説明

無線通信装置及び中継方法

【課題】消費したリソースを無駄にすることなく、また、誤り訂正による信頼性の増加を維持しながら柔軟に誤り訂正が可能となる無線通信装置及び中継方法を提供する。
【解決手段】無線通信装置(中継局)12は、送信局から送信された信号を受信する受信アンテナ41と、受信した信号を高周波増幅する受信RF部42と、受信した信号に誤り訂正復号処理を行い、軟判定値と復号ビットを出力する誤り訂正復号部43と、誤り訂正復号処理後の信号に硬判定処理を行い、硬判定処理した信号の誤り検出を行う誤り検出部44と、軟判定値と復号ビットを切替える切替え部45と、抽出した軟判定値を再符号化する再符号化部46と、再符号化した軟判定値を変調する送信RF部47と、信号を受信局に送信する送信アンテナ48とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信局から送信された信号を受信局へ中継する機能を備えた無線通信装置及び中継方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図12は、従来の無線通信装置(以下、中継局またはリピータと呼ぶ)123の概略構成を示す。従来の中継局123は、図示しない送信局から電波を受信する受信アンテナ41と、受信した信号を高周波増幅する受信RF部42と、伝播路で生じた信号の誤りを訂正して復号する誤り訂正復号部43と、信号の誤りを「0」,「1」で判定する硬判定部121,122と、硬判定処理した信号の誤りを検出する誤り検出部44と、硬判定部121,122の出力を切替える切替え部45と、切替え部45から出力された信号を再符号化する再符号化部46と、再符号化された信号を高周波増幅する送信RF部47と、高周波信号を図示しない受信局へ送信する送信アンテナ48とを有する。
【0003】
このような従来のリピータ123は、受信した信号に対して誤り訂正復号処理(ターボ符号、畳み込み符号、LDPC符号(low density parity check codes:低密度パリティ検査符号)など)を実施し、誤り訂正復号後の硬判定ビット(受信した信号に対して「硬判定」での誤り訂正の結果得られたビット列)に対して誤り検出処理を実施する。
【0004】
このときに誤りが検出されなかった場合は、誤り訂正復号後のビット(硬判定ビット)を再度誤り訂正符号化して中継送信する。一方、誤りが検出された場合は、中継送信を行わないか、あるいは誤り訂正復号前の硬判定ビットを中継送信する。
【0005】
なお、誤り訂正復号処理後の信号は「1」または「−1」の値になるが、その値を例えば、「−1」→「1」,「1」→「0」に変換して「0」,「1」のビット系列に変換したものを誤り訂正復号後ビットと呼び、この誤り訂正復号後ビットに対して誤り検出処理を実施する(例えば、非特許文献参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】単一アンテナ端末間マルチホップ通信におけるSTBCを利用した協力中継方式:信学技報 TECHNICAL REPORT OF IEICE. WBS2003-149, A-P2003-342, RCS2003-365 MoMuC2003-143, MW2003-311 (2004-03)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の方式にあっては、リピータにおいて誤りが検出された場合には最終受信者における誤り率特性が劣化するという事情がある。また、誤りが検出されたときにリピータ中継送信を行わない場合には、最終受信者は信号をいつまでたっても受信することができないので誤り率が非常に劣化する。
【0008】
一方、誤りが検出されたときに誤り訂正復号前の硬判定ビットを中継送信する場合には、中継局において発生した判定誤りが最終受信者まで伝播するので、最終受信者の誤り率特性が劣化する。
【0009】
すなわち、途中の中継装置で「硬判定」をすると、すべての情報を「0」または「1」にするため、同じ「1」でも、「0.9」もあれば、「0.51」もあるので、その情報を削除することになる。これが累積されて最終受信者の誤り率特性劣化につながる。
【0010】
