説明

無線通信システム

【課題】双方向通信をおこなう無線通信システムにおいて、被制御体側通信装置の電力消費を低減して、ラジコンシステムを使用できる時間を延ばすようにした無線通信システムである。
【解決手段】被制御体を遠隔操縦し、操縦装置に被制御体の状態を示すデータ信号を送信する無線通信システムの被制御体に設ける被制御体側通信装置において、電源電圧を検出する電圧検出部と、前記電圧検出部で検出された電源電圧情報を含んだ前記データ信号を生成するデータ信号生成部と、電源電圧情報に応じてデータ信号の送信間隔を制御する被制御体側送受信部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、模型飛行機や模型自動車などのホビー機器やクレーンなどの産業機器の遠隔制御に用いる無線通信システムに関し、特に遠隔制御する被制御体に設けられる被制御体側通信装置の電力消費を低減する無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電波を使用して、離れた場所の被制御体を遠隔制御するラジオコントロールシステム(以下、ラジコンシステムという)は、模型の飛行機や自動車、ヘリコプタなどを操縦してスピードや曲芸などの操縦技術を競うホビー用途や、クレーンなどを操縦する産業用途に使用されている。
【0003】
ホビー用途に用いられるラジコンシステムは、被制御体に被制御体側通信装置と、エンジンのスロットルレバーや各部の駆動制御をおこなうサーボ装置などの駆動制御部が搭載されている。
被制御体が模型飛行機である場合は、サーボ装置でフラップやエルロンなどの駆動制御をおこなう。
【0004】
被制御体側通信装置には、電源として電池が使用されている。電池の種類にはニッカド電池、ニッケル水素電池、リチウムポリマー電池など様々な種類の電池が使用される。
この被制御体側通信装置の電源電圧が低下すると、正常な通信ができなくなり、被制御体の操縦が不能となる非常に危険な状態になる。そのため、電源電圧がある一定値以下になると働くバッテリーフェールセーフの機能があった。
このバッテリーフェールセーフの機能とは、被制御体に設けられる被制御体側通信装置の電源電圧の低下を、被制御体の動作を通して操縦者に知らせるための機能である。
【0005】
一般にバッテリーフェールセーフの機能は、被制御体側通信装置の電源電圧が所定値以下になったときに、サーボ装置の動作位置をあらかじめ設定しておいた位置に固定する。サーボ装置の動作位置を固定することによって、被制御体が模型飛行機の場合は、旋回などの動作をおこなわせることができる。
また、エンジンのスロットルレバーの制御をおこなっているサーボ装置にバッテリーフェールセーフの機能を作用させる場合には、エンジンの回転数を最低回転数にするなどの制御をおこなうことができる。
被制御体は、このような動作をおこなうことで操縦者に電源電圧の低下状態を知らせ、速やかに被制御体の操縦の停止と回収を促すようにしている。
【0006】
バッテリーフェールセーフの機能が働いた後に操縦装置で特定の操作をおこなうと一時的にバッテリーフェールセーフの機能を解除することができ、一定の時間、被制御体を操縦できる。一定時間経過後は再度バッテリーフェールセーフの機能が働く。以降、電源がさらに消耗して操作不能になるまでこの動作を繰り返す。
操縦者は、被制御体の動作からバッテリーフェールセーフの機能が働いたことが確認できたら、操作不能になる前に被制御体を安全な場所に停止させて回収することができる。
【0007】
特許文献1には、図5に示したような被制御体側通信装置30が開示されている。図示しない操縦装置で操作信号とは別に、エンジンを最低回転数に固定するように設定しているバッテリーフェールセーフ用の信号Sを生成、送信する。
被制御体側通信装置30は、高周波回路31で受信した信号を増幅、復調する。そして、信号はデコーダ32でサーボ装置などの駆動制御部33に振り分けられて出力される。このとき、エンジン制御用サーボ装置の操作信号Mは、バッテリーフェールセーフ用の信号Sとともに切替え回路34に出力される。
【0008】
