説明

焼き付き現象補正方法、自発光装置、焼き付き現象補正装置及びプログラム

【課題】焼き付き現象の補正を優先するために、画像を大きく変化させる可能性があり、結果的に著しい画質の低下を招くおそれがあった。
【解決手段】階調データを、対応画素の属するブロックエリア別に領域化して、階調データ値の分布のバラつき程度を示す情報を算出する。次に、そのバラつき程度に応じ、ブロックエリア別の補助補正量を決定する。この補助補正量に基づいて、累積劣化量差から逐次決定される標準補正量を修正し、最終補正量を決定する。そして、最終補正量に基づいて、焼き付き補正前の表示信号を補正する。これにより、自発光装置の焼き付き現象を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の一つの形態は、自発光装置に発生する焼き付き現象の補正方法に関する。また、発明の一つの形態は、焼き付き現象補正装置及びこれを搭載した自発光装置に関する。また、発明の一つの形態は、自発光装置に搭載されたコンピュータに焼き付き補正機能を実行させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネルディスプレイは、コンピュータディスプレイ、携帯端末、テレビなどの製品で広く普及している。現在、主には液晶ディスプレイパネルが多く採用されているが、依然、視野角の狭さや応答速度の遅さが指摘され続けている。
一方、自発光素子で形成された有機ELディスプレイは、前述した視野角や応答性の課題を克服できるのに加え、バックライト不要の薄い形態、高輝度、高コントラストを達成できる。このため、液晶ディスプレイに代わる次世代表示装置として期待されている。
【0003】
ところで、有機EL素子その他の自発光素子は、その発光量や発光時間に応じて劣化する特性があることは一般的にも知られている。
一方で、ディスプレイに表示される画像の内容は一様ではない。このため、自発光素子の劣化が部分的に進行し易い。例えば時刻表示領域(固定表示領域)の自発光素子は、他の表示領域(動画表示領域)の自発光素子に比べて劣化の進行が速い。
劣化が進行した自発光素子の輝度は、他の表示領域の輝度に比して相対的に低下する。一般に、この現象は“焼き付き”と呼ばれる。以下、部分的な自発光素子の劣化を“焼き付き”と表記する。
【0004】
現在、“焼き付き”現象の改善策として様々な手法が検討されている。以下、その幾つかを列記する。
【特許文献1】特開2003−228329号公報 この文献には、表示パネルを構成する各画素に対する入力データを一定周期で画素毎に積算し、それらの最大値から各画素の積算値を減算して各画素についての補正量を設定する方法が開示されている。また、非使用状態において補正量の大きさに比例する時間だけ各画素を一定輝度で発光することで各画素の表示特性を揃える方法が開示されている。
【0005】
【特許文献2】特開2003−295827号公報 この文献には、静止画の表示時にのみ表示データと表示時間を記憶し、その表示データと最大輝度との差ΔYと、静止画が表示された時間Tとの積算量ΔY・Tを補正データに設定する方法が開示されている。また、この文献には、蓋が閉じられた状態や非使用状態の場合にのみ補正用の表示を実行することで、焼き付き現象を補正する方法が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、既存の補正方法は、焼き付き現象の補正を優先する方法であるため、画像を大きく変化させる可能性があった。すなわち、結果的に著しく画質を低下させる可能性があった。
もっとも、画質への影響を考慮して補正量を微小に留めると、劣化量差の補正に膨大な時間を要したり、補正が間に合わずに補正自体が不可能になる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者らは、複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置に生じた焼き付き現象の補正処理方法として、以下の技術手法を提案する。
すなわち、(1)階調データを、対応画素の属するブロックエリア別に領域化する処理と、(2)各ブロックエリアに対応付けられた階調データ値の分布のバラつき程度を示す情報を算出する処理と、(3)階調データ値の分布のバラつき程度に応じ、ブロックエリア別の補助補正量を決定する処理と、(4)焼き付き補正後の表示信号に基づいて、全画素の比較対象画素に対する劣化量差を求める処理と、(5)劣化量差を画素毎に累積加算し、各画素について発生した累積劣化量差を算出する処理と、(6)累積劣化量差に基づいて、焼き付き補正に使用する標準補正量を逐次決定する処理と、(7)標準補正量を対応する補助補正量で修正し、最終補正量を決定する処理と、(8)最終補正量に基づいて、焼き付き補正前の表示信号を補正する処理とを有する技術手法を提案する。
【0008】
一般に、階調データ値の分布のバラつき程度が大きいブロックエリアは、輝度変化が多少大きくても画質低下が視覚的に認識され難い特性がある。一方、階調データ値の分布のバラつき程度が小さいブロックエリアは、微小な輝度変化でも画質低下が視覚的に認識され易い特性がある。
なお、これら技術手法は、自発光装置そのものに適用できるだけでなく、出力装置に出力する画像信号を処理する各種の電子機器に対しても適用できる。また、これらの技術手法は、ハードウェアとして実現できる他、ソフトウェアとしても実現できる。勿論、処理の実行は、一部処理をハードウェアとして実行し、残る処理をソフトウェアとして実行することもできる。
因みに、自発光装置は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネル、PDP(プラズマディスプレイパネル)、CRT(cathode ray tube)、FED(電界放出ディスプレイ)パネル、LEDパネル、プロジェクターを含む。
【発明の効果】
【0009】
