説明

無線通信装置

【課題】消費電力を低減させることができる。
【解決手段】本開示の一実施形態に係る無線通信装置は、受信部、送信部、及び再送制御部を含む。受信部は、他装置からの接続要求を示す第1接続要求フレームを受信する。送信部は、前記接続要求フレームに対する応答を示す接続許可フレームを送信する。再送制御部は、前記接続許可フレームを送信後に、他装置からの該接続許可フレームに対する応答を示す自装置宛ての第1確認応答フレームを受信するまで、該接続許可フレームを1回以上送信する。再送制御部は、他装置を送信先に含む第2確認応答フレーム、または他装置宛ての第2接続要求フレームを受信した場合に、接続許可フレームの送信を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信に関する。
【背景技術】
【0002】
近距離無線通信において、接続を要求するフレームであるC−Reqとこれに応答するフレームであるC−Accとをランダムバックオフすることにより、公平性を保ちつつ送信の衝突を回避する手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−79045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ネットワーク層を持たない1対1通信では、接続時に送信元(TxUID)が送信先(RxUID)を特定しないことを示すUnspecifiedの状態でC−Reqを送信する。この場合、C−Reqを複数の端末が受信したとき、C−Accがランダムバックオフで送信されることで衝突を起こさずに接続先が決定される。その後、接続相手に選ばれた端末はC−Accの送信を停止する。
このとき、上位プロトコルによってC−Accを送信してきた端末と接続するかどうかが決定されるまで、C−Accに対する応答を示すフレームであるACKは送信されない。従って、その決定がなされるまでの期間中、接続対象とならなかった他の端末は、再送タイマがタイムアウトする、または再送回数が上限に達するまでC−Accの再送を行うことになる。結果として、端末の電力が無駄に消費されることに加え、接続した端末のデータ伝送を阻害し伝送速度を落としてしまうという問題がある。
本発明の一観点は、消費電力を低減することができる無線通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係る無線通信装置は、受信部、送信部、及び再送制御部を含む。受信部は、他装置からの接続要求を示す第1接続要求フレームを受信する。送信部は、前記接続要求フレームに対する応答を示す接続許可フレームを送信する。再送制御部は、前記接続許可フレームを送信後に、他装置からの該接続許可フレームに対する応答を示す自装置宛ての第1確認応答フレームを受信するまで、該接続許可フレームを1回以上送信する。再送制御部は、他装置を送信先に含む第2確認応答フレーム、または他装置宛ての第2接続要求フレームを受信した場合に、接続許可フレームの送信を停止する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】第1の実施形態に係る無線通信装置を示すブロック図。
【図2】第1の実施形態に係る無線通信装置の動作例を示すシーケンス図。
【図3】第1の実施形態に係るテーブルに一例を示す図。
【図4】第2の実施形態に係る無線通信装置の動作例を示すシーケンス図。
【図5】第2の実施形態に係るテーブルの一例を示す図。
【図6】第3の実施形態に係る無線通信装置の動作例を示すシーケンス図。
【図7】隠れ端末問題が存在する場合のランダムバックオフの一例を示す図。
【図8】第4の実施形態に係る接続シーケンスのランダムバックオフのスロット長の一例を示す図。
【図9】複数の無線通信装置でランダムバックオフにおけるランダム値が等しくなった場合の接続シーケンスの一例を示す図。
【図10】B−ACKを受信できなかった場合の接続シーケンスの一例を示す図。
【図11】第5の実施形態に係る無線通信装置を示すブロック図。
【図12】第6の実施形態に係る無線通信装置を示すブロック図。
【図13】第7の実施形態に係る無線通信装置を示すブロック図。
【図14】第8の実施形態に係る無線通信装置を示すブロック図。
【図15】第9の実施形態に係る無線通信装置の示すブロック図。
【図16】第10の実施形態に係る無線通信装置を示すブロック図。
【図17】第11の実施形態に係る無線通信装置を示すブロック図。
【図18】第12の実施形態に係る無線通信装置を示すブロック図。
【図19】第13の実施形態に係る無線通信装置を示すブロック図。
【図20】第14の実施形態に係る無線通信装置を示すブロック図。
【図21】第15の実施形態に係る無線通信装置を示すブロック図。