切替え回路34は通常、操作信号Mを出力するが、電圧検出回路35で検出した電源の電圧が基準電圧値以下になった場合、切替え回路34は操作信号Mに替えてバッテリーフェールセーフ用の信号Sをサーボ装置に出力する。
被制御体が操作不能になる前に、バッテリーフェールセーフ用の信号Sによって制御している間に被制御体を安全な場所に停止させて回収することができる。
【0009】
また、特許文献2に記載のラジコン受信装置は、電池の種類に応じてバッテリーフェールセーフの機能を働かせる適切な電源の基準電圧値が異なるので、電池に応じて変更した基準電圧値を記憶するメモリを備えたラジコン受信機が開示されている。
【0010】
さらに、近年のホビー用途のラジコンシステムでは被制御体に搭載したエンジン回転センサーや電源電圧の検出部などのセンサーの検出値を、被制御体側通信装置から送信して、操縦装置に備えられた表示部で表示するという双方向通信をおこなうラジコンシステムの技術が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭61−239796
【特許文献2】特開2011−78707
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
双方向通信をおこなうラジコンシステムでは、被制御体側通信装置は、操縦装置からの電波の受信だけでなく、送信の処理をおこなうので従来の単方向通信のラジコンシステムの被制御体側通信装置よりも電源の電池の消耗が激しい。特に送信の処理は、受信の処理以上に電池を消耗する。
よって、単方向の通信をおこなうラジコンシステムと比較して、双方向通信のラジコンシステムは被制御体を遠隔制御できる時間が短くなってしまうという問題があった。
【0013】
特に、従来のバッテリーフェールセーフの機能が働く電源の基準電圧値で双方向通信のラジコンシステムを運用すると、被制御体を安全な場所に停止して回収する前に、電源電圧が低下してしまい操作不能となるおそれがあった。
また、従来よりも基準電圧値を高めに設定すると、通常の使用が可能な区間でバッテリーフェールセーフの機能が働いてしまうという問題があった。このような場合に、電源の電池が二次電池の場合には、電池を十分に使用しないで、充放電回数が増加することにより電池寿命が短くなるおそれがあった。
【0014】
本発明は、以上説明した問題点を解決するためになされたものであり、被制御体側通信装置の電力消費を低減して、ラジコンシステムを使用できる時間を延ばすようにした無線通信システムである。
特に、バッテリーフェールセーフの機能が働いた後に、被制御体の停止と回収がおこなえるように被制御体側通信装置の電力消費を低減した無線通信システムである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載された被制御体側通信装置は、操縦装置から操縦信号の電波を送信し、被制御体に設けた被制御体側通信装置により受信して被制御体の駆動制御部を制御するとともに、被制御体側通信装置から被制御体の状態を示すデータ信号を電波で送信し、操縦装置で受信することにより被制御体の状態を監視する無線通信システムにおいて、
前記被制御体側通信装置は、電源電圧を検出する電圧検出部と、前記電圧検出部で検出された電源電圧情報を含んだ前記データ信号を生成するデータ信号生成部と、前記電源電圧情報に応じてデータ信号の送信間隔を制御する被操縦体側制御部を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載された被制御体側通信装置は、操縦装置から操縦信号の電波を送信し、被制御体に設けた被制御体側通信装置により受信して被制御体の駆動制御部を制御するとともに、被制御体側通信装置から被制御体の状態を示すデータ信号を電波で送信し、操縦装置で受信することにより被制御体の状態を監視する無線通信システムにおいて、
