説明

無線通信方式及び無線中継装置

【課題】本発明は、移動無線通信機の構成が比較的簡単で、無線中継装置の構成並びに制御も比較的簡単な処理で済む無線通信システム、無線中継装置を提供することを目的としている。
【解決手段】交互に送受信を行う無線通信方式において、フレーム構造が同一で伝送レートが所要倍数の複数のフレーム構成の中から一つを選択して送信し又は受信する機能を備え、高速伝送レートで送信する際にフレームの一部に有意のデータを配置し、その他の部分には無意のデータを配置した複数の移動無線通信機と、複数の前記移動無線通信機から送信される低速伝送レートのフレーム信号の有意データを高速伝送レートのフレームのタイムスロットの一部に組み替え配置して再送信するように構成した無線中継装置を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル無線通信に好適な無線通信方式及び無線中継装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
陸上移動無線通信システム(Land Mobile Radio System:LMRシステム)では、移動に伴う受信電界レベルの変動が大きいので、受信電界レベルの変動に対して受信復調音声出力の変動が少ない周波数変調方式(FM)が一般に使用されている。また、近年、周波数資源の有効活用や秘話性の向上等の観点から、搬送波の高周波帯域への移行や搬送波周波数の狭帯域化、あるいは多重化およびデジタル化が進められており、北米のAPCO P25、欧州のTETRA方式等が標準規格として知られている。
このうちAPCO P25は、一つの搬送周波数を使用する単一チャネル搬送波(Single Channel Per Carrier:SCPC)方式で、多重方式も周波数分割多重方式(Frequency Division Multiple Access:FDMA)とするSCPC/FDMA方式であるが、TETRAは4スロットの時分割多重方式(Time Division Multiple Access:TDMA)方式である。
【0003】
一方、陸上移動無線通信においては、山岳地帯や市街地の高層ビル等の陰には無線電波の届き難い地域(不感地帯)が存在するので、これらをカバーするために無線中継装置を配置する必要がある。特に、高周波帯域への移行が進むと電波の直進性が強まるため、市街地等においては随所に不感地帯が発生し、より多くの無線中継装置が必要となる。
無線中継装置を含めた全体として無線通信システムのコスト低減を考えると、以前に比して必要となる無線中継装置の数が多くなった現在においては、無線中継装置のコスト低減も重要な要素になっている。
【0004】
図7は、SCPC/FDMA方式に用いられる従来の無線中継装置の一例を示す概要ブロック図である。説明の便宜上、図面左側の移動無線通信機から中継装置に向けて送信する場合を「上り回線」、図面右側に位置する移動無線通信機に中継する場合を「下り回線」と呼ぶことにする。
この例に示す無線中継装置はn個のチャネル周波数に対応するもので、全体の構成を説明すれば、第一のアンテナ50と、中継装置100と、第二のアンテナ52と、を備えている。更に、前記中継装置100は、供給される受信電波信号を各受信機に分配する分配器101と、n個の各チャネル周波数に対応して受信復調するn個の受信機102−1乃至102−nと、各受信機の復調信号を変調信号として受信周波数とは異なる搬送周波数信号を発生するn個の送信機103−1乃至103−nと、各送信機の出力信号の反射を防止するn個のアイソレータ104−1乃至104−nと、前記n個のアイソレータ出力を統合する結合器105とを備えている。
このような構成の無線中継装置の動作については既によく知られているので詳細な説明は省略するが、同図に示すように使用するチャネル数に応じた数の送信機や、受信機、アイソレータ等が必要となる。
【0005】
