説明

無線通信装置

【課題】使い勝手のよい無線通信装置を提供する。
【解決手段】
プレストーク方式の単一周波数搬送波の無線通信装置において、スイッチ操作に加え自動的に、全局音声通信とグループ内音声通信とを切り替える無線通信装置を提供する。この無線通信装置は、音声データにグループ番号データを付加して送信するグループ通話モードと、音声データのみ送信する全局通話モードの少なくとも二つの動作モードを自動的に切り替える。具体的には、グループ番号データが付加されていない音声データを受信したとき、動作モードを全局通話モードに切り替える。また、グループ番号データが付加されている音声データを受信したとき、受信したグループ番号データが自局のグループ番号データと一致するか判断し、一致する場合、動作モードをグループ通話モードに切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレストーク方式の単一周波数搬送波の無線通信装置に係り、特に鉄道施設等の広い範囲に存在している各種施設の巡回監視等に際して使用するのに好適な無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
狭帯域デジタル通信方式標準規格ARIB STD−T61には、音声またはデータを伝送する各チャネルのそれぞれに1つのキャリアを割り当てる一波単信方式(SCPC:Single Channel Per Carrier)、すなわち単一周波数搬送波の無線通信装置を用いた無線システムが示されている(非特許文献1を参照)。
このシステムを用いると、一波単信方式のプレストーク通信が可能となる。プレストークとは、無線局として用いる無線通信装置に設けられた特定のボタンを押下することで、相手側装置との間で無線通信を可能とする、半二重伝送方式に適用可能な通信方法である。
【0003】
従来、プレストーク方式の単一周波数搬送波の無線通信装置を使用した無線システムは、巡回監視用携帯無線機内での音声通話を、全局通信(裸通信)で行っていた。このため、特定のグループ同士で通話を行うことは想定されていなかった。
【0004】
ここで、従来の一波単信方式によるプレストーク通信を用いた無線通信装置として、特許文献1を参照すると、プレストーク通信にてグループ通信を行う無線通信装置が記載されている(以下、従来技術1とする。)。
従来技術1の無線通信装置では、プレストーク通信による無線信号を受信すると、発信元の無線局が選択中のグループに属するか否かを判定する。そして、この判定において、発信元の無線局が選択中のグループに属すると判定された場合は、「話中」と表示させ、グループ内で通信が行われていることをユーザに報知すると共に、受信した無線信号を復調し、通話音声を出力する。
一方、発信元の無線局が選択中のグループに属さないと判定された場合は、「ビジー」と表示させ、選択中のグループ外で通信が行われていることをユーザに報知する。
これにより通信中の状態をユーザに明確に通知することができる無線通信装置を提供することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−251526号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】狭帯域デジタル通信方式(SCPC/FDMA)標準規格 ARIB STD−T61、社団法人 電波産業会。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術1は、同一グループ内だけでの音声通話が行われた際に、グループ内通話に切り替えることができず、スイッチを変更せねばならないため使い勝手が悪かった。
また、従来技術1では、列車などの接近を知らせる手段は音声通信で行い、自動的に無線機へ知らせ、警報音を鳴らすことはできなかった。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の課題を解消することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の無線通信装置は、プレストーク方式の単一周波数搬送波の無線通信装置において、音声データにグループ番号データを付加して送信するグループ通話モードと、音声データのみ送信する全局通話モードの少なくとも二つの状態を記憶する記憶部と、前記状態により前記無線通信装置の動作モードを切り替える制御部を備え、前記制御部は、前記グループ番号データが付加されていない音声データを受信したとき、該音声データを復調して出力するとともに、前記動作モードを前記全局通話モードに設定し、前記グループ番号データが付加されている音声データを受信したとき、受信したグループ番号データが自局のグループ番号データと一致するか判断し、一致すると判断したとき、受信した音声データを復調して出力するとともに、前記動作モードを前記グループ通話モードに設定することを特徴とする。
