説明

無線通信装置、信号処理方法

【課題】送信アンテナと受信アンテナを含む複数のアンテナを備えた無線通信装置において周波数分割複信方式で通信を行う場合に、アンテナ間の結合量等の制御を効率的に行うこと。
【解決手段】受信系の受信信号からデュプレクサ51により送信周波数成分を抽出し、その成分の電力値P61を、アンテナANT1、ANT2間の結合量として得る。そして、可変リアクタンス回路40において、アンテナ間で採り得る複数のリアクタンスの各々に対する結合量のサンプルを一定時間ごとに取得し、最適なリアクタンスが適応的に決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチアンテナを備えた無線通信装置において、各アンテナの受信信号又は送信信号を処理するための信号処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代移動体通信規格であるE−UTRA(Evolved Universal Terrestrial Radio Access)(LTE(Long Term Evolution)ともいう。)では、MIMO(Multi Input Multi Output)を実現するため、移動端末が複数のアンテナを備えることが想定されている。しかしながら、移動端末の小型化の進展に伴い、複数のアンテナを備える移動端末ではアンテナ間の距離が非常に短くなっている。その結果、このアンテナ間距離の短縮化による弊害が生じている。
【0003】
例えば、無線通信装置としての移動端末が2本のアンテナ(例えば、第1アンテナと第2アンテナ)を備える場合を想定する。この場合、第1アンテナから電波を送信するとき、第2アンテナの影響を受けて、第1アンテナの送信系のインピーダンスが不整合となり、第1アンテナでの反射成分が増加するという第1の弊害が生じうる。また、第1アンテナから送信された信号の一部が第2アンテナに吸収(受信)されてしまうという第2の弊害が生じうる。ここで、第1のアンテナから送信された信号が第2アンテナに吸収されることを「結合」といい、第2アンテナに吸収される信号の量を「結合量」という。アンテナ間の結合は、第1アンテナから放射された電波が第2アンテナに吸収されるか、又は第1アンテナから第2アンテナに向けて移動端末の基板上を高周波信号が伝播することによって生ずる。また、アンテナ間の結合量は、アンテナ間距離が短縮化されるにつれて増加する傾向にある。
【0004】
アンテナ間の結合量が大きい場合には、所望の送信信号レベル(換言すれば、実質的な送信信号レベル)が得られず、送信先の通信装置(例えば基地局)との間のスループットが低下するという問題がある。この問題を回避すべく、所望の送信信号レベルを確保するために送信系の増幅器の増幅度を大きくする等の手段を行ったとしたならば、アンテナ間の結合量が小さい場合と比較して、消費電力が大きくなるという別の問題も生じうる。
また、2本のアンテナを用いて受信し、その2本のアンテナのいずれかから送信するときには、アンテナ間の結合量が大きい場合に、所望波に対する受信感度が相対的に劣化するという問題も生じうる。
【0005】
従来、このアンテナ間の結合に関連して、2本のアンテナ間に可変結合器を配置し、この可変結合器の結合量が、受信時には増加し、送信時には減少するよう統合制御装置によって制御するようにした無線装置(無線通信装置)が知られている(特許文献1)。この無線通信装置によれば、可変結合器が、受信信号の誤り率や受信電界強度など通信状態に関する情報によって制御される、とされている。
【0006】
一方、移動端末に備えられた複数のアンテナを用いて受信ダイバーシチを行う場合、一般に、受信信号に対するアンテナ間の相関が小さいことが好ましい。かかる観点から、アンテナ間の相関関係を低く、ダイバーシチ効果が得られるようにした無線受信用小型携帯端末装置(無線通信装置)が知られている(特許文献2)。この無線通信装置には、上部接地導体の縁部を切り欠いて形成された複数の突片の先端部分に複数のアンテナ素子が設けられる。この無線通信装置には、複数のアンテナ素子間の相関関係を変える相関関係変更機構として、可変リアクタンス素子やスイッチを設けられる。この無線通信装置では、相関関係変更機構が、上部接地導体に流れる高周波電流の位相変化させることにより、アンテナ素子間の相関関係を低下させる。
【0007】
なお、アンテナ間の相関係数ρについて、各アンテナのSパラメータ(高周波信号を扱う回路網で使用される反射及び透過係数)から導き出す以下の近似式(式1)が提案されている(非特許文献1)。下式を用いると、比較的簡便な計算によってアンテナ間の相関係数を求めることができる。
【数1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−124581号公報
【特許文献2】特開2007−243455号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ELECTRONICS LETTERS 1st May 2003 Vol.39 No.9 “Exact representation of antenna system diversity performance from input parameter description” S.Blanch, J. Romeu and I.Corbella
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したLTEでは、2本のアンテナを備える移動端末等の無線通信装置に対して、周波数分割複信(FDD:Frequency Division Duplex)を利用した基本的な通信形態が規定されている。この通信形態によれば、無線通信装置が備える複数のアンテナのうち少なくとも1本のアンテナで送信が行われ、少なくとも2本のアンテナで受信が行われる。このような通信形態に対して、従来の無線通信装置は、アンテナ間の結合量の制御、及び/又は、アンテナ間の相関値の制御を効率的に行う方法が開示されていない。
例えば、2本のアンテナ間に可変結合器を配置した従来の無線通信装置では、ベースバンド処理部が、受信信号の誤り率や受信電界強度など通信状態に関する情報を計算し、この情報を元に可変結合器が制御される、とされている。しかしながら、上記通信形態に応じた効率的な上記情報の取得、並びに制御方法について開示されていない。
【0011】
