説明

焼き上げ外観を有する製品の製造

【課題】焼き上げ外観を有する製品を迅速調理後に得るための特殊コ−ティングを含んでいる食品組成物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】コ−ティングの組成は、少なくとも一つの着色剤、たとえば、カラメル化された糖、粉末化された血液、冷凍された血液、無機酸化物と、蛋白質源、たとえば、血漿またはグルテンとを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は焼き上げ外観(roasted appearance、ローストされた外観)を有する製品を迅速調理後に得るための特殊コーティングを含んでいる食品組成物に関する。本発明はまた、この製品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
調理時間を減少させることを可能にするが、その大きな欠点が食品の表面に殆ど又は全く色を付けないことである電子レンジ(microwave oven)やスチームオーブンのような新規調理法の出現で、ここ数年の間に、きつね色の、黄金色の又は燻製の組成物を得るための方法および製品が膨大に開発されている。
【0003】
肉や魚などをきつね色にするための第一の方法は米国特許第5,251,523号または第6,090,421号に記載されているもののような着色した液状溶液を気化させる又は吹き付けることからなる。しかしながら、これら溶液は比較的一様な燻製外観(smoked appearance)と、多分、燻製食品の特徴的な味とを与えるのに寄与するだけである。
【0004】
食品をきつね色にするための別の方法は米国特許第5,292,541号および第5,397,582号に記載された糖や澱粉の熱分解(pyrolysis)である。これは、食品に適用されて加熱後に燻製の外観と味を与える溶液を伴っている。
【0005】
通常の調理を模するのに使用される別の方法は米国特許第5,756,140号に記載されているものである。それは、表面に黄金色の照りをつけた実際には単に従来の卵黄の刷毛塗りの代替からなる食品を得ることを可能にさせる。
【0006】
マイクロ波調理またはスチーム調理のための、米国特許第5,196,219号、第5,223,289号、および第4,735,812号に記載されている、褐変剤(browning agent)も存在している。これら褐変剤は少なくともアミノ酸の源と還元糖の源とからなり、これらは調理中にメイラード反応(Maillard reaction)を行う。これら発明はどれも、マイクロ波調理またはスチーム調理の最も顕著な欠点の一つ、すなわち、たとえば肉やパンやペストリーのような食品の表面における褐色着色(brown colouring)の欠如、を矯正することを試みている。これら褐変剤の欠点はそれらが組成物の表面を一様に着色することによって通常のオーブンでの調理を不完全に摸しているにすぎないということである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明によれば、単に一様かつ均質な燻製の、黄金色の又は着色した外観を生じるのではなく、むしろ、通常のオーブンでの調理後に得られるような焼き上げ外観を、すなわち、組成物の表面における不規則なそしてランダムな褐色化を、より迅速な調理方法たとえばスチームオーブンや電子レンジを使用しながら、生じるので、これら欠点を克服することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の概要)
本発明は調理後に焼き上げ外観を有する製品を得るための特殊なコーティングを含んでいる食品組成物、特に動物性食品(animal food)組成物に関する。コーティングの組成は少なくとも一つの色素と、蛋白質源とを含んでいる。食品組成物はこの特殊コーティングによって覆われ、加熱されなければならない。調理温度はコーティングの中に含有された蛋白質の凝固(coagulation)を可能にするのに十分でなければならない。こうして凝固された蛋白質は色素を固定する。この反応は焼き上げ外観を有する組成物を得ることを可能にする;これら組成物の表面はばらついて褐色化され、焼き面の割合はコーティングの中に含有された蛋白質の及び/又は着色剤の量の単純な変更によって又は単純に調理の時間および温度を変更することによって調節することが可能である。
【0009】
本発明はまた、植物性または動物性蛋白質に基づいたエマルジョンを調製し、同時押出プロセスによってこの特殊コーティングで覆い、調理後にはこのエマルジョンに焼き上げ外観を与えることができる方法を提供する。
【0010】
