無線通信端末
【課題】接続可能な基地局を検出できる見込みがない状況にある場合には不要なスキャン動作が行われないようにし、これにより消費電力を低減してバッテリ寿命の延長を可能にする。
【解決手段】接続可能なアクセスポイントが検出できない状況において、スキャンにより検出されるアクセスポイントが前回のスキャンのときと変わらず、かつ検出されたアクセスポイントからの受信信号強度の変動量がいずれも許容範囲x内の場合には、自端末STA1が静止しているものと判断する。そして、受信信号強度が最も高いアクセスポイントのみをトラッキング対象として設定し、以後のスキャンインターバルでは上記トラッキング対象として設定された唯一のアクセスポイントの無線チャネルに対するスキャンのみを行うようにしたものである。
【解決手段】接続可能なアクセスポイントが検出できない状況において、スキャンにより検出されるアクセスポイントが前回のスキャンのときと変わらず、かつ検出されたアクセスポイントからの受信信号強度の変動量がいずれも許容範囲x内の場合には、自端末STA1が静止しているものと判断する。そして、受信信号強度が最も高いアクセスポイントのみをトラッキング対象として設定し、以後のスキャンインターバルでは上記トラッキング対象として設定された唯一のアクセスポイントの無線チャネルに対するスキャンのみを行うようにしたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線LAN(Local Area Network)に接続するための通信インタフェースを備えた無線通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LANの普及に伴い、無線LAN用の通信インタフェースを備えた無線通信端末が種々出現している。例えば、無線LAN用の通信インタフェースを内蔵したノート型パーソナル・コンピュータや、携帯電話用の通信インタフェースに加えて無線LAN用の通信インタフェースを備えたデュアルモードタイプの携帯電話機及びPDA(Personal Digital Assistant)等がそれである。この種の無線通信端末を使用すれば、例えば都市部のビジネス街や商店街のように無線LANが整備された地域において、大容量のデータ通信を行うことが可能となる。
【0003】
ところで、この種の無線通信端末が無線LANを利用する場合には、無線LANのアクセスポイントをスキャンして通信可能なアクセスポイントを検出し、この検出されたアクセスポイントに対し接続要求を行う必要がある。そこで、従来の一般的な無線通信端末では、通信要求の発生に備え、アクセスポイントが使用するすべての無線チャネルに対して定期的にスキャンを行っている。
【0004】
一方、他のスキャン方法として、アクティブスキャンとパッシブスキャンを無線通信端末の状況に応じて使い分ける方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。アクティブスキャンとは、無線通信端末からアクセスポイントへ探索用プローブパケットを送信して、アクセスポイントが上記プローブパケットに応答することにより通信可能なアクセスポイントを検出するものである。これに対しパッシブスキャンとは、アクセスポイントが定期的に送信している報知情報を一定期間受信することにより通信可能なアクセスポイントを検出するものである。上記提案では、アクセスポイントから送信される無線信号の受信信号品質等を参照して、スキャン方法を上記アクティブスキャン又はパッシブスキャンに適応的に切り替えている。
【特許文献1】特開2005−012539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来の一般的なスキャン方法では、無線通信端末の状況を特に考慮せずにアクセスポイントのスキャンを定期的かつ常に同一の手順で行っている。このため、例えば無線通信端末が周辺のいずれのアクセスポイントからも接続許可が得られない位置に静止している場合のように、接続可能なアクセスポイントを検出できる見込みがない状況にあるにも拘わらず、すべての無線チャネルに対するスキャンが繰り返し実行される。このため、無線通信端末の消費電力が増加してバッテリ寿命の短縮、つまり無線通信端末の待ち受け時間及び連続通信時間の短縮を招く。
【0006】
一方、特開2005−012539号公報に記載された提案では、アクティブスキャンとパッシブスキャンとを適応的に使い分けるため、上記一般的なスキャン方法に比べれば消費電力の低減効果が期待できる。しかしこの提案においても、無線通信端末が接続可能なアクセスポイントを検出できる見込みがない状況にあるような場合でも、アクティブスキャン又はパッシブスキャンによりすべての無線チャネルに対するスキャンが実行される。このため、無線通信端末の消費電力は依然として大きく、バッテリ寿命の短命化を招いていた。
【0007】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、接続可能な基地局を検出できる見込みがない状況にある場合には不要なスキャン動作が行われないようにし、これにより消費電力を低減してバッテリ寿命の延長を可能にした無線通信端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためにこの発明の一つの観点は、複数の基地局が分散配置されたサービスエリアで使用され、上記基地局が使用する複数の無線チャネルに対し定期的にスキャンを行ってその結果をもとに接続可能な基地局を検出する機能を備えた無線通信端末において、
上記複数の基地局の識別情報に対応付けて、当該基地局が使用する無線チャネルを表す情報と、当該基地局に対する接続の可否を表す情報と、当該基地局を通信品質の追跡対象とするか否かを表すトラッキング情報を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された接続の可否を表す情報をもとに、接続可能な基地局の有無を判定する第1の判定手段と、上記記憶手段に記憶された無線チャネル情報及びトラッキング情報をもとに、通信品質の追跡対象となっている基地局が使用する無線チャネルに対し定期的にスキャンを行って、当該基地局ごとの通信品質を検出する検出手段と、上記検出された通信品質の時間変動量を算出し、この算出された通信品質の時間変動量が予め設定された許容範囲内であるか否かを判定する第2の判定手段と、上記第1の判定手段により接続可能な基地局が存在しないと判定され、かつ上記第2の判定手段により通信品質の時間変動量が許容範囲内であると判定された場合に、上記記憶手段に識別情報が記憶された基地局の中から当該基地局数より少数の基地局を選択し、この選択した基地局のみを通信品質の追跡対象とするべく上記トラッキング情報を変更する手段とを具備するものである。
【発明の効果】
【0009】
したがって、接続可能な基地局が検出できない状況において、基地局の通信品質の時間変動量が許容範囲内であると判定された場合、つまり自端末が静止していると判断される場合には、通信品質の追跡対象の基地局が少数の基地局に制限され、この制限された基地局の無線チャネルに対してのみスキャンが行われる。このため、スキャン対象の無線チャネル数が大幅に減少し、これによりスキャンに費やされる消費電力が大幅に削減されて、バッテリ寿命の延長が図られる。
【0010】
すなわち、この発明によれば、接続可能な基地局を検出できる見込みがない状況にある場合には不要なスキャン動作が行われないようになり、これにより消費電力を低減してバッテリ寿命の延長を可能にした無線通信端末を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。
図1はこの発明に係わる無線通信端末の一実施形態を示すブロック図である。この無線通信端末は無線LAN(Local Area Network)専用端末であり、アンテナ11を備えた無線ユニット1と、制御モジュール2と、入出力インタフェース3とを備えている。無線ユニット1は、制御ユニットの制御の下で、IEEE802.11規格に基づく無線LANアクセスポイントの探索、認証、接続及びデータ通信に係わる無線信号の送受信動作を行う。
【0012】
制御ユニット2は、この発明に係わる制御機能として、主制御モジュール21と、アクセスポイントスキャン制御モジュール22と、アクセスポイント接続制御モジュール23と、アクセスポイントトラッキング制御モジュール24と、スキャン結果取得制御モジュール25を備え、さらにメモリモジュール26及びスキャンインターバルタイマ27を備えている。
【0013】
メモリモジュール26は記憶媒体としてハードディスク又はNAND型フラッシュメモリを使用したもので、上記各制御モジュール21〜25の機能を実現するためのアプリケーション・プログラムと、アクセスポイント管理テーブル261を格納している。アクセスポイント管理テーブル261は、アクセスポイントのスキャン結果を表す情報を記憶するために使用される。スキャン結果を表す情報は、アクセスポイント名と、当該アクセスポイントが使用している無線チャネル番号と、当該アクセスポイントから送信される無線信号の受信信号強度と、接続可否の判定結果と、トラッキング対象とするか否かの判定結果とからなり、アクセスポイント管理テーブル261にはこれらの各情報要素を記憶するためのフィールドが設けられる。
【0014】