【図22】第16の実施形態に係る無線通信装置を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本開示の一実施形態に係る無線通信装置について詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行うものとして、重ねての説明を省略する。
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る無線通信装置について図1のブロック図を参照して説明する。本実施形態では、ペイロードデータ送信側とペイロードデータ受信側とで同様の構成を用いる。
第1の実施形態に係る無線通信装置100は、受信部101、再送制御部102、及び送信部103を含む。
受信部101は、アンテナ、フィルタ、周波数変換器、低雑音増幅器、復調器、誤り訂正復号器、及びヘッダ解析器など無線通信システムの仕様に基づいて、送信されたデータを復調するのに必要な機能を含む。受信部101は、外部からデータを受信し、受信したデータのフレームを復調及び解析してペイロードデータと受信したヘッダ情報とを抽出する。
本実施形態では、ペイロードデータ受信側の場合、受信部101は、他の無線通信装置から接続を要求することを示す接続要求フレーム(以下、C−Reqという)、及びフレームの送受信に関する確認応答を示す確認応答フレーム(以下、ACKという)を受信する。C−Reqのヘッダ情報には、送信先アドレス(RxUID)、送信元アドレス(TxUID)が含まれる。なお、ペイロードデータは、例えば上位プロトコル管理またはホストシステム管理の記憶領域、外部IOなど必要な転送先に送られる。
ペイロードデータ送信側の場合、受信部101は、C−Reqに対して接続可能であることの応答を示す接続許可フレーム(以下、C−Accという)を受信して、C−Accのヘッダ情報を抽出する。
【0008】
再送制御部102は、受信部101からヘッダ情報を受け取る。ペイロードデータ受信側の場合、再送制御部102は、フレームの送信元及び送信先と再送制御部102の動作とを対応づけたテーブルを参照して、ヘッダのフレームタイプ、ヘッダ情報に含まれる送信先アドレス、送信元アドレス、フレームデータサイズ、及び受信誤りの有無をもとに、再送を行うかどうかの判定を含む装置全体の動作を制御する。再送を行う場合は、再送制御部102は、再送を行う期間または回数、及びフレームを送信している時間を示す送信時間情報を生成し、フレームの再送を制御する。なお、テーブルについては、図3を参照して後述する。
【0009】
ペイロードデータ送信側の場合、再送制御部102は、C−Reqをブロードキャスト、またはC−Reqを送る他の無線通信装置を指定して送信するように制御する。また、再送制御部103は、受信部101からC−Accのヘッダ情報を受け取り、C−Accを送信した送信元の無線通信装置のIDを含む第1プリミティブ(ACCEPT.ind)を上位プロトコルへ通知する。その後、再送制御部102は、上位プロトコルからC−Accを送信してきた他の無線通信装置が受け入れ可能になったことを示す第2プリミティブ(ACCEPT.res)が通知された後に、受け入れ可能となった他の無線通信装置へACKを送信するように制御する。一方、所定期間のうちに他の無線通信装置からのC−Accを受信しなかった場合は、再送制御部203は、所定期間経過後にC−Reqを再送するように制御する。
【0010】
送信部103は、ヘッダ生成器、誤り訂正符号器、変調器、電力増幅器、周波数変換器、フィルタ、アンテナなど、無線通信システムの仕様に基づいて、送信すべきデータを変調する機能を含む。送信部103は、上位プロトコル、ホストシステムからペイロードデータを、再送制御部102からヘッダ情報及び送信時間情報をそれぞれ受け取る。送信部103は、上位プロトコル、ホストシステムの指示によりペイロードデータを含めるフレームを生成し、ペイロードデータとヘッダ情報とを含むフレームを変調し、送信時間情報に従って送信する。
本実施形態では、ペイロードデータ受信側の場合、送信部103は、C−Reqに対するC−Accを他の無線通信装置へ向けて送信する。ペイロードデータ送信側の場合、送信部103は、C−ReqまたはACKを送信する。
【0011】
次に、第1の実施形態に係る無線通信装置100の動作例について図2のシーケンスを参照して説明する。
以下、便宜上、無線通信装置100のうち、ペイロードデータ送信側として端末A、ペイロードデータ受信側として端末B、端末C及び端末Dを想定する。図2では、各端末の接続シーケンスでの動作を時系列で示し、端末AがC−Reqを一定間隔で送信しており、送信されたC−Reqが到達可能な範囲に端末B、端末C、端末Dが存在する場合を想定する。
【0012】
ステップS201では、端末AがC−Reqをブロードキャスト送信する。
