが、各子器Bに割り当てられた定期通信期間に通信を行っており、定期通信時間帯W2は、全ての子器Bに割り当てられた定期通信期間の集合となる。また不定期通信時間帯W3は、定期通信時間帯W2以外で不定期通信を行いたい子器B(例えば定期通信時間帯W2で送信に失敗した未送信のデータがある子器B)のみが、親器A1との間で不定期に通信を行う時間帯である。
【0036】
図3(a)は例えば100台の子器B1…B100が親器A1との間で通信を行う場合を示し、各時刻の00分00秒と、30分00秒を定期通信時間帯W2の開始時間としている。1台の子器Bが定期通信を1回行う際の通信占有期間は例えば7秒以内であり、1台の子器Bの定期通信期間としては例えば9秒が割り当てられている。すなわち、定期通信期間の9秒中、7秒が実際の通信に使用されるのである。尚、1回の通信占有期間(7秒)や定期通信期間(9秒)は一例であり、通信速度や通信のデータ量などに応じて適宜変更が可能である。
【0037】
定期通信時間帯W2において、各々の子器Bが定期通信を行う定期通信期間は、親器A1が各子器Bに割り当てた通信番号によって決定される。親器A1は、初期設定時に、自機と通信可能な全ての子器Bに対して、通信順を示す通信番号を割り当てている。この通信番号は0から始まり、通信順にしたがって番号が1ずつ増えている。
【0038】
ここで、ある子器Bの通信番号をn(nは0を含む自然数)、定期通信時間帯W2の開始時間をts0とすると、この子器Bの定期通信期間の開始時間ts1は、下記の式(1)で表され、時刻ts1から9秒間がこの子器Bの定期通信期間となる。
【0039】
ts1=ts0+n×9(秒) …(1)
例えば、通信番号が0番の子器Bは毎時00分00秒と毎時30分00秒に定期送信を開始し、通信番号が95番の子器Bは毎時14分15秒と、毎時44分15秒に定期通信を開始する。尚、子器Bは、定期送信を開始する0.5秒前からキャリアセンスを開始し、定期通信期間の開始時にキャリアを検出している場合は、さらに0.5秒間キャリアセンスを継続し、キャリアを検出している場合は定期通信を中止する。
【0040】
上述のように、定期通信期間は9秒に設定されているので、子器Bの台数が最大100台であれば、定期通信時間帯W2は15分以内で完了することになる。そして、00分00秒に定期通信時間帯W2が開始した場合は、定期通信時間帯W2が終了してから30分00秒になるまでの期間が不定期通信時間帯W3になる。また、30分00秒に定期通信時間帯W2が開始した場合は、定期通信時間帯W2が終了してから60分00秒になるまでの期間が不定期通信時間帯W3になる。すなわち、親器A1と通信可能な子器Bの台数によって、定期通信時間帯W2及び不定期通信時間帯W3が変化することになる。
【0041】
ここで、親器A1と通信可能な子器Bの台数をN(Nは正の整数)、定期通信時間帯W2の開始時刻をts0(例えば毎時00分00秒、毎時30分00秒)とすると、不定期通信時間帯W3の開始時間ts2は下記の式(2)で表される。
【0042】
ts2=ts0+N×9(秒) …(2)
例えば、親器A1と通信可能な子器Bの台数Nが50台であれば、ts2=ts0+50×9=ts0+7分30秒となり、毎時7分30秒と、毎時37分30秒に不定期通信時間帯W3が開始する(図3(b)参照)。また、子器Bの台数Nが89台であれば、ts2=ts0+89×9=ts0+13分21秒となり、毎時13分21秒と、毎時43分21秒とに不定期通信時間帯W3が開始することになる(図3(c)参照)。
【0043】
また、不定期通信時間帯W3において、子器Bが不定期通信を行う不定期通信期間は以下のようにして決定される。尚、1台の子器Bが不定期通信を1回行う際の通信占有期間は例えば7秒以内であり、1台の子器Bの不定期通信期間としては例えば9秒が割り当てられている。すなわち、不定期通信期間の9秒中、7秒が実際の通信に使用されているものとする。
【0044】