また、従来の方式にあっては、リピータにおいて誤りが検出された場合に、リピータにおける誤り訂正復号処理が無駄になるというという事情がある。なぜならば、誤り訂正復号処理を繰り返し行った後硬判定ビットに誤りが存在する場合、信号が中継されない為、誤り訂正復号処理により「中継局で消費したリソース」や「信頼性の増加」が無駄になってしまうからである。
【0011】
誤り訂正復号処理は、処理において膨大な規模の繰り返し演算を必要とするので、中継局において様々なリソース(電力、CPUパワーなど)を消費する。このため、中継送信を行わないと、誤り訂正復号のために費やしたリソースが無駄になる。
【0012】
また、誤り訂正復号処理は、受信した信号の信頼度を向上させて誤りを減らす(訂正する)という処理を行うものである。誤り訂正処理後に1ビットでも誤りが残存すると中継送信しないという従来方式では、せっかく向上させた信頼度が無駄になってしまう。
【0013】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、消費したリソースを無駄にすることなく、また、誤り訂正による信頼性の増加を維持しながら柔軟に誤り訂正が可能となる無線通信装置及び中継方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の無線通信装置は、受信した信号を誤り訂正復号処理し、誤り訂正復号処理後信号を再符号化した軟判定値を中継信号として送信する。ここで、硬判定値とは,ビット(0,1)のような判定値のことであり、無線ではビットを「1」,「−1」として扱うので、無線機における硬判定値とは、「1」または「−1」のいずれかの値になる。一方、軟判定値とは、「1」,「−1」ではなく、中間の値(例えば0.55など)を持つ判定値のことである。
【0015】
また、本発明の無線通信装置は、誤り訂正復号後の硬判定ビットに誤りを検出した場合に、誤り訂正復号処理後信号を再符号化した軟判定値を中継信号として中継送信を行う。この場合、硬判定ビットに誤りがない場合は軟判定値を送るのは無駄なので、その場合は軟判定値を送らない。ただし、軟判定の判定段階を減らした特殊解(2値)を硬判定と位置づけるのであれば、その軟判定値を送ることも可能である。
【0016】
本発明の無線通信装置によれば、誤り訂正復号処理後信号の信頼性が、誤り訂正復号処理前の硬判定ビットよりも高くなるので、従来方式に比較して信頼性の高い中継信号を送信することができる。これにより最終受信者が信号を正しく受信できる可能性を高めることができる。一方、軟判定値をそのまま継続して使えるため全体の計算時間を短縮することができる。
【0017】
また、本発明の無線通信装置は、誤り訂正復号後の硬判定ビットに誤りを検出した場合に、誤り訂正復号処理中の信号から軟判定値を抽出しその軟判定値を再符号化した信号を中継信号として中継送信を行う。この場合、誤りが検出されなかった場合には、従来どおり誤り訂正復号後ビットを再符号化して送信する。誤りがない信号を再符号化したものはビットの信頼性が最も高い中継送信時点で完全な信号となる。
【0018】
本発明の無線通信装置によれば、誤り訂正復号処理によって信頼性を向上させた信号を送信できるので、受信局が信号を正しく受信できる可能性を高めることができる。また、中継局で消費したリソースを有効に活用することができる。中継局で行った処理は「信頼性の増加」という効果を生むので、中継局で消費したリソースが無駄にならない。
【0019】
また、本発明の無線通信装置は、受信局の誤り訂正復号処理能力に応じてイタレーション数を変更可能であり、受信局の誤り訂正復号処理能力が高い場合にイタレーション数を減らし、受信局の誤り訂正復号処理能力が低い場合にイタレーション数を増やす。
【0020】
中継局でのイタレーション(繰り返し計算)数が大きいと中継局における遅延は大きくなる。そのため中継局におけるイタレーション数はできるだけ小さくしたい。そこで、最終的な品質を保ったままで中継遅延を少なくする。これにより、最終受信者の誤り訂正能力が高ければ、中継局のイタレーション数を減らしても最終的な品質(誤り率特性)は高く保てるので、品質を保ったままで中継遅延を少なくすることができる。
【0021】