ステップS202では、端末B、端末C、及び端末Dは、端末AからのC−Reqを受信すると、それぞれランダムバックオフを行う。ランダムバックオフについては、ランダム値を求め、ランダム値に従ったタイミングで送信を行う一般的な手法を用いればよい。その後、端末B、端末C及び端末Dは、ランダムバックオフで決定された時間に他の電波干渉がなければ、C−Reqに応答するC−Accを送信する。以下、この状態を「端末が送信権を得る」と定義する。図2の例では、端末Bがランダムバックオフで最初に送信するタイミングとなり送信権を得、他の電波干渉がないので端末AにC−Accを送信する。
【0013】
ステップS203では、複数の端末からC−Accが送信され、そのうち1つのC−Accを受信した端末Aは、上位プロトコルに接続を希望する端末を通知するために第1プリミティブを上位プロトコルへ送る。第1プリミティブを受け取った上位プロトコルは、C−Accの送信元の端末を通信の接続対象とするかどうかを判定する。
通常、端末Aが受信したC−Accに対応した第1プリミティブを上位プロトコルに送り、上位プロトコルがC−Accを送信した端末を接続対象とするかどうかを決定して第2プリミティブを端末Aに通知するまでには、無線通信装置100におけるC−Accの再送時間よりも大幅に長い時間を要する。そのため、C−Accを送信した端末がC−Accに対する端末AからのACKフレームを受信できない場合、または送信権を得ていない他の端末がC−Accを送信できなかった場合は、さらに次のランダムバックオフ期間を空けてC−Accの再送を繰り返す。すなわち、図2には図示しないが、端末Bが端末AにC−Accを送信した後も、端末B、端末C及び端末Dは、C−Accの再送を繰り返す。
【0014】
ステップS204では、端末Aの上位プロトコルがC−Accを送信した端末Bを接続先であると判定した場合は、上位プロトコルから第2プリミティブが端末Aに通知される。
ステップS205では、第2プリミティブが通知された後に、端末Aに接続対象となる端末BからC−Accが送信され、無線システムによって規定されるIFS(Inter Frame Space)時間が経過したのち、端末Aは、C−Accを受諾したことを示すACKを端末Bに対して送信する。
【0015】
ステップS206では、自分宛てのACKフレームを受信していない端末は、何らかのフレームを受信した場合に、フレームのヘッダ情報を抽出する。その後、抽出したヘッダ情報に含まれる送信元アドレス及び送信先アドレスと、テーブルとに基づいて、C−Accの再送を停止するかどうかを決定する。図2の例では、端末Cと端末Dとは、C−Accの再送を続けるが、送信を行っていない間は待ち受け受信中となり、何らかのフレームを受信した場合にそのフレームのヘッダ情報を抽出する。ここで端末Cは、端末Aが送信したACKフレームは送信先が端末B宛てであって自分宛てではないと判定した場合に、C−Accの再送を停止する。このようにすることで、無駄な再送による端末の消費電力を低減することができる。
【0016】
ステップS207では、ACKフレームを受信した端末が、接続状態に入ったとして接続シーケンスからデータ通信シーケンスに移行し、データ通信を開始する。ここでは、CSDU(CNL Service Data Unit)が端末Aから端末Bへ送信され、データ通信が行われる。データ通信の方式については、一般的な方式を用いればよいためここでの説明は省略する。
【0017】
ステップS208では、接続シーケンス中にC−Accを停止していない端末が、他の端末が接続シーケンスからデータ通信シーケンスに移行した状態でも、データのヘッダ情報を抽出し続ける。この端末は、テーブルを参照して、ヘッダ情報に含まれるデータの送信先が自分宛ではない場合に、C−Accの再送を停止する。図2では、端末Dは、端末Aが送信したCSDUを受信してヘッダ情報を抽出し、自分宛のデータではないこと判定して以降のC−Accの再送を停止することができる。
【0018】
次に、再送制御部102において参照されるテーブルについて図3を参照して説明する。
図3は、図2の端末Cで参照されるテーブルの一例を示す。したがって、ペイロードデータ送信側の無線通信装置100は「端末A」、ペイロードデータ受信側の無線通信装置100のうち、自端末は「端末C」、他端末が「端末B及び端末D」となる。なお、本実施形態では、テーブルが再送制御部102に格納されてもよいし、外部にあるテーブルを参照するようにしてもよい。
図3(a)のテーブルは、フレームの送信元アドレス301と、フレームの送信先アドレス302と、再送制御部102の状態303とが対応づけられる。図3(b)のテーブルは、各状態303におけるフレームの種類304に応じた再送制御部102の動作305を示す。
【0019】
ここで、図3(a)の「UnSp.」は、不特定の端末に送信することを示し、いわゆるブロードキャスト送信を行う。図3(b)について、「Receive」は、フレームを受信し、フレームタイプに対応した処理を行うことを示し、「Ignore」は、受信したフレームを無視し、前回の動作を継続することを示し、「TxStop」は、C−Accの再送を停止することを示す。なお、フレームの種類304における「その他」には、ACK、CSDUなどが含まれる。
