説明

無線通信端末装置

【課題】細かな時間調整を行うことで、CPUセービングの復帰時間を短縮する無線通信端末装置及びそのセービング復帰制御方式を提供する。
【解決手段】CPU10は外部デバイス30aにセービング要求を通知し(S100)、外部デバイス30aは、割り込み出力待ち設定レジスタ31に割り込み出力待ち時間を設定する(S200)。CPU10は、クロック安定時間設定レジスタ11にクロック安定時間を設定し(S300)、CPUセービングに移行する。外部デバイス30aが起動要求信号を入力し(S400)、外部クロック水晶発振子40に「オン」信号を出力し(S500)、外部クロック水晶発振子40は外部クロックをCPU10に出力する(S600)。外部デバイス30aは、割り込み出力待ち時間の経過後にCPU10に割り込み通知を出力する(S700)。CPU10は、クロック安定時間が経過した後に動作を再開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信端末装置に係り、特に無線通信端末装置のCPUが消費電力を低減するモード(以下、CPUセービングという)からの復帰において、CPUのクロックが安定するまでの時間(以下、クロック安定時間という)の設定値幅を細かく調整することで、CPUセービングを復帰させるまでの時間(以下、復帰時間という)の短縮が図れる無線通信端末装置及び無線通信端末の復帰制御方式に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信端末装置では、限られた電力で長時間の使用を可能とするために、さまざまな消費電力の低減が図られている。無線通信端末装置において、CPU(Central Processing Unit)が処理を実行しないときには、CPU自身がCPUセービングに移行する。しかし、CPUセービングからの復帰する場合に、復帰時間がかかることがあった。
【0003】
従来の実施例に係る無線通信端末装置のCPUセービングからの復帰制御方式について説明する。
【0004】
まず、図3を用いて従来の実施例に係る無線通信端末装置100のCPUセービングから復帰までの機能構成について説明する。無線通信端末装置100は、CPU10、RTC(Real Time Clock)クロック水晶発振子20、外部デバイス30、及び外部クロック水晶発振子40から構成されている。CPU10は、OS(Operating System)やアプリケーションプログラムなどの処理を実行することで無線通信端末装置100の制御を行うユニットである。また、CPU10の内部には、クロック安定時間を設定する3ビットのクロック安定時間設定レジスタ11が設けられている。クロック安定時間設定レジスタ11には、CPU10が外部クロック水晶発振子40から外部クロックを入力し、CPU10の内部クロックが安定するまでの待ち時間(以下、クロック安定時間という)が設定される。クロック安定時間設定レジスタ11に設定できるクロック安定時間の詳細については、後述する。RTCクロック水晶発振子20は、現在時刻を計時し、計時した時刻の情報をCPU10に出力する約32KHzの発振子である。また、RTCクロック水晶発振子20は、無線通信端末装置100からの電源の供給が停止されても内蔵電池からの電源の供給により動作することができる。また、CPU10は、クロック安定時間設定レジスタ11に設定されるクロック安定時間が経過したかについては、RTCクロック水晶発振子20が出力するRTCクロックを使用することで検出する。外部デバイス30は、無線通信端末装置100に対する起動要求信号を入力すると、外部クロック水晶発振子40を動作(以下、外部クロック水晶発振子40を「オン」という)させ、更にCPU10に対して割り込み通知を出力する機器である。外部クロック水晶発振子40は、外部デバイス30からの「オン」信号により、CPU10に外部クロックを供給する発振子である。
【0005】
次に、図3のクロック安定時間設定レジスタ11に設定できるクロック安定時間(CPU10に割り込み通知がされてからクロックが安定に動作するまでの時間)について説明する。クロック安定時間設定レジスタ11に設定できるクロック安定時間一覧を図4に示す。図4に示すように、クロック安定時間設定レジスタ11には8種類のクロック安定時間が設定できるが、実際のクロック安定時間を設定するのでなく、クロック安定時間に対応した設定値を設定する。例えば、「2800μsec」のクロック安定時間を設定するのであれば、クロック安定時間一覧のクロック安定時間「2800μsec」に対応する設定値「0x5」がクロック安定時間設定レジスタ11の3ビットに設定される。
【0006】