スキャンインターバルタイマ27は、予め設定したスキャンインターバルの時間が経過するごとに、タイムアウト信号を主制御モジュール21及びアクセスポイントスキャン制御モジュール22に通知する機能を有する。スキャンインターバルタイマ27における上記計時動作の開始及び停止は、無線通信端末の動作状態、例えば通信中、接続中及びサービス圏外の各状態に応じて主制御モジュール21により制御される。また上記スキャンインターバルの時間も主制御モジュール21により可変設定される。
【0015】
アクセスポイントスキャン制御モジュール22は、通信品質比較部221と、スキャンチャネル選択部222と、スキャン方式選択部223とを有する。通信品質比較部221は、アクセスポイント管理テーブル261に格納された情報においてトラッキング“有”となっているアクセスポイントについて、当該アクセスポイントを検出したときの受信信号レベルと、現時点での受信信号レベルとを比較し、その比較結果が予め設定された許容範囲内であるか否かを判定する。なお、上記現時点での受信信号レベルは、アクセスポイントトラッキング制御モジュール24により検出される。
【0016】
スキャンチャネル選択部222は、アクセスポイント管理テーブル261のトラッキング有無フィールドを参照し、トラッキング“有”となっているアクセスポイントを検索する。そして、トラッキング“有”となっているアクセスポイントに対してその使用チャネル番号を参照してスキャン対象の無線チャネルとする。一方、トラッキング“有”となっているアクセスポイントを検索できなかった場合には、使用可能なすべての無線チャネルをスキャン対象とする。また、アクセスポイント管理テーブル261にアクセスポイントが未登録の場合、つまり検出済のアクセスポイントが存在しない場合には、使用可能な無線チャネル番号を生成する。
【0017】
スキャン方式選択部223は、自己の無線通信端末が使用可能な無線チャネルからスキャン対象となる無線チャネル番号を選択する。このスキャン対象とする無線チャネル番号の選択は、上記通信品質比較部221の比較結果及びスキャンチャネル選択部223の選択結果に基づいて行われる。
【0018】
アクセスポイント接続制御モジュール23は、上記アクセスポイントスキャン制御モジュール22により検出されたアクセスポイントに対する認証や接続要求等、接続に必要な制御手順を実行すると共に、接続の可否及びトラッキングの有無を判定してその結果を上記アクセスポイント管理テーブル261に格納する機能を有する。アクセスポイントトラッキング制御モジュール24は、上記アクセスポイント接続制御モジュール23の指示に従い、アクセスポイントとの間でトラッキングを行うための制御手順を実行する。
【0019】
スキャン結果取得制御モジュール25は、上記アクセスポイントスキャン制御モジュール22の指示に従い、アクセスポイントのスキャン結果を表す情報を生成してこの情報をアクセスポイント管理テーブル261に格納する。スキャン結果を表す情報は、先に述べたようにアクセスポイント名と、当該アクセスポイントが使用している無線チャネル番号と、当該アクセスポイントから送信される無線信号の受信信号強度と、接続可否の判定結果と、トラッキング対象とするか否かの判定結果とから構成される。
【0020】
主制御モジュール21は、無線通信端末全体の動作を統括的に制御する。なお、この主制御モジュール21をはじめ、上記各制御モジュール22〜25の機能はいずれも、メモリモジュール26に記憶されたアプリケーション・プログラムをCPU(Central Processing Unit)に実行させることにより実現される。
【0021】
入出力インタフェースユニット3には、入力デバイス31と、表示デバイス32が設けられている。入力デバイス31は、例えばキーボード及び機能キー群により構成され、ユーザが各種コマンドや文章を入力するために使用される。表示デバイス32は、例えば液晶表示器からなり、上記入力デバイス31による入力情報や、端末の動作状態を表すピクト情報、送受信データを表示するために使用される。
その他、図示していないがこの無線通信端末はバッテリを電源とした電源ユニットを備えており、この電源ユニットにより生成される動作電源出力により上記無線ユニット1及び制御ユニット2が動作する。
【0022】
次に、以上のように構成された無線通信端末の動作を説明する。図2乃至図5は制御ユニット2による制御手順と制御内容を示すフローチャートである。
電源が投入されると無線通信端末STA1の制御ユニット2は、先ずステップS21によりアクセスポイント管理テーブル261を初期化すると共に、スキャン対象とするチャネル番号変数Nを初期化する。制御ユニット2は、次にステップS22によりアクセスポイント監視テーブル261を検索し、その検索結果をもとにステップS23にてトラッキング対象のアクセスポイントは一つであるか否かを判定する。そして、電源投入直後のように、トラッキング対象のアクセスポイントがアクセスポイント管理テーブル261に記憶されていなければ、制御ユニット2は使用可能なすべての無線チャネルについて以下のようにスキャン処理を実行する。
【0023】
すなわち、先ずステップS29によりN番目の使用可能なチャネル番号Chを選択して、このチャネル番号Chにより表される無線チャネルに対しステップS30によりスキャン処理を行う。そして、ステップS31において、上記スキャン処理により検出されたアクセスポイントのID及び受信信号レベル(受信信号強度)を、上記選択したチャネル番号と共にアクセスポイント管理テーブル261に格納する。またそれと共にステップS32において、上記検出されたアクセスポイントのトラッキング判定結果を“有”に設定する。
【0024】
そうして一つのチャネルに対するスキャン処理とスキャン結果の格納処理が終了すると、制御ユニット2はステップS33においてチャネル番号Nをインクリメント(N=N+1)した後、使用可能なすべての無線チャネルに対するスキャン処理が終了したか否かをステップS34で判定する。そして、まだスキャンを行っていない無線チャネルが残っていれば、ステップS29に戻って上記インクリメント後のチャネル番号Nに対応する無線チャネルについてスキャン処理とそのスキャン結果の格納処理を実行する。
以後同様に、使用可能なすべての無線チャネルについてスキャン処理が実行され、そのスキャン結果を表す情報がアクセスポイント管理テーブル261に順次格納される。
【0025】
上記使用可能なすべての無線チャネルについてスキャン処理が終了すると、制御ユニット2は図3に示すステップS35に移行し、上記スキャン処理により新規アクセスポイントが検出されたか否かを判定する。この判定の結果、新規アクセスポイントが検出されると、ステップS36により当該検出された新規アクセスポイントに対する接続処理を開始し、ステップS37において接続に失敗したか否かを判定する。そして、例えば上記新規のアクセスポイントが自営網以外のアクセスポイントだったり、また非加入の無線LAN事業者が運用するアクセスポイントだったとする。この場合、アクセスポイントにより接続を拒否されるため、制御ユニット2は当該アクセスポイントの接続の可否を表す情報を“否”に設定したのち、ステップS38によりすべての検出済アクセスポイントのトラッキング対象を“有”に設定する。
【0026】
そして制御ユニット2は、ステップS39によりスキャンカウンタを“0”にクリアしたのち、スキャンインターバルの計時処理を次のように実行する。図4はこの計時処理の手順と処理内容を示すフローチャートである。
すなわち、制御ユニット2はスキャンインターバルタイマ27に計時時間を設定して計時動作をスタートさせ、ステップS46においてスキャンインターバルタイマ27の計時時間の満了を監視する。そして、スキャンインターバルタイマ27の計時時間が満了すると図2に示すステップS22に戻り、次回のスキャンインターバルにおける制御動作を開始する。
【0027】
次回のスキャンインターバルにおいて制御ユニット2は、ステップS22でアクセンポイント管理テーブル261を検索し、その結果をもとにステップS23によりトラッキング対象のアクセスポイントが一つであるか否かを判定する。そして、いまトラッキング対象のアクセスポイントがアクセンポイント管理テーブル261に記憶されており、それが一つだったとすると、ステップS24に移行してトラッキング対象のアクセスポイントを探索するためのチャネル番号を選択し、当該選択したチャネル番号に対応する無線チャネルについてステップS25によりスキャン処理を実行する。そして、ステップS26において、上記スキャン処理により検出されたアクセスポイントの名前及び受信信号レベル(受信信号強度)を、上記選択したチャネル番号と共にアクセスポイント管理テーブル261に格納する。
【0028】
そうして上記トラッキング対象のアクセスポイントに対するスキャン処理が終了すると、制御ユニット2は図3のステップS35において新規アクセスポイントの検出の有無を判定する。そして、新規アクセスポイントが検出されなかった場合には、ステップS40に移行する。このステップS40では、アクセスポイント管理テーブル261に格納された情報を参照して、トラッキング“有”となっているアクセスポイントについて、当該アクセスポイントを検出したときの受信信号レベルと、現時点での受信信号レベルとを比較する。そして、その変動差が予め設定された許容範囲内か否かをステップS41で判定し、変動差が許容範囲を超えている場合には無線通信端末は移動中であると判断して、ステップS38に移行する。そして、ステップS38によりすべての検出済アクセスポイントのトラッキング対象を“有”に設定し、さらにステップS39によりスキャンカウンタを“0”にクリアしたのち、図4に示したスキャンインターバルの計時処理に移行する。