劣化量に応じて一次的に生成された補正量を、階調データ値の分布のバラつき具合に応じて修正することにより、なるべく画質低下を認識させない状態で焼き付き補正を実行できる。
また、この機能により、劣化量差を縮めるために画質低下を伴う補正が必要な場合でも、そのような補正の回数又は割合を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、発明に係る技術手法を採用する焼き付き現象補正技術の実施形態例を説明する。
なお、本明細書で特に図示又は記載されない部分には、当該技術分野の周知又は公知技術を適用する。
また以下に説明する実施形態は、発明の一つの実施形態であって、これらに限定されるものではない。
【0011】
(A)焼き付き現象補正装置の形態例
(A−1)形態例1
(a)装置構成
図1に、焼き付き現象補正装置の一つの形態例を示す。以下、焼き付き現象補正装置を「補正装置」という。
この形態例の場合、補正装置1は、同色で発光する画素毎に配置する。なお、発光色は、一般に赤、青、緑の三色をいう。もっとも、三色以外の補色を用いる場合には、各色について配置する。
この補正装置1は、劣化量差算出部3、累積劣化量差蓄積部5、標準補正量決定部7、表示データ領域化部9、階調バラつき算出部11、補助補正量決定部13、最終補正量決定部15、輝度劣化補正部17を主要な構成要素とする。
【0012】
劣化量差算出部3は、補正処理後の階調データに基づいて、各画素と比較対象画素との劣化量差を算出する処理デバイスである。ここで、劣化量差を算出する方法には、既知の方法を含む任意の手法を適用できる。発明者らが提案する方法は、標準補正量の修正部分に特徴があるためである。
なお、算出例として、以下の方法を例示する。例えば、各画素の階調データ値と比較対象画素の階調データ値の差分を算出する手法を適用できる。また例えば、階調データと劣化の進行度合いとの間に比例関係が成立しない場合には、実測結果を反映した換算係数を用いて劣化量差を算出する手法を適用できる。発明者らは、この換算係数を、「劣化率」という概念で規定する。
【0013】
発明者らは、「劣化率」を、ある階調データで自発光素子を継続的に発光させた場合における発光輝度の低下率として規定する。
図2に、階調データと劣化率との対応関係を示す変換テーブルの一例を示す。この場合、劣化量差は、各画素の劣化率と比較対象画素の劣化率との差として算出する手法もある。また、劣化量差は、劣化率Rに発光期間Tを乗算した値の差として算出することもできる。
ところで、劣化量差の算出に使用する比較対象画素にも幾つかの方法が考えられる。通常、標準補正量の決定に使用する補正方法に応じて最適な画素を指定する。
例えば、最も輝度劣化の進んだ画素、最も輝度劣化の遅れた画素、画面中央の画素、固定表示に対応する画素その他を指定する。これらは、実在する画素である。また例えば、平均輝度値を与える画素その他を指定する。これらは、仮想的に定める画素である。
【0014】
累積劣化量差蓄積部5は、1フレーム毎に更新される劣化量差を継続的に積算し、積算結果を保存するメモリである。ここで、比較対象画素に対して劣化が進んでいる画素の累積劣化量差は正値で表される。また、比較対象画素に対して劣化が遅れている画素の累積劣化量差は負値で表される。
標準補正量決定部7は、累積劣化量差蓄積部5から読み出した劣化量差に基づいて、各画素に対応する標準補正量を決定する処理デバイスである。基本的に、標準補正量は、各画素に対応する劣化量差を解消する方向(すなわち、ゼロにする方向)に決定される。
例えば、累積劣化量差が正値の場合、標準補正量は負値に決定される。また例えば、累積劣化量差が負値の場合、標準補正量は正値に決定される。
【0015】
ここで、標準補正量の具体的な決定方法は任意である。発明に係る技術手法は、決定された補正量の修正に特徴があり、標準補正量の決定方法は影響しないためである。
ただし、この形態例では、生成される標準補正量の最大値に以下の制約条件を設けている。すなわち、全て同一の階調データ値で構成されるパターン画面において、ある領域についてだけ階調データ値を変化させた場合にその変化が簡易に視認されない程度に、標準補正量の絶対値の最大値を制限する。
これは、どのような画像に対して焼き付き補正が実行されても画質の低下が簡単には視認されない条件を意味する。
【0016】
表示データ領域化部9は、補正処理前の階調データを、対応画素の属するブロックエリア別に領域化する処理デバイスである。図3に、ブロックエリア別の領域化例を示す。図3に示すブロックエリアは、水平方向と垂直方向のそれぞれに3画素(以下、3×3と表記する。)の合計9画素で構成される場合を示す。なお、この9画素は、全て同色で発光する画素についての9画素である。
図3(A)は領域化前の画素配列に対応し、図3(B)は領域化後の画素配列に対応する。図3(B)では、ブロックエリアを太線で囲んで示す。
領域化処理により分類された階調データは、ブロックエリア単位で階調バラつき算出部11に出力される。
【0017】
階調バラつき算出部11は、ブロックエリア毎に階調データ値の分布のバラつき程度を示す情報を算出する処理デバイスである。例えば、分散値や標準偏差値として算出する。図4(A)及び(B)に、算出例を示す。図4(A)は、各ブロックエリアに対応する階調データ値の分布例である。図4(B)は、各ブロックエリアについて算出された標準偏差値の例である。例えば、図中左上隅のブロックエリアの標準偏差値は“45”、その右隣のブロックエリアの標準偏差値は“102”である。
補助補正量決定部13は、ブロックエリア毎に算出された階調データ値の分布のバラつき程度を示す情報を入力し、各ブロックエリアに対する補助補正量を決定する処理デバイスである。この形態例の場合、補助補正量は、標準補正量に対する補正倍率で与えられる。
【0018】
補助補正量決定部13は、標準偏差値を補正倍率に変換するテーブルを有する。図5に、テーブル例を示す。図5のテーブルは、標準偏差値を複数の区分に分類し、各区分にそれぞれ単一の補正倍率を割り当てている。