最後に、本発明は特に動物性食品(animal food)に関しており、その混合物の全体が殺菌されているソース(sauce)またはベース(base)と混合された焼いた断片(roasted pieces)の形態であってもよい。用語「ベース」は微粉砕肉(microground meats)と技術上の添加物との混合物を意味することを意図しており、それらには、なかでも、天然物の断片(natural piece)が添加されていてもよい。
【0011】
本発明のプロセスは、少なくとも一つの着色剤または色素と蛋白質源との混合物によって食品組成物をコーティングしているという意味で、現在あるものとは完全に異なっており、ホットエアシステム(hot air system)やスチームシステムやホットエア・スチームシステム(hot air and steam system)やマイクロ波システムのような調理システムを使用して調理した後、組成物に焼き上げ外観を与える。こうして得られた焼き上げ外観は均質ではなく、この不規則性が通常のオーブンで調理された製品の印象を与える。
【0012】
本明細書においては、用語「肉」は「肉および/または肉副産物」を意味することを意図しており、そして用語「魚」は「魚および/または魚副産物」を意味することを意図している。
【0013】
(発明の詳細)
本発明に従うコーティングの組成は、少なくとも一つの着色剤、たとえば、カラメル化された糖、血液(blood)(冷凍された又は粉末化された)または無機酸化物、と、蛋白質源、たとえば、血漿(plasma)またはグルテン、とを含んでいる。それはまた、たとえば次のようなものから採用された成分を含有していてもよい:増粘剤、たとえば、澱粉、グアー、キサンタン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、またはこれらの族に属するその他化合物;添加剤、たとえば、塩、糖およびアスコルビン酸;着香剤(flavouring agent)(たとえば、ロースト風味を組成物に与えるもの);フラワー(flour);水。
【0014】
本発明の好ましい態様によれば、着色剤は特に、カラメル化された糖(コーティングの10〜20重量%、好ましくは、14〜16%)、冷凍された又は粉末化された血液(5〜10%、好ましくは7〜8%)、無機酸化物(5〜10%、好ましくは6〜8%)、またはこれら化合物の混合物、であってもよい。
【0015】
また、増粘剤または増粘剤混合物を、たとえば、それが澱粉の場合には2〜8%の割合で、それがグアー、キサンタンまたはアルギン酸ナトリウムである場合には0〜2%の割合で、カルボキシメチルセルロースの場合には0〜1%の割合で、添加することも可能である。
【0016】
それから、結合剤または結合剤混合物は本発明の組成物またはコーティングの中に、たとえば、選ばれた源がグルテンである場合には0〜5%の量で、結合剤の源が血漿である場合には0〜10%の量で、含有されることができる。
【0017】
添加物、特に、0〜5%の塩および/または糖、そして/または0〜1%のアスコルビン酸、が添加されてもよい。コーティングは一般的にはフラワー(25〜35%)と水(30〜50%)を含有している。
【0018】
好ましくは、コーティングの蛋白質源は、血漿、グルテンまたは血液、またはこれら化合物の混合物、から選ばれる。しかしながら、当業者に知られているその他のいずれかの蛋白質源が使用されてもよい。蛋白質のパーセント(コーティングの総重量に対する重量による)は好ましくは5〜20%である。
【0019】
コーティングの製造は乾燥成分を混練用トラフ(kneading trough)の中に移すことから始まり、それから、この成分は他の成分と混合される。この混合物全体をポンプを備えたホッパーに導き、ポンプによって乳化装置へ運ぶ。この段階では、コーティングはペースト状である。それは貯蔵でき、そして次いで、食品組成物をコートするのに必要な装置へ運ばれる。ペースト状コーティングは次いで、ポンプを備えた第二ホッパーの中に貯蔵される。このポンプはコーティングを、2つのバイプロダクト(by−products)(コーティングと、コートされるべき食品組成物)を結合させるための特殊装置の中へ移動させるために使用される。
【0020】
コートされるべき食品組成物はエマルジョンであってもよい。この場合、エマルジョンとコーティングは2つの異なるホッパーの中に貯蔵されてもよく、ホッパーはそれぞれポンプを備えており、その流量は変量器(variator)の周期数(frequencies)を調節することによって変更できる。これらポンプはコーティングとエマルジョンを特殊装置の中へ移すのに使用されるであろう。
【0021】