また、デジタル化された移動無線通信システムにおける種々問題を解決するための工夫が施されたシステムとして、例えば特許文献1、2に記載されたものが存する。前者の発明は従来のSCPC/FDMA方式における、多数の搬送波が多重されることによる混変調雑音発生の軽減や、周波数分別のための分波器による送信電力の損失低減等を目的として、基地局から移動無線局への回線はFDMA方式とし、逆に移動無線通信機から基地局への回線はSCPC/FDMA方式にするものである。後者の発明は、TDMA方式とMCA方式(Multi Channel Access)の特徴を生かし、基本的にはTDM/TDMA方式をとりながら、多数の加入者端末までの接続はMCA方式を採用するものである。
【特許文献1】特許第2503869号公報
【特許文献2】特公平7−73386公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の方法では、依然として中継装置の構成や制御が複雑であり、また、システム運用上のフレキシビリティに欠ける点があった。即ち、従来の移動無線通信機においては、TDMAに適用するために自局に割り当てられたタイムスロットにタイミングを正確に同期すると共に、短時間にバースト的に送受信を繰り返すものであることから、システム全体におけるタイミング処理には極めて精密な制御が必要であり、全体的な装置のコストが高額になっていた。また、複数の移動無線通信機が、自局に割り当てられたタイムスロットに同期して無線中継装置や基地局に対し送信する際、互いのタイムスロット送信信号同士の衝突を防止するために、所要のガード時間を設ける必要があるが、ガード時間を大きくすれば移動無線通信機の送信電力の立ち上がり・立ち下がりに余裕ができて送信電力増幅器に対する性能要求が軽減されるもののガード時間が広がる分データ伝送に使用し得る時間が短くなって、実質的な伝送レートが低下することになる。更には、各端末通信機間の距離が大きくなるに従って、電波が到達する際の遅延時間を考慮してガード時間を更に大きくする必要があり、ガード時間を必要としないSCPC/FDMA方式に比べると、一つの基地局や無線中継装置でカバーし得る範囲も、ガード時間との兼ね合いで大きくできない場合があった。即ち、ガード時間を大きくすれば通信距離を大きく設定し得るが、その分ガード時間を大きくするため実施的伝送レートが低下することになる。また、コストの面から見ても、バースト的に大電力信号を送信し得る送信機は高価になることもあって、TDMA方式では、SCPC/FDMA方式に比して一つの中継装置や基地局でカバーし得る範囲が狭くなり、携帯電話システムのように多数の基地局を配置する必要があった。更に、既存のアナログ方式の移動無線システムをデジタル方式に置き換える際には、基地局や無線中継装置配置に大きな違いがないSCPC/FDMA方式システムが適していることは明白である。
【0007】
以上の説明では無線中継の場合について述べたが、無線システムによっては、移動無線通信機同士が直接通信せず、全て無線中継装置あるいは基地局装置を介して通信を行う場合もあるが、その場合であっても同様の問題を含んでいた。
本発明は、従来の無線システムの欠点を除去するためになされたものであって、移動無線通信機の構成が比較的簡単であり、また、無線中継装置の構成並びに制御も比較的簡単な処理で済む無線通信システム、無線中継装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はかかる課題を解決するために、請求項1記載の無線通信方式は、複数の移動無線通信機が必要に応じて無線中継装置を介して交互に送受信を行う無線通信方式において、前記移動無線通信機は、フレーム構造が同一で伝送レートが所要倍数の複数のフレーム構成のなかから一つを選択して送信し又は受信する機能を備え、該移動無線通信機同士が直接に通信する際は同一周波数搬送波により同一伝送レートで通信し、前記移動無線通信機同士が無線中継装置を介して通信する際は、無線中継装置に対して夫々の移動無線通信機に割り当てられた周波数搬送波により低速伝送レートで送信し、無線中継装置から再送信される所要数に時分割多重化された高速伝送レートのフレーム信号を受信するようにしたことを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の無線中継方式は、複数の移動無線通信機が必要に応じて無線中継装置を介して交互に送受信を行う無線通信方式において、前記移動無線通信機が、フレーム構造が同一で伝送レートが所要倍数