説明

無線通信装置

【課題】アンテナと高周波回路部との間を低損失で信号伝送が可能な低コストの伝送線路を備える無線通信装置を提供する。
【解決手段】アンテナ部122が高周波回路部111の入出力部112bから離れた位置に配置されており、アンテナ部122のアンテナ放射導体部124と高周波回路部111の入出力部112bとの間を伝送線路部130で接続している。伝送線路部130は、アンテナ部121、122と同じ低損失基材120に形成され、アンテナ部121、122と伝送線路部130とが一体となって伝送線路一体アンテナ101を形成している。伝送線路一体アンテナ101は、筐体102内に搭載されたときに弾性部材141〜144で回路基板110及びメインのグランドパターン113に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナと該アンテナを高周波回路部に接続するための伝送線路とを一体化した伝送線路一体アンテナを備える無線通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話に高機能な情報端末機能を持たせたスマートフォンの需要が高まっている。スマートフォンでは、従来の携帯端末に比べて大容量の無線データ通信の利用が要求される。また、パーソナルコンピュータ(PC)でも無線通信による利用が増大しており、やはり大容量の無線データ通信が必要となっている。このようなニーズに対応するために、WLAN(IEEE802.11n)、WiMax、LTE等の通信規格が順次導入されている。そのような中で、通信品質や伝送容量を向上させる主要技術の一つとして、少なくとも同じ受信周波数帯に対して複数のアンテナを用いて通信を行うMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)と呼ばれる技術が重要となっている。
【0003】
MIMO技術を適用するためには、複数のアンテナが同じ周波数帯の別々の信号をそれぞれ受信するようにアンテナ間の相関を低く(相関係数を小さく)保つことが重要である。一般に相関係数は、それぞれのアンテナ間の距離を十分に大きくすることで低減することができる。
【0004】
スマートフォンに代表される各種情報通信端末に複数のアンテナを搭載する場合、高周波信号を処理する回路部に複数のアンテナを接続するためのそれぞれの入出力部は、相互に近接させて所定の領域内に設けられる。そのため、アンテナ間の距離を十分に大きくしようとすると、少なくとも一部のアンテナとその入出力部との間の距離を大きくする必要があり、その間を接続するための何らかの伝送線路が必要となる。
【0005】
アンテナと高周波回路部の入出力部とを接続する伝送線路に関する技術が、特許文献1乃至3に開示されている。特許文献1では、図6(a)に示すように、アンテナ900と主回路基板901とを離隔して配置し、その間を接続する伝送線路として同軸ケーブル902を用いている。
【0006】
また特許文献2では、図6(b)に示すように、給電放射電極911が形成された誘電体基体912から外側に向けて突出した誘電体材料の張り出し壁913をグランド部914の表面上に配置し、張り出し壁913の上に給電放射電極911の給電側端部915と回路の入出力部916とを結ぶ設定線路長の伝送線路917を形成している。この伝送線路917は、無線通信用の回路から給電放射電極911へ供給される給電電力の位相を調整する位相調整手段となっている。伝送線路917をマイクロストリップラインとすることが記載されている。
【0007】
さらに特許文献3では、図6(c)に示すように、絶縁体シート923の一方主面に放射電極921及び放射電極921から絶縁されたアース電極924を、他方主面に伝送線路922をエッチング等の手段により形成した平面アンテナユニット920が開示されている。伝送線路922の放射電極921と反対側の端部には、半田付けによりコネクタ端子を接続するための伝送線路接続部926及びアース電極接続部925、927を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US7492321
【特許文献2】特開2007−306507号公報
【特許文献3】特開平10−75115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のように伝送線路として同軸ケーブルを用いた場合には、低損失な信号伝送が可能になるものの、同軸ケーブルが高コストであるのに加えて、コネクタや整合回路等の部品点数が増えて高コストになるといった問題がある。また、特許文献2に記載の伝送線路は、アンテナのインピーダンス調整を目的としたもので距離が短く、アンテナと高周波回路の入出力部との間の比較的長い距離を低損失で伝送させることは困難である。
