説明

無線通信装置及び無線通信システム

【課題】無線信号を受信するRF回路の電力消費を削減しながら、送信側の無線通信装置と受信側の無線通信装置との間の同期を確立する。
【解決手段】この無線通信装置は、無線通信ネットワークにおいて用いられる無線通信装置であって、無線通信ネットワークを介して所定のタイミングで間欠的に送信される無線信号を受信する受信回路と、外部から受信された時刻情報を取得して、該時刻情報に基づいて計時動作を行い、受信回路における間欠的な受信動作のタイミングを制御するタイミング制御回路とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信ネットワークにおいて用いられる無線通信装置、及び、複数の無線通信装置によって構成される無線通信システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年において、低速で転送距離が短い替わりに安価で消費電力が少ないという特徴を有するZigBee(ジグビー)等の無線通信規格に従う無線通信ネットワークが開発されている。このような無線通信ネットワークは、家電製品や各種センサーを組み合わせたホームオートメーション、ビルディングオートメーション、及び、ファクトリーオートメーションにおいて活用されている。
【0003】
高周波(RF)の無線信号を送信又は受信するためには、例えば、30mA〜40mA程度の消費電流が必要となる。従って、バッテリーから電力が供給されて動作する無線通信装置のハードウェアにおいて最も消費電力が大きいのは、無線信号を送信又は受信するRF回路である。そこで、RF回路に電源を投入する時間を減少させることが、無線通信装置全体の消費電力を削減するために重要となる。
【0004】
上記のような無線通信ネットワークにおける無線通信装置は、絶えず通信を行っている訳ではなく、一定のインターバルをおいて通信を行うことが多い。例えば、ZigBeeのIEEE802.15.4規格においては、時間軸に対する標識としてビーコンと呼ばれる信号が用いられ、ビーコンとビーコンとによって区切られた期間を1つの単位として、所望のデータが伝送される。
【0005】
ビーコンとビーコンとによって区切られた期間は、アクティブ期間と非アクティブ期間とを含んでもよい。例えば、アクティブ期間が複数のタイムスロットに分割され、各々のタイムスロットにおいて、スーパーフレームと呼ばれるデータフレームが伝送される。先頭のスーパーフレームは、ビーコンを含んでおり、それに続くスーパーフレームの各々は、伝送すべき一群のデータを含んでいる。
【0006】
このように、ビーコンを用いて時間的な同期を取ることにより、互いの無線通信装置がアクティブとなっている時間だけを利用して、周期的に通信を行うことが可能となる。一方、非アクティブ期間においては、互いの無線通信装置を待機モードにしておけば、それぞれの無線通信装置の消費電力を削減することが可能となる。
【0007】
そこで、それぞれの無線通信装置において、ビーコンとビーコンとの間の時間間隔を確保するために、RF回路に電源を投入するタイミングを制御するタイマー機能が必要となる。従来は、水晶振動子等を用いて発振動作を行う発振回路から出力されるクロック信号に基づいて計時動作を行うことにより、RF回路に電源を投入するタイミングを制御することが行われていた。
【0008】
しかしながら、水晶振動子を用いた発振回路の発振周波数は、30×10−6(30ppm)程度の誤差を有している。従って、発振周波数の誤差をカバーするために、RF回路の受信動作を早目に開始したり、プリアンブルの受信期間を長く設定したりする必要があり、消費電力の増加を招いてしまう。これは、ビーコンとビーコンとの間の時間間隔が長くなるほど、重大な問題となる。
【0009】
関連する技術として、特許文献1には、データ信号の受信を開始してから、一定時間間隔で送信されるデータ信号の先頭データ信号を受信するまでの時間を短くし、受信に伴う電力消費を抑制することができるデータ受信装置が開示されている。このデータ受信装置は、一定時間間隔で送信されるデータ信号を受信するデータ信号受信部と、受信したデータ信号について、データ信号の先頭となる先頭データ信号を検出する先頭データ信号検出部と、先頭データ信号の検出時点からの経過時間を計測する時間計測部と、時間計測部が計測した経過時間が上記一定時間の整数倍の時点となる受信可能時点からデータ信号の受信を開始するようにデータ信号受信部を制御する受信制御部とを備えている。
【0010】