前記被制御体側通信装置は、電源電圧を検出する電圧検出部と、前記電圧検出部で検出された電源電圧情報を含んだ前記データ信号を生成するデータ信号生成部と、前記操縦装置からのデータ要求信号を受信する被制御体側送受信部と、前記電源電圧情報を基準電圧値と比較する電圧比較部と、前記電源電圧情報が基準電圧値以下になった場合に前記被制御体を所定の方法で制御するフェールセーフ信号を出力し、フェールセーフ情報を前記データ信号に加えるフェールセーフ機能部を備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載された操縦装置は、操縦装置から操縦信号の電波を送信し、被制御体に設けた被制御体側通信装置により受信して被制御体の駆動制御部を制御するとともに、被制御体側通信装置から被制御体の状態を示すデータ信号を電波で送信し、操縦装置で受信することにより被制御体の状態を監視する無線通信システムにおいて、
前記操縦装置は、前記被制御体側通信装置にデータ要求信号を送信する操縦側送受信部と、受信した前記データ信号に含まれる電源電圧情報に応じて前記データ要求信号の送信間隔を制御するデータ要求間隔制御部を備えたことを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載された操縦装置は、請求項3の操縦装置において、前記データ要求間隔制御部は、前記データ信号から前記フェールセーフ情報を検出した場合に前記データ要求信号の送信間隔を長くなるように制御することを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載された操縦装置は、請求項4の操縦装置において、前記データ要求間隔制御部は、前記データ信号から前記フェールセーフ情報を検出した場合に、前記データ信号に含まれる前記電源電圧情報に応じてデータ要求信号の送信間隔を複数の段階に制御することを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載された操縦装置は、請求項3から請求項5の何れかに記載された操縦装置において、前記データ信号に含まれる前記電源電圧情報を操縦側基準電圧値と比較する操縦側電圧比較部と、前記電源電圧情報が前記操縦側基準電圧値以下になった場合にアラームを発生させるアラーム部を備えたことを特徴とする。
【0021】
請求項7に記載された操縦装置は、請求項4または請求項5に記載された操縦装置において、前記データ信号から前記フェールセーフ情報を検出した場合にアラームを発生させるアラーム部を備えたことを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載された無線通信システムは、操縦装置から操縦信号の電波を送信し、被制御体に設けた被制御体側通信装置により受信して被制御体の駆動制御部を制御するとともに、被制御体側通信装置から被制御体の状態を示すデータ信号を電波で送信し、操縦装置で受信することにより被制御体の状態を監視する無線通信システムにおいて、
前記被制御体側通信装置は、前記操縦装置からの前記データ要求信号を受信し、前記データ要求信号に応じて前記データ信号を送信する被制御体側送受信部と、電源電圧を検出する電圧検出部と、前記電圧検出部で検出された電源電圧情報を含んだ前記データ信号を生成するデータ信号生成部を備え、
前記操縦装置は、前記被制御体側通信装置にデータ要求信号を送信する操縦側送受信部と、受信した前記データ信号に含まれる電源電圧情報に応じて前記データ要求信号の送信間隔を制御するデータ要求間隔制御部を備えたことを特徴とする。
【0023】
請求項9に記載された無線通信システムは、請求項8に記載された無線通信システムにおいて、
前記被制御体側通信装置は、前記電源電圧情報を基準電圧値と比較する電圧比較部と、
前記電源電圧情報が基準電圧値以下になった場合に前記駆動制御部を所定の方法で制御するフェールセーフ信号を出力し、フェールセーフ情報を前記データ信号に加えるフェールセーフ機能部を備え、
前記操縦装置の前記データ要求間隔制御部は、前記データ信号から前記フェールセーフ情報を検出した場合に前記データ要求信号の送信間隔を長くなるように制御することを特徴とする。
【0024】