ペイロードデータ受信側の各通信装置(端末B、端末C及び端末D)では、ヘッダ情報に含まれる送信元アドレス301及び送信先アドレス302を抽出し、抽出した送信元アドレス301及び送信先アドレス302を端末自身のアドレスと比較する。その対応結果を図3(a)に示すテーブルと照らしあわせ、(1)〜(4)のいずれかの状態303に該当するかを判定し、さらに図3(b)に示すテーブルにおいて(1)〜(4)の状態と受信したフレームの種類304から再送制御部102の動作305を決定する。
【0020】
具体的には、図2に示すように、端末AがACKを端末Bに送信する場合を想定する。このとき、端末Cが受信したACKのヘッダ情報を抽出すると、フレームの送信元アドレス301が端末Aであり、フレームの送信先アドレス302が端末Bであることがわかる。よって、端末Aから受信したフレームは他端末宛てであるので、図3(a)のテーブルを参照すると状態303は「(3)」となる。ここでさらに、図3(b)のテーブルを参照すると、状態303「(3)」において、受信したフレームはACKであり、フレームの種類304は「その他」に該当する。従って、再送制御部102の動作305は「TxStop」となるため、端末CはC−Accの再送を停止する。
【0021】
以上に示した第1の実施形態によれば、フレームのヘッダ情報に含まれる送信元アドレス及び送信先アドレスの情報とテーブルとに基づいて、自身宛て以外のフレームを受信した場合はC−Accの再送を停止することにより、既存の無線システムを用いたまま不要な再送による消費電力を低減することができる。さらに、不要なフレームを送信することがないため、空間に不要な電波を送信することを抑制でき、データ通信におけるデータ伝送速度の低下を防ぐことができる。
【0022】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、C−Accを受け取った無線通信装置が、不特定の端末に送信する確認応答を示すフレームであるB−ACK(Broadcast-ACK)を送信し、B−ACKを受信した無線通信装置が、強制的にC−Accの再送を停止する点が異なる。こうすることで、接続判定待ちの時間において、各端末の送受信に関わる消費電力を低減することができる。
【0023】
第2の実施形態に係る無線通信装置の動作例について図4のシーケンスを参照して説明する。ペイロードデータ送信側の無線通信装置100として端末A、ペイロードデータ受信側の無線通信装置100として端末B及び端末Cが存在する場合を想定する。
【0024】
ステップS401では、端末Aが、不特定の端末にC−Reqをブロードキャスト送信する。
【0025】
ステップS402では、端末B及び端末Cのどちらかが、送信権を得てC−Accをランダムバックオフで端末Aに送信する。ここでは、端末BがC−Accの送信権を得てC−Accを端末Aに送信する。
【0026】
ステップS403では、端末Aが、上位プロトコルへC−Accを送信してきた端末を通知するため第1プリミティブを送る。
【0027】
ステップS404では、端末Aが、いずれか1つの端末からC−Accを受信した場合(ここでは、端末BからのC−Accを受信した場合)は、予め無線システムによって規定されたIFS時間経過後にB−ACKを送信する。B−ACKは、ここでは、ヘッダ情報の送信元アドレスとして端末AのIDが、送信先アドレスには不特定を示すID(Unspecified)が設定され、フレームの種類がACKを示すフレームが挙げられる。
【0028】
ステップS405では、B−ACKを受信した端末B及び端末Cは、C−Accの再送を停止する。また、端末Aは、上位プロトコルが接続許可の結果を第2プリミティブで通知されるまで待機するために、待ち受け受信状態に移行する。このようにすることで、各端末の消費電力を低減することができる。
【0029】
ステップS406では、端末Aは、上位プロトコルから第2プリミティブを受け取る。
【0030】
ステップS407では、端末Aは、接続対象となる相手を指定する接続通知フレーム(以下、C−Fix(Connect-Fix)という)を送信する。C−Fixは、送信先として接続許可を与える端末のアドレスを含む。なお、送信先アドレスには不特定を示すID(Unspecified)を設定することで、複数端末への通知フレームとして使用することもできる。
【0031】
ステップS408では、そのアドレスに該当する端末がC−Fixを受信した場合、ACKフレームを送信する。一方、該当しない端末がC−Fixを受信した場合、C−Accの再送はせず、初期サーチ状態など、接続処理待ちの状態になる。図5の例では、C−Fixの送信先アドレスとして端末Bが含まれているので、端末BはACKを端末Aに送信する。端末Cは、C−Fixに含まれるIDを抽出し、送信先アドレスとして端末Bが指定されていると判定し、C−Accの送信を停止したままとする。
【0032】