【0010】
さらに、特許文献3では、伝送線路がアース電極と組み合わせてマイクロストリップラインを形成しているが、放射電極から比較的短い距離のところにコネクタを接続している。絶縁体シート及び伝送線路を長くすることも考えられるが、絶縁体シートの一端に設けられたアース電極接続部だけでアース電極を小型高周波機器の主地板に接続する構成では、距離が長くなった伝送線路での損失を低減するのは困難である。
【0011】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、アンテナと高周波回路部との間を低損失で信号伝送が可能な低コストの伝送線路を備える無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の無線通信装置の第1の態様は、1以上のアンテナ部と、前記アンテナ部に接続されて所定の通信処理を行う高周波回路部と、一方の面に前記高周波回路部が搭載され他の面に主地板が形成された回路基板とを筺体の内部に備える無線通信装置であって、前記1以上のアンテナ部は、それぞれのアンテナ放射導体部が低損失基材上に形成されており、前記アンテナ部の少なくとも1つは、該アンテナ部のアンテナ放射導体部と前記高周波回路の入出力部とが所定距離以上離れて配置され、前記離れて配置されたアンテナ部のアンテナ放射導体部に接続されて前記入出力部の位置まで前記低損失基材の一方の面上に導体パターンで形成された信号線が、前記低損失基材の他方の面に形成されたグランドパターンと前記低損失基材の厚さで規定される間隔をおいて配置されてマイクロストリップラインを形成する伝送線路部をさらに備え、前記信号線の前記アンテナ放射導体部とは反対側の端部が所定の弾性部材で前記入出力部に接続され、前記グランドパターン上の前記信号線の両端部近傍を含む2点以上が別の弾性部材を介して前記主地板に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の無線通信装置の他の態様は、前記アンテナ部を2以上備えて少なくとも1つの受信帯においてMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)動作することを特徴とする。
【0014】
本発明の無線通信装置の他の態様は、前記アンテナ放射導体部は、前記グランドパターンが形成されている領域を除く前記低損失基材の片面または両面に形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の無線通信装置の他の態様は、前記離れて配置されたアンテナ部のアンテナ放射導体部と前記入出力部とは、50mm以上離れていることを特徴とする。
【0016】
本発明の無線通信装置の他の態様は、前記低損失基材の厚さは、0.2mm以上であることを特徴とする。
【0017】
本発明の無線通信装置の他の態様は、前記低損失基材は、可とう性を有して前記筺体の形状に合わせて変形させて収納可能であることを特徴とする。
【0018】
本発明の無線通信装置の他の態様は、前記低損失基材は、内部に独立気泡を含む樹脂発泡体であることを特徴とする。
【0019】
本発明の無線通信装置の他の態様は、前記樹脂発泡体は、前記独立気泡の発泡径が20μm以下であることを特徴とする。
【0020】
本発明の無線通信装置の他の態様は、前記伝送線路部における前記低損失基材及び前記グランドパターンの幅は8mm以下であり、前記伝送線路部が前記アンテナ放射導体部に対して略90度折り曲げられて前記筐体の壁面に沿って配置されることを特徴とする。
【0021】
本発明の無線通信装置の他の態様は、前記伝送線路部は、前記グランドパターンを前記筺体の壁面側に向けて配置されることを特徴とする。
【0022】
本発明の無線通信装置の他の態様は、前記回路基板は、回路ブロックを2以上搭載してそれぞれを電磁気的に分離するための金属枠を備え、前記伝送線路部を形成する前記低損失基材及び前記グランドパターンが前記回路基板と同程度の幅を有し、前記グランドパターンが前記金属枠に押し当てられて載置されていることを特徴とする。
【0023】
本発明の無線通信装置の他の態様は、前記グランドパターンは、100μm以上の厚さを有していることを特徴とする。
【0024】