請求項10に記載された無線通信システムは、請求項9に記載された無線通信システムの操縦装置において、前記データ要求間隔制御部は、前記データ信号から前記フェールセーフ情報を検出した場合に、前記データ信号に含まれる前記電源電圧情報に応じてデータ要求信号の送信間隔を複数の段階に制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
上記のような構成であるから、被制御体側通信装置の電力消費が低減され、ラジコンシステムの使用時間を延ばすことができる。また、バッテリーフェールセーフの機能が働き始めてからのデータ要求の間隔を長くすることで、電源の電圧を持続させることができるので、被制御体を安全な場所に停止させるまでの時間を十分確保できるようになった。
【0026】
さらに、操縦装置に備えたアラーム部が働くことにより、操縦者が直感的に被制御体側の電源電圧が低下していることを確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】無線通信システムの構成例を示したブロック図である。
【図2】データ要求をおこなった場合の無線通信システムの処理の流れを示したフローチャートである。
【図3】無線通信システムの通信動作の例を示した図である。
【図4】他の実施形態の操縦装置の構成例を示したブロック図である。
【図5】従来の被制御体側通信装置の構成例を示したブロック図
【発明を実施するための形態】
【0028】
第1実施形態
第1実施形態について、添付した図1から図3を参照しながら説明する。図1は本願発明の無線通信システム1の構成例を示すブロック図である。
操縦装置2は、被制御体3の操縦をおこなうための装置であり、操縦者は操作部5を操作して被制御体3の駆動制御や操縦装置2の設定の変更をおこなう。操作部5はスイッチやスティック、レバー、タッチパネルなどを備える。
【0029】
操縦側制御部6は、操作部5の操作に合わせて操縦装置2の設定を変更したり、被制御体3を駆動制御するための操縦信号を生成したりする。操縦側制御部6は実際に処理をおこなうCPU(Central Processing Unit)を備えている。
また、被制御体側通信装置4や被制御体3の状態を検出するためにデータ要求をおこなう間隔を制御するデータ要求間隔制御部20も備えている。
【0030】
操縦側記憶部7は、操縦装置2の様々な設定を記憶しているメモリである。
操縦側送受信部8は、操縦信号や、被制御体側通信装置4や被制御体3の状態を検出するためのデータ要求信号を送信する送信処理と、被制御体側通信装置4が送信したデータ信号を受信する受信処理をおこなう。
【0031】
データ要求信号とは、被制御体側通信装置4や被制御体3の状態を操縦装置が入手するために被制御体側通信装置4に対して、情報を送信するように指示をする信号である。
また、データ信号とは、被制御体側通信装置4や被制御体3に設けたセンサーの検出値からなる信号である。本実施例の場合には、電圧検出部11で検出した電源電圧情報が含まれている。このほかにもセンサーとして、図示しないエンジンの回転センサーや温度センサーなどのセンサーを設けた場合は、データ信号にこれらの検出値を加えることができる。
さらにデータ信号には、被制御体側通信装置4でバッテリーフェールセーフの機能が働いていることを示すフェールセーフ情報も含まれる。
【0032】
被制御体側通信装置4は、被制御体3に搭載され操縦装置2が送信した操縦信号を受信して駆動制御部9へ出力する装置である。駆動制御部9は図中では一つだが、エンジンのスロットルレバーや各部の駆動制御をおこなうサーボ装置や、模型ヘリコプタなどの被制御体3の左右方向の回転の安定性を保つジャイロ装置など被制御体3を駆動制御するための装置が必要に応じ複数接続される。
【0033】
電源10は、ニッカド電池やニッケル水素電池、リチウムポリマー電池などの電池が使用され、被制御体3に搭載される。一般に電源10は、被制御体側通信装置4と駆動制御部9で共用している。
電圧検出部11は、電源10の電圧を検出して電源電圧情報として被制御体側制御部12に出力する。
【0034】
被制御体側制御部12は、操縦信号をデコードして駆動制御部9に出力する。また、操縦装置2のデータ要求信号に応答するデータ信号を生成するデータ信号生成部21を備えている。
【0035】