ここで、子器Bの台数が50台であれば、不定期通信時間帯W3は毎時07分30秒から毎時30分00秒までの期間と、毎時37分30秒から毎時60分00秒(0分00秒)までの期間となり、各期間を9秒ずつで分割した期間が個々の不定期通信期間となる。すなわち、毎時07分30秒から毎時30分00秒までの期間では、不定期通信期間の開始時間(すなわち子器Bが不定期通信を開始するタイミング)が07分30秒、07分39秒、07分48秒、07分57秒…となり、期間内に150回分の不定期通信が可能となる。また、毎時37分30秒から毎時60分00秒までの期間では、不定期通信期間の開始時間は37分30秒、37分39秒、37分48秒、37分57秒…となり、同様に、この期間内に150回分の不定期通信が可能となる。
【0045】
また、子器Bの台数が89台であれば、不定期通信時間帯W3は毎時13分21秒から毎時30分00秒までの期間と、毎時43分21秒から毎時60分00秒(0分00秒)までの期間となり、各期間を9秒ずつで分割した期間が個々の不定期通信期間となる。すなわち、毎時13分21秒から毎時30分00秒までの期間では、不定期通信期間の開始時間は13分21秒、13分30秒、13分39秒、13分48秒…となり、この期間内に111回分の不定期通信が可能である。また、毎時43分21秒から毎時60分00秒までの期間では、不定期通信期間の開始時間は43分21秒、43分30秒、43分39秒、43分48秒…となり、やはり、この期間内に111回分の不定期通信が可能である。
【0046】
そして、不定期通信時間帯W3内の個々の不定期通信期間において、コリジョンの発生を抑制するために、各子器Bが親器A1へデータ送信を開始するタイミングを、各子器Bに割り当てられた通信番号にしたがって0.01秒ずつずらしている。すなわち、ある子器Bの通信番号をn(nは0を含む自然数)、不定期通信期間の開始時間をts3とすると、この子器Bが不定期通信期間にデータ送信を開始するタイミングts4は下記の式(3)で表される。すなわち、不定期通信期間の開始時間がきてから各子器Bが不定期送信を開始するまでの間に、通信番号nに0.01(秒)を乗算した送信待ち時間を設けてある。
【0047】
ts4=ts3+n×0.01(秒) …(3)
したがって、子器Bの台数を50台とし、不定期通信を行いたい子器Bの通信番号を45とすると、不定期通信時間帯W3においてこの子器Bがデータ送信を行うタイミングは、07分30秒45、07分39秒45、07分48秒45…29分51秒45となる。各子器Bは、データ送信を開始する0.5秒前からキャリアセンスを開始し、データ送信開始時に衝突検知があればデータ送信を中止するのであるが、上述のように各子器Bの送信待ち時間を通信番号nに応じて0.01秒ずつずらしているので、送信データのコリジョンが発生しにくくなる。尚、ある子器Bが親器A1に対して不定期通信を行った場合(データ送信に失敗した場合も含む)、直後の1回分の不定期通信期間では、送信待ち時間を、子器Bの台数(50)に0.01秒を乗算した値とし、その後は送信待ち時間をn×0.01(秒)に戻している。このように、不定期通信に成功した直後の不定期通信期間では、送信待ち時間を他の子器よりも長い時間に設定することで、他の子器Bが優先的にデータ送信を行えるようにしている。
【0048】
ここで、本システムの動作を図4−図6を参照して説明する。
【0049】
図4は、親器A1が子器B(B1…B100)にシステム時刻や通信番号などを初期設定する場合の動作を示している。例えば子器B1に電池がセットされ、子器B1に電源が投入された後(S1)、子器B1に設けられた初期設定スイッチがオン操作されると(S2)、子器B1は自己の識別番号と設定要求信号を親器A1へ無線送信する。親器A1は、子器B1から設定要求信号を受信すると、この子器B1に対してシステム時刻や子器B1に割り当てる通信番号や子器Bの台数を送信する(S3)。子器B1は、親器A1から送信された設定内容を受信すると、受信した設定内容を記憶部23に記憶させた後(S4)、ACK信号(自機の識別番号など)を親器A1に返送する(S5)。親器A1は子器B1からACK信号を受信すると、設定が完了した子器B1の識別番号と、この子器B1に割り当てた通信番号を記憶部13に記憶させる(S6)。一方、親器A1は子器B1に設定内容を送信してから、所定時間内にACK信号を受信できなければ、子器B1に対して設定内容を再送する(S7)。尚、子器B1では、親器A1に設定要求信号を送信してから、所定のリトライ送信待ち時間が経過するまでは無線通信部21に電源を供給して受信待ち動作を行っているが、リトライ送信待ち時間が経過すると無線通信部21を停止させて、電力消費を抑制している(S8)。