本発明の無線通信装置の他の態様は、前記低損失基材の前記信号線が形成されている面上に、スルーホールを介して前記グランドパターンに接続された熱拡散パターンが前記信号線から200μm以上離れて形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、アンテナと高周波回路部との間を低損失で信号伝送が可能な低コストの伝送線路を備える無線通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係る無線通信装置の構成を示す底面図及び断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る無線通信装置の部分構成を示す底面図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る無線通信装置の構成を示す底面図及び断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態に係る無線通信装置の構成を示す底面図及び断面図である。
【図5】伝送線路一体アンテナを内蔵しない従来の無線通信装置の底面図及び側面図である。
【図6】アンテナと高周波回路部とを接続する伝送線路の従来例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の好ましい実施の形態における無線通信装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一機能を有する各構成部については、図示及び説明簡略化のため、同一符号を付して示す。
【0028】
本発明の第1の実施形態に係る無線通信装置を、図1を用いて説明する。図1(a)は第1の実施形態の無線通信装置100の構成を示す底面図であり、図1(b)は同図(a)に示すA−A線における断面図である。無線通信装置100は、無線通信機能を有する高周波回路部111を搭載した回路基板110と、2つのアンテナ部121、122を搭載した低損失基材120と、必要な電力を供給するバッテリ104と、これらを収納する筺体102と、使用者への表示等を行うディスプレイ部(LCDなど)103とを備えている。図1(a)に示す底面図は、筺体102の裏面とバッテリ104を除いて無線通信装置100をバッテリ104側から見たものである。
【0029】
アンテナ部121、122は、低損失基材120の両端部に形成されたそれぞれアンテナ放射導体部123、124を有している。アンテナ放射導体部123、124は、低損失基材120の一方の面または両面に銅箔ラミネート,メッキまたは蒸着を用いて形成することができる。
【0030】
本実施形態の無線通信装置100は、少なくとも同じ受信周波数帯で動作する2つのアンテナ部121、122を搭載しており、MIMO動作するスマートフォンあるいはPC等に適用することができる。MIMO動作させるためには、2つのアンテナ部121、122間の距離を大きくして相関を低く保つのがよい。そこで、無線通信装置100ではアンテナ部121、122を筐体102の長手方向の両端部に配置するものとし、低損失基材120の長さを筐体102の長手方向の長さに略等しくなるようにしてその両端部にそれぞれアンテナ放射導体部123、124を形成している。
【0031】
アンテナ部121、122は、ともに高周波回路部111のそれぞれの入出力部112a、112bに接続されて動作する。また、2つの入出力部112a、112bは、相互に近接して配置される。これより、2つのアンテナ部121、122を離して配置した場合には、少なくともいずれか一方が入出力部112aまたは112bから離れた位置に配置される。そのため、離れた位置に配置されたアンテナ部121または122と入出力部112aまたは112bとを接続するための伝送線路が必要となる。
【0032】
本実施形態では、アンテナ部122が高周波回路部111の入出力部112bから離れた位置に配置されており、アンテナ部122のアンテナ放射導体部124と高周波回路部111の入出力部112bとの間を伝送線路部130で接続している。伝送線路部130は、アンテナ部121、122と同じ低損失基材120上に形成され、アンテナ部121、122と伝送線路部130とが一体となって伝送線路一体アンテナ101を形成している。アンテナ放射導体部124に接続された伝送線路部130は、入出力部112bに接続される。
【0033】
伝送線路部130は、低損失基材120の一方の面上にパターニングされた信号線131を有し、低損失基材120の他方の面上にはグランドパターン132が形成されている。信号線131とグランドパターン132とは低損失基材120の厚さに相当する距離だけ離れており、両者を組み合わせてマイクロストリップラインが形成されている。低損失基材120の厚さは、少なくとも0.2mmを有するのが好ましい。なお、アンテナ放射導体部123、124がグランドパターン132と同じ面上にも形成されるときは、アンテナ放射導体部123、124が形成される領域を除く領域にグランドパターン132が形成される。
【0034】