この例の場合、小さい標準偏差値が属する区分ほど補正倍率は小さい値が設定される。標準偏差値が小さいことは、階調データ値の変化が少ないことを意味する。すなわち、階調変化の少ない単調な画像パターンが表示されることを意味する。このようなブロックエリアでは、補正量のバラつきが知覚され易い特性がある。そこで、標準偏差値が“0”〜“25”の区分の補正倍率は“1”に設定されている。
従って、補正倍率が“1”であれば、標準補正量がそのまま最終補正量として使用されることになる。
【0019】
一方、標準偏差値が大きいことは、階調データ値の変化が多いことを意味する。すなわち、階調変化が大きい画像パターンが表示されることを意味する。このようなブロックエリアでは、補正量のバラつきが知覚され難い特性がある。そこで、標準偏差値が“100”以上の区分の補正倍率は“5”に設定されている。
従って、補正倍率が“5”であれば、標準補正量を5倍した値が最終補正量として使用されることになる。
なお、図4(C)に、この図5に示すテーブルを用いた補助補正量の出力例を示す。先に説明した標準偏差値“45”のブロックエリアには、補助補正量“2”が対応付けられていることが分かる。また、標準補正量“102”のブロックエリアには、補助補正量“5”が対応付けられていることが分かる。
【0020】
最終補正量決定部15は、標準補正量を対応する補助補正量で修正し、最終補正量を決定する処理デバイスである。この例の場合、最終補正量決定部15は、標準補正量に補助補正量を乗算し、乗算結果を最終補正量として出力する。
輝度劣化補正部17は、最終補正量に基づいて、補正前の階調データを補正する処理デバイスである。この例の場合、輝度劣化補正部17は、各画素に対応する階調データに、当該画素が属するブロックエリアについて算出された最終補正量(正値又は負値)を加算する処理を実行する。
なお、補正後の階調データは、不図示の自発光パネルモジュールへ出力される。
【0021】
(b)補正処理動作
続いて、補正装置による一連の補正動作を説明する。
図6に、3×3画素を1つのブロックエリアとする場合について、最終補正量が決定されるまでの動作例を示す。
図6(A)は、ある時点における各画素の比較対象画素に対する累積劣化量差の例である。比較対照画素に対して、劣化が進んでいる画素の累積劣化量差には正値が、劣化が遅れている画素の累積劣化量差にはマイナス値が付されている。
図6(B)は、各累積劣化量差から設定される標準補正値の例である。なお、この例の場合、標準補正値を与える階調ステップ数の最大値を4ステップに制限されている。
【0022】
この階調ステップ数は、前述の通り、全ての階調データ値が同一の場合において、ある領域だけ階調データ値を変化させたときに、簡易に視認されない許容範囲の最大値である。
この値は、画質の低下に対する許容レベルを反映する。従って、実際の補正動作を主観的に評価することや、個別のパネル画質に対する考え方の違いによって変わる可能性がある。
図6(B)の場合、累積劣化量差が“2”以下の画素については、累積劣化量差の符号を変えた値がそのまま標準補正量として使用される。一方、累積劣化量差が“2”以上の画素については、累積劣化量差の符号を入れ替えた値“2”が標準補正量として使用される。
【0023】
図6(C)は、各画素に対応するブロックエリア単位の補助補正量の例である。
図6(D)は、補助補正量を標準補正量に乗算した結果である。ブロックエリア内の階調データの分布のバラつき程度が大きい領域ほど、補正量が大きい最終補正値が与えられている。
例えば、標準補正量が“−2”で補助補正量が“2”の画素に対応する最終補正量は“−4”と算出されている。同様に、標準補正量が“2”で補助補正量が“5”の画素に対応する最終補正量は“10”と算出されている。
図7に、輝度劣化補正部17における補正動作を示す。輝度劣化補正部17では、補正前階調データ(図7(A))に、最終補正量(図7(B))が加算される様子を表している。
【0024】
図7(C)に、補正後の階調データ値を示す。図7に示すように、ブロックエリア内の階調データ値のバラつきが比較的大きいブロックエリアでは補正量も大きく、ブロックエリア内の階調データ値のバラつきが小さいブロックエリアでは補正量も小さいことが分かる。
このことは、階調データ値のバラつきが大きいブロックエリアでは劣化量差の補正が積極的に実行されることを意味する。一方、階調データ値のバラつきが小さいブロックエリアでは劣化量差の補正が階調変化が視認されない範囲で実行されることを意味する。
この結果、原画像の画質低下を視認されない範囲で、画素間の劣化量差を縮めるように補正した階調データ値(表示信号)を生成できる。
【0025】
(c)形態例の効果
この補正装置1を用いれば、標準補正量の変化幅を小さく抑える一方で、階調データ値の分布のバラつきが大きく焼き付き補正による階調変化が視認され難いブロックエリア内の画素に対しては、補正量を積極的に増加させることができる。
この結果、焼き付き現象の補正効果と補正後の画質との両立を実現できる。
また、この形態例の場合、標準補正量は、焼き付き補正処理後の表示信号を用いて算出されるため、補助補正量による修正後の表示信号の情報を全て含んだ状態で正確な劣化量差の算出が可能である。なお、焼き付き補正前の表示信号に基づいて劣化量差を推定する方式の場合には、補助補正量による修正を劣化量差に反映させる演算処理が必要である。従って、この補正装置1は、回路規模や演算負荷が小さく済む点でも実効性の高い装置構成である。
【0026】
(A−2)形態例2
図8に、補正装置の他の形態例を示す。なお、図8には、図1との対応部分に同一符号を付して示す。補正装置21の基本的な構成及び処理動作は、形態例1の場合と同様である。
違いは、この補正装置21の場合、補助補正量の算出に使用する表示信号と、標準補正量の算出に使用する表示信号とが異なる点である。
図8は、一例として、輝度劣化補正部17で補正対象となる表示信号が、自発光素子に印加される駆動電流で与えられる場合を表している。