の複数のフレーム構成の中から一つを選択して送信し又は受信する機能を備え、高速伝送レートで送信する際に必要に応じてフレームの一部に有意のデータを配置し、その他の部分には無意のデータを配置するように構成されたものであり、前記無線中継装置は、複数の前記移動無線通信機から送信される低速伝送レートのフレーム信号の有意データを、高速伝送レートのフレームのタイムスロットの一部に組み替え配置して再送信するように構成されたものであることを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の無線中継装置は、複数の移動無線通信機から送信される無線信号を中継する無線中継装置において、前記移動無線通信機から送信される第一乃至第nの無線周波数信号を受信し復調する第一乃至第nの受信手段と、前記受信手段によって復調した信号のうち有意データを夫々の伝送レートに応じて前記移動無線通信機から送信されるn倍の伝送レートの時分割多重フレームの所要タイムスロットに組み換え、前記第一乃至第nの無線周波数信号と異なる周波数の搬送波を使用して再送信する送信手段と、を備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の無線中継装置において、前記無線中継装置は、受信した前記移動無線通信機から送信される信号の伝送レートを判断する手段又は音声データであるかテキストデータであるかを判断する手段の少なくとも一つの判断手段と、該判断手段による判断の結果に基づいて再送信する際のフレーム構成又は伝送レートを設定する手段と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以上のように構成し、または処理手順を構築したので、夫々以下のような効果が得られる。請求項1記載の発明では、複数の移動無線通信機が必要に応じて無線中継装置を介して交互に送受信を行う無線通信方式において、前記移動無線通信機は、フレーム構造が同一で伝送レートが所要倍数の複数のフレーム構成のなかから一つを選択して送信し又は受信する機能を備え、該移動無線通信機同士が直接に通信する際は同一周波数搬送波により同一伝送レートで通信し、前記移動無線通信機同士が無線中継装置を介して通信する際は、無線中継装置に対して夫々の移動無線通信機に割り当てられた周波数搬送波により低速度の伝送レートで送信し、無線中継装置から再送信される所要数に時分割多重化された高速伝送レートのフレーム信号を受信するようにしたので、音声通信、データ通信、無線中継等の状況に応じてフレキシブルに運用することが可能となり、また、無線中継装置を含めた全体の無線通信システム制御が簡単になり、無線通信システム全体のコストを低減する上で効果がある。更に、既存のアナログ方式の移動無線システムをデジタル方式に置き換える際に、基地局や無線中継装置配置に大きな違いがないので順次置き換えが可能であり、また既設設備の部分的流用が可能である。
【0013】
請求項2記載の無線通信方式は、前記請求項1記載の複数の移動無線通信機から送信する信号を無線中継する際、同一構成のフレームであって高速伝送レートのフレームのタイムスロットの一部に組み替え配置して再送信するように無線中継装置を構成することができるので、無線中継装置を含めた全体の無線通信システム構成を簡単安価にでき、無線通信システム全体のコストを低減し、また、運用上の自由度も向上する。特に、移動無線通信機から送信する際に、バースト的な送信が必要ではない範囲でフレーム変換を行えば、移動無線通信機のコスト低減効果が大きい。
【0014】
請求項3記載の無線中継装置は、複数の移動無線通信機から送信される無線信号を中継する無線中継装置において、前記移動無線通信機から送信される第一乃至第nの無線周波数信号を受信し復調する第一乃至第nの受信手段と、前記受信復調信号のうち有意データを夫々の伝送レートに応じて前記移動無線機から送信されるn倍の伝送レートのフレームの所要タイムスロットに組み換え、前記第一乃至第nの無線周波数と異なる周波数の搬送波を使用して再送信するフレームレート変換手段を有する送信手段を備えたので、請求項1又は2記載の無線通信システムに適応した無線中継装置を提供することができ、システム全体のコスト低減にも効果がある。