本発明の無線通信装置は、移動体に搭載された無線通信装置の警報信号出力手段から所定周期で送出されたトーン信号を受信したときに警報を報知する警報手段と、前記警報を停止する警報停止手段とを更に備え、前記制御部は、前記警報停止手段により、前記警報を停止した後、前記トーン信号を前記所定周期よりも長い期間にわたって受信していないと判断されるまで、前記警報手段の動作を停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、グループ番号データが付加されたデータを受信した際にグループ通話モードに動作モードを変更し、音声データのみを受信した際に全局通話モードに動作モードを変更することで、使い勝手のよい無線通信装置を提供することができる。
また、本発明によれば、トーン信号により警報を報知することで、移動体の接近の際に報知することができ、使用者の安全を確保する無線通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る通信システムXでの無線通信方式を説明する概念図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る無線通信装置10−1の制御構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る無線通信装置10−1の受信処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態に係る無線通信装置10−1と無線通信装置10−31とによる全局音声通話方法を説明するタイミングチャートである。
【図5】本発明の実施の形態に係る無線通信装置10−1と無線通信装置10−2とによるグループ内通話方法を説明するタイミングチャートである。
【図6】本発明の実施の形態に係る無線通信装置10−1と無線通信装置10−31とによるグループが異なり音声通話ができない場合のタイミングチャートである。
【図7】本発明の実施の形態に係る無線通信装置10−1と列車搭載無線通信装置200による列車接近警告制御方法を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施の形態>
〔通信システムXの制御構成〕
以下で、本発明の実施の形態に係る通信システムXについて、図面を参照して詳しく説明する。
まず、図1の概念図を参照して本発明の実施の形態に係る通信システムXの使用状況について説明する。
通信システムXは、上述したようなプレストーク方式の単一周波数搬送波無線機(無線通信装置)を使用したシステムであり、親局(無線局)である親局無線通信装置30と1以上の子局(無線局)から構成される。子局は、例えば、グループ1−1〜1−nにグループ分けされた巡回監視用の携帯可能な無線通信装置10−1〜10−nと、列車2に搭載された列車搭載無線通信装置20(移動体に搭載された無線通信装置)とを含む。
【0013】
無線通信装置10−1〜10−nは、同一のグループ内では、同一グループ内音声通信3のようなグループを識別するデータと音声を用いた通信を行う。
また、無線通信装置10−1〜10−nは、他のグループを含めた全ての子局(全局)と通信する場合は、音声通信のみである全局音声通信4を用いて通信する。
【0014】
さらに、無線通信装置10−1〜10−nは、列車2が接近していることを知らせる信号であるトーン信号5を受信して、警報を報知することができる。
このトーン信号5は、列車2に搭載する列車搭載無線通信装置20が備える発信器等であるトーン信号送信部260(警報信号出力手段)が発生させる。
このトーン信号5は、列車毎に共通の周波数帯や通信方式のトーン信号を用いることができる。これにより、確実に無線通信装置10−1〜10−nが受信可能である。
また、列車搭載無線通信装置20は、このトーン信号5について、列車2の接近を巡回監視用の無線通信装置10−1〜10−nに知らせる距離を送信パワー値で調整して変化させることができる。
なお、無線通信装置10−1〜10−nは、このトーン信号5を受信したことを列車搭載無線通信装置20に報知可能である。
また、トーン信号に列車識別信号や列車位置信号のような信号を含ませることが可能であり、これを用いて無線通信装置10−1〜10−nがどの程度接近しているのかを計測することが可能である。
また、列車搭載無線通信装置20が搭載される移動体は、列車には限られず、接近を報知するための移動体であれば、自動車、飛行機、船等であってもよい。
【0015】
〔無線通信装置10−1〕
次に、図2を参照して、同様の構成をもつ無線通信装置10−1〜10−nの代表例である無線通信装置10−1の制御構成を説明する。
無線通信装置10−1は、制御部100(制御手段)、記憶部110(記憶手段)、表示部130(表示手段)、スイッチ部140(入力手段、プレスボタン)、音声入出力部150(音声入出力手段、警報出力手段)、送受信部190(電波送受信手段)を含んで構成される。
【0016】