もっとも、補正対象となる表示信号は、自発光素子の駆動条件に関する信号であれば駆動電流に限らない。例えば、自発光素子のアノード・カソード間に印加される駆動電圧値でも良い。
この補正装置21を用いる場合にも、形態例1と同様の効果を実現できる。
【0027】
(A−3)形態例3
この形態例では、画像の動きに対する人間の視覚特性を、形態例1に示す技術と組み合わせる場合について説明する。すなわち、動画像領域の階調変化は、静止画像領域の階調変化に対して視認され難いことを利用して、最終補正量の更なる最適化を図る手法を説明する。
(a)装置構成
図9に、補正装置の他の形態例を示す。図9には、図1との対応部分に同一符号を付して示している。図9に示すように、補正装置31の基本構成は形態例1と同じである。
このうち補正装置31に特有の構成部分は、動画静止画判定部33と、輝度劣化補正部35の2つである。
【0028】
動画静止画判定部33は、画素毎に動画像領域と静止画像領域を判定する処理デバイスである。図10に、動画静止画判定部33の構成例を示す。動画静止画判定部33は、現フレームメモリ33A、前フレームメモリ33B、比較判定部33Cで構成する。
現フレームメモリ33Aは、最新フレームの階調データの保存用であり、前フレームメモリ33Bは、現フレームに対して1フレーム前の階調データの保存用である。
比較判定部33Cは、現フレームに保存されている階調データと前フレームに保存されている階調データを同一画素について比較し、その比較結果に基づいて動画像領域か静止画像領域かを判定する処理デバイスである。
【0029】
この例の場合、比較判定部33Cは、フレーム間で階調データが一致する画素を静止画像領域と判定し、フレーム間で階調データが一致しない画素を動画像領域と判定する。
なお、比較判定部33Cは、静止画像領域と判定した画素の判定出力を「0」に設定し、動画像領域と判定した画素の判定出力を「1」に設定する。
図11に、比較判定部33Cの動作例を示す。図11(A)は、現フレームの階調データを示し、図11(B)は、前フレームの階調データを示す。また図11(C)は、現フレームと前フレームの比較結果を反映した動き判定データの出力例を示す。
【0030】
例えば、図11(A)及び(B)の場合、フレーム領域の左上隅に位置する画素の階調データは、現フレームも前フレームも共に「55」である。従って、この画素は静止画像領域と判定され、図11(C)に示すように、動き判定データは「0」となる。
また例えば、図11(A)及び(B)の場合、フレーム領域の左端から1列目、上から2段目の画素の階調データは、現フレームが「111」であるのに対し、前フレームは「22」である。従って、この画素は動画像領域と判定され、図11(C)に示すように、動き判定データは「1」となる。他の画素についても同様である。
この判定結果が、比較判定部33Cから輝度劣化補正部35に与えられる。
【0031】
輝度劣化補正部35は、画素毎に与えられる最終補正量を各画素の動き判定結果に応じて修正し、修正後の補正量に基づいて階調データを補正する補正処理を実行する処理デバイスである。すなわち、輝度劣化補正部35は、適応的に最終補正量を修正する機能と、修正後の補正量に基づいて輝度劣化を補正する機能との2つを有している。
図12に、輝度劣化補正部35の構成例を示す。輝度劣化補正部35は、動き判定データメモリ35A、補正データメモリ35B、補正量修正部35C、補正実行部35Dで構成する。
このうち、動き判定データメモリ35Aは、動画静止画判定部33から与えられる動き判定データ(0又は1)を保存するメモリである。補正データメモリ33Bは、最終補正量決定部15から与えられる最終補正量を保存するメモリである。
【0032】
補正量修正部33Cは、動き判定データに応じて適応的に最終補正量を修正する処理デバイスである。最終補正量の修正方法には幾つかの方法があるが、代表的な3つの例を図13に示す。
例えば、図13(A)に示す修正方法を採用した場合、動画像領域と判定された画素に対応する最終補正量は、補正方向に対して増加するように修正され、静止画像領域と判定された画素に対応する最終補正量は修正されずに出力される。すなわち、動画像領域についてのみ、最終補正量の絶対値が更に大きくなるように修正される。
このことは、画質の低下が知覚され難い動画像領域では、補正効果が積極的に加速されることを意味する。
【0033】
また例えば、図13(B)に示す修正方法を採用した場合、動画像領域と判定された画素に対応する最終補正量は補正方向に対して増加するように修正され、静止画像領域と判定された画素に対応する最終補正量は補正方向に対して減少するように修正される。すなわち、動画像領域の最終補正量は絶対値が大きくなるように修正され、静止画像領域の最終補正量は絶対値が小さくなるように修正される。
このことは、画質の低下が知覚され難い動画像領域では、補正効果が積極的に加速されることを意味する。一方で、画質の低下が知覚され易い静止画像領域では、補正効果が積極的に減速されることを意味する。すなわち、原画像に近い画像が表示されることを意味する。
勿論、静止画像領域に対する補正効果は低減するが、同一画素が動画像領域になる機会に積極的に焼き付き補正効果が促進される。従って、時間の経過と共に、焼き付き現象は知覚され難くなる。
【0034】
この他、図13(C)に示す修正方法を採用することもできる。この場合、動画像領域と判定された画素に対応する最終補正量は補正方向に対して増加するように修正されるが、静止画像領域と判定された画素に対応する最終補正量は0(ゼロ)に修正される。すなわち、動画像領域の最終補正量は絶対値が大きくなるように修正されるものの、静止画像領域では補正処理が実行されないように修正が実行される。
このことは、画質の低下が知覚され難い動画像領域では、補正効果が加速する一方で、画質の低下が知覚され易い静止画像領域では、原画像がそのまま表示されることを意味する。当然、静止画像領域の焼き付きはそのまま残ることになるが、同一画素が動画像領域になる機会に積極的に焼き付き補正効果が促進される。従って、時間の経過と共に、焼き付き現象は知覚され難くなる。