よって、発明の1つの側面では、送信アンテナと受信アンテナを含む複数のアンテナを備え、周波数分割複信方式で通信を行う場合に、アンテナ間の結合量の制御、及び/又は、アンテナ間の相関値の制御を効率的に行うことを可能とする無線通信装置、信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の観点では、第1無線周波数の所望信号を受信するために設けられる第1アンテナと、第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の無線信号を送信するために設けられる第2アンテナと、を備え、周波数分割複信方式にて無線通信を行う無線通信装置が提供される。
【0013】
一例として、上記無線通信装置は、
(A)第1アンテナで受信した無線信号の内、第2無線周波数の信号成分の第1電力を測定する第1電力測定部と、
(B)第1電力に基づいて、第1アンテナと第2アンテナの結合量が小さくなるように、第1アンテナと第2アンテナの間のリアクタンスを制御する制御部と、
を備える。
【0014】
他の例として、上記無線通信装置は、
(C)第1アンテナで受信した無線信号の内、第2無線周波数の信号成分の第1電力を測定する第1電力測定部と、
(D)第2アンテナの送信信号の電力として第2電力を測定する第2電力測定部と、
(E)第2アンテナの送信信号による第2アンテナからの反射成分の電力として第3電力を測定する第3電力測定部と、
(F)第1電力、第2電力及び第3電力に基づいて、第1アンテナと第2アンテナの相関値が小さくなるように、第1アンテナと第2アンテナの間のリアクタンスを制御する制御部と、
を備える。
【0015】
第2の観点では、第1無線周波数の所望信号を受信するために設けられる第1アンテナと、第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の無線信号を送信するために設けられる第2アンテナと、を備え、周波数分割複信方式にて無線通信を行う無線通信装置、における信号処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
開示の無線通信装置、信号処理方法によれば、アンテナ間の結合量の制御、及び/又は、アンテナ間の相関値の制御を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態の無線通信装置の構成を示すブロック図。
【図2】可変リアクタンス回路の構成例を示す図。
【図3】第1実施形態の無線通信装置の制御内容を示すフローチャート。
【図4】第2実施形態の無線通信装置の構成を示すブロック図。
【図5】実施形態の変形例に係る無線通信装置のブロック図。
【図6】第3実施形態の無線通信装置の構成を示すブロック図。
【図7】第3施形態の無線通信装置の制御内容を示すフローチャート。
【図8】第4実施形態の無線通信装置の構成を示すブロック図。
【図9】実施形態の変形例に係る無線通信装置のブロック図。
【図10】第5施形態の無線通信装置の制御内容を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1)第1実施形態
以下、無線通信装置の第1実施形態について説明する。本実施形態の無線通信装置は、例えば、基地局と無線通信を行うユーザ端末(UE:User Equipment)である。この無線通信装置は、少なくとも1本の送信アンテナと、少なくとも2本の受信アンテナを備え、周波数分割複信方式(FDD)で通信を行う。この無線通信装置は、アンテナ間の結合量を効率的に低減するように構成されている。
【0019】
(1−1)無線通信装置の構成
先ず、本実施形態の無線通信装置の構成について、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態の無線通信装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、この無線通信装置は、2本のアンテナANT1,ANT2、受信信号処理部10、送信信号処理部20、制御部30、可変リアクタンス回路40、デュプレクサ(DPX)51,52、電力測定部61、を備える。
【0020】
図1に示した無線通信装置において、アンテナANT1(第1アンテナ)は受信アンテナであり、中心周波数が無線周波数fR(第1無線周波数)の所望信号を受信するために設けられている。アンテナANT2(第2アンテナ)は送受信アンテナであり、中心周波数が無線周波数fR(第1無線周波数)の所望信号を受信するとともに、中心周波数が無線周波数fT(第2無線周波数)の無線信号を送信するために設けられている。
【0021】
ここで、アンテナ間の結合量は、アンテナANT2から送信された信号(電波)のうちアンテナANT1に吸収される成分と、アンテナANT2の送信系における無線送信信号のうち内部基板等を通してアンテナANT1の受信系に伝播する成分とを含む。そして、デュプレクサ51は、アンテナANT1からの受信信号に対して、無線周波数fRの所望信号と、無線周波数fTの信号(結合量に相当する信号)とを分離するフィルタとして機能する。
【0022】
一方、デュプレクサ52は、アンテナANT2を送受信系で共用するために設けられている。すなわち、デュプレクサ52は、アンテナANT2が受信アンテナとして動作するときには、アンテナANT2からの受信信号(無線周波数fR)を受信信号処理部10へ通過させる。デュプレクサ52は、アンテナANT2が送信アンテナとして動作するときには、送信信号処理部20からの送信信号(無線周波数fT)をアンテナANT2へ通過させる。
【0023】
受信信号処理部10は、受信機11,12と、ベースバンド処理部13とを含む。
受信機11,12はそれぞれ、帯域制限フィルタ、ローノイズアンプ(LNA: Low Noise Amplifier)、ローカル周波数発信器、直交復調器、AGC(Automatic Gain Control)アンプ、A/D(Analog to Digital)変換器などを含む。受信機11,12は、それぞれアンテナANT1,ANT2から受信した無線信号(無線周波数fR)をデジタルベースバンド信号に変換(ダウンコンバート)する。ベースバンド処理部13は、受信機11,12から得られるデジタルベースバンド信号に基づいて様々な信号処理を行う。この信号処理には例えば、MIMOにおける時空間復号化処理や、受信ダイバーシチの処理等が含まれる。
【0024】
送信信号処理部20は、送信機21と、ベースバンド処理部22とを含む。
送信機21は、D/A(Digital to Analog)変換器、ローカル周波数発信器、ミキサ、パワーアンプ、フィルタ等を備える。送信機21は、ベースバンド処理部22により生成されるデジタルベースバンド信号をアナログ信号に変換するとともに、ベースバンド周波数から無線周波数(無線周波数fT)へアップコンバートする。
【0025】
電力測定部61(第1電力測定部)は、アンテナANT1の受信系における受信信号のうち、無線周波数fTの成分(アンテナANT2の送信信号の成分)の電力を測定するために設けられる。電力測定部61により測定された電力値P61(第1電力)は、制御部30に報告される。