制御部100は、記憶部110に対してアクセスすることでプログラムの実行制御をおこなうCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、マイクロコントローラ(Micro Controler、マイコン)、DSP(Digital Signal Processor)等である。制御部100は、記憶部110の制御プログラム(図示せず)を用いて、プレストーク方式の単一周波数搬送波無線機を使用した無線通信の制御を行うことができる。この制御としては、下記で説明する、無線通信装置10−1の動作モードを設定し、全局音声通話、グループ内通話、警報音報知等の処理を行う。なお、制御部100は、安価で低速で消費電力の少ないマイコンを用いることができる。
【0017】
記憶部110は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、NAND/NOR型フラッシュメモリ、相変化メモリ、磁気メモリ、HDD(Hard Disk Drive)等の不揮発の記憶装置を用いて構成される記憶装置である。記憶部110は、制御部100が実行する制御プログラムを記憶し、データの格納領域として使用される。
また、記憶部110は、(1)全局音声通話モード、(2)グループ内通話モード、(3)警報音報知モード等、無線通信装置10−1の動作モードの状態を記憶することができる。
さらに、記憶部110は、グループ1−1〜1−nのうち所属グループを示す番号や文字からなるID(Identification)等であるグループ番号データ等についても記憶している。このグループ番号データは、グループ内通話モードの際には、音声入出力部150のマイクから入力した音声信号を基に送出される音声データと一緒に符号化して送信することができる。また、このグループ番号データは、スイッチ部140を用いて設定できる。なお、無線通信装置10−1自体のIDや物理アドレス等を記憶してもよい。
【0018】
表示部130は、LED(Light Emitting Diode)、LCD(Liquid Crystal Display)、PDP(Plasma Display Panel)、有機・無機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、プロジェクタ、電子ペーパー等の表示装置である。
表示部130は、上述の動作モードを表示し、他のグループが同じ周波数帯にて通話中の場合には「話し中」のLEDをインジケータとして点灯させ、列車が接近した場合にはフラッシュ点灯する等、無線通信装置10−1のユーザに情報を報知することができる。
【0019】
スイッチ部140は、プレストークのために押下する「プレスボタン」、動作モード切り替えスイッチ等が備えられた入力手段である。制御部100は、各ボタンやスイッチ等が押下されたり切り替えられたことを「割り込み」やポートスキャン等により検知し、各ボタンに対応する動作を行う。
音声入出力部150は、マイクとA/Dコンバータ等である音声入力手段や、D/Aコンバータとアンプとスピーカ等である音声出力手段を備えた部位であり、音声通話や警報音の報知に用いることができる。
送受信部190は、アンテナや復号器を備える単一周波数搬送波無線の送受信手段である。送受信部190は、他の子局の無線通信装置10−2〜10−n、列車搭載無線通信装置20(図1参照)、親局無線通信装置30との間において、電波信号を送受信する。そして、送受信部190は、受信した電波信号をトーン信号や音声信号に復号して他の部位に送信することができる。
【0020】
また、記憶部110は、制御プログラムやサブルーチンやクラスやデータとして、警告報知部115(警報手段)、警告停止部116(警報停止手段)、グループ内通話切り替え部117、全局通話切り替え部118等の部位を有している。
警告報知部115は、列車2(図1参照)等からのトーン信号を検知した場合に、警報音報知モードに切り替え、警報音(トーン音)を出力させる部位である。この警報音としては、警報ブザー音や警告音声を用いることができる。また、制御部100は、警告報知部115のプログラムにより、音声入出力部150のスピーカ等より警報音を出力し、表示部130に列車接近が近い旨の表示を行って警告する。
警告停止部116は、警報音を停止する部位である。また、制御部100は、警告停止部116のプログラムにより、警報音報知モードを解除することもできる。
グループ内通話切り替え部117は、動作モードをグループ内通話モードに切り替える部位である。この制御部100は、グループ内通話切り替え部117により、スイッチ部140の動作モード切り替えスイッチが「グループ内通話モード」になったことを検知した際に、グループ内通話モードに切り替える。また、送受信部190より音声データに加えて所属するグループのグループ番号データの信号を受信した際に、グループ内通話モードに切り替えることもできる。
全局通話切り替え部118は、スイッチ部140の動作モード切り替えスイッチが「全局音声通話モード」になったことを検知した際に、全局音声通話モードに切り替える部位である。また、制御部100は、全局通話切り替え部118により、送受信部190から全局通信の音声データのみを受信した際には、全局音声通話モードに切り替えることができる。
