説明

無線通信装置

【課題】無線通信装置での消費電力の抑制や電波資源の無駄遣いを可及的に回避する。
【解決手段】上記課題を解決するために、無線端末と通信し得る無線通信装置は、前記無線端末から基地局に対して送信された接続要求を受信する受信手段と、前記接続要求の受信を契機として、前記無線端末との間で基地局と等価な通信動作を実行する動作状態と、前記通信動作を実行しない待機状態とを切り替える制御を行う手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セルラ無線において、無線通信サービスがカバーされるエリアに基地局を設置する場合、無線端末が少なくとも一つの基地局と無線通信できるように各基地局の配置が設計される。尚、一つの基地局がカバーするエリアは「セル」と呼ばれる。しかしながら、基地局を複数設置した場合でも、地形の制約や建物による遮蔽等の理由で、無線端末が何れの基地局とも無線通信を行うことができないデッドスポットが存在することもありうる。
【0003】
一般的に、無線端末は、電源がオンになった後、予め設定された周波数をスキャンして接続可能な基地局が存在するかどうかを検出し、検出した場合にその基地局との接続を試みるべく該基地局に対して接続要求を出す。一方で、無線端末が基地局の存在を検出できない場合は、電波の使用許可の有無等の理由によって無線端末が電波を送信することは許されない。また、無線端末が基地局からの電波を受信できていたとしても、逆に無線端末から出される接続要求の電波が基地局において認識できなければ、やはり無線端末と基地局との間に通信を確立することができない。
【0004】
そこで、このような不都合を解消し無線端末と基地局との間の通信を確立するために、中継局の設置が行われる。中継局は基地局からの電波を無線端末へ中継し、一方で無線端末からの電波を基地局へと中継する。このように中継局を用いると、無線端末が基地局からの電波に直接応答するのに代えて、中継局からの電波に応答することで、結果的に基地局と無線端末との間に通信を確立することができる。あるいは、無線端末が基地局へ向けて発する電波を中継局が基地局へ中継し、基地局はその中継された電波を介して無線端末からの電波を認識し、以後の通信を確立することができる。
【0005】
ここで、無線中継局の仕様については米国の学会IEEEの下のIEEE802.16ワーキンググループにおいて検討されており、ドラフトの仕様によれば、透過モードの中継局と非透過モードの中継局が定義されている(非特許文献1を参照)。透過モードでは無線端末は基地局から送られる報知情報を受信し、中継局はデータ通信のみを中継する。一方、非透過モードでは、中継局は無線端末に対して基地局と等価であるように動作する。したがって、通常基地局が送信している報知情報を基地局同様に常時送信しなければならない。
【0006】
また、無線端末と基地局とのマルチホップ接続において、消費電力を増加させること無く、基地局への接続のための中継装置の存在を認識可能とする技術が公開されている(例えば、特許文献1を参照。)。この技術では、中継を行う中継装置は、基地局からの制御信号の受信スロットと同じ時間だけ所定の受信動作を行うようにすることで、消費電力の抑制を図ろうとするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−254155号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】IEEE ドラフト標準 P802.16j/D3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
無線端末と基地局との間の無線通信において、基地局からの報知情報が無線端末に届く場合には、無線端末が基地局に対して接続要求を出す。しかし、この送出された接続要求が基地局に届かなければ、基地局は無線端末を認識できず、このことは基地局が中継すべき無線端末の存在を認識しないということを意味するため、基地局が中継局に対して中継動作を指示する契機にはなりえない。
【0010】
そこで、無線端末から出された接続要求を基地局に確実に届けるために、中継局を常に中継動作ができる状態に立ち上げておこうとすると、中継局が中継動作のために常に電力を消費することになる。これは、いつ無線端末から接続要求が来るか分からない状況下では、電力の浪費につながる。また、中継局が中継動作できるように常に立ち上げられることで、基地局から送られる報知情報を、該中継局が常に送信することにもなるため、これもまた対象となる無線端末が存在するか分からない状況下では電波資源の無駄遣いにもなり、場合によっては周囲の通信に妨害を与え、無線通信システム全体の性能劣化の一因となり得る。