【0026】
可変リアクタンス回路40は、アンテナANT1,ANT2の間に設けられており、制御部30による指令の下、アンテナ間のリアクタンスを調整可能に構成されている。可変リアクタンス回路40におけるリアクタンスを変化させると、各アンテナの共振点が変化し、アンテナの透過係数及び反射係数の周波数特性が変化することになる。よって、可変リアクタンス回路40におけるリアクタンスの変化に伴い、上記リアクタンス以外の条件が同一であるならばアンテナ間の結合量が変化することになる。
【0027】
可変リアクタンス回路40の構成例のいくつかを図2に示す。
図2の(a)に示す例では、可変リアクタンス回路40は、コイルL41と可変キャパシタVC42とが並列に接続されている。図2の(b)に示す例では、可変リアクタンス回路40は、コイルL41と可変キャパシタVC42とが直列に接続されている。図2の(a)及び(b)に示す例では、可変キャパシタVC42の値が制御部30によって制御されることにより、アンテナ間のリアクタンスが決定される。
図2の(c)に示す例では、それぞれ異なるインダクタンスを有する3個のコイルが、スイッチ群SW41に接続されている。図2の(c)に示す例では、スイッチ群SW41を構成する各スイッチの導通状態が制御部30によって制御されることにより、アンテナ間のリアクタンスが決定される。
図2の(d)に示す例では、可変リアクタンス回路40は、抵抗R41と可変キャパシタVC42とが並列に接続されている。図2の(d)に示す例では、可変キャパシタVC42の値が制御部30によって制御されることにより、アンテナ間のリアクタンスが決定される。
【0028】
制御部30は、電力測定部61から報告される電力値P61に基づいて、アンテナANT1,ANT2の間の結合量が常に小さくなるように、適応的に可変リアクタンス回路40を制御する。この制御は、本実施形態の無線通信装置の使用環境に応じた好ましいアンテナ間のリアクタンスを得るために、比較的短時間毎に繰返し行われる。制御部30で行われる制御については後述する。
【0029】
(1−2)制御内容
次に、本実施形態の無線通信装置の制御内容について、図3を参照して説明する。図3は、本実施形態の無線通信装置の制御内容を示すフローチャートである。このフローチャートは主として、制御部30によって実行される。
【0030】
このフローチャートは実質的に、ステップS12からステップS16までの各ステップが、無線通信装置の電源がOFFとなるまで(ステップS18)、一定時間の間隔で繰返し実行される。すなわち、前回の制御から一定時間が経過すると(ステップS10のYES)、ステップS12以降の制御が再び行われる。先ず、制御部30は、可変リアクタンス回路40で採りうる複数のリアクタンス、すなわち、調整可能なリアクタンスの範囲に対して結合量のサンプルを取得する(ステップS12)。本実施形態では、アンテナ間の結合量は、電力測定部61から報告される電力値P61である。制御部30は、例えば、可変リアクタンス回路40が図2(a)の構成である場合、可変キャパシタVC42が採り得る複数のキャパシタンスの各々に対し、結合量のサンプルとして電力値P61を取得する。すべてのサンプルが取得されればステップS16へ進む(ステップS14)。
【0031】
ステップS16では、制御部30は、ステップS12で取得した複数の結合量のサンプルの中で、結合量が最小となるリアクタンス(図2(a)の例では、可変キャパシタVC42のキャパシタンス)を決定する。さらに、制御部30は、その決定したリアクタンスが得られるように、可変リアクタンス回路40を設定する。決定されたリアクタンスは、次の制御が開始されるまで維持される。
なお、図3のフローチャートにおいて、制御実行のインターバルとなる時間(ステップS10の一定時間)は、無線通信装置の使用環境の変化に素早く対応できる程度に短いことが好ましい。
【0032】
(1−3)無線通信装置の動作
結合量の制御に関する本実施形態の無線通信装置の動作を説明すると、以下のとおりである。
すなわち、この無線通信装置では、例えば基地局等の他の通信装置との間でFDDの通信を行っている。すなわち、この無線通信装置は、受信時には中心周波数が無線周波数fRの所望信号を受信し、送信時には中心周波数が無線周波数fTの無線信号を送信している。また、受信はアンテナANT1,ANT2の両アンテナによって行われ、送信はアンテナANT2によって行われる。このとき、アンテナANT2から送信された信号の一部が空気伝播によりアンテナANT1に吸収される形態、及び/又は、内部基板等を通して送信信号がアンテナANT1の受信系に伝播する形態で、アンテナANT2からの送信信号がアンテナANT1の受信系に吸収される。この吸収される信号成分がアンテナ間の結合量に相当する。
デュプレクサ51は、アンテナANT1の受信系の受信信号から送信周波数成分を抽出し、電力測定部61は、その成分の電力値P61を測定する。この電力値P61は、結合量として制御部30に逐次報告されている。そのため、本実施形態の無線通信装置では、FDDの通信を行う場合に、デュプレクサと電力測定部を含む簡易な構成で結合量を算出することができる。
【0033】
本実施形態の無線通信装置は、仮にアンテナ間のリアクタンスを調整しなかったとしたならば、ユーザの使用環境(例えば、車内又は車外での使用、ユーザによる無線通信装置の保持の仕方等)によってアンテナ間の結合量が大きくなる場合がありうる。この結合量を常時小さな値とするため、制御部30は、一定時間ごとに適応的に可変リアクタンス回路40を制御する。例えば、ユーザが無線通信装置としての携帯端末の保持態様を変化させた場合を想定する。このとき、本実施形態の制御(図3)は比較的短期間で繰返し行われるため、無線通信装置の保持態様が変化させられた後、直ちに図3の処理が新たに実行される。その結果、直ちに新たな保持態様に応じた最適なリアクタンスが得られるように、可変リアクタンス回路40が設定し直される。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の無線通信装置によれば、少なくとも1本の送信アンテナと、少なくとも2本の受信アンテナを備え、FDDで通信を行う。このとき、受信系の受信信号から送信周波数成分を抽出し、その成分の電力値を結合量として得る。そして、アンテナ間で採り得る複数のリアクタンスの各々に対する結合量のサンプルを一定時間ごとに取得し、最適なリアクタンスが適応的に決定される。
本実施形態の無線通信装置によれば、制御対象となる結合量は、デュプレクサ、電力測定部を含む簡易な構成で得られるため、アンテナ間の結合量の制御を効率的に行うことができる。
【0035】
