無線防災システム及びセンサノード
【課題】電文送信中に早く送りたい火災発報や火災復旧の至急イベントが発生した場合の時間遅れを必要最小限に抑えてイベント対応処理を適切に行うことを可能とする。
【解決手段】無線式感知器の送信処理部は、イベントAの発生時に、所定時間T1に亘り同一の電文信号を連続送信する電文送信A1〜A3と、所定時間T2に亘り電文送信を休止する電文休止とを2回以上繰り返す。送信切替部は、送信処理部による先行したイベントAの発生に基づく電文送信A1と電文休止の繰返し中に、至急イベントBが発生した場合、先行イベントAに基づく電文送信A1と電文休止を1回繰り返して中止した後に、至急イベントBに基づく電文送信B1,B2,・・・と電文休止の繰返しに切り替える。
【解決手段】無線式感知器の送信処理部は、イベントAの発生時に、所定時間T1に亘り同一の電文信号を連続送信する電文送信A1〜A3と、所定時間T2に亘り電文送信を休止する電文休止とを2回以上繰り返す。送信切替部は、送信処理部による先行したイベントAの発生に基づく電文送信A1と電文休止の繰返し中に、至急イベントBが発生した場合、先行イベントAに基づく電文送信A1と電文休止を1回繰り返して中止した後に、至急イベントBに基づく電文送信B1,B2,・・・と電文休止の繰返しに切り替える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線式感知器などのセンサノードから無線送信された電文を受信機に伝送して警報させる無線防災システム及びセンサノードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災を監視する無線式の防災監視システムにあっては、ビルの各フロアといった警戒区域にセンサノードとしての複数の無線式火災感知器を設置し、無線式感知器で火災を検出した時、火災を示す電文をフロア単位に設置した無線防災ノードとしての無線受信用中継器に無線送信する。また途中に無線中継ノードとなる電波中継器を設置し、無線式感知器からの電文を中継する。
【0003】
無線受信用中継器は受信機からの感知器回線に接続されており、火災を示す電文を受信すると、リレー接点やスイッチング素子のオンにより感知器回線に発報電流を流して火災発報信号を受信機に送信する。受信機は、この火災発報信号を受信すると、音響等の手段により火災警報を出す。
【0004】
このような無線防災システムによれば、一般的に天井裏等に敷設される感知器回線の一部を不要にでき、配線工事が簡単になり、感知器の設置場所も配線等の制約を受けずに決めることができる。また、感知器増設等のシステム変更にも容易に対応できる。
【0005】
また無線防災システムにあっては、無線式感知器と無線受信用中継器の距離が遠く、電波が届きにくいことが予想される場合に、無線式感知器と無線受信用中継器の間に電波中継器を設置し、電波の中継を行うことができる。また、施工時に無線受信用中継器及び無線式感知器を実際に設置してみて電波状況が悪かった場合などに、後から電波中継器を追加して設置することもできる。電波中継器を電池により動作させることで、電源線の配線を不要とし、電波中継器の設置を容易にできるようにしている。このように電波中継器を電池により動作させる場合、常時受信動作を行うと電池寿命が短くなることから、電文を間欠受信するようにしている。
【0006】
この間欠受信は、無線式感知器で火災を検出した時に、所定の送信時間に亘り電文を送信し、これに対し受信側は、送信時間より短い周期でキャリアセンスを行っており、電文送信時間の間に少なくとも1回のキャリアセンスが行われることで、非同期通信であっても、間欠受信により確実に電文を受信できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−004033号公報
【特許文献2】特開2001−292089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の無線防災システムにおける間欠受信にあっては、送信時間より短くなるように間欠受信のためのキャリアセンスの周期を設定していたため、受信機側でのキャリアセンス動作が短い周期で行われ、その分、電池で動作している場合には、消費電流が増加して電池寿命を低下させるという問題がある。
【0009】
この問題を解決するためには、火災を検出した時の電文送信時間を長くし、それより短く設定するキャリアセンス周期を長くすることが考えられるが、火災監視にあっては、火災検出から警報するまでの火災応答時間が決められており、間欠受信のキャリアセンス周期をむやみに長くすることは出来ない問題がある。
【0010】
この問題を解決するため本願発明者にあっては、無線式感知器における火災検出などのイベント発生時に、所定の電文送信時間に亘り同一の電文信号を連続送信する電文送信と、所定時間に亘り電文送信を休止する電文休止とを2回以上繰り返す送信動作を1セットの電文送信とし、一方、電波中継器にあっては、無線式感知器からの電文休止を挟んで連続する2回の電文送信の少なくともいずれかに受信タイミングが入るようにキャリアセンス周期を設定し、無線式感知器からの送信電文を間欠的に受信するようにした無線防災システムを提案している。
【0011】
この無線防災システムによれば、電文送信時間より長い周期でキャリアセンス動作が行われ、キャリアセンスによる消費電力を低減し、電池により動作している場合は電池寿命を長くすることができる。
【0012】
しかしながら、このような電文送信時間よりキャリアセンス周期を長くしたシステムにあっては、あるイベントが発生して電文送信と送信休止の繰返しによる送信中に、火災発報や火災復旧といった早く送りたい至急イベントが発生した場合、先行するイベントの電文送信が終了してから、至急イベントの送信を開始するため、至急イベントが発生してから送信を開始するまでの時間遅れが大きくなり、電波中継器を経由して無線受信用中継器で受信され、更に受信機に送られて報知するまでに時間がかかるという問題がある。
【0013】
また火災発報については、蓄積受信を行う場合があり、蓄積受信は火災発報から所定の蓄積時間に到達するまでに火災復旧がなければ、火災と断定して火災警報を行っている。この場合、非火災と思われる短時間の火災発報により火災発報イベントの検出後に直ぐに火災復旧イベントが検出された場合、火災発報イベントに基づく1セットの電文送信を終了した後に、火災復旧イベントに基づく1セットの電文送信を行う。このため火災復旧に対する送信遅れが大きくなり、その間に蓄積時間に達して火災警報を出してしまう問題もある。
【0014】
本発明は、電文送信中に火災や火災復旧を含む至急イベントが発生した場合の送信遅れを必要最小限に抑えてイベント対応処理を適切に行うことを可能とする無線防災システム及びセンサノードを提供とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(システム)
本発明は、センサノード、電波中継ノード、無線防災ノード及び受信機で構成され、センサノードから送信された電文信号又は電波中継ノードを経由してセンサノードから送信された電文信号を無線防災ノードで受信して処理し、処理結果を信号線により接続された受信機に送信する無線防災システムに於いて、
センサノードは、
イベント発生時に、所定の電文送信時間に亘り同一の電文信号を連続送信する電文送信と、所定時間に亘り電文送信を休止する電文休止とを2回以上繰り返す送信処理部と、
送信処理部による先行したイベント発生に基づく電文送信と電文休止の1回未満の繰返し中に、火災又は火災復旧を含む早く送りたい至急イベントが発生した場合、先行イベントに基づく電文送信と電文休止を1回繰り返して中止した後に、至急イベントに基づく電文送信と電文休止の繰返しに切り替える送信切替部と、
を備え、
電波中継ノードは、電文休止を挟んで連続する2回の電文送信の少なくともいずれかに受信タイミングが入るように間欠的に受信する間欠受信部を備えたことを特徴とする。
【0016】
ここで、センサノードの送信処理部は、火災復旧のイベント発生時に、過去に火災発報があったことを示す火災復旧情報を含む電文信号を送信する。
【0017】
センサノードの送信処理部は、イベント発生時に送信する送信パターンとして、電文送信と電文休止とを3回繰り返した後に、ノード毎にランダムに設定した所定のランダム休止時間を配置し、ランダム休止時間後に、電文送信と電文休止とを3回繰り返す。
【0018】
電波中継ノードの間欠受信部は、
電文休止時間を挟んで連続する2回の電文送信時間のいずれかに所定のキャリアセンス必須時間が重なるようにキャリアセンスを2回行う時のキャリアセンス周期を設定するキャリアセンス周期設定部と、
キャリアセンス周期毎に電文信号のキャリアの有無を検出し、キャリア検出状態がキャリアセンス必須時間以上継続したときに受信された電文を処理する間欠受信部と、
を備え、
キャリアセンス周期設定部は、
電文送信時間をT1、電文休止時間をT2、電文送信時間T1から受信動作に最低限必要なキャリアセンス必須時間T5を差し引いた受信可能時間をT3及び電文休止時間T2に前記キャリアセンス必須時間T5を加えた受信不可能時間をT4とした場合、
受信可能時間をT3及び受信不可能時間T4について
(T3×2)/(T3×N+T4)≧1/2
を満足することを条件に、前記キャリアセンス周期Tcsを
(T3×2+T4)/N≧Tcs≧T4
の範囲の値に設定する。
【0019】
(センサノード)
本発明は、イベント発生時に、所定時間の電文休止を挟んだ所定時間となる2回の電文送信の少なくともいずれかに受信タイミングが入るように間欠的に受信する電波中継ノードに電文信号を送信するセンサノードに於いて、
イベント発生時に、所定の電文送信時間に亘り同一の電文信号を連続送信する電文送信と、所定時間に亘り電文送信を休止する電文休止とを2回以上繰り返す送信処理部と、
送信処理部による先行したイベント発生に基づく電文送信と電文休止の1回未満の繰返し中に、火災又は火災復旧を含む早く送りたい至急イベントが発生した場合、先行イベントに基づく電文送信と電文休止を1回繰り返して中止した後に、至急イベントに基づく電文送信と電文休止の繰返しに切り替える送信切替部と、
を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、センサノードにおいて、先行したイベントに基づく送信中に、火災発報や火災復旧を含む早く送りたい至急イベントが発生した場合、先行イベントに基づく1回の電文送信と電文休止を終了した時に、先行イベントに基づく電文送信を中止して至急イベントに基づく電文送信に切り替えるようにしたため、必要最小限の送信時間のおくれにより至急イベントの電文送信に切り替えることができる。
【0021】
また非火災と思われる短時間の火災発報が発生した場合、先行する火災発報イベントに基づく1回の電文送信と電文休止を終了した時に、火災発報イベントに基づく電文送信を中止して火災復旧イベントに基づく電文送信に切り替えるようにしたため、火災復旧イベントの送信遅れを最小限におさえることができ、蓄積受信を行っていた場合に、蓄積時間に到達する前に火災復旧が送信され、蓄積受信により非火災と思われる短時間の発報についての誤報を防止又は減少できる。
【0022】
また先行する火災発報イベントに基づく1回の電文送信と電文休止を終了した時に、火災発報イベントに基づく電文送信を中止して火災復旧イベントに基づく電文送信に切り替えた場合、電文休止を挟んだ2回の電文送信に対し受信動作を保証する間欠受信では、火災発報の電文が間欠受信できない場合がある。そこで、後続イベントとして送信する火災復旧の送信電文に、過去に火災発報があったことを示す火災復旧情報を含ませておくことにより、先行する火災発報イベントの送信電文の間欠受信がタイミングずれにより受信できなくても、過去に火災発報があり、それに対する火災復旧であることを受信側で認識することができ、火災発報の受信がないのに火災復旧を受信した場合の矛盾を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による無線防災システムの実施形態を示した説明図
【図2】図1の無線防災システムで送受信する無線信号の電文フォーマットを示した説明図
【図3】図1の無線式感知器及び電波中継器の詳細を示したブロック図
【図4】図1の無線受信用中継器及びP型受信機の詳細を示したブロック図
【図5】無線式感知器による間欠的な電文送信を示したタイムチャート
【図6】2回の送信電文に対し有効に受信する図3の電波中継器による間欠受信処理を示したタイムチャート
【図7】図6の間欠受信において2回目の送信電文を有効に受信する場合を示したタイムチャート
【図8】先行したイベントに基づく電文送信中に火災発報イベントが発生したときの本実施形態による電文送信を示したタイムチャート
【図9】非火災と思われる短時間の発報による火災発報と火災復旧のイベント発生に基づく本実施形態による電文送信を示したタイムチャート
【図10】図9の火災発報と火災復旧のイベント発生に基づく本実施形態の電文送信に対する間欠受信のタイミングを示したタイムチャート
【図11】本実施形態による電文送信を行わなかった場合の送信遅れを示したタイムチャート
【図12】図3の無線式感知器によるセンサ処理を示したフローチャート
【図13】図3の電波中継器による電波中継処理を示したフローチャート
【図14】図4の無線受信用中継器による無線受信用中継処理を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は本発明による無線防災システムの実施形態を示した説明図である。図1において、監視対象となる建物11の1F〜3Fの各階には無線防災ノードとして機能する無線受信用中継器12−1〜12−3が設置され、火災受信機であるP型受信機10から階別に引き出された感知器回線18−1〜18−3に接続されている。
【0025】
1F〜3Fの各階には、センサノードとして機能する無線式感知器16−11〜16−14、16−21〜16−24、及び16−31〜16−34が設置されている。また本実施形態にあっては、無線受信用中継器12−1〜12−3に対し、距離が離れている無線式感知器からの電波の減衰による信号の不到達を防ぐために電波中継器14−1〜14−3を設置している。
【0026】
無線式感知器16−11〜16−34及び電波中継器14−1〜14−3のそれぞれには、機器IDを使用した固有のノードIDが予め登録されている。
【0027】
無線式感知器16−11〜16−14は火災による煙濃度または温度が所定の閾値を超えたときに火災イベントの発生と判断し、火災を示す電文信号(以下、単に「電文」という)を間欠的に無線送信する。
【0028】