【0015】
請求項4記載の無線中継装置は、請求項3記載の無線中継装置において、前記無線中継装置は、受信した前記移動無線通信機から送信される信号の伝送レートを判断する手段又は音声データであるかテキストデータであるかを判断する手段の少なくとも一つの判断手段と、該判断手段による判断の結果に基づいて再送信する際のフレーム構成又は伝送レートを設定する手段を備えたので、音声通信とデータ通信に適応した送信モードを選択でき、効率的運用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。また既に説明したものと同一部分ならびに同一事項には同一符号、番号を付し、重複する説明は省略する。
以下、本発明の実施形態にかかる無線通信システムおよびそれに使用する移動無線通信機、無線中継装置等について、米国のFCC規則で規定される周波数帯や周波数帯域に基づいて説明を行う。
【0017】
上述したFCC規則に基づいたシステムでは、周波数として150MHzのVHF(Very High Frequency)、450MHz、800MHzのUHF(Ultra High Frequency)の三つの周波数帯が主として使用されており、搬送波の周波数帯域としては、以前は25kHzで運用されていたが、近年、周波数資源の有効活用の観点から狭帯域化が図られ、12.5kHzに狭められ、将来更に6.25kHzの帯域での運用が予定されている。そのため、新たにデジタル無線システムを構築する場合は、12.5kHz幅、あるいは6.25kHz幅でのFCC規則適合が必要となっている。6.25kHzに関するFCC規則の条件として少なくとも4800bps以上の伝送レートが規定されている。そこで、以下に示す実施態様例では、6.25kHzの帯域幅で、4800bpsの伝送レートでのデジタル通信システムをベースとし、12.5kHzの周波数帯域幅では9600bpsの伝送レートとして説明する。
【0018】
図1は本発明に係る無線システムの概要を示すシステム模式図である。
この無線通信システムは、n個の複数の移動無線通信機1−1、1−2、・・1−nと、無線中継装置2と、不感地帯に位置する複数の移動無線通信機3−1、3−2、・・・3−nとからなる例を示したものである。この構成において、前記移動無線通信機1−1、1−2、・・1−nからは、夫々、自局に割り当てられたチャネル周波数F1、F2、・・Fnを使用し、プレストーク方式で送受信する。前記無線中継装置2では、各移動無線通信機から送信される夫々のチャネル周波数信号を受信し、伝送された情報を検波復調した後、夫々の情報を1/nの時間に圧縮した上で順次時系列的に並べて、一つのチャネル周波数Ftの搬送波信号を変調して再送信する。不感地帯に位置する移動無線通信機3−1、3−2、・・・3−nは、無線中継装置2から再送信されたチャネル周波数Ftの信号を受信し、圧縮されたデータ、情報の中から自局宛の信号のみを取り出す。また図示は上略したが、不感地帯に位置する移動無線通信機3−1、3−2、・・・3−nから送信する場合は、前記移動無線通信機1−1、1−2、・・1−nが行った送信と同じようにチャネル周波数F1、F2、・・Fnを使用して送信し、無線中継装置は、上述した中継動作と同じように中継動作を行う。即ち、この例では、移動無線通信機は、各局に割り当てられているチャネル周波数信号を使用して送信するが、受信は無線中継装置から再送信されるチャネル周波数Ftを受信するものである。なお、移動無線通信機同士が直接に通信する場合は、従来の方法と同様に互いに同一のチャネル周波数を使用して送受信を行えばよい。また、不感地帯に位置する移動無線通信機3−1、3−2、・・・3−nから送信する周波数は、F1、F2、・・Fnに限る必要はなく、前記無線中継装置2が受信可能なその他の周波数であってもよい。
【0019】