(2)第2実施形態
以下、無線通信装置の第2実施形態について説明する。本実施形態の無線通信装置は、第1実施形態の無線基地局と同様、アンテナ間の結合量を効率的に低減するように構成されている。そして、第1実施形態のものと比較して、制御の精度を高めるべく構成されている。
【0036】
本実施形態の無線通信装置の構成について、図4を参照して説明する。図4は、本実施形態の無線通信装置の構成を示すブロック図である。
図4に示す各構成のうち、図1に示した第1実施形態の構成と同一の構成部分については、同一符号を付して重複説明を省略する。図4に示した無線通信装置は、図1に示したものと比較して、電力測定部62をさらに設けた点で相違する。
電力測定部62(第2電力測定部)は、送信信号処理部20からの送信信号(無線周波数fT)の電力を測定し、測定した電力値P62(第2電力)を制御部30へ報告する。
制御部30では、本実施形態の無線通信装置の結合量として、電力測定部62における電力値P62に対する、電力測定部61における電力値P61の比(P61/P62)を算出する。制御部30で実行される制御内容は、図3に示したものと同一である。
【0037】
第1実施形態の無線基地局では、アンテナANT1の受信系の受信信号のうち送信周波数成分の電力値P61(図1参照)の絶対値のみで結合量を得ており、送信信号のレベルが考慮されない。そのため、例えば、制御部30に報告される電力値P61が一定であったならば、送信信号レベルにかかわらず制御結果は同じものとなってしまう。しかしながら、一般に、送信アンテナからの送信信号のレベルが大きければ、受信アンテナで吸収される信号のレベルも大きいと考えられるため、結合量の算出には送信電力を考慮した方が好ましい。かかる観点から、本実施形態の無線通信装置では、アンテナANT2による送信信号のレベルの大きさを考慮して、結合量を、電力値P62に対する電力値P61の比としている。
【0038】
以上説明したように、本実施形態の無線通信装置によれば、アンテナ間の結合量を制御するときに、さらに制御の精度を高めることができる。また、第1実施形態と同様、制御対象となる結合量は、デュプレクサ、電力測定部を含む簡易な構成で得られるため、アンテナ間の結合量の制御を効率的に行うことができる。
【0039】
なお、第1及び第2実施形態について説明してきたが、アンテナの構成は、図1や図4に示したような構成に限られない。上記の各実施形態に基づき、当業者であれば、3本以上の受信アンテナを有する場合についても容易に適用することができる。
【0040】
例えば、図5は、第1実施形態の変形例に係る無線通信装置のブロック図である。図5に示す無線通信装置では、図1の構成と比較してさらに受信用のアンテナANT3を備える。この無線通信装置では、デュプレクサ53は、アンテナANT3の受信系の受信信号から送信周波数成分を抽出し、電力測定部63は、その成分の電力値P63を測定する。この電力値P63は、アンテナANT1とアンテナANT3の間の結合量として制御部30に逐次報告される。報告された結合量に基づいて、アンテナANT1とアンテナANT3の間に設けられる可変リアクタンス回路41のリアクタンスが設定される。
【0041】
また、上述した各実施形態では、1本の受信アンテナ(アンテナANT1)と1本の送受信兼用アンテナ(アンテナANT2)を備えた無線通信装置について説明したが、このアンテナ構成に限られない。上述した各実施形態では、アンテナANT2の受信信号は、制御部30における制御に影響しないことは明らかである。よって、無線通信装置は、少なくとも1本の受信アンテナと少なくとも1本の送信アンテナからなるアンテナ構成を備えていればよい。
【0042】
(3)第3実施形態
以下、無線通信装置の第3実施形態について説明する。本実施形態の無線通信装置は、例えば、基地局と無線通信を行うユーザ端末(UE:User Equipment)である。この無線通信装置は、少なくとも1本の送信アンテナと、少なくとも2本の受信アンテナを備え、周波数分割複信方式(FDD)で通信を行う。例えば受信ダイバーシチを好適に行うためには、相手の通信装置(例えば基地局)から受信すべき所望信号に対して2本の受信アンテナ間の相関が低い(すなわち、相関値が小さい)ことが好ましい。かかる観点から、この無線通信装置ではアンテナ間の相関値を低減するものである。このとき、本実施形態の無線通信装置では、送信アンテナにおける送信信号の反射成分、及び、一方のアンテナから送信される信号のうち他方のアンテナで受信される信号成分が、アンテナ間の相関値を算出するときに利用される。
【0043】
ここで、少なくとも2本のアンテナを備えた無線通信装置において、2本のアンテナANT1,ANT2を入出力ポートとした2端子対回路網を想定した場合、その2端子対回路網をSパラメータで表現すると、以下のとおりである。
すなわち、
11:アンテナANT2の反射係数、
22:アンテナANT1の反射係数、
21:アンテナANT2からアンテナANT1への透過係数、
12:アンテナANT1からアンテナANT2への透過係数、
である。
ここで通常は、S21=S12である。よって、位相を考慮しない場合には、前述した近似式(式1)に基づき、2本のアンテナANT1,ANT2間の相関値ρは、以下の式2を用いて算出することができる。本実施形態では、以下の式2を用いて、2本のアンテナANT1,ANT2の間の相関値を算出する。
【0044】
【数2】

【0045】
また、本実施形態では、例えばアンテナANT1とアンテナANT2がほぼ同一の構造であり、かつ無線通信装置の基板上互いに対称に配置されている場合を想定する。この場合には、アンテナANT1とアンテナANT2の反射係数を同一とみなすことができる(S11=S22)。
【0046】
(3−1)無線通信装置の構成
本実施形態の無線通信装置の構成について、図6を参照して説明する。図6は、本実施形態の無線通信装置の構成を示すブロック図である。
図6に示す各構成のうち、図4に示した第1実施形態の構成と同一の構成部分については、詳しい説明を省略する。図6に示した無線通信装置は、図4に示したものと比較して、方向性結合器82と、電力測定部72と、制御部30の代わりに制御部31と備える点で相違する。
方向性結合器82は送信系に設けられており、送信信号のうちアンテナANT2から反射する信号を電力測定部72に与える。電力測定部72(第3電力測定部)は、この反射信号の電力値P72(第3電力)を測定して制御部31に報告する。
電力測定部62は、送信信号処理部20からの送信信号(無線周波数fT)の電力を測定し、測定した電力値P62を制御部31へ報告する。
電力測定部61は、アンテナANT1の受信系における受信信号のうち、無線周波数fTの成分(アンテナANT2の送信信号の成分)の電力を測定するために設けられる。電力測定部61により測定された電力値P61は、制御部31に報告される。