また、本発明の無線通信装置によれば、システム全体のスループットを向上することができる。すなわち、リピータの誤り訂正復号処理の繰り返し数を少なくすることにより、1つのリピータが複数の受信者に対する信号を中継することが可能となるため、システム全体でのスループットを向上することができる。
【0022】
また、本発明の無線通信装置は、送信局から送信された信号を受信局へ中継する機能を備えた無線通信装置であって、前記送信局から信号を受信する手段と、受信した信号の誤り訂正復号処理を行う手段と、誤り訂正復号処理後の信号に硬判定処理を行う手段と、硬判定処理した信号の誤り検出を行う手段と、硬判定処理した信号に誤りが存在する場合に、誤り訂正復号処理途中の信号から軟判定値を抽出する手段と、抽出した軟判定値を再符号化する手段と、再符号化した軟判定値を送信する手段と、を備える。
【0023】
また、本発明の無線通信装置は、前記軟判定値を抽出する手段が、イタレーションの回数に基づいて前記軟判定値を抽出する。また、本発明の無線通信装置は、前記軟判定値を抽出する手段が、イタレーションの時間に基づいて前記軟判定値を抽出する。
【0024】
また、本発明の無線通信装置は、前記誤り訂正復号処理を行う手段が、受信した信号のビット尤度を算出する手段と、受信した信号を繰り返し処理して誤りを訂正する繰り返し処理手段と、繰り返し処理の途中の信号におけるビット尤度を軟判定値に変換する手段と、を備える。
【0025】
また、本発明の無線通信装置は、前記繰り返し処理手段が、受信した信号をデコードする第1のデコーダーと、前記第1のデコーダーの出力データを並べ替えるインタリーバと、前記インタリーバの出力をデコードする第2のデコーダーと、前記第2のデコーダーの出力データを並べ替えて、前記第1のデコーダーに戻すデインタリーバと、を備える。
【0026】
また、本発明の無線通信装置は、前記受信局における誤り訂正復号処理能力に応じて、イタレーション数を決定する手段を備える。また、本発明の無線通信装置は、前記イタレーション数を決定する手段が、前記受信局から送信されるイタレーション数指示情報に基づき、前記受信局の誤り訂正復号処理能力が高い場合には、イタレーション数を減らし、前記受信局の誤り訂正復号処理能力が低い場合には、イタレーション数を増やす。
【0027】
また、本発明の中継方法は、送信局から送信された信号を受信局へ中継する中継方法であって、前記送信局から信号を受信する受信工程と、前記受信した信号の誤り訂正復号処理を行い、誤り訂正復号処理後の信号の硬判定処理を行う復号工程と、前記硬判定処理した信号の誤り検出を行う誤り検出工程と、前記硬判定処理した信号に誤りが存在する場合に、誤り訂正復号処理途中の信号から軟判定値を抽出する軟判定抽出工程と、前記抽出した軟判定値を再符号化する再符号化工程と、前記再符号化した軟判定値を送信する送信工程と、前記受信した信号の要求条件に応じて、中継遅延を制御する制御工程と、を備える。
【発明の効果】
【0028】
本発明の無線通信装置及び中継方法によれば、従来、誤り訂正復号処理を行って信号の信頼度を高めたにもかかわらず、誤り訂正復号後の硬判定ビットに1ビットでも誤りが存在してしまうと、誤り訂正復号処理による信頼性の増加が無駄になってしまうという問題を取り除くことができる。
【0029】
本発明により、リピータにおいて誤り訂正復号処理によるデータの信頼性向上効果を最終受信者は享受できるようになるので、たとえリピータにおいて誤り訂正復号処理後に誤りが検出されたとしても、最終受信者における誤り率特性を改善することができる。
【0030】
また、最終受信者における誤り率の要求条件を一定にするという条件で従来方式と比較すれば、最終受信者における誤り訂正復号処理の負荷を従来よりも減らすことができる。その理由は、中継局においてビットの信頼度を高めているので、最終受信者が所望の誤り率を満たすのに必要な誤り訂正復号処理が得なければならないビットの信頼性のゲインを従来に比較して小さくできるからである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態を説明するための無線通信装置(中継局)のシステム構成図
【図2】送信局11の概略ブロック図
【図3】最終受信局13の概略ブロック図
【図4】本実施形態の無線通信装置(中継局)12の概略ブロック図