ステップS409では、接続が確立した端末同士がデータ通信を行う。ここでは、端末AからCSDUが送信され、端末Bが端末AからのCSDUを受け取ったことを示すACKを送信する。これを繰り返してデータ通信を行う。
【0033】
次に、第2の実施形態に係る再送制御部102において参照されるテーブルの一例を図5に示す。
図5のテーブルは、図3に示すテーブルとほぼ同様であるが、図3(b)のテーブルに図5(b)のテーブル中のフレームの種類304として、「B−ACK」の欄が追加されたテーブルである。図5(b)に示すように、ブロードキャスト送信されたB−ACKを受信した場合は、再送制御部102がC−Accの送信を停止するように制御する。
なお、B−ACKが送信先として特定の端末を指定して送信される場合でも、送信先が自端末以外であるB−ACKを受信した場合は、C−Accの再送を停止することで消費電力を低減することができる。
【0034】
以上に示した第2の実施形態によれば、B−ACKを受信した無線通信装置がC−Accの再送を停止し、さらにB−ACKを送信した無線通信装置も待ち受け受信状態に移行することで、上位プロトコルが接続許可を与えるかどうかの判断待ち状態におけるC−Accの再送を抑えることができ、無線通信装置での消費電力を抑制することができる。
【0035】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、B−ACKを送信するタイミングを、バックオフ期間の最大期間終了後とする点が異なる。このようにすることで、C−Reqを受信した端末は必ず一度はC−Accを送信することができ、接続先となる端末を選択することができる。
【0036】
第3の実施形態にかかる無線通信装置の動作例について図6のシーケンスを参照して説明する。図4と同様に、ペイロードデータ送信側の無線通信装置100として端末A、ペイロードデータ受信側の無線通信装置100として端末B及び端末Cが存在する場合を想定する。
ステップS601では、端末Aが他の端末にC−Reqをブロードキャスト送信する。
【0037】
ステップS602では、C−Reqを受信した各端末が、ランダムバックオフにより送信権を得たタイミングでC−Accの送信をそれぞれ行う。端末Aは、いずれか1つの端末からC−Accを受信した場合であっても、その後IFS期間でのB−ACKの送信を行わずに、無線通信システムで規定されているランダムバックオフの最大期間を経過した後にB−ACKを送信する。
すなわち図6の例では、端末BからC−Accを受信した直後にB−ACKを送信せずに、端末CからのC−Accの送信も受信する。なお、端末Aは、C−Accを1つも受信しなかった場合には、ランダムバックオフの最大期間後にC−Reqを再送し、C−Accを受信するまで繰り返す。
【0038】
以降のステップS603からステップS609までの処理は、第2の実施形態に係るステップS403からステップS409までの処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0039】
以上に示した第3の実施形態によれば、C−Reqを受信した無線通信装置が、B−ACKが送信される前に必ず一度はC−Accを送信することができるので、ペイロードデータ送信側の無線通信装置において、複数の無線通信装置から送信されたC−Accを受信できる確率が向上する。よって、上位プロトコルが複数の無線通信装置に対して同時に接続許可の判定を行うことが可能になるため、上位プロトコルが接続対象とする無線通信装置がランダムバックオフで送信権を獲得するまでの時間を短縮することができ、接続までの時間を短縮することができる。
【0040】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、隠れ端末問題が存在する場合に、ランダムバックオフの期間を定める1スロットの長さをC−Accと同じ長さに設定する。
【0041】
隠れ端末問題が存在する場合の一般的なランダムバックオフの一例を図7に示す。
通常、端末AがC−Reqを送信し、端末Bと端末Cがこれを受信したときに、端末Bと端末Cは、ランダム値を求め、ランダム値に従ったタイミングで送信を行う。このときにランダムバックオフで決定される送信タイミングは、単位時間を示すスロットにランダム値を乗算した結果から得られる。このスロットの時間は、無線装置の送受信切り替えに要する時間、または電力やパイロット信号のセンシング時間を含めて規定されることが多く、C−Accのフレーム長の時間より短いことが多い。したがって、ランダム値によって先に送信権を得た端末がC−Acc送信を開始すると、その1スロット後などで送信権を得た端末は、エアがBUSY状態なため送信できず、再送を試みることになる。
【0042】
ここで、端末Aと端末Bとの間、端末Aと端末Cとの間では通信が可能なレベルの信号電力が得られるが、端末Bと端末Cとの間では信号電力が小さく通信ができない状態、いわゆる隠れ端末問題が存在する状態を想定する。