低損失部材120は、可とう性を有しているのが好ましい。これにより、アンテナ部121、122及び伝送線路部130を搭載した低損失部材120を、筐体102の形状に合わせて変形させることができ、伝送線路一体アンテナ101を筐体102内の小さなスペースに容易に搭載できるようになる。このとき伝送線路一体アンテナ101を粘着テープまたは熱溶着等によって筐体102の内側に固定してもよい。また、このような低損失部材120としては誘電正接が0.01以下のものを使用することが好ましい。例えば内部に独立気泡を含む樹脂発泡体を用いることができる。樹脂発泡体は、発泡径が20μm以下の気泡からなるのが好ましい。低損失部材120に樹脂発泡体を用いた場合には、アンテナ放射導体部123、124、信号線131、及びグランドパターン132を無電解メッキで形成することができる。また、無電解メッキした後にさらに電界メッキを施すことで、放射導体部123、124、信号線131、及びグランドパターン132の導体層を厚くすることができる。
【0035】
本実施形態では、伝送線路一体アンテナ101を筐体102内の所定の位置に収納することでアンテナ部121、122及び伝送線路部130を一体に搭載することができる。伝送線路一体アンテナ101を筐体102内の所定の位置に配置したとき、アンテナ部121のアンテナ放射導体部123が入出力部112aに接続され、伝送線路部130の信号線131のアンテナ部122が接続されている端部とは反対側の端部が入出力部112bに接続されるようにするために、高周波回路部111側または低損失基材120側にそれぞれ弾性部材141、142を設けている。
【0036】
また、低損失基材120の他方の面に形成されているグランドパターン132が、無線通信装置100の主地板である回路基板110のグランドパターン113に接続されるようにするために、伝送線路部130の両端近傍にそれぞれ弾性部材143、144を設けている。弾性部材143、144も、高周波回路部111側または低損失基材120側のいずれかに設けられる。このように、弾性部材143、144を設けて伝送線路部130の両端近傍でグランドパターン132とグランドパターン113とが接続されるようにすることで、距離の長い伝送線路部130に対して伝送損失の低いマイクロストリップラインを形成することができる。
【0037】
本実施形態の無線通信装置100では、アンテナ放射導体部124と高周波回路部111の入出力部112bとの距離が、例えば筺体102の長手方向の長さの半分程度に相当する50mm以上であっても、2.5GHz付近において伝送損失が0.2dB以下の低損失な伝送線路部130を実現することができる。
【0038】
上記のような弾性部材141〜144を設けることにより、アンテナ部121、122と伝送線路部130とを一体化した伝送線路一体アンテナ101を筐体102内の所定の位置に搭載するだけで、アンテナ部121、122を回路基板110に接続し、グランドパターン132をメインのグランドパターン113に接続することができる。本実施形態では、弾性部材141〜144の弾性力により、アンテナ放射導体部123と入出力部112aとの接続、信号線131と入出力部112bとの接続、及びグランドパターン113と132との接続を安定的に維持することができる。弾性部材141〜144として、例えばバネを用いることができる。
【0039】
本実施形態の無線通信装置100では、アンテナ部122と高周波回路部111とを接続する伝送線路として、低損失基材120の面上に導体パターンで形成した信号線131を用い、アンテナ部121,122及び伝送線路部130を一体化して伝送線路一体アンテナ101を形成していることから、同軸ケーブルを用いた従来の無線通信装置に比べて部品点数を削減して低コスト化を実現することができる。
【0040】
アンテナ部121,122及び伝送線路部130をFPCを用いて形成することも可能であるが、FPCは通常基材の厚さが0.05μm程度の誘電体で構成されていることから、例えば50Ωで伝送線路を構成するためには信号線の線幅を非常に細くする必要があり、信号線における導体損が顕著になる。また、グランドレベルも不安定になるため、ノイズによる影響も問題となる。これに対し本実施形態の無線通信装置100では、低損失基材120の厚さを0.2mm以上としていることから、信号線131の断面積をある程度以上確保でき、生じる導体損を低減することができる。また、グランドレベルを安定化させてノイズの影響も低減させることができる。
【0041】
伝送線路として回路基板上にマイクロストリップラインを形成する場合、従来より、回路基板として加工性がよく低コスト化の進んだガラスエポキシ基板(FR−4)が用いられている。しかし、ガラスエポキシ基板は誘電特性に乏しく、これを用いて距離の長い伝送線路を形成した場合には誘電体損が顕著となる。これに対し、本実施形態の無線通信装置では、樹脂発泡体のような低損失基材を用いてマイクロストリップラインを形成していることから、誘電体損を大幅に低減することができる。