【0035】
ところで、最終補正量を増減する際に使用する修正量は、全画素について固定値としても良いし、最終補正量に応じて変動させても良い。例えば、修正量を固定する方法には、一律に10階調を修正量とする方法がある。また例えば、修正量を最終補正量に応じて変動させる方法には、最終補正量の数%を与える方法がある。もっとも、修正量を1倍以上の範囲で与えることも使用状況によっては許可する。修正量をどのように設定するかは、人間の視覚特性に大きく依存するため、実験結果に応じて最適な量を選択すれば良い。
また、この形態例の場合は、発光色の違いによらず同じ修正方法を適用するものとするが、修正方法や修正量は、発光色別に与えることも可能である。
【0036】
補正実行部35Dは、補正量修正部33Cから与えられる修正済みの最終補正量に基づいて、階調データの補正処理を実行する処理デバイスである。すなわち、補正実行部33Dは、その補正方向に応じた符号を有する最終補正量を各画素の階調データに加算し、階調データを補正する。すなわち、輝度劣化を促進する場合には、修正済みの最終補正量を階調データに加算し、輝度劣化を遅らせる場合には、修正済みの最終補正量を階調データから減算する。
補正後の階調データは、補正実行部33Dから後段回路(不図示)に出力され、最終的には各画素に対応する発光素子の発光動作を制御する。
【0037】
結果的に、階調データ値のバラつきが大きいブロックエリア内の画素であって、同時に動画像領域でもある画素に対応する補正量は、最終補正量よりも大きい値に修正される。
また例えば、階調データ値のバラつきが大きいブロックエリア内の画素であって、同時に静止画像領域でもある画素に対応する補正量は、最終補正量のままかそれ以下に修正される。
また例えば、階調データ値のバラつきが小さいブロックエリア内の画素であって、同時に動画像領域でもある画素に対応する補正量は、最終補正量のままかそれ以下に修正される。
また例えば、階調データ値のバラつきが小さいブロックエリア内の画素であって、同時に静止画像領域でもある画素に対応する補正量は、最終補正量のままかそれ以下に修正される。
【0038】
(b)形態例の効果
この補正装置31を用いれば、階調データ値の分布のバラつき程度だけでなく、各画素が動画像領域か静止画像領域かに応じても焼き付き補正量を調整できるため、焼き付き補正の促進と視認される画質の維持とを同時に実現できる。
すなわち、画質の低下が簡単には視認されない画素に対しては、形態例1よりも劣化量差の縮小幅を増加でき、画質の低下が視認され易い画素に対しては、形態例1よりも劣化量差の縮小幅を低減できる。
【0039】
(A−4)形態例4
この形態例では、画像の動きに対する人間の視覚特性を、形態例1に示す技術と組み合わせる別の例を説明する。すなわち、明領域の階調変化は、暗領域の階調変化に対して視認され難いことを利用して、最終補正量の更なる最適化を図る場合について説明する。
(a)装置構成
図14に、補正装置の他の形態例を示す。図14には、図1との対応部分に同一符号を付して示している。図14に示すように、補正装置41の基本構成は形態例1と同じである。
このうち補正装置41に特有の構成部分は、明るさ判定部43と、輝度劣化補正部45の2つである。
【0040】
明るさ判定部43は、画素毎に入力される階調データを監視し、画素毎に明るさを判定する処理デバイスである。
明るさ判定部43は、階調データと比較する判定閾値を有し、階調データに応じた明るさ判定データを出力する。ここでの明るさ判定データは、明領域か暗領域かを与える場合と、明るさに応じた修正係数を与える場合とがある。
図15は、階調データを明領域と暗領域のいずれかに割り当てる判定閾値と明るさ判定データの例である。なお、図15は、中間階調を判定閾値に用いているが、より高い値を判定閾値に用いることもできる。これらは、人間の視覚特性を考慮して設定する。もっとも、画面によっては、中間階調よりも小さい値を判定閾値に設定しても良い。
【0041】
図16は、階調データを修正係数A0〜A255に割り当てるための判定閾値と明るさ判定データの例である。なお、図16は、1階調刻みで判定閾値を設定しているが、複数階調刻みで判定閾値を設定しても良い。ここで、修正係数には、Ai+1 ≧Ai の関係(i=0〜244)が成立するものとする。また、修正係数は、ある判定閾値を境に正値と負値が混在しても良いものとする。すなわち、明領域の修正係数は正値、暗領域の修正係数は負値とする。
輝度劣化補正部45は、画素毎に与えられる最終補正量を動き判定結果と明るさ判定結果に応じて修正し、修正後の最終補正量に基づいて階調データを補正する補正処理を実行する処理デバイスである。この輝度劣化補正部45も、適応的に最終補正量を修正する機能と、修正後の最終補正量に基づいて輝度劣化を補正する機能との2つを有している。
【0042】
図17に、輝度劣化補正部45の構成例を示す。輝度劣化補正部45は、明るさ判定データメモリ45A、補正データメモリ45B、補正量修正部45C、補正実行部45Dで構成する。
このうち、明るさ判定データメモリ45Aは、明るさ判定部43から与えられる明るさ判定データを保存するメモリである。補正データメモリ45Bは、最終補正量決定部15から与えられる最終補正量を保存するメモリである。
【0043】
補正量修正部45Cは、明るさ判定データに応じて適応的に最終補正量を修正する処理デバイスである。最終補正量の修正方法には幾つかの方法がある。
例えば、明るさ判定データとして、明領域と暗領域の2つの情報が与えられる場合の修正方法の例を図18に示す。
このうち、図18(A)に示す修正方法を採用した場合、明領域と判定された画素に対応する最終補正量は、補正方向に対して増加するように修正され、暗領域と判定された画素に対応する最終補正量は修正されずに出力される。すなわち、明領域についてのみ、最終補正量の絶対値が更に大きくなるように修正される。