【0050】
親器A1は、子器Bから設定要求信号が入力される毎に、上記の処理を行っており、設定要求信号を発した全ての子器Bに対してシステム時刻や通信番号や子器の台数などの設定データを設定することができる。
【0051】
次に、図5を参照して定期通信時間帯W2における親器A1と子器Bとの定期通信について説明する。子器Bの通信時間帯判断部24は、初期設定で設定されたシステム時刻や自機の通信番号や台数などの情報をもとに、上述の式(1)を用いて、定期通信時間帯W2における自機の定期通信期間を算出している。定期通信時間帯W2において、子器B1の定期通信期間がくると(S11)、子器B1の演算部26は無線通信部21への電源供給を開始する(S12)。そして、演算部26は、計測部25によって計測され記憶部23に蓄積されていた飼育データを読み出し、この飼育データを無線通信部21から親器A1へ送信させる(S13)。
【0052】
親器A1の無線通信部11が子器B1から飼育データを受信すると、演算部14がこの飼育データを子器毎に記憶部13に記憶させ(S14)、無線通信部11を用いてACK信号とともに現在の時刻(システム時刻)を送信元の子器B1に返送させる(S15)。尚、親器A1の演算部14では、前回通信時から子器Bの台数が増えた場合、ACK信号と共に子器Bの台数及び現在のシステム時刻を子器Bに返送させる。
【0053】
子器B1の演算部26は、親器A1からのACK信号を受信すると、ACK信号と共に送られたシステム時刻をもとに計時部22の時刻を補正する。またACK信号とともに子器Bの台数が送られてくると、子器B1の演算部26は子器Bの台数を記憶部23に登録する(S16)。また、飼育データを送信した後、所定時間が経過しても親器A1からのACK信号が受信できない場合、子器B1の演算部26は、無線通信部21から親器A1に飼育データを再送させる(S17)。そして、子器B1の演算部26は、親器A1から返送されたACK信号を受信できれば、無線通信部21への電源供給を停止しており、定期通信時間帯W2において自機の定期通信期間以外は無線通信部21への給電を停止することで、電力消費を抑制している。また、子器B1の演算部26は、飼育データの送信後、所定の判定時間が経過してもACK信号を受信できなければ、通信に失敗したと判断して、無線通信部21への給電を停止し、送信に失敗した飼育データを不定期通信時間帯W3に再送するようにしている。他の子器B2…B100においても、自機の定期通信期間がくると、子器B1の場合と同様の定期通信処理が行われ、子器Bからは飼育データが親器A1に送信され、親器A1は送信元の子器Bにシステム時刻や子器Bの台数を返送するようになっている。
【0054】
次に、図6を参照して不定期通信時間帯W3における親器A1と子器Bとの不定期通信について説明する。子器Bの通信時間帯判断部24は、初期設定で設定されたシステム時刻や子器Bの台数などの情報をもとに、上述の式(2)を用いて、不定期通信時間帯W3の開始時刻を算出している。不定期通信時間帯W3になると(S21)、親器A1に送信する情報がある子器B(例えば子器B1,B2)では演算部26が無線通信部21への電源供給を開始する(S22)。親器A1に送信する情報がない子器(例えば子器B100)では、演算部26は無線通信部21への電源供給を停止させた状態を維持する(S23)。
【0055】
子器B1,B2では、無線通信部21がキャリアセンスを開始する(S23)。ここで、不定期通信時間帯W3中の各不定期通信期間において、各子器Bの送信待ち時間には、式(3)で示されるように通信番号に応じた時間差が設けられている。したがって、通信番号の小さい子器B1が最初にキャリアセンスを開始し(S24,S25)、キャリア検出がなければ親器A1へのデータ送信を開始する(S26)。また、通信番号の大きい子器B2がキャリアセンスを開始した時点では、子器B1の不定期通信が既に始まっているため、子器B2の演算部26は、キャリアを検出したために、無線通信部21への電源供給を停止させる(S27)。
【0056】
親器A1は、子器B1からの送信データ(生態情報などの飼育データ)を受信すると、この飼育データを子器毎に記憶部13に記憶させ、ACK信号とともに現在の時刻(システム時刻)を送信元の子器B1に返送する(S28)。尚、親器A1の演算部14は、前回送信時から子器Bの台数が増えた場合、ACK信号と共に子器Bの台数及び現在のシステム時刻を無線通信部11から子器Bへ返送させる。
