説明

無線通信装置

【課題】 光回線の異常により巨大電力のノイズが発生しても、当該装置や下位装置の無線部が破壊されるのを防ぐことができ、システムの信頼性を向上させる無線通信装置を提供する。
【解決手段】 信号処理部43への無線信号出力を停止する停止部49aと、マスタポート42への無線信号出力を停止する停止部49bとを備え、回線品質監視部46が、スレーブポート41で受信した無線信号中に復号異常を検出すると、直ちに停止部49a及び49bに停止命令を出力して、信号処理部43及びマスタポート42への無線信号の出力を迅速に停止させて、大電力のノイズを含む無線信号によって当該装置及び下位装置の無線部44が破壊されるのを確実に防ぐ無線通信装置としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムにおいて子機として用いられる無線通信装置に係り、特に上位装置との間の回線品質劣化による無線部の破壊を防止してシステムの信頼性を向上させることができる無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
デジタル移動体通信では、高出力の送信増幅器が用いられる。従来は、送信増幅器は基地局と同一の架に設置されることが多かったが、近年、無線部と送信増幅器の機能を備えた送受信増幅器を基地局と切り離して、両者を光ファイバで接続する構成も用いられている。このような構成をROF(Radio On Fiber)、RRH(Remote Radio Head)と称する。
ROF、RRHを用いることにより、通信品質を向上し、運用コストを低減し、保守を容易にするといった効果がある。
【0003】
[基地局と送受信増幅器の構成例]
ROF、RRHにおける基地局と送受信増幅器の構成例について説明する。ROF、RRHにおける基地局と送受信増幅器の構成例としては、スター型(Star topology)とチェーン型(Chain topology)がある。
スター型は、基地局に、複数の送受信増幅器(TRX-AMP)が光ファイバを介して直接接続された構成である。
【0004】
基地局は、光インタフェース(I/F)を実装しており、基地局から送受信増幅器への信号を電気信号から光信号に変換して光ファイバを介して送信すると共に、送受信増幅器から受信した光信号を電気信号に変換する。
光ファイバは、光信号を伝送するものであり、CPRI、OBSAI等の規格がある。
【0005】
送受信増幅器は、光信号と電気信号の相互変換を行う光−電気変換部を備え、光ファイバを介して基地局から送信された送信データを受信して増幅し、アンテナから出力すると共に、アンテナで受信した受信データを増幅して光ファイバを介して基地局に送信する。
スター型では、子局である送受信増幅器が、それぞれ基地局の光インタフェースに接続する構成となっている。
【0006】
また、チェーン型では、基地局に、光ファイバを介して送受信増幅器が接続され、更に、その送受信増幅器に、光ファイバを介して別の送受信増幅器が接続される構成である。
つまり、送受信増幅器が光ファイバで基地局に接続されており、下位の送受信増幅器は上位の送受信増幅器を経由して基地局と接続された構成である。
【0007】
チェーン型で用いられる送受信増幅器は、スレーブポート(slave port)とマスタポート(master port)の2つのポートを備えており、スレーブポートで上位の基地局や送受信増幅器との送受信を行い、マスタポートで下位の送受信増幅器との送受信を行う。
スレーブポートは、つながり先のクロックで動作するための入出力ポートであり、マスタポートは、つながり先を出力クロックで動作させるための入出力ポートである。
【0008】
[光伝送システムの概要]
光伝送システムは、基地局と中継機と子機(送受信増幅器)を光ファイバもしくは同軸ケーブルによって接続したものであり、基地局が出力する信号をそのまま遠方の不感地帯へ伝送し、移動体通信のサービスエリアの拡大を図る無線通信システムである。基地局と中継機との間は、光ファイバを用いるのが一般的である。
【0009】
光伝送システムでは、不感地帯に設けられた基地局に光インタフェースを設け、中継器が光ファイバによって基地局に接続され、更に中継機に複数の子機がスター型又はチェーン型で接続されている。中継機と子機の間は同軸ケーブル又は光ファイバ、子機と子機との間は光ファイバによって接続される。