【図5】本実施形態の無線通信装置における誤り訂正復号部43の概略ブロック図
【図6】誤り訂正復号繰り返しによりデータ信頼性が増加する説明図
【図7】軟判定値と硬判定値の比較
【図8】中継局の誤り訂正復号後信号に誤りが存在する場合のデータの信頼性に関する従来方式と本実施形態の比較
【図9】本発明の実施形態2の無線通信装置(中継局)のシステム構成図
【図10】本実施形態の無線通信装置(中継局)103の概略ブロック図
【図11】本実施形態におけるイタレーション数の配分の説明図
【図12】従来の中継局のブロック図
【発明を実施するための形態】
【0032】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態を説明するための無線通信装置(中継局)のシステム構成図を示す。送信局11から送信された信号は無線通信装置(中継局)12で中継され、最終受信局13へ伝達される。
【0033】
図2は、送信局11の概略ブロック図を示す。送信データは、送信局11の誤り訂正符号化部21において誤り訂正符号化が行われ、誤り訂正符号化後の信号が送信RF部22で変調され、送信アンテナ23から中継局へ送信される。
【0034】
図3は、最終受信局13の概略ブロック図を示す。中継局から送信された電波は受信アンテナ31で受信され、受信RF部32で復調が行われて誤り訂正復号部33に入力される。誤り訂正復号部33では受信信号に対して誤り訂正処理を行って、誤り訂正処理後の信号を硬判定部34において硬判定して「−1」,「1」の情報に変換したあとビット判定して「0」,「1」のデータを受信データとして出力する。
【0035】
図4は、本実施形態の無線通信装置(中継局)12の概略ブロック図を示す。無線通信装置(中継局)12は、送信局から送信された信号を受信する受信アンテナ41と、受信した信号を高周波増幅する受信RF部42と、受信した信号に誤り訂正復号処理を行い、軟判定値と復号ビットを出力する誤り訂正復号部43と、誤り訂正復号処理後の信号に硬判定処理を行い、硬判定処理した信号の誤り検出を行う誤り検出部44と、軟判定値と復号ビットを切替える切替え部45と、抽出した軟判定値を再符号化する再符号化部46と、再符号化した軟判定値を変調する送信RF部47と、信号を受信局に送信する送信アンテナ48とを備える。
【0036】
本実施形態の無線通信装置では、受信信号に対して誤り訂正復号処理を行い、復号後信号に硬判定処理を行って硬判定ビットを生成して誤り検出を行う(誤り検出ではCRC(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)などを使用できる)。硬判定信号に誤りが存在しなければ、誤り訂正復号後の硬判定ビットを再符号化し、送信RF部47で変調して送信する。硬判定信号に誤りが存在する場合には、誤り訂正復号処理後の信号から軟判定値を抽出して、軟判定値を再符号化して送信RF部47で変調して送信する。
【0037】
図5は、本実施形態の無線通信装置における誤り訂正復号部43の概略ブロック図を示す。このブロック図はターボ符号の復号処理のブロック図を示したものである。誤り訂正復号部43は、データの正しさの確率であるビット尤度(likelihood)を算出するビット尤度算出部51と、信号をデコードするデコーダー1(52)と、入力された連続データを異なるブロックに分割して再配置するインタリーバ54と、インタリーバ54の出力をさらにデコードするデコーダー2(55)と、再配置されたデータを元の順序に戻すデインタリーバ53と、デコーダー2(55)の出力から軟判定値を抽出して出力する尤度・軟判定値変換部56と、デコーダー2(55)の出力により硬判定を行い、復号ビットを出力する硬判定部57とを備える。
【0038】
本実施形態の誤り訂正復号部43におけるターボ符号の復号では、受信信号を繰り返し処理して誤りを訂正していく。まず受信信号をデコーダー1(52)でデコードし、インタリーバ54でデータを並べ替えた後、デコーダー2(55)でデコードする。さらにデインタリーバした信号を再びデコーダー1(52)でデコードする。この繰り返し(イタレーション:Iteration)を重ねることによって、データの信頼性が向上する様子を図6に示す。ターボ符号の場合には通常5回程度のイタレーションを実施する。