また、被制御体側制御部12は、電源電圧情報を被制御体側記憶部13に設定された基準電圧値と比較する電圧比較部22と、電源電圧情報が基準電圧値以下の場合、フェールセーフ信号を駆動制御部9に出力するとともに、フェールセーフ情報をデータ信号に加えるフェールセーフ機能部23を備えている。
被制御体側制御部12は、CPUによって実際の処理をおこなっている。
【0036】
フェールセーフ信号は、バッテリーフェールセーフの機能を実現するために、あらかじめ駆動制御部9のサーボ装置の動作位置を所定の位置に固定するような信号である。
被制御体3が模型飛行機であって、フェールセーフ信号によって各部の舵の駆動を制御するサーボ装置を制御する場合は、舵を所定の位置に固定し、被制御体3に旋回などの動作をおこなわせる。また、フェールセーフ信号によってエンジンのスロットルレバーを制御するサーボ装置の制御をおこなう場合は、エンジンの回転数を最低回転数にするなどの制御をおこなうことができる。
【0037】
被制御体側記憶部13は、被制御体側制御部12内の電圧比較部22で使用する基準電圧値や、被制御体側通信装置4の様々な設定を記憶しているメモリである。
被制御体側送受信部14は、操縦信号や、データ要求信号を受信して被制御体側制御部12に出力する受信処理と、データ信号を操縦装置2に送信する送信処理をおこなう。
【0038】
図2は、操縦装置2から被制御体側通信装置4へのデータ要求がおこなわれた場合の処理の流れを示したフローチャートである。図2では操縦装置2と被制御体側通信装置4で通信の同期が図られたうえでの通信動作を示している。図1に示した各構成と合わせて処理の流れを説明する。
【0039】
まず、図2のステップS10により操縦装置2がデータ要求信号を送信する。被制御体側通信装置4はステップS20でデータ要求信号を受信する。被制御体側通信装置4はデータ要求信号を受信すると、電圧検出部11によって電源10の電圧を測定する。検出された電源電圧情報は、被制御体側制御部12内の電圧比較部22で基準電圧値と比較される。
【0040】
電源電圧情報が基準電圧値より大きい場合(ステップS21、No)は、ステップS23で電源電圧情報を含んだデータ信号をデータ信号生成部21で生成し、操縦装置2に送信する。その後、操縦装置2のデータ要求信号を受信する状態に戻る。
【0041】
電源電圧が基準電圧値以下の場合(ステップS21、Yes)は、ステップS24においてフェールセーフ機能部23でバッテリーフェールセーフの機能を働かせて、フェールセーフ信号を駆動制御部9に出力する。
そして、ステップS25で電源電圧情報を含んだデータ信号をデータ信号生成部で生成し、バッテリーフェールセーフの機能が働いていることを示すフェールセーフ情報をデータ信号に加えて操縦装置2に送信する。その後、操縦装置2のデータ要求信号を受信する状態に戻る。
【0042】
操縦装置2は、ステップS11でデータ信号を受信する。データ信号には、被制御体側通信装置4や被制御体3の状態を示した電源電圧情報などが含まれている。
そして、ステップS12においてデータ信号にフェールセーフ情報が含まれているか操縦側制御部6で判別する。フェールセーフ情報が含まれていない場合(ステップS12、No)は、データ要求信号を今まで通りの間隔で送信する状態に戻る。
【0043】
また、データ信号にフェールセーフ情報が含まれている場合(ステップS12、Yes)は、ステップS13でデータ要求信号を送信する間隔をデータ要求間隔制御部20で変更する。その後、データ要求信号を送信する状態に戻る。
このとき、データ要求信号を送信する間隔は、通常の状態よりもデータ信号にフェールセーフ情報が含まれることを確認した後の方が長くなるように変更している。
【0044】
図3は無線通信システム1である操縦装置2と被制御体側通信装置4の通信動作を模式的に示した図である。図3では、操縦装置2と被制御体側通信装置4で通信の同期が図られたうえでの通信動作を示している。図1に示した各構成と合わせて送受信の動作を説明する。
【0045】
まず、図3(a)は通常の状態の通信動作例を示したものである。