この特殊装置は2つの異なる入口を備えており、そして異なる直径の2つの異なる管の同心組合せから成る。コーティングは管を出るときにエマルジョンを被覆するために大きい直径の管の中に注入され、エマルジョンそれ自体は中心の管の中へ注入される。このプロセスは乾式食品工業に使用されてもよい同時押出のプロセスと比べることができる。相違は乾式食品工業ではフィリング(filling)として使用される製品はガイド(guide)されないという事実にある。押出される製品の中に浸された管を通して流れ(vein)を注入すれば、それはコーティングとは混ざらない。
【0022】
本発明においては、装置の出口において2つのバイプロダクトの間で混合を生じさせないように層流を可能な限り完全に保証するために、2つのバイプロダクトは或る程度の距離ガイドされる。2つのバイプロダクトの粘性はかかるシステムの効率に影響する。
【0023】
こうして製造された製品は押出機に移される。次いで、それは、たとえば、ホットエア、スチーム、ホットエア・スチームまたはマイクロ波システムを使用して、調理できる。
温度および調理時間は使用成分により変動する。
【0024】
本発明を動物性食品に適用してもよく、また本発明はソースまたはベースと混合された、焼き上げ外観を有する断片形態を有してもよい。
【0025】
これら断片は55〜85%の肉および肉副産物および/または魚および魚副産物と、10〜25%の穀類と、6〜15%の水との混合物から製造されることができ、前記断片は好ましくは、58〜68%の肉および肉副産物および/または魚および魚副産物と、10〜25%の穀類と、0〜5%(好ましくは2〜5%)の植物性蛋白質と、5〜14%の水とから製造される。
【0026】
肉エマルジョンは欧州特許第668,024号に記載された通常の方法に従って製造される。肉および肉副産物および/または魚および魚副産物はサイズが12mmのオーダーのものである断片を製造するように圧潰および粉砕される。次いで、ミキサーの中に入れられ、レシピの乾燥成分が添加される。この混合物全体は均質ペーストが得られるまで混合され、それから、混合物を乳化装置に移すためのポンプを底部に備えたホッパーの中に移される。この段階で、任意に、着色剤がエマルジョンに添加されてもよい。乳化は15℃の最大温度においてダブルスクリーン乳化機(たとえば、カール・シュネル(Karl Schnell)タイプ)の中で行われる。次いで、肉エマルジョンはホッパーの中に貯蔵される。ホッパーには、2つのバイプロダクト(コーティングとエマルジョン)の特殊結合のための特殊装置にエマルジョンを移すためのポンプが備えられている。
【0027】
こうして製造された製品は、たとえば、押出機に移される。エマルジョンおよびそのコーティングはブロックの形態であり、それらの厚さおよび幅は使用される装置の幾何学的構造に従って変動可能である。
【0028】
エマルジョン−コーティング集成体は次いで、連続調理システム(たとえば、ホットエア、スチーム、ホットエア・スチームまたはマイクロ波システム)の中で、使用成分に従って変動する温度および調理時間で、調理されることができる。従って、ブロックは凝固によって固化し(set up)、調理装置を出るとカットできる。また、コーティングの蛋白質も凝固し、このコーティングの中に含有された色素または着色剤を捕捉し、こうして、製品の表面に焼き上げ外観を与える。ブロックは調理システムを出ると連続的にカットされることができる。断片を10〜40℃の温度に冷却することによって硬化できる;断片が相互に粘着するのを避けるために、冷却は好ましくは吹きつけ又は浸漬によって行われる。次いで、これらピースを小立方体にカットし、それから、ソースまたはベースと混合して容器の中へ移る。組成物を通常の仕方で、120〜135℃の温度で、20〜100分間殺菌することができる。
【0029】
以下の実施例は本発明を非限定的に例証する。
【実施例1】
【0030】
エマルジョンは63%の肉および肉副産物(特に、家禽肉副産物(主にカーカス、carcasses)からの及び/又は豚肉もしくは牛肉副産物(主に肝臓および肺臓)からの)、15%の穀類、1.5%の植物性または動物性の組織質蛋白質(texturing proteins)と、15%の水から調製される。このエマルジョンはビタミン類、塩類、着香剤および着色剤をも含有している。この混合物は乳化され、そしてポンプを備えたホッパーの中に貯蔵され、ポンプは後で、このエマルジョンを特殊装置へ移すのに使用される。
【0031】
コーティングは15%のカラメル化された糖と、6%の澱粉と、1%のグアーと、0.5%のカルボキシメチルセルロースと、30%のフラワーとの混合物からなり、そこに均質溶液が得られるまで40%の水と7%の血漿が添加されており、その溶液は次いで乳化され、それから、ポンプを備えたホッパーのなかに貯蔵され、ポンプは後で、この乳化物を特殊装置に移すのに使用される。
【0032】
