説明

焼成炉

【課題】被処理物を効率良く且つ均一に焼成することができ、大容量の加熱手段を装備するまでもなく、炉本体内の温度を殆ど低下させないで被処理物を炉本体内へ装入することができる焼成炉を提供する。
【解決手段】炉本体11と該炉本体に開閉可能に被着した炉扉12とを備え、該炉本体内へ装入した被処理物を過熱水蒸気を用いて焼成するようにした焼成炉において、炉本体に形成した副出入口31と、該副出入口を囲んで該炉本体の外部に取付けたケース本体41と、該ケース本体に開閉可能に被着したケース扉42と、該ケース本体内に進退可能に収容した載置台51と、該載置台の先端部及び後端部に取付け且つ該載置台の前進完了時又は後退完了時に該副出入口回りの該炉本体内縁部と当接して該副出入口を閉鎖する当接板52,53と、該載置台を該ケース本体内と該炉本体内との間で進退させる進退手段61とを装備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は焼成炉に関する。例えばセラミックス材料の成形物を焼成して、LSIや超LSI等の基板として使用されるウェーハのようなセラミックス製品を作製することが行なわれる。かかる焼成には、外気(大気)を用いるもの、特定の雰囲気ガスを用いるもの、更には減圧乃至真空雰囲気で行なうもの等、合目的的に各種の焼成炉が使用される。本発明は被処理物を加熱気体、特に過熱水蒸気を用いて焼成するようにした焼成炉の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記のようなセラミックス材料の成形物に代表される被処理物を加熱気体を用いて焼成するようにした焼成炉として一般に、被処理物を加熱した主に外気又は窒素ガスを用いて焼成するようにしたものが知られている(例えば特許文献1及び2参照)。しかし、かかる従来一般の焼成炉には、被処理物の焼成に加熱した主に外気又は窒素ガスを用いるため、被処理物の焼成効率及び均一焼成に劣るという問題がある。
【0003】
かかる問題を改善するため、同様の焼成炉として、被処理物を過熱水蒸気を用いて焼成するようにしたものが提案されている(例えば特許文献3参照)。この焼成炉は、被処理物の焼成に過熱水蒸気を用いるため、加熱した主に外気又は窒素ガスを用いる前記した従来一般の焼成炉に比べて、被処理物を効率良く且つ均一に焼成できるという利点がある。しかし、この焼成炉には、また前記した従来一般の焼成炉の場合にも、炉の通常は正面全体を覆うように取付けられた炉扉を開いて炉本体内へ被処理物を装入するようになっているため、かかる被処理物の装入時に炉本体内の雰囲気ガスの炉外への放出や外気の炉本体内への侵入等によって炉本体内の温度が低下し、その回復に時間がかかり、言い替えれば炉本体内に装入した被処理物の温度がこれに設定された焼成温度にまで到達するのに時間がかかるという問題がある。かかる問題は、炉本体内へ比較的小型の被処理物を装入する場合でも同様に生じる。炉本体内に装入した被処理物の温度がこれに設定された焼成温度にまで到達するのに時間がかかると、単に焼成効率に問題を生じるだけでなく、焼成による品質にも問題を生じる場合がある。かかる問題を改善するため、大容量の加熱手段を装備することも考えられるが、このようにすると、焼成炉が大型化し、運転コストも含めて極めて非経済的になる。
【特許文献1】特開平7−313861号公報
【特許文献2】特開2002−168570号公報
【特許文献3】特開2005−221135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、被処理物を効率良く且つ均一に焼成することができ、しかも大容量の加熱手段を装備するまでもなく、炉本体内の温度を殆ど低下させないで被処理物を炉本体内へ装入することができ、したがって炉本体内に装入した被処理物の温度をそれに設定された焼成温度にまで短時間で到達させることができる焼成炉を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決する本発明は、炉本体と該炉本体に開閉可能に被着された炉扉とを備え、該炉本体内へ装入した被処理物を過熱水蒸気を用いて焼成するようにした焼成炉において、炉本体に形成された副出入口と、該副出入口を囲んで該炉本体の外部に取付けられたケース本体と、該ケース本体に開閉可能に被着されたケース扉と、該ケース本体内に進退可能に収容された載置台と、該載置台の先端部及び後端部に取付けられ且つ該載置台の前進完了時又は後退完了時に該副出入口回りの該炉本体内縁部と当接して該副出入口を閉鎖する当接板と、該載置台を該ケース本体内と該炉本体内との間で進退させる進退手段とを備えることを特徴とする焼成炉に係る。