【0021】
なお、上述の各部位は携帯用に用いるために、単一の筐体内に備えられることが好適であるが、独立したそれぞれの装置をLANケーブルや同軸コード等で接続して用いてもよい。
また、制御部100が、他の部位、例えば記憶部110を含むようなワン・チップや小数チップの構成であってもよい。
また、各部位は、同一の通信装置内で、制御部100でハードウェア資源を使用して実行されるプログラムとして実装されてもよい。
【0022】
〔通信システムXの無線通信装置10−1の受信制御処理〕
ここで、まずは図3を参照して、本発明の実施の形態に係る通信システムXの子局である無線通信装置10−1を代表例として、受信制御処理について詳しく説明する。
無線通信装置10−1は、上述したように、音声通信について、全局通信(裸通信)だけではなく、グループ内通信も行うことができ、これらを動作モードにより切り替えて使用する。また、無線通信装置10−1は、列車に搭載されている列車搭載無線通信装置20(図1参照)からの電波(トーン信号)を受け、警報音を鳴らし、列車2が接近したことを知らせることもできる。このため、無線通信装置10−1は、他の無線通信装置10−2〜10−nや列車搭載無線通信装置20や親局無線通信装置30から受信した信号により、各動作モードを切り替えて通話や警報音の報知を行う受信制御処理をする。
以下で、各ステップを参照して、具体的な受信制御処理について説明する。ここでは、無線通信装置10−1が、全局音声通話モードであり、受信待機している場合について説明する。
この受信制御処理は、ハードウェア資源を用いて、無線通信装置10−1の制御部100が、主に記憶部110内の制御プログラムの各部位を用いて実行することで実現することができる。
【0023】
ステップS100において、送受信部190は、電波信号受信処理を行う。具体的には、プレストーク方式の単一周波数搬送波無線機の電波信号を受信して復号する。この電波信号には、上述したように、所属グループを示すグループ番号データ、音声信号、トーン信号が含まれる。
送受信部190は、復号した信号を、DMA(ダイレクト・メモリ・アクセス)等を用いて記憶部110に記憶するか制御部100に直接送信する等の処理を行う。
【0024】
ステップS101において、制御部100は、受信した電波信号がトーン信号であるかどうか判定する。
ここでは、制御部100は、所定距離以内に列車2(図1)が近づいている場合には、警報信号トーン信号5を電波信号として受信できるため、Yesと判定する。また、所定時間以内にトーン信号を受信していて、無線通信装置10−1が警報音報知モードになっている場合にも、Yesと判定する。それ以外の場合には、Noと判定する。
Yesの場合は、制御部100は処理をステップS107に進める。
Noの場合は、制御部100は処理をステップS102に進める。
【0025】
ステップS102において、トーン信号を受信していない場合、制御部100は受信した電波信号にグループ番号データが含まれているか判定する。
Yes、すなわちグループ番号データが含まれている場合、制御部100は処理をステップS104に進める。
No、すなわち音声データのみである場合は、制御部100は処理をステップS103に進める。
【0026】
ステップS103において、制御部100は、全局通話切り替え部118を用いて、全局音声通話モード切り替え処理を行う。
この処理において制御部100は、受信した電波信号にグループ番号データが含まれておらず音声データのみである場合、全局通信を行う全局音声通話モードであると判断する。このため、制御部100は、記憶部110の動作モードを全局音声通話モードに切り替える。
その後、制御部100は、処理をステップS106に進める。
【0027】
ステップS104において、制御部100は、受信した電波信号に含まれるグループ番号データが、無線通信装置10−1と所属グループと同一グループのグループ番号データであるか判定する。
Yesの場合、制御部100は、処理をステップS105に進める。
Noの場合、制御部100は、同一グループでないため音声通話は成立しないとして、受信制御処理を終了して、待機状態に戻る。
【0028】
ステップS105において、制御部100は、グループ内通話切り替え部117を用いて、グループ内通話切り替え処理を行う。
具体的には、制御部100は、グループ番号データが同一グループであった場合には、グループ内通話モードに切り替えて音声通話を成立させる。
その後、制御部100は、処理をステップS106に進める。
【0029】
ステップS106において、制御部100は、音声通話処理を行う。
ここでは、制御部100は、受信した音声データを復号化して、音声入出力部150のD/Aコンバータで音声信号に変換して、アンプを解してスピーカから再生出力する。
これにより、他の無線通信装置10−2〜10−nの同一のグループ内通話や全局音声通話により、無線通話を行うことができる。
受信した音声データを再生し終えると、制御部100は、待機状態に戻る。
【0030】