操縦装置2は通常、所定の間隔で操縦信号を送信し、間隔T1で操縦信号とデータ要求信号を同時に送信する。データ要求信号を送信後、操縦装置2は一定時間、受信状態となる。被制御体側通信装置4は通常、受信状態で待機しており、操縦信号を受信すると処理をおこなう。
また、被制御体側通信装置4は、データ要求信号を受信すると図2に示したフローチャートの処理に従って、操縦装置2にデータ信号を送信する。以降、所定の間隔T1でこの動作を繰り返す。
【0046】
被制御体側通信装置4の電源電圧が基準電圧値以下になって、フェールセーフの機能が働くとフェールセーフ情報がデータ信号に加えられて、操縦装置2に送信される。操縦装置2ではデータ要求間隔制御部20でデータ要求信号の送信間隔が変更されて、送受信動作が図3(b)のようになる。
このとき、操縦装置2が操縦信号とデータ要求信号を同時に送信する間隔が、通常の場合のT1に対して、より間隔の長いT2となる。図3の場合はT1に対して、T2を2倍の間隔にしている。
【0047】
この処理によって、被制御体側通信装置4がデータ信号を送信する間隔もT1からT2となる。被制御体側通信装置4の送信の処理の間隔が長くなるため、電源10の消耗が抑えられ、バッテリーフェールセーフの機能が働き始めた後に被制御体3を安全な場所に停止させて回収することができる。
【0048】
第2実施形態
本発明の第2実施形態を図3を参照しながら説明する。
第2実施形態の無線通信システム1の構成は第1実施形態の構成と同様である。操縦側制御部6内のデータ要求間隔制御部20は、データ信号中の電源電圧情報に応じて複数段階でデータ要求間隔が変更可能となっている。
【0049】
送受信動作について、図3を参照して説明する。
第1実施形態と同様に、通常の送受信動作は第1実施例と同様に図3(a)のようにおこなわれる。そして、データ信号にフェールセーフ情報が含まれると、データ要求間隔制御部20でデータ要求信号の送信間隔を変更して、図3(b)のように送受信動作が変化する。
【0050】
第2実施形態では、被制御体側通信装置4でバッテリーフェールセーフの機能が働き始めてからさらに電源電圧が低下し、その電源電圧情報が含まれたデータ信号を操縦装置2が受信して、データ要求間隔制御部20で所定の電圧値より低くなったことが確認されると、図3(c)のようにデータ要求信号を送信する間隔がT2よりも長いT3となる。図3の場合はT1に対して、T3を3倍の間隔にしている。
【0051】
図3では通常の送受信の状態から、データ要求信号を送信する間隔が2段階変化するが、データ要求間隔制御部の設定を変更することで、電源電圧情報に応じてデータ要求信号の送信間隔を3段階以上変更することも可能である。
また、T1、T2、T3の間隔は、T1<T2<T3の条件を満たせば、自由に設定することも可能である。
【0052】
第3実施形態
第3実施形態の無線通信システムの操縦装置の構成例を図4を参照して説明する。
【0053】
操縦装置2’は、アラーム部15を備えている。アラーム部15は、図示しない被制御体の電源電圧の低下や、異常が起こったことを操縦者に認識させるための装置であり、種種の表示をおこなう表示装置、小型のLEDなどの発光装置、警告音を発生させる警報装置などの装置を任意に備えている。
【0054】
また、操縦側記憶部7’には図示しない被制御体側通信装置から送信されたデータ信号中の電源電圧情報と比較をおこなうための操縦側基準電圧値が記憶されている。
さらに操縦側制御部6’には操縦側電圧比較部24を備えており、電源電圧情報と操縦側基準電圧値の比較をおこなう。
【0055】
次に第3実施形態の特有の処理について説明する。
図示しない被制御体側通信装置からのデータ信号を受信して、データ信号にフェールセーフ情報が含まれている場合、第1実施形態と同様にデータ要求信号を送信する間隔をデータ要求間隔制御部20で変更する。このとき、データ要求信号を送信する間隔は、通常の状態よりもデータ信号にフェールセーフ情報が含まれることを確認した後の方が長くなるようにする。
そして、アラーム部15で操縦者に被制御体側通信装置でバッテリーフェールセーフの機能が働いていることを操縦者に報知する。
【0056】
