説明

無鉛ハンダ合金、ハンダボール及びハンダバンプを有する電子部材

【課題】ハンダ付け後のハンダ表面、BGAでのハンダバンプ形成後のバンプ表面、及び、BGAのバーンイン試験後のハンダバンプ表面、これらの表面の黄変を防止することができる無鉛ハンダ合金、ハンダボール及びハンダバンプを有する電子部材を提供する。
【解決手段】Li、Na、K、Ca、Be、Mg、Sc、Y、ランタノイド、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、Zn、Al、Ga、In、Si、Mnから選出される添加元素を、1種又は2種以上、合計で1質量ppm以上0.1質量%以下含有し、残部がSnを40質量%以上含有する無鉛ハンダ合金、ハンダボール及びハンダバンプを有する電子部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロニクス部品の接続に用いられる無鉛ハンダ合金、ハンダボール及びハンダバンプを有する電子部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器に内蔵される電子回路基板において、基板と電子部品とを接合するためにハンダ付けが用いられている。ハンダ付けに使用するハンダ合金としては、SnとPbを含有する成分系が従来広く用いられてきた。しかし、近年の環境問題やEU(欧州連合)のRoHS指令(Restriction of the Use of Certain Hazardous Substances in Electrical and Electronic Equipment)等により、Pbを含有しない、いわゆる無鉛ハンダ合金が広く開発され、実用化されている。無鉛ハンダ合金としては、Snを主成分としたSn-Ag系、Sn-Cu系、Sn-Ag-Cu系、Sn-Sb系、Sn-Bi系、Sn-Zn系、及び、これらにさらに他の添加元素を適宜添加したものである。これら各種合金系には、それぞれ長所短所があり、用途に応じて使い分けられている。
【0003】
近年、電子部品の高密度実装化に伴い、従来の、半田ごてを用いた手ハンダ付け、ハンダ噴流に部品と基板の接合部分をくぐらせるフローハンダ付け、といったハンダ付け手法以外に、ハンダボールやハンダペーストを用いたリフローはんだ付けが多く用いられるようになってきている。リフローハンダ付けでは、ハンダボールを用いたBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、TAB(Tape Automated Bonding)、MCM(Multi Chip Module)等の高機能化された表面実装部品(以下、BGAと総称)が広く使用されるようになってきている。
【0004】
BGAは、半導体集積回路(IC)を内蔵し、片面に、通常は格子状に電極が配置されており、各電極にはハンダバンプと呼ばれる、球体の一部を切り取った形状のハンダ合金の塊が接合されている。この様なハンダバンプを形成するには、幾つか方法があるが、ハンダボールを用いるのが一般的な方法である。ここで、ハンダボールを用いたハンダバンプ形成方法について簡単に説明する。まず、BGAの電極に粘着性のあるフラックスあるいはソルダーペーストを塗布し、該塗布電極部にハンダボールを搭載装置で搭載する。その後、ハンダボールの搭載されたBGAをリフロー炉内で加熱し、ハンダボールを溶融し、電極とハンダボールで接合を実現させ、ハンダバンプとするものである。
【0005】
ハンダ付けによる接合に求められる品質・特性としては、接合信頼性が高いことは言うまでもないが、その外観も重要であり、健全な合金の色調を示している必要がある。BGAを最終商品として出荷する場合、出荷前の部品検査としてハンダバンプの外観検査が画像認識装置を用いて行われる。そのため、色調の変化があると、誤ってハンダバンプが形成されていないというエラーとなり、検査工程上好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許3925554号公報
【特許文献2】特許4144415号公報