特許文献1によれば、先頭データ信号を一旦受信した後に、先頭データ信号に同期して受信動作を行うことにより、データ信号受信部の消費電力を削減することができる。しかしながら、特許文献1には、先頭データ信号を受信する前の期間におけるデータ信号受信部の消費電力を削減することに関しては、特に開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−170204号公報(段落0007、0008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の幾つかの観点によれば、無線通信ネットワークにおいて用いられる無線通信装置において、無線信号を受信するRF回路の電力消費を削減しながら、送信側の無線通信装置と受信側の無線通信装置との間の同期を確立することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上の課題を解決するため、本発明の第1の観点に係る無線通信装置は、無線通信ネットワークにおいて用いられる無線通信装置であって、無線通信ネットワークを介して所定のタイミングで間欠的に送信される無線信号を受信する受信回路と、外部から受信された時刻情報を取得して、該時刻情報に基づいて計時動作を行い、受信回路における間欠的な受信動作のタイミングを制御するタイミング制御回路とを含む。
【0014】
ここで、タイミング制御回路が、受信回路における受信動作のオン又はオフを制御するようにしてもよい。あるいは、タイミング制御回路が、時刻情報を使用しない場合に、無線信号に含まれているプリアンブルを受信する期間を所定値に設定し、時刻情報を使用する場合に、無線信号に含まれているプリアンブルを受信する期間を所定値よりも短く設定するようにしてもよい。
【0015】
また、本発明の第2の観点に係る無線通信装置は、無線通信ネットワークにおいて用いられる無線通信装置であって、無線通信ネットワークを介して無線信号を送信する送信回路と、外部から受信された時刻情報を取得して、該時刻情報に基づいて計時動作を行い、送信回路における間欠的な送信動作のタイミングを制御するタイミング制御回路とを含む。
【0016】
以上において、タイミング制御回路が、電波時計、GPS、カーナビゲーション、携帯電話、テレビ、又は、ラジオ用に送信される時刻情報を取得するようにしてもよい。
【0017】
さらに、本発明の第3の観点に係る無線通信システムは、無線通信ネットワークにおいて用いられる無線通信システムであって、(i)無線信号を送信する送信回路と、外部から受信された時刻情報を取得して、該時刻情報に基づいて計時動作を行い、送信回路における間欠的な送信動作のタイミングを制御する第1のタイミング制御回路とを有する第1の無線通信装置と、(ii)第1の無線通信装置から所定のタイミングで間欠的に送信される無線信号を受信する受信回路と、該時刻情報を取得して、該時刻情報に基づいて計時動作を行い、受信回路における間欠的な受信動作のタイミングを制御する第2のタイミング制御回路とを有する第2の無線通信装置とを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1〜第3の観点によれば、外部から受信された時刻情報を取得して、該時刻情報に基づいて計時動作を行い、送信回路又は受信回路における間欠的な送信動作又は受信動作のタイミングを制御するので、無線信号を受信するRF回路の電力消費を削減しながら、送信側の無線通信装置と受信側の無線通信装置との間の同期を確立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線通信装置の構成例を示すブロック図。
【図2】従来の無線通信システムにおけるタイミング誤差を示す図。
【図3】従来の無線通信システムにおける送信信号と受信動作との関係を示す図。
【図4】本発明の一実施形態における送信信号と受信動作との関係を示す図。
【図5】ZigBeeの無線通信規格に従う送信データの構造を示す図。
【図6】親機と子機との間のメッセージシーケンスを説明するための図。
【図7】親機と子機との間の通信タイミングを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、説明を省略する。
図1は、本発明の一実施形態に係る無線通信装置の構成例を示すブロック図である。この無線通信装置は、無線通信ネットワークにおいて無線通信を行うために用いられる。また、複数の無線通信装置によって無線通信システムが構成される。
【0021】
図1に示すように、この無線通信装置は、アンテナ10と、受信回路21と、送信回路22と、スイッチ回路23と、発振回路24と、PLL(フェーズ・ロックド・ループ)回路25と、タイミング制御回路26と、復調回路27と、変調回路28と、制御回路29と、計時回路30とを含んでいる。ここで、受信回路21〜計時回路30は、半導体集積回路(IC)内に形成されてもよい。