【0011】
本件は、上記した問題に鑑み、無線端末と基地局との間の無線通信において中継局による中継動作を行う場合、該中継局での消費電力の抑制や電波資源の無駄遣いを可及的に回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、無線端末と通信し得る無線通信装置は、前記無線端末から基地局に対して送信された接続要求を受信する受信手段と、前記接続要求の受信を契機として、前記無線端末との間で基地局と等価な通信動作を実行する動作状態と、前記通信動作を実行しない待機状態とを切り替える制御を行う手段とを備える。
【発明の効果】
【0013】
無線端末と基地局との間の無線通信において中継局による中継動作を行う場合、該中継局での消費電力の抑制や電波資源の無駄遣いを可及的に回避する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】無線通信システムの概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す通信システムに含まれる中継局において発揮される機能に従った、該中継局の機能ブロック図である。
【図3】中継局において実行される、該中継局の起動処理のための第一のフロー図である。
【図4A】無線端末から出された接続要求を、中継局から基地局へ通知する際のランダムアクセスチャネルでの第一の通知態様を示す図である。
【図4B】無線端末から出された接続要求を、中継局から基地局へ通知する際のランダムアクセスチャネルでの第二の通知態様を示す図である。
【図5】中継局において実行される、該中継局の起動処理のための第二のフロー図である。
【図6】中継局において実行される、該中継局の起動処理のための第三のフロー図である。
【図7】中継局において実行される、該中継局の起動処理のための第四のフロー図である。
【図8】基地局及び中継局に関する無線フレームの概略構成を示す図である。
【図9】中継局の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで、上述までの中継局および該中継局を含んで構成される無線通信システムの実施の形態について、以下の図面に基づいて説明する。なお、以下に述べる実施形態の構成は特許法が要求する要件を満たす範囲の例示であり、本発明の権利範囲は以下の実施形態の構成に限定されない。
【実施例1】
【0016】
図1には、本件の2つの無線通信システム1がネットワークを介して接続されている状態が示されている。各無線通信システムの構成は基本的には同じであるので、以下個別に述べる必要がない場合は、一方の無線通信システム1について詳細に述べる。無線通信システム1には、1つの基地局2が設けられている。この基地局2は、他の無線通信システムにおける基地局2とネットワークを介して通信可能状態に接続されている。これにより、基地局2の通信可能領域(以下、「セル」とも言う。)に存在する無線端末(図1中に参照番号4、5で示される)は、同じ基地局2の通信可能領域に存在する無線端末や、他の基地局2の通信可能領域に存在する無線端末と無線通信を行うことが可能となる。
【0017】
更に、無線通信システム1には、基地局2の他に中継局3も設けられている。この中継局3は、基地局2からの電波をセル内の無線端末へ中継し、一方でセル内の無線端末からの電波を基地局へ中継するという中継動作を行う。この中継動作により、基地局と無線端末との間に通信を確立し、無線通信システム1のセルを拡大することが可能となる。
【0018】
次に、無線通信システム1における基地局2と無線端末4、5との無線通信の初期接続を確立するための一般的なシーケンスについて説明する。先ず、基地局2は、ある一定の同期信号と共に通信の確立されていない無線端末(例えば、電源投入された直後の端末等)が、後に基地局2に対する接続要求を送信するためのランダムアクセスチャネルに関する情報を報知する。以下、この情報を報知情報と称する。そして、無線端末は、その報知情報に対応する形で、当該ランダムアクセスチャネルで接続要求を基地局2に対して出すことで、基地局2が無線端末の存在を認識し、以降両者の間に通信が確立されることになる。
【0019】