ステップS107において、列車からのトーン信号を受信できた場合、制御部100は、スイッチ部140のプレスボタンが押下されたプレスON状態であるか判定する。このプレスON状態は、例えば、信号受信前に制御部100が割り込み等によりプレスON検知処理を行って取得、変更することができる。
Yes、すなわちプレスボタンが押下されたことを検知した場合、制御部100は、処理をステップS109に進める。
No、すなわちプレスボタンの押下を検知できない場合、制御部100は、処理をステップS108に進める。
【0031】
ステップS108において、制御部100は、警告報知部115を用いて警報音報知処理を行う。
具体的には、制御部100は、動作モードを警報音報知モードに変更する。
また、制御部100は、音声入出力部150から警報ブザー音や「列車が近づいています」といった音声等を出力し続ける。
加えて、表示部130に警告を表示して、無線通信装置10−1のユーザに対して注意するように促す。
その後、制御部100は、処理をステップS110に進める。
【0032】
ステップS109において、制御部100は、警告停止部116を用いて、警報音停止処理を行う。
ここでは、制御部100は、列車2(図1)が接近する警告として、出力し続けられていた音声入出力部150から警報ブザー音や音声や表示部130の表示等を、元の通話時の状態に戻す。
この警報音停止処理が行われると、一度停止した警報ブザー音や音声は、トーン信号が所定時間受信されなくなるまでは、トーン信号が検出されても鳴らさない。
なお、この際に、表示部130の表示等はそのままの状態とし、音声のみ音声入出力部150から出力しないように設定する等の構成も可能である。
また、逆に所定時間経過した場合に、トーン信号が検出されると、警報音を再度鳴らすような設定とすることも可能である。これにより、警報音を切って作業をしていた際に「うっかり」列車が接近する場合の事故を防止することができる。
【0033】
次に、ステップS110において、制御部100は、トーン信号が受信不可になっているか判定する。すなわち、所定の間隔で送信されているトーン信号が、送受信部190から所定期間受信できないかどうかを判定する。
Yes、すなわちトーン信号を所定期間受信できなくなった場合は、制御部100は、処理をステップS111に進める。
No、すなわちトーン信号を所定時間以内にまた受信した場合には、制御部100は、警報音報知モードのまま、次のトーン信号を受信するよう待機状態に戻る
【0034】
ステップS111において、制御部100は、警告停止部116を用いて、警報音報知解除処理を行う。
具体的には、制御部100は、音声入出力部150からの警報音や表示部130の表示等を、元の通話時の状態に戻す。
また、制御部100は、警報音報知モードをそれ以前のモードに変更し、通常の音声通話ができるようにする。
警報音報知モードを解除した後、制御部100は、次のトーン信号を受信するよう待機状態に戻る。その後、トーン信号が受信された場合には、警報音を報知することができる。
以上により、受信制御処理を終了する。
【0035】
〔通信システムXにおける動作モード切り替えの具体例〕
本実施形態においては、上述したような受信制御処理により、(1)全局音声通話方法と(2)グループ内通話方法との切り替えによる音声通信が可能である。これに加え、(3)トーン信号を受けて警報音を鳴らす列車接近警告制御方法を用いて、列車が接近したことを知らせることができる一波単信方式のプレストーク無線通信を実現することができる。
以下で、図4〜図7のタイミング図も参照して、これらの無線通信における具体的な処理の例について詳しく説明する。
【0036】
(全局音声通話方法)
上述したように、全局音声通話モードでは、無線通信装置10−1〜10−n、親局無線通信装置30(図1)、列車搭載無線通信装置20(図1)との間で無線通信を行うことができる。この全局音声通話モードでは、通信システムX内のすべての子局と音声による通話をすることができる。
図4を参照して、無線通信装置10−1と、無線通信装置10−31との間で全局音声通話モードで全局音声通話を行う例について詳しく説明する。ここで、無線通信装置10−31は、通話用の音声通信を開始する処理である「送信起動」をかける無線機である。
まず、ステップS211において、無線通信装置10−31の制御部100は、スイッチ部140の動作を検出し、全局音声通話モードへの切り替える。
次に、ステップS212において、無線通信装置10−31の制御部100は、スイッチ部140のプレスボタンの押下を検知するプレスON検知処理を行う。具体的には、制御部100は、プレスボタンが押下されていることをI/Oポートや割り込み等により検知し、プレスON状態に変更する。
プレスボタンの検知により、無線通信装置10−31は、制御プログラムにより送信起動をかける。送信起動した無線通信装置10−31は、グループ番号データを送信せずに、音声データだけを送信する(タイミングT201)。
【0037】