また、あらかじめ操縦側記憶部7’に所定の操縦側基準電圧値を設定しておき、データ信号中の電源電圧情報と操縦側基準電圧値を操縦側電圧比較部24で比較し、電源電圧情報が操縦側基準電圧値以下の場合にアラーム部15によって、操縦者にアラームを送ることも可能である。
【0057】
操縦側記憶部7’の操縦側基準電圧値は、操作部5’によって自由に変更することができ、被制御体側制御部12でバッテリーフェールセーフの機能が働く基準電圧値とは別の値を設定することができる。
これを利用して、被制御体側通信装置のバッテリーフェールセーフの機能が働く基準電圧値よりも少し高めに操縦側基準電圧値を設定しておくと、操縦者にフェールセーフが働く前にアラームが送られるので、より安全に被制御体の停止動作を開始することができる。
【0058】
なお、第1実施形態から第3実施形態では、被制御体側通信装置がデータ要求信号を受信することで、データ信号を生成し、操縦装置に送信しているが、操縦装置がデータ要求信号を送信しない場合であっても、あらかじめ所定の周期で被制御体側操縦装置がデータ信号を送信するような構成を実施することも可能である。
この場合は、被制御体側通信装置の制御部で電源電圧情報に応じてデータ信号の送信間隔を変更することで第1実施形態から第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
また、第1実施形態から第3実施形態では、データ信号に含まれるフェールセーフ情報を検出後にデータ要求信号の送信間隔を制御しているが、操縦装置で受信したデータ信号の電源電圧情報に基づいて、データ要求信号の送信間隔を制御することも可能である。
この場合は、操縦装置のデータ要求間隔制御部でデータ要求信号の送信間隔を変更することで第1実施形態から第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0060】
なお、第1実施形態から第3実施形態によりこの発明が限定されるものではなく、これらの形態に基づいて当業者等によりなされる実施可能な他の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
1…無線通信システム
2、2’…操縦装置
3…被制御体
4…被制御体側通信装置
11…電圧検出部
15…アラーム部
20、20’…データ要求間隔制御部
21…データ信号生成部
22…電圧比較部
23…フェールセーフ機能部
24…操縦側電圧比較部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操縦装置から操縦信号の電波を送信し、被制御体に設けた被制御体側通信装置により受信して被制御体の駆動制御部を制御するとともに、被制御体側通信装置から被制御体の状態を示すデータ信号を電波で送信し、操縦装置で受信することにより被制御体の状態を監視する無線通信システムにおいて、
前記被制御体側通信装置は、電源電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部で検出された電源電圧情報を含んだ前記データ信号を生成するデータ信号生成部と、
前記電源電圧情報に応じてデータ信号の送信間隔を制御する被操縦体側制御部を備えたことを特徴とする被制御体側通信装置。
【請求項2】
操縦装置から操縦信号の電波を送信し、被制御体に設けた被制御体側通信装置により受信して被制御体の駆動制御部を制御するとともに、被制御体側通信装置から被制御体の状態を示すデータ信号を電波で送信し、操縦装置で受信することにより被制御体の状態を監視する無線通信システムにおいて、
前記被制御体側通信装置は、電源電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部で検出された電源電圧情報を含んだ前記データ信号を生成するデータ信号生成部と、
前記操縦装置からのデータ要求信号を受信する被制御体側送受信部と、
前記電源電圧情報を基準電圧値と比較する電圧比較部と、
前記電源電圧情報が基準電圧値以下になった場合に前記被制御体を所定の方法で制御するフェールセーフ信号を出力し、フェールセーフ情報を前記データ信号に加えるフェールセーフ機能部を備えたことを特徴とする被制御体側通信装置。