この間欠送信は、同一の電文データを例えば18回連続して所定の送信時間T1に亘り送信する送信動作を、所定の送信休止時間T2を挟んで3回繰り返し、続いて無線式感知器に固有なランダム休止時間T6を空け、同様に同一の電文データを18回連続して所定の送信時間T1に亘り送信する送信動作を、所定の送信休止時間T2を挟んで3回繰り返し、これを1セットの電文送信としている。
【0029】
無線式感知器16−11〜16−14は、火災発報イベントや火災復旧イベントといった早く送りたい所謂至急イベントの発生を検出した時、あるいは、スイッチ操作による試験イベント、センサ障害などの障害イベントといった処理を急がない所謂不急イベントのいずれについても、1セットの電文送信を行うことを基本とする。
【0030】
本実施形態にあっては、無線式感知器16−11〜16−14において、先行するイベント発生に基づく1セットの電文送信中に、火災発報イベントや火災復旧イベントといった至急イベントの発生を検出した場合、可能な限り迅速に受信機側に送って必要な処理をするため、先行するイベントの1回の電文送信が終了した時点で、後続する至急イベントに基づく電文送信に切り替えることにより送信遅れを最小限に抑えており、この詳細は後の説明で明らかにする。
【0031】
電波中継器14−1と無線受信用中継器12−1のそれぞれには、親子関係に基づいて電文を受信する子ノードとしての送信元を特定するノードIDが予め登録されている。即ち、無線受信用中継器12−1には子ノードとなる無線式感知器16−13,16−14及び電波中継器14−1のノードIDが予め登録されている。また電波中継器14−1には、子ノードとなる無線式感知器16−11,16−12のノードIDが予め登録されている。
【0032】
なお、2F及び3Fの無線受信用中継器12−2,12−3及び電波中継器14−2,14−3についても同様であり、無線受信用中継器12−2は無線式感知器16−23,16−24及び電波中継器14−2のノードIDを予め登録し、電波中継器14−2は無線式感知器16−21,16−22のノードIDを登録し、無線受信用中継器12−3は無線式感知器16−33,16−34及び電波中継器14−3のノードIDを登録し、電波中継器14−3は無線式感知器16−31,16−32のノードIDを登録している。
【0033】
このような無線受信用中継器12−1及び電波中継器14−1に対するノードIDの登録により、電文を受信した際には、電文に含まれる送信元IDと予め登録したノードIDとを比較し、例えば両者が一致したときに有効な電文として処理することになる。
【0034】
更に本実施形態にあっては、無線受信用中継器12−1において、親子関係にない無線式感知器16−11,16−12から電波中継器14−1を経由せずに直接受信される電文について、有効な電文としての処理を可能とするため、電波中継器14−1から無線受信用中継器12−1に、登録したノードIDを転送して追加登録し、これによって、受信用中継器12−1で子ノードとして割り当てられていない無線式感知器16−11,16−12からの電文を直接受信した場合にも、追加登録したノードIDとの一致を判別して、有効な電文として処理できるようにしている。
【0035】
電波中継器14−1は、間欠受信を行っている。この間欠受信は、所定のキャリアセンス周期Tcs毎に無線式感知器16−11,16−12から送信される電文キャリアの有無を検出しており、キャリアを検出すると受信動作を行う。キャリアセンス周期Tcsは、無線式感知器16−11,16−12から送信される送信休止時間T2を間に挟んだ例えば2回の送信時間T1のいずれかで電文が有効に受信できるように決めている。このキャリアセンス周期Tcsの詳細は後の説明で明らかにする。
【0036】
電波中継器14−1は間欠受信により無線式感知器16−11,16−12からの電文を受信した際には、電文の送信元IDと登録しているノードIDとを比較し、両者が一致したときに有効な電文として無線受信用中継器12−1に対し中継送信する。電波中継器14−1からの中継電文の送信は、同一の電文データを例えば4回連続して所定の送信時間に亘り送信する送信動作を、所定の送信休止時間を挟んで3回繰り返す。
【0037】
無線受信用中継器12−1は、常時受信状態となっており、子ノードとして割り当てられた無線式感知器16−13,16−14からの電文を受信した際に、電文の送信元IDと登録しているノードIDとを比較し、両者が一致したときに有効な電文として受信処理し、処理結果をP型受信機10に送信する。
【0038】
無線受信用中継器12−1は、受信した電文が無線式感知器からの火災を示す電文であった場合、P型受信機10に対し感知器回線18−1に対する接点出力として発報電流を流すことで火災発報信号を送信する。
【0039】
また無線受信用中継器12−1は電波中継器14−1を経由して無線式感知器16−11,16−12から電文を受信した場合にも、電文に含まれる送信元IDと予め登録したノードIDとの一致により有効な電文として受信し、受信結果をP型受信機10に送信する。
【0040】
更に無線受信用中継器12−1は、割り当て対象となっていない無線式感知器16−11,16−12より直接、電文を受信した場合についても、受信した電文の送信元IDと追加登録されたノードIDと比較し、両者が一致したときに有効な電文として処理し、処理結果をP型受信機10に送信することになる。
【0041】
また本実施形態にあっては、電波中継器14−1及び無線式感知器16−11〜16−14が正常に動作していること、即ち持ち去りや電池切れが発生していないことを監視するため、当該各ノードは定期通報電文を定期的に送信する。
【0042】
無線式感知器16−11〜16−14及び電波中継器14−1からの定期通報電文の送信に対し、無線受信用中継器12−1は、電文の送信元IDと登録したノードIDの一致により有効な電文として受信したとき、登録したノードIDごとに設けている定期通報タイマをリセットスタートしている。しかしながら、定期的に定期通報電文が受信されずに定期通報タイマが所定時間を超えてタイムアップした場合には、そのノードが正常に動作していない定期通報異常であることを判断し、P型受信機10に対し障害発生を通知する。
【0043】
この障害発生通知は、例えばP型受信機10からの感知器回線18−1に接続している終端抵抗を切り離して擬似的に断線状態を作り出すことで、定期通報異常による障害発生を通知する。
【0044】
図2は図1の無線防災システムで送受信する電文を示した説明図である。図2において、電文フォーマット90は、位相修正信号92、連番94、送信元ID96、電文内容98及びエラーチェックコード100で構成される。受信側では、送信元ID96を見て登録されているノードかどうか判断してから、電文内容98を見て電文の意味を判断して処理する。
【0045】
位相修正信号92は所定ビット長の「101010・・・・10」で繰り返すプリアンブル信号であり、これにより無線通信部に設けた受信用PLLの位相同期による受信準備を行うことが出来る。
【0046】
連番94は電文の送信ごとに0〜255の範囲で順番に変化する値を格納し、受信側で電文送信の順序を知ることができる。送信元ID96には送信元となる機器のノードIDが設定される。
【0047】
電文内容98は火災情報や障害情報などが設定される。電文内容98に火災発報、火災復旧を設定した電文は、早く送って迅速な処理を必要とする至急イベントに基づく電文となる。これに対し、電文内容98に障害、試験を設定した電文は、急な処理を必要としない不急イベントに基づく電文ということができる。
【0048】
図3は図1の実施形態に設けた1Fの無線式感知器16−11、電波中継器14−1を取り出して、その詳細を示したブロック図である。
【0049】
図3において、センサノードとしての無線式感知器16−11は、プロセッサ20、無線通信部22、アンテナ24、センサ部26、ディップスイッチなどを用いた操作部28及びバッテリー30で構成される。センサ部26は例えば光電式の煙感知部やサーミスタなどを用いた温度検出部である。
【0050】
プロセッサ20にはプログラムの実行により実現する機能としてセンサ処理部74、送信処理部76及び送信切替部78が設けられている。センサ処理部74はセンサ部26から出力される例えば煙濃度検出信号を予め定めた閾値と比較し、閾値を超えたときに火災イベントの発生と判断し、送信処理部76に基づく送信処理により無線通信部22から火災を示す電文をアンテナ24から無線送信する。
【0051】
またセンサ処理部74は電源投入直後に行う操作部28のディップスイッチなどにより登録モードをセットすると、機器IDとして知られたノードIDを送信元IDにセットした起動電文を送信し、電波中継器14−1にノードIDを登録させる。
【0052】
更に、センサ処理部74は火災イベント以外に、復旧、電池切れ、障害、手動試験、自動試験、定期通報を含むイベント発生を検出し、送信処理部76による送信処理または送信切替部78による送信切替処理を行わせる。
【0053】
送信処理部76は、イベント発生時に、所定の電文送信時間に亘り同一の電文信号を連続送信する電文送信と、所定時間に亘り電文送信を休止する電文休止とを2回以上繰り返す。
【0054】
即ち、送信処理部76は、図5に示すように、例えば18個の同一電文データ112−1〜112−18を含む送信電文110−1〜110−3を所定の送信時間T1に亘り送信する電文送信を、所定の送信休止時間T2に亘り送信休止する送信休止を挟んで3回繰り返し、続いて無線式感知器に固有なランダム休止時間T6を空け、同様に18個の同一電文データを含む送信電文110−4〜110−6を送信時間T1に亘り送信する電文送信と、送信休止時間T2の送信休止を挟んで3回繰り返し、これを1セットの電文送信としている。ランダム休止時間T6は送信元IDなどに基づき例えば3〜7secの範囲で異なる時間がランダムに決められる。
【0055】
送信切替部78は、送信処理部76による先行したイベント発生に基づく電文送信と電文休止の2回未満の繰返し中に、早く送りたい火災発報イベントや火災復旧イベントなどの至急イベントが発生した場合、先行イベントに基づく電文送信と電文休止を1回繰り返して中止した後に、至急イベントに基づく電文送信と電文休止の繰返しに切り替える。
【0056】
ここで、非火災と思われる短時間の発報により火災発報イベントと火災復旧イベントが発生した場合、先行する火災発報イベントに基づく1セットの電文送信の開始から1回の電文送信と電文休止が終了した時点で、後続する火災復旧イベントに基づく1セットの電文送信に切り替える。
【0057】
この場合、先行する火災発報イベントについては1回の電文送信しか行われないため、電文休止を挟んだ2回の電文送信を前提とする電波中継器の間欠受信では、間欠受信のタイミングによっては、火災発報イベントについては1回の送信電文を間欠受信できない場合がある。そこで、本実施形態では、過去に火災発報があったことを示す火災復旧情報として、図2の電文内容98の中に復旧後初回送信であるという情報を入れて送信するようにしている。
【0058】
再び図3を参照するに、無線通信部22には送信回路22aが設けられており、日本国内の場合には例えば400MHz帯の特定小電力無線局の標準規格に従った無線通信を行う。なお無線式感知器16−11にあっては、受信機側に電文を送信するだけであることから、本実施例では受信回路を設けていない。
【0059】
また、無線通信部22のチャンネル周波数は400MHz帯の特定小電力無線局標準規格で使用可能な4つのチャンネル周波数f1〜f4のいずれか1つを使用する。チャンネル周波数は図1の各階で同じにしても良いし、混信を避けるために例えば隣接する階では異なるチャンネル周波数を使用しても良い。
【0060】
次に電波中継器14−1を説明する。電波中継器14−1は、プロセッサ32、受信回路34aと送信回路34bを備えた無線通信部34、アンテナ35、操作部36、表示部37、メモリ38及び電源部40で構成される。プロセッサ32にはプログラムの実行により実現される機能として、キャリアセンス周期設定部80、間欠受信処理部82及び中継処理部84が設けられている。
【0061】
中継処理部84は、操作部36に設けている登録スイッチの操作により、電波中継器14−1の使用を開始する際に、メモリ38の中継制御テーブル85に、自己に割り当てられた図1に示した無線式感知器16−11,16−12のノードIDを登録する。
【0062】
また中継処理部84は、割り当てられた図1の無線式感知器16−11,16−12のノードIDを中継制御テーブル85に登録する毎に、登録したノードIDを読み出して、無線受信用中継器12−1に登録電文により転送し、無線受信用中継器12−1側での追加登録を行わせる。
【0063】
更に中継処理部84は中継制御テーブル85に対するノードIDの登録が終了した後の監視状態では、無線通信部34で無線式感知器から送信された火災電文、定期通報電文などを間欠受信処理部82により受信した際に、各電文に含まれる送信元IDを取得し、中継制御テーブル85に登録しているノードIDと比較し、両者が一致したときに、受信した電文を中継送信し、不一致の場合には中継送信を行わない。
【0064】
キャリアセンス周期設定部80は、無線式感知器16−11から図5に示した送信電文110−1〜110−6が送信されたときに、例えば電文休止時間T2を挟んで連続する2回の送信電文110−1,110−2の電文送信時間T1の少なくともいずれかに、受信動作に最低限必要なキャリアセンス必須時間T5が重なるようにキャリアセンス周期Tcsを設定する。
【0065】
間欠受信処理部82は、キャリアセンス周期Tcs毎に送信電文によるキャリアの有無を検出し、キャリア検出状態がキャリアセンス必須時間T5以上継続したときに受信された電文を処理する。
【0066】
電源部40はバッテリー電源であるのが最適である。バッテリー電源であると電源線の配線が不要で設置が容易になるので、無線防災システムのメリットが十分に生かせる。
【0067】
図6は図3の無線式感知器16−11における2回の送信電文に対し有効に受信する図3の電波中継器による間欠受信処理を示したタイムチャートである。
【0068】
図6(A)は送信電文であり、1セットの送信電文の先頭部分の送信電文110−1,110−2を示しており、送信電文110−1,110−2は送信時間T1であり、休止時間T2を間に挟んでいる。
【0069】
本実施形態にあっては、N=2回の送信電文110−1,110−2に対しN=2回のキャリアセンスにより電文を必ず1回有効に受信できるようにキャリアセンス周期Tcsを設定している。
【0070】