【特許文献3】特開2001-200323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のSnを主成分とした無鉛ハンダ合金を用いてハンダ付けを行った場合、ハンダ表面が黄色に変色(黄変)する場合がある。BGAの場合、このような黄変はハンダバンプの有無の画像認識装置による検査での障害となる。さらに、BGAの場合、ハンダバンプ形成後に、バーンイン試験と呼ばれる、高温動作試験が行われる。バーンイン試験とは、BGA部品の初期不良を取り除くための試験であり、例えば、125℃の雰囲気中で12時間といった長時間の間、動作不良の有無を確認し、初期不良品であるかどうかを判定するものである。このような試験の後、部品として動作不良がなくとも、ハンダバンプが黄変していると、最終製品として出荷ができず、不良品となり歩留を低下させる。また、自動工程内の検査であれば、画像認識エラーが発生した場合、工程を停止して作業者が自動工程に介入して、ハンダバンプの有無を確認する必要性が生じるため、工程の効率を著しく低下させることになる。
【0008】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、ハンダ付け後も、バーンイン試験後も、黄変しない無鉛ハンダ合金、ハンダボール及びハンダバンプを有する電子部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ハンダ付け後のハンダ表面の変色、BGAでのハンダバンプ形成後のバンプ表面の変色、及び、バーンイン試験後のBGAハンダバンプ表面の変色について鋭意研究を重ねた。その結果、ハンダ付後のハンダ表面が黄変するのは、無鉛ハンダ合金が溶融・凝固するときに表面が酸化し、その表面酸化膜が特定の構造を持ち、ある厚さに達したときに黄色く見えるようになることを見出した。また、バーンイン試験後のBGAのハンダバンプ表面が黄変するのも、バンプ表面が酸化し、その表面酸化膜が特定の構造を持ち、ある厚さに達したときに黄色く見えるようになることを見出した。
【0010】
そこで、ハンダに種々の元素を添加し、黄変の状況を調査することによって、黄変を防止する元素と添加量を見出し、本発明に至った。即ち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
【0011】
請求項1に係る無鉛ハンダ合金は、Li、Na、K、Ca、Be、Mg、Sc、Y、ランタノイド、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、Zn、Al、Ga、In、Si、Mnの中から選出される添加元素を、1種又は2種以上、合計で1質量ppm以上0.1質量%以下添加し、残部がSnを40質量%以上含有することを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る無鉛ハンダ合金は、前記無鉛ハンダ合金が、Sn-Ag系、Sn-Cu系、Sn-Bi系、Sn-Sb系、又は、Sn-Ag-Cu系であることを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る無鉛ハンダ合金は、前記添加元素の内、Be、Mg、Caについては、それぞれの添加量が、1質量ppm以上50質量ppm以下であることを特徴とする。
【0014】
請求項4に係る無鉛ハンダ合金は、前記添加元素の内、Zn、Al、Ga、In、Si、Mnについては、それぞれの添加量が、1質量ppm以上10質量ppm以下であることを特徴とする。
【0015】
請求項5に係る無鉛ハンダ合金は、前記無鉛ハンダ合金が、Sn-Ag-Cu系であって、Agの含有量が0.1質量%以上5質量%以下で、Cuの含有量が0.01質量%以上1.5質量%以下であることを特徴とする。
【0016】
請求項6に係る無鉛ハンダ合金は、前記無鉛ハンダ合金が、Niを含有し、Niの含有量が0.005質量%以上0.5質量%以下であることを特徴とする。
【0017】
請求項7に係る無鉛ハンダ合金は、前記無鉛ハンダ合金が、Ag、Cu、及びNiを含有し、Agの含有量が0.8質量%以上1.5質量%以下、Cuの含有量が0.05質量%以上1.2質量%以下、Niの含有量が0.01質量%以上0.1質量%以下であることを特徴とする。
【0018】
請求項8に係る無鉛ハンダ合金は、前記無鉛ハンダ合金が、Sbを含有し、Sbの含有量が0.005質量%以上1.0質量%以下であることを特徴とする。