【0029】
一方、上記ステップS41による判定の結果、変動差が許容範囲内だったとする。この場合制御ユニット2は、無線通信端末は静止しているか又は移動していてもきわめて低速であると判断して、ステップS42に移行する。そして、このステップS42でスキャンカウンタをインクリメント(+1)したのち、ステップS43によりスキャンカウンタの値が“2”に達したか否かを判定する。この判定の結果、スキャンカウンタの値が“2”に達していなければ、図4に示したスキャンインターバルの計時処理を移行する。
【0030】
これに対し、上記スキャンカウンタの値が“2”に達した場合には、制御ユニット2はステップS44に移行してアクセスポイント管理テーブル261に格納されている各アクセスポイントのうち、受信信号強度が最も高いアクセスポイントのみをトラッキング対象として“有”に設定し、その他のすべてのアクセスポイントについてはトラッキング対象から除外する。そして、図4に示したスキャンインターバルの計時処理に移行する。したがって、次回のスキャンインターバルにおいて制御ユニット2は、図2のステップS22〜ステップS26により、トラッキング対象として“有”に設定された受信信号強度が最も高いアクセスポイントのみについて、無線チャネルのスキャン処理を実行する。
【0031】
一方、上記ステップS35において新規アクセスポイントが検出されると、制御ユニット2はステップS36により当該新規アクセスポイントに対する接続処理を試みる。そして、接続が失敗したか否かをステップS37で判定し、接続が失敗した場合には接続が拒否された旨の情報をアクセスポイント管理テーブル261に格納する。そして、ステップS38に移行して、ここでアクセスポイント管理テーブル261に記憶されているすべての検出済アクセスポイントについてトラッキング対象であるか否かを表す情報を“有”に設定し、さらにステップS39によりスキャンカウンタを“0”にクリアしたのち、図4に示したスキャンインターバルの計時処理に移行する。
【0032】
これに対し、上記接続処理の試行の結果、新規アクセスポイントに対する接続が成功したとする。この場合制御ユニット2は、ステップS37から図5のステップS47に移行し、接続状態を監視するための制御を以下のように実行する。すなわち、制御ユニット2は、ステップS48により上記接続に成功した新規アクセスポイントからの受信信号強度を監視しながら、ステップS47により接続状態を維持するための処理を行う。そして、上記接続中のアクセスポイントからの受信信号強度が基準値以下に低下すると、ステップS49に移行してすべての検出済アクセスポイントについてトラッキング対象であるか否かを表す情報を“有”に設定する。そして、図4に示すスキャンインターバルの計時処理に移行する。したがって、次回のスキャンインターバルにおいて制御ユニット2は、図2のステップS22〜ステップS26により、トラッキング対象の可否を表す情報が“有”に設定されたアクセスポイントについて、全無線チャネルに対するスキャン処理を実行する。
【0033】
次に、以上のような制御手順及び制御内容により実現されるアクセスポイントスキャン動作の具体例を説明する。ここでは、例えば図6及び図7に示すように、アクセスポイントAP1〜AP4によりそれぞれ無線通信エリアZ1〜Z4が形成されたサービスエリアにおいて、無線通信端末STA1が経路R1に沿って移動して位置P1で静止し、しかるのち経路R2に沿って移動して位置P2に達する場合を例にとって説明する。なお、無線通信端末STA1は、上記アクセスポイントAP1〜AP3からは接続許可が与えられず、アクセスポイントAP4から接続許可が与えられるものとして説明を行う。
【0034】
(1)サービスエリア外から位置P0までの区間
無線通信端末STA1が電源投入後に経路R1に沿って移動しているとき、無線通信端末STA1ではスキャンインターバルごとに、ステップS29〜ステップS34により自端末で使用可能なすべての無線チャネルCh1〜Ch13に対しスキャンが行われる。そして、上記スキャンの結果、受信信号強度がしきい値以上のアクセスポイントが検出されると、この検出されたアクセスポイントの名前及び受信信号強度が無線チャネル番号と共にアクセスポイント管理テーブル261に格納される。また、新たなアクセスポイントが検出された場合には、その次のスキャンインターバルにおいて、ステップS36及びステップS37により当該新たなアクセスポイントに対する接続が試みられる。そして、アクセスポイントから接続が拒否されると、その旨の情報がアクセスポイント管理テーブル261に格納される。またそれと共に、ステップS38において当該アクセスポイントをトラッキング対象とするべく“有”が記憶される。
【0035】
例えば、無線通信端末STA1が図6中の位置P0に達したときには、アクセスポイントAP1〜AP3が検出される。そして、その名前及び受信信号強度が無線チャネル番号と共に例えば図8に示すようにアクセスポイント管理テーブル261に格納される。また、上記アクセスポイントAP1〜AP3についてそれぞれ接続の可否が判定され、その結果がアクセスポイント管理テーブル261に記憶される。例えば、この場合アクセスポイントAP1〜AP3はいずれも無線通信端末STA1を接続対象として許可しないため、アクセスポイント管理テーブル261には図8に示すように接続できない旨を表す“×”が記憶される。またそれと共に、検出されたアクセスポイントAP1〜AP3をすべてトラッキング対象とするべく、アクセスポイント管理テーブル261には図8に示すように“有”(“○”)が記憶される。
【0036】
また、上記区間の移動中に無線通信端末STA1におけるアクセスポイントAP1〜AP3からの受信信号強度(受信信号レベル)は例えば図12に示すように変動する。このとき、無線通信端末STA1では、スキャンインターバルごとに、ステップS40及びステップS41において前回検出した受信信号レベルと今回新たに検出した受信信号レベルとが比較され、その変動差が予め設定された許容範囲内か否かが判定される。そして、変動差が許容範囲を超えている場合には、無線通信端末STA1は移動中であると判定され、アクセスポイント管理テーブル261に記憶されている各検出済アクセスポイントAP1〜AP3は図8に示すようにトラッキング対象が“有”に維持される。
【0037】
すなわち、無線通信端末STA1が所定速度以上で移動しているときには、無線通信端末STA1では定期的に上記トラッキング対象=“有”に設定された各アクセスポイントAP0〜AP3について、図11(a)の位置P0におけるスキャンのような全無線チャネルのスキャンが繰り返し行われる。
【0038】
(2)位置P0から位置P1までの区間及び位置P1における静止状態
無線通信端末STA1が位置P0に達したのち減速して位置P1に移動すると、この区間の距離は短いため、同区間ではアクセスポイントAP1〜AP3からの受信信号強度はいずれも図12に示すように変動量が許容範囲x内になる。この場合無線通信端末STA1では、ステップS42によりスキャンカウンタの値がインクリメントされて=1に設定されるものの、2には達していないため、位置P1に到達した直後のスキャンインターバルでは図11(a)に示すようにトラッキング対象のすべてのアクセスポイントAP1〜AP3が選択されてその全無線チャネルに対するスキャンが行われる。
【0039】
しかし、位置P1において無線通信端末STA1が静止状態となると、上記スキャンにより検出されるアクセスポイントはAP1〜AP3のまま変わらず、かつ検出されたアクセスポイントAP1〜AP3からの受信信号強度の変動量はいずれも許容範囲x内になる。このため、スキャンカウンタの値はインクリメントされて=2となる。この結果、アクセスポイント管理テーブル261におけるトラッキング対象を表す情報は、ステップS44により例えば図9に示すように受信信号強度が最も高いアクセスポイントAP3のみがトラッキング対象として“有” (“○”)に設定され、その他のすべてのアクセスポイントAP1,AP2についてはトラッキング対象から除外(“×”)される。
【0040】
したがって、次回以降のスキャンインターバルにおいて、無線通信端末STA1ではステップS24〜ステップS26により、上記トラッキング対象=“有”に設定されたアクセスポイントAP3のみが選択され、この結果例えば図11(a)乃至(b)に示すように無線チャネルCh11に対するスキャンのみが行われる。したがって、静止状態における無線通信端末STA1の消費電力は、常に全無線チャネルをスキャンしていた従来の方法に比べて低減される。
【0041】
(3)位置P1から位置P2までの区間