このようなキャリアセンス周期の算出方法は次のようになる。まず、キャリアセンスを開始してから電文を有効に受信完了できるまでに最低限必要な時間をキャリアセンス必須時間T5とする。キャリアセンス必須時間T5はキャリアセンスして電波があると解ってから行う受信ICの設定時間や、無線電文の受信に掛かる時間が含まれており、使用する受信ICの仕様や電文長に依存する値であり、例えばT5=0.5secとなる。
【0071】
ここで、送信電文110−1,110−2の送信時間T1からキャリアセンス必須時間T5を引いた時間(T1−T5)内にキャリアセンスを開始しなければ、受信を行うことは出来ず、この時間を受信可能時間T3とする。即ち受信可能時間T3は、
T1−T5= T3
となる。
【0072】
一方、キャリアセンス必須時間T5に送信休止時間T2を加えた時間帯では、電文を受信できないことから、これを受信不可能時間T4とする。受信不可能時間T4は、
T2+T5= T4
となる。
【0073】
図6(B)は、図6(A)の送信信号110−1,110−2に対する受信可能時間T3で決まる受信可能状態114−1,114−2と受信不可能時間T4で決まる受信不可能状態116−1,116−2を受信可否状態として示している。
【0074】
まずキャリアセンス動作による消費電力を低減するため、キャリアセンス周期Tcsを送信電文の送信時間T1より長くしており、
Tcs>T1 (1)
となるように決める必要がある。
【0075】
次に、キャリアセンス周期Tcsは、受信不可能時間T4以上でないと、少なくとも2回のキャリアセンスで受信できないため、
Tcs≧T4 (2)
となる。
【0076】
これは、Tcs<T4 だと、受信不可能時間T4の中にキャリアセンスタイミングが2回以上入ってしまうため、キャリアセンス2回で受信することが出来ないからである。
【0077】
続いて、2回の受信可能時間T3までの間に、少なくとも2回のキャリアセンスタイミングが来るようにするため、
Tcs≦(T3×2+T4)/2 (3)
とする必要がある。
【0078】
ただし、キャリアセンス2回で受信する場合は、
{T3×2/(T3×2+T4)}≧(1/2) (4)
でなくてはならない。この(4)式の条件は、キャリアセンス2回のうち1回は受信可能時間T3に行わなくてはならないので、2回の受信可能時間T3を含む送信不可能時間T4を挟んだ2回の通信電文110−1,110−2に亘る時間(T3×2+T4) のうち、1/2以上は受信可能時間でなくてはならないからである。
【0079】
即ち、式(2)(3)をまとめるとキャリアセンス周期Tcsは、
T4≦Tcs≦(T3×2+T4)/2 (5)
となる。
【0080】
以上の式(1)〜(5)に基づきキャリアセンス周期Tcsを決定できる。
【0081】
具体的な例として
送信時間T1=2sec
送信休止時間T2=2sec
キャリアセンス必須時間T5=0.5sec
受信可能時間T3=T1−T5=1.5sec
受信不可能時間T4=T2+T5=2.5sec
とした場合、次のように算出される。
式(1)より Tcs>2 sec
式(2)より Tcs≧2.5sec
式(3)より Tcs≧(1.5×2 +2.5)/2
Tcs≦2.75sec
式(4)より、0.55≧0.5となり、これも満たす。
【0082】
式(1)(2)(3)を満たすキャリアセンス周期Tcsは
2.5sec≦Tcs≦2.75sec
となる。ここで、キャリアセンス周期Tcsは長い方が消費電力を低減できるため、長めに取るのが好ましい。例えばTcs=2.7secとする。
【0083】
図6(C)は前述のようにして決定したキャリアセンス周期Tcs=2.7secのキャリアセンスタイミング118−1〜118−4を示しており、キャリアセンスタイミング118−1が送信電文110−1の開始タイミングに一致した場合を例にとっている。
【0084】
この場合には、図6(D)の電文受信に示すように、キャリアセンスタイミング118−1によるキャリアセンスによりキャリアセンス必須時間T5の時間以上、電文が受信できるので受信を完了することができる。
【0085】
図7は図6と同じキャリアセンス周期Tcs=2.7secに設定した場合であるが、図7(C)に示すように、1回目の送信電文110−1に対してはキャリアセンスタイミング118−1がずれて受信できず、2回目の送信電文110−2に対しキャリアセンスタイミング118−2が適切となって電文受信が行われた状態を示している。
【0086】
この場合、最初の送信電文110−1に対するキャリアセンスタイミング118−1で受信準備動作を開始しているが、キャリアセンス必須時間T5の時間分の受信が出来ないので、受信動作が有効に行われない。しかし、次のキャリアセンスタイミング118−2では、キャリアセンス必須時間T5の時間以上、電文が受信できるので受信を完了することができる。
【0087】
このようなキャリアセンス周期Tcsの決定は、N回の送信電文110−1〜110−Nに対しN回のキャリアセンスにより電文を必ず1回以上有効に受信できるようにキャリアセンス周期Tcsを決定する方法として、一般化することができる。
【0088】
式(1)〜(5)を一般化すると次のようになる。
【0089】
式(1)はそのまま
Tcs>T1 (6)
式(2)は
Tcs×(N−1)≧T4 (7)
となる。
【0090】
式(3)は
Tcs≦{T3×N+T4×(N−1)}/N (8)
となる。
【0091】
更に条件式(4)は、
(T3×N)/{T3×N+T4×(N−1)}≧1/N (9)
となる。
【0092】
そして式(7)(8)をまとめた式(5)は、
{T3×N+T4×(N−1)}/N≧Tcs≧T4/(N−1) (10)
となる。
【0093】
更に、N=3とした場合のキャリアセンス周期Tcsは、一般式(6)〜(10)にN=3を代入することにより式次にようなる。
Tcs>T1 (11)
Tcs×2≧T4 (12)
Tcs≦(T3×3+T4×2)/3 (13)
T3×3/(T3×3+T4×2)≧1/3 (14)
(T3×3+T4×2)/3≧Tcs≧T4/2 (15)
【0094】
図4は図1の無線受信用中継器12−1及びP型受信機10を取り出して、その詳細を示したブロック図である。
【0095】
図4において、無線受信用中継器12−1は、プロセッサ42、受信回路を備えた無線通信部44、アンテナ46、有線通信部48、操作部50、表示部52、メモリ54及び電源部56で構成される。
【0096】
プロセッサ42にはプログラムの実行により実現される機能として、受信処理部86が設けられている。またメモリ54には中継制御テーブル87が設けられ、図1に示すように、無線受信用中継器12−1に子ノードとして予め割り当てられた無線式感知器16−13,16−14及び電波中継器14−1のノードIDが登録されている。
【0097】
受信処理部86は中継制御テーブル87に対するノードIDの登録を行う。無線式感知器16−13,16−14及び電波中継器14−1のノードIDを登録する際には、表示部52の例えば7セグメント表示器を使用して感知器又は電波中継器の登録アドレスを指定し、続いて操作部50のディップスイッチなどで登録待ち状態を設定し、この状態で無線式感知器16−13,16−14または電波中継器14−1から送信されてくる起動電文又は試験電文を受信し、電文に含まれる送信元IDを取得して中継制御テーブル87に登録する。
【0098】
また受信処理部86は、子ノードとして割り当てられた無線式感知器16−13,16−14及び電波中継器14−1のノードIDの登録を完了した後、電波中継器14−1より送信されてくる中継制御テーブル85に登録しているノードIDを含む登録要求電文を受信した際に、登録要求電文から取得した無線式感知器16−11,16−12のノードIDを中継制御テーブル87に追加登録する。この場合、同時に親ノードとなる電波中継器14−1のアドレスも送ってくることから、これも登録する。
【0099】
また受信処理部86で定期通報電文が受信されずに定期通報異常となる無線式感知器又は電波中継器を判別した場合、感知器回線18の終端に接続している断線検出抵抗を切り離し、擬似的に断線状態を作り出すことで、P型受信機10に定期通報異常による障害発生を通知するようにしている。
【0100】
更に電源部56としては、図1に示したように、受信機10からの電源線15による直流電力の供給を受けている。
【0101】
次に図4のP型受信機10を説明する。図4において、P型受信機10は、制御部として機能するプロセッサ58、回線受信部60−1〜60−3、電源供給部62、表示部64、音響警報部66、操作部68、移報部70及び不揮発メモリ72を備えている。なお自身の動作電源は、適切にバックアップされた商用電源を使用している(図示せず)。
【0102】
回線受信部60−1〜60−3からは感知器回線18−1〜18−3が図1に示したようにそれぞれ引き出され、感知器回線18−1には無線受信用中継器12−1が接続されている。
【0103】
回線受信部60−1は、無線受信用中継器12−1に設けた有線通信部48による接点動作で流れる発報電流を検知し、プロセッサ58に対し火災検出信号を出力する。また無線受信用中継器12−1の有線通信部48における終端抵抗の切り離しは、実際の感知器回線の断線の際の監視電流の遮断として検出し、障害検出信号をプロセッサ58に出力する。
【0104】
プロセッサ58はCPU、ROM、RAM、AD変換ポート及び各種の入出力ポートを備え、CPUによるプログラムの実行で火災監視部88の機能を実現している。
【0105】
火災監視部88は回線受信部60−1〜60−3のいずれかによる発報電流の検出で火災発報信号の受信出力が得られると、対応する感知器回線の火災発報と判断し、表示部64に代表火災表示を行うと共に、回線単位の地区表示を行う。また音響警報部66より音響火災警報を出力する。
【0106】
また火災監視部88は蓄積受信を行うこともできる。蓄積受信は予め所定の蓄積時間、例えば10secを設定し、火災発報の受信により蓄積タイマをスタートし、火災復旧が受信されず蓄積タイマが10secに到達した時に火災と断定して警報を行う。火災発報から蓄積時間となる10sec以内に火災復旧が受信されると蓄積タイマの動作を停止し、蓄積解除とする。
【0107】
また火災監視部88は、回線受信部60−1〜60−3により感知器回線18−1〜18−3の断線を検出した場合、表示部64に代表障害表示を行うと共に、障害を発生した地区を回線単位に表示し、更に音響警報部66から音響障害警報を出力する。
【0108】
図8は図3の無線式感知器16−11に設けた送信切替部78による送信切替処理の詳細を示したタイムチャートである。
【0109】
図8(A)はイベントAの発生に基づいて1セットの電文送信を行った場合であり、図5に示したフォーマットをもつ電文、即ち休止時間T2の送信休止を挟んで送信時間T1の電文送信A1,A2,A3を3回繰り替えした後、感知器固有のランダム休止時間T6を配置し、その後に、休止時間T2の送信休止を挟んで送信時間T1の電文送信A4,A5,A6を3回繰り替えしている。ランダム休止時間T6は、感知器毎に異なる休止時間を与えることで、複数の無線式感知器が同時に電文を送信した場合の電波衝突を回避する。
【0110】
図8(B)は、イベントAの発生に基づき1セットの電文送信を開始し、電文送信と送信休止を1回繰り返すまでの状態変化発生期間に至急イベントとして火災発報イベントBが発生した場合である。
【0111】
このように先行するイベントAの発生に基づく電文送信中に至急の火災発報イベントBが発生した場合、本実施形態では、先行するイベントAの間欠受信に必要な1回の電文送信A1の送信を完了して休止時間T2を経過したタイミングで、火災発報イベントBの発生に基づく1セットの電文送信B1〜B6に切り替え、至急の火災発報イベントの送信遅れを最小限に抑えることができる。
【0112】
図9は図3の無線式感知器16−11に設けた送信切替部78により、非火災と思われる短時間の発報があった場合の送信切替処理の詳細を示したタイムチャートである。
【0113】
図9(A)は火災発報イベントAの発生に対する電文送信であり、図8(A)と同様に、
1セットの電文A1〜A6を送信している。
【0114】
図9(B)は、非火災と思われる短時間の発報により、イベントAの発生に基づき1セットの電文送信を開始し、電文送信A2と送信休止を1回繰り返すまでの状態変化発生期間に火災復旧イベントBが発生した場合である。
【0115】
このように先行する至急の火災発報イベントAの発生に基づく電文送信中に至急の火災復旧イベントBが発生した場合、図8(B)と同様に、先行する火災発報イベントAの間欠受信に必要な1回の電文送信A1の送信を完了して休止時間T2を経過したタイミングで、火災復旧イベントBの発生に基づく1セットの電文送信B1〜B6に切り替え、火災復旧イベントの送信遅れを最小限に抑えている。
【0116】
これによって図1のP型受信機10で例えば蓄積時間10secに設定した蓄積受信を行っていた場合、火災復旧の送信遅れがないことから蓄積タイマを10secに達する前にリセットして、非火災に対する誤報を確実に防止することができる。
【0117】
図10は、図9の火災発報と火災復旧のイベント発生に基づく本実施形態の電文送信に対する間欠受信のタイミングを示したタイムチャートである。
【0118】
図10(A)は図9(B)の火災発報イベントAに基づく電文送信Aと送信切り替えによる火災復旧イベントに基づく電文送信B1,B2を取り出して示しており、図10(B)は受信可否状態であり、更に図10(C)〜(E)に間欠受信におけるキャリアセンスタイミングをケース1〜3に分けて示している。
【0119】
また図10における時間T1〜T5及びキャリアセンス周期Tcsは、図6のタイムチャートと同じであり、例えばT1=T2=2sec、T3=1.5sec、T4=2.5sec、T5=0.5sec、Tcs=2.7secとしている。
【0120】
火災発報イベントAの電文送信A1は1回しか行われないため、T3時間となる受信可能状態114−1の範囲内にキャリアセンスタイミングがあれば、電文送信A1による火災発報の電文データを間欠受信できる。しかし、キャリアセンスタイミングが受信可能状態114−1を外れると間欠受信はできない。
【0121】
送信切り替えによる火災復旧イベントBの電文送信B1,B2は、いずれか一方にキャリアセンスタイミングが入ることで、2回の電文送信で確実に間欠受信できる。そこで間欠受信側から見た送信電文Aに対する電文送信Bの受信遅れを検討すると次のようになる。
【0122】
図10(C)のケース1は、キャリアセンスタイミング132−1が電文送信A1の開始タイミングに一致した場合であり、電文送信A1は間欠受信できる。このとき(Tcs×2)を経過したキャリアセンスタイミング132−3で電文送信B1の間欠受信ができる。このためケース1の受信遅れ時間Trdは、