次に、図3に基づいて従来の実施例に係る無線通信端末装置100のCPUセービンクからの復帰手順について説明する。まず、CPU10はCPUセービングに移行する前に、クロック安定時間設定レジスタ11に予め決められたクロック安定時間に対応した設定値を設定し(S10)、CPUセービングに移行する。次に、外部デバイス30が無線通信端末装置100に対する起動要求信号を入力すると(S20)、外部デバイス30は外部クロック水晶発振子40に対して「オン」信号を出力する(S30)。外部クロック水晶発振子40は、外部デバイス30からの「オン」信号により動作が開始され、外部クロックをCPU10に出力する(S40)。また、外部デバイス30は、CPU10に対して割り込み通知を出力する(S50)。CPU10は、割り込み通知を入力すると、クロック安定時間設定レジスタ11に設定されているクロック安定時間を取り出し、このクロック安定時間が経過するまで待ち状態となる。そして、CPU10は、クロック安定時間が経過した後に動作を再開する。
【0007】
このようなCPUセービンクの復帰手順において、図3の外部デバイス30が外部クロック水晶発振子40に対して「オン」信号を出力する(S30)から外部デバイス30がCPU10に対して割り込み通知を出力する(S50)までに掛かる時間はナノセックオーダの時間であり無視できる時間である。また、クロック安定時間設定レジスタ11には8種類のクロック安定時間しか設定できないため、細かく調整することができない。例えば、CPU10が外部クロック水晶発振子40から出力される外部クロックを入力してから安定するまで1msec(1000μsec)の時間が必要なときに、図4のクロック安定時間一覧に示すようにクロック安定時間が0.69msec(690μsec)では短いため、次の2.8msec(2800μsec)に対応する設定「0x5」を選択しなければならない。このため、CPU10の復帰時間は、図5に示すように外部クロック水晶発振子40の「オン」とCPU10に割り込み通知からCPU10の動作再開(復帰)までの時間は、クロック安定時間設定レジスタ11に設定されている時間(2.8msec)となる。このように、外部クロックを安定させるために必要な時間が1msecの時間であるにもかかわらず、復帰時間は2.8msecとなるので、1.8msec(=2.8msec−1.0msec)の余分な時間(以下、オーバーヘッド)がかかってしまっていた。
【0008】
CPUセービングに関する通信技術として下記特許文献1がある。特許文献1の消費電力セービング回路及びその制御方法では、パワーセーブモードに移行した時には、CPUのクロックを出力する高周波水晶発振回路と、通常モード時にタイマカウンタの低周波を高周波水晶発振回路から得るための多段分周回路とを停止し、タイマカウンタ専用の低周波水晶発信回路からクロックを供給するようにすることで、消費電力セービング回路の消費電力を大幅に削減している。また、パワーセーブモード解除時にクロックの供給先を低周波発振回路から高周波発回路に切り換えることで、パワーセーブモード解除をスムーズに行うことができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平7−20964
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の消費電力セービング回路及びその制御方法では、パワーセーブモードに移行した時には消費電力を大幅に削減することができ、また、パワーセーブモード解除をスムーズに行うことができるが、CPUセービングから復帰するときにパワーセーブモード解除にかかる復帰時間については短縮することができない。
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、上記課題を解決できる無線通信端末装置及び無線通信端末装置のセービング復帰制御方式を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の無線通信端末装置は、CPUセービングを行う無線通信端末装置であって、CPUに設定されるクロック安定時間を設定するクロック安定時間設定手段と、外部デバイスに設定される割り込み出力待ち時間を設定する割り込み出力待ち設定手段とを備え、前記クロック安定時間設定手段と前記割り込み出力待ち設定手段により、前記CPUがCPUセービングから復帰するときのクロックが安定するまでの待ち時間を調整することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、無線通信端末装置のCPUセービングからの復帰において、クロック安定時間の設定値幅を細かく調整することで、CPUセービングからの復帰時間の短縮が図れる無線通信端末装置及び無線通信端末の復帰制御方式を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る無線通信端末装置のCPUセービングから復帰の機能構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る無線通信端末装置における割り込み出力待ち時間とクロック安定時間を説明する図である。
【図3】従来の実施例に係る無線通信端末装置のCPUセービングから復帰の機能構成を示す図である。