このように、光伝送システムは、ビル内等の無線信号が到達しない不感地帯でも移動体通信を可能とし、移動体無線システムのサービスエリアの拡大を図ることができるものである。
【0010】
[チェーン型のシステムの例:図5]
また、基地局に接続する中継機(親機)に、子機またはハブ(HUB)を多段に複数接続したチェーン型の構成を備えた無線通信システムもある。このような構成は、システム構成の自由度を増大させることができ、設置場所に応じた構成とすることができるものである。
【0011】
チェーン型の構成を備えた無線通信システムについて、光伝送システムを例として図5を用いて説明する。図5は、チェーン型接続可能な子機及びHUBを備えた無線通信システムの構成例を示す模式説明図である。
図5に示すように、チェーン型接続可能な子機及びHUBを備えた無線通信システムは、基地局(BTS)1と、中継機2と、子機4a〜4iと、HUB5a、5bとを備え、中継機2と子機4、子機4同士、子機4とHUB5とは光ファイバ3によって接続されている。
【0012】
基地局1は、移動体無線システムの基地局であり、高周波信号の送受信を行う。ここでは同軸ケーブル中継機2に接続されている。また、基地局1に光インタフェースが設けられている場合には、基地局1と中継機2とを光ファイバによって接続してもよい。
【0013】
中継機2は、基地局1から遠く離れた場所に設置され、基地局1から受信した信号を光信号に変換し、光ファイバ3を介して子機4やHUB5に分配出力する。また、中継機2は、子機4やHUB5から光ファイバ3を介して受信した光信号を電気信に変換し、多重化して基地局1に送信する。
【0014】
図5の例では、中継機2は、光ファイバ3が接続する複数のポート(マスタポート)22a〜22fを備えており、複数の子機4やHUB5が接続可能となっている。ここでは、子機4a及び4d、HUB5bが中継機2のマスタポート22に接続されている。
【0015】
子機4は、中継機2から受信した光信号を電気信号(高周波信号、無線信号)に変換して、高周波信号を増幅し、アンテナを介して無線信号として出力すると共に、移動端末から送信された無線信号を受信して増幅し、光信号に変換して中継機2に向けて出力する送受信増幅器(TRX−AMP)である。
また、子機4にはスレーブポート41とマスタポート42が設けられており、上位装置(中継機2,HUB5,子機4のいずれか)にはスレーブポート41で接続し、下位装置の子機4又はHUB5にはマスタポート42で接続している。
【0016】
また、HUB5には1つのスレーブポート51と複数のマスタポート52が設けられており、複数の下位装置が接続可能となっている。
図5の例では、HUB5aのマスタポート52aに子機4bが接続され、マスタポート52bに子機4hが接続されている。更に子機4bのマスタポート42に子機4dが接続されている。
【0017】
[従来の子機の構成:図6]
従来の無線通信装置の例として、子機4の構成について図6を用いて説明する。図6は、従来の子機の構成を示す構成ブロック図である。
図6に示すように、従来の子機4′は、上位装置に接続するスレーブポート41と、下位装置に接続するマスタポート42と、無線信号の送受信に伴う信号処理を行う信号処理部43と、無線信号の変復調を行う無線部44と、無線信号の送受信を行うアンテナ45と、スレーブポートで受信した信号の品質を監視する回線品質監視部46と、装置全体の制御を行う制御部47とを備えている。
【0018】
そして、回線品質監視部46は、スレーブポート41で受信した光信号が変換された無線信号の品質を監視し、回線品質が不良であると判断した場合には、その旨制御部47に報知し、制御部47が無線部44の動作を停止させるようになっていた。回線品質監視部46は、例えば、受信した無線信号の受信レベル等を監視することにより、受信レベルが一定値未満であった場合に回線品質が不良であると判断する。
これにより、誤りを含む信号がアンテナ45から送出されるのを防ぐものである。
【0019】
しかし、一般的に、制御部47はCPU等で構成され、回線品質監視部46から異常を報知する通知を受けてから無線部44を停止するまでに遅延が発生する。
また、無線部44の動作を停止するのは、サービス運用上大きな支障となるため、回線異常が確実に発生していると判断してから無線部44を停止するのが一般的である。そのため、無線部44を停止するまでには、通常数秒オーダー程度の時間をかけるものとなっている。