それから、コーティングとエマルジョンは2つの同心管からなる特殊装置の中に注入される(エマルジョンは中心の管の中に注入され、そしてコーティングは大きい直径の管の中に注入される)。エマルジョンとコーティングの間の混合の恐れを回避するために、これら生成物は60cmの距離にわたってガイドされる。それから、組成物は押出機に移され、次いで、スチームオーブンの中で、110℃の温度で、2分30秒間調理される。そこを出ると、生成物はカットされ(断片の形状およびサイズは組成物がイヌ用か又はネコ用かによって変動する)、ソースまたはベースと混合され、そして通常通りに殺菌される。
【実施例2】
【0033】
エマルジョンは63%の肉および肉副産物(特に、家禽肉副産物(主にカーカス)からの及び/又は豚肉もしくは牛肉副産物(主に肝臓および肺臓)からの)、15%の穀類、1.5%の植物性または動物性の組織質蛋白質と、15%の水から調製される。このエマルジョンはビタミン類、塩類、着香剤および着色剤をも含有している。この混合物は乳化され、そしてポンプを備えたホッパーの中に貯蔵され、ポンプは後で、このエマルジョンを特殊装置へ移すのに使用される。
【0034】
コーティングは9%の粉末血液と、1%のグアーと、1%のアルギン酸ナトリウムと、0.5%のカルボキシメチルセルロースと、3%の塩と、1%の糖と、0.2%のアスコルビン酸と、26%のフラワーとの混合物からなり、そこには、49%の水と2%のグルテンと5%の血漿が添加されている。
【0035】
先に記載したのと同じ製造プロセスが使用される。
【実施例3】
【0036】
エマルジョンは63%の肉および肉副産物(特に、家禽肉副産物(主にカーカス)からの及び/又は豚肉もしくは牛肉副産物(主に肝臓および肺臓)からの)、15%の穀類、1.5%の植物性または動物性の組織質蛋白質と、15%の水から調製される。このエマルジョンはビタミン類、塩類、着香剤および着色剤をも含有している。この混合物は乳化され、そしてポンプを備えたホッパーの中に貯蔵され、ポンプは後で、このエマルジョンを特殊装置へ移すのに使用される。
【0037】
コーティングは5%の酸化鉄と、5%の澱粉と、1%のグアーと、1%のキサンタンと、1%のカルボキシメチルセルロースと、2.5%の糖と、30%のフラワーとの混合物からなり、そこには、44%の水と5%の血漿と5%のグルテンが添加されている。
【0038】
先に記載したのと同じ製造プロセスが使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理後に焼き上げ外観を得るためのコーティングを含んでおり、前記コーティングが少なくとも下記成分
(1)色素または着色剤の源
(2)蛋白質の源
を含んでいる、食品組成物。
【請求項2】
色素または着色剤がコーティングの5〜20重量%である、請求項1の組成物。
【請求項3】
蛋白質がコーティングの5〜20重量%である、請求項1または2の組成物。
【請求項4】
さらに、一つまたはそれ以上の増粘剤(単数または複数)、一つまたはそれ以上の結合剤(単数または複数)、および一つまたはそれ以上の添加剤(単数または複数)、フラワー(flour)および水、を含んでいる、請求項1〜3のいずれか一項の組成物。
【請求項5】
コーティングの含水量がコートされる製品の含水量に類似している、請求項1〜4のいずれか一項の組成物。
【請求項6】
コーティングの粘度がコートされる製品の粘度に類似している、請求項1〜5のいずれか一項の組成物。
【請求項7】
コートされる製品が肉および/または魚と穀類と水の混合物である、請求項1〜6のいずれか一項の組成物。
【請求項8】
調理後に焼き上げ外観を有する食品組成物を製造する方法であって、食品製品をコーティングでコートすることからなり、前記コーティング組成物が色素または着色剤の少なくとも一つの源と、蛋白質の源とを含んでいる、前記方法。
【請求項9】
コーティングを含んでいる、調理後に焼き上げ外観を有する食品組成物を製造する方法であって、組成物の表面に焼き上げ外観を得るのに要求される最低調理温度がコーティングの蛋白質が凝固する温度である、前記方法。
【請求項10】
調理システムがホットエアシステム、スチームシステム、ホットエア・スチームシステム、またはマイクロ波システムである、請求項8の方法。

【公開番号】特開2010−115200(P2010−115200A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−266400(P2009−266400)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【分割の表示】特願2003−559262(P2003−559262)の分割
【原出願日】平成15年1月14日(2003.1.14)
【出願人】(590002013)ソシエテ・デ・プロデュイ・ネスレ・エス・アー (31)
【Fターム(参考)】