【0019】
請求項9に係るハンダボールは、請求項1〜8のいずれか1項に記載の無鉛ハンダ合金から形成されるハンダボールであって、球径1mm以下であることを特徴とする。
【0020】
請求項10に係る電子部材は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の無鉛ハンダ合金を用いて形成されたハンダバンプを有することを特徴とする。
【0021】
請求項11に係る電子部材は、請求項9に記載のハンダボールを用いて形成したハンダバンプを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ハンダ付け後のハンダ表面、BGAでのハンダバンプ形成後のバンプ表面、及び、BGAのバーンイン試験後のハンダバンプ表面、これらの表面の黄変を防止することができる。
【0023】
黄変が防止できると、ハンダバンプの有無の画像認識装置による検査での障害が除去される。また、バーンイン試験後の黄変も防止でき、黄変して最終製品として出荷ができず、不良品となり歩留が低下することもない。また、自動工程内の検査で、画像認識エラーが発生することもなく、工程の効率低下も防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の無鉛ハンダ合金について詳細に説明する。
【0025】
無鉛ハンダ合金が黄変するのは、合金成分の内、Snより酸化し易い合金成分を含まない場合、かつ、Snを大量に含む場合、例えば、Snが40質量%以上の場合である。そこで、Snが40質量%以上の無鉛ハンダ合金の黄変防止を目的とした。
【0026】
本発明の無鉛ハンダ合金は、Li、Na、K、Ca、Be、Mg、Sc、Y、ランタノイド、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、Zn、Al、Ga、In、Si、Mnから選出される添加元素を、1種又は2種以上、合計で1質量ppm以上0.1質量%以下添加したものであるが、1質量ppm未満では、表面酸化膜の色調を変える効果が低く、黄変防止が出来ない。一方、0.1質量%超では、濡れ性が低下したり、良好なハンダ付けが行えない、あるいは、形成されたバンプ表面の性状が粗くなったりする等の不具合が生じる。黄変防止の詳細なメカニズムは検討中であるが、表面のSn酸化膜に添加元素の酸化物が複合することによって、表面酸化膜が結晶質から微結晶、あるいは、微結晶と非晶質に変化する。これによって、表面酸化膜の光学特性が変化し、表面が同じ厚さに酸化されても、色調が変化して黄変に至らないものと考えている。したがって、添加元素は酸化物となって介在物として存在するのではなく、金属元素として無鉛ハンダ合金中に存在することが望ましい。
【0027】
Snより酸化し易い元素は数多くあるが、その内、上記の、Li、Na、K、Ca、Be、Mg、Sc、Y、ランタノイド、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、Zn、Al、Ga、In、Si、Mnから、1種又は2種以上を添加した場合に、十分な黄変防止効果が得られる。
【0028】
Sn-Zn系等、Snより酸化し易い元素を十分含む無鉛ハンダ合金では黄変は発生しにくく、したがって、Snより酸化し難い元素との合金系であるSn-Ag系、Sn-Cu系、Sn-Bi系、Sn-Sb系、又は、Sn-Ag-Cu系に前記添加元素を添加すると、より有効に黄変防止効果が得られる。
【0029】
前記添加元素の内、Be、Mg、Caについては、それぞれの添加量が、1質量ppm以上50質量ppm以下であることが好ましい。1質量ppm未満では、黄変防止効果が不十分であり、50質量ppmを越えると、バンプ形成後の表面酸化膜が強固になり、その後の工程でのハンダ付けに障害となる可能性が高くなる。これらの元素を添加した場合は、特に、表面酸化膜を微結晶と非晶質の混合物に変化させる効果が大きく、また、バーンイン試験による酸化膜厚の増加も抑制することができる。
【0030】