ここで、無線通信システム1は、そのセル内を2つの領域R1、R2に大別することができる。領域R1は、基地局2からの報知情報が領域R1に存在する無線端末4には届けられるが、無線端末4からの接続要求の信号が、基地局2には直接には届かない領域である。従って、無線端末4から接続要求が出されたときは、中継局3による中継動作が行われることで、無線端末4と基地局2との間の通信が確立される。一方で、領域R2は、基地局2からの報知情報が領域R2に存在する無線端末5に届けられ、且つ無線端末4からの接続要求の信号も、基地局2に直接には届く領域である。従って、無線端末5から接続要求が出されたときは、中継局3による中継動作は行われずに、無線端末5と基地局2との間の通信が確立される。
【0020】
このように基地局2から無線端末4、5に向かう方向(以下、「下り方向」とも言う。)での無線端末による受信可能領域(R1)が、各無線端末から基地局2に向かう方向(以下、「上り方向」とも言う。)での無線端末の基地局2への送信可能領域(R2)より広く設定されることで、無線端末の初期同期に必要な報知情報が無線端末に届く領域と、それに対応する接続要求が基地局へと届けられる領域とがアンバランス状態(図1に示す状態)となる。しかし、上述したように無線通信システム1には中継局3が含まれるため、この中継局3による中継動作を利用することで、領域R1に存在する無線端末(例えば、無線端末4)でも結果的に基地局2と通信を確立することが可能となる。即ち、この領域R1とR2のアンバランス状態は、基地局2を拠点とした無線通信システム1のセル領域を拡大することに貢献する。
【0021】
このように領域R1とR2のアンバランス状態を形成するためには、以下に示す(1)〜(5)の方法が採用できる。尚、これらの各方法は従来からの技術によるものであるからその詳細な説明については割愛する。
【0022】
(1)下り方向における初期同期信号の送出レベルを、上り方向における初期同期信号の送出レベルより高く設定する。
【0023】
(2)下り方向における初期同期信号の変調方式を、上り方向における初期同期信号の変調方式より低く設定する。
【0024】
(3)下り方向における初期同期信号の符号化率を、上り方向における初期同期信号の符号化率より低く設定する。
【0025】
(4)基地局2との無線通信においてスペクトル拡散通信を行う場合には、下り方向における初期同期信号の拡散率を、上り方向における初期同期信号の拡散率より高く設定する。
【0026】
(5)下り方向における初期同期信号を繰り返し符号送信にて送出する。
尚、これらの各方法はいずれかを利用してもよく、また複数の方法を組み合わせて利用してもよい。
【0027】
中継局3では、その中継動作は間欠的に行われる。即ち、中継局3は常時中継動作を行うのではなく、無線端末4、5からの接続要求に応じて中継動作を行う必要があるときに中継動作を行う。このようにすることで、中継局3の起動によって生じる電力消費や周波数資源の無駄遣いを抑制することが可能となる。そこで、この中継局3の起動のために実行される一連の処理において、中継局3内で発揮される各機能を機能部として図2にイメージ化した。これらの各機能部の機能は、主に中継局2内の制御装置で所定の制御プログラムが実行されることで発揮される。以下に、各機能部の相関を中心に説明する。
【0028】
先ず、中継待機部31は、無線端末4、5を含む無線端末からの接続要求の受信以外の、中継動作に関する処理を停止させ、中継局3を中継待機状態に置く。従って、中継待機部31によって中継待機状態とされる中継局3は、無線端末4、5等からの接続要求の受信以外には電力を消費しない。ここで、この無線端末4、5等からの接続要求の受信するために、基地局2から発せられる上記報知情報に基づいて、各無線端末の接続要求送出に使用される上記ランダムアクセスチャネルの受信動作が行われることになる。そして、接続要求検出部32は、中継待機部31によるランダムアクセスチャネルの受信動作を介して、基地局2からの報知情報に対応した無線端末(本実施例の場合は、無線端末4、5)からの接続要求を検出する。
【0029】
次に、応答判定部33は、接続要求を出した各無線端末に対して基地局2が応答したか否かを判定する。また、予測部34は、中継局3によって中継動作を安定的に行うことが可能であるか判断するための、各無線端末からの接続要求の信号強度や信号品質を予測する。基地局通信確立部35は、基地局2と中継局3との通信が確立されていない場合はそれを確立し、既に確立されている場合はその通信を維持する。中継動作部36は、上記各機能部の処理結果に基づいて、受信した無線端末からの接続要求を基地局2に通知し、その後、中継待機状態から中継動作状態に移って無線端末と基地局2との通信の中継を行う。