無線通信端末STA1は、位置P1から位置P1.5及び位置P1.8を経て位置P2へ移動する。先ず位置P1.5に移動すると、このとき行われたアクセスポイントAP3の無線チャネルCh11に対するスキャンにより検出される受信信号強度が前回のスキャンにより検出された受信信号強度から変動し、その変動量が許容範囲xを超える。このため無線通信端末STA1は自端末が移動を再開したと判断し、アクセスポイント管理テーブル261に記憶されているすべてのアクセスポイントAP1〜AP3のトラッキング対象を表す情報をステップS38において“有”に変更する。したがって、次のスキャンインターバルでは、例えば図11(c)の位置P1.8におけるスキャンのように、再びトラッキング対象のすべてのアクセスポイントAP1〜AP3が選択されてその全無線チャネルに対するスキャンが行われる。
【0042】
上記スキャンの結果、図7に示すように新たなアクセスポイントAP4が検出されると、無線通信端末STA1ではステップS36により上記新たなアクセスポイントAP4に対する接続が試みられる。そして、アクセスポイントAP4が接続を許可すると、以後ステップS47により当該アクセスポイントAP4との間の接続状態が保持され、この状態が位置P2に移動した後も図11(c)に示すように継続される。
【0043】
なお、この位置P2に移動し静止した状態でのアクセスポイント管理テーブル261の管理情報は図10に示すように設定される。すなわち、接続中のアクセスポイントAP4のトラッキング状態は“有”に設定される。この状態で無線通信端末STA1は、アクセスポイントAP4が周期的に送信するビーコン信号を受信して通信品質を測定し、その測定結果をもとにローミング又はハンドオーバのためのスキャン処理を実行するか否かを判定する。
【0044】
以上述べたようにこの実施形態では、接続可能なアクセスポイントが検出できない状況において、スキャンにより検出されるアクセスポイントが前回のスキャンのときと変わらず、かつ検出されたアクセスポイントからの受信信号強度の変動量がいずれも許容範囲x内の場合には、無線通信端末STA1が静止しているものと判断する。そして、受信信号強度が最も高いアクセスポイントのみをトラッキング対象として設定し、以後のスキャンインターバルでは上記トラッキング対象として設定された唯一のアクセスポイントの無線チャネルに対するスキャンのみを行うようにしている。
【0045】
したがって、接続可能なアクセスポイントが検出できない状況で、かつ自端末が静止していると判断される場合には、1つの無線チャネルに対するスキャンのみが行われ、他の無線チャネルに対するスキャンは行われない。したがって、スキャン対象の無線チャネル数が大幅に減少し、これによりスキャンに費やされる消費電力が大幅に削減されて、バッテリ寿命の延長が図られる。
また、静止状態であっても受信信号強度が最も高いアクセスポイントが選択されて、その1つの無線チャネルに対するスキャンが維持される。このため、無線通信端末STA1が移動を再開した場合にも、これを安定かつ確実に検出することができる。
【0046】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、静止状態と判定した場合に直前のスキャンにおいて検出された受信信号強度が最も大きいアクセスポイントを選択し、この選択したアクセスポイントに対してのみトラッキング状態を“有”に設定した。しかし、必ずしも受信信号強度が最も大きいアクセスポイントを選択する必要はなく、受信信号強度がしきい値以上のアクセスポイントの中から任意のアクセスポイントを選択してもよい。
【0047】
また、前記実施形態では、静止状態と判定された状態でスキャンインターバルごとに一つの無線チャネルに対しスキャンを行うようにした。しかし、これに限定されるものではなく、静止状態の長さを計測し、この長さが予め定めたスキャンインターバル数に相当する長さ以上続いた場合には、以後の予め定めた複数のスキャンインターバルごとに上記一つの無線チヤネルに対するスキャンを1回行うようにしてもよい。このようにすると、無線通信端末が安定的に静止している状態におけるスキャン回数をさらに減らして、スキャンに費やされる消費電力をさらに節減することが可能となる。
【0048】
さらに、前記実施形態では無線LANで使用される無線通信端末を例にとって説明したが、無線LANと同様にスキャンを行う無線システムであれば、本発明は如何なるシステムにも適用可能である。その他、無線通信端末の種類やその構成、基地局のスキャン制御手順と制御内容等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0049】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明に係わる無線通信端末の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1に示した無線通信端末におけるサーチ制御手順とその内容の前半部分を示すフローチャート。
【図3】図1に示した無線通信端末におけるサーチ制御手順とその制御内容の後半部分を示すフローチャートである。
【図4】図1に示した無線通信端末におけるスキャンインターバルの制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】図1に示した無線通信端末における接続中の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】図1に示した無線通信端末の移動経路の前半部分を示す図である。
【図7】図1に示した無線通信端末の移動経路の後半部分を示す図である。
【図8】図1に示した無線通信端末に設けられたアクセスポイント管理テーブルの第1の状態を示す図である。
【図9】図1に示した無線通信端末に設けられたアクセスポイント管理テーブルの第2の状態を示す図である。
【図10】図1に示した無線通信端末に設けられたアクセスポイント管理テーブルの第3の状態を示す図である。
【図11】図1に示した無線通信端末によるスキャン動作の遷移を示す図である。
【図12】図1に示した無線通信端末の移動に伴う受信信号レベルの変化を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
AP1〜AP4…アクセスポイント、Z1〜Z3…アクセスポイントの無線通信エリア、STA1…無線通信端末、R1,R2…無線通信端末の移動経路、P0,P1,P1.5,P1.8,P2…無線通信端末の移動経路、1…無線ユニット、2…制御ユニット、3…入出力インタフェースユニット、11…アンテナ、21…主制御モジュール、22…アクセスポイントスキャン制御モジュール、23…アクセスポイント接続制御モジュール、24…アクセスポイントトラッキング制御モジュール、25…スキャン結果取得制御モジュール、26…メモリモジュール、31…入力デバイス、32…表示デバイス、221…通信品質比較部、222…スキャンチャネル選択部、223…スキャン方式選択部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線LAN(Local Area Network)に接続するための通信インタフェースを備えた無線通信端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LANの普及に伴い、無線LAN用の通信インタフェースを備えた無線通信端末が種々出現している。例えば、無線LAN用の通信インタフェースを内蔵したノート型パーソナル・コンピュータや、携帯電話用の通信インタフェースに加えて無線LAN用の通信インタフェースを備えたデュアルモードタイプの携帯電話機及びPDA(Personal Digital Assistant)等がそれである。この種の無線通信端末を使用すれば、例えば都市部のビジネス街や商店街のように無線LANが整備された地域において、大容量のデータ通信を行うことが可能となる。
【0003】
ところで、この種の無線通信端末が無線LANを利用する場合には、無線LANのアクセスポイントをスキャンして通信可能なアクセスポイントを検出し、この検出されたアクセスポイントに対し接続要求を行う必要がある。そこで、従来の一般的な無線通信端末では、通信要求の発生に備え、アクセスポイントが使用するすべての無線チャネルに対して定期的にスキャンを行っている。
【0004】
一方、他のスキャン方法として、アクティブスキャンとパッシブスキャンを無線通信端末の状況に応じて使い分ける方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照。)。アクティブスキャンとは、無線通信端末からアクセスポイントへ探索用プローブパケットを送信して、アクセスポイントが上記プローブパケットに応答することにより通信可能なアクセスポイントを検出するものである。これに対しパッシブスキャンとは、アクセスポイントが定期的に送信している報知情報を一定期間受信することにより通信可能なアクセスポイントを検出するものである。上記提案では、アクセスポイントから送信される無線信号の受信信号品質等を参照して、スキャン方法を上記アクティブスキャン又はパッシブスキャンに適応的に切り替えている。
【特許文献1】特開2005−012539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来の一般的なスキャン方法では、無線通信端末の状況を特に考慮せずにアクセスポイントのスキャンを定期的かつ常に同一の手順で行っている。このため、例えば無線通信端末が周辺のいずれのアクセスポイントからも接続許可が得られない位置に静止している場合のように、接続可能なアクセスポイントを検出できる見込みがない状況にあるにも拘わらず、すべての無線チャネルに対するスキャンが繰り返し実行される。このため、無線通信端末の消費電力が増加してバッテリ寿命の短縮、つまり無線通信端末の待ち受け時間及び連続通信時間の短縮を招く。