【0057】
送信元の子器B1の演算部26は、親器A1からのACK信号を受信すると、ACK信号と共に送られたシステム時刻をもとに計時部22の時刻を補正する。またACK信号とともに子器Bの台数が送られてくると、子器B1の演算部26は子器Bの台数を記憶部23に登録する(S29)。子器B1が不定期通信を1回行った後も、まだ送信データがある場合(S30)、子器B1の無線通信部21は再びキャリアセンスを行う(S31)。尚、この場合の送信待ち時間は子器Bの台数が100台の場合、100×0.01(秒)=1(秒)となるため、他の子器Bの不定期通信が優先的に行われる。キャリアセンスを行った結果、キャリア検出がなければ子器B1は親器A1へのデータ送信を開始し(S32)、親器A1からACK信号と共に返信されたシステム時刻及び子器台数を記憶部23に記憶させて処理を終了する(S33,S34)。そして、親器A1からの返信を受信した後、親器A1に送信する情報がなければ、子器B1の演算部14は不定期通信を終了し、無線通信部21への電源供給を停止させて、消費電力の抑制を図る(S35)。
【0058】
不定期通信で親器A1に送信するデータがある子器B2では、S27で無線通信部21への電源供給を停止してから、所定の休止時間が経過した時点で再び無線通信部21に給電し(S36)、無線通信部21にキャリアセンスを開始させる(S37)。キャリアセンスの結果、キャリアが検出されれば、子器B2の演算部26は、無線通信部21への電源供給を停止させる(S38)。子器B2の演算部26は、不定期通信が行えるまで、休止時間が経過する毎に、無線通信部21への電源供給を開始して(S36)、キャリアセンスを行わせており(S37)、キャリア検出がなければ、親器A1へのデータ送信を開始する(S39)。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の無線通信システムは、親器A1と、通信順を示す通信番号が割り当てられた複数台の子器Bとで構成される。親器A1と子器Bとの通信は、子器毎に割り当てられた定期通信期間の集合からなる定期通信時間帯W2での定期通信と、定期通信時間帯W2以外で不定期通信を行う子器Bがキャリアセンスを行い、衝突検知がなければ通信を行う不定期通信時間帯W3での不定期通信とを含む。親器A1は、子器Bとの間で通信を行う無線通信部11(第1通信部)を備える。子器Bは、無線通信部21(第2通信部)と、通信時間帯判断部24(定期通信期間判断部、不定期通信期間判断部)と、演算部26(通信制御部)とを備えている。無線通信部21は親器A1との間で通信を行う。通信時間帯判断部24は、定期通信時間帯W2内で自機に割り当てられた定期通信期間を判断するとともに、不定期通信時間帯W3の開始時間を判断する。演算部26は、定期通信期間に無線通信部21による定期通信を行わせるとともに、定期通信時間帯W2内で自機の定期通信期間以外では無線通信部21による通信を停止させ、且つ、不定期通信時間帯W3に無線通信部21による不定期通信を行わせる。
【0060】
これにより、各子器は、自機が定期通信を行う定期通信期間を予め求めているので、自機が定期通信を行う定期通信期間のみ無線通信部21を動作させ、定期通信時間帯において自機の定期通信期間以外は無線通信部21への給電を停止することができる。したがって、定期通信時間帯W2において自機の定期通信期間以外は無線通信部21への給電を停止できるから、消費電力を低減でき、子器Bが電池駆動の場合には、電池の寿命を長くできる。
【0061】
また本実施形態では、複数の子器Bには連続する通信番号が割り当てられ、定期通信時間帯において、複数の子器Bは通信番号の順番で定期通信を行っている。すなわち、子器Bの通信時間帯判断部24は、自機に割り当てられた通信番号と、子器1台当たりの定期通信期間とに基づいて、定期通信時間帯W2内で自機に割り当てられた定期通信期間を判断する。
【0062】
これにより、比較的簡単な演算で自機の定期通信期間を求めることができる。
【0063】