【0020】
[異常発生時の信号例:図7]
次に、光回線に異常が発生した場合の受信無線信号の例について図7(a)(b)を用いて説明する。図7は、光回線に異常が発生した場合の受信無線信号の例を示す模式説明図である。
例えば、図7(a)に示すように、光信号に変換されて光回線を通って伝送される無線信号をSin波とした場合、通常はきれいな波形となるが、光回線に異常が発生した場合には、ノイズが生ずる。
【0021】
(a)に示した信号の電力レベルを(b)に示す。(b)に示すように、正常なSin波の場合には電力レベルは一定となるが、ノイズが発生した場合には、急峻な電力レベルの増加が発生する。
ここでは、説明をわかり易くするため電力増加のイメージを示したものであるが、実際には平均電力レベルから何十dB以上もの巨大で急峻な電力レベルが発生することがある。
【0022】
尚、無線通信システムに関する先行技術としては、特開2005−057651号公報(特許文献1)がある。
特許文献1には、デジタル無線信号に通信品質を測定するための検査信号を付加して送信し、受信した信号に対して通信品質を測定し、通信品質の測定結果に基づいて、上位監視装置に対しての報告、若しくは光伝送系の遮断を行う光デジタル伝送の品質監視方法及び無線基地局装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】特開2005−057651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかしながら、従来の無線通信装置では、光回線の異常によって巨大で急峻な電力レベルの無線信号が発生すると、当該巨大で急峻な電力レベルの無線信号がそのまま無線部に出力されてしまい、無線部が破壊されてしまうという問題点があった。
【0025】
また、光回線の異常により発生した巨大で急峻な電力レベルの無線信号は、マスタポートから光信号に変換されて下位装置に出力されてしまい、下位装置の無線部まで破壊されてしまうという問題点があった。
【0026】
ノイズの伝搬について図5を用いて説明する。
図5に示すように、HUB5aと子機4bとの間の光回線に異常が発生した場合、巨大電力のノイズにより、子機4bの無線部が破壊され、更に、光ファイバ3を介して下位に接続された子機4cにまで巨大電力のノイズが伝送されて、子機4cの無線部も破壊されてしまう。更に下位の子機が接続されていればその無線部も破壊されることになる。
【0027】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、光回線の異常により巨大電力のノイズが発生しても、当該装置や下位装置の無線部が破壊されるのを防ぐことができ、システムの信頼性を向上させる無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、上位装置に接続し、前記上位装置から受信した光信号を無線信号に変換するスレーブポートと、無線信号の信号処理を行う信号処理部と、信号処理された信号の変調及び増幅を行う無線部と、下位装置に接続し、無線信号を光信号に変換して下位装置に送信するマスタポートとを備えた無線通信装置であって、スレーブポートにおける受信信号の回線品質を監視する回線品質監視部と、スレーブポートと信号処理部との間に設けられ、スレーブポートから信号処理部へ出力される無線信号を指示に従って停止する第1の停止部とを備え、回線品質監視部が、回線品質の異常を検出すると、第1の停止部に信号処理部への無線信号の出力を停止させる指示を出力することを特徴としている。
【0029】
また、本発明は、上記無線通信装置において、スレーブポートとマスタポートとの間に設けられ、スレーブポートからマスタポートに出力される無線信号を指示に従って停止する第2の停止部、又は回線異常を通知する通知信号を指示に従ってマスタポートに出力する通知部を備え、回線品質監視部が、回線品質の異常を検出するか、又は上位装置からの通知信号を受け取ると、第2の停止部にマスタポートへの無線信号の出力を停止させる指示を出力するか、又は通知部に下位装置への通知信号を出力する指示を出力することを特徴としている。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、スレーブポートにおける受信信号の回線品質を監視する回線品質監視部と、スレーブポートと信号処理部との間に設けられ、スレーブポートから信号処理部へ出力される無線信号を指示に従って停止する第1の停止部とを備え、回線品質監視部が、回線品質の異常を検出すると、第1の停止部に信号処理部への無線信号の出力を停止させる指示を出力する無線通信装置としているので、回線異常検出後、直ちに信号処理部への無線信号出力を停止でき、回線異常によって発生した巨大電力のノイズが無線部に入力されるのを確実に防止でき、無線部が破壊されるのを未然に防ぐことができる効果がある。