【0006】
一方、特開2005−012539号公報に記載された提案では、アクティブスキャンとパッシブスキャンとを適応的に使い分けるため、上記一般的なスキャン方法に比べれば消費電力の低減効果が期待できる。しかしこの提案においても、無線通信端末が接続可能なアクセスポイントを検出できる見込みがない状況にあるような場合でも、アクティブスキャン又はパッシブスキャンによりすべての無線チャネルに対するスキャンが実行される。このため、無線通信端末の消費電力は依然として大きく、バッテリ寿命の短命化を招いていた。
【0007】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、接続可能な基地局を検出できる見込みがない状況にある場合には不要なスキャン動作が行われないようにし、これにより消費電力を低減してバッテリ寿命の延長を可能にした無線通信端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためにこの発明の一つの観点は、複数の基地局が分散配置されたサービスエリアで使用され、上記基地局が使用する複数の無線チャネルに対し定期的にスキャンを行ってその結果をもとに接続可能な基地局を検出する機能を備えた無線通信端末において、
上記複数の基地局の識別情報に対応付けて、当該基地局が使用する無線チャネルを表す情報と、当該基地局に対する接続の可否を表す情報と、当該基地局を通信品質の追跡対象とするか否かを表すトラッキング情報を記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された接続の可否を表す情報をもとに、接続可能な基地局の有無を判定する第1の判定手段と、上記記憶手段に記憶された無線チャネル情報及びトラッキング情報をもとに、通信品質の追跡対象となっている基地局が使用する無線チャネルに対し定期的にスキャンを行って、当該基地局ごとの通信品質を検出する検出手段と、上記検出された通信品質の時間変動量を算出し、この算出された通信品質の時間変動量が予め設定された許容範囲内であるか否かを判定する第2の判定手段と、上記第1の判定手段により接続可能な基地局が存在しないと判定され、かつ上記第2の判定手段により通信品質の時間変動量が許容範囲内であると判定された場合に、上記記憶手段に識別情報が記憶された基地局の中から当該基地局数より少数の基地局を選択し、この選択した基地局のみを通信品質の追跡対象とするべく上記トラッキング情報を変更する手段とを具備するものである。
【発明の効果】
【0009】
したがって、接続可能な基地局が検出できない状況において、基地局の通信品質の時間変動量が許容範囲内であると判定された場合、つまり自端末が静止していると判断される場合には、通信品質の追跡対象の基地局が少数の基地局に制限され、この制限された基地局の無線チャネルに対してのみスキャンが行われる。このため、スキャン対象の無線チャネル数が大幅に減少し、これによりスキャンに費やされる消費電力が大幅に削減されて、バッテリ寿命の延長が図られる。
【0010】
すなわち、この発明によれば、接続可能な基地局を検出できる見込みがない状況にある場合には不要なスキャン動作が行われないようになり、これにより消費電力を低減してバッテリ寿命の延長を可能にした無線通信端末を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。
図1はこの発明に係わる無線通信端末の一実施形態を示すブロック図である。この無線通信端末は無線LAN(Local Area Network)専用端末であり、アンテナ11を備えた無線ユニット1と、制御モジュール2と、入出力インタフェース3とを備えている。無線ユニット1は、制御ユニットの制御の下で、IEEE802.11規格に基づく無線LANアクセスポイントの探索、認証、接続及びデータ通信に係わる無線信号の送受信動作を行う。
【0012】
制御ユニット2は、この発明に係わる制御機能として、主制御モジュール21と、アクセスポイントスキャン制御モジュール22と、アクセスポイント接続制御モジュール23と、アクセスポイントトラッキング制御モジュール24と、スキャン結果取得制御モジュール25を備え、さらにメモリモジュール26及びスキャンインターバルタイマ27を備えている。
【0013】
メモリモジュール26は記憶媒体としてハードディスク又はNAND型フラッシュメモリを使用したもので、上記各制御モジュール21〜25の機能を実現するためのアプリケーション・プログラムと、アクセスポイント管理テーブル261を格納している。アクセスポイント管理テーブル261は、アクセスポイントのスキャン結果を表す情報を記憶するために使用される。スキャン結果を表す情報は、アクセスポイント名と、当該アクセスポイントが使用している無線チャネル番号と、当該アクセスポイントから送信される無線信号の受信信号強度と、接続可否の判定結果と、トラッキング対象とするか否かの判定結果とからなり、アクセスポイント管理テーブル261にはこれらの各情報要素を記憶するためのフィールドが設けられる。
【0014】
スキャンインターバルタイマ27は、予め設定したスキャンインターバルの時間が経過するごとに、タイムアウト信号を主制御モジュール21及びアクセスポイントスキャン制御モジュール22に通知する機能を有する。スキャンインターバルタイマ27における上記計時動作の開始及び停止は、無線通信端末の動作状態、例えば通信中、接続中及びサービス圏外の各状態に応じて主制御モジュール21により制御される。また上記スキャンインターバルの時間も主制御モジュール21により可変設定される。
【0015】
アクセスポイントスキャン制御モジュール22は、通信品質比較部221と、スキャンチャネル選択部222と、スキャン方式選択部223とを有する。通信品質比較部221は、アクセスポイント管理テーブル261に格納された情報においてトラッキング“有”となっているアクセスポイントについて、当該アクセスポイントを検出したときの受信信号レベルと、現時点での受信信号レベルとを比較し、その比較結果が予め設定された許容範囲内であるか否かを判定する。なお、上記現時点での受信信号レベルは、アクセスポイントトラッキング制御モジュール24により検出される。
【0016】
スキャンチャネル選択部222は、アクセスポイント管理テーブル261のトラッキング有無フィールドを参照し、トラッキング“有”となっているアクセスポイントを検索する。そして、トラッキング“有”となっているアクセスポイントに対してその使用チャネル番号を参照してスキャン対象の無線チャネルとする。一方、トラッキング“有”となっているアクセスポイントを検索できなかった場合には、使用可能なすべての無線チャネルをスキャン対象とする。また、アクセスポイント管理テーブル261にアクセスポイントが未登録の場合、つまり検出済のアクセスポイントが存在しない場合には、使用可能な無線チャネル番号を生成する。
【0017】
スキャン方式選択部223は、自己の無線通信端末が使用可能な無線チャネルからスキャン対象となる無線チャネル番号を選択する。このスキャン対象とする無線チャネル番号の選択は、上記通信品質比較部221の比較結果及びスキャンチャネル選択部223の選択結果に基づいて行われる。
【0018】
アクセスポイント接続制御モジュール23は、上記アクセスポイントスキャン制御モジュール22により検出されたアクセスポイントに対する認証や接続要求等、接続に必要な制御手順を実行すると共に、接続の可否及びトラッキングの有無を判定してその結果を上記アクセスポイント管理テーブル261に格納する機能を有する。アクセスポイントトラッキング制御モジュール24は、上記アクセスポイント接続制御モジュール23の指示に従い、アクセスポイントとの間でトラッキングを行うための制御手順を実行する。
【0019】
スキャン結果取得制御モジュール25は、上記アクセスポイントスキャン制御モジュール22の指示に従い、アクセスポイントのスキャン結果を表す情報を生成してこの情報をアクセスポイント管理テーブル261に格納する。スキャン結果を表す情報は、先に述べたようにアクセスポイント名と、当該アクセスポイントが使用している無線チャネル番号と、当該アクセスポイントから送信される無線信号の受信信号強度と、接続可否の判定結果と、トラッキング対象とするか否かの判定結果とから構成される。
【0020】
主制御モジュール21は、無線通信端末全体の動作を統括的に制御する。なお、この主制御モジュール21をはじめ、上記各制御モジュール22〜25の機能はいずれも、メモリモジュール26に記憶されたアプリケーション・プログラムをCPU(Central Processing Unit)に実行させることにより実現される。
【0021】
入出力インタフェースユニット3には、入力デバイス31と、表示デバイス32が設けられている。入力デバイス31は、例えばキーボード及び機能キー群により構成され、ユーザが各種コマンドや文章を入力するために使用される。表示デバイス32は、例えば液晶表示器からなり、上記入力デバイス31による入力情報や、端末の動作状態を表すピクト情報、送受信データを表示するために使用される。