また本実施形態では、親器A1の演算部14が、この親器A1と通信する子器Bの台数を検出しており、無線通信部11は、演算部14で検出された台数を子器Bに送信している。そして、子器Bの通信時間帯判断部24では、定期通信時間帯W2の開始時間と、親器A1から送信された台数と、子器1台当たりの定期通信期間とに基づいて、不定期通信時間帯W3の開始時間を判断している。尚、親器A1の演算部14から、この親器A1と通信する子器Bの台数を検出する台数検出部が構成される。
【0064】
これにより、子器Bの台数を検出した結果に基づいて不定期通信時間帯が求められるので、子器Bの台数が増加又は減少した場合でも、簡単な演算で不定期通信時間帯を正確に求めることができる。
【0065】
また本実施形態では、複数の子器Bに連続する通信番号が割り当てられており、不定期通信時間帯において、複数の子器Bは、自機の通信番号に応じた順番で不定期通信を行っている。
【0066】
これにより、不定期通信時間帯においても自機が不定期通信を行う期間以外では、無線通信部21による通信を停止させ、無線通信部21への給電を停止できるから、消費電力を低減でき、子器Bが電池駆動の場合には、電池の寿命を長くできる。
【0067】
また本実施形態では、子器Bの通信時間帯判断部24は、不定期通信時間帯W3の開始時間と、1回の不定期通信に必要な通信時間とに基づいて、不定期通信を行う不定期通信期間の開始時間を求め、この不定期通信期間の開始時間から実際に通信を開始するまでの送信待ち時間を自機の通信番号に応じて決定する。そして、子器Bの無線通信部21では、不定期通信の開始時間から送信待ち時間が経過したタイミングでキャリアセンスを行い、衝突検知がなければ不定期通信を行っている。
【0068】
これにより、不定期通信時間帯においても自機の不定期通信期間以外は無線通信部21を停止させておくことができ、それによって消費電力をさらに低減することができる。尚、本実施形態では不定期通信時間帯において複数回の不定期通信期間を設け、各回の不定期通信期間ではどの子器Bが不定期通信を行ってもよいが、子器毎に送信待ち時間をずらすことでコリジョンの発生を低減しているので、コリジョンが発生しにくく、不定期通信が完了するまでの時間を短縮できる。
【0069】
尚、不定期通信時間帯においても、定期通信時間帯と同様に所定の通信順で各子器Bが不定期通信を行うようにしてもよい。すなわち、子器Bの通信時間帯判断部24では、不定期通信時間帯W3の開始時間と、1回の不定期通信に必要な通信時間と、自機に割り当てられた通信番号とに基づいて、不定期通信時間帯W3内で自機が不定期通信を行う不定期通信期間を決定し、不定期通信期間が来ると不定期通信を行うのである。
【0070】
これにより、不定期通信時間帯においても自機の不定期通信期間以外は無線通信部21を停止させておくことができ、それによって消費電力をさらに低減することができる。
【0071】
また、上述の実施形態では親器A1が各子器Bに通信番号を設定しているが、各子器Bに割り当てられた識別番号(例えばプライベートアドレスなど)を通信番号として利用しても良く、その場合は通信番号を設定する必要はない。
【0072】
また、上述の実施形態では子器Bの通信時間帯判断部24が、定期通信時間帯W2における自機の定期通信期間や、不定期通信時間帯W3の開始時間を算出しているが、親器A1側で、各子器の定期通信期間や、不定期通信時間帯W3の開始時間を算出してもよい。すなわち、親器Aでは、子器Bが自機の定期通信期間を算出するのと同様の方法で、上記の式(1)を用いて、各子器Bの定期通信期間を求めることができる。また親器Aでは、子器Bが不定期通信時間帯W3の開始時間を算出するのと同様の方法で、上記の式(2)を用いて不定期通信時間帯W3の開始時間を算出することができる。また親器Aでは、子器Bによる算出方法と同様の方法で、不定期通信期間の開始時間からの送信待ち時間を上記の式(3)を用いて子器毎に算出することができる。また親器Aでは、不定期通信時間帯の開始時間と、通信番号と、不定期通信を1回行うのに必要な時間とを用いて、各子器Bが不定期通信を行う不定期通信期間の開始時間を求めることができる。そして、親器Aが、上記の計算で求めた各子器Bの定期通信期間や、不定期通信時間帯W3の開始時間や、各子器Bが不定期通信を開始するタイミング(不定期通信期間からの送信待ち時間、或いは、子器毎に設定された不定期通信期間の開始時間)を子器Bに対して送信して、各子器Bに設定するようにしてもよく、この場合は子器B側での演算は不要になる。