ここで、通信システムX内の無線通信装置10−1、無線通信装置10−32〜10−nのいずれかは、上述の受信制御処理に従い、音声データを受信する。
そして、音声データを受信した無線通信装置10−1は、上述の受信制御処理により、グループ番号データが受信されないことで全局通話と判断し、ステップS103の全局音声通話モード切り替え処理を実行する。
その後、無線通信装置10−1は、ステップS106の音声通話処理により、音声データを復号化して、音声入出力部150のスピーカ等から出力する。
【0038】
その後、ステップS213において、無線通信装置10−1の制御部100は、スイッチ部140のプレスボタンの押下を検知すると、音声入出力部150から音声データを入力するプレスON処理を行う。このステップS213のプレスON検知処理は、ステップS212のプレスON検知処理と同様に行う。
そして、無線通信装置10−1の制御部100は、音声入出力部150から入力した音声データを送受信部190から送信する(タイミングT202)。ここで、音声データのみを受信した無線通信装置10−1は、既に全局音声通話モードに切り替えられているため、グループ番号データは送信しない。
このように、全局音声通話モードの受信時には、自動的に音声のみを送信する全局音声通話を行うことができる。
【0039】
無線通信装置10−31では、無線通信装置10−1からの音声データを受信すると、上述のような受信制御処理を行い、ステップS106の音声通話処理を行う。
以上のような動作を繰り返して、無線通信装置10−31と無線通信装置10−1との間で、全局音声通話を行うことができる。
このように構成することで、プレススイッチを用いたプレストークを行う無線通信において、自動的に音声のみを送受信する全局音声通話モードへ切り替えることができる。このため、いちいち動作モードを切り替える必要がない。よって、無線通信装置10−1を用いる作業員が作業中で片手がふさがっている場合等の使い勝手がよくなるという効果が得られる。
【0040】
(同一グループでのグループ内通話方法)
上述したように、本発明の実施の形態に係る通信システムXは、同一グループ内の巡回監視用携帯無線機である無線通信装置10−1〜10−nは、グループ内で音声通話を行うことができる。
以下で、図5を参照して、このグループ内通話方法の例について説明する。ここでは、同一のグループに属する無線通信装置10−2と、無線通信装置10−1との間で音声通話を行う例について詳しく説明する。
まず、ステップS311において、「送信起動」をかける無線機である無線通信装置10−2の制御部100は、スイッチ部140の動作を検出し、グループ内通話モードに動作モードを切り替える。
次に、ステップS312において、無線通信装置10−2の制御部100は、ステップS312と同様にプレスON検知処理を行う。
そして、無線通信装置10−2の制御部100は送信起動をかけ、無線通信装置10−2は、グループ番号データとともに音声データを送信する(タイミングT301)。
【0041】
通信システムX内の無線通信装置10−1、10−3〜10−nは、無線通信装置10−2からのデータを受信し、上述の受信制御処理を行い、グループ番号データが所属するグループと一致するデータかを判断する。
この上で、無線通信装置10−1は無線通信装置10−2と同一のグループのため、無線通信装置10−1の制御部100は、ステップS105のグループ内通話切り替え処理を行う。すなわち、無線通信装置10−1の制御部100は、グループ番号データを送信するモードへ切り替える。なお、無線通信装置10−1がグループ1−1(図1参照)に属している場合、同一のグループ番号データを受信した無線通信装置10−1、10−3、10−4は、自動的にグループ内通話モードに切り替えることができる。
その後、無線通信装置10−1の制御部100は、ステップS106の音声通話処理を行う。
また、ステップS313において、無線通信装置10−1の制御部100は、プレススイッチ起動時に、プレスON検知処理を行う。このプレスON検知処理は、ステップS212(図4)のプレスON検知処理と同様に行う。
ここで、無線通信装置10−1の制御部100は、既にグループ内通話モードに切り替えられているため、無線通信装置10−1の制御部100は、音声入出力部150から入力した音声データに加えてグループ番号データを送受信部190から送信する(タイミングT302)。
【0042】
無線通信装置10−2では、無線通信装置10−1からの音声データを受信すると、上述のような受信制御処理を行い、同一グループであるので、ステップS106の音声通話処理を行う。
以上のような動作を繰り返して、無線通信装置10−2と無線通信装置10−1との間で、グループ内での音声通話を行うことができる。
【0043】
(同一グループでなく、グループ内通話が不成立の場合)
次に、図6を参照して、通信システムXのグループ内通話方法において、同一のグループに属しない無線通信装置10−31と、無線通信装置10−1との間での通信の例について説明する。この例では、無線通信装置10−31と、無線通信装置10−1とが別グループのため、通信が不成立となる。