また、前記添加元素の内、Zn、Al、Ga、In、Si、Mnについては、それぞれの添加量が、1質量ppm以上10質量ppm以下であることが好ましい。1質量ppm未満では、黄変防止効果が不十分であり、10質量ppmを越えると、バンプ形成後の表面酸化膜が強固になり、その後の工程でのハンダ付けに障害となるか、あるいは、濡れ性が劣化し、バンプ形成が健全に実施できない可能性が高くなる。また、8質量ppmを越えると、バンプ形成後の表面凹凸が大きくなり、画像認識しにくくなることがあるため、8質量ppm以下がより好ましい。
【0031】
無鉛ハンダ合金中の添加元素の分析方法は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)分析法やグロー放電質量分析(GD-MS)法によって行うことができ、添加元素の添加量を決めることができる。
【0032】
前記各種無鉛ハンダ合金の内で、無鉛ハンダ合金として標準的に用いられているSn-Ag-Cu系に対しては、Agの含有量が0.1質量%以上5質量%以下、Cuの含有量が0.01質量%以上1.5質量%以下において、耐落下衝撃特性の向上が顕著になると共に、無鉛ハンダ合金の熱疲労特性や無鉛ハンダ合金のぬれ性等に関するその他の接合信頼性もより優れるが、上記添加元素の種類及び添加量は、これらの特性を劣化させない。なお、Agの含有量が0.1質量%未満であると、無鉛ハンダ合金の熱疲労特性の低下により好ましくない場合があり、Agの含有量が5質量%超では、無鉛ハンダ合金内に粗大なAg3Snが形成され、接合信頼性を低下させる場合がある。さらに好ましくは、Agの含有量が0.8質量%以上1.5質量%以下である。Cuの含有量は、0.01質量%未満であると無鉛ハンダ合金のぬれ性が悪くなる場合がある。また、1.5質量%超であると無鉛ハンダ合金が硬くなり、接合信頼性が低下する場合がある。さらに好ましくは、0.05質量%以上1.0質量%以下であることが望ましい。
【0033】
Sn-Ag-Cu系無鉛ハンダ合金において、Niは、Sn中に存在することで、無鉛ハンダ合金と電極との界面に形成される金属間化合物の成長を抑制する効果がある。その結果、耐落下衝撃特性を始めとする接合信頼性が著しく向上する。特に、Niの含有量が、0.005質量%以上0.5質量%以下で接合信頼性向上効果が大きい。0.005質量%未満であると前記効果を発現し難い場合がある。また、0.5質量%超であると、無鉛ハンダ合金が硬くなり接合信頼性を低下させる場合がある。より好ましくは、0.01質量%以上0.1質量%以下である。上記添加元素の種類及び添加量は、これらの特性を劣化させない。
【0034】
Sn-Ag-Cu系無鉛ハンダ合金において、Sbは、Sn中に存在することで、Sn中に分散し、無鉛ハンダ合金内の耐き裂進展特性を向上する効果があり、その結果、熱疲労特性が向上する。特に、Sbの含有量が、0.005質量%以上1.0質量%以下で前記熱疲労特性向上効果が大きい。0.005質量%未満であると前記効果を発現し難い場合がある。また、1.0質量%超であると、無鉛ハンダ合金が硬くなり接合信頼性を低下させる場合がある。より好ましくは、0.02質量%以上0.5質量%以下である。上記添加元素の種類及び添加量は、これらの特性を劣化させない。
【0035】
一般的に上述した元素の組成は、例えば、ICP分析法やGD-MS分析法等により測定して決めることができる。
【0036】
本発明の無鉛ハンダ合金は、業界で一般的に用いられているフロー用ハンダ、リフロー用ハンダ、糸ハンダ等いずれのハンダ合金形態においても、その効果を発現することが可能であり、さらに、ハンダ粉を含むクリームハンダや、ハンダボールにおいても、その効果を発現することができる。特に、狭ピッチのパッケージ接続に用いられる球形1mm以下のハンダボールにおいて、当該無鉛ハンダ合金を用いることは効果的である。したがって、これらの無鉛ハンダ合金を用いて形成されたハンダバンプを有する電子部材は、バーンイン試験における黄変を防止することができる。
【0037】
無鉛ハンダ合金、あるいは、ハンダボールを作製する雰囲気は、真空や不活性ガス等の非酸化性雰囲気が望ましい。
【0038】