Trd=(Tcs×2)=5.4sec
となる。なお、キャリアセンスタイミング132−1,132−3の右側の点線のタイミングは、送信電文A1,B1の両方を間欠受信できる終了側のタイミングを示し、図10(B)における受信可能領域114−1〜114−3の中に、区分した受信可能状態140−1〜140−3として示している。
【0123】
図10(D)のケース2は、キャリアセンスタイミング134−1が電文送信A1の受信可能状態140−1の終端のタイミングに一致した場合であり、電文送信A1は間欠受信できる。このとき(Tcs×2)を経過したキャリアセンスタイミング134−3は電文送信B1の受信可能状態114−2の終端となり、電文送信B1は間欠受信できない。また、(Tcs×3)を経過したキャリアセンスタイミング134−4は電文送信B2の受信可能状態114−3にあり、電文送信B2は間欠受信できる。
【0124】
このためケース2の受信遅れ時間Trdは、
Trd=(Tcs×3)=8.1sec
となる。なお、キャリアセンスタイミング134−1,134−4の右側の点線のタイミングは、送信電文A1,B2の両方を間欠受信できる終了側のタイミングを示し、図10(B)における受信可能領域114−1,114−4の中に、区分したに受信可能状態142−1,142−3として示している。
【0125】
図10(E)のケース3は、キャリアセンスタイミング136−1が電文送信A1の受信可能状態142−1の終端のタイミングに一致した場合であり、電文送信A1は間欠受信できる。このとき(Tcs)を経過したキャリアセンスタイミング136−2は電文送信B2の受信可能状態114−2の開始タイミングにあり、電文送信B1は間欠受信できる。
【0126】
このためケース3の受信遅れ時間Trdは、
Trd=Tcs=2.7sec
となる。なお、キャリアセンスタイミング136−1,136−2の右側の点線のタイミングは、送信電文A1,B1の両方を間欠受信できる終了側のタイミングを示し、図10(B)における受信可能領域114−1,114−2の中に、区分したに受信可能状態144−1,144−2として示している。
【0127】
このように火災発報イベントAに基づく1回の電文送信A1と電文休止後に、火災復旧イベントBに基づく電文送信B1,B2に切り替えた場合、本実施形態の間欠受信による受信遅れ時間はキャリアサンプリング周期T=2.7secのキャリアセンスタイミングの如何にかかわらず、受信遅れ時間Trdは、Trd=2.7〜8.1secの範囲となる。従ってP型受信機10の例えば蓄積時間10secを満たす送信切り替えが実現できる。
【0128】
図11は本実施形態による送信切替えを行わなかった場合の問題を示したタイムチャートであり、図11(A)はイベントAの発生に対する1セットの送信動作を示し、図11(B)(C)に本実施形態によらない送信切替を示している。
【0129】
図11(B)は、先行イベントAによる1セットの電文送信A1〜A6の完了を待って火災発報イベントBの発生に基づく1セットの電文送信B1〜B6を行った場合であり、例えばT1=T2=2sec、T6=4sec、A6とB1の間を2secとすると、26secの送信遅れ時間Tsd後にイベントBの電文送信が開始され、送信遅れが大きくなり、蓄積受信に対応できない。
【0130】
図11(C)は、先行するイベントAに基づく電文送信を確実に間欠受信するため、電文休止を挟んで2回の電文送信A1,A2を行い、その電文休止後に火災発報イベントBに基づく電文送信B1〜B6に切り替えた場合である。この場合にも、火災発報イベントBの電文送信までの送信遅れ時間TsdはTsd=8secとなり、図8(B)に示した本実施形態による送信遅れ時間Tsd=4secの2倍となり、間欠受信の受信遅れ時間TrdもTrd=5sec〜12sec程度となり、蓄積時間10secとする蓄積受信に対応できない場合がある。
【0131】
図12は図3の無線式感知器16−11によるセンサ処理を示したフローチャートであり、プロセッサ20によるプログラムの実行により実現される。図12において、センサ処理は、ステップS1で初期化及び自己診断を行った後、正常であればステップS2に進み、登録処理を実行する。
【0132】
ステップS2の登録処理は、無線式感知器16−11の操作部28に設けたディップスイッチなどにより登録モードをセットすると、ID登録用の試験電文が送信され、このとき、対応する電波中継器14−1の操作部36の登録スイッチにより登録アドレスを指定して登録待ち状態をセットしていると、受信した試験電文に含まれる送信元IDを取り出して、中継制御テーブル85にノードIDとして登録する自動登録が行われる。
【0133】
続いてステップS3でイベント発生の有無を判別している。ステップS3でイベント発生が判別されるとステップS4に進み、イベント内容に応じた電文内容(火災発生、火災復旧、障害など)を電文データとした図5に示す1セットの電文送信を開始する。
【0134】
この電文送信中にあっては、ステップS5で送信終了の有無を判別しており、通信中にあってはステップS6で火災発報や火災復旧などの至急イベントの発生の有無を判別している。通信中にステップS6で至急イベントの発生が判別されるとステップS7に進み、先行イベントに基づく送信を、送信時間T1に亘る1回の電文送信を終了した後に中止し、ステップS8で休止時間T2を経過したタイミングで至急イベントの発生に基づく1セットの電文送信を行う。
【0135】
続いてステップS9で定期通報タイマがタイムアップしたか否か判別しており、定期通報タイマのタイムアップを判別すると、ステップS10で定期通報電文を間欠送信した後、ステップS11で定期通報タイマをリセットスタートする。
【0136】
図13は図3の電波中継器14−1による電波中継処理を示したフローチャートであり、プロセッサ32によるプログラムの実行により実現される処理となる。
【0137】
図13において、電波中継処理は、ステップS21で電源投入に伴う初期化及び自己診断を行った後、異常がなければ、ステップS22で中継制御テーブル85の登録処理を実行する。
【0138】
ステップS22の登録処理が済むと監視状態に入り、ステップS23で設定したキャリアセンス周期Tcsに基づく間欠受信処理を行っている。続いてステップ24で電文を有効に受信したか否か判別する。この有効性の判別は、キャリアセンスにより受信を開始して得られた2つの電文データが一致した時に、有効と判断して電文データとして保持する。
【0139】
ステップ24で電文の有効受信を判別した場合はステップS25に進んで受信した電文を解析し、ステップS26で電文から得られた送信元IDと中継制御テーブル85に登録しているテーブル登録のノードIDとを比較して一致を判別した場合には、有効な受信電文としてステップS27に進み、受信した電文を中継送信する。
【0140】
続いてステップS28で定期通報タイマがタイムアップしたか否か判別しており、タイムアップを判別すると、ステップS29で定期通報電文を送信した後、ステップS30で定期通報タイマをリセットスタートし、ステップS23に戻る。
【0141】
図14は図4の無線受信用中継器12−1による無線受信用中継処理を示したフローチャートである。図14において、無線受信用中継器12−1の電源が投入されると、ステップS31で初期化及び自己診断が実行され、異常がなければ、ステップS32で中継制御テーブル87の登録処理を実行する。
【0142】
登録処理が終了すると監視状態となり、ステップS33で受信電文の送信元IDとテーブル登録のノードIDが一致する有効な電文受信の有無を判別している。ステップS33で有効な電文受信を判別するとステップS34で電文を解析し、ステップS35で火災発報を判別すると、ステップS36で感知器回線18に対する接点出力で発報電流を流すことで、P型受信機10に対し火災発報信号を送信し、火災警報を出力させる。
【0143】
ここで、P型受信機10が蓄積受信を行っている場合には、火災発報信号を送信した後に、火災復旧の電文を受信した時に火災発報信号の送信を停止することで、火災復旧を知らせて蓄積タイマをリセットする。
【0144】
またステップS37で定期通報電文であることを判別すると、ステップS38に進み、送信元IDで特定される該当ノードの定期通報タイマをリセットスタートする。
【0145】
続いてステップS39でタイムアップした定期通報タイマの有無をチェックし、もしタイムアップした定期通報タイマがあれば、ステップS40で定期通報異常と判断し、感知器回線18を擬似的な断線状態とすることで、P型受信機10に対し障害信号を送って障害警報を出力させる。
【0146】
なお、上記の実施形態は、電文送信2回でキャリアセンス2回の場合を例として説明したが、電文送信N回でキャリアセンスN回の場合にも同様に実施することができる。
【0147】
また、本発明は無線防災システムを例にとるものであったが、これに限定されず、適宜の無線システムにおける間欠受信に対応した送信処理に適用することができる。
【0148】
また、上記の実施形態は火災受信機としてP型受信機からの感知器回線に無線受信用中継器を接続しているが、データ伝送機能を持つR型受信機に無線受信用中継器を接続するようにしてもよい。
【0149】
また上記の実施形態におけるフローチャートは処理の概略例を説明したもので、処理の順番等はこれに限定されない。また各処理や処理と処理の間に必要に応じて遅延時間を設けたり、他の判定を挿入する等が出来る。
【0150】
また本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0151】
10:P型受信機
12−1〜12−3:無線受信用中継器
14−1〜14−3:電波中継器
15:電源線
16−11〜16−34:無線式感知器
18−1〜18−3:感知器回線
20,32,42,58:プロセッサ
22,34,44:無線通信部
24,35,46:アンテナ
26:センサ部
28,36,50,68:操作部
30:バッテリー
38,54:メモリ
40,56:電源部
48:有線通信部
52,64:表示部
60−1〜60−3:回線受信部
62:電源供給部
66:音響警報部
70:移報部
72:不揮発メモリ
74:センサ処理部
76:送信処理部
78:送信切替部
80:キャリアセンス周期設定部
82:間欠受信処理部
84:中継処理部
85,87:中継制御テーブル
86:受信処理部
88:火災監視部
90:電文フォーマット
92:位相修正信号
94:連番
96:送信元ID
98:電文内容
100:エラーチェックコード
110−1〜110−6:送信電文
112−1〜112−18:電文データ
114−1〜114−3:受信開始可能状態
116−1〜116−2:受信開始不可能状態
118−1〜118−4:キャリアセンスタイミング
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線式感知器などのセンサノードから無線送信された電文を受信機に伝送して警報させる無線防災システム及びセンサノードに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、火災を監視する無線式の防災監視システムにあっては、ビルの各フロアといった警戒区域にセンサノードとしての複数の無線式火災感知器を設置し、無線式感知器で火災を検出した時、火災を示す電文をフロア単位に設置した無線防災ノードとしての無線受信用中継器に無線送信する。また途中に無線中継ノードとなる電波中継器を設置し、無線式感知器からの電文を中継する。
【0003】
無線受信用中継器は受信機からの感知器回線に接続されており、火災を示す電文を受信すると、リレー接点やスイッチング素子のオンにより感知器回線に発報電流を流して火災発報信号を受信機に送信する。受信機は、この火災発報信号を受信すると、音響等の手段により火災警報を出す。
【0004】
このような無線防災システムによれば、一般的に天井裏等に敷設される感知器回線の一部を不要にでき、配線工事が簡単になり、感知器の設置場所も配線等の制約を受けずに決めることができる。また、感知器増設等のシステム変更にも容易に対応できる。
【0005】
また無線防災システムにあっては、無線式感知器と無線受信用中継器の距離が遠く、電波が届きにくいことが予想される場合に、無線式感知器と無線受信用中継器の間に電波中継器を設置し、電波の中継を行うことができる。また、施工時に無線受信用中継器及び無線式感知器を実際に設置してみて電波状況が悪かった場合などに、後から電波中継器を追加して設置することもできる。電波中継器を電池により動作させることで、電源線の配線を不要とし、電波中継器の設置を容易にできるようにしている。このように電波中継器を電池により動作させる場合、常時受信動作を行うと電池寿命が短くなることから、電文を間欠受信するようにしている。
【0006】
この間欠受信は、無線式感知器で火災を検出した時に、所定の送信時間に亘り電文を送信し、これに対し受信側は、送信時間より短い周期でキャリアセンスを行っており、電文送信時間の間に少なくとも1回のキャリアセンスが行われることで、非同期通信であっても、間欠受信により確実に電文を受信できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−004033号公報
【特許文献2】特開2001−292089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような従来の無線防災システムにおける間欠受信にあっては、送信時間より短くなるように間欠受信のためのキャリアセンスの周期を設定していたため、受信機側でのキャリアセンス動作が短い周期で行われ、その分、電池で動作している場合には、消費電流が増加して電池寿命を低下させるという問題がある。
【0009】
この問題を解決するためには、火災を検出した時の電文送信時間を長くし、それより短く設定するキャリアセンス周期を長くすることが考えられるが、火災監視にあっては、火災検出から警報するまでの火災応答時間が決められており、間欠受信のキャリアセンス周期をむやみに長くすることは出来ない問題がある。
【0010】
この問題を解決するため本願発明者にあっては、無線式感知器における火災検出などのイベント発生時に、所定の電文送信時間に亘り同一の電文信号を連続送信する電文送信と、所定時間に亘り電文送信を休止する電文休止とを2回以上繰り返す送信動作を1セットの電文送信とし、一方、電波中継器にあっては、無線式感知器からの電文休止を挟んで連続する2回の電文送信の少なくともいずれかに受信タイミングが入るようにキャリアセンス周期を設定し、無線式感知器からの送信電文を間欠的に受信するようにした無線防災システムを提案している。