【0047】
制御部31は、電力測定部61,62,72からそれぞれ報告される電力値P61,P62,P72に基づいて相関値を算出する。このとき、制御部31は先ず、アンテナANT2の反射係数(S11)をP72/P62によって算出し、アンテナANT2からアンテナANT1への透過係数(S21)をP61/P62によって算出する。ここで、この実施形態では、S22=S11であり、かつS12=S21という前提であるため、すべてのSパラメータの値が算出されたことになる。Sパラメータの値が算出されると、制御部31は、上記式2に基づいて相関値ρを算出する。
【0048】
(3−2)制御内容
次に、本実施形態の無線通信装置の制御内容について、図7を参照して説明する。図7は、本実施形態の無線通信装置の制御内容を示すフローチャートである。このフローチャートは主として、制御部31によって実行される。
【0049】
このフローチャートは実質的に、ステップS22からステップS26までの各ステップが、無線通信装置の電源がOFFとなるまで(ステップS28)、一定時間の間隔で繰返し実行される。すなわち、前回の制御から一定時間が経過すると(ステップS20のYES)、ステップS22以降の制御が再び行われる。先ず、制御部31は、可変リアクタンス回路40で採りうる複数のリアクタンス、すなわち、調整可能なリアクタンスの範囲に対して相関値ρのサンプルを取得する(ステップS22)。本実施形態では、アンテナ間の相関値ρは、上述したように、電力値P61,P62,P72に基づいて算出される。制御部31は、例えば可変リアクタンス回路40が図2(a)の構成である場合、可変キャパシタVC42が採り得る複数のキャパシタンスの各々に対し、相関値ρ算出し、相関値の複数のサンプルを取得する。すべてのサンプルが取得されればステップS26へ進む(ステップS24)。
【0050】
ステップS26では、制御部31は、ステップS22で取得した複数の相関値のサンプルの中で、相関値が最小となるリアクタンス(図2(a)の例では、可変キャパシタVC42のキャパシタンス)を決定する。さらに、制御部31は、その決定したリアクタンスが得られるように、可変リアクタンス回路40を設定する。決定されたリアクタンスは、次の制御が開始されるまで維持される。
なお、図7のフローチャートにおいて、制御実行のインターバルとなる時間(ステップS20の一定時間)は、無線通信装置の使用環境の変化に素早く対応できる程度に短いことが好ましい。
【0051】
(3−3)無線通信装置の動作
相関値の制御に関する本実施形態の無線通信装置の動作を説明すると、以下のとおりである。
すなわち、この無線通信装置では、例えば基地局等の他の通信装置との間でFDDの通信を行っている。すなわち、この無線通信装置は、受信時には中心周波数が無線周波数fRの所望信号を受信し、送信時には中心周波数が無線周波数fTの無線信号を送信している。また、受信はアンテナANT1,ANT2の両アンテナによって行われ、送信はアンテナANT2によって行われる。このとき、この無線通信装置では、アンテナANT2における送信電力値(P72)、アンテナANT2の反射電力値(P62)、アンテナANT1の受信系の受信信号から抽出される送信周波数成分の電力値(P61)を取得する。これらの電力値(P61、P62、P72)に基づいて、制御部31は、アンテナ間の相関値ρを算出する。そのため、本実施形態の無線通信装置では、FDDの通信を行う場合に、デュプレクサ、電力測定部を含む簡易な構成で相関値を算出することができる。
【0052】
本実施形態の無線通信装置は、仮にアンテナ間のリアクタンスを調整しなかったとしたならば、ユーザの使用環境(例えば、車内又は車外での使用、ユーザによる無線通信装置の保持の仕方等)によってアンテナ間の相関値が大きくなる場合がある。この相関値を常時小さな値とするため、制御部31は、一定時間ごとに適応的に可変リアクタンス回路40を制御する。例えば、ユーザが無線通信装置としての携帯端末の保持態様を変化させた場合を想定する。このとき、本実施形態の制御(図7)は比較的短期間で繰返し行われるため、無線通信装置の保持態様が変化させられた後、直ちに図7の処理が新たに実行される。その結果、直ちに新たな保持態様に応じた最適なリアクタンスとなるように、可変リアクタンス回路40が設定し直される。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の無線通信装置によれば、少なくとも1本の送信アンテナと、少なくとも2本の受信アンテナを備え、FDDで通信を行う。このとき、送信系及び受信系から得られる電力値に基づいて、アンテナ間の相関値が算出される。そして、アンテナ間で採り得る複数のリアクタンスの各々に対する相関値のサンプルを一定時間ごとに取得し、最適なリアクタンスが適応的に決定される。
本実施形態の無線通信装置によれば、制御対象となる相関値は、デュプレクサ、電力測定部を含む簡易な構成で得られるため、アンテナ間の相関値の制御を効率的に行うことができる。
【0054】
(4)第4実施形態
以下、無線通信装置の第4実施形態について説明する。本実施形態の無線通信装置は、第3実施形態の無線基地局と同様、アンテナ間の相関値を効率的に低減するように構成されている。そして、第3実施形態のものと比較して、制御の精度を高めるべく構成されている。具体的には、本実施形態では、第3実施形態とは異なり、アンテナANT1の反射係数を算出するように構成されている。そのため、後述するように、アンテナANT1の受信系には、第3実施形態の構成と比較して、アンテナANT1の反射電力を測定するための局部発振器、電力測定部等が追加されている。
【0055】
本実施形態の無線通信装置の構成について、図8を参照して説明する。図8は、本実施形態の無線通信装置の構成を示すブロック図である。
図8に示す各構成のうち、図6に示した第3実施形態の構成と同一の構成部分については、同一符号を付して重複説明を省略する。図8に示した無線通信装置は、図6に示したものと比較して、電力測定部71、電力測定部73、方向性結合器81、局部発振器90をさらに設けた点で相違する。
【0056】
局部発振器90は、アンテナANT2の送信周波数fT(第2無線周波数)と同一の無線周波数の信号(第1無線信号)を生成して、デュプレクサ51を介してアンテナANT1に向けて送出する。電力測定部73(第4電力測定部)は、局部発振器90による生成される無線信号の電力を測定し、測定した電力値P73(第4電力)を制御部31へ報告する。また、局部発振器90から送出される無線信号に対するアンテナANT1からの反射信号が方向性結合器81によって取り出され、その反射電力が電力測定部71(第5電力測定部)によって測定される。測定された反射電力P71(第5電力)は、制御部31へ報告される。