【0031】
また、本発明によれば、スレーブポートとマスタポートとの間に設けられ、スレーブポートからマスタポートに出力される無線信号を指示に従って停止する第2の停止部、又は回線異常を通知する通知信号を指示に従ってマスタポートに出力する通知部を備え、回線品質監視部が、回線品質の異常を検出するか、又は上位装置からの通知信号を受け取ると、第2の停止部に前記マスタポートへの無線信号の出力を停止させる指示を出力するか、又は通知部に下位装置への通知信号を出力する指示を出力する上記無線通信装置としているので、回線異常検出時には、ノイズを含む信号を下位装置へ送信するのを防ぐことができ、又は下位装置に対して回線異常が発生したことを明確に報知でき、下位装置の無線部が破壊されるのを防ぐことができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本実施の形態に係り、子機として用いられる無線通信装置の構成ブロック図である。
【図2】本実施の形態に係る無線通信システムにおいて用いられるHUB5の構成ブロック図である。
【図3】本発明の別の実施の形態に係る子機(別の子機、別の無線通信装置)の構成ブロック図である。
【図4】本装置の運用例を示す説明図である。
【図5】チェーン型接続可能な子機及びHUBを備えた無線通信システムの構成例を示す模式説明図である。
【図6】従来の子機の構成を示す構成ブロック図である。
【図7】光回線に異常が発生した場合の受信無線信号の例を示す模式説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
[発明の概要]
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本発明の実施の形態に係る無線通信装置は、無線通信システムの子機又はHUBとして用いられるものであり、スレーブポートの回線品質を監視する回線品質監視部と、信号処理部への無線信号の入力/停止を切り替える停止部とを備え、回線品質監視部で光回線の異常を検出すると、制御部が無線部の動作を停止すると共に、停止部が信号処理部への無線信号の入力を停止するものであり、回線異常の検出後、直ちに停止部からの無線信号の出力を停止させて、無線部への巨大電力のノイズの入力を防ぎ、無線部が破壊されるのを防ぐことができるものである。
【0034】
また、本発明の実施の形態に係る無線通信装置は、上記構成に加えて、マスタポートへの無線信号の入力/停止を切り替え、下位装置へ異常を通知する異常通知信号を生成する異常通知部を備え、回線品質監視部で光回線の異常を検出すると、異常通知部が、マスタポートへの無線信号の出力を停止し、異常通知信号を生成してマスタポートに出力するものであり、下位装置への巨大電力のノイズの出力を防ぎ、下位装置の無線部が破壊されるのを防ぐことができ、更に下位装置に回線異常が発生したことを意図的に報知できるものである。
【0035】
また、本発明の実施の形態に係る無線通信装置は、上記構成に加えて、回線品質部が、上位装置からの無線信号の復号異常を監視して異常を検出するものであり、迅速に異常を検出できるものである。
【0036】
また、本発明の実施の形態に係る無線通信装置は、上記構成に加えて、回線品質監視部が、上位装置からの異常通知信号によって異常を認識するものであり、迅速に異常を検出できるものである。
【0037】
[本実施の形態に係る無線通信装置の構成:図1]
本発明の実施の形態に係る無線通信装置の構成について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係り、子機として用いられる無線通信装置の構成ブロック図である。
本発明の実施の形態に係る子機(本子機、本無線通信装置)は、図5に示した無線通信システムにおいて用いられるものである。