【0042】
(第2実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る無線通信装置を、図2を用いて説明する。図2は第2実施形態の無線通信装置200の部分構成を示す底面図である。同図には、低損失基材220にアンテナ部221、222及び伝送線路部230が形成されて一体化された伝送線路一体アンテナ201の展開図が示されており、これを内蔵する無線通信装置200の筐体102が破線で示されている。本実施形態でも、低損失基材220が可とう性を有しており、例えば内部に独立気泡を含む樹脂発泡体で形成されている。
【0043】
図2に示すように、本実施形態の伝送線路一体アンテナ201は、筐体102からはみ出す大きさに形成されている。すなわち、低損失基材220のアンテナ部221、222を搭載する部分が図面上下方向及び左右方向に筐体102からはみ出すように形成されている。また、低損失基材220の伝送線路部230を搭載する部分が図面左右方向のいずれか一方(図2では左方向)に筐体102からはみ出すように形成されている。それぞれのはみ出し幅は、無線通信装置200の厚さ以下とする。
【0044】
伝送線路一体アンテナ201を上記のように形成することで、これを筐体102内に収納するときに、図2に矢印で示すように、低損失基材220を筐体102の側面に沿って厚さ方向に略90度折り曲げて収納させることができる。伝送線路部230を筺体102の側面に沿って収納させるためには、伝送線路部230に位置する低損失基材及びグランドパターンの幅を無線通信装置200の厚さより小さくするのがよく、8mm以下とするのが好ましい。これにより、アンテナ部221、222及び伝送線路部230を、筐体102の壁面に沿って設けられたわずかな空間に配置させることが可能となる。なお、伝送線路部230を筺体102の側面に沿って折り曲げるときは、伝送線路部230に位置するグランドパターンが外向き(筺体102の壁面に面する側)となるように折り曲げるのがよい。これにより、信号線231に外部からノイズが混入するのを低減することができる。また使用時に、伝送線路に対する人体手部の影響を受けにくくすることができる。
【0045】
なお、本実施形態では、アンテナ部221、222のアンテナ放射導体部223、224と図示しない高周波回路部の入出力部とを接続する弾性部材241、242、及び低損失基材220の他方の面に形成されているグランドパターンと回路基板のグランドパターン(いずれも図示せず)とを接続する弾性部材243、244は、いずれも筐体102に内蔵される。
【0046】
(第3実施形態)
本発明の第3の実施形態に係る無線通信装置を、図3を用いて説明する。図3(a)は第3実施形態の無線通信装置300の構成を示す底面図であり、図3(b)は同図(a)に示すA−A線における断面図である。図3(a)に示す底面図は、筺体102の裏面とバッテリ103を除いて無線通信装置300をバッテリ103側から見たものである。本実施形態の無線通信装置300は、低損失基材320に1つのアンテナ部322のみを搭載して伝送線路一体アンテナ301を形成している。
【0047】
無線通信装置に搭載するアンテナが1つであっても、アンテナの配置位置が制約されて高周波回路の入出力部から離れた位置にアンテナを配置する必要がある場合には、本実施形態の伝送線路一体アンテナ301を用いることができる。本実施形態では、高周波回路部111から離れた位置に配置されたアンテナ部322を、伝導線路330を用いて高周波回路部111の入出力部112bに接続している。すなわち、アンテナ部322のアンテナ放射導体部324が信号線331の一方の端部に接続され、信号線331の他方の端部が弾性部材342で入出力部112bに接続されている。また、低損失基材320の他方の面に形成されているグランドパターン332が、弾性部材343、344で回路基板110のグランドパターン113に接続されている。
【0048】
本実施形態の伝送線路一体アンテナ301は、アンテナ部322及びアンテナ部322から入出力部112bまでの区間の伝送線路部330に相当する大きさの低損失基材320を用いて構成されている。このように、本発明の無線通信装置ではアンテナの個数に合わせて低損失基材の大きさ及び形状を適切に決定し、これにアンテナ放射導体部、信号線、及びグランドパターンを形成することで伝送線路一体アンテナを作製することができる。そして、作製された伝送線路一体アンテナを弾性部材を用いて高周波回路の入出力部及び無線通信装置の主地板であるグランドパターンに接続することができる。
【0049】
(第4実施形態)