【0022】
アンテナ10は、半導体集積回路20の外付け部品として実現してもよいし、W−CSP(Waferlevel Chip Size Package)技術等を利用して半導体集積回路20内にオンチップで形成してもよい。スイッチ回路23は、制御回路29の制御の下で、受信回路21と送信回路22との内の一方にアンテナ10を接続する。
【0023】
アンテナ10が受信回路21に接続された状態において、受信回路21は、無線通信ネットワークを介して所定のタイミングで間欠的に送信される無線信号を受信して、高周波(RF)の受信信号をローノイズで増幅する。
【0024】
発振回路24は、半導体集積回路20の外付け部品である水晶振動子等を用いて発振動作を行うことにより、クロック信号を生成する。発振回路24によって生成されるクロック信号は、PLL回路25〜制御回路29に供給される。
【0025】
PLL回路25は、制御電圧に従う発振周波数で発振動作を行う電圧制御発振器(VCO)と、VCOから出力される発振信号をM分周する分周回路と、分周回路から出力される分周信号の位相及び/又は周波数と発振回路24から供給されるクロック信号の位相及び/又は周波数とを比較して制御電圧を生成する制御電圧生成回路とを含んでいる。これにより、PLL回路25は、クロック信号の周波数をM逓倍した局部発振信号RX及びTXを生成する。
【0026】
受信回路21は、PLL回路25によって生成される局部発振信号RXを、増幅された受信信号に掛け合わせることにより、高周波の受信信号を中間周波数の受信信号にダウンコンバートする。
【0027】
復調回路27は、受信回路21から出力される中間周波数の受信信号を復調することにより、受信ディジタル信号を生成する。制御回路29は、復調回路27から出力される受信ディジタル信号から制御データ及び伝送データを抽出する。制御データは、無線通信装置の受信動作及び/又は送信動作を制御するために用いられる。伝送データは、出力端子を介して、半導体集積回路20が実装されている家電製品や、半導体集積回路20に接続されているセンサー等に供給される。
【0028】
一方、制御回路29は、他の無線通信装置の送信動作及び/又は受信動作を制御するために用いられる制御データを生成し、家電製品やセンサー等から入力端子を介して供給される伝送データを制御データに組み合わせて、送信ディジタル信号を生成する。変調回路28は、制御回路29から所定のタイミングで間欠的に供給される送信ディジタル信号に基づいて搬送波を変調することにより、中間周波数の送信信号を生成する。
【0029】
本実施形態に係る無線通信装置において、ディジタル信号の変調方式としては、BPSK(2位相偏移変調)、ASK(振幅偏移変調)、O−QPSK(オフセット4位相偏移変調)等を用いることができる。
【0030】
送信回路22は、PLL回路25によって生成される局部発振信号TXを、中間周波数の送信信号に掛け合わせることにより、中間周波数の送信信号を高周波の受信信号にアップコンバートする。アンテナ10が送信回路22に接続された状態において、送信回路22は、無線通信ネットワークを介して所定のタイミングで間欠的に無線信号を送信する。
【0031】
タイミング制御回路26は、計時動作を行うことにより、受信回路21における間欠的な受信動作のタイミングと、制御回路29から変調回路28に送信ディジタル信号を供給するタイミングと、送信回路22における間欠的な送信動作のタイミングとを制御する。例えば、タイミング制御回路26は、受信イネーブル信号REを受信回路21に出力することにより、受信回路21における受信動作のオン又はオフを制御し、タイミング制御信号TCを制御回路29に出力することにより、送信ディジタル信号の供給タイミングを制御し、送信イネーブル信号TEを送信回路22に出力することにより、送信回路22における送信動作のオン又はオフを制御する。
【0032】
タイミング制御回路26は、計測された時刻を制御回路29によって設定された時刻と比較して、比較結果に従って受信イネーブル信号REを活性化する。これにより、受信回路21の受信動作が、制御回路29によって設定された時刻に開始する。また、制御回路29が、通信の終了をタイミング制御回路26に通知して、タイミング制御回路26が、受信イネーブル信号REを非活性化する。これにより、受信回路21の受信動作が、通信の終了時点において終了する。受信回路21の受信動作が停止している間は、受信回路21の消費電力がゼロになる。
【0033】