【0006】
本発明に係る焼成炉も、従来の焼成炉と同様、炉本体とこれに開閉可能に被着された炉扉とを備えている。炉本体は通常、箱型や円筒型等になっており、正面が開放されていて、かかる開放された正面を覆うように炉扉が取付けられている。炉本体内には過熱水蒸気供給管が挿入されており、通常その先端部には拡散ノズルが取付けられていて、必要に応じ補助ヒータが設けられている。また炉本体内には通常、過熱水蒸気の循環を促すための循環ファン及び過熱水蒸気の循環経路を形成するガイド板が設けられており、更に冷却用ガスの供給管、排気管、温度センサ、圧力センサ等が接続又は挿入されている。
【0007】
本発明に係る焼成炉は、炉本体に形成された副出入口と、該副出入口を囲んで該炉本体の外部に取付けられたケース本体と、該ケース本体に開閉可能に被着されたケース扉と、該ケース本体内に進退可能に収容された載置台と、該載置台の先端部及び後端部に取付けられた当接板と、該載置台を該ケース本体内と該炉本体内との間で進退させる進退手段とを備えている。
【0008】
副出入口は、炉扉を開いたときに現れる炉本体の開放面を主出入口とする場合にこれに対応するもので、かかる主出入口が炉本体の正面にある場合には、副出入口は該炉本体の背面に形成するのが好ましい。かかる副出入口は炉本体の外部に取付けられたケース本体とこれに開閉可能に被着されたケース扉とで包囲されている。ケース本体内に収容された載置台は、該ケース本体内と炉本体内との間にて、途中で前記の副出入口を通り進退可能となっている。かかる載置台は、被処理物を載置するためのもので、その形状や構造が特に制限されるというものではないが、金属製の平板に複数の孔が穿設されたものとするのが好ましい。
【0009】
載置台の後端部に取付けられた当接板は、該載置台がケース本体内から副出入口を通り炉本体内へと前進を完了したときに該副出入口回りの該炉本体内縁部と当接して該副出入口を閉鎖し、また載置台の先端部に取付けられた当接板は、該載置台が炉本体内から副出入口を通りケース本体内へと後退を完了したときに該副出入口回りの該炉本体内縁部と当接して該副出入口を閉鎖するようになっている。前記したケース本体及びケース扉とかかる当接板により、該ケース本体に該ケース扉を被着した状態で、載置台を該ケース本体内から副出入口を通り炉本体内へと前進させ、かかる載置台に載置しておいた被処理物を炉本体内へ装入するとき、該炉本体内の雰囲気の乱れを最小限に抑えて炉本体内の温度が低下するのを防止する。副出入口回りの炉本体内縁部に当接板が当接したときに双方の間のシール性を高めるためには、副出入口回りの炉本体内縁部及び/又は当接板の外縁部に耐熱性のシール材、例えばガラスウールを取付けておくのが好ましい。
【0010】
載置台をケース本体内と炉本体内との間で進退させる進退手段は、モータ駆動のものであっても又はシリンダ駆動のものであってもよいが、モータ駆動のものが好ましく、なかでもモータ駆動のピニオンと該ピニオンに噛合するラックとを備え、該ラックの先端部に当接板を介して載置台が取付けられた構造のものとするのが好ましい。載置台は以上のような進退手段によりケース本体内と炉本体内との間で進退し、この際に該載置台の後端部に取付けられた当接板が該ケース本体の底面を摺動するが、かかる進退をより安定化させるためには、炉本体内に該載置台の先端部に取付けた当接板が摺動するガイド片を設けるのが好ましく、かかるガイド片は炉本体内にて過熱水蒸気の循環経路を形成するガイド板の一部に兼用させるのがより好ましい。
【0011】