図2は前記無線中継装置2において行う中継動作を説明するための図であり、(a)は前記移動無線通信機1−1、1−2、・・1−n(以下これらを総称する場合符号1とする)から送信された電波を受信・復調し、α(ms)のフレーム信号を取り出して、所定の方法で定めた順番でフレーム信号を並べたものである。同図(b)は、無線中継装置2から再送信する搬送波の変調信号になるもので、この例では、移動無線通信機から送信された前記α(ms)フレームとは整数(n)倍の伝送速度を有するα/n(ms)フレームで再送信するものとする。そこで、移動無線通信機1から送信されるフレームデータを1/nの時間に短縮するためにデータを圧縮して並べると、同図(b)に示すようにn個のデータがα(ms)に収納されることになる。このように整数倍の関係に設定する方が同期を図る上で都合がよいが、必ずしもこの例に限るものではない。
【0020】
図3は前記移動無線通信機1−1、1−2、・・1−n夫々から送信されるフレーム信号を示した図で、移動無線通信機1からは連続して音声またはデータが送信される。この信号が無線中継装置2においてチャネル信号Ftに時分割信号として多重化されると図4に示すようになる。
このようにして無線中継装置から再送信された電波は、不感地帯に位置する移動無線通信機3の各局に到達し、夫々において受信・復調されると同図4に示すような復調信号が得られるので、各局は自局に該当するフレーム信号を取り出し、順次送られてくる自局宛信号を連結して音声信号に再現し、あるいはデータを復元する。なお、時分割多重変調されたフレームのどのタイミングが自局に属するものであるかを判断する手段としては、種々のものが考えられるが、例えば、各移動無線通信機から送信する信号中に通信相手の識別信号を付加することも可能であるし、逆に自局識別信号を付加して送信し、これを受信する側で通信相手である識別信号を判断することによって自局宛信号のみを取り出すように構成してもよい。あるいは、前記自局あるいは相手局識別信号を付して送信し、それを無線中継装置において交換機機能を備えておき、一般的な交換機処理によって、通信相手方にどのタイムスロットが該当するかを通知すれば、移動無線通信機側は、それ以降はタイミングのみで自局に割り当てられたタイムスロットを受信することもできる。
【0021】
図5は無線中継装置2の概要構成を示すブロック図であり、1、2は第一、第二のアンテナで、中継部5に接続されている。また、前記中継部5は、前記第一のアンテナ1に接続された分配器7と、分配器7に接続されたn個の受信機8−1、8−2、・・・8−nと、前記受信機の復調信号を供給するタイミング回路9と、該タイミング回路9の出力信号を変調信号として送信する送信部10とを備えている。この例に示す構成では、前記図7に示した従来の無線中継装置と比較して、大幅に構成が簡略化されていることが明らかである。この構成の特徴は、中継部5も送信部が一つであり、アイソレータが必要ないことである。また複数の受信機に受信信号を分配する分配器は比較的簡単な構成のもので、コスト上昇をもたらすことはない。ただ、簡単なタイミング回路9,13が付加されているが、これは、前記図2乃至図4において説明したように、移動無線通信機から送信された低速度レートの信号を圧縮して、所定のタイムスロット位置に挿入する処理を行うもので、時分割多重制御するチャネル数が少ない範囲では、簡単なタイミング発生機能とデータ圧縮機能を備えていればよいので、大幅なコスト上昇には繋がらない。
【0022】
図6は、具体的な例を示すもので、上述したFCC規則に従って、6.25kHzの帯域幅で、4800bpsの伝送レートでのデジタル通信システムをベースとし、12.5kHzの周波数帯域幅では9600bpsの伝送レートとした場合、フレーム構造は共通にすれば、伝送レートは2倍になるので、例えば4800bpsにおいてフレーム時間を80msとすれば9600bpsでは40msのフレーム時間となる。20ms間隔でデジタル化された音声データを送信する場合、4800bpsでは一つのフレーム80ms中に四つの音声データブロックを埋め込んで送信することになる。一方、9600bpsでは同一フレームのまま半分の40msの時間で送信することができることから、次の半分の期間は空白になる。そこで、この半分の空白部分を利用して、他の無線チャネルの同様のデータをはめ込んで中継することが可能となる。
【0023】