【0011】
この無線防災システムによれば、電文送信時間より長い周期でキャリアセンス動作が行われ、キャリアセンスによる消費電力を低減し、電池により動作している場合は電池寿命を長くすることができる。
【0012】
しかしながら、このような電文送信時間よりキャリアセンス周期を長くしたシステムにあっては、あるイベントが発生して電文送信と送信休止の繰返しによる送信中に、火災発報や火災復旧といった早く送りたい至急イベントが発生した場合、先行するイベントの電文送信が終了してから、至急イベントの送信を開始するため、至急イベントが発生してから送信を開始するまでの時間遅れが大きくなり、電波中継器を経由して無線受信用中継器で受信され、更に受信機に送られて報知するまでに時間がかかるという問題がある。
【0013】
また火災発報については、蓄積受信を行う場合があり、蓄積受信は火災発報から所定の蓄積時間に到達するまでに火災復旧がなければ、火災と断定して火災警報を行っている。この場合、非火災と思われる短時間の火災発報により火災発報イベントの検出後に直ぐに火災復旧イベントが検出された場合、火災発報イベントに基づく1セットの電文送信を終了した後に、火災復旧イベントに基づく1セットの電文送信を行う。このため火災復旧に対する送信遅れが大きくなり、その間に蓄積時間に達して火災警報を出してしまう問題もある。
【0014】
本発明は、電文送信中に火災や火災復旧を含む至急イベントが発生した場合の送信遅れを必要最小限に抑えてイベント対応処理を適切に行うことを可能とする無線防災システム及びセンサノードを提供とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(システム)
本発明は、センサノード、電波中継ノード、無線防災ノード及び受信機で構成され、センサノードから送信された電文信号又は電波中継ノードを経由してセンサノードから送信された電文信号を無線防災ノードで受信して処理し、処理結果を信号線により接続された受信機に送信する無線防災システムに於いて、
センサノードは、
イベント発生時に、所定の電文送信時間に亘り同一の電文信号を連続送信する電文送信と、所定時間に亘り電文送信を休止する電文休止とを2回以上繰り返す送信処理部と、
送信処理部による先行したイベント発生に基づく電文送信と電文休止の1回未満の繰返し中に、火災又は火災復旧を含む早く送りたい至急イベントが発生した場合、先行イベントに基づく電文送信と電文休止を1回繰り返して中止した後に、至急イベントに基づく電文送信と電文休止の繰返しに切り替える送信切替部と、
を備え、
電波中継ノードは、電文休止を挟んで連続する2回の電文送信の少なくともいずれかに受信タイミングが入るように間欠的に受信する間欠受信部を備えたことを特徴とする。
【0016】
ここで、センサノードの送信処理部は、火災復旧のイベント発生時に、過去に火災発報があったことを示す火災復旧情報を含む電文信号を送信する。
【0017】
センサノードの送信処理部は、イベント発生時に送信する送信パターンとして、電文送信と電文休止とを3回繰り返した後に、ノード毎にランダムに設定した所定のランダム休止時間を配置し、ランダム休止時間後に、電文送信と電文休止とを3回繰り返す。
【0018】
電波中継ノードの間欠受信部は、
電文休止時間を挟んで連続する2回の電文送信時間のいずれかに所定のキャリアセンス必須時間が重なるようにキャリアセンスを2回行う時のキャリアセンス周期を設定するキャリアセンス周期設定部と、
キャリアセンス周期毎に電文信号のキャリアの有無を検出し、キャリア検出状態がキャリアセンス必須時間以上継続したときに受信された電文を処理する間欠受信部と、
を備え、
キャリアセンス周期設定部は、
電文送信時間をT1、電文休止時間をT2、電文送信時間T1から受信動作に最低限必要なキャリアセンス必須時間T5を差し引いた受信可能時間をT3及び電文休止時間T2に前記キャリアセンス必須時間T5を加えた受信不可能時間をT4とした場合、
受信可能時間をT3及び受信不可能時間T4について
(T3×2)/(T3×N+T4)≧1/2
を満足することを条件に、前記キャリアセンス周期Tcsを
(T3×2+T4)/N≧Tcs≧T4
の範囲の値に設定する。
【0019】
(センサノード)
本発明は、イベント発生時に、所定時間の電文休止を挟んだ所定時間となる2回の電文送信の少なくともいずれかに受信タイミングが入るように間欠的に受信する電波中継ノードに電文信号を送信するセンサノードに於いて、
イベント発生時に、所定の電文送信時間に亘り同一の電文信号を連続送信する電文送信と、所定時間に亘り電文送信を休止する電文休止とを2回以上繰り返す送信処理部と、
送信処理部による先行したイベント発生に基づく電文送信と電文休止の1回未満の繰返し中に、火災又は火災復旧を含む早く送りたい至急イベントが発生した場合、先行イベントに基づく電文送信と電文休止を1回繰り返して中止した後に、至急イベントに基づく電文送信と電文休止の繰返しに切り替える送信切替部と、
を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、センサノードにおいて、先行したイベントに基づく送信中に、火災発報や火災復旧を含む早く送りたい至急イベントが発生した場合、先行イベントに基づく1回の電文送信と電文休止を終了した時に、先行イベントに基づく電文送信を中止して至急イベントに基づく電文送信に切り替えるようにしたため、必要最小限の送信時間のおくれにより至急イベントの電文送信に切り替えることができる。
【0021】
また非火災と思われる短時間の火災発報が発生した場合、先行する火災発報イベントに基づく1回の電文送信と電文休止を終了した時に、火災発報イベントに基づく電文送信を中止して火災復旧イベントに基づく電文送信に切り替えるようにしたため、火災復旧イベントの送信遅れを最小限におさえることができ、蓄積受信を行っていた場合に、蓄積時間に到達する前に火災復旧が送信され、蓄積受信により非火災と思われる短時間の発報についての誤報を防止又は減少できる。
【0022】
また先行する火災発報イベントに基づく1回の電文送信と電文休止を終了した時に、火災発報イベントに基づく電文送信を中止して火災復旧イベントに基づく電文送信に切り替えた場合、電文休止を挟んだ2回の電文送信に対し受信動作を保証する間欠受信では、火災発報の電文が間欠受信できない場合がある。そこで、後続イベントとして送信する火災復旧の送信電文に、過去に火災発報があったことを示す火災復旧情報を含ませておくことにより、先行する火災発報イベントの送信電文の間欠受信がタイミングずれにより受信できなくても、過去に火災発報があり、それに対する火災復旧であることを受信側で認識することができ、火災発報の受信がないのに火災復旧を受信した場合の矛盾を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による無線防災システムの実施形態を示した説明図
【図2】図1の無線防災システムで送受信する無線信号の電文フォーマットを示した説明図
【図3】図1の無線式感知器及び電波中継器の詳細を示したブロック図
【図4】図1の無線受信用中継器及びP型受信機の詳細を示したブロック図
【図5】無線式感知器による間欠的な電文送信を示したタイムチャート
【図6】2回の送信電文に対し有効に受信する図3の電波中継器による間欠受信処理を示したタイムチャート
【図7】図6の間欠受信において2回目の送信電文を有効に受信する場合を示したタイムチャート
【図8】先行したイベントに基づく電文送信中に火災発報イベントが発生したときの本実施形態による電文送信を示したタイムチャート
【図9】非火災と思われる短時間の発報による火災発報と火災復旧のイベント発生に基づく本実施形態による電文送信を示したタイムチャート
【図10】図9の火災発報と火災復旧のイベント発生に基づく本実施形態の電文送信に対する間欠受信のタイミングを示したタイムチャート
【図11】本実施形態による電文送信を行わなかった場合の送信遅れを示したタイムチャート
【図12】図3の無線式感知器によるセンサ処理を示したフローチャート
【図13】図3の電波中継器による電波中継処理を示したフローチャート
【図14】図4の無線受信用中継器による無線受信用中継処理を示したフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は本発明による無線防災システムの実施形態を示した説明図である。図1において、監視対象となる建物11の1F〜3Fの各階には無線防災ノードとして機能する無線受信用中継器12−1〜12−3が設置され、火災受信機であるP型受信機10から階別に引き出された感知器回線18−1〜18−3に接続されている。
【0025】
1F〜3Fの各階には、センサノードとして機能する無線式感知器16−11〜16−14、16−21〜16−24、及び16−31〜16−34が設置されている。また本実施形態にあっては、無線受信用中継器12−1〜12−3に対し、距離が離れている無線式感知器からの電波の減衰による信号の不到達を防ぐために電波中継器14−1〜14−3を設置している。
【0026】
無線式感知器16−11〜16−34及び電波中継器14−1〜14−3のそれぞれには、機器IDを使用した固有のノードIDが予め登録されている。
【0027】
無線式感知器16−11〜16−14は火災による煙濃度または温度が所定の閾値を超えたときに火災イベントの発生と判断し、火災を示す電文信号(以下、単に「電文」という)を間欠的に無線送信する。
【0028】
この間欠送信は、同一の電文データを例えば18回連続して所定の送信時間T1に亘り送信する送信動作を、所定の送信休止時間T2を挟んで3回繰り返し、続いて無線式感知器に固有なランダム休止時間T6を空け、同様に同一の電文データを18回連続して所定の送信時間T1に亘り送信する送信動作を、所定の送信休止時間T2を挟んで3回繰り返し、これを1セットの電文送信としている。
【0029】
無線式感知器16−11〜16−14は、火災発報イベントや火災復旧イベントといった早く送りたい所謂至急イベントの発生を検出した時、あるいは、スイッチ操作による試験イベント、センサ障害などの障害イベントといった処理を急がない所謂不急イベントのいずれについても、1セットの電文送信を行うことを基本とする。
【0030】
本実施形態にあっては、無線式感知器16−11〜16−14において、先行するイベント発生に基づく1セットの電文送信中に、火災発報イベントや火災復旧イベントといった至急イベントの発生を検出した場合、可能な限り迅速に受信機側に送って必要な処理をするため、先行するイベントの1回の電文送信が終了した時点で、後続する至急イベントに基づく電文送信に切り替えることにより送信遅れを最小限に抑えており、この詳細は後の説明で明らかにする。
【0031】
電波中継器14−1と無線受信用中継器12−1のそれぞれには、親子関係に基づいて電文を受信する子ノードとしての送信元を特定するノードIDが予め登録されている。即ち、無線受信用中継器12−1には子ノードとなる無線式感知器16−13,16−14及び電波中継器14−1のノードIDが予め登録されている。また電波中継器14−1には、子ノードとなる無線式感知器16−11,16−12のノードIDが予め登録されている。
【0032】
なお、2F及び3Fの無線受信用中継器12−2,12−3及び電波中継器14−2,14−3についても同様であり、無線受信用中継器12−2は無線式感知器16−23,16−24及び電波中継器14−2のノードIDを予め登録し、電波中継器14−2は無線式感知器16−21,16−22のノードIDを登録し、無線受信用中継器12−3は無線式感知器16−33,16−34及び電波中継器14−3のノードIDを登録し、電波中継器14−3は無線式感知器16−31,16−32のノードIDを登録している。
【0033】
このような無線受信用中継器12−1及び電波中継器14−1に対するノードIDの登録により、電文を受信した際には、電文に含まれる送信元IDと予め登録したノードIDとを比較し、例えば両者が一致したときに有効な電文として処理することになる。
【0034】
更に本実施形態にあっては、無線受信用中継器12−1において、親子関係にない無線式感知器16−11,16−12から電波中継器14−1を経由せずに直接受信される電文について、有効な電文としての処理を可能とするため、電波中継器14−1から無線受信用中継器12−1に、登録したノードIDを転送して追加登録し、これによって、受信用中継器12−1で子ノードとして割り当てられていない無線式感知器16−11,16−12からの電文を直接受信した場合にも、追加登録したノードIDとの一致を判別して、有効な電文として処理できるようにしている。
【0035】
電波中継器14−1は、間欠受信を行っている。この間欠受信は、所定のキャリアセンス周期Tcs毎に無線式感知器16−11,16−12から送信される電文キャリアの有無を検出しており、キャリアを検出すると受信動作を行う。キャリアセンス周期Tcsは、無線式感知器16−11,16−12から送信される送信休止時間T2を間に挟んだ例えば2回の送信時間T1のいずれかで電文が有効に受信できるように決めている。このキャリアセンス周期Tcsの詳細は後の説明で明らかにする。
【0036】
電波中継器14−1は間欠受信により無線式感知器16−11,16−12からの電文を受信した際には、電文の送信元IDと登録しているノードIDとを比較し、両者が一致したときに有効な電文として無線受信用中継器12−1に対し中継送信する。電波中継器14−1からの中継電文の送信は、同一の電文データを例えば4回連続して所定の送信時間に亘り送信する送信動作を、所定の送信休止時間を挟んで3回繰り返す。
【0037】
無線受信用中継器12−1は、常時受信状態となっており、子ノードとして割り当てられた無線式感知器16−13,16−14からの電文を受信した際に、電文の送信元IDと登録しているノードIDとを比較し、両者が一致したときに有効な電文として受信処理し、処理結果をP型受信機10に送信する。
【0038】
無線受信用中継器12−1は、受信した電文が無線式感知器からの火災を示す電文であった場合、P型受信機10に対し感知器回線18−1に対する接点出力として発報電流を流すことで火災発報信号を送信する。
【0039】
また無線受信用中継器12−1は電波中継器14−1を経由して無線式感知器16−11,16−12から電文を受信した場合にも、電文に含まれる送信元IDと予め登録したノードIDとの一致により有効な電文として受信し、受信結果をP型受信機10に送信する。
【0040】
更に無線受信用中継器12−1は、割り当て対象となっていない無線式感知器16−11,16−12より直接、電文を受信した場合についても、受信した電文の送信元IDと追加登録されたノードIDと比較し、両者が一致したときに有効な電文として処理し、処理結果をP型受信機10に送信することになる。