図1に示すように、本子機4の基本的な構成は、図6に示した従来の子機とほぼ同様であり、上位装置に接続するスレーブポート41と、下位装置に接続するマスタポート42と、無線信号の送受信に伴う信号処理を行う信号処理部43と、無線信号の変復調を行う無線部44と、無線信号の送受信を行うアンテナ45と、スレーブポートで受信した信号の品質を監視する回線品質監視部46と、装置全体の制御を行う制御部47とを備えている。
そして、本子機の特徴部分として、停止部49aと49bとを備えており、更に、回線品質監視部46に復号異常監視部46aが設けられている。
【0038】
スレーブポート41は、光信号の送受信を行う光信号送受信部と、光信号と電気信号の相互変換を行う光−電気変換部とを備えており(図示省略)、上位装置からの光信号を受信して無線信号に変換し、信号処理部43と、停止部49aと、停止部49bに出力する。本子機では、スレーブポートからの無線信号は、停止部49aを介して信号処理部43に入力され、停止部49bを介してマスタポート42に入力される。また、スレーブポート41は、上位装置に送るための電気信号を光信号に変換して上位の光ファイバ3に出力する。スレーブポート41は、上位装置のクロックに合わせて動作を行う。
【0039】
マスタポート42は、光信号の送受信を行う光信号送受信部と、光信号と電気信号の相互変換を行う光−電気変換部とを備えており(図示省略)、下位装置からの光信号を受信して無線信号に変換し、スレーブポート41に出力する。また、スレーブポート41から入力された、下位装置に送るための電気信号を光信号に変換して下位の光ファイバ3に出力する。マスタポート42は、接続された下位装置を自己のクロックに合わせて動作させる。
【0040】
信号処理部43は、スレーブポート41から入力された上位装置からの無線信号のデジタル信号処理を行ってベースバンド信号として無線部44に出力すると共に、無線部44から入力された移動局(図示せず)からのベースバンド信号のデジタル信号処理を行ってスレーブポート41に出力する。
【0041】
無線部44は、ベースバンド信号を無線周波数に変換してアンテナ45から空中に放出すると共に、無線周波数信号を受信してベースバンド信号に変換し、信号処理部43に出力する。
アンテナ45は、無線周波数信号の送受信を行う。
制御部47は、回線品質監視部46からの回線異常を報知する信号に基づいて無線部44を停止させる。
【0042】
[回線品質監視部46、復号異常監視部46a]
回線品質監視部46の復号異常監視部46aは、スレーブポート41で受信した光信号が変換された無線信号について、復号異常を検出するものである。
復号異常の検出について具体的に説明する。
光回線はシリアル伝送であり、byteアライメントをとるためにも、4B5B、8B10B、64B66B等の符号化/復号化を行うのが一般的である。
例えば、8B10B復号の場合、DCバランス(0と1の発生確率)が崩れた場合に異常を示すRD(Running Disparity)と、復号できないパターンを受信したときに異常を示すCode Errorによって復号異常を検出する。
【0043】
回線品質監視部46は、復号異常監視部46aで上述したような復号異常を検出した場合に、従来と同様に制御部47に回線異常検出を報知すると共に、直ちに停止部49a、49bに対して停止命令を出力する。
尚、回線品質監視部46は、復号異常の検出と合わせて、従来と同様に受信した無線信号の受信電力レベルをチェックして、一定値未満であれば回線異常と判断する動作を行うようにしてもよい。
【0044】
[停止部49a]
停止部49aは、スレーブポート41から入力された無線信号を信号処理部43へ出力するものであり、正常時には信号処理部43に出力するが、回線品質監視部46から光回線の異常検出が報知されると、無線信号を信号処理部43に出力しないよう出力を停止する。つまり、停止部49aは、信号処理部43への無線信号の入力/入力停止を切り替えるものである。尚、停止部49aは、請求項における第1の停止部に相当する。
これにより、回線異常には、ノイズを含む無線信号が信号処理部43及び無線部44に入力されるのを防ぐことができ、無線部44が大電力のノイズによって破壊されるのを防ぐことができるものであり、更に、意図しない不要な信号の放射を未然に防ぐことができるものである。
【0045】
[停止部49b]