【0057】
制御部31は、電力測定部61,62,72,71,73からそれぞれ報告される電力値P61,P62,P72,P71,P73に基づいて相関値を算出する。このとき、制御部31は先ず、アンテナANT2の反射係数(S11)をP72/P62によって算出し、アンテナANT2からアンテナANT1への透過係数(S21)をP61/P62によって算出する点は、第3実施形態と同様である。この実施形態ではさらに、制御部31は、
アンテナANT1の反射係数(S22)をP71/P73によって算出する。Sパラメータの値が算出されると、制御部31は、上記式2に基づいて相関値ρを算出する。
なお、第3実施形態と同様、相関値ρの算出は、S12=S21という前提で行われる。
【0058】
本実施形態において、制御部31の制御内容は、図7に示したものと同様である。
以上説明したように、この実施形態の無線通信装置では、アンテナANT1の受信系にアンテナANT1の反射電力を測定するための局部発振器、電力測定部等を設け、アンテナANT1の反射係数(S22)を算出するようにした。そのため、第3実施形態のものと比較して、相関値の算出精度が向上し、より適切なアンテナ間のリアクタンスを設定することができる。
【0059】
なお、上述した第3及び第4実施形態では、Sパラメータの位相を考慮しない式2に基づいて相関値ρを算出したが、位相を考慮して(すなわち、式1に基づいて)算出することで、算出される相関値ρの精度をさらに高めることもできる。
例えば、アンテナANT2からアンテナANT1への透過係数(S21)の位相を考慮する場合には、図6の構成(第3実施形態)を基に考えると、制御部31の中に図9に示す構成を設けることが好ましい。図9に示す例では、制御部31の中に、加算器35、電力測定部36、位相検出部37が設けられる。
図9において加算器35は、送信信号処理部20からの無線周波数fTの送信信号と、アンテナANT1の受信系の受信信号から抽出される送信周波数fT成分の信号(デュプレクサ51で抽出される信号)とを加算する。電力測定部36は、この加算信号の電力値P36を測定する。位相検出部37は、入力される電力値(P61、P62、P36)に基づいて、送信信号処理部20からの送信信号と、デュプレクサ51で抽出される信号との位相差を算出する。
ここで、位相差の算出原理は以下のとおりである。すなわち、送信信号処理部20からの送信信号をA、デュプレクサ51で抽出される信号をB、電力測定部36で加算される信号をA+Bとすると、各信号レベル(電圧)の絶対値の2乗値は電力とみなせる。そこで、位相検出部37では、各信号の2乗値(|A|2,|B|2,|A+B|2)を算出し、得られた2乗値から上記位相差θを算出する(|A+B|2-(|A|2+|B|2)=2Re[AB*]=2|A||B|e)。
アンテナANT2の反射係数(S11)の位相を考慮する場合についても同様である。
【0060】
(5)第5実施形態
以下、無線通信装置の第5実施形態について説明する。
上述した第1〜第4実施形態で示した構成はいずれも、制御部による制御対象として、可変リアクタンス回路40を備えている点で共通している。そこで、本実施形態において制御部は、アンテナ間の結合量及び相関値の双方が極力好ましい値となるように制御を行う。このとき、制御対象は、結合量又は相関値のいずれかではなく、結合量及び相関値に対してそれぞれ重み付けをして算出される指標値(後述する)である。
なお、本実施形態の無線通信装置の構成は、例えば図6や図8に示したものと同一であり、その制御内容のみが異なる。
【0061】
以下では、一例として図6に示した無線通信装置の構成を基に、本実施形態の無線通信装置の制御内容について、図10を参照して説明する。図10は、本実施形態の無線通信装置の制御内容を示すフローチャートである。このフローチャートは主として、図6に示す制御部31によって実行される。
【0062】
このフローチャートは実質的に、ステップS32からステップS38までの各ステップが、無線通信装置の電源がOFFとなるまで(ステップS40)、一定時間の間隔で繰返し実行される。すなわち、前回の制御から一定時間が経過すると(ステップS30のYES)、ステップS32以降の制御が再び行われる。先ず、制御部31は、可変リアクタンス回路40で採りうる複数のリアクタンス、すなわち、調整可能なリアクタンスの範囲に対して結合量及び相関値ρのサンプルを取得する(ステップS32)。
ここで、図6に示した構成では、アンテナ間の結合量は、電力測定部61から報告される電力値P61である。図6に示した構成では、アンテナ間の相関値ρは、上述したように、電力値P61,P62,P72に基づいて算出される。制御部31は、例えば可変リアクタンス回路40が図2(a)の構成である場合、可変キャパシタVC42が採り得る複数のキャパシタンスの各々に対し、結合量及び相関値ρ算出し、結合量及び相関値の複数のサンプルを取得する。
結合量及び相関値ρの各サンプルが取得される毎に、結合量及び相関値ρに対して所定の重み付けをした指標値が算出される(ステップS34)。例えば、結合量:相関値=7:3という重み付けを予め規定したならば、指標値は各サンプルについて、例えば結合量×0.7と相関値×0.3の和で表される。
すべてのサンプルについて指標値算出されればステップS38へ進む(ステップS36)。
【0063】
ステップS38では、制御部31は、ステップS34で算出した複数のサンプルの指標値の中で、指標値が最小となるリアクタンス(図2(a)の例では、可変キャパシタVC42のキャパシタンス)を決定する。さらに、制御部31は、その決定したリアクタンスが得られるように、可変リアクタンス回路40を設定する。決定されたリアクタンスは、次の制御が開始されるまで維持される。
なお、図10のフローチャートにおいて、制御実行のインターバルとなる時間(ステップS30の一定時間)は、無線通信装置の使用環境の変化に素早く対応できる程度に短いことが好ましい。
以上説明したように、本実施形態の無線通信装置によれば、結合量及び相関値に対してそれぞれ重み付けをして算出される指標値に基づいて制御が行われるので、アンテナ間の結合量及び相関値の双方が極力小さな値となる。また、重み付けの値の設定を可変としたならば、無線通信装置に対する要求仕様(例えば、結合性能を重視するか、又は相関性能を重視する等の仕様)に応じた適切な制御が可能となる。
【0064】
以上、本発明の様々な実施形態について詳細に説明したが、本発明の無線通信装置、信号処理方法は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのは勿論である。例えば、上述した各実施形態において、制御内容(図3、図7、図10)は簡単な例について開示したが、これに限られず、様々な適応アルゴリズムが適用可能である。