このことは、画質の低下が知覚され難い明領域では、補正効果が積極的に加速されることを意味する。
【0044】
また例えば、図18(B)に示す修正方法を採用した場合、明領域と判定された画素に対応する最終補正量は補正方向に対して増加するように修正され、暗領域と判定された画素に対応する最終補正量は補正方向に対して減少するように修正される。すなわち、明領域の最終補正量は絶対値が大きくなるように修正され、暗領域の最終補正量は絶対値が小さくなるように修正される。
このことは、画質の低下が知覚され難い明領域では、補正効果が積極的に加速されることを意味する。一方で、画質の低下が知覚され易い暗領域では、補正効果が積極的に減速されることを意味する。すなわち、原画像に近い画像が表示されることを意味する。
勿論、暗領域に対する補正効果は低減するが、同一画素が明領域になる機会に積極的に焼き付き補正効果が促進される。従って、時間の経過と共に、焼き付き現象は知覚され難くなる。
【0045】
この他、図18(C)に示す修正方法を採用することもできる。この場合、明領域と判定された画素に対応する最終補正量は補正方向に対して増加するように修正されるが、暗領域と判定された画素に対応する最終補正量は0(ゼロ)に修正される。すなわち、明領域の最終補正量は絶対値が大きくなるように修正されるものの、暗領域では補正処理が実行されないように修正が実行される。
このことは、画質の低下が知覚され難い明領域では、補正効果が加速する一方で、画質の低下が知覚され易い暗領域では、原画像がそのまま表示されることを意味する。当然、暗領域の焼き付きはそのまま残ることになるが、同一画素が明領域になる機会に積極的に焼き付き補正効果が促進される。従って、時間の経過と共に、焼き付き現象は知覚され難くなる。
【0046】
なお、明るさ判定データを修正係数A0〜A255で与える場合には、図19に示す修正方法を適用することもできる。
このうち、図19(A)に示す修正方法を採用した場合、明領域と判定された画素に対応する修正量は、最終補正量*At(tは0〜255のいずれかの数値)として算出される。一方、暗領域と判定された画素に対応する修正量はゼロに制御される。すなわち、暗領域に対応する画素については、最終補正量が無修正のまま使用される。
一方、図19(B)に示す修正方法を採用した場合、明領域と判定された画素に対応する修正量は、最終補正量*At(Atは正値)として算出される。一方、暗領域と判定された画素に対応する修正量は、最終補正量*At(Atは負値)として算出される。すなわち、明領域では、最終補正量が更に大きな値に修正され、暗領域では、最終補正量よりも小さい値に修正される。
【0047】
補正実行部45Dは、補正量修正部45Cにおいて修正した最終補正量に基づいて、階調データの補正処理を実行する処理デバイスである。すなわち、補正実行部45Dは、その補正方向に応じた符号を有する補正量を各画素の階調データに加算し、階調データを補正する。補正後の階調データは、最終的には各画素に対応する発光素子の発光を制御するのに使用される。
結果的に、階調データ値のバラつきが大きいブロックエリア内の画素であって、同時に明領域でもある画素に対応する補正量は、最終補正量よりも大きい値に修正される。
また例えば、階調データ値のバラつきが大きいブロックエリア内の画素であって、同時に暗領域でもある画素に対応する補正量は、最終補正量のままかそれ以下に修正される。
また例えば、階調データ値のバラつきが小さいブロックエリア内の画素であって、同時に明領域でもある画素に対応する補正量は、最終補正量のままかそれ以下に修正される。
また例えば、階調データ値のバラつきが小さいブロックエリア内の画素であって、同時に暗領域でもある画素に対応する補正量は、最終補正量のままかそれ以下に修正される。
【0048】
(b)形態例の効果
この補正装置41を用いれば、階調データ値の分布のバラつき程度だけでなく、各画素が明領域か暗領域かに応じても焼き付き補正量を調整できるため、焼き付き補正の促進と視認される画質の維持とを同時に実現できる。
すなわち、画質の低下が簡単には視認されない画素に対しては、形態例1よりも劣化量差の縮小幅を増加でき、画質の低下が視認され易い画素に対しては、形態例1よりも劣化量差の縮小幅を更に低減できる。
【0049】
(D)自発光装置への搭載例
図20に、焼き付き現象補正装置の自発光装置への搭載例を示す。
自発光装置51は、筐体53に焼き付き現象補正装置55と表示デバイス57を搭載する。
ここで、焼き付き現象補正装置55は、前述した形態例のいずれかに対応する。焼き付き現象補正装置55は、外部端子又は内部で発生された映像信号を入力し、補正対象画素と基準画素との間に劣化量差が発生しないように入力信号の補正動作を実行する。
【0050】
また、表示デバイス57は、表示デバイスとその駆動回路とで構成されるものとする。表示デバイスには、有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネル、PDP(プラズマディスプレイパネル)、FED(電界放出ディスプレイ)パネル、LEDパネル、CRTが用いられる。
図20の場合、自発光装置51に、焼き付き現象の補正専用の処理デバイスである焼き付き現象補正装置55が搭載されているものとして表しているが、当該機能がソフトウェア的に全て実行される場合には、これらの機能は自発光装置に搭載されたコンピュータにより実現される。
【0051】
(E)画像処理装置への搭載例
図21に、焼き付き補正装置61を搭載する画像処理装置63のシステム例を示す。画像処理装置63は、自発光型の表示装置65と有線路又は無線路を経由して接続されている。
このシステム例の場合、画像処理装置63の筐体内で焼き付き補正処理が実行される。すなわち、表示装置65に出力される画像信号は、出力インターフェースとの間に配置された焼き付き補正回路61に入力され、前述した焼き付き補正処理が実行される。
【0052】