【0030】
ここで、上述までの各機能部を有する中継局3が、中継動作を停止している状態から起
動するための起動処理について、図3、4A、4Bに基づいて説明する。尚、当該中継局起動処理は、一例として、基地局2に対して直接、接続要求を届けることができない無線端末4に対応して行われるものである。先ず、S101では、上記中継待機部31によって無線端末4からの接続要求が受信されたか否かが判定される。ここで否定判定されると、S102において同じく中継待機部31によって中継局3の中継動作の待機状態が維持される。また、S101で肯定判定されるとS103へ進み、上記接続要求検出部32によって、無線端末4からの接続要求が検出される。
【0031】
そして、S103で無線端末4からの接続要求が検出されたことを契機として、S104以降において中継局3の起動が開始される。先ず、S104では、中継局3自身の基地局2への接続要求を、ランダムアクセスチャネルで基地局2に送信する。即ち、中継局3が起動していなかった状態では中継局3を基地局2へ接続しておく必要も無いため、無線端末4のための中継局3の起動に併せて、該中継局3と基地局2との間の通信も改めて確立しようとするものである。そして、S104の処理後、基地局2からの応答を待って、中継局3と基地局2との間に通信が確立される(S105の処理)。これらS104及びS105の処理は、基地局通信確立部35によって行われる。尚、中継局3と基地局2との間に既に通信が確立されている場合には、S104及びS105の処理は行う必要は無い。
【0032】
中継局3と基地局2との間に通信が確立されると、それを利用して中継動作部36によって無線端末4から出された接続要求が基地局2へと通知される(S106の処理)。このように中継局3は、無線端末4から出された接続要求を、無線端末4に代わって基地局2へ通知することで、結果的に無線端末4と基地局2との間に通信を確立し、中継待機状態から中継動作状態へ移行することが可能となる。そして、このとき中継局3の起動は接続要求検出部32による接続要求の検出を契機とすることで、中継局3の起動が調整されることになり、以て中継局で消費される電力や使用される周波数資源がいたずらに拡大することを抑制できる。
【0033】
ここで、中継動作部36による中継待機状態から中継動作状態への移行のための、接続要求の基地局2への通知方法の別の形態として、図4A又は図4Bに示す方法が採用可能である。例えば、図4Aに示す方法では、基地局2へ向かう上り方向であって、無線端末4が使用するランダムアクセスチャネル上で上記接続要求を送信する。この際、中継局3側で接続要求信号の増幅が行われる。また、図4Bに示す方法では、無線端末4が使用するランダムアクセスチャネルの端末送信用エリアとは異なる通知専用エリアを使用して、上記接続要求を基地局2に送信してもよい。この場合、基地局2は、送信された接続要求が無線端末4から直接届けられたものではなく、中継局3によって中継されたものであることを認識できる。
【実施例2】
【0034】
次に、中継局2の起動処理の第二の実施例について、図5に基づいて説明する。尚、図5に示す制御フロー中の処理のうち、図3に示す制御フローの処理と同一のものについては、同一の参照番号を付すことでその詳細な説明は省略する。本実施例に係る中継局起動処理では、上記S103の処理が終了すると、S201の判定処理が行われる。S201では、上記応答判定部33によって、無線端末から出された接続要求に対応して基地局2から応答があるか否かが判定される。各無線端末からランダムアクセスチャネルで接続要求が行われた後の基地局2のシーケンスは一般的に決められているので、応答判定部33がこのシーケンスを監視することで、S103で検出された接続要求を発した無線端末に対して、基地局2が応答したか否かが判定できる。
【0035】
図1に示す位置に存在する無線端末4、5については、無線端末5は領域R2内に存在