その他、図示していないがこの無線通信端末はバッテリを電源とした電源ユニットを備えており、この電源ユニットにより生成される動作電源出力により上記無線ユニット1及び制御ユニット2が動作する。
【0022】
次に、以上のように構成された無線通信端末の動作を説明する。図2乃至図5は制御ユニット2による制御手順と制御内容を示すフローチャートである。
電源が投入されると無線通信端末STA1の制御ユニット2は、先ずステップS21によりアクセスポイント管理テーブル261を初期化すると共に、スキャン対象とするチャネル番号変数Nを初期化する。制御ユニット2は、次にステップS22によりアクセスポイント監視テーブル261を検索し、その検索結果をもとにステップS23にてトラッキング対象のアクセスポイントは一つであるか否かを判定する。そして、電源投入直後のように、トラッキング対象のアクセスポイントがアクセスポイント管理テーブル261に記憶されていなければ、制御ユニット2は使用可能なすべての無線チャネルについて以下のようにスキャン処理を実行する。
【0023】
すなわち、先ずステップS29によりN番目の使用可能なチャネル番号Chを選択して、このチャネル番号Chにより表される無線チャネルに対しステップS30によりスキャン処理を行う。そして、ステップS31において、上記スキャン処理により検出されたアクセスポイントのID及び受信信号レベル(受信信号強度)を、上記選択したチャネル番号と共にアクセスポイント管理テーブル261に格納する。またそれと共にステップS32において、上記検出されたアクセスポイントのトラッキング判定結果を“有”に設定する。
【0024】
そうして一つのチャネルに対するスキャン処理とスキャン結果の格納処理が終了すると、制御ユニット2はステップS33においてチャネル番号Nをインクリメント(N=N+1)した後、使用可能なすべての無線チャネルに対するスキャン処理が終了したか否かをステップS34で判定する。そして、まだスキャンを行っていない無線チャネルが残っていれば、ステップS29に戻って上記インクリメント後のチャネル番号Nに対応する無線チャネルについてスキャン処理とそのスキャン結果の格納処理を実行する。
以後同様に、使用可能なすべての無線チャネルについてスキャン処理が実行され、そのスキャン結果を表す情報がアクセスポイント管理テーブル261に順次格納される。
【0025】
上記使用可能なすべての無線チャネルについてスキャン処理が終了すると、制御ユニット2は図3に示すステップS35に移行し、上記スキャン処理により新規アクセスポイントが検出されたか否かを判定する。この判定の結果、新規アクセスポイントが検出されると、ステップS36により当該検出された新規アクセスポイントに対する接続処理を開始し、ステップS37において接続に失敗したか否かを判定する。そして、例えば上記新規のアクセスポイントが自営網以外のアクセスポイントだったり、また非加入の無線LAN事業者が運用するアクセスポイントだったとする。この場合、アクセスポイントにより接続を拒否されるため、制御ユニット2は当該アクセスポイントの接続の可否を表す情報を“否”に設定したのち、ステップS38によりすべての検出済アクセスポイントのトラッキング対象を“有”に設定する。
【0026】
そして制御ユニット2は、ステップS39によりスキャンカウンタを“0”にクリアしたのち、スキャンインターバルの計時処理を次のように実行する。図4はこの計時処理の手順と処理内容を示すフローチャートである。
すなわち、制御ユニット2はスキャンインターバルタイマ27に計時時間を設定して計時動作をスタートさせ、ステップS46においてスキャンインターバルタイマ27の計時時間の満了を監視する。そして、スキャンインターバルタイマ27の計時時間が満了すると図2に示すステップS22に戻り、次回のスキャンインターバルにおける制御動作を開始する。
【0027】
次回のスキャンインターバルにおいて制御ユニット2は、ステップS22でアクセンポイント管理テーブル261を検索し、その結果をもとにステップS23によりトラッキング対象のアクセスポイントが一つであるか否かを判定する。そして、いまトラッキング対象のアクセスポイントがアクセンポイント管理テーブル261に記憶されており、それが一つだったとすると、ステップS24に移行してトラッキング対象のアクセスポイントを探索するためのチャネル番号を選択し、当該選択したチャネル番号に対応する無線チャネルについてステップS25によりスキャン処理を実行する。そして、ステップS26において、上記スキャン処理により検出されたアクセスポイントの名前及び受信信号レベル(受信信号強度)を、上記選択したチャネル番号と共にアクセスポイント管理テーブル261に格納する。
【0028】
そうして上記トラッキング対象のアクセスポイントに対するスキャン処理が終了すると、制御ユニット2は図3のステップS35において新規アクセスポイントの検出の有無を判定する。そして、新規アクセスポイントが検出されなかった場合には、ステップS40に移行する。このステップS40では、アクセスポイント管理テーブル261に格納された情報を参照して、トラッキング“有”となっているアクセスポイントについて、当該アクセスポイントを検出したときの受信信号レベルと、現時点での受信信号レベルとを比較する。そして、その変動差が予め設定された許容範囲内か否かをステップS41で判定し、変動差が許容範囲を超えている場合には無線通信端末は移動中であると判断して、ステップS38に移行する。そして、ステップS38によりすべての検出済アクセスポイントのトラッキング対象を“有”に設定し、さらにステップS39によりスキャンカウンタを“0”にクリアしたのち、図4に示したスキャンインターバルの計時処理に移行する。
【0029】
一方、上記ステップS41による判定の結果、変動差が許容範囲内だったとする。この場合制御ユニット2は、無線通信端末は静止しているか又は移動していてもきわめて低速であると判断して、ステップS42に移行する。そして、このステップS42でスキャンカウンタをインクリメント(+1)したのち、ステップS43によりスキャンカウンタの値が“2”に達したか否かを判定する。この判定の結果、スキャンカウンタの値が“2”に達していなければ、図4に示したスキャンインターバルの計時処理を移行する。
【0030】
これに対し、上記スキャンカウンタの値が“2”に達した場合には、制御ユニット2はステップS44に移行してアクセスポイント管理テーブル261に格納されている各アクセスポイントのうち、受信信号強度が最も高いアクセスポイントのみをトラッキング対象として“有”に設定し、その他のすべてのアクセスポイントについてはトラッキング対象から除外する。そして、図4に示したスキャンインターバルの計時処理に移行する。したがって、次回のスキャンインターバルにおいて制御ユニット2は、図2のステップS22〜ステップS26により、トラッキング対象として“有”に設定された受信信号強度が最も高いアクセスポイントのみについて、無線チャネルのスキャン処理を実行する。
【0031】
一方、上記ステップS35において新規アクセスポイントが検出されると、制御ユニット2はステップS36により当該新規アクセスポイントに対する接続処理を試みる。そして、接続が失敗したか否かをステップS37で判定し、接続が失敗した場合には接続が拒否された旨の情報をアクセスポイント管理テーブル261に格納する。そして、ステップS38に移行して、ここでアクセスポイント管理テーブル261に記憶されているすべての検出済アクセスポイントについてトラッキング対象であるか否かを表す情報を“有”に設定し、さらにステップS39によりスキャンカウンタを“0”にクリアしたのち、図4に示したスキャンインターバルの計時処理に移行する。
【0032】
これに対し、上記接続処理の試行の結果、新規アクセスポイントに対する接続が成功したとする。この場合制御ユニット2は、ステップS37から図5のステップS47に移行し、接続状態を監視するための制御を以下のように実行する。すなわち、制御ユニット2は、ステップS48により上記接続に成功した新規アクセスポイントからの受信信号強度を監視しながら、ステップS47により接続状態を維持するための処理を行う。そして、上記接続中のアクセスポイントからの受信信号強度が基準値以下に低下すると、ステップS49に移行してすべての検出済アクセスポイントについてトラッキング対象であるか否かを表す情報を“有”に設定する。そして、図4に示すスキャンインターバルの計時処理に移行する。したがって、次回のスキャンインターバルにおいて制御ユニット2は、図2のステップS22〜ステップS26により、トラッキング対象の可否を表す情報が“有”に設定されたアクセスポイントについて、全無線チャネルに対するスキャン処理を実行する。
【0033】
次に、以上のような制御手順及び制御内容により実現されるアクセスポイントスキャン動作の具体例を説明する。ここでは、例えば図6及び図7に示すように、アクセスポイントAP1〜AP4によりそれぞれ無線通信エリアZ1〜Z4が形成されたサービスエリアにおいて、無線通信端末STA1が経路R1に沿って移動して位置P1で静止し、しかるのち経路R2に沿って移動して位置P2に達する場合を例にとって説明する。なお、無線通信端末STA1は、上記アクセスポイントAP1〜AP3からは接続許可が与えられず、アクセスポイントAP4から接続許可が与えられるものとして説明を行う。
【0034】
(1)サービスエリア外から位置P0までの区間