図7に示すように、C−Accは4つのスロット701程度の長さと仮定する。まず、端末Aから送信されたC−Reqに対し、端末Bと端末Cとがランダム値MbとMcとをそれぞれ算出し、Mb=0、Mc=1となったと想定する。端末Bは、最初のスロット701の先頭にあたるタイミングでC−Acc702の送信を開始する。
【0043】
一方、端末Cは、次のスロットで送信前に電力検出などを実行し、空間伝搬状態がBUSYかIDLEかをチェックする。ここで端末Bと端末Cとが隠れ端末状態で無ければ、端末Cは端末BからのC−Acc702の電力を検出することができるので、自身のC−Acc703の送信を中止する。
しかし、隠れ端末状態の場合、端末Cは、端末Bが送信したC−Acc702の電力を検出できずに、自身のC−Acc703を送信する。端末Aは、端末BからのC−Acc702に加え、端末CからのC−Acc703を重複して受信することになり、それぞれの信号が衝突して受信エラーが発生してしまう。
【0044】
ここで、第4の実施形態に係るスロット長の設定について図8を参照して説明する。
図8のスロット801に示すように、スロット長をC−Acc702及びC−Acc703のフレーム長以上に設定する。このようにすることで、ランダムバックオフで端末の送信間隔を制御する場合でも、複数の端末から送信されたC−Accが衝突することを回避できる。
【0045】
次に、複数の端末でランダムバックオフのランダム値が同じ値になった場合のシーケンスを図9に示す。
ステップS901では、端末AがC−Reqを送信する。
ステップS902では、端末Bと端末Cは同時にC−Accを送信する。このとき端末Aでは、この2つの端末から送信されたC−Accが衝突してしまい、受信エラーとなる。
ステップS903では、端末Aは、他に受信成功したC−Accが無ければ、C−Req送信からランダムバックオフの最大期間以上の間隔を開けて再度C−Reqを送信する。
ステップS904では、端末Bと端末Cとが再度ランダムバックオフを行って、端末AにC−Accを送信する。連続してランダム値が同じ値になることは少ないため、端末Bと端末Cとのランダムバックオフのランダム値が異なる値となると考えられる。よって、端末AはそれぞれのC−Accを受信することができる。
【0046】
次に、端末がB−ACKの受信に失敗した場合のシーケンスを図10に示す。
ステップS1001では、端末AがC−Reqを送信する。
ステップS1002では、端末B及び端末CがC−Accを端末Aへ送信する。
ステップS1003では、端末AがB−ACKを送信する。このとき、端末BがB−ACKの受信に失敗したとする。
ステップS1004では、B−ACKの受信に失敗した端末Bが、次のバックオフ期間中にC−Accを再送する。
【0047】
ステップS1005では、端末Aが、B−ACK送信後に、次のランダムバックオフの最大期間1010が経過する前に、端末Aの上位プロトコルから第2プリミティブが通知された状態でC−Accを受信した場合、B−ACKを送信する。
ステップS1006では、次のランダムバックオフ期間の最大期間1010以上経ってもC−Accを1つも受信しなければ、端末AはC−Fixを送信して、接続対象の端末(ここでは、端末B)と通信を開始する。このような動作により、隠れ端末が発生した状況であっても、接続シーケンスで衝突による受信エラーが起きる確率を大幅に上げることなく、スムーズに通信を開始することができる。
【0048】
以上に示した第4の実施形態によれば、隠れ端末問題が存在する場合に、ランダムバックオフの期間を定める1スロットの長さをC−Accと同じ長さに設定することで、ランダムバックオフにおけるC−Accの衝突を回避することができる。
【0049】
(第5の実施形態)
第5の実施形態に係る無線通信装置を図11に示す。
第5の実施形態に係る無線通信装置1100は、第1の実施形態に係る無線通信装置に制御部1101及びアンテナ1102を含める。
制御部1101は、受信部101、再送制御部102及び送信部103の全体の動作を制御する。
アンテナ1102は、受信部101と送信部103とに結線された形態となる。このような構成とすることにより、アンテナ1202まで含めた1つの装置として無線通信装置を構成することが可能となるため、実装面積を少なく抑えることが可能となる。また1つのアンテナ1102を送信処理及び受信処理で共用することにより、無線通信装置を小型化することが可能となる。
【0050】
(第6の実施形態)
第6の実施形態に係る無線通信装置を図12に示す。
第6の実施形態に係る無線通信装置1200では、図11に示す第5の実施形態に係る無線通信装置1100の構成に加え、受信部101及び送信部103にバッファ1201を接続する構成となる。このようにバッファ1201を無線通信装置に含める構成とすることにより、送受信データをバッファ1201に保持することが可能となり、再送処理や外部出力処理を容易に行うことが可能となる。
【0051】
(第7の実施形態)