この種の画像処理装置63には、例えば、ビデオカメラ、デジタルカメラその他の撮像装置(カメラユニットだけでなく、記録装置と一体に構成されているものを含む。)、コンピュータ(サーバーを含む。)、各種の情報処理端末(携帯型のコンピュータ、携帯電話機、携帯型のゲーム機、電子手帳等)、各種画像の再生装置(ホームサーバーを含む。)、画像編集装置、ゲーム機の適用が可能である。
【0053】
(F)他の形態例
(a)前述の形態例においては、補正処理後の表示信号(階調データ)に基づいて標準補正量を導出する場合について説明した。
しかし、補正処理前の表示信号に基づいて標準補正量を算出する方式の補正装置にも適用できる。もっとも、この場合には、補助補正量によって標準補正量が修正されるため、標準補正量に対する修正を、標準補正量の算出に反映させる仕組みを搭載すれば良い。
(b)前述の形態例においては、補正対象とする表示信号に最終補正量を加減算する場合について説明した。しかし、表示信号は、他の手法を用いて補正しても良い。例えば、表示信号に最終補正量を乗算して表示信号の絶対値を増減する手法を採用しても良い。
【0054】
(c)前述の形態例においては、ブロックエリアを3×3画素の合計9画素として定義した。
しかし、ブロックエリアを構成する画素数は、これに限らない。例えば、5×5画素の合計25画素として定義しても良い。また、ブロックエリアは正方形状の領域である必要はなく、長方形形状の領域でも良い。
(d)前述の形態例においては、補助補正量が1より大きい自然数の場合について説明した。
しかし、補助補正量は1より小さい値でも良い。例えば、0.5でも良いし、0(ゼロ)でも良い。補助補正量が0.5の場合、最終補正量は標準補正量の半分として決定される。これは、階調変化が視認され易い画素に効果的である。また、階調変化が視認され易いだけでなく、画質の低下を基本的に避ける必要がある場合には、補助補正量が0にすれば良い。
【0055】
(e)前述の形態例においては、標準偏差値を4つの区分に分類し、各区分に応じた補助補正量を“1”、“2”、“3”、“5”と定義した。
しかし、標準偏差値の区分数は4より小さくても、大きくても良い。また、対応付ける補正倍率も他の値を用い得る。
(f)前述の形態例においては、各画素が動画像領域か静止画像領域かを焼き付き現象補正装置内で判定する場合について説明した。
しかし、動画像領域か静止画像領域かの情報は、焼き付き現象補正装置とは別に用意された画像データ復号化装置で復号化された動きベクトルを用いても良い。
【0056】
図22に、このシステム例を示す。図22は、画像データ復号化装置71で復号化された画像データと動きベクトルとが焼き付き現象補正装置に入力されるシステム例を表している。
画像データ復号化装置71は、動きベクトル復号化部71Aで復号化された動きベクトルを画像データ復号化処理部71Bに与えることにより、符号化された画像データを復号処理する構成を採用する。このような復号化の仕組みは、各種の動画処理技術で採用されている。
【0057】
現在、動きベクトルは、基本的に画像データの復号化処理にしか用いられていないが、この動きベクトルを焼き付き現象補正装置73に与えることにより、形態例で説明した動画静止画判定部を用いずとも同様の効果を実現できる。
もっとも、動きベクトルに基づいて、各画素を動画像領域と静止画像領域に分類する機能は必要となる。
なお、このシステム構成は、自発光装置の筐体内に搭載することも可能であるし、前述した画像処理装置の筐体内に搭載することも可能である。
【0058】
(g)前述の形態例では、焼き付き現象補正装置の機能構成を説明したが、言うまでもなく、同等の機能をハードウェアとして実現することも、ソフトウェアとして実現することも可能である。
また、焼き付き現象補正装置を構成する各機能の全部をハードウェア又はソフトウェアで実現するだけでなく、その一部の機能はハードウェア又はソフトウェアを用いて実現することもできる。すなわち、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ構成としても良い。
(h)前述の形態例には、発明の趣旨の範囲内で様々な変形例が考えられる。また、本明細書の記載に基づいて創作される各種の変形例及び応用例も考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】焼き付き現象補正装置の形態例を示す図である。
【図2】階調値と劣化率との対応関係を保持する変換テーブル例を示す図である。
【図3】ブロックエリアへの領域化処理例を示す図である。
【図4】階調データ値の分布のバラつき程度に応じた補助補正量の決定例を示す図である。
【図5】標準偏差値を補助補正量に対応付けたテーブルを示す図である。
【図6】最終補正量の決定過程を示す図である。
【図7】焼き付き現象の補正動作例を示す図である。
【図8】焼き付き現象補正装置の他の形態例を示す図である。
【図9】焼き付き現象補正装置の他の形態例を示す図である。
【図10】動画静止画判定部の内部構成例を示す図である。
【図11】動画像と静止画像の判定動作例を示す図である。
【図12】輝度劣化補正部の内部構成例を示す図である。
【図13】動画像領域と静止画像領域に応じた最終補正量の修正動作例を示す図である。
【図14】焼き付き現象補正装置の他の形態例を示す図である。
【図15】明るさ判定部の内部構成例を示す図である。
【図16】明るさ判定部の内部構成例を示す図である。
【図17】輝度劣化補正部の内部構成例を示す図である。
【図18】明領域と暗領域に応じた最終補正量の修正動作例を示す図である。
【図19】明領域と暗領域に応じた最終補正量の修正動作例を示す図である。
【図20】焼き付き現象補正装置を自発光装置に搭載したシステム例を示す図である。
【図21】焼き付き現象補正装置を画像処理装置に搭載したシステム例を示す図である。
【図22】動きベクトルを動画像領域と静止画像領域の判定に使用する場合のシステム例を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1、21、31、41、55、61、73 焼き付き現象補正装置