【符号の説明】
【0073】
A1 親器
11 無線通信部(第1通信部)
B(B1…B100) 子器
21 無線通信部(第2通信部)
24 通信時間帯判断部(定期通信期間判断部、不定期通信期間判断部)
26 演算部(通信制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親器と、通信順を示す通信番号が割り当てられた複数台の子器とで構成され、
前記親器と前記子器との通信は、前記子器毎に割り当てられた定期通信期間の集合からなる定期通信時間帯での定期通信と、前記定期通信時間帯以外で、通信データのある前記子器が通信を行う不定期通信時間帯での不定期通信とを含み、
前記親器は、前記子器との間で通信を行う第1通信部を備え、
前記子器は、前記親器との間で通信を行う第2通信部と、前記定期通信時間帯内で自機に割り当てられた前記定期通信期間を判断する定期通信期間判断部と、前記不定期通信時間帯の開始時間を判断する不定期通信期間判断部と、前記定期通信期間判断部で判断された前記定期通信期間に前記第2通信部による定期通信を行わせるとともに、前記定期通信時間帯内で前記定期通信期間以外では前記第2通信部による通信を停止させ、且つ、前記不定期通信期間判断部で判断された前記不定期通信時間帯に、前記第2通信部による不定期通信を行わせる通信制御部とを備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
複数の前記子器には連続する通信番号が割り当てられており、
前記定期通信時間帯において、複数の前記子器は前記通信番号の順番で定期通信を行っており、
前記定期通信期間判断部は、自機に割り当てられた前記通信番号と、前記子器1台当たりの前記定期通信期間とに基づいて、前記定期通信時間帯内で自機に割り当てられた前記定期通信期間を判断することを特徴とする請求項1記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記親器は、この親器と通信する前記子器の台数を検出する台数検出部を備え、前記第1通信部は、前記台数検出部で検出された台数を前記子器に送信しており、
前記子器の前記不定期通信期間判断部では、前記定期通信時間帯の開始時間と、前記親器から送信された前記台数と、前記子器1台当たりの前記定期通信期間とに基づいて、前記不定期通信時間帯の開始時間を判断することを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載の無線通信システム。
【請求項4】
複数の前記子器には連続する通信番号が割り当てられており、
前記不定期通信時間帯において、複数の前記子器は、自機の通信番号に応じた順番で不定期通信を行うことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記子器の前記不定期通信期間判断部では、前記不定期通信時間帯の開始時間と、1回の不定期通信に必要な通信時間と、自機に割り当てられた通信番号とに基づいて、前記不定期通信時間帯内で自機が不定期通信を行う不定期通信期間を決定し、前記不定期通信期間が来ると不定期通信を行うことを特徴とする請求項4記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記子器の前記不定期通信期間判断部では、前記不定期通信時間帯の開始時間と、1回の不定期通信に必要な通信時間とに基づいて、不定期通信を行う不定期通信期間の開始時間を求め、前記不定期通信期間の開始時間から実際に通信を開始するまでの送信待ち時間を自機の通信番号に応じて決定し、
前記第2通信部は、前記開始時間から前記送信待ち時間が経過したタイミングでキャリアセンスを行って、衝突検知がなければ不定期通信を行うことを特徴とする請求項4記載の無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−175430(P2012−175430A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35902(P2011−35902)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】