まず、ステップS411において、無線通信装置10−31の制御部100は、ステップS311と同様にスイッチ部140の動作を検知して、動作モードを切り替えるグループ内通話モード変更処理を行う。
また、ステップS412において、無線通信装置10−31の制御部100は、ステップS312と同様のプレスON検知処理を行う。
そして、無線通信装置10−31の制御部100は、送信起動をかけて、グループ番号データと音声データとを送信する(タイミングT401)。上述したように、グループ番号データを送信することで、同一グループ内のみ通話が可能となる。
【0044】
ここで、上述のように、無線通信装置10−1と無線通信装置10−31とは、所属するグループが異なるため、グループ番号データも異なる。
このため、無線通信装置10−1は、上述の受信制御処理により、自局のグループ番号と一致しないデータが受信された場合は、他局のグループ通話と判断し、音声通話をおこなわない。すなわち、音声通話は不成立となる。この際、無線通信装置10−1は、グループ内通話モードへの切り替えも行わない。
以上のように構成することで、無線通信装置10−1が所属するグループにおいてグループ内通話を行ったときだけ、グループ番号データにより動作モードを変更することができる。このため、不意に動作モードが切り替わるのを防ぐことができ、ユーザの予測可能性を向上させることができる。よって、自動的に動作モードを切り替える際の使い勝手を向上させることができる。
【0045】
(列車接近警告制御方法)
また、上述のように本発明の実施の形態に係る通信システムXにおいては、列車2(図1参照)が接近してきたことを巡回監視用無線機である無線通信装置10−1〜10−nに知らせ、警報音を鳴らすことができる。
以下で、図7を参照して、無線通信装置10−1と、列車2に備えられた列車搭載無線通信装置200との間での、列車接近警告制御の動作例について説明する。
【0046】
まず、列車搭載無線通信装置200の制御部は、トーン信号送信部260(図1参照)により、所定の周期で、列車2の接近を知らせるトーン信号の間欠送信を行う(タイミングT501)。
【0047】
ここで、無線通信装置10−1の制御部100は、上述の受信制御処理において、列車2から送信されるトーン信号を受信すると、ステップS108の警報音報知処理を行う。
これにより、無線通信装置10−1は、警報音報知モードに設定され、警報ブザーや音声出力を行い、警告表示を行い、列車が接近していることを報知することができる。
【0048】
ここで、列車2が走行中、列車搭載無線通信装置200の制御部は、トーン信号送信部260を送信起動し、所定のトーン信号を連続的に送信する(タイミングT502)。
その際に、スイッチ部140のプレスボタンが押下されたことを検知すると、ステップS501において、無線通信装置10−1の制御部100は、プレスボタンの押下処理を行う。このプレスボタン押下処理は、上述のステップS213のプレスON検知処理と同様にプレスボタンの検出を行いプレスON状態にする処理である。
このプレスON状態の際には、無線通信装置10−1の制御部100は、上述の受信処理により、ステップS109の警報音停止処理を実行する。
ここで、トーン信号は、上述のように連続的に送信されている(タイミングT503)。
しかしながら、上述のように、プレススイッチが押下されたプレスON状態の場合、警報ブザー音や音声は停止される。すなわち、トーン信号が検出されても音声入出力部150から警報ブザー音や音声を出力しない。
その後、トーン信号が所定時間受信されなくなった場合(タイミングT504)、無線通信装置10−1の制御部100は、ステップS111の警報音停止処理を行う。
【0049】
そして、再び列車2が接近して(タイミングT506)、送信されたトーン信号が無線通信装置10−1により検知可能な状態になる。
この場合、無線通信装置10−1の制御部100は、またステップS108の警報音報知処理を行うことができる。
【0050】
なお、トーン信号の受信については、列車から所定の周期で連続に送信される。このため、無線通信装置10−1は、最初の検出に失敗しでも、その後に検出されれば、警報音報知モードに変更し、警報ブザー音や音声を出力し、警告表示をすることができる。これにより、トーン信号の受信の未検出について心配する必要がないという効果が得られる。
また、例えば、電波伝搬状況点検動作中で連続的にトーン信号を発生している列車2(図1)からのトーン受信制御については、巡回監視用無線機である無線通信装置10−1〜10−nの間で、電波伝搬状況点検通信動作及び列車2からのトーン信号送信は、お互い間欠送信で行っているため、長時間の電波衝突による通信異常は起こりにくい。
さらに、音声通話中の列車2からのト一ン受信制御については、音声通話時間を制限して連続通話を行えないようにしたり、音声データとトーン信号とを所定時間毎に入れ換えて送信することで、無線通信装置10−1〜10−nにて列車の接近を検知することができる。この際に、警報音を鳴らす列車接近距離については、列車2から送信されるトーン信号のパワーを長生し、届く距離を変化させて運用することが可能である。