【0041】
また本実施形態にあっては、電波中継器14−1及び無線式感知器16−11〜16−14が正常に動作していること、即ち持ち去りや電池切れが発生していないことを監視するため、当該各ノードは定期通報電文を定期的に送信する。
【0042】
無線式感知器16−11〜16−14及び電波中継器14−1からの定期通報電文の送信に対し、無線受信用中継器12−1は、電文の送信元IDと登録したノードIDの一致により有効な電文として受信したとき、登録したノードIDごとに設けている定期通報タイマをリセットスタートしている。しかしながら、定期的に定期通報電文が受信されずに定期通報タイマが所定時間を超えてタイムアップした場合には、そのノードが正常に動作していない定期通報異常であることを判断し、P型受信機10に対し障害発生を通知する。
【0043】
この障害発生通知は、例えばP型受信機10からの感知器回線18−1に接続している終端抵抗を切り離して擬似的に断線状態を作り出すことで、定期通報異常による障害発生を通知する。
【0044】
図2は図1の無線防災システムで送受信する電文を示した説明図である。図2において、電文フォーマット90は、位相修正信号92、連番94、送信元ID96、電文内容98及びエラーチェックコード100で構成される。受信側では、送信元ID96を見て登録されているノードかどうか判断してから、電文内容98を見て電文の意味を判断して処理する。
【0045】
位相修正信号92は所定ビット長の「101010・・・・10」で繰り返すプリアンブル信号であり、これにより無線通信部に設けた受信用PLLの位相同期による受信準備を行うことが出来る。
【0046】
連番94は電文の送信ごとに0〜255の範囲で順番に変化する値を格納し、受信側で電文送信の順序を知ることができる。送信元ID96には送信元となる機器のノードIDが設定される。
【0047】
電文内容98は火災情報や障害情報などが設定される。電文内容98に火災発報、火災復旧を設定した電文は、早く送って迅速な処理を必要とする至急イベントに基づく電文となる。これに対し、電文内容98に障害、試験を設定した電文は、急な処理を必要としない不急イベントに基づく電文ということができる。
【0048】
図3は図1の実施形態に設けた1Fの無線式感知器16−11、電波中継器14−1を取り出して、その詳細を示したブロック図である。
【0049】
図3において、センサノードとしての無線式感知器16−11は、プロセッサ20、無線通信部22、アンテナ24、センサ部26、ディップスイッチなどを用いた操作部28及びバッテリー30で構成される。センサ部26は例えば光電式の煙感知部やサーミスタなどを用いた温度検出部である。
【0050】
プロセッサ20にはプログラムの実行により実現する機能としてセンサ処理部74、送信処理部76及び送信切替部78が設けられている。センサ処理部74はセンサ部26から出力される例えば煙濃度検出信号を予め定めた閾値と比較し、閾値を超えたときに火災イベントの発生と判断し、送信処理部76に基づく送信処理により無線通信部22から火災を示す電文をアンテナ24から無線送信する。
【0051】
またセンサ処理部74は電源投入直後に行う操作部28のディップスイッチなどにより登録モードをセットすると、機器IDとして知られたノードIDを送信元IDにセットした起動電文を送信し、電波中継器14−1にノードIDを登録させる。
【0052】
更に、センサ処理部74は火災イベント以外に、復旧、電池切れ、障害、手動試験、自動試験、定期通報を含むイベント発生を検出し、送信処理部76による送信処理または送信切替部78による送信切替処理を行わせる。
【0053】
送信処理部76は、イベント発生時に、所定の電文送信時間に亘り同一の電文信号を連続送信する電文送信と、所定時間に亘り電文送信を休止する電文休止とを2回以上繰り返す。
【0054】
即ち、送信処理部76は、図5に示すように、例えば18個の同一電文データ112−1〜112−18を含む送信電文110−1〜110−3を所定の送信時間T1に亘り送信する電文送信を、所定の送信休止時間T2に亘り送信休止する送信休止を挟んで3回繰り返し、続いて無線式感知器に固有なランダム休止時間T6を空け、同様に18個の同一電文データを含む送信電文110−4〜110−6を送信時間T1に亘り送信する電文送信と、送信休止時間T2の送信休止を挟んで3回繰り返し、これを1セットの電文送信としている。ランダム休止時間T6は送信元IDなどに基づき例えば3〜7secの範囲で異なる時間がランダムに決められる。
【0055】
送信切替部78は、送信処理部76による先行したイベント発生に基づく電文送信と電文休止の2回未満の繰返し中に、早く送りたい火災発報イベントや火災復旧イベントなどの至急イベントが発生した場合、先行イベントに基づく電文送信と電文休止を1回繰り返して中止した後に、至急イベントに基づく電文送信と電文休止の繰返しに切り替える。
【0056】
ここで、非火災と思われる短時間の発報により火災発報イベントと火災復旧イベントが発生した場合、先行する火災発報イベントに基づく1セットの電文送信の開始から1回の電文送信と電文休止が終了した時点で、後続する火災復旧イベントに基づく1セットの電文送信に切り替える。
【0057】
この場合、先行する火災発報イベントについては1回の電文送信しか行われないため、電文休止を挟んだ2回の電文送信を前提とする電波中継器の間欠受信では、間欠受信のタイミングによっては、火災発報イベントについては1回の送信電文を間欠受信できない場合がある。そこで、本実施形態では、過去に火災発報があったことを示す火災復旧情報として、図2の電文内容98の中に復旧後初回送信であるという情報を入れて送信するようにしている。
【0058】
再び図3を参照するに、無線通信部22には送信回路22aが設けられており、日本国内の場合には例えば400MHz帯の特定小電力無線局の標準規格に従った無線通信を行う。なお無線式感知器16−11にあっては、受信機側に電文を送信するだけであることから、本実施例では受信回路を設けていない。
【0059】
また、無線通信部22のチャンネル周波数は400MHz帯の特定小電力無線局標準規格で使用可能な4つのチャンネル周波数f1〜f4のいずれか1つを使用する。チャンネル周波数は図1の各階で同じにしても良いし、混信を避けるために例えば隣接する階では異なるチャンネル周波数を使用しても良い。
【0060】
次に電波中継器14−1を説明する。電波中継器14−1は、プロセッサ32、受信回路34aと送信回路34bを備えた無線通信部34、アンテナ35、操作部36、表示部37、メモリ38及び電源部40で構成される。プロセッサ32にはプログラムの実行により実現される機能として、キャリアセンス周期設定部80、間欠受信処理部82及び中継処理部84が設けられている。
【0061】
中継処理部84は、操作部36に設けている登録スイッチの操作により、電波中継器14−1の使用を開始する際に、メモリ38の中継制御テーブル85に、自己に割り当てられた図1に示した無線式感知器16−11,16−12のノードIDを登録する。
【0062】
また中継処理部84は、割り当てられた図1の無線式感知器16−11,16−12のノードIDを中継制御テーブル85に登録する毎に、登録したノードIDを読み出して、無線受信用中継器12−1に登録電文により転送し、無線受信用中継器12−1側での追加登録を行わせる。
【0063】
更に中継処理部84は中継制御テーブル85に対するノードIDの登録が終了した後の監視状態では、無線通信部34で無線式感知器から送信された火災電文、定期通報電文などを間欠受信処理部82により受信した際に、各電文に含まれる送信元IDを取得し、中継制御テーブル85に登録しているノードIDと比較し、両者が一致したときに、受信した電文を中継送信し、不一致の場合には中継送信を行わない。
【0064】
キャリアセンス周期設定部80は、無線式感知器16−11から図5に示した送信電文110−1〜110−6が送信されたときに、例えば電文休止時間T2を挟んで連続する2回の送信電文110−1,110−2の電文送信時間T1の少なくともいずれかに、受信動作に最低限必要なキャリアセンス必須時間T5が重なるようにキャリアセンス周期Tcsを設定する。
【0065】
間欠受信処理部82は、キャリアセンス周期Tcs毎に送信電文によるキャリアの有無を検出し、キャリア検出状態がキャリアセンス必須時間T5以上継続したときに受信された電文を処理する。
【0066】
電源部40はバッテリー電源であるのが最適である。バッテリー電源であると電源線の配線が不要で設置が容易になるので、無線防災システムのメリットが十分に生かせる。
【0067】
図6は図3の無線式感知器16−11における2回の送信電文に対し有効に受信する図3の電波中継器による間欠受信処理を示したタイムチャートである。
【0068】
図6(A)は送信電文であり、1セットの送信電文の先頭部分の送信電文110−1,110−2を示しており、送信電文110−1,110−2は送信時間T1であり、休止時間T2を間に挟んでいる。
【0069】
本実施形態にあっては、N=2回の送信電文110−1,110−2に対しN=2回のキャリアセンスにより電文を必ず1回有効に受信できるようにキャリアセンス周期Tcsを設定している。
【0070】
このようなキャリアセンス周期の算出方法は次のようになる。まず、キャリアセンスを開始してから電文を有効に受信完了できるまでに最低限必要な時間をキャリアセンス必須時間T5とする。キャリアセンス必須時間T5はキャリアセンスして電波があると解ってから行う受信ICの設定時間や、無線電文の受信に掛かる時間が含まれており、使用する受信ICの仕様や電文長に依存する値であり、例えばT5=0.5secとなる。
【0071】
ここで、送信電文110−1,110−2の送信時間T1からキャリアセンス必須時間T5を引いた時間(T1−T5)内にキャリアセンスを開始しなければ、受信を行うことは出来ず、この時間を受信可能時間T3とする。即ち受信可能時間T3は、
T1−T5= T3
となる。
【0072】
一方、キャリアセンス必須時間T5に送信休止時間T2を加えた時間帯では、電文を受信できないことから、これを受信不可能時間T4とする。受信不可能時間T4は、
T2+T5= T4
となる。
【0073】
図6(B)は、図6(A)の送信信号110−1,110−2に対する受信可能時間T3で決まる受信可能状態114−1,114−2と受信不可能時間T4で決まる受信不可能状態116−1,116−2を受信可否状態として示している。
【0074】
まずキャリアセンス動作による消費電力を低減するため、キャリアセンス周期Tcsを送信電文の送信時間T1より長くしており、
Tcs>T1 (1)
となるように決める必要がある。
【0075】
次に、キャリアセンス周期Tcsは、受信不可能時間T4以上でないと、少なくとも2回のキャリアセンスで受信できないため、
Tcs≧T4 (2)
となる。
【0076】
これは、Tcs<T4 だと、受信不可能時間T4の中にキャリアセンスタイミングが2回以上入ってしまうため、キャリアセンス2回で受信することが出来ないからである。
【0077】
続いて、2回の受信可能時間T3までの間に、少なくとも2回のキャリアセンスタイミングが来るようにするため、
Tcs≦(T3×2+T4)/2 (3)
とする必要がある。
【0078】
ただし、キャリアセンス2回で受信する場合は、
{T3×2/(T3×2+T4)}≧(1/2) (4)
でなくてはならない。この(4)式の条件は、キャリアセンス2回のうち1回は受信可能時間T3に行わなくてはならないので、2回の受信可能時間T3を含む送信不可能時間T4を挟んだ2回の通信電文110−1,110−2に亘る時間(T3×2+T4) のうち、1/2以上は受信可能時間でなくてはならないからである。
【0079】
即ち、式(2)(3)をまとめるとキャリアセンス周期Tcsは、
T4≦Tcs≦(T3×2+T4)/2 (5)
となる。
【0080】
以上の式(1)〜(5)に基づきキャリアセンス周期Tcsを決定できる。
【0081】
具体的な例として
送信時間T1=2sec
送信休止時間T2=2sec
キャリアセンス必須時間T5=0.5sec
受信可能時間T3=T1−T5=1.5sec
受信不可能時間T4=T2+T5=2.5sec
とした場合、次のように算出される。
式(1)より Tcs>2 sec
式(2)より Tcs≧2.5sec
式(3)より Tcs≧(1.5×2 +2.5)/2
Tcs≦2.75sec
式(4)より、0.55≧0.5となり、これも満たす。
【0082】
式(1)(2)(3)を満たすキャリアセンス周期Tcsは
2.5sec≦Tcs≦2.75sec
となる。ここで、キャリアセンス周期Tcsは長い方が消費電力を低減できるため、長めに取るのが好ましい。例えばTcs=2.7secとする。
【0083】
図6(C)は前述のようにして決定したキャリアセンス周期Tcs=2.7secのキャリアセンスタイミング118−1〜118−4を示しており、キャリアセンスタイミング118−1が送信電文110−1の開始タイミングに一致した場合を例にとっている。
【0084】
この場合には、図6(D)の電文受信に示すように、キャリアセンスタイミング118−1によるキャリアセンスによりキャリアセンス必須時間T5の時間以上、電文が受信できるので受信を完了することができる。
【0085】
図7は図6と同じキャリアセンス周期Tcs=2.7secに設定した場合であるが、図7(C)に示すように、1回目の送信電文110−1に対してはキャリアセンスタイミング118−1がずれて受信できず、2回目の送信電文110−2に対しキャリアセンスタイミング118−2が適切となって電文受信が行われた状態を示している。
【0086】
この場合、最初の送信電文110−1に対するキャリアセンスタイミング118−1で受信準備動作を開始しているが、キャリアセンス必須時間T5の時間分の受信が出来ないので、受信動作が有効に行われない。しかし、次のキャリアセンスタイミング118−2では、キャリアセンス必須時間T5の時間以上、電文が受信できるので受信を完了することができる。
【0087】
このようなキャリアセンス周期Tcsの決定は、N回の送信電文110−1〜110−Nに対しN回のキャリアセンスにより電文を必ず1回以上有効に受信できるようにキャリアセンス周期Tcsを決定する方法として、一般化することができる。
【0088】
式(1)〜(5)を一般化すると次のようになる。
【0089】
式(1)はそのまま
Tcs>T1 (6)
式(2)は
Tcs×(N−1)≧T4 (7)
となる。
【0090】