この例の場合は、一つの下り回線チャネル周波数によって中継できるのは2チャネルとなるが、両者の倍数が大きくなれば、より多くの回線チャネルを中継できることになる。なお、倍数が大きくなるに従って時分割多重制御が高度になると共に使用する移動無線通信機のコスト上昇を招くことになるが、適用する無線通信システムの規模等に応じて、適宜倍数を設定すればよい。例えば地域消防・防災無線システムや、小規模業務用無線システム等においては数チャネルの時分割多重で済む場合が多いので、本発明を利用すればバースト的な送信制御や高度な同期制御を必要とすることなく、運用上柔軟で低コストにデジタル無線通信システムを構築することが可能である。
【0024】
以上説明したように本発明によれば、無線中継装置における再送信を時分割多重変調により行うように構成したので、送信機が一系統で済み、従来チャネル周波数毎に必要であった送信機の数を大幅に減少させ、しかも複数の送信機出力を合成するためのアイソレータやコンバイナが不要となるので、コスト低減と、送信電力の損失低減効果が得られる。なお、中継するチャネル数が多い場合、一つのチャネルの多重個数を増加すると、従来の時分割多重方式と同様に高度な制御やバースト的送信制御が必要となるので、そのような制御が必要でない範囲で最大限のチャネル数を時分割多重化し、不足分は上記本発明に係る別系統の中継装置を複数系統設けて中継するように構成すれば、従来のように高度な時分割多重通信方式に基づくより、トータル的には大幅に経済的になるであろう。
【0025】
本発明は以上説明した例に限らず種々変形が可能である。例えば、音声通信においては相手方とリアルタイムで通信する関係上、双方の会話に合わせた信号の圧縮/伸張が必要であるが、テキストデータや画像データ等のデータ送受信においては短時間に送信する方が効率的である場合があるので、移動無線通信機側では高いレートでのデータ送信を行い、中継装置においてはそのことを検出し、圧縮変換を行うことなく中継するように構成することも可能である。また、移動無線通信機が直接通信する場合は、従来と同じように、夫々の周波数チャネルで送受信すればよく、このとき複数ある伝送レートの中から適宜相互に選択して通信すればよい。
また、各移動無線通信機において、高速伝送レートで送信する際、フレームの空白部分(無意データを割り振る部分)期間には、送受信機の一部の電源を遮断することにより省電力効果を得られるように構成することも可能である。
【0026】
また、本発明では、移動無線通信機から無線中継装置に対して送信する場合に上述したようにSCPC/FDMA方式とし、無線中継装置から再送信する際に時分割多重方式としたので、無線中継装置を介して通信を行う移動無線通信機間は送信周波数と受信周波数とが異なることになり、プレストークだけでなく、運用方法によっては同時送受信も可能となる。更に、常にn個の時分割多重フォーマットで中継する必要はなく、その時々の中継要求チャネル数に対応して、できる限り処理すべきデータ量が少なくなるように適宜データの圧縮率を小さくして再送信する等のダイナミックでフレキシブルな運用を行うことが好ましいであろう。なお、これらの制御は、種々の場面を想定した処理プログラムによって実現可能であるので、本発明のシステムを実現する上で有用な処理をコンピュータが制御可能にプログラミングすれば、本発明の無線通信システムと同様な処理をコンピュータで実現することが可能となる。更に、このようなプログラムをコンピュータが読み取り可能な形式で記録媒体に記録することにより、この記録媒体を持ち運ぶことが可能となり、何処でもプログラムを稼動することができる。更に、これらのプログラムは、あらかじめCD−ROM等の記録媒体に書き込んでおき、コンピュータに搭載したCD−ROMドライブのような媒体駆動装置にこのCD−ROM等を装着して、これらのプログラムをコンピュータのメモリあるいは記憶装置に格納し、それを実行することによって、本発明の目的が達成されることは言うまでもない。この場合、記録媒体から読み出されたプログラム自体が上述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムおよびそのプログラムを記録した記録媒体も本発明を実現することが可能である。なお、プログラムを格納する記録媒体としては半導体媒体(例えば、ROM、不揮発性メモリカード等)、光媒体(例えば、DVD、MO、MD、CD等)、磁気媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク等)等のいずれであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の無線通信システムの一実施態様例を示すシステム概要図である。