停止部49bは、スレーブポート41から入力された無線信号をマスタポート42へ出力するものであり、正常時にはマスタポート42に出力するが、回線品質監視部46から光回線の異常検出が報知されると、無線信号をマスタポート42に出力しないよう出力を停止する。つまり、停止部49bは、マスタポート42への無線信号の入力/入力停止を切り替えるものである。尚、停止部49bは、請求項における第2の停止部に相当する。
これにより、回線異常に伴うノイズを含む無線信号が、マスタポート42から光ファイバ3を介して下位装置に出力されるのを防ぐことができ、下位装置の無線部が破壊されるのを防ぐことができるものである。
【0046】
停止部49a,49bは、信号のオン/オフを切り替えるだけの簡易な構成であるから、制御部47の処理によって無線部44を停止するのに比べて極めて迅速に反応して、回線品質監視部46での異常検出後、直ちに無線信号を停止できるものであり、自装置及び下位装置の無線部44を破壊から確実に保護することができるものである。
【0047】
[HUB5の構成:図2]
次に、上述した本子機を含む無線通信システムにおいて用いられるHUBの構成について図2を用いて説明する。図2は、本実施の形態に係る無線通信システムにおいて用いられるHUB5の構成ブロック図である。
図2に示すように、HUB5は、上位装置に接続するスレーブポート51と、下位装置に接続するマスタポート52と、スレーブポート51で受信した信号の品質を監視する回線品質監視部53と、装置全体の制御を行う制御部54とを備え、更に、本装置の特徴部分として、停止部55を備え、回線品質監視部53に復号異常監視部53aが設けられている。HUB5には、無線部、信号処理部、アンテナは実装されていない。
【0048】
回線品質監視部53は、図1に示した回線品質監視部46とほぼ同様のものであり、復号異常監視部53aで復号異常を検出すると、回線異常と判定して停止部55に停止命令を出力する。復号異常の判定は子機4の回線品質監視部46と同様に行う。
【0049】
停止部55は、回線品質監視部53から停止命令が入力されると、スレーブポート41からの無線信号のマスタポート52への出力を停止する。
【0050】
これにより、本装置のHUB5では、上位装置に接続される光回線に異常が発生した場合でも、回線品質監視部53で復号異常に基づいて回線異常を判定し、迅速に停止部55に停止命令を出力することによりマスタポート52への無線信号を停止できるので、下位装置への異常な信号の伝送を防ぐことができ、下位装置での不具合の発生を防ぐことができるものである。
【0051】
[別の子機の構成:図3]
次に、本発明の別の実施の形態に係る無線通信装置について図3を用いて説明する。図3は、本発明の別の実施の形態に係る子機(別の子機、別の無線通信装置)の構成ブロック図である。
図3に示すように、別の子機の基本的な構成は、図1に示した子機とほぼ同様であるが、停止部49bの代わりに異常通知部48が設けられている点が図1の子機とは異なっており、更に、回線品質監視部46の動作が一部異なっている。
【0052】
[回線品質監視部46]
別の子機の回線品質監視部46は、図1の子機の回線品質監視部46と同様に復号異常に基づいて回線異常を検出すると共に、別の子機の特徴として、スレーブポート41で受信した受信信号中に、上位装置からの回線異常を通知する特殊コードがあるかどうかを判断し、特殊コードを検出した場合には回線異常と判断し、制御部47、異常通知部48、停止部49に回線異常を報知する。特殊コードは、下位装置に回線異常を通知するための通知信号である。特殊コードについては後で説明する。
【0053】
[特殊コード]
ここで、特殊コードについて説明する。
特殊コードとしては、デジタル伝送I/Fとして、LOS(Loss Of Signal)にならないコード、又は周期的に送信される特定のコードを使用することが望ましい。
別の子機では、8B10B Codecを使用する場合、データのアライメントをとるために使用されるK28.5コードを利用している。
【0054】
K28.5コードは、8B10B CodecではCommaキャラクタと呼ばれ、8B10B Encodeされた信号の10bitの区切りを示し、上位装置と下位装置の回線の同期(データアライメント)をとるために必要な信号である。
また、CPRIでは、K28.5コードは、制御データの先頭に使用され、上位装置との同期を確立するために用いられ、66.6μsec周期で送信されるものである。
【0055】