【請求項3】
操縦装置から操縦信号の電波を送信し、被制御体に設けた被制御体側通信装置により受信して被制御体の駆動制御部を制御するとともに、被制御体側通信装置から被制御体の状態を示すデータ信号を電波で送信し、操縦装置で受信することにより被制御体の状態を監視する無線通信システムにおいて、
前記操縦装置は、前記被制御体側通信装置にデータ要求信号を送信する操縦側送受信部と、
受信した前記データ信号に含まれる電源電圧情報に応じて前記データ要求信号の送信間隔を制御するデータ要求間隔制御部を備えたことを特徴とする操縦装置。
【請求項4】
請求項3の操縦装置において、
前記データ要求間隔制御部は、前記データ信号から前記フェールセーフ情報を検出した場合に前記データ要求信号の送信間隔を長くなるように制御することを特徴とする操縦装置。
【請求項5】
請求項4の操縦装置において、
前記データ要求間隔制御部は、前記データ信号から前記フェールセーフ情報を検出した場合に、前記データ信号に含まれる前記電源電圧情報に応じてデータ要求信号の送信間隔を複数の段階に制御することを特徴とする操縦装置。
【請求項6】
請求項3から請求項5の何れかに記載された操縦装置において、
前記データ信号に含まれる前記電源電圧情報を操縦側基準電圧値と比較する操縦側電圧比較部と、
前記電源電圧情報が前記操縦側基準電圧値以下になった場合にアラームを発生させるアラーム部を備えたことを特徴とする操縦装置。
【請求項7】
請求項4または請求項5に記載された操縦装置において、
前記データ信号から前記フェールセーフ情報を検出した場合にアラームを発生させるアラーム部を備えたことを特徴とする操縦装置。
【請求項8】
操縦装置から操縦信号の電波を送信し、被制御体に設けた被制御体側通信装置により受信して被制御体の駆動制御部を制御するとともに、被制御体側通信装置から被制御体の状態を示すデータ信号を電波で送信し、操縦装置で受信することにより被制御体の状態を監視する無線通信システムにおいて、
前記被制御体側通信装置は、前記操縦装置からの前記データ要求信号を受信し、前記データ要求信号に応じて前記データ信号を送信する被制御体側送受信部と、
電源電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部で検出された電源電圧情報を含んだ前記データ信号を生成するデータ信号生成部を備え、
前記操縦装置は、前記被制御体側通信装置にデータ要求信号を送信する操縦側送受信部と、
受信した前記データ信号に含まれる電源電圧情報に応じて前記データ要求信号の送信間隔を制御するデータ要求間隔制御部を備えたことを特徴とする無線通信システム。
【請求項9】
請求項8に記載された無線通信システムにおいて、
前記被制御体側通信装置は、前記電源電圧情報を基準電圧値と比較する電圧比較部と、
前記電源電圧情報が基準電圧値以下になった場合に前記駆動制御部を所定の方法で制御するフェールセーフ信号を出力し、フェールセーフ情報を前記データ信号に加えるフェールセーフ機能部を備え、
前記操縦装置の前記データ要求間隔制御部は、前記データ信号から前記フェールセーフ情報を検出した場合に前記データ要求信号の送信間隔を長くなるように制御することを特徴とする無線通信システム。
【請求項10】
請求項9に記載された無線通信システムの操縦装置において、
前記データ要求間隔制御部は、前記データ信号から前記フェールセーフ情報を検出した場合に、前記データ信号に含まれる前記電源電圧情報に応じてデータ要求信号の送信間隔を複数の段階に制御することを特徴とする無線通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−34778(P2013−34778A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175100(P2011−175100)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000201814)双葉電子工業株式会社 (201)
【Fターム(参考)】