【0065】
以上の各実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0066】
(付記1)
第1無線周波数の所望信号を受信するために設けられる第1アンテナと、
第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の無線信号を送信するために設けられる第2アンテナと、を備え、周波数分割複信方式にて無線通信を行う無線通信装置であって、
第1アンテナで受信した無線信号の内、第2無線周波数の信号成分の第1電力を測定する第1電力測定部と、
前記第1電力に基づいて、第1アンテナと第2アンテナの結合量が小さくなるように、第1アンテナと第2アンテナの間のリアクタンスを制御する制御部と、
を備えた無線通信装置。(1)
【0067】
(付記2)
第2アンテナの送信信号の電力として第2電力を測定する第2電力測定部、を備え、
前記制御部は、前記第1電力と前記第2電力の比に基づいて、前記リアクタンスを制御する、
付記1に記載された無線通信装置。(2)
【0068】
(付記3)
第1無線周波数の所望信号を受信するために設けられる第1アンテナと、
第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の無線信号を送信するために設けられる第2アンテナと、を備え、周波数分割複信方式にて無線通信を行う無線通信装置であって、
第1アンテナで受信した無線信号の内、第2無線周波数の信号成分の第1電力を測定する第1電力測定部と、
第2アンテナの送信信号の電力として第2電力を測定する第2電力測定部と、
第2アンテナの送信信号による第2アンテナからの反射成分の電力として第3電力を測定する第3電力測定部と、
前記第1電力、第2電力及び第3電力に基づいて、第1アンテナと第2アンテナの相関値が小さくなるように、第1アンテナと第2アンテナの間のリアクタンスを制御する制御部と、
を備えた無線通信装置。(3)
【0069】
(付記4)
第1アンテナに向かう前記第2無線周波数の第1無線信号を生成する局部発振器と、
前記第1無線信号の電力として第4電力を測定する第4電力測定部と、
前記第1無線信号による第1アンテナからの反射成分の電力として第5電力を測定する第5電力測定部と、
さらに備え、
前記制御部は、前記第1電力、第2電力、第3電力、第4電力及び第5電力に基づいて、第1アンテナと第2アンテナの相関値が小さくなるように、第1アンテナと第2アンテナの間のリアクタンスを制御する、
付記3に記載された無線通信装置。(4)
【0070】
(付記5)
第1無線周波数の所望信号を受信するために設けられる第1アンテナと、
第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の無線信号を送信するために設けられる第2アンテナと、を備え、周波数分割複信方式にて無線通信を行う無線通信装置であって、
第1アンテナで受信した無線信号の内、第2無線周波数の信号成分の第1電力を測定する第1電力測定部と、
第2アンテナの送信信号の電力として第2電力を測定する第2電力測定部と、
第2アンテナの送信信号による第2アンテナからの反射成分の電力として第3電力を測定する第3電力測定部と、
前記第1電力と前記第2電力の比に基づいて第1アンテナと第2アンテナの結合量を算出し、前記第1電力、第2電力及び第3電力に基づいて、第1アンテナと第2アンテナの相関値を算出し、算出された結合量及び相関値に対して所定の重み付けをもって得られる指標値が小さくなるように、第1アンテナと第2アンテナの間のリアクタンスを制御する制御部と、
を備えた無線通信装置。
【0071】
(付記6)
第1アンテナに向かう前記第2無線周波数の第1無線信号を生成する局部発振器と、
前記第1無線信号の電力として第4電力を測定する第4電力測定部と、
前記第1無線信号による第1アンテナからの反射成分の電力として第5電力を測定する第5電力測定部と、
さらに備え、
前記制御部は、前記第1電力、第2電力、第3電力、第4電力及び第5電力に基づいて、第1アンテナと第2アンテナの相関値を算出する、
付記5に記載された無線通信装置。
【0072】
(付記7)
第1無線周波数の所望信号を受信するために設けられる第1アンテナと、第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の無線信号を送信するために設けられる第2アンテナと、を備え、周波数分割複信方式にて無線通信を行う無線通信装置、における信号処理方法であって、
第1アンテナと第2アンテナの間に設けられる可変リアクタンス素子が採りうる複数のリアクタンスに対して、第1アンテナで受信した無線信号の内、第2無線周波数の信号成分の第1電力を測定し、
前記複数のリアクタンスの各々に対して、前記第1電力に基づき、第1アンテナと第2アンテナの結合量を算出し、
前記複数のリアクタンスの中から、算出した前記結合量が最小となるリアクタンスを、前記可変リアクタンス素子のリアクタンスとして設定する、
信号処理方法。(5)
【0073】
(付記8)
第1アンテナと第2アンテナの間に設けられる可変リアクタンス素子が採りうる複数のリアクタンスに対して、第2アンテナの送信信号の電力として第2電力を測定し、
前記複数のリアクタンスの各々に対して、前記第1電力と前記第2電力の比に基づいて、第1アンテナと第2アンテナの結合量を算出すること、
をさらに備えた、付記7に記載された信号処理方法。
【0074】
(付記9)
第1無線周波数の所望信号を受信するために設けられる第1アンテナと、第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の無線信号を送信するために設けられる第2アンテナと、を備え、周波数分割複信方式にて無線通信を行う無線通信装置、における信号処理方法であって、
第1アンテナと第2アンテナの間に設けられる可変リアクタンス素子が採りうる複数のリアクタンスに対して、第1アンテナで受信した無線信号の内、第2無線周波数の信号成分の第1電力と、第2アンテナの送信信号の電力としての第2電力と、第2アンテナの送信信号による第2アンテナからの反射成分の電力としての第3電力を測定し、
前記複数のリアクタンスの各々に対して、前記第1電力、第2電力及び第3電力に基づき、第1アンテナと第2アンテナの相関値を算出し、
前記複数のリアクタンスの中から、算出した前記相関値が最小となるリアクタンスを、前記可変リアクタンス素子のリアクタンスとして設定する、
信号処理方法。(6)
【0075】
(付記10)