しており自己が出した接続要求を基地局2が認識することが可能であるため、基地局2から当該接続要求に応答する処理が行われる。従って、応答判定部33がこの処理を監視することで、無線端末5については、基地局2からの応答があるとの判定、即ち肯定判定が為される。一方で、無線端末4は領域R2内に存在しておらず自己が出した接続要求を基地局2が認識することが可能ではないため、基地局2から当該接続要求に応答する処理が行われない。従って、応答判定部33がこの処理を監視することで、例えばS103での接続要求検出から一定時間経過後に基地局2からの処理が無いことをもって、無線端末4については、基地局2からの応答が無いとの判定、即ち否定判定が為される。
【0036】
このようにS201で肯定判定がされると、無線端末5と基地局2との間では直接無線通信が可能となるため、中継局3を起動する必要はないことになる。従って、この場合は、本中継局起動処理を終了する。また、S201で否定判定がされると、無線端末5と基地局2との間では直接無線通信を行うことができないため、S104以降の処理によって中継局3の起動が開始される。以上より、中継局3の起動がより的確に調整されることになり、以て中継局3で消費される電力や使用される周波数資源がいたずらに拡大することを抑制できる。
【実施例3】
【0037】
次に、中継局2の起動処理の第三の実施例について、図6に基づいて説明する。尚、図6に示す制御フロー中の処理のうち、図3に示す制御フローの処理と同一のものについては、同一の参照番号を付すことでその詳細な説明は省略する。本実施例に係る中継局起動処理では、上記S103の処理が終了すると、上記応答判定部33によってS301とS302の処理が行われる。S301では、基地局2から応答状況情報を受信する。この応答状況情報は、基地局2が認識している無線端末からの接続要求の有無に関する情報である。本実施例においては、基地局2がその存在を認識すべき無線端末(例えば、無線端末4、5が直前まで基地局2と通信を行っていたが、何等かの理由でこれらの無線端末との通信が切断されてしまった場合の無線端末4、5や、予め移動領域が領域R1又はR2内に設定され基地局2と無線通信が行われることが決められている無線端末等)からの接続要求が、該基地局2に届いていないことを積極的に表す情報を、応答状況情報とする。S301の処理が終了すると、S302へ進む。
【0038】
S302では、S301で受信された応答状況情報に基づいて、S103で検出された接続要求を出した無線端末を、基地局2が認知して応答したか否かが判定される。これにより、基地局2自身から出された応答状況情報を利用することで、無線端末からの接続要求に対する応答の有無を容易に判定することができる。そして、S302で否定判定されると、中継局3による中継動作を開始するためにS104以降の処理が行われ、S302で肯定判定されると、本中継局起動処理を終了する。尚、基地局2の応答をより確実に判定するために、先に示した図5のフロー中のS201の判定処理を併せて行ってもよい。以上より、中継局3の起動がより的確に調整されることになり、以て中継局3で消費される電力や使用される周波数資源がいたずらに拡大することを抑制できる。
【実施例4】
【0039】
次に、中継局2の起動処理の第四の実施例について、図7に基づいて説明する。尚、図7に示す制御フロー中の処理のうち、図3に示す制御フローの処理と同一のものについては、同一の参照番号を付すことでその詳細な説明は省略する。本実施例に係る中継局起動処理では、上記S103の処理が終了すると、S401とS402の判定処理が行われる。S401では、図5に示すS201と同様に、上記応答判定部33によって、無線端末から出された接続要求に対応して基地局2から応答があるか否かが判定される。このS401で肯定判定されると本中継局起動処理を終了し、S401で否定判定されるとS402の判定処理が行われる。尚、図7に示すS401の判定とS402の判定の順序は逆で
あっても構わない。
【0040】
S402では、上記予測部34によって、S103で検出された接続要求の信号強度もしくは信号品質が、既に基準となる信号強度や信号品質を満たしているか否かが判定され、又は、当該接続要求を出した無線端末から今後届く信号の強度と品質、換言すると今後中継局3が中継動作を行うときに当該無線端末から届く信号の強度と品質を予測し、その予測結果が基準となる信号強度等を満たしているか否かが判定される。この判定は、後に中継局3によって行われる中継動作を安定的に行うために、無線端末との中継局3との間の良好な通信状態を担保するために行われる。
【0041】