本発明の第4の実施形態に係る無線通信装置を、図4、5を用いて説明する。図4は、回路基板410と、低損失基材420に形成されたアンテナ部421、422及び伝送線路部430を有する伝送線路一体アンテナ401とを内蔵した第4実施形態の無線通信装置400をバッテリ側から見た底面図、及び側面図である。また図5は、伝送線路一体アンテナ401を内蔵しない従来の無線通信装置の底面図及び側面図を示す。
【0050】
本実施形態では、無線通信装置400が図5に示すようなIC、及びディスクリート部品等からなる回路ブロック451〜453を複数搭載した回路基板410を内蔵している。このような回路基板410では、回路ブロック451〜453を電磁気的に分離するために、それぞれを取り囲む金属枠454〜456が設けられている。従来は、電磁的なシールド効果を高めるために、金属枠454〜456のそれぞれが所定の金属蓋で覆われていた。また回路ブロック451〜453からはそれぞれ熱が放出されることから、回路基板410を内蔵する無線通信装置400に対しては、放出された熱を拡散して外部に放出できるようにするのが好ましい。
【0051】
そこで本実施形態では、図4に示すように、伝送線路一体アンテナ401の伝送線路部430の幅を回路基板410の幅と同程度の大きさとし、従来の金属蓋に代えて伝送線路部430で金属枠454〜456を覆うようにしている。伝送線路部430に形成されているグランドパターン432は、幅方向のほぼ全面に形成されて回路基板410と同程度の幅を有するものとする。そして、グランドパターン432を回路基板410側に向けて金属枠454〜456上に押し当てて載置する。これにより、従来の金属蓋と同様のシールド効果が得られるとともに、発信部品451〜453から放出された熱がグランドパターン432の面上を拡散して外部に放出されやすくなる。
【0052】
グランドパターン432上を熱が効率的に拡散できるようにするには、グランドパターン432の厚さを100μm以上とするのが好ましい。
【0053】
また、伝送線路430の信号線431にも熱が伝搬して外部に放出されやすくなる。熱の拡散をさらに効率的に行えるようにするために、信号線431から所定距離以上離れた低損失基材420の一方の面上に金属製の熱拡散パターン461をさらに設けてもよい。熱拡散パターン461は、信号線431から200μm以上離すのがよい。この熱拡散パターン461をスルーホールでグランドパターン432に接続することで、グランドパターン432に吸収された熱がスルーホールを介して熱拡散パターン461に伝達され、熱拡散パターン461から外部に放熱されるようになり、放熱効果をさらに高めることができる。さらに、本実施形態の伝送線路一体アンテナ401を搭載することで、バッテリ104からの放熱に対してもこれを拡散して外部に放出できるようにすることも可能である。
【0054】
本実施形態では、伝送線路部430の幅を回路基板410と同程度として回路基板410を覆うようにこれに載置されるが、従来用いられていた金属枠454〜456上に載置する金属蓋を不要としていることから、筺体102の厚さによる制約で低損失基材420が搭載できなくなるおそれはない。また、低損失基材420が可とう性を有していることから、低損失基材420が回路ブロック451〜453や金属枠454〜456の高さのばらつきを吸収してそれぞれに密着させることができる。これにより、シールド効果及び放熱効果を高めることが可能となる。
【0055】
本実施形態の伝送線路一体アンテナ401は、1枚の大きな基板となることから、これにマッチング回路部分を分布定数で構成したり、グランドパターン432の形状を変えることでアンテナ特性を向上させたり、グランドパターン432による不要な輻射を低減させることも可能となる。
【0056】
なお、本実施の形態における記述は、本発明に係る無線通信装置の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。本実施の形態における無線通信装置の細部構成及び詳細な動作等に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0057】
100、200,300 無線通信装置
101、201、301,401 伝送線路一体アンテナ
102 筺体
103 LCD
104 バッテリ
110、410 回路基板
111 高周波回路部
112a、112b 入出力部
113、132、332、432 グランドパターン
120、220、320、420 低損失基材
121、122,221、222、321 アンテナ部
123、124、223、224,323 アンテナ放射導体部
130,230,330、430 伝送線路部
131、231、331,431 信号線