【0039】
このようにイタレーションとは繰り返し処理のことであり、計算を繰り返すことによって信号の信頼性を高めることが可能となる。イタレーション回数を増やすほど信頼性は向上していくが誤り訂正復号処理に時間がかかることになるので、通常最大繰り返し数を決めている。一般的には5回程度イタレーションを実施するとそれ以降のイタレーションでは信頼性の増加の効果が減ってくるので、最大5回程度の繰り返しが一般的である。
【0040】
図7は、軟判定値と硬判定値の比較を示す。硬判定値は値が「0」より大きければ「+1」、「0」以下ならば「−1」と判定するのに対して,軟判定値は小数点以下の値をとる。
【0041】
図8は、中継局の誤り訂正復号後信号に誤りが存在する場合のデータの信頼性に関する従来方式と本実施形態の比較を示す。送信局から信号が送信された時点では、送信信号に誤りが存在しないので信号の信頼性が高いが、送信局から中継局まで無線で信号が伝達されるにしたがって、伝播路で信頼性が劣化する。
【0042】
本実施形態の中継局は、受信した信号に誤りが存在する場合には、誤り訂正復号後の信号の軟判定値を再符号化して送信するので、中継局でデータの信頼性を向上させた信号を中継送信することが可能である。
【0043】
一方、従来方式の中継局は、受信した信号に誤りが存在する場合には、誤り訂正復号前の信号の硬判定値を再符号化して送信するので、中継局ではデータの信頼性を向上させることができない。
【0044】
本実施形態の中継局を使用した場合には、最終受信局の誤り訂正復号処理によって受信信号の信頼度を高められるので誤りをなくすることができるのに対して、従来方式の中継局を使用した場合には、最終受信局の誤り訂正復号処理を行っても誤りを完全に除去できるまでデータの信頼性を回復できないので、誤りが残存することになる。
【0045】
上記に示すように、本実施形態によれば、従来方式に比較して最終受信局における受信信号の品質を高めることが可能となるので、最終受信局における誤り率特性を改善することができる。
【0046】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施形態2の無線通信装置(中継局)のシステム構成図を示す。送信局11から送信されたデータチャネルは無線通信装置(中継局)103で中継され、最終受信局13へ伝達される。一方、最終受信局13から中継局103へイタレーション数指示情報が送信される。
【0047】
図10は、本実施形態の無線通信装置(中継局)103の概略ブロック図を示す。無線通信装置(中継局)103は、送信局から送信された信号を受信する受信アンテナ41と、受信した信号を高周波増幅する受信RF部42と、受信した信号からイタレーション数指示情報を検出するイタレーション数指示情報検出部101と、イタレーション数を決定するイタレーション数決定部102と、受信した信号に決定したイタレーション回数の誤り訂正復号処理を行い、軟判定値と復号ビットを出力する誤り訂正復号部43と、誤り訂正復号処理後の信号に硬判定処理を行い、硬判定処理した信号の誤り検出を行う誤り検出部44と、軟判定値と復号ビットを切替える切替え部45と、抽出した軟判定値を再符号化する再符号化部46と、再符号化した軟判定値を変調する送信RF部47と、信号を受信局に送信する送信アンテナ48とを備える。
【0048】
本実施形態の無線通信装置(中継局)103では、最終受信局13からイタレーション数指示情報が通知されるので、指示された回数で誤り訂正復号処理を行うようにイタレーション数を制御する。
【0049】
図11は、本実施形態におけるイタレーション数の配分を示す。受信局の処理能力が高い場合、つまり高速に誤り訂正復号処理を実施できる場合には、受信局でのイタレーション数が多い。一方、受信局の処理能力が低い場合には、受信局でのイタレーション数が少なくなる。
【0050】
本実施形態では、受信局の処理能力に応じて中継局のイタレーション数を制御する。図11に示すように、例えば、受信局の処理能力が高いとき(8回イタレーション可能なとき)には中継局におけるイタレーション回数を2回とするように受信局から中継局に対してイタレーション数指示情報を送信する。
【0051】