ここで、予測部34による無線端末からの信号強度等の予測は、無線端末から接続要求が出される際のシーケンス等に基づいて行ってもよい。例えば、無線端末から出される接続要求の信号強度等が時間の経過に伴って大きくなる場合、予測部34は、S402の処理時点での信号強度等と実質的な中継動作が開始されるまでの時間とを考慮して、当該中継動際開始時に信号強度等がどの程度まで変化するかを、無線端末での信号強度等の変化率に基づいて予測する。そして、S402で肯定判定されると、中継局3による中継動作を開始するためにS104以降の処理が行われ、S402で否定判定されると、本中継局起動処理を終了する。以上より、中継局3の起動がより的確に調整され、また中継局3による中継動作が行われた場合、当該中継動作を安定的に行うことができる。
【実施例5】
【0042】
これまで述べてきた中継局の動作では、無線端末による接続要求信号の検出あるいはそれに加えて基地局からの応答がないことや基地局による応答状況情報などによって中継動作の起動を行い、無線端末と基地局の間の信号の中継を行う例であった。一方、中継局の中には、上述したIEEE802.16ドラフト標準による非透過モード中継局のように中継局自身が無線端末に対して基地局と等価にふるまう動作を考えることもできる。このタイプの中継局においても、これまで述べてきた中継局に関する技術的思想を同様に適用でき、無線端末による接続要求信号の検出あるいはそれに加えて基地局からの応答がないことや基地局による応答状況情報などによって基地局と等価なモードの中継動作を開始することもできる。この場合には、無線端末は最初の接続要求に対する接続が得られなくても、それを契機として起動した、基地局と等価な動作を行う中継局に対して新たに接続要求を発することによってこの中継局との通信を確立し、該中継局は透過通信状態へ移行することで、通信を開始することができる。即ち、当該中継局に代替的な基地局としての役割を担わせるものである。
【0043】
無線端末に対して基地局と等価な動作を行うタイプの中継局に対しては、その中継局と基地局の間の通信は、別途確立されている中継局と基地局の間の無線通信であるばかりでなく、別途確立された有線通信であっても構わない。更に、有線通信を使う場合の、無線端末に対して基地局と等価な動作を行うタイプの中継局は、その中継先は基地局に限る必要はなく、他の通常の基地局と同様に、通信ネットワーク上の装置(制御網)であっても差し支えない。
【実施例6】
【0044】
本実施例では、図8に示すように、基地局は、同期確立に用いられるプリアンブル信号、下りリンクにおけるバーストデータの送信領域情報(送信周波数、送信タイミング等の送信に用いられる無線リソースの情報であって、DLMAP情報と称する)、上りリンクにおけるバーストデータ(ランダムアクセス信号含む)の受信領域情報(ULMAP情報と称する)を送信する。一方で、無線端末は、プリアンブル信号を受信して基地局の無線フレームに同期し、ULMAP情報、DLMAP情報を受信する。無線端末は、割り当てられたコネクションIDに基づいて、MAP情報に自端末に関する送信領域情報、受信領
域情報が含まれるか検索し、含まれる場合には、対応する送信領域、受信領域でデータを受信する。ここで、ULMAP情報は、ランダムアクセス信号の送信領域を指定する情報も含み、無線端末は、その情報で指定された送信領域でランダムアクセス信号を送信する。
【0045】
さて、中継局は、無線端末同様に、まず、プリアンブル信号を受信して同期処理を行い、MAP情報を受信して、無線端末からランダムアクセス信号を送信する際に利用される無線リソースを特定する。尚、中継局の構成は、図9に示されたように、無線信号の送受信を行う送受信部と、送受信部を制御するとともに、送受信部との間で送受信データをやりとりする制御部とを備える。以下、中継局の動作は、制御部により実行される制御である。
【0046】
その後は、基地局から送信されるMAPデータ(報知情報)を受信しないようにする。好ましくは、プリアンブルも受信しないが、基地局が送信する無線フレームへの同期のためのプリアンブルを毎フレーム又は、複数のフレームで1回といったような間欠受信を行う。
【0047】
一方、中継局は、RA1の受信処理を毎フレーム行う。そして、RA1において無線端末からランダムアクセス信号(接続要求信号)を受信した場合には、受信したランダムアクセス信号の中継処理を行うとともに、基地局から送信されるMAP情報の受信処理を開始する。また、中継局自身もプリアンブル信号、MAP情報、バーストデータ(上り、下り)の送受信を開始する(開始前はプリアンブル信号、MAP情報、バーストデータ(上り、下り)の送受信を行っていない)。その際、上りバーストデータには、無線端末にランダムアクセス信号の送信を許容する送信領域(RA2)を設定してもよい。