無線通信端末STA1が電源投入後に経路R1に沿って移動しているとき、無線通信端末STA1ではスキャンインターバルごとに、ステップS29〜ステップS34により自端末で使用可能なすべての無線チャネルCh1〜Ch13に対しスキャンが行われる。そして、上記スキャンの結果、受信信号強度がしきい値以上のアクセスポイントが検出されると、この検出されたアクセスポイントの名前及び受信信号強度が無線チャネル番号と共にアクセスポイント管理テーブル261に格納される。また、新たなアクセスポイントが検出された場合には、その次のスキャンインターバルにおいて、ステップS36及びステップS37により当該新たなアクセスポイントに対する接続が試みられる。そして、アクセスポイントから接続が拒否されると、その旨の情報がアクセスポイント管理テーブル261に格納される。またそれと共に、ステップS38において当該アクセスポイントをトラッキング対象とするべく“有”が記憶される。
【0035】
例えば、無線通信端末STA1が図6中の位置P0に達したときには、アクセスポイントAP1〜AP3が検出される。そして、その名前及び受信信号強度が無線チャネル番号と共に例えば図8に示すようにアクセスポイント管理テーブル261に格納される。また、上記アクセスポイントAP1〜AP3についてそれぞれ接続の可否が判定され、その結果がアクセスポイント管理テーブル261に記憶される。例えば、この場合アクセスポイントAP1〜AP3はいずれも無線通信端末STA1を接続対象として許可しないため、アクセスポイント管理テーブル261には図8に示すように接続できない旨を表す“×”が記憶される。またそれと共に、検出されたアクセスポイントAP1〜AP3をすべてトラッキング対象とするべく、アクセスポイント管理テーブル261には図8に示すように“有”(“○”)が記憶される。
【0036】
また、上記区間の移動中に無線通信端末STA1におけるアクセスポイントAP1〜AP3からの受信信号強度(受信信号レベル)は例えば図12に示すように変動する。このとき、無線通信端末STA1では、スキャンインターバルごとに、ステップS40及びステップS41において前回検出した受信信号レベルと今回新たに検出した受信信号レベルとが比較され、その変動差が予め設定された許容範囲内か否かが判定される。そして、変動差が許容範囲を超えている場合には、無線通信端末STA1は移動中であると判定され、アクセスポイント管理テーブル261に記憶されている各検出済アクセスポイントAP1〜AP3は図8に示すようにトラッキング対象が“有”に維持される。
【0037】
すなわち、無線通信端末STA1が所定速度以上で移動しているときには、無線通信端末STA1では定期的に上記トラッキング対象=“有”に設定された各アクセスポイントAP0〜AP3について、図11(a)の位置P0におけるスキャンのような全無線チャネルのスキャンが繰り返し行われる。
【0038】
(2)位置P0から位置P1までの区間及び位置P1における静止状態
無線通信端末STA1が位置P0に達したのち減速して位置P1に移動すると、この区間の距離は短いため、同区間ではアクセスポイントAP1〜AP3からの受信信号強度はいずれも図12に示すように変動量が許容範囲x内になる。この場合無線通信端末STA1では、ステップS42によりスキャンカウンタの値がインクリメントされて=1に設定されるものの、2には達していないため、位置P1に到達した直後のスキャンインターバルでは図11(a)に示すようにトラッキング対象のすべてのアクセスポイントAP1〜AP3が選択されてその全無線チャネルに対するスキャンが行われる。
【0039】
しかし、位置P1において無線通信端末STA1が静止状態となると、上記スキャンにより検出されるアクセスポイントはAP1〜AP3のまま変わらず、かつ検出されたアクセスポイントAP1〜AP3からの受信信号強度の変動量はいずれも許容範囲x内になる。このため、スキャンカウンタの値はインクリメントされて=2となる。この結果、アクセスポイント管理テーブル261におけるトラッキング対象を表す情報は、ステップS44により例えば図9に示すように受信信号強度が最も高いアクセスポイントAP3のみがトラッキング対象として“有” (“○”)に設定され、その他のすべてのアクセスポイントAP1,AP2についてはトラッキング対象から除外(“×”)される。
【0040】
したがって、次回以降のスキャンインターバルにおいて、無線通信端末STA1ではステップS24〜ステップS26により、上記トラッキング対象=“有”に設定されたアクセスポイントAP3のみが選択され、この結果例えば図11(a)乃至(b)に示すように無線チャネルCh11に対するスキャンのみが行われる。したがって、静止状態における無線通信端末STA1の消費電力は、常に全無線チャネルをスキャンしていた従来の方法に比べて低減される。
【0041】
(3)位置P1から位置P2までの区間
無線通信端末STA1は、位置P1から位置P1.5及び位置P1.8を経て位置P2へ移動する。先ず位置P1.5に移動すると、このとき行われたアクセスポイントAP3の無線チャネルCh11に対するスキャンにより検出される受信信号強度が前回のスキャンにより検出された受信信号強度から変動し、その変動量が許容範囲xを超える。このため無線通信端末STA1は自端末が移動を再開したと判断し、アクセスポイント管理テーブル261に記憶されているすべてのアクセスポイントAP1〜AP3のトラッキング対象を表す情報をステップS38において“有”に変更する。したがって、次のスキャンインターバルでは、例えば図11(c)の位置P1.8におけるスキャンのように、再びトラッキング対象のすべてのアクセスポイントAP1〜AP3が選択されてその全無線チャネルに対するスキャンが行われる。
【0042】
上記スキャンの結果、図7に示すように新たなアクセスポイントAP4が検出されると、無線通信端末STA1ではステップS36により上記新たなアクセスポイントAP4に対する接続が試みられる。そして、アクセスポイントAP4が接続を許可すると、以後ステップS47により当該アクセスポイントAP4との間の接続状態が保持され、この状態が位置P2に移動した後も図11(c)に示すように継続される。
【0043】
なお、この位置P2に移動し静止した状態でのアクセスポイント管理テーブル261の管理情報は図10に示すように設定される。すなわち、接続中のアクセスポイントAP4のトラッキング状態は“有”に設定される。この状態で無線通信端末STA1は、アクセスポイントAP4が周期的に送信するビーコン信号を受信して通信品質を測定し、その測定結果をもとにローミング又はハンドオーバのためのスキャン処理を実行するか否かを判定する。
【0044】
以上述べたようにこの実施形態では、接続可能なアクセスポイントが検出できない状況において、スキャンにより検出されるアクセスポイントが前回のスキャンのときと変わらず、かつ検出されたアクセスポイントからの受信信号強度の変動量がいずれも許容範囲x内の場合には、無線通信端末STA1が静止しているものと判断する。そして、受信信号強度が最も高いアクセスポイントのみをトラッキング対象として設定し、以後のスキャンインターバルでは上記トラッキング対象として設定された唯一のアクセスポイントの無線チャネルに対するスキャンのみを行うようにしている。
【0045】
したがって、接続可能なアクセスポイントが検出できない状況で、かつ自端末が静止していると判断される場合には、1つの無線チャネルに対するスキャンのみが行われ、他の無線チャネルに対するスキャンは行われない。したがって、スキャン対象の無線チャネル数が大幅に減少し、これによりスキャンに費やされる消費電力が大幅に削減されて、バッテリ寿命の延長が図られる。
また、静止状態であっても受信信号強度が最も高いアクセスポイントが選択されて、その1つの無線チャネルに対するスキャンが維持される。このため、無線通信端末STA1が移動を再開した場合にも、これを安定かつ確実に検出することができる。
【0046】
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、前記実施形態では、静止状態と判定した場合に直前のスキャンにおいて検出された受信信号強度が最も大きいアクセスポイントを選択し、この選択したアクセスポイントに対してのみトラッキング状態を“有”に設定した。しかし、必ずしも受信信号強度が最も大きいアクセスポイントを選択する必要はなく、受信信号強度がしきい値以上のアクセスポイントの中から任意のアクセスポイントを選択してもよい。
【0047】
また、前記実施形態では、静止状態と判定された状態でスキャンインターバルごとに一つの無線チャネルに対しスキャンを行うようにした。しかし、これに限定されるものではなく、静止状態の長さを計測し、この長さが予め定めたスキャンインターバル数に相当する長さ以上続いた場合には、以後の予め定めた複数のスキャンインターバルごとに上記一つの無線チヤネルに対するスキャンを1回行うようにしてもよい。このようにすると、無線通信端末が安定的に静止している状態におけるスキャン回数をさらに減らして、スキャンに費やされる消費電力をさらに節減することが可能となる。
【0048】
さらに、前記実施形態では無線LANで使用される無線通信端末を例にとって説明したが、無線LANと同様にスキャンを行う無線システムであれば、本発明は如何なるシステムにも適用可能である。その他、無線通信端末の種類やその構成、基地局のスキャン制御手順と制御内容等についても、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。