そこで、別の子機では、回線異常を検出した場合には、特殊コードとしてK28.5コードを連続して送信するようにしている。通常、K28.5コードは周期的に送信されるものであるから、受信側の回線品質監視部46ではK28.5コードを一定回数連続して受信した場合に特殊コードと認識して、回線異常を検出するようになっている。
【0056】
回線品質監視部46では、66.6μsecの間にLOSとなる信号が16サンプル以上検出された場合に回線異常と判定しており、それに加えて特殊コードとしてK28.5コードを一定回数以上連続して検出した場合にLOSとして回線異常と判定する。このほか、上述した復号異常により回線異常を検出することも可能である。
尚、特殊コードは請求項に記載した通知信号に相当しており、特殊コードとしてK28.5コードを一定回数以上連続して検出することは、請求項に記載した通知信号を受け取ることに相当している。
【0057】
[異常通知部48]
異常通知部48は、回線品質監視部46から光回線の異常検出が報知されると、特殊コードとしてK28.5コードを一定回数以上連続してマスタポート42に出力する。
これにより、下位装置に回線異常の発生を報知することができるものである。
下位装置では、回線品質監視部46がスレーブポート41からの受信信号中に特定のコードが連続して受信される特殊コードが検出されると直ちに回線異常と判断するため、上述した子機と同様に、復号時に迅速に回線異常を認識できるものである。
尚、異常通知部48は請求項に記載した通知部に相当している。
【0058】
別の子機では、回線品質監視部46で受信信号の復号時に特殊コードの検出によって回線異常と判断して直ちに信号処理部43への無線信号出力を停止でき、無線部44の破壊を防ぐことができると共に、異常通知部48から下位装置に対して特殊コードを送信でき、下位装置の破壊も防ぐことができるものである。
【0059】
[本装置の運用例:図4]
本装置の運用例について図4を用いて説明する。図4は、本装置の運用例を示す説明図である。
図4に示すようなチェーン型に接続された無線通信システムにおいて、HUB5a,子機4bは、図1及び図2に示した無線通信装置であり、子機4e,4fは図3に示した別の無線通信装置としている。
そして、HUB5aと子機4bとの間の光回線上で異常が発生した場合、子機4bの回線品質監視部46は、復号異常等によって回線異常を検出し、停止部49a,49bに停止命令を出力し、信号処理部43への無線信号の入力及びマスタポート42への無線信号の入力が停止される。
このため、無線部44は破壊されず、子機4bのアンテナからの不要電波の放射はなく、子機4cには光信号が伝送されないため、異常発生箇所より下位の装置の運用を停止させることができるものである。
【0060】
また、子機4dと子機4eとの間の光回線上で異常が発生した場合、子機4eの回線品質監視部46は、復号異常等によって回線異常を検出し、異常通知部48と停止部49に異常を報知する。
停止部49は、信号処理部43への無線信号の出力を停止し、異常通知部48は、マスタポート42へ特定のコードを一定数以上連続する特殊コードを出力する。
【0061】
これにより、子機4eの無線部44は破壊されず、子機4eのアンテナからの不要電波の放射はなく、子機4fには特定のコードが連続した特殊コードを含む光信号が送信される。
子機4fの回線品質監視部46は、受信信号中に連続した特殊コードを検出すると、回線異常であることを認識し、直ちに異常通知部48と停止部49に異常を報知する。
以下同様にして、光回線の異常によって発生したノイズを含む無線信号は伝搬されず、回線異常を示す特殊コードが下位装置に送信され、異常発生箇所より下位の装置の運用を停止させることができるものである。
【0062】
尚、特殊コードを出力する異常報知部をHUB5に備えることも可能であり、その場合は、図2に示した停止部55の代わりに、図3と同様の異常報知部を備え、回線品質監視部53に、特定のコードを連続して検出する特殊コードを受信した場合には回線異常と判断するよう設定しておけばよい。