【0048】
中継局は、基地局からのMAP情報を受信することで、基地局との間での無線通信パスを確立する。その際、無線端末同様に、ランダムアクセス信号を基地局に送信することで無線通信パスを確立(コネクションID等の再設定によりMAP情報によりデータの送受が可能な状態する)してもよい。従って、中継局は、基地局又は自局におけるスケジューリングに従ったMAP情報を送信することで、無線端末との無線通信を行い、そこで受信したデータを基地局に送信する中継動作を行うとともに、基地局から受信したデータを無線端末に送信する中継動作を行う。
【0049】
尚、中継局は、無線端末に対する無線フレームの送信の契機として、先のようにRA1において無線端末からのランダムアクセス信号を検出したこととすることもできるが、別なる条件を含めてもよい。例えば、基地局の応答があるということは無線端末と基地局が通常に通信ができることを意味するのであるから、該基地局が応答信号を送信しないことを条件としてもよい。その際、基地局は、無線端末から直接ランダムアクセス信号を受信する場合もあるし、中継局から中継送信されたランダムアクセス信号を受信する場合もある。
【0050】
また、中継局は、基地局から、ランダムアクセス信号に対して応答を行ったかどうかの通知を受けることもできる。中継局はランダムアクセス信号を検出したが、基地局はそれの検出できない場合があり、基地局からの通知によりそのような場合を検出し、中継局自身もプリアンブル信号、MAP情報、バーストデータ(上り、下り)の送受信を開始することもできる。
【0051】
また、中継局は、ランダムアクセス信号の受信レベル又は受信品質が所定の基準を超える場合に、受信したランダムアクセス信号の中継処理を行うとともに、基地局から送信されるMAP情報の受信処理を開始し、中継局自身もプリアンブル信号、MAP情報、バー
ストデータ(上り、下り)の送受信を開始することもできる。中継局から離れた無線端末のランダムアクセス信号の受信により、消費電力を浪費しないようにすることができるからである。
【0052】
<その他>
更に、本実施の形態は以下の発明を開示する。各項に開示される発明は、必要に応じて可能な限り組合せることができる。
【0053】
(付記1)
無線端末と基地局の間の無線通信を中継する中継局であって、
前記基地局からの報知情報に対応して前記無線端末から出される該基地局への接続要求を受信可能としつつ、該基地局と該無線端末との間での中継通信を中継待機状態とする中継待機部と、
前記中継待機部による中継待機状態において、前記無線端末から出される該基地局への接続要求を検出する接続要求検出部と、
前記中継待機部による中継待機状態時に前記接続要求検出部により接続要求が検出されることで、該中継待機状態から中継動作状態に移り前記無線端末と前記基地局との間の無線通信を中継する中継動作部と、
を備える、無線通信用中継局。
【0054】
(付記2)
前記接続要求検出部によって前記無線端末から出された接続要求に対する、前記基地局の応答の有無を判定する応答判定部を、更に備え、
前記中継動作部は、前記接続要求検出部によって接続要求が検出され、且つ前記応答判定部によって該接続要求に対する前記基地局からの応答が確認されないとき、前記中継待機状態から前記中継動作状態に移り前記無線端末と前記基地局との間の無線通信を中継する、
付記1に記載の無線通信用中継局。
【0055】
(付記3)
前記応答判定部は、前記基地局から発信される情報であって該基地局の無線端末からの接続要求への応答状況に関する情報に基づいて、前記接続要求に対する該基地局の応答の有無を判定する、
付記2に記載の無線通信用中継局。
【0056】
(付記4)
前記中継動作部は、前記無線端末から出された後に前記中継局で受信される前記接続要求の信号強度、もしくは該接続要求の信号品質に基づいて、前記中継動作状態への移行を判断する、
付記1に記載の無線通信用中継局。
【0057】
(付記5)
前記無線端末から出される接続要求が、前記中継局にて受信されるときの、該接続要求の信号強度、もしくは該接続要求の信号品質を予測する予測部を、更に備え、
前記中継動作部は、前記予測部によって予測された前記接続要求の信号強度もしくは該接続要求の信号品質に基づいて、前記中継動作状態への移行を判断する、
付記4に記載の無線通信用中継局。
【0058】
(付記6)
前記中継動作部は、前記中継待機状態から前記中継動作状態部への移行を行う代わりに