本発明に係る焼成炉では、炉扉を開いて炉本体の通常は正面に位置する前記したような主出入口から該炉本体内へ被処理物を装入することもできるが、載置台を利用して該炉本体の通常は背面に位置する副出入口から該炉本体内へ被処理物を装入することができる。この場合、進退手段により載置台の先端部の当接板が副出入口回りの炉本体内縁部に当接するまで該載置台をケース本体内へ後退→ケース扉を開→載置台に被処理物を載置→ケース扉を閉→進退手段により載置台の後端部の当接板が副出入口回りの炉本体内縁部に当接するまで該載置台を炉本体内へ前進、以上の手順により被処理物を炉本体内へ装入する。かかる装入に際して、炉本体内が炉外やケース外の外気に直接さらされることはなく、したがって炉本体内の雰囲気ガスの放出や外気の炉本体内への侵入が殆どないので、炉本体内の雰囲気の乱れを最小限に抑えて炉本体内の温度が低下するのを防止できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る焼成炉によると、被処理物を効率良く且つ均一に焼成することができ、しかも大容量の加熱手段を装備するまでもなく、炉本体内の温度を殆ど低下させないで被処理物を炉本体内へ装入することができ、したがって炉本体内に装入した被処理物の温度をそれに設定された焼成温度にまで短時間で到達させることができる。
【実施例】
【0013】
図1は本発明に係る焼成炉を例示する側面図、図2は図1と同じ焼成炉を示す平面図、図3は図1と同じ焼成炉をその作用状態も含めて示す側面に沿う方向の一部縦断面図、図4は図3と同じ焼成炉を示す正面に沿う方向の一部縦断面図である。図1〜4のうちで、図1及び図2は載置台がケース本体内に後退を完了しており、ケース扉が半ば開いた状態を示しているが、図3及び図4は載置台が炉本体11内に前進を完了しており、ケース扉が閉じた状態を示している。
【0014】
図示した本発明に係る焼成炉は、炉本体11とこれに開閉可能に被着された炉扉12とを備えている。炉本体11は正面が開放の箱型になっており、かかる開放された正面を覆うように炉扉12が取付けられている。炉本体11内には過熱水蒸気供給管21が挿入されており、その先端部に拡散ノズル22が取付けられている。また炉本体11内には過熱水蒸気の循環を促すための循環ファン23及び過熱水蒸気の循環経路を形成するガイド板24が設けられており、更に冷却用ガスの供給管25、排気管26、温度センサ27及び圧力センサ28が接続又は挿入されている。
【0015】
また図示した本発明に係る焼成炉は、炉本体11に形成された副出入口31と、副出入口31を囲んで炉本体11の外部に取付けられたケース本体41と、ケース本体41に開閉可能に被着されたケース扉42と、ケース本体41内に進退可能に収容された載置台51と、載置台51の先端部及び後端部に取付けられた当接板52,53と、載置台51をケース本体41内と炉本体11内との間で進退させる進退手段61とを備えている。
【0016】
副出入口31は、炉本体11の背面に形成されており、炉本体11の外部に取付けられたケース本体41とこれに開閉可能に被着されたケース扉42とで包囲されている。ケース本体41内に収容された載置台51は、ケース本体41内と炉本体11内との間にて、途中で前記の副出入口31を通り進退可能となっている。かかる載置台51は、被処理物を載置するためのもので、金属製の平板に複数の孔が穿設されたものとなっている。
【0017】
載置台51の後端部に取付けられた当接板53は、載置台51がケース本体41内から副出入口31を通り炉本体11内へと前進を完了したときに副出入口31回りの炉本体11の内縁部と当接して副出入口31を閉鎖し、また載置台51の先端部に取付けられた当接板52は、載置台51が炉本体11内から副出入口31を通りケース本体41内へと後退を完了したときに副出入口31回りの炉本体11の内縁部と当接して副出入口31を閉鎖するようになっている。図示を省略するが、副出入口31回りの炉本体11の内縁部に当接板52,53が当接したときに双方の間のシール性を高めるため、当接板52,53の外縁部に耐熱性のシール材としてガラスウールが取付けられている。
【0018】