【0063】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係る無線通信装置によれば、信号処理部43への無線信号出力を停止する停止部49aと、マスタポート42への無線信号出力を停止する停止部49bとを備え、回線品質監視部46が、スレーブポート41で受信した無線信号中に復号異常を検出すると、直ちに停止部49a及び49bに停止命令を出力するので、信号処理部43への無線信号の出力を迅速に停止させて、回線異常によって発生した大電力のノイズを含む無線信号が無線部44に入力されて無線部44が破壊されるのを確実に防ぐことができ、また、マスタポート42への無線信号の出力を迅速に停止させて、下位装置に大電力のノイズを含む無線信号が送信されて下位装置の無線部が破壊されるのを確実に防ぐことができる効果がある。
【0064】
また、別の実施の形態に係る無線通信装置によれば、子機4に、信号処理部43への無線信号出力を停止する停止部49と、下位装置に回線の異常を報知する特殊コードを出力する異常通知部を備え、回線品質監視部46が特定のコードが連続した特殊コードの検出により上位回線の異常を検出して回線異常を検出すると、異常通知部48及び停止部49にその旨報知し、異常通知部48が、特定のコードを連続した特殊コードをマスタポート42に出力すると共に、停止部49が、信号処理部43への無線信号の出力を停止するようにしているので、下位装置に意図的に回線異常を報知することができ、自己及び下位装置の無線部の破壊を確実に防ぐことができる効果がある。
【0065】
また、本実施の形態に係る無線通信システムによれば、HUB5の回線品質監視部53に復号異常監視部53aを備え、スレーブポート51で受信した無線信号中に復号異常を検出すると、回線品質監視部53が、直ちに停止部55に停止命令を出力するので、上位装置からの光回線に異常が発生した場合でも、回線品質監視部53で復号異常に基づいて回線異常を判定し、迅速に停止部55に停止命令を出力することによりマスタポート52への無線信号を停止できるので、下位装置への異常な信号の伝送を防ぐことができ、下位装置での無線部の破壊等の不具合の発生を防ぐことができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、上位装置との間の回線品質劣化による無線部の破壊を防止してシステムの信頼性を向上させることができる無線通信装置に適している。
【符号の説明】
【0067】
1…基地局、 2…中継機、 3…光ファイバ、 4…子機、 5…HUB、 41,51…スレーブポート、 22,42,52…マスタポート、 43…信号処理部、 44…無線部、 45…アンテナ、 46…回線品質監視部、 47…制御部、 48…異常通知部、 49…停止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位装置に接続し、前記上位装置から受信した光信号を無線信号に変換するスレーブポートと、前記無線信号の信号処理を行う信号処理部と、前記信号処理された信号の変調及び増幅を行う無線部と、下位装置に接続し、前記無線信号を光信号に変換して前記下位装置に送信するマスタポートとを備えた無線通信装置であって、
前記スレーブポートにおける受信信号の回線品質を監視する回線品質監視部と、
前記スレーブポートと前記信号処理部との間に設けられ、前記スレーブポートから前記信号処理部へ出力される無線信号を指示に従って停止する第1の停止部とを備え、
前記回線品質監視部が、回線品質の異常を検出すると、前記第1の停止部に前記信号処理部への無線信号の出力を停止させる指示を出力することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
スレーブポートとマスタポートとの間に設けられ、前記スレーブポートから前記マスタポートに出力される無線信号を指示に従って停止する第2の停止部、又は回線異常を通知する通知信号を指示に従って前記マスタポートに出力する通知部を備え、
回線品質監視部が、回線品質の異常を検出するか、又は上位装置からの通知信号を受け取ると、前記第2の停止部に前記マスタポートへの無線信号の出力を停止させる指示を出力するか、又は前記通知部に下位装置への通知信号を出力する指示を出力することを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−219847(P2010−219847A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63908(P2009−63908)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】