【図4】従来及び本発明の実施例に係るクロック安定時間一覧を示す図である。
【図5】従来の実施例に係る無線通信端末装置におけるクロック安定時間を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、本発明を実施するための実施形態を、図面を参照して説明する。本発明の実施形態は、従来の実施例において外部デバイス30が外部クロック水晶発振子40を「オン」した後に、CPU10に対して割り込み通知を出力させるまでの時間を調整できるようにする形態である。
【0016】
本発明の実施形態に係る無線通信端末装置100aの構成を図1に示す。無線通信端末装置100aは、CPU10、RTCクロック水晶発振子20、外部デバイス30a、及び外部クロック水晶発振子40から構成されている。また、CPU10の内部には、クロック安定時間を設定する3ビットのクロック安定時間設定レジスタ11が設けられている。CPU10、RTCクロック水晶発振子20、外部クロック水晶発振子40、及びクロック安定時間設定レジスタ11は、従来の無線通信端末装置100に同じである。また、クロック安定時間設定レジスタ11に設定できるクロック安定時間についても、従来の無線通信端末装置100に同じである。
【0017】
外部デバイス30aは、無線通信端末装置100aに対する起動要求信号を入力すると、外部クロック水晶発振子40を「オン」させ、更にCPU10に対して割り込み通知を出力する機器である。また、外部デバイス30aは、割り込み出力待ち設定レジスタ31を備えている。割り込み出力待ち設定レジスタ31には、外部クロック水晶発振子40を「オン」した後に、CPU10に対して割り込み通知を出力するまでの待ち時間(以下、割り込み出力待ち時間という)が設定される。また、割り込み出力待ち設定レジスタ31には、30μsec刻みの時間が設定できる。外部デバイス30aは、割り込み出力待ち設定レジスタ31に設定される割り込み出力待ち時間が経過したかについては、無線通信端末装置100aの消費電力を考慮し、消費電力が小さいRTCクロック水晶発振子20が出力するRTCクロックを使用することで検出する。
【0018】
次に、図1に基づいて本発明の実施形態に係る無線通信端末装置100aのCPUセービンクの復帰手順について説明する。まず、CPU10はCPUセービングに移行する前に、外部デバイス30aにセービング要求を通知する(S100)。次に、外部デバイス30aは、CPU10からセービング要求の通知を入力すると、割り込み出力待ち設定レジスタ31に予め決められた割り込み出力待ち時間を設定する(S200)。次に、CPU10は、クロック安定時間設定レジスタ11に予め決められたクロック安定時間に対応した設定値を設定し(S300)、CPUセービングに移行する。次に、外部デバイス30aに無線通信端末装置100aに対する起動要求信号が入力されると(S400)、外部デバイス30aは外部クロック水晶発振子40に対して「オン」信号を出力する(S500)。外部クロック水晶発振子40は、外部デバイス30aからの「オン」信号により、動作が開始され、外部クロックをCPU10に出力する(S600)。その後、外部デバイス30aは、割り込み出力待ち設定レジスタ31に設定されている割り込み出力待ち時間を取り出し、この割り込み出力待ち時間が経過するまでCPU10に対する割り込み通知を待ち状態とし、割り込み出力待ち時間が経過した後に、CPU10に対して割り込み通知を出力する(S700)。CPU10は、割り込み通知を入力すると、クロック安定時間設定レジスタ11に設定されているクロック安定時間を取り出し、このクロック安定時間が経過するまで待ち状態なる。そして、CPU10は、クロック安定時間が経過した後に動作を再開する。
【0019】
このようなCPUセービンクの復帰手順において、図1の外部デバイス30aが外部クロック水晶発振子40に対して「オン」信号を出力する(S500)から外部クロックをCPU10に出力を開始する(S600)に掛かる時間はナノセックオーダの時間であり無視できる時間である。また、クロック安定時間設定レジスタ11には8種類のクロック安定時間しか設定できないため、細かく調整することができない。しかし、本発明の実施形態において、例えば、CPU10が外部クロック水晶発振子40から出力される外部クロックを入力してから安定するまで1msec(1000μsec)の時間が必要なときに、図4のクロック安定時間一覧に示すようにクロック安定時間を0.69msec(690μsec)とし、割り込み出力待ち時間を0.33msec(330μsec)とすると、図2に示すように外部クロック水晶発振子40の「オン」からCPU10に割り込み通知までの時間が0.33msec(330μsec)となり、CPU10に割り込み通知がされてからCPU10が動作再開(復帰)までの時間は、0.69msec(690μsec)となる。従って、オーバーヘッドは、0.02msec(=0.69msec+0.33msec−1.0msec)となる。つまり、図4のクロック安定時間一覧に示すように0.69msec(690μsec)に対応する「0x4」をクロック安定時間設定レジスタ11に設定し、割り込み出力待ち設定レジスタ31に0.33msec(330μsec)を設定することで、CPU10のセービングから動作再開(復帰)までの時間が1.02msecとなるので、オーバーヘッドを0.02msecとすることができる。