しかしながら、発振回路24が水晶振動子を用いて発振動作を行う場合に、発振周波数は、30×10−6(30ppm)程度の誤差を有している。従って、発振回路24から出力されるクロック信号に基づいて計時動作を行うことにより、受信回路21における間欠的な受信動作のタイミングを制御する場合には、発振周波数の誤差をカバーするために、受信動作を早目に開始したり、プリアンブルの受信期間を長く設定したりする必要があるので、消費電力の増加を招いてしまう。
【0034】
図2は、従来の無線通信システムにおける送信タイミングと受信タイミングとの誤差を示すタイミングチャートである。従来の無線通信システムにおいては、第1回目の通信時刻t1が経過した後に、送信側の無線通信装置と受信側の無線通信装置とが、別個に計時動作を行っている。それらの発振回路の発振周波数の間に誤差があると、送信側の無線通信装置が計測した第2回目の通信時刻t2と、受信側の無線通信装置が計測した第2回目の通信時刻t2'との間に、時刻差Δtが生じてしまう。これに対し、高精度の水晶振動子を用いることも考えられるが、水晶振動子の精度にも限界があり、また、コストも増加してしまう。
【0035】
図3は、従来の無線通信システムにおける送信信号と受信動作との関係を示すタイミングチャートである。ZigBeeの無線通信規格に従う無線通信システムの場合には、図3に示すように、送信側の無線通信装置から送信される送信信号が、ビーコンと、送信データとを含んでいる。ビーコンは、時間軸に対する標識であり、同期信号としての役割りを有している。図2に示すような時刻差Δtが生じる可能性がある場合には、受信側の無線通信装置において、時刻差Δtをカバーするために、予想されるビーコンの送信タイミングよりも時刻差Δtだけ早く受信動作を開始しなければならない。
【0036】
そこで、本実施形態においては、図1に示すタイミング制御回路26が、基地局又は衛星から無線で送信される時刻情報、例えば、電波時計用に送信される時刻情報を取得して、取得された時刻情報に基づいて計時動作を行い、受信回路21における間欠的な受信動作のタイミング、及び、送信回路22における間欠的な送信動作のタイミングを制御する。電波時計用に送信される時刻情報に基づいて計時動作を行う場合の誤差は、10×10−9(0.01ppm)程度であり、発振回路24から出力されるクロック信号に基づいて計時を行う場合と比較して、精度が3桁程度向上する。
【0037】
また、GPS(グローバル・ポジショニング・システム)衛星からGPS又はカーナビゲーション用に送信される電波や、一部の携帯電話会社において基地局から送信される制御信号や、一部の携帯電話会社において基地局から送信されるデータ通信又は呼出し用の電波や、基地局の一種である放送局から送信されるディジタルテレビ放送又は文字多重FMラジオ放送の電波にも、時刻情報が含まれている。さらに、放送局から送信されるテレビ放送やラジオ放送に含まれている時報も、時刻情報として利用することができる。
【0038】
そのために、計時回路30は、アンテナ10が接続された状態において、基地局又は衛星から送信される時刻情報を含む電波を受信し、受信された電波から時刻情報を抽出してタイミング制御回路26に供給する。若しくは、アンテナ10とは別個に、基地局又は衛星から送信される時刻情報を含む電波を受信するために用いられるアンテナを設けてもよい。あるいは、半導体集積回路20の外部に、基地局又は衛星から送信される時刻情報を含む電波を受信する回路を設け、半導体集積回路20が、外部の回路から端子を介して時刻情報を入力するようにしてもよい。
【0039】
例えば、計時回路30は、電波時計用に送信される時刻情報を含む電波を定期的に受信し、受信時点における時刻を表す時刻データを生成してタイミング制御回路26に供給する。受信時点と受信時点との間においては、タイミング制御回路26が、発振回路24から供給されるクロック信号に基づいて時刻データを更新することにより、現在の時刻を表す時刻データを取得してもよい。なお、計時回路30において、電波時計用に送信される時刻情報を含む電波を受信するために要する消費電流は数μA程度であり、受信回路21の消費電流よりも十分小さい。
【0040】
このような時刻データに基づいて、タイミング制御回路26が、受信イネーブル信号RE、タイミング制御信号TC、及び、送信イネーブル信号TEを生成する。送信側の無線通信装置と受信側の無線通信装置とが同じ時刻に送信及び受信を開始することにより、受信回路21における受信期間が短縮されて、消費電力が削減される。また、このような時刻情報を用いることにより、間欠的な通信の時間間隔を1時間や1日のように長く設定することができる。さらには、毎月1回定められた日に通信を行うというように、一定でないインターバルをおいて通信を行うことも可能となる。
【0041】