式(3)は
Tcs≦{T3×N+T4×(N−1)}/N (8)
となる。
【0091】
更に条件式(4)は、
(T3×N)/{T3×N+T4×(N−1)}≧1/N (9)
となる。
【0092】
そして式(7)(8)をまとめた式(5)は、
{T3×N+T4×(N−1)}/N≧Tcs≧T4/(N−1) (10)
となる。
【0093】
更に、N=3とした場合のキャリアセンス周期Tcsは、一般式(6)〜(10)にN=3を代入することにより式次にようなる。
Tcs>T1 (11)
Tcs×2≧T4 (12)
Tcs≦(T3×3+T4×2)/3 (13)
T3×3/(T3×3+T4×2)≧1/3 (14)
(T3×3+T4×2)/3≧Tcs≧T4/2 (15)
【0094】
図4は図1の無線受信用中継器12−1及びP型受信機10を取り出して、その詳細を示したブロック図である。
【0095】
図4において、無線受信用中継器12−1は、プロセッサ42、受信回路を備えた無線通信部44、アンテナ46、有線通信部48、操作部50、表示部52、メモリ54及び電源部56で構成される。
【0096】
プロセッサ42にはプログラムの実行により実現される機能として、受信処理部86が設けられている。またメモリ54には中継制御テーブル87が設けられ、図1に示すように、無線受信用中継器12−1に子ノードとして予め割り当てられた無線式感知器16−13,16−14及び電波中継器14−1のノードIDが登録されている。
【0097】
受信処理部86は中継制御テーブル87に対するノードIDの登録を行う。無線式感知器16−13,16−14及び電波中継器14−1のノードIDを登録する際には、表示部52の例えば7セグメント表示器を使用して感知器又は電波中継器の登録アドレスを指定し、続いて操作部50のディップスイッチなどで登録待ち状態を設定し、この状態で無線式感知器16−13,16−14または電波中継器14−1から送信されてくる起動電文又は試験電文を受信し、電文に含まれる送信元IDを取得して中継制御テーブル87に登録する。
【0098】
また受信処理部86は、子ノードとして割り当てられた無線式感知器16−13,16−14及び電波中継器14−1のノードIDの登録を完了した後、電波中継器14−1より送信されてくる中継制御テーブル85に登録しているノードIDを含む登録要求電文を受信した際に、登録要求電文から取得した無線式感知器16−11,16−12のノードIDを中継制御テーブル87に追加登録する。この場合、同時に親ノードとなる電波中継器14−1のアドレスも送ってくることから、これも登録する。
【0099】
また受信処理部86で定期通報電文が受信されずに定期通報異常となる無線式感知器又は電波中継器を判別した場合、感知器回線18の終端に接続している断線検出抵抗を切り離し、擬似的に断線状態を作り出すことで、P型受信機10に定期通報異常による障害発生を通知するようにしている。
【0100】
更に電源部56としては、図1に示したように、受信機10からの電源線15による直流電力の供給を受けている。
【0101】
次に図4のP型受信機10を説明する。図4において、P型受信機10は、制御部として機能するプロセッサ58、回線受信部60−1〜60−3、電源供給部62、表示部64、音響警報部66、操作部68、移報部70及び不揮発メモリ72を備えている。なお自身の動作電源は、適切にバックアップされた商用電源を使用している(図示せず)。
【0102】
回線受信部60−1〜60−3からは感知器回線18−1〜18−3が図1に示したようにそれぞれ引き出され、感知器回線18−1には無線受信用中継器12−1が接続されている。
【0103】
回線受信部60−1は、無線受信用中継器12−1に設けた有線通信部48による接点動作で流れる発報電流を検知し、プロセッサ58に対し火災検出信号を出力する。また無線受信用中継器12−1の有線通信部48における終端抵抗の切り離しは、実際の感知器回線の断線の際の監視電流の遮断として検出し、障害検出信号をプロセッサ58に出力する。
【0104】
プロセッサ58はCPU、ROM、RAM、AD変換ポート及び各種の入出力ポートを備え、CPUによるプログラムの実行で火災監視部88の機能を実現している。
【0105】
火災監視部88は回線受信部60−1〜60−3のいずれかによる発報電流の検出で火災発報信号の受信出力が得られると、対応する感知器回線の火災発報と判断し、表示部64に代表火災表示を行うと共に、回線単位の地区表示を行う。また音響警報部66より音響火災警報を出力する。
【0106】
また火災監視部88は蓄積受信を行うこともできる。蓄積受信は予め所定の蓄積時間、例えば10secを設定し、火災発報の受信により蓄積タイマをスタートし、火災復旧が受信されず蓄積タイマが10secに到達した時に火災と断定して警報を行う。火災発報から蓄積時間となる10sec以内に火災復旧が受信されると蓄積タイマの動作を停止し、蓄積解除とする。
【0107】
また火災監視部88は、回線受信部60−1〜60−3により感知器回線18−1〜18−3の断線を検出した場合、表示部64に代表障害表示を行うと共に、障害を発生した地区を回線単位に表示し、更に音響警報部66から音響障害警報を出力する。
【0108】
図8は図3の無線式感知器16−11に設けた送信切替部78による送信切替処理の詳細を示したタイムチャートである。
【0109】
図8(A)はイベントAの発生に基づいて1セットの電文送信を行った場合であり、図5に示したフォーマットをもつ電文、即ち休止時間T2の送信休止を挟んで送信時間T1の電文送信A1,A2,A3を3回繰り替えした後、感知器固有のランダム休止時間T6を配置し、その後に、休止時間T2の送信休止を挟んで送信時間T1の電文送信A4,A5,A6を3回繰り替えしている。ランダム休止時間T6は、感知器毎に異なる休止時間を与えることで、複数の無線式感知器が同時に電文を送信した場合の電波衝突を回避する。
【0110】
図8(B)は、イベントAの発生に基づき1セットの電文送信を開始し、電文送信と送信休止を1回繰り返すまでの状態変化発生期間に至急イベントとして火災発報イベントBが発生した場合である。
【0111】
このように先行するイベントAの発生に基づく電文送信中に至急の火災発報イベントBが発生した場合、本実施形態では、先行するイベントAの間欠受信に必要な1回の電文送信A1の送信を完了して休止時間T2を経過したタイミングで、火災発報イベントBの発生に基づく1セットの電文送信B1〜B6に切り替え、至急の火災発報イベントの送信遅れを最小限に抑えることができる。
【0112】
図9は図3の無線式感知器16−11に設けた送信切替部78により、非火災と思われる短時間の発報があった場合の送信切替処理の詳細を示したタイムチャートである。
【0113】
図9(A)は火災発報イベントAの発生に対する電文送信であり、図8(A)と同様に、
1セットの電文A1〜A6を送信している。
【0114】
図9(B)は、非火災と思われる短時間の発報により、イベントAの発生に基づき1セットの電文送信を開始し、電文送信A2と送信休止を1回繰り返すまでの状態変化発生期間に火災復旧イベントBが発生した場合である。
【0115】
このように先行する至急の火災発報イベントAの発生に基づく電文送信中に至急の火災復旧イベントBが発生した場合、図8(B)と同様に、先行する火災発報イベントAの間欠受信に必要な1回の電文送信A1の送信を完了して休止時間T2を経過したタイミングで、火災復旧イベントBの発生に基づく1セットの電文送信B1〜B6に切り替え、火災復旧イベントの送信遅れを最小限に抑えている。
【0116】
これによって図1のP型受信機10で例えば蓄積時間10secに設定した蓄積受信を行っていた場合、火災復旧の送信遅れがないことから蓄積タイマを10secに達する前にリセットして、非火災に対する誤報を確実に防止することができる。
【0117】
図10は、図9の火災発報と火災復旧のイベント発生に基づく本実施形態の電文送信に対する間欠受信のタイミングを示したタイムチャートである。
【0118】
図10(A)は図9(B)の火災発報イベントAに基づく電文送信Aと送信切り替えによる火災復旧イベントに基づく電文送信B1,B2を取り出して示しており、図10(B)は受信可否状態であり、更に図10(C)〜(E)に間欠受信におけるキャリアセンスタイミングをケース1〜3に分けて示している。
【0119】
また図10における時間T1〜T5及びキャリアセンス周期Tcsは、図6のタイムチャートと同じであり、例えばT1=T2=2sec、T3=1.5sec、T4=2.5sec、T5=0.5sec、Tcs=2.7secとしている。
【0120】
火災発報イベントAの電文送信A1は1回しか行われないため、T3時間となる受信可能状態114−1の範囲内にキャリアセンスタイミングがあれば、電文送信A1による火災発報の電文データを間欠受信できる。しかし、キャリアセンスタイミングが受信可能状態114−1を外れると間欠受信はできない。
【0121】
送信切り替えによる火災復旧イベントBの電文送信B1,B2は、いずれか一方にキャリアセンスタイミングが入ることで、2回の電文送信で確実に間欠受信できる。そこで間欠受信側から見た送信電文Aに対する電文送信Bの受信遅れを検討すると次のようになる。
【0122】
図10(C)のケース1は、キャリアセンスタイミング132−1が電文送信A1の開始タイミングに一致した場合であり、電文送信A1は間欠受信できる。このとき(Tcs×2)を経過したキャリアセンスタイミング132−3で電文送信B1の間欠受信ができる。このためケース1の受信遅れ時間Trdは、
Trd=(Tcs×2)=5.4sec
となる。なお、キャリアセンスタイミング132−1,132−3の右側の点線のタイミングは、送信電文A1,B1の両方を間欠受信できる終了側のタイミングを示し、図10(B)における受信可能領域114−1〜114−3の中に、区分した受信可能状態140−1〜140−3として示している。
【0123】
図10(D)のケース2は、キャリアセンスタイミング134−1が電文送信A1の受信可能状態140−1の終端のタイミングに一致した場合であり、電文送信A1は間欠受信できる。このとき(Tcs×2)を経過したキャリアセンスタイミング134−3は電文送信B1の受信可能状態114−2の終端となり、電文送信B1は間欠受信できない。また、(Tcs×3)を経過したキャリアセンスタイミング134−4は電文送信B2の受信可能状態114−3にあり、電文送信B2は間欠受信できる。
【0124】
このためケース2の受信遅れ時間Trdは、
Trd=(Tcs×3)=8.1sec
となる。なお、キャリアセンスタイミング134−1,134−4の右側の点線のタイミングは、送信電文A1,B2の両方を間欠受信できる終了側のタイミングを示し、図10(B)における受信可能領域114−1,114−4の中に、区分したに受信可能状態142−1,142−3として示している。
【0125】
図10(E)のケース3は、キャリアセンスタイミング136−1が電文送信A1の受信可能状態142−1の終端のタイミングに一致した場合であり、電文送信A1は間欠受信できる。このとき(Tcs)を経過したキャリアセンスタイミング136−2は電文送信B2の受信可能状態114−2の開始タイミングにあり、電文送信B1は間欠受信できる。
【0126】
このためケース3の受信遅れ時間Trdは、
Trd=Tcs=2.7sec
となる。なお、キャリアセンスタイミング136−1,136−2の右側の点線のタイミングは、送信電文A1,B1の両方を間欠受信できる終了側のタイミングを示し、図10(B)における受信可能領域114−1,114−2の中に、区分したに受信可能状態144−1,144−2として示している。
【0127】
このように火災発報イベントAに基づく1回の電文送信A1と電文休止後に、火災復旧イベントBに基づく電文送信B1,B2に切り替えた場合、本実施形態の間欠受信による受信遅れ時間はキャリアサンプリング周期T=2.7secのキャリアセンスタイミングの如何にかかわらず、受信遅れ時間Trdは、Trd=2.7〜8.1secの範囲となる。従ってP型受信機10の例えば蓄積時間10secを満たす送信切り替えが実現できる。
【0128】
図11は本実施形態による送信切替えを行わなかった場合の問題を示したタイムチャートであり、図11(A)はイベントAの発生に対する1セットの送信動作を示し、図11(B)(C)に本実施形態によらない送信切替を示している。
【0129】
図11(B)は、先行イベントAによる1セットの電文送信A1〜A6の完了を待って火災発報イベントBの発生に基づく1セットの電文送信B1〜B6を行った場合であり、例えばT1=T2=2sec、T6=4sec、A6とB1の間を2secとすると、26secの送信遅れ時間Tsd後にイベントBの電文送信が開始され、送信遅れが大きくなり、蓄積受信に対応できない。
【0130】
図11(C)は、先行するイベントAに基づく電文送信を確実に間欠受信するため、電文休止を挟んで2回の電文送信A1,A2を行い、その電文休止後に火災発報イベントBに基づく電文送信B1〜B6に切り替えた場合である。この場合にも、火災発報イベントBの電文送信までの送信遅れ時間TsdはTsd=8secとなり、図8(B)に示した本実施形態による送信遅れ時間Tsd=4secの2倍となり、間欠受信の受信遅れ時間TrdもTrd=5sec〜12sec程度となり、蓄積時間10secとする蓄積受信に対応できない場合がある。
【0131】
図12は図3の無線式感知器16−11によるセンサ処理を示したフローチャートであり、プロセッサ20によるプログラムの実行により実現される。図12において、センサ処理は、ステップS1で初期化及び自己診断を行った後、正常であればステップS2に進み、登録処理を実行する。
【0132】
ステップS2の登録処理は、無線式感知器16−11の操作部28に設けたディップスイッチなどにより登録モードをセットすると、ID登録用の試験電文が送信され、このとき、対応する電波中継器14−1の操作部36の登録スイッチにより登録アドレスを指定して登録待ち状態をセットしていると、受信した試験電文に含まれる送信元IDを取り出して、中継制御テーブル85にノードIDとして登録する自動登録が行われる。
【0133】
続いてステップS3でイベント発生の有無を判別している。ステップS3でイベント発生が判別されるとステップS4に進み、イベント内容に応じた電文内容(火災発生、火災復旧、障害など)を電文データとした図5に示す1セットの電文送信を開始する。
【0134】