また、受信局の処理能力が中程度のとき(5回イタレーション可能なとき)には中継局におけるイタレーション回数を5回とし、受信局の処理能力が低いとき(2回イタレーション可能なとき)には中継局におけるイタレーション回数を8回とするように受信局から中継局に対してイタレーション数指示情報を送信する。これにより、最終的な受信局における品質を保ったままで中継局における中継遅延を少なくすることが可能となる。
【0052】
また、本実施形態の無線通信装置では、処理時間と端末の処理能力(CPU速度等のポテンシャルや負荷を考慮)し、中継局における処理時間を複数の中継処理に配分することにより中継できるデータの数を増やすことも可能である。例えば、従来方式において繰り返し数8で1端末のみ中継していた場合に、繰り返し数2で4端末を中継することにより、中継できるデータの数を増やすことができる。
【0053】
以上説明した無線通信装置によれば、従来は誤り訂正復号処理を繰り返し行った後硬判定ビットに誤りが存在する場合、信号が中継されない為、誤り訂正復号処理による信頼性の増加が無駄になってしまっていたのに対し、誤り訂正復号処理途中の信号から抽出した軟判定値を送信することにより、硬判定ビットに誤りが存在する場合であっても、受信局では誤り訂正復号処理による信頼性向上効果を享受できる為、受信局における誤り率特性を改善することができる。
【0054】
また、従来は、誤り訂正復号処理後の硬判定ビットに誤りが存在する場合誤り訂正復号処理前の硬判定ビットを中継していた為、発生した判定誤りが受信局まで伝播し、受信局での誤り率特性が劣化していたのに対し、上記構成によれば、硬判定処理した信号に誤りが存在する場合に、誤り訂正復号処理途中の信号から抽出した軟判定値を再符号化して送信することにより、誤り訂正復号処理によって信頼性を向上させた信号を送信できる為、受信局が信号を正しく受信できる可能性を高めることができる。
【0055】
なお、本実施の形態における無線受信装置は、実施している処理に応じてイタレーション回数を適応的に中継局に通知してもよい。たとえば、受信局で高精細度画像の受信を行っているような場合には、受信局における処理の負荷が大きいので、中継局における誤り訂正処理のイタレーション回数を増加させるように通知する。
【0056】
また、受信する信号の品質に対する要求条件に応じて中継局におけるイタレーション回数を制御してもよい、たとえば、処理遅延を非常に短くしたいが、誤り率は低くてもよいVoIP(Voice Over IP)などを受信するときには、中継局におけるイタレーション数を少なくして、中継遅延を小さくする。
【0057】
また、複数の受信局が互いに中継局のリソースを融通しあうように受信局同士で通信を行って中継局におけるイタレーションの回数を融通しあってもよい。たとえば、受信局1は中継局でイタレーション回数2とし、受信局2は中継局でイタレーション回数6としてもよい。これにより受信局が中継局において処理してほしいイタレーションを支持できるので、中継局のリソースを無駄なく使用することが可能となる。
【0058】
また、逆に中継局から受信局に対して処理可能なイタレーション回数を通知してもよい。受信局は中継局から通知されたイタレーション回数の範囲で、中継局に処理してほしいイタレーション回数を通知し、中継局は受信局から指示されたイタレーション回数で中継処理を行う。これにより、中継局のリソースを無駄なく使用することが可能となる。
【0059】
なお、中継局におけるイタレーション処理は移動局に比較して多くするように移動局から制御してもよい。信号の中継においては前段で発生する誤りが少ないほど、システム全体としての誤り率低減の効果が高くなるので、全体として同じイタレーション回数であれば、移動局におけるイタレーション回数よりも中継局におけるイタレーション回数を増やしたほうがシステム全体としての性能が向上する。
【0060】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2005年3月3日出願の日本特許出願(特願2005−059245)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、「硬判定値」ではなく「軟判定値」を伝播させることにより、消費したリソースを無駄にすることなく、また、誤り訂正による信頼性の増加を維持しながら柔軟に誤り訂正が可能となる効果を有し、送信局から送信された信号を受信局へ中継する機能を備えた無線通信装置等に有用である。