また、前記無鉛ハンダ合金からのハンダボールの作製方法としては、ワイヤーカット法や気中造粒法等が挙げられる。ワイヤーカット法は、溶解した無鉛ハンダ合金インゴットを線引きし、ワイヤー状にした後、一定長さに切断し、油中で溶融させることで表面張力を利用して球状化することでハンダボールを作製できる。また、気中造粒法は、溶融した無鉛ハンダ合金を微細なオリフィスから振動と共に噴出し、真空中やガス雰囲気中で振動による波で、当該溶融した無鉛ハンダ合金を切断し、表面張力で球状化することでハンダボールを作製できる。
【0039】
本発明による無鉛ハンダ合金を用いてハンダバンプを作製する方法は、一般的にはスクリーン印刷による方法とハンダボールによる方法とがある。スクリーン印刷法では、前記無鉛ハンダ合金をアトマイズ法等で微細なハンダ粉とした後、フラックスと混合してペーストとした後、電極上にメタルマスクを用いてスキージングし、ペーストを一定量電極上に載せた後に、リフローすることでハンダバンプを形成することができる。また、ハンダボールによる方法では、フラックスを塗布した電極上に前述したハンダボールを並べて、リフローすることでハンダバンプを形成することができる。
【0040】
以下、実施例により、より具体的に本発明効果を説明する。
【実施例】
【0041】
(実施例1)
主成分に本発明に係わる添加元素を、表1〜5に示す各成分となるように、各純金属を秤量し、黒鉛坩堝を使用して高周波溶解法により無鉛ハンダ合金を作製した。作製した無鉛ハンダ合金の組成分析は、ICP発光分析、ICP質量分析、あるいはGD-MS分析法で行った。前記作製した各無鉛ハンダ合金を用い、気中造粒法により直径300μmのハンダボールを作製した。
【0042】
ハンダボールを実装するプリント基板として、40×30×1(mm)サイズ、電極は0.5mmピッチ、電極表面処理は、Cu電極まま、あるいは、Cu電極にNiめっき及びAuめっきを施したCu/Ni/Au積層電極である基板を用いた。基板上にボールを搭載してリフローし、バンプを形成した。フラックスは、水溶性フラックスを用いた。また、リフロー温度は、溶融(液相線)温度+30℃の条件とした。
【0043】
バンプを形成した基板を、大気雰囲気、150℃に保持された炉に15時間入れ、炉から取り出した後に、バンプ表面が黄変しているかどうかを、目視にて観察した。黄変が殆ど無いものを◎、黄変はあるが画像認識に不都合は生じないものを○、黄変が顕著なものを×とした。濡れ性は、上記プリント基板のリフロー後に、不完全濡れ電極数が0.01%以下を◎、0.01%超0.1%以下を○、0.1%超1%以下を△、1%超を×とした。
【0044】
耐落下衝撃特性評価用にハンダボールを実装するサンプルとして、部品側は、0.5mmピッチで、パッド数324ピンの10mm角CSPを用いた。このCSPの電極表面はCuとした。また、プリント基板として、132×77×1(mm)サイズ、電極表面処理がCu-OSP(Organic Solderbility Preservatives)である基板を用いた。最初に、CSP上にハンダボールを搭載してリフローし、ハンダバンプを形成した後、CSPをプリント基板上に実装した。水溶性フラックスを用いた。また、リフロー温度は、溶融温度+30℃の条件とした。この実装品はデイジーチェーンとなっており、回路の抵抗値を測定することにより、破断の判定が可能である。耐落下衝撃特性の評価は、JEDEC規格のJESD 22-B111に準拠した方法で行い、落下毎に部品の抵抗値をモニターしながら、抵抗値が初期値の2倍になった時点の落下回数を破断と定義した。主成分のみの特性に対して、同等以上であった場合を◎、0%超〜10%以下の特性劣化にとどまった場合を○、10%超の特性劣化が認められた場合を×、とした。
【0045】
熱疲労特性は次の通り評価を実施した。落下衝撃特性試験用と同じCSPを用い、プリント基板として、50×50×0.7(mm)サイズ、電極表面処理がCu-OSPである基板を用いた。実装品に対して、1時間を1サイクルとして、-40℃保持20分,125℃保持20分の温度サイクルを施した。デイジーチェーンを組んだ回路の抵抗値が、評価開始前の抵抗値の2倍になった時点を破断と判定し、破断するまでの高温-低温の繰り返し数(熱サイクル数)を計測することで評価した。主成分のみの特性に対して、同等以上であった場合を◎、0%超〜10%以下の特性劣化にとどまった場合を○、10%超の特性劣化が認められた場合を×、とした。
【0046】