第7の実施形態に係る無線通信装置のブロック図を図13に示す。
第7の実施形態に係る無線通信装置1300では、図12に示す第6の実施形態のバッファ1201にバス1301を接続し、バス1301に外部インタフェース部1302とプロセッサ部1303を接続した形態となる。プロセッサ部1303ではファームウェアが動作する。このようにファームウェアを無線通信装置に含める構成とすることにより、ファームウェアの書き換えによって無線通信装置の機能変更を容易に行うことが可能となる。
【0052】
(第8の実施形態)
第8の実施形態に係る無線通信装置のブロック図を図14に示す。
第8の実施形態に係る無線通信装置1400では、図11に示す第5の実施形態に係る無線通信装置1100にクロック生成部1401を接続する。クロック生成部1401は出力端子より外部に出力されており、外部に出力されたクロックによってホスト側を動作させることにより、ホスト側と無線通信装置側を同期させて動作させることが可能となる。
【0053】
(第9の実施形態)
第9の実施形態に係る無線通信装置のブロック図を図15に示す。
第9の実施形態に係る無線通信装置1500では、図11に示す第5の実施形態に係る無線通信装置1100(無線送受信部ともいう)の構成に加え、電源部1501、電源制御部1502及び無線電力給電部1503を接続した構成となる。電源制御部1502は、電源部1501、無線電力給電部1503及び無線送受信部に接続される。電源部1501及び無線電力給電部1503は、それぞれ無線送受信部に接続される。このように電源部1501及び無線電力給電部1503を無線通信装置に備える構成とすることにより、電源を制御した低消費電力化動作が可能となる。
【0054】
(第10の実施形態)
第10の実施形態に係る無線通信装置のブロック図を図16に示す。
第10の実施形態に係る無線通信装置1600は、図15に示す第9の実施形態に係る無線通信装置1500に、NFC(Near Field Communications)送受信部1601を追加し、電源制御部1502と接続したものである。このように、NFC送受信部1601を無線通信装置に備える構成とすることにより、容易に認証処理を行うことが可能となるとともに、NFC送受信部をトリガとして電源制御を行うことによって待ち受け時の低消費電力化を図ることが可能となる。
【0055】
(第11の実施形態)
第11の実施形態に係る無線通信装置のブロック図を図17に示す。
第11の実施形態に係る無線通信装置1700は、第7の実施形態に係る無線通信装置1300に加えてSIMカード1701を追加し、SIMカード1701を接続する。このようにSIMカード1701を無線通信装置に備える構成とすることにより、容易に認証処理を行うことが可能となる。
【0056】
(第12の実施形態)
第12の実施形態に係る無線通信装置のブロック図を図18に示す。
第12の実施形態に係る無線通信装置1800は、第7の実施形態に係る無線通信装置1300に加えて動画像圧縮/伸長部1801を追加し、バス1301と接続したものである。このように動画像圧縮/伸長部1801を無線通信装置に備える構成とすることにより、圧縮した動画像の伝送と受信した圧縮動画像の伸長を容易に行うことが可能となる。
【0057】
(第13の実施形態)
第13の実施形態に係る無線通信装置のブロック図を図19に示す。
第13の実施形態に係る無線通信装置1900は、図11に示す第5の実施形態に係る無線通信装置1100に加えてLED部1901を追加し、制御部1101と接続したものである。このように、LEDを無線通信装置に備えることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
【0058】
(第14の実施形態)
第14の実施形態に係る無線通信装置のブロック図を図20に示す。
第14の実施形態に係る無線通信装置2000は、図11に示す第5の実施形態に係る無線通信装置1100に加えてバイブレータ部2001を追加し、制御部1101と接続したものである。このように、バイブレータを無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
【0059】
(第15の実施形態)
第15の実施形態に係る無線通信装置のブロック図を図21に示す。
第15の実施形態に係る無線通信装置2100は、図11に示す第5の実施形態の無線通信装置1100に加えて無線LAN部2101及び無線切替部2102を追加したものである。無線LAN部2101は、無線切替部2102と接続される。無線切替部2102は、無線LAN部2101と無線送受信部とに接続される。無線LAN部2101と無線切替部2102とを無線通信装置に備える構成とすることにより、状況に応じて無線LANによる通信と無線送受信部による通信とを切り替えることが可能となる。
【0060】
(第16の実施形態)
第16の実施形態に係る無線通信装置のブロック図を図22に示す。