【符号の説明】
【0062】
11 送信局
12,103,123 無線通信装置(中継局)
13 最終受信局
21 誤り訂正符号化部
22,47 送信RF部
23,48 送信アンテナ
31,41 受信アンテナ
32,42 受信RF部
33,43 誤り訂正復号部
34 硬判定部
44 誤り検出部
45 切替え部
46 再符号化部
51 ビット尤度算出部
52 デコーダー1
53 デインタリーバ
54 インタリーバ
55 デコーダー2
56 尤度・軟判定値変換部
57 硬判定部
101 イタレーション数指示情報検出部
102 イタレーション数決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信局から送信された信号を受信局へ中継する機能を備えた無線通信装置であって、
前記送信局から信号を受信する受信手段と、
前記受信した信号の誤り訂正復号処理を行い、誤り訂正復号処理後の信号の硬判定処理を行う復号手段と、
前記硬判定処理した信号の誤り検出を行う誤り検出手段と、
前記硬判定処理した信号に誤りが存在する場合に、誤り訂正復号処理途中の信号から軟判定値を抽出する軟判定抽出手段と、
前記抽出した軟判定値を再符号化する再符号化手段と、
前記再符号化した軟判定値を送信する送信手段と、
前記受信した信号の要求条件に応じて、中継遅延を制御する制御手段と、
を備える無線通信装置。
【請求項2】
請求項1記載の無線通信装置であって、
前記制御手段は、軟判定値を抽出するためのイタレーション数を制御して、前記中継遅延を制御する無線通信装置。
【請求項3】
請求項2記載の無線通信装置であって、
前記制御手段は、無線通信装置における処理時間に応じて前記イタレーション数を決定する無線通信装置。
【請求項4】
請求項1記載の無線通信装置であって、
前記復号手段は、前記受信した信号のビット尤度を算出する尤度算出手段と、
前記受信した信号を繰り返し処理して誤りを訂正する繰り返し処理手段と、
繰り返し処理の途中の信号におけるビット尤度を軟判定値に変換する変換手段と、
を備える無線通信装置。
【請求項5】
請求項4記載の無線通信装置であって、
前記繰り返し処理手段は、前記受信した信号をデコードする第1のデコーダーと、
前記第1のデコーダーの出力データを並べ替えるインタリーバと、
前記インタリーバの出力をデコードする第2のデコーダーと、
前記第2のデコーダーの出力データを並べ替えて、前記第1のデコーダーに戻すデインタリーバと、
を備える無線通信装置。
【請求項6】
請求項2記載の無線通信装置であって、
前記制御手段は、前記受信局から送信されるイタレーション数指示情報に基づき、前記イタレーション数を決定する無線通信装置。
【請求項7】
送信局から送信された信号を受信局へ中継する中継方法であって、
前記送信局から信号を受信する受信工程と、
前記受信した信号の誤り訂正復号処理を行い、誤り訂正復号処理後の信号の硬判定処理を行う復号工程と、
前記硬判定処理した信号の誤り検出を行う誤り検出工程と、
前記硬判定処理した信号に誤りが存在する場合に、誤り訂正復号処理途中の信号から軟判定値を抽出する軟判定抽出工程と、
前記抽出した軟判定値を再符号化する再符号化工程と、
前記再符号化した軟判定値を送信する送信工程と、
前記受信した信号の要求条件に応じて、中継遅延を制御する制御工程と、
を備える中継方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−103667(P2011−103667A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275405(P2010−275405)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【分割の表示】特願2007−506031(P2007−506031)の分割
【原出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】