【図2】本発明の一実施態様例を示す、フレーム変換例を示す図であり、(a)は移動無線通信機から送信されたフレーム信号構成例を示す図、(b)は無線中継装置から再送信する場合のフレーム構成例を示す図である。
【図3】(a)〜(c)は本発明において移動無線通信機から送信されるフレーム信号の例を示す図である。
【図4】本発明に係る無線中継装置から再送信するフレーム構成の例を示す図である。
【図5】本発明に係る無線中継装置の構成例を示す概要構成図である。
【図6】本発明に係るフレームフォーマット変換例の具体例を示す図である。
【図7】従来の無線中継装置の構成例を示すブロック構成図である。
【符号の説明】
【0028】
1、2 アンテナ、1−1、1−2、1−n、3−1、3−2、3−n 移動無線通信機、2 無線中継装置、51、53 アンテナ共用器、5 無線中継部、7 分配器、8−1、8―2、8n 受信機、9 タイミング回路、10 送信機、F1、F2、Fn 移動無線通信機から送信されるチャネル周波数、Ft 無線中継装置から再送信されるチャネル周波数。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動無線通信機が必要に応じて無線中継装置を介して交互に送受信を行う無線通信方式において、前記移動無線通信機は、フレーム構造が同一で伝送レートが所要倍数の複数のフレーム構成のなかから一つを選択して送信し又は受信する機能を備え、該移動無線通信機同士が直接に通信する際は同一周波数搬送波により同一伝送レートで通信し、前記移動無線通信機同士が無線中継装置を介して通信する際は、無線中継装置に対して夫々の移動無線通信機に割り当てられた周波数搬送波により低速伝送レートで送信し、無線中継装置から再送信される所要数に時分割多重化された高速伝送レートのフレーム信号を受信するようにしたことを特徴とする無線通信方式。
【請求項2】
複数の移動無線通信機が必要に応じて無線中継装置を介して交互に送受信を行う無線通信方式において、前記移動無線通信機が、フレーム構造が同一で伝送レートが所要倍数の複数のフレーム構成の中から一つを選択して送信し又は受信する機能を備え、高速伝送レートで送信する際に必要に応じてフレームの一部に有意のデータを配置し、その他の部分には無意のデータを配置するように構成されたものであり、前記無線中継装置は、複数の前記移動無線通信機から送信される低速伝送レートのフレーム信号の有意データを、高速伝送レートのフレームのタイムスロットの一部に組み替え配置して再送信するように構成されたものであることを特徴とする無線通信方式。
【請求項3】
複数の移動無線通信機から送信される無線信号を中継する無線中継装置において、前記移動無線通信機から送信される第一乃至第nの無線周波数信号を受信し復調する第一乃至第nの受信手段と、前記受信手段によって復調した信号のうち有意データを夫々の伝送レートに応じて前記移動無線通信機から送信されるn倍の伝送レートの時分割多重フレームの所要タイムスロットに組み換え、前記第一乃至第nの無線周波数信号と異なる周波数の搬送波を使用して再送信する送信手段と、を備えたことを特徴とする無線中継装置。
【請求項4】
前記無線中継装置が、受信した移動無線通信機から送信される信号の伝送レートを判断する手段又は音声データであるかテキストデータであるかを判断する手段の少なくとも一つの判断手段と、該判断手段による判断の結果に基づいて再送信する際のフレーム構成又は伝送レートを設定する手段と、を備えたことを特徴とする請求項3記載の無線中継装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−194869(P2007−194869A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10518(P2006−10518)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】