【0020】
尚、実施形態において、クロック安定時間設定レジスタ11を3ビットのレジスタとしたが、ビット数はこれに限定されない。
【0021】
以上のような本発明の実施形態によれば、外部デバイス30aの割り込み出力待ち時間を細かく設定することで、無線通信端末装置のCPUセービングからの復帰において、クロック安定時間の設定値幅を細かく調整することが可能となり、CPUセービングからの復帰時間の短縮が図れる無線通信端末装置及び無線通信端末の復帰制御方式を提供することができる。
【0022】
以上、具体的な実施の形態により本発明を説明したが、上記実施の形態は本発明の例示であり、この実施の形態に限定されないことは言うまでもない。
【0023】
以上をまとめると、本発明は次のような特徴を有する。
(1) 本発明の無線通信端末装置は、CPUセービングを行う無線通信端末装置であって、CPUに設定されるクロック安定時間を設定するクロック安定時間設定手段と、外部デバイスに設定される割り込み出力待ち時間を設定する割り込み出力待ち設定手段とを備え、前記クロック安定時間設定手段と前記割り込み出力待ち設定手段により、前記CPUがCPUセービングから復帰するときのクロックが安定するまでの待ち時間を調整することを特徴としている。
(2)(1)の前記外部デバイスは、前記割り込み出力待ち設定手段に設定されている前記割り込み出力待ち時間が経過したときに、前記CPUに割り込み通知を出力することを特徴としている。
(3)(1)または(2)の前記CPUは、前記外部デバイスから前記割り込み通知が通知され、前記クロック安定時間設定手段に設定されている前記クロック安定時間が経過したときに、動作を再開することを特徴としている。
(4)(1)から(3)のいずれかの前記外部デバイスは、RTCクロック水晶発振手段のRTCクロックを使用して、前記割り込み出力待ち時間が経過したかを検出することを特徴としている。
(5)(1)から(4)のいずれかの前記CPUは、前記RTCクロック水晶発振手段のRTCクロックを使用して、前記クロック安定時間が経過したかを検出することを特徴としている。
(6)(1)から(5)のいずれかの前記クロック安定時間設定手段は、クロック安定時間設定レジスタであることを特徴としている。
(7)(1)から(5)のいずれかの前記割り込み出力待ち設定手段は、割り込み出力待ち設定レジスタであることを特徴としている。
(8)本発明の無線通信端末装置のセービング復帰制御方式は、CPUセービングを行う無線通信端末装置のセービング復帰制御方式であって、CPUに設定されるクロック安定時間を設定するクロック安定時間設定工程と、外部デバイスに設定される割り込み出力待ち時間を設定する割り込み出力待ち設定工程とを備え、前記クロック安定時間設定工程と前記割り込み出力待ち設定工程により、前記CPUがCPUセービングから復帰するときのクロックが安定するまでの待ち時間を調整することを特徴としている。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、無線通信端末装置に好適であるが、無線通信端末装置に限られるものではなく、CPUのセービングを行う装置一般に適用可能である。
【符号の説明】
【0025】
10・・・・・・CPU
11・・・・・・クロック安定時間設定レジスタ
20・・・・・・RTCクロック水晶発振子
30・・・・・・外部デバイス
30a・・・・・外部デバイス
31・・・・・・割り込み出力待ち設定レジスタ
40・・・・・・外部クロック水晶発振子
100・・・・・・無線通信端末装置
100a・・・・・無線通信端末装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CPUセービングを行う無線通信端末装置であって、
CPUに設定されるクロック安定時間を設定するクロック安定時間設定手段と、
外部デバイスに設定される割り込み出力待ち時間を設定する割り込み出力待ち設定手段とを備え、
前記クロック安定時間設定手段と前記割り込み出力待ち設定手段により、前記CPUがCPUセービングから復帰するときのクロックが安定するまでの待ち時間を調整することを特徴とする無線通信端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−248595(P2011−248595A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120588(P2010−120588)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】