時刻情報を使用するか否かを表すフラグは、制御データに含めて送信側から受信側に伝送することができる。制御回路29は、送信側において時刻情報が使用されているか否かに応じて受信動作を開始すべき時刻を決定し、受信動作を開始すべき時刻をタイミング制御回路26に設定してもよい。また、制御回路29は、送信動作を開始すべき時刻及び送信動作を終了すべき時刻をタイミング制御回路26に設定する。
【0042】
ZigBee等の無線通信規格に従う無線通信ネットワークにおいては、無線通信システムに含まれている1つの無線通信装置を親機として用い、無線通信システムに含まれている他の少なくとも1つの無線通信装置を子機として用いることができる。例えば、親機は、電源投入後に送信モードとなり、子機は、電源投入後に受信モードとなる。親機と子機との間で通信を行う時刻は、双方で情報をやり取りすることによって定められる。その時刻は、例えば、毎時56分32秒のように絶対時間で定めてもよいし、前回の通信開始から1時間後のように時間間隔で定めてもよい。ただし、親機と子機との間で、同じ情報源から得られる時刻情報(例えば、電波時計用の時刻情報)を用いることが望ましい。
【0043】
図4は、本発明の一実施形態に係る無線通信システムにおける送信信号と受信動作との関係を示すタイミングチャートである。本実施形態においては、送信側の無線通信装置と受信側の無線通信装置とが、同じ時刻を表す時刻情報に基づいて計時動作を行うことができるので、図2に示すような大きな時刻差Δtが生じない。従って、受信側の無線通信装置において、予想される送信タイミングよりも早く受信動作を開始する必要はない。
【0044】
ただし、受信イネーブル信号REが活性化してから受信回路21が動作するまでに時間がかかる場合には、受信イネーブル信号REをその時間の分だけ早く活性化する必要がある。そのような場合には、受信イネーブル信号REの他に、同期信号RSを用いてもよい。受信回路21は、受信イネーブル信号REが活性化されたときにスタンバイモードとなり、さらに同期信号RSが活性化されたときに受信動作を開始する。送信回路22についても同様に、送信イネーブル信号TEの他に、同期信号TSを用いてもよい。送信回路22は、送信イネーブル信号TEが活性化されたときにスタンバイモードとなり、さらに同期信号TSが活性化されたときに送信動作を開始する。
【0045】
図5は、ZigBeeの無線通信規格に従う送信データの構造を示す図である。図5に示すように、送信データは、SHR(同期ヘッダー)と、PHR(PHYヘッダー)と、PHYペイロード(有効フレーム)とを含んでいる。なお、PHYとは、物理レイヤーのことである。SHRは、プリアンブルと、8ビット(1オクテット)のSFD(フレーム開始デリミター)とを含んでいる。PHRは、フレーム長を表す7ビットのデータと、予備の1ビットとの合計8ビット(1オクテット)を含んでいる。PHRにおける予備の1ビットは、時刻情報を使用するか否かを表すために使用することができる。PHYペイロードは、可変長(Nオクテット、N≦127)のPSDU(PHYサービスデータユニット)を含んでいる。
【0046】
プリアンブルとは、受信側の無線通信装置との間で同期を取り、フレームの始まりを合図するために用いられる特別なビット列のことである。例えば、ディジタル変調方式としてBPSKが用いられる場合には、プリアンブルの長さが、4オクテット(32シンボル)とされる。
【0047】
また、PSDUの長さが最大長127オクテットであるとすると、送信データの全長が133オクテット(1064ビット)となる。さらに、伝送ビットレートが250kbpsであるとすると、1秒間に受信動作を行っている時間は次のようになる。
1064/(250×10)=4.256×10−3(秒)
【0048】
一方、周波数の誤差が±30ppmのクロック信号を用いて計時動作を行い、1時間おきに通信を行う場合には、受信側におけるクロック信号の周波数誤差をカバーするために、受信動作を次の時間だけ早目に開始しなければならない。
30×10−6×60×60=108×10−3(秒)
【0049】
以上のことから、1時間おきに127オクテットのデータの通信を行う場合に、受信側におけるクロック信号の周波数誤差をカバーするために、本来必要な時間の25倍の時間において受信動作を行わなければならないことが分かる。即ち、受信動作が行われない時間の消費電力がゼロであると仮定すると、本実施形態によれば、バッテリーの寿命が25倍に延びることになる。さらに、送信側におけるクロック信号の周波数誤差を考慮すると、効果はもっと大きくなる。従って、受信側と送信側との一方のみにおいて時刻情報を使用するようにしても、十分な効果が得られる。
【0050】