第16の実施形態に係る無線通信装置2200は、図21に示す第15の実施形態に加えてスイッチ2201を追加し、スイッチ2201をアンテナ1102と無線送受信部との間に接続し、切り替え先として無線LAN部2101に接続する。このように、スイッチを無線通信装置に備える構成とすることにより、アンテナを共用しながら状況に応じて無線LANによる通信と無線送受信部による通信とを切り替えることが可能となる。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
100,1100,1200,1300,1400,1500,1600,1700,1800,1900,2000,2100,2200・・・無線通信装置、101・・・受信部、102・・・再送制御部、103・・・送信部、301・・・送信元アドレス、302・・・送信先アドレス、303・・・状態、304・・・種類、305・・・動作、701,801・・・スロット、702,203・・・C−Acc、1010・・・最大期間、1101・・・制御部、1102・・・アンテナ、1201・・・バッファ、1301・・・バス、1302・・・外部インタフェース部、1303・・・プロセッサ部、1401・・・クロック生成部、1501・・・電源部、1502・・・電源制御部、1503・・・無線電力給電部、1601・・・NFC送受信部、1701・・・SIMカード、1801・・・動画像圧縮/伸長部、1901・・・LED部、2001・・・バイブレータ部、2101・・・無線LAN部、2102・・・無線切替部、2201・・・スイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他装置からの接続要求を示す第1接続要求フレームを受信する受信部と、
前記接続要求フレームに対する応答を示す接続許可フレームを送信する送信部と、
前記接続許可フレームを送信後に、他装置からの該接続許可フレームに対する応答を示す自装置宛ての第1確認応答フレームを受信するまで、該接続許可フレームを1回以上送信する再送制御部と、を具備し、
前記再送制御部は、他装置を送信先に含む第2確認応答フレーム、または他装置宛ての第2接続要求フレームを受信した場合に、接続許可フレームの送信を停止することを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記第2確認応答フレームは、該第2確認応答フレームの送信先としてブロードキャストを示すアドレスを含むことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記第2確認応答フレームは、該第2確認応答フレームの送信先として他装置を示すアドレスを含むことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
ランダムバックオフを用いてフレームを送信する場合、該ランダムバックオフを決定するための単位時間を示すスロット長は、前記接続許可フレームの長さよりも長いことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
接続要求フレームを送信する送信部と、
前記接続要求フレームに対する応答を示す接続許可フレームを受信する受信部と、
所定期間中に、前記接続許可フレームを1以上受信した場合は、該接続許可フレームに対する応答を示す確認応答フレームを送信するように制御し、前記接続許可フレームを受信しなかった場合は、前記接続要求フレームを再送するように制御する再送制御部と、を具備し、
前記再送制御部は、前記接続要求フレームを再送する場合、接続対象となる他装置のランダムバックオフに要する最大時間よりも長い時間間隔で、前記接続要求フレームを再送するように制御することを特徴とする無線通信装置。
【請求項6】
前記再送制御部は、前記接続許可フレームを1以上受信した場合に、次の接続要求フレームを送信しようとしていたタイミングで前記確認応答フレームを送信することを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記確認応答フレームは、該確認応答フレームの送信先としてブロードキャストを示すアドレスを含むことを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記再送制御部は、前記確認応答フレームを送信した後に一定期間待ち受け状態に移行し、該一定期間経過後、接続対象となる他装置を指定する接続通知フレームを送信することを特徴とする請求項5に記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−182563(P2012−182563A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42696(P2011−42696)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】