濡れ性、耐落下衝撃特性、熱疲労特性に関して、主成分のみの場合との比較を実施した結果を表1〜5に示した。
【0047】
表1〜5に示した通り、本発明によれば、濡れ性、耐落下衝撃特性、熱疲労特性を劣化させること無く、黄変防止が可能である。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
【表4】

【0052】
【表5】

(実施例2)
表6に示す成分でハンダペーストを作製し、実施例1と同様のプリント基板、CSPを用い、スクリーン印刷法にてハンダバンプを形成した後、実施例1と同様の評価を実施した。その結果を表6に併記した。
【0053】
表6に示した通り、本発明によれば、濡れ性、耐落下衝撃特性、熱疲労特性を劣化させること無く、黄変防止が可能である。
【0054】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Li、Na、K、Ca、Be、Mg、Sc、Y、ランタノイド、Ti、Zr、Hf、Nb、Ta、Mo、Zn、Al、Ga、In、Si、Mnの中から選出される添加元素を、1種又は2種以上、合計で1質量ppm以上0.1質量%以下添加し、残部がSnを40質量%以上含有することを特徴とする無鉛ハンダ合金。
【請求項2】
前記無鉛ハンダ合金が、Sn-Ag系、Sn-Cu系、Sn-Bi系、Sn-Sb系、又は、Sn-Ag-Cu系であることを特徴とする請求項1に記載の無鉛ハンダ合金。
【請求項3】
前記添加元素の内、Be、Mg、Caについては、それぞれの添加量が、1質量ppm以上50質量ppm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の無鉛ハンダ合金。
【請求項4】
前記添加元素の内、Zn、Al、Ga、In、Si、Mnについては、それぞれの添加量が、1質量ppm以上10質量ppm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の無鉛ハンダ合金。
【請求項5】
前記無鉛ハンダ合金が、Sn-Ag-Cu系であって、Agの含有量が0.1質量%以上5質量%以下で、Cuの含有量が0.01質量%以上1.5質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の無鉛ハンダ合金。
【請求項6】
前記無鉛ハンダ合金が、Niを含有し、Niの含有量が0.005質量%以上0.5質量%以下であることを特徴とする請求項5に記載の無鉛ハンダ合金。
【請求項7】
前記無鉛ハンダ合金が、Ag、Cu、及びNiを含有し、Agの含有量が0.8質量%以上1.5質量%以下、Cuの含有量が0.05質量%以上1.2質量%以下、Niの含有量が0.01質量%以上0.1質量%以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の無鉛ハンダ合金。
【請求項8】
前記無鉛ハンダ合金が、Sbを含有し、Sbの含有量が0.005質量%以上1.0質量%以下であることを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の無鉛ハンダ合金。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の無鉛ハンダ合金から形成されるハンダボールであって、球径1mm以下であることを特徴とするハンダボール。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の無鉛ハンダ合金を用いて形成されたハンダバンプを有することを特徴とする電子部材。
【請求項11】
請求項9に記載のハンダボールを用いて形成したハンダバンプを有することを特徴とする電子部材。

【公開番号】特開2010−247167(P2010−247167A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97647(P2009−97647)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(306032316)新日鉄マテリアルズ株式会社 (196)
【出願人】(595179228)株式会社日鉄マイクロメタル (38)
【Fターム(参考)】