また、ディジタル変調方式として、搬送波の周波数が868MHz〜868.6MHzであるBPSKが用いられる場合に、4オクテット(32シンボル)のプリアンブルの長さは、時間にして1600μ秒となる。一方、電波時計の精度は、1秒間に誤差が10n秒程度である。本実施形態によれば、送信側と受信側とにおいて同一の時刻情報を使用することにより、計測時刻を略一致させることができるので、プリアンブルを受信するための時間を短縮又は削除することができる。
【0051】
図1に示すタイミング制御回路26は、時刻情報を使用するか否かを表すフラグに従って、時刻情報を使用しない場合に、プリアンブルを受信する期間を所定値(例えば、32ビット分の期間)に設定し、時刻情報を使用する場合に、プリアンブルを受信する期間を所定値よりも短く(例えば、8ビット分の期間に)設定するようにしてもよい。
【0052】
図6は、無線通信システムに含まれている親機と子機との間のメッセージシーケンスを説明するための図である。図6に示すように、親機が子機にデータを送信すると、子機が親機にACK(アクノーレッジ)信号を返信する。
【0053】
図7は、無線通信システムに含まれている親機と子機との間の通信タイミングを示すタイミングチャートである。図7に示すように、親機が、時刻情報に基づいて、時刻t1において子機にデータの送信を開始すると、子機も、時刻情報に基づいて、同じ時刻t1において受信動作を開始する。また、子機が、時刻情報に基づいて、時刻t2において親機にACK信号の送信を開始すると、親機も、時刻情報に基づいて、同じ時刻t2において受信動作を開始する。このように、ACK信号の送信タイミングも時刻情報に基づいて厳密に決定することにより、消費電力をさらに削減することができる。
【符号の説明】
【0054】
10…アンテナ、20…半導体集積回路、21…受信回路、22…送信回路、23…スイッチ回路、24…発振回路、25…PLL回路、26…タイミング制御回路、27…復調回路、28…変調回路、29…制御回路、30…計時回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信ネットワークにおいて用いられる無線通信装置であって、
前記無線通信ネットワークを介して所定のタイミングで間欠的に送信される無線信号を受信する受信回路と、
外部から受信された時刻情報を取得して、前記時刻情報に基づいて計時動作を行い、前記受信回路における間欠的な受信動作のタイミングを制御するタイミング制御回路と、
を含む無線通信装置。
【請求項2】
前記タイミング制御回路が、前記受信回路における受信動作のオン又はオフを制御する、請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記タイミング制御回路が、前記時刻情報を使用しない場合に、前記無線信号に含まれているプリアンブルを受信する期間を所定値に設定し、前記時刻情報を使用する場合に、前記無線信号に含まれているプリアンブルを受信する期間を前記所定値よりも短く設定する、請求項1又は2記載の無線通信装置。
【請求項4】
無線通信ネットワークにおいて用いられる無線通信装置であって、
前記無線通信ネットワークを介して無線信号を送信する送信回路と、
外部から受信された時刻情報を取得して、前記時刻情報に基づいて計時動作を行い、前記送信回路における間欠的な送信動作のタイミングを制御するタイミング制御回路と、
を含む無線通信装置。
【請求項5】
前記タイミング制御回路が、電波時計、GPS、カーナビゲーション、携帯電話、テレビ、又は、ラジオ用に送信される時刻情報を取得する、請求項1〜4のいずれか1項記載の無線通信装置。
【請求項6】
無線通信ネットワークにおいて用いられる無線通信システムであって、
無線信号を送信する送信回路と、外部から受信された時刻情報を取得して、前記時刻情報に基づいて計時動作を行い、前記送信回路における間欠的な送信動作のタイミングを制御する第1のタイミング制御回路とを有する第1の無線通信装置と、
前記第1の無線通信装置から所定のタイミングで間欠的に送信される無線信号を受信する受信回路と、前記時刻情報を取得して、前記時刻情報に基づいて計時動作を行い、前記受信回路における間欠的な受信動作のタイミングを制御する第2のタイミング制御回路とを有する第2の無線通信装置と、
を含む無線通信システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−222768(P2012−222768A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89840(P2011−89840)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】