【0049】
要するにこの発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】この発明に係わる無線通信端末の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】図1に示した無線通信端末におけるサーチ制御手順とその内容の前半部分を示すフローチャート。
【図3】図1に示した無線通信端末におけるサーチ制御手順とその制御内容の後半部分を示すフローチャートである。
【図4】図1に示した無線通信端末におけるスキャンインターバルの制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】図1に示した無線通信端末における接続中の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】図1に示した無線通信端末の移動経路の前半部分を示す図である。
【図7】図1に示した無線通信端末の移動経路の後半部分を示す図である。
【図8】図1に示した無線通信端末に設けられたアクセスポイント管理テーブルの第1の状態を示す図である。
【図9】図1に示した無線通信端末に設けられたアクセスポイント管理テーブルの第2の状態を示す図である。
【図10】図1に示した無線通信端末に設けられたアクセスポイント管理テーブルの第3の状態を示す図である。
【図11】図1に示した無線通信端末によるスキャン動作の遷移を示す図である。
【図12】図1に示した無線通信端末の移動に伴う受信信号レベルの変化を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
AP1〜AP4…アクセスポイント、Z1〜Z3…アクセスポイントの無線通信エリア、STA1…無線通信端末、R1,R2…無線通信端末の移動経路、P0,P1,P1.5,P1.8,P2…無線通信端末の移動経路、1…無線ユニット、2…制御ユニット、3…入出力インタフェースユニット、11…アンテナ、21…主制御モジュール、22…アクセスポイントスキャン制御モジュール、23…アクセスポイント接続制御モジュール、24…アクセスポイントトラッキング制御モジュール、25…スキャン結果取得制御モジュール、26…メモリモジュール、31…入力デバイス、32…表示デバイス、221…通信品質比較部、222…スキャンチャネル選択部、223…スキャン方式選択部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基地局が分散配置されたサービスエリアで使用され、前記基地局が使用する複数の無線チャネルに対し定期的にスキャンを行ってその結果をもとに接続可能な基地局を検出する機能を備えた無線通信端末において、
前記複数の基地局の識別情報に対応付けて、当該基地局が使用する無線チャネルを表す情報と、当該基地局に対する接続の可否を表す情報と、当該基地局を通信品質の追跡対象とするか否かを表すトラッキング情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された接続の可否を表す情報をもとに、接続可能な基地局の有無を判定する第1の判定手段と、
前記記憶手段に記憶された無線チャネル情報及びトラッキング情報をもとに、通信品質の追跡対象となっている基地局が使用する無線チャネルに対し定期的にスキャンを行って、当該基地局ごとの通信品質を検出する検出手段と、
前記検出された通信品質の時間変動量を算出し、この算出された通信品質の時間変動量が予め設定された許容範囲内であるか否かを判定する第2の判定手段と、
前記第1の判定手段により接続可能な基地局が存在しないと判定され、かつ前記第2の判定手段により通信品質の時間変動量が許容範囲内であると判定された場合に、前記記憶手段に識別情報が記憶された基地局の中から当該基地局数より少数の基地局を選択し、この選択した基地局のみを通信品質の追跡対象とするべく前記トラッキング情報を変更する手段と
を具備することを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
前記トラッキング情報を変更する手段は、前記記憶手段に識別情報が記憶された基地局の中から通信品質が最も優れた基地局を選択し、この選択した基地局のみを通信品質の追跡対象とするべく前記トラッキング情報を変更することを特徴とする請求項1記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記トラッキング情報の変更後に、前記検出手段により検出される前記選択された基地局の通信品質をもとにその時間変動量を算出し、この算出された通信品質の時間変動量が前記許容範囲を超えたか否かを判定する第3の判定手段と、
前記第3の判定手段により、前記算出された通信品質の時間変動量が前記許容範囲を超えたと判定された場合に、前記記憶手段に識別情報が記憶されたすべての基地局を通信品質の追跡対象に復活させるべく前記トラッキング情報を再変更する手段と
を、さらに具備することを特徴とする請求項1記載の無線通信端末。
【請求項4】
前記トラッキング情報の変更後に、前記検出手段により検出される前記選択された基地局の通信品質をもとにその時間変動量を算出し、この算出された通信品質の時間変動量が予め設定された複数の検出周期にわたり前記許容範囲内であるか否かを判定する第4の判定手段と、
前記4の判定手段により、前記選択された基地局の通信品質の時間変動量が前記複数の検出周期にわたり前記許容範囲内であると判定された場合に、前記検出手段による検出周期を延長させる手段と
を、さらに具備することを特徴とする請求項1記載の無線通信端末。
【請求項1】
複数の基地局が分散配置されたサービスエリアで使用され、前記基地局が使用する複数の無線チャネルに対し定期的にスキャンを行ってその結果をもとに接続可能な基地局を検出する機能を備えた無線通信端末において、
前記複数の基地局の識別情報に対応付けて、当該基地局が使用する無線チャネルを表す情報と、当該基地局に対する接続の可否を表す情報と、当該基地局を通信品質の追跡対象とするか否かを表すトラッキング情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された接続の可否を表す情報をもとに、接続可能な基地局の有無を判定する第1の判定手段と、
前記記憶手段に記憶された無線チャネル情報及びトラッキング情報をもとに、通信品質の追跡対象となっている基地局が使用する無線チャネルに対し定期的にスキャンを行って、当該基地局ごとの通信品質を検出する検出手段と、
前記検出された通信品質の時間変動量を算出し、この算出された通信品質の時間変動量が予め設定された許容範囲内であるか否かを判定する第2の判定手段と、
前記第1の判定手段により接続可能な基地局が存在しないと判定され、かつ前記第2の判定手段により通信品質の時間変動量が許容範囲内であると判定された場合に、前記記憶手段に識別情報が記憶された基地局の中から当該基地局数より少数の基地局を選択し、この選択した基地局のみを通信品質の追跡対象とするべく前記トラッキング情報を変更する手段と
を具備することを特徴とする無線通信端末。
【請求項2】
前記トラッキング情報を変更する手段は、前記記憶手段に識別情報が記憶された基地局の中から通信品質が最も優れた基地局を選択し、この選択した基地局のみを通信品質の追跡対象とするべく前記トラッキング情報を変更することを特徴とする請求項1記載の無線通信端末。
【請求項3】
前記トラッキング情報の変更後に、前記検出手段により検出される前記選択された基地局の通信品質をもとにその時間変動量を算出し、この算出された通信品質の時間変動量が前記許容範囲を超えたか否かを判定する第3の判定手段と、
前記第3の判定手段により、前記算出された通信品質の時間変動量が前記許容範囲を超えたと判定された場合に、前記記憶手段に識別情報が記憶されたすべての基地局を通信品質の追跡対象に復活させるべく前記トラッキング情報を再変更する手段と
を、さらに具備することを特徴とする請求項1記載の無線通信端末。
【請求項4】
前記トラッキング情報の変更後に、前記検出手段により検出される前記選択された基地局の通信品質をもとにその時間変動量を算出し、この算出された通信品質の時間変動量が予め設定された複数の検出周期にわたり前記許容範囲内であるか否かを判定する第4の判定手段と、
前記4の判定手段により、前記選択された基地局の通信品質の時間変動量が前記複数の検出周期にわたり前記許容範囲内であると判定された場合に、前記検出手段による検出周期を延長させる手段と
を、さらに具備することを特徴とする請求項1記載の無線通信端末。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−148136(P2008−148136A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334793(P2006−334793)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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