3 劣化量差算出部
5 累積劣化量差蓄積部
7 標準補正量決定部
9 表示データ領域化部
11 階調バラつき算出部
13 補助補正量決定部
15 最終補正量決定部
17、35、45 輝度劣化補正部
33 動画静止画判定部
43 明るさ判定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置の焼き付き現象を補正する方法であって、
階調データを、対応画素の属するブロックエリア別に領域化する処理と、
各ブロックエリアに対応付けられた階調データ値の分布のバラつき程度を示す情報を算出する処理と、
前記階調データ値の分布のバラつき程度に応じ、ブロックエリア別の補助補正量を決定する処理と、
焼き付き補正後の表示信号に基づいて、全画素の比較対象画素に対する劣化量差を求める処理と、
前記劣化量差を画素毎に累積加算し、各画素について発生した累積劣化量差を算出する処理と、
前記累積劣化量差に基づいて、焼き付き補正に使用する標準補正量を逐次決定する処理と、
前記標準補正量を対応する補助補正量で修正し、最終補正量を決定する処理と、
前記最終補正量に基づいて、焼き付き補正前の表示信号を補正する処理と
を有することを特徴とする焼き付き現象補正方法。
【請求項2】
請求項1に記載の焼き付き現象補正方法であって、
前記階調データの分布のバラつき程度を示す情報は、分散値又は標準偏差値である
ことを特徴とする焼き付き現象補正方法。
【請求項3】
請求項1に記載の焼き付き現象補正方法であって、
前記標準補正量の最大値は、画質の低下が知覚され易い絵柄において、焼き付き補正による画質の低下が視覚され難い範囲に制限される
ことを特徴とする焼き付き現象補正方法。
【請求項4】
請求項1に記載の焼き付き現象補正方法において、
前記補助補正量は、階調データ値の分布のバラつき程度が大きいほど大きい値に決定され、階調データ値の分布のバラつき程度が小さいほど小さい値に決定される
ことを特徴とする焼き付き現象補正方法。
【請求項5】
請求項1に記載の焼き付き現象補正方法において、
前記最終補正量は、前記標準補正量に前記補助補正量を乗算した値として算出される
ことを特徴とする焼き付き現象補正方法。
【請求項6】
請求項1に記載の焼き付き現象補正方法において、
前記最終補正量は、前記標準補正量に前記補助補正量を加算した値、又は前記標準補正量から前記補助補正量を減算した値として算出される
ことを特徴とする焼き付き現象補正方法。
【請求項7】
複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置であって、
階調データを、対応画素の属するブロックエリア別に領域化する表示信号領域化部と、
各ブロックエリアに対応付けられた階調データ値の分布のバラつき程度を示す情報を算出する階調バラつき算出部と、
前記階調データ値の分布のバラつき程度に応じ、ブロックエリア別の補助補正量を決定する補助補正量決定部と、
焼き付き補正後の表示信号に基づいて、全画素の比較対象画素に対する劣化量差を求める劣化量差算出部と、
前記劣化量差を画素毎に累積加算し、各画素について発生した累積劣化量差を算出する累積劣化量差蓄積部と、
前記累積劣化量差に基づいて、焼き付き補正に使用する標準補正量を逐次決定する標準補正量決定部と、
前記標準補正量を対応する補助補正量で修正し、最終補正量を決定する最終補正量決定部と、
前記最終補正量に基づいて、焼き付き補正前の表示信号を補正する劣化補正部と
を有することを特徴とする自発光装置。
【請求項8】
複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置の焼き付き現象を補正する焼き付き現象補正装置であって、
階調データを、対応画素の属するブロックエリア別に領域化する表示信号領域化部と、
各ブロックエリアに対応付けられた階調データ値の分布のバラつき程度を示す情報を算出する階調バラつき算出部と、
前記階調データ値の分布のバラつき程度に応じ、ブロックエリア別の補助補正量を決定する補助補正量決定部と、
焼き付き補正後の表示信号に基づいて、全画素の比較対象画素に対する劣化量差を求める劣化量差算出部と、
前記劣化量差を画素毎に累積加算し、各画素について発生した累積劣化量差を算出する累積劣化量差蓄積部と、
前記累積劣化量差に基づいて、焼き付き補正に使用する標準補正量を逐次決定する標準補正量決定部と、
前記標準補正量を対応する補助補正量で修正し、最終補正量を決定する最終補正量決定部と、
前記最終補正量に基づいて、焼き付き補正前の表示信号を補正する劣化補正部と
を有することを特徴とする焼き付き現象補正装置。
【請求項9】
階調データを、対応画素の属するブロックエリア別に領域化する処理と、
各ブロックエリアに対応付けられた階調データ値の分布のバラつき程度を示す情報を算出する処理と、
前記階調データ値の分布のバラつき程度に応じ、ブロックエリア別の補助補正量を決定する処理と、
焼き付き補正後の表示信号に基づいて、全画素の比較対象画素に対する劣化量差を求める処理と、
前記劣化量差を画素毎に累積加算し、各画素について発生した累積劣化量差を算出する処理と、
前記累積劣化量差に基づいて、焼き付き補正に使用する標準補正量を逐次決定する処理と、
前記標準補正量を対応する補助補正量で修正し、最終補正量を決定する処理と、
前記最終補正量に基づいて、焼き付き補正前の表示信号を補正する処理と
をコンピュータに実行させることにより、複数の自発光素子がマトリクス状に配置された自発光装置の焼き付き現象を補正することを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−235325(P2006−235325A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−50955(P2005−50955)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】