載置台51をケース本体41内と炉本体11内との間で進退させる進退手段61は、図示を省略するモータ駆動のピニオンと該ピニオンに噛合するラック62とを備え、ラック62の先端部に当接板53を介して載置台51が取付けられている。載置台51は進退手段61によりケース本体41内と炉本体11内との間で進退し、この際に載置台51の後端部の当接板53がケース本体41の底面を摺動するが、かかる進退をより安定化させるため、炉本体11内に載置台51の先端部の当接板52が摺動するガイド片25が設けられ、ガイド片25は炉本体11内にて過熱水蒸気の循環経路を形成するガイド板24の一部となって兼用されている。
【0019】
図示した本発明に係る焼成炉では、炉扉12を開いて炉本体11の正面に位置する主出入口から炉本体11内へ被処理物を装入することもできるが、載置台51を利用して炉本体11の背面に位置する副出入口31から炉本体11内へ被処理物を装入することができる。この場合、進退手段61により載置台51の先端部の当接板52が副出入口31回りの炉本体11の内縁部に当接するまで載置台51をケース本体41内へ後退→ケース扉42を開→載置台51に被処理物を載置→ケース扉42を閉→進退手段61により載置台51の後端部の当接板53が副出入口31回りの炉本体11の内縁部に当接するまで載置台51を炉本体11内へ前進、以上の手順により被処理物を炉本体11内へ装入する。かかる装入に際して、炉本体11内が炉外やケース外の外気に直接さらされることはなく、したがって炉本体11内の雰囲気ガスの放出や外気の炉本体11内への侵入が殆どないので、炉本体11内の雰囲気の乱れを最小限に抑えて炉本体11内の温度が低下するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る焼成炉を例示する側面図。
【図2】図1と同じ焼成炉を示す平面図。
【図3】図1と同じ焼成炉をその作用状態も含めて示す側面に沿う方向の一部縦断面図。
【図4】図3と同じ焼成炉を示す正面に沿う方向の一部縦断面図。
【符号の説明】
【0021】
11 炉本体
12 炉扉
21 過熱水蒸気供給管
23 循環ファン
24 ガイド板
25 ガイド片
26 排気管
31 副出入口
41 ケース本体
42 ケース扉
51 載置台
52,53 当接板
61 進退手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉本体と該炉本体に開閉可能に被着された炉扉とを備え、該炉本体内へ装入した被処理物を過熱水蒸気を用いて焼成するようにした焼成炉において、炉本体に形成された副出入口と、該副出入口を囲んで該炉本体の外部に取付けられたケース本体と、該ケース本体に開閉可能に被着されたケース扉と、該ケース本体内に進退可能に収容された載置台と、該載置台の先端部及び後端部に取付けられ且つ該載置台の前進完了時又は後退完了時に該副出入口回りの該炉本体内縁部と当接して該副出入口を閉鎖する当接板と、該載置台を該ケース本体内と該炉本体内との間で進退させる進退手段とを備えることを特徴とする焼成炉。
【請求項2】
炉本体の正面に炉扉が取付けられており、該炉本体の背面に副出入口が形成された請求項1記載の焼成炉。
【請求項3】
載置台が金属製の平板に複数の孔が穿設されたものである請求項1又は2記載の焼成炉。
【請求項4】
副出入口回りの炉本体内縁部及び/又は当接板の外縁部に耐熱性のシール材が取付けられた請求項1〜3のいずれか一つの項記載の焼成炉。
【請求項5】
進退手段がモータ駆動のピニオンと該ピニオンに噛合するラックとを備え、該ラックの先端部に当接板を介して載置台が取付けられた請求項1〜4のいずれか一つの項記載の焼成炉。
【請求項6】
炉本体内に当接板が摺動するガイド片が取付けられた請求項1〜5のいずれか一つの項記載の焼成炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−107011(P2008−107011A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290676(P2006−290676)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(597103573)株式会社イシン技研 (5)
【Fターム(参考)】