以上のような構成により、通信システムXは、特に鉄道施設など、広い範囲に存在している各種施設の巡回監視等に好適に用いることができる。
【0051】
以上のように構成することで、以下のような効果を得ることができる。
まず、従来、例えば、単一周波数の搬送波を使用して親局無線機と数の搬送波を使用して親局無線機と1以上の子局無線機の構成でグループ分けされ、プレストーク方式による音声通信および電波伝搬状況点検動作を行う無線通信システム(例えば、特許第3330462号を参照)においては、巡回監視用携帯無線の子局間での音声通話は、全局通信(裸通信)で行っていた。
さらに、従来技術1のプレストーク方式の単一周波数搬送波の無線通信装置は、音声通話に制限をかける同一グループ内通話と、全局通信とを自動的に切り替えることができなかった。
これに対して、本発明の実施の形態に係る無線システムXにおいては、少なくとも2つの状態に係る動作モードを用いて、(1)グループ番号データが付加されていない音声データを受信したとき、動作モードを前記全局通話モードに設定し、(2)グループ番号データが付加されている音声データを受信したとき、受信したグループ番号データが自局のグループ番号データと一致するか判断し、一致すると判断したとき、動作モードを前記グループ通話モードに設定するように制御する。
これにより、スイッチ部140による動作モードの切り替え操作を行わなくても、全局音声通信/グループ間音声通信に自動的に切り替えが可能になる。このため、用途に応じて無線通信の運用を安全に敏速にすることが可能となる。
【0052】
また、従来技術1のようなプレストーク方式の単一周波数搬送波の無線通信方法を用いた無線通信装置においては、列車などの接近を知らせる手段は音声通信で行い、自動的に無線通信装置へ報知し、警報音を鳴らすことはできなかった。
これに対して、本発明の実施の形態に係る無線システムXにおいては、保守点検等の巡回監視作業中、列車などが接近したときに無線通信装置から警報音等を鳴らし、列車が接近していることを知らせることができる。
これにより、列車の接近報告を音声通話で行わなくても自動的に警報音が鳴るので、列車を目視する前に接近情報を知ることができる。これにより、安全に保守点検を行うことができる。
また、プレスボタンにより該警報音等を停止することができ、巡回監視作業を妨げることが少なくなり、使い勝手がよくなるという効果が得られる。
【0053】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
1−1〜1−n グループ
2 列車
3 同一グループ内音声通信
4 全局音声通信
5 トーン信号
10−1〜10−n 無線通信装置
20 列車搭載無線通信装置
30 親局無線通信装置
100 制御部
110 記憶部
115 警告報知部
116 警告停止部
117 グループ内通話切り替え部
118 全局通話切り替え部
130 表示部
140 スイッチ部
150 音声入出力部
190 送受信部
260 トーン信号送信部
X 通信システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレストーク方式の単一周波数搬送波の無線通信装置において、
音声データにグループ番号データを付加して送信するグループ通話モードと、音声データのみ送信する全局通話モードの少なくとも二つの状態を記憶する記憶部と、
前記状態により前記無線通信装置の動作モードを切り替える制御部を備え、
前記制御部は、
前記グループ番号データが付加されていない音声データを受信したとき、該音声データを復調して出力するとともに、前記動作モードを前記全局通話モードに設定し、
前記グループ番号データが付加されている音声データを受信したとき、受信したグループ番号データが自局のグループ番号データと一致するか判断し、一致すると判断したとき、受信した音声データを復調して出力するとともに、前記動作モードを前記グループ通話モードに設定する
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
移動体に搭載された無線通信装置の警報信号出力手段から所定周期で送出されたトーン信号を受信したときに警報を報知する警報手段と、
前記警報を停止する警報停止手段とを更に備え、
前記制御部は、
前記警報停止手段により、前記警報を停止した後、前記トーン信号を前記所定周期よりも長い期間にわたって受信していないと判断されるまで、前記警報手段の動作を停止させる
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−135503(P2011−135503A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295369(P2009−295369)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】