、前記無線端末に対する前記基地局と等価な通信動作を行う等価通信状態へ移行し、該無線端末との間で無線通信を行う、
付記1から付記5の何れかに記載の無線通信用中継局。
【0059】
(付記7)
前記中継動作部は、有線通信により前記基地局と前記無線通信用中継局との間の通信を行う、
付記6に記載の無線通信用中継局。
【0060】
(付記8)
前記中継動作部は、前記有線通信により、前記基地局に代えて所定の制御網を中継先とする中継動作を行う、
付記7に記載の無線通信用中継局。
【0061】
(付記9)
付記1から付記8の何れかに記載の中継局を含み、前記基地局と前記無線端末との間で無線通信を行うための無線通信システムであって、
前記報知情報および前記接続要求を含み、前記基地局と前記無線端末との間で送受信され該無線端末の初期同期に必要な初期同期信号において、該基地局から該無線端末へ向かう下り方向での初期同期信号の該無線端末による受信可能領域は、該無線端末から該基地局へ向かう上り方向での初期同期信号の該無線端末による送信可能領域より広く設定される、
無線通信システム。
【0062】
(付記10)
前記下り方向での前記初期同期信号の送出レベルは、前記上り方向での該初期同期信号の送出レベルより高く設定される、
付記9に記載の無線通信システム。
【0063】
(付記11)
前記下り方向での前記初期同期信号の変調方式は、前記上り方向での該初期同期信号の変調方式より低く設定される、
付記9に記載の無線通信システム。
【0064】
(付記12)
前記下り方向での前記初期同期信号の符号化率は、前記上り方向での該初期同期信号の符号化率より低く設定される、
付記9に記載の無線通信システム。
【0065】
(付記13)
前記下り方向での前記初期同期信号は、繰り返し符号送信によって送出される、
付記9に記載の無線通信システム。
【0066】
(付記14)
前記基地局と前記無線端末との間での無線通信はスペクトル拡散通信によって行われ、
前記下り方向での前記初期同期信号のスペクトル拡散率は、前記上り方向での該初期同期信号のスペクトル拡散率より高く設定される、
付記9に記載の無線通信システム。
【0067】
(付記15)
無線端末と基地局の間の無線通信を中継する中継局の制御方法であって、
前記基地局から送信されたランダムアクセス信号の受信領域情報を受信すると、該基地局から送信されるバーストデータの送信領域情報の受信を規制する制御を行うステップと、
前記ランダムアクセス信号の受信領域情報に従って、ランダムアクセス信号の検出処理を実行するステップと、
前記無線端末から送信されたランダムアクセス信号を検出し、前記基地局から送信されるバーストデータの送信領域情報の受信制御を再開して該基地局との間の通信パスを確立するステップと、
を含む、中継局の制御方法。
【符号の説明】
【0068】
1・・・・無線通信システム
2・・・・基地局
3・・・・中継局
4・・・・無線端末
5・・・・無線端末
R1・・・・受信可能領域
R2・・・・送信可能領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線端末と通信し得る無線通信装置であって、
前記無線端末から基地局に対して送信された接続要求を受信する受信手段と、
前記接続要求の受信を契機として、前記無線端末との間で基地局と等価な通信動作を実行する動作状態と、前記通信動作を実行しない待機状態とを切り替える制御を行う手段と、
を備えたことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記動作状態において、前記基地局に代わって所定の制御網を中継先とする中継動作を実行する手段、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の無線通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−195970(P2012−195970A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−154157(P2012−154157)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【分割の表示】特願2008−88252(P2008−88252)の分割
【原出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】