この電文送信中にあっては、ステップS5で送信終了の有無を判別しており、通信中にあってはステップS6で火災発報や火災復旧などの至急イベントの発生の有無を判別している。通信中にステップS6で至急イベントの発生が判別されるとステップS7に進み、先行イベントに基づく送信を、送信時間T1に亘る1回の電文送信を終了した後に中止し、ステップS8で休止時間T2を経過したタイミングで至急イベントの発生に基づく1セットの電文送信を行う。
【0135】
続いてステップS9で定期通報タイマがタイムアップしたか否か判別しており、定期通報タイマのタイムアップを判別すると、ステップS10で定期通報電文を間欠送信した後、ステップS11で定期通報タイマをリセットスタートする。
【0136】
図13は図3の電波中継器14−1による電波中継処理を示したフローチャートであり、プロセッサ32によるプログラムの実行により実現される処理となる。
【0137】
図13において、電波中継処理は、ステップS21で電源投入に伴う初期化及び自己診断を行った後、異常がなければ、ステップS22で中継制御テーブル85の登録処理を実行する。
【0138】
ステップS22の登録処理が済むと監視状態に入り、ステップS23で設定したキャリアセンス周期Tcsに基づく間欠受信処理を行っている。続いてステップ24で電文を有効に受信したか否か判別する。この有効性の判別は、キャリアセンスにより受信を開始して得られた2つの電文データが一致した時に、有効と判断して電文データとして保持する。
【0139】
ステップ24で電文の有効受信を判別した場合はステップS25に進んで受信した電文を解析し、ステップS26で電文から得られた送信元IDと中継制御テーブル85に登録しているテーブル登録のノードIDとを比較して一致を判別した場合には、有効な受信電文としてステップS27に進み、受信した電文を中継送信する。
【0140】
続いてステップS28で定期通報タイマがタイムアップしたか否か判別しており、タイムアップを判別すると、ステップS29で定期通報電文を送信した後、ステップS30で定期通報タイマをリセットスタートし、ステップS23に戻る。
【0141】
図14は図4の無線受信用中継器12−1による無線受信用中継処理を示したフローチャートである。図14において、無線受信用中継器12−1の電源が投入されると、ステップS31で初期化及び自己診断が実行され、異常がなければ、ステップS32で中継制御テーブル87の登録処理を実行する。
【0142】
登録処理が終了すると監視状態となり、ステップS33で受信電文の送信元IDとテーブル登録のノードIDが一致する有効な電文受信の有無を判別している。ステップS33で有効な電文受信を判別するとステップS34で電文を解析し、ステップS35で火災発報を判別すると、ステップS36で感知器回線18に対する接点出力で発報電流を流すことで、P型受信機10に対し火災発報信号を送信し、火災警報を出力させる。
【0143】
ここで、P型受信機10が蓄積受信を行っている場合には、火災発報信号を送信した後に、火災復旧の電文を受信した時に火災発報信号の送信を停止することで、火災復旧を知らせて蓄積タイマをリセットする。
【0144】
またステップS37で定期通報電文であることを判別すると、ステップS38に進み、送信元IDで特定される該当ノードの定期通報タイマをリセットスタートする。
【0145】
続いてステップS39でタイムアップした定期通報タイマの有無をチェックし、もしタイムアップした定期通報タイマがあれば、ステップS40で定期通報異常と判断し、感知器回線18を擬似的な断線状態とすることで、P型受信機10に対し障害信号を送って障害警報を出力させる。
【0146】
なお、上記の実施形態は、電文送信2回でキャリアセンス2回の場合を例として説明したが、電文送信N回でキャリアセンスN回の場合にも同様に実施することができる。
【0147】
また、本発明は無線防災システムを例にとるものであったが、これに限定されず、適宜の無線システムにおける間欠受信に対応した送信処理に適用することができる。
【0148】
また、上記の実施形態は火災受信機としてP型受信機からの感知器回線に無線受信用中継器を接続しているが、データ伝送機能を持つR型受信機に無線受信用中継器を接続するようにしてもよい。
【0149】
また上記の実施形態におけるフローチャートは処理の概略例を説明したもので、処理の順番等はこれに限定されない。また各処理や処理と処理の間に必要に応じて遅延時間を設けたり、他の判定を挿入する等が出来る。
【0150】
また本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0151】
10:P型受信機
12−1〜12−3:無線受信用中継器
14−1〜14−3:電波中継器
15:電源線
16−11〜16−34:無線式感知器
18−1〜18−3:感知器回線
20,32,42,58:プロセッサ
22,34,44:無線通信部
24,35,46:アンテナ
26:センサ部
28,36,50,68:操作部
30:バッテリー
38,54:メモリ
40,56:電源部
48:有線通信部
52,64:表示部
60−1〜60−3:回線受信部
62:電源供給部
66:音響警報部
70:移報部
72:不揮発メモリ
74:センサ処理部
76:送信処理部
78:送信切替部
80:キャリアセンス周期設定部
82:間欠受信処理部
84:中継処理部
85,87:中継制御テーブル
86:受信処理部
88:火災監視部
90:電文フォーマット
92:位相修正信号
94:連番
96:送信元ID
98:電文内容
100:エラーチェックコード
110−1〜110−6:送信電文
112−1〜112−18:電文データ
114−1〜114−3:受信開始可能状態
116−1〜116−2:受信開始不可能状態
118−1〜118−4:キャリアセンスタイミング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサノード、電波中継ノード、無線防災ノード及び受信機で構成され、前記センサノードから送信された電文信号又は電波中継ノードを経由して前記センサノードから送信された電文信号を前記無線防災ノードで受信して処理し、処理結果を信号線により接続された前記受信機に送信する無線防災システムに於いて、
前記センサノードは、
イベント発生時に、所定の電文送信時間に亘り同一の電文信号を連続送信する電文送信と、所定時間に亘り電文送信を休止する電文休止とを2回以上繰り返す送信処理部と、
前記送信処理部による先行したイベント発生に基づく電文送信と電文休止の1回未満の繰返し中に、火災又は火災復旧を含む早く送りたい至急イベントが発生した場合、前記先行イベントに基づく電文送信と電文休止を1回繰り返して中止した後に、前記至急イベントに基づく電文送信と電文休止の繰返しに切り替える送信切替部と、
を備え、
前記電波中継ノードは、前記電文休止を挟んで連続する2回の電文送信の少なくともいずれかに受信タイミングが入るように間欠的に受信する間欠受信部を備えたことを特徴とする無線防災システム。
【請求項2】
請求項1記載の無線防災システムに於いて、前記送信処理部は、火災復旧のイベント発生時に、過去に火災発報があったことを示す火災復旧情報を含む電文信号を送信することを特徴とする無線防災システム。
【請求項3】
請求項1記載の無線防災システムに於いて、前記センサノードの送信処理部は、イベント発生時に、電文送信と電文休止とを3回繰り返した後に、ノード毎にランダムに設定した所定のランダム休止時間を配置し、前記ランダム休止時間後に、電文送信と電文休止とを3回繰り返すことを特徴とする無線防災システム。
【請求項4】
請求項1記載の無線防災システムに於いて、
前記間欠受信部は、
前記電文休止時間を挟んで連続する複数回となるN回の電文送信時間の少なくともいずれかに所定のキャリアセンス必須時間が重なるようにキャリアセンスを2回行う時のキャリアセンス周期を設定するキャリアセンス周期設定部と、
前記キャリアセンス周期毎に前記電文信号のキャリアの有無を検出し、キャリア検出状態が前記キャリアセンス必須時間以上継続したときに受信された電文を処理する間欠受信部と、
を備え、
前記キャリアセンス周期設定部は、
電文送信時間をT1、電文休止時間をT2、前記電文送信時間T1から受信動作に最低限必要なキャリアセンス必須時間T5を差し引いた受信可能時間をT3及び前記電文休止時間T2に前記キャリアセンス必須時間T5を加えた受信不可能時間をT4とした場合、
受信可能時間をT3及び受信不可能時間T4について
(T3×2)/(T3×2+T4)≧1/2
を満足することを条件に、前記キャリアセンス周期Tcsを
(T3×2+T4)/2≧Tcs≧T4
の範囲の値に設定することを特徴とする無線防災システム。
【請求項5】
イベント発生時に、所定時間の電文休止を挟んだ所定時間となる2回の電文送信の少なくともいずれかに受信タイミングが入るように間欠的に受信する電波中継ノードに電文信号を送信するセンサノードに於いて、
イベント発生時に、所定の電文送信時間に亘り同一の電文信号を連続送信する電文送信と、所定時間に亘り電文送信を休止する電文休止とを2回以上繰り返す送信処理部と、
前記送信処理部による先行したイベント発生に基づく電文送信と電文休止の1回未満の繰返し中に、火災又は火災復旧を含む早く送りたい至急イベントが発生した場合、前記先行イベントに基づく電文送信と電文休止を1回繰り返して中止した後に、前記至急イベントに基づく電文送信と電文休止の繰返しに切り替える送信切替部と、
を備えたことを特徴とするセンサノード。
【請求項6】
請求項5記載のセンサノードに於いて、前記送信処理部は、火災復旧のイベント発生時に、過去に火災発報があったことを示す火災復旧情報を含む電文信号を送信することを特徴とするセンサノード。
【請求項7】
請求項5記載のセンサノードに於いて、前記送信処理部は、イベント発生時に、電文送信と電文休止とを3回繰り返した後に、ノード毎にランダムに設定した所定のランダム休止時間を配置し、前記ランダム休止時間後に、電文送信と電文休止とを3回繰り返すことを特徴とするセンサノード。
【請求項1】
センサノード、電波中継ノード、無線防災ノード及び受信機で構成され、前記センサノードから送信された電文信号又は電波中継ノードを経由して前記センサノードから送信された電文信号を前記無線防災ノードで受信して処理し、処理結果を信号線により接続された前記受信機に送信する無線防災システムに於いて、
前記センサノードは、
イベント発生時に、所定の電文送信時間に亘り同一の電文信号を連続送信する電文送信と、所定時間に亘り電文送信を休止する電文休止とを2回以上繰り返す送信処理部と、
前記送信処理部による先行したイベント発生に基づく電文送信と電文休止の1回未満の繰返し中に、火災又は火災復旧を含む早く送りたい至急イベントが発生した場合、前記先行イベントに基づく電文送信と電文休止を1回繰り返して中止した後に、前記至急イベントに基づく電文送信と電文休止の繰返しに切り替える送信切替部と、
を備え、
前記電波中継ノードは、前記電文休止を挟んで連続する2回の電文送信の少なくともいずれかに受信タイミングが入るように間欠的に受信する間欠受信部を備えたことを特徴とする無線防災システム。
【請求項2】
請求項1記載の無線防災システムに於いて、前記送信処理部は、火災復旧のイベント発生時に、過去に火災発報があったことを示す火災復旧情報を含む電文信号を送信することを特徴とする無線防災システム。
【請求項3】
請求項1記載の無線防災システムに於いて、前記センサノードの送信処理部は、イベント発生時に、電文送信と電文休止とを3回繰り返した後に、ノード毎にランダムに設定した所定のランダム休止時間を配置し、前記ランダム休止時間後に、電文送信と電文休止とを3回繰り返すことを特徴とする無線防災システム。
【請求項4】
請求項1記載の無線防災システムに於いて、
前記間欠受信部は、
前記電文休止時間を挟んで連続する複数回となるN回の電文送信時間の少なくともいずれかに所定のキャリアセンス必須時間が重なるようにキャリアセンスを2回行う時のキャリアセンス周期を設定するキャリアセンス周期設定部と、
前記キャリアセンス周期毎に前記電文信号のキャリアの有無を検出し、キャリア検出状態が前記キャリアセンス必須時間以上継続したときに受信された電文を処理する間欠受信部と、
を備え、
前記キャリアセンス周期設定部は、
電文送信時間をT1、電文休止時間をT2、前記電文送信時間T1から受信動作に最低限必要なキャリアセンス必須時間T5を差し引いた受信可能時間をT3及び前記電文休止時間T2に前記キャリアセンス必須時間T5を加えた受信不可能時間をT4とした場合、
受信可能時間をT3及び受信不可能時間T4について
(T3×2)/(T3×2+T4)≧1/2
を満足することを条件に、前記キャリアセンス周期Tcsを
(T3×2+T4)/2≧Tcs≧T4
の範囲の値に設定することを特徴とする無線防災システム。
【請求項5】
イベント発生時に、所定時間の電文休止を挟んだ所定時間となる2回の電文送信の少なくともいずれかに受信タイミングが入るように間欠的に受信する電波中継ノードに電文信号を送信するセンサノードに於いて、
イベント発生時に、所定の電文送信時間に亘り同一の電文信号を連続送信する電文送信と、所定時間に亘り電文送信を休止する電文休止とを2回以上繰り返す送信処理部と、
前記送信処理部による先行したイベント発生に基づく電文送信と電文休止の1回未満の繰返し中に、火災又は火災復旧を含む早く送りたい至急イベントが発生した場合、前記先行イベントに基づく電文送信と電文休止を1回繰り返して中止した後に、前記至急イベントに基づく電文送信と電文休止の繰返しに切り替える送信切替部と、
を備えたことを特徴とするセンサノード。
【請求項6】
請求項5記載のセンサノードに於いて、前記送信処理部は、火災復旧のイベント発生時に、過去に火災発報があったことを示す火災復旧情報を含む電文信号を送信することを特徴とするセンサノード。
【請求項7】
請求項5記載のセンサノードに於いて、前記送信処理部は、イベント発生時に、電文送信と電文休止とを3回繰り返した後に、ノード毎にランダムに設定した所定のランダム休止時間を配置し、前記ランダム休止時間後に、電文送信と電文休止とを3回繰り返すことを特徴とするセンサノード。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−118799(P2011−118799A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−277363(P2009−277363)
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月7日(2009.12.7)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】
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