第1アンテナと第2アンテナの間に設けられる可変リアクタンス素子が採りうる複数のリアクタンスに対して、無線通信装置の局部発振器から第1アンテナに向けて生成される前記第2無線周波数の第1無線信号、の電力としての第4電力と、前記第1無線信号による第1アンテナからの反射成分の電力としての第5電力と、を測定し、
前記第1電力、第2電力、第3電力、第4電力及び第5電力に基づいて、第1アンテナと第2アンテナの相関値を算出すること、
をさらに備えた、付記9に記載された信号処理方法。
【0076】
(付記11)
第1無線周波数の所望信号を受信するために設けられる第1アンテナと、第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の無線信号を送信するために設けられる第2アンテナと、を備え、周波数分割複信方式にて無線通信を行う無線通信装置、における信号処理方法であって、
第1アンテナと第2アンテナの間に設けられる可変リアクタンス素子が採りうる複数のリアクタンスに対して、第1アンテナで受信した無線信号の内、第2無線周波数の信号成分の第1電力と、第2アンテナの送信信号の電力としての第2電力と、第2アンテナの送信信号による第2アンテナからの反射成分の電力としての第3電力を測定し、
前記複数のリアクタンスに対して、前記第1電力と前記第2電力の比に基づき、第1アンテナと第2アンテナの結合量を算出し、
前記複数のリアクタンスに対して、前記第1電力、第2電力及び第3電力に基づき、第1アンテナと第2アンテナの相関値を算出し、
前記複数のリアクタンスに対して、算出された結合量及び相関値に対して所定の重み付けをもって指標値を算出し、
前記複数のリアクタンスの中から、算出した前記指標値が最小となるリアクタンスを、前記可変リアクタンス素子のリアクタンスとして設定する、
信号処理方法。
【符号の説明】
【0077】
ANT1,ANT2…アンテナ
10…受信信号処理部
20…送信信号処理部
30,31…制御部
40…可変リアクタンス回路
51,52…デュプレクサ
61,62,63,71,72,73…電力測定部
81,82…方向性結合器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1無線周波数の所望信号を受信するために設けられる第1アンテナと、
第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の無線信号を送信するために設けられる第2アンテナと、を備え、周波数分割複信方式にて無線通信を行う無線通信装置であって、
第1アンテナで受信した無線信号の内、第2無線周波数の信号成分の第1電力を測定する第1電力測定部と、
前記第1電力に基づいて、第1アンテナと第2アンテナの結合量が小さくなるように、第1アンテナと第2アンテナの間のリアクタンスを制御する制御部と、
を備えた無線通信装置。
【請求項2】
第2アンテナの送信信号の電力として第2電力を測定する第2電力測定部、を備え、
前記制御部は、前記第1電力と前記第2電力の比に基づいて、前記リアクタンスを制御する、
請求項1に記載された無線通信装置。
【請求項3】
第1無線周波数の所望信号を受信するために設けられる第1アンテナと、
第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の無線信号を送信するために設けられる第2アンテナと、を備え、周波数分割複信方式にて無線通信を行う無線通信装置であって、
第1アンテナで受信した無線信号の内、第2無線周波数の信号成分の第1電力を測定する第1電力測定部と、
第2アンテナの送信信号の電力として第2電力を測定する第2電力測定部と、
第2アンテナの送信信号による第2アンテナからの反射成分の電力として第3電力を測定する第3電力測定部と、
前記第1電力、第2電力及び第3電力に基づいて、第1アンテナと第2アンテナの相関値が小さくなるように、第1アンテナと第2アンテナの間のリアクタンスを制御する制御部と、
を備えた無線通信装置。
【請求項4】
第1アンテナに向かう前記第2無線周波数の第1無線信号を生成する局部発振器と、
前記第1無線信号の電力として第4電力を測定する第4電力測定部と、
前記第1無線信号による第1アンテナからの反射成分の電力として第5電力を測定する第5電力測定部と、
さらに備え、
前記制御部は、前記第1電力、第2電力、第3電力、第4電力及び第5電力に基づいて、第1アンテナと第2アンテナの相関値が小さくなるように、第1アンテナと第2アンテナの間のリアクタンスを制御する、
請求項3に記載された無線通信装置。
【請求項5】
第1無線周波数の所望信号を受信するために設けられる第1アンテナと、第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の無線信号を送信するために設けられる第2アンテナと、を備え、周波数分割複信方式にて無線通信を行う無線通信装置、における信号処理方法であって、
第1アンテナと第2アンテナの間に設けられる可変リアクタンス素子が採りうる複数のリアクタンスに対して、第1アンテナで受信した無線信号の内、第2無線周波数の信号成分の第1電力を測定し、
前記複数のリアクタンスの各々に対して、前記第1電力に基づき、第1アンテナと第2アンテナの結合量を算出し、
前記複数のリアクタンスの中から、算出した前記結合量が最小となるリアクタンスを、前記可変リアクタンス素子のリアクタンスとして設定する、
信号処理方法。
【請求項6】
第1無線周波数の所望信号を受信するために設けられる第1アンテナと、第1無線周波数とは異なる第2無線周波数の無線信号を送信するために設けられる第2アンテナと、を備え、周波数分割複信方式にて無線通信を行う無線通信装置、における信号処理方法であって、
第1アンテナと第2アンテナの間に設けられる可変リアクタンス素子が採りうる複数のリアクタンスに対して、第1アンテナで受信した無線信号の内、第2無線周波数の信号成分の第1電力と、第2アンテナの送信信号の電力としての第2電力と、第2アンテナの送信信号による第2アンテナからの反射成分の電力としての第3電力を測定し、
前記複数のリアクタンスの各々に対して、前記第1電力、第2電力及び第3電力に基づき、第1アンテナと第2アンテナの相関値を算出し、
前記複数のリアクタンスの中から、算出した前記相関値が最小となるリアクタンスを、前記可変リアクタンス素子のリアクタンスとして設定する、
信号処理方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−109440(P2011−109440A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262672(P2009−262672)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】