141〜144、241〜244、341、343、344 弾性部材
451〜453 回路ブロック
454〜456 金属枠
461 熱拡散パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上のアンテナ部と、前記アンテナ部に接続されて所定の通信処理を行う高周波回路部と、一方の面に前記高周波回路部が搭載され他の面に主地板が形成された回路基板とを筺体の内部に備える無線通信装置であって、
前記1以上のアンテナ部は、それぞれのアンテナ放射導体部が低損失基材上に形成されており、
前記アンテナ部の少なくとも1つは、該アンテナ部のアンテナ放射導体部と前記高周波回路の入出力部とが所定距離以上離れて配置され、
前記離れて配置されたアンテナ部のアンテナ放射導体部に接続されて前記入出力部の位置まで前記低損失基材の一方の面上に導体パターンで形成された信号線が、
前記低損失基材の他方の面に形成されたグランドパターンと前記低損失基材の厚さで規定される間隔をおいて配置されてマイクロストリップラインを形成する伝送線路部をさらに備え、
前記信号線の前記アンテナ放射導体部とは反対側の端部が所定の弾性部材で前記入出力部に接続され、前記グランドパターン上の前記信号線の両端部近傍を含む2点以上が別の弾性部材を介して前記主地板に電気的に接続されている
ことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記アンテナ部を2以上備えて少なくとも1つの受信帯においてMIMO(Multiple-Input Multiple-Output)動作する
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記アンテナ放射導体部は、前記グランドパターンが形成されている領域を除く前記低損失基材の片面または両面に形成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記離れて配置されたアンテナ部のアンテナ放射導体部と前記入出力部とは、50mm以上離れている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記低損失基材の厚さは、0.2mm以上である
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記低損失基材は、可とう性を有して前記筺体の形状に合わせて変形させて収納可能である
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記低損失基材は、内部に独立気泡を含む樹脂発泡体である
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記樹脂発泡体は、前記独立気泡の発泡径が20μm以下である
ことを特徴とする請求項7に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記伝送線路部における前記低損失基材及び前記グランドパターンの幅は8mm以下であり、前記伝送線路部が前記アンテナ放射導体部に対して略90度折り曲げられて前記筐体の壁面に沿って配置される
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項10】
前記伝送線路部は、前記グランドパターンを前記筺体の壁面側に向けて配置される
ことを特徴とする請求項9に記載の無線通信装置。
【請求項11】
前記回路基板は、回路ブロックを2以上搭載してそれぞれを電磁気的に分離するための金属枠を備え、
前記伝送線路部を形成する前記低損失基材及び前記グランドパターンが前記回路基板と同程度の幅を有し、
前記グランドパターンが前記金属枠に押し当てられて載置されている
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の無線通信装置。
【請求項12】
前記グランドパターンは、100μm以上の厚さを有している
ことを特徴とする請求項11に記載の無線通信装置。
【請求項13】
前記低損失基材の前記信号線が形成されている面上に、スルーホールを介して前記グランドパターンに接続された熱拡散パターンが前記信号線から200μm以上離れて形成されている
ことを特徴とする請求項11または12に記載の無線通信装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−156657(P2012−156657A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12405(P2011−12405)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】