説明

焼結セラミックス及び健康ヒータ

【課題】小型で狭い室内にも設置でき、設備費や運転コストも安く、携帯も容易で、体の必要な部位を効率よく温めることができる焼結セラミックス及び健康ヒータを提供する。
【解決手段】健康ヒータ1は、セラミックス粉末を布生地に担持させてなる布生地層2と面状発熱体4間にSi:95%〜96%、Ni:3.0%〜3.2%、Fe及びCrを総量で1.0%〜1.1%(質量%、以下同じ)以上を含有し、残部不可避的不純物からなる焼結セラミックス3を敷き詰めてなり、セラミックス3を加熱して微量放射線若しくは遠赤外線を放射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は焼結セラミックス及び鉱石から発生する微量放射線や微量放射線若しくは遠赤外線の放射により体を温める電熱式の健康ヒータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に健康の促進や、あるいは腰痛や肩こり、膝の痛みなど体の痛い時に、温泉やサウナに入って体を温めて治療することが行なわれている。この温泉やサウナは、湯や蒸気により体を温めて全身の血行を高め、発汗作用を促進して老廃物を体外に排出させることにより治療効果が得られるものである。
【0003】
しかし、この特許文献1などに示される温泉やサウナは、体全身を暖めることに利用されるものであって、体の表面から温めるので内部まで温まるのに時間がかかり、また高温多湿の環境下で長時間入浴していると心臓に負担がかかり、湯疲れによる疲労も激しいため、体力が減退した者や高齢者等には過剰な負担があり、その利用には限界がある。
【0004】
この温泉やサウナは、体全身を暖めることに利用されるものであるため一定以上の空間が必要で、そのための設備・施設が必要であり、一般家屋に安価に、簡易に備えることはできなかった。また、旅行等の際に簡易にプライベートに利用することができる性格のものでもなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−269177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の従来の問題点に鑑み、小型で狭い室内にも設置でき、設備費や運転コストも安く、携帯も容易で、体の必要な部位を効率よく温めることができる焼結セラミックス及び健康ヒータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の焼結セラミックスは、Si:95%〜96%、Ni:3.0%〜3.2%、Fe及びCrを総量で1.0%〜1.1%(質量%、以下同じ)以上を含有し、残部不可避的不純物からなることを特徴とする。
【0008】
また本発明の焼結セラミックスは、Si:95%〜96%、Ni:3.0%〜3.2%、Fe及びCrを総量で1.0%〜1.1%(質量%、以下同じ)以上、Mn:0.026%〜0.032%を含有し、残部不可避的不純物からなることを特徴とする。
【0009】
さらに本発明の健康ヒータは、セラミックス粉末を布生地に担持させてなる布生地層と面状発熱体間に本発明の焼結セラミックスを収納してなることを特徴とする。
【0010】
前記布生地層は、焼結セラミックスを粒径2μm以下に粉末化する工程と、粉末化した焼結セラミックスを印刷インクに混合する工程と、焼結セラミックスを混合した印刷インクを布生地に塗布する工程とにより得ることができる。
【0011】
前記布生地層をほぼ同一形状の2区画に分離し、前記布生地層の2区画によって前記面状発熱体を介して対向する外側が形成されてなるようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の焼結セラミックス及び健康ヒータによれば、簡単な構造により、微量放射線若しくは遠赤外線を多量に放射して体を内部から直接温めて、血管を広げて血行を促進し、痛みの原因となる筋肉の緊張や老廃物を除去し、また乾燥した雰囲気で使用するので心臓に負担をかけることもない。
また本発明の健康ヒータは、小型の加熱装置で十分であり、設備費が安い上、消費する電力も少なく、個人の家庭などの狭い室内にも設置することができ、携帯も可能である。
また布生地層にセラミックス粉末層を設けるので、このセラミックス粉末層からも微量放射線若しくは遠赤外線が照射され、体全体に全方向から効率よく加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1(a)本発明の一実施の形態の健康ヒータの正面図、(b)本発明の一実施の形態の健康ヒータの分解平面図、(c)本発明の一実施の形態の健康ヒータの部分断面図、(d)図1(a)におけるA−A断面図、(e)本発明の一実施の形態の健康ヒータの部分分解模式図である。
【図2】本発明の一実施の形態の健康ヒータの分解平面図
【図3】本発明の一実施の形態の健康ヒータの断面模式図
【図4】本発明の一実施の形態の焼結セラミックスのX線成分分析データ図である。
【図5】本発明の一実施の形態の焼結セラミックスの他のX線成分分析データ図である。
【図6】本発明の比較例の焼結セラミックスのX線成分分析データ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明の焼結セラミックスの成分元素の添加範囲について説明する。
Si:Siは加熱されることによって微量放射線若しくは遠赤外線を射出する温熱効果が得られると推定される。Siの含有量は、95%〜96%の範囲であり、95%未満では温熱効果が小さく、96%を超えても効果の向上は認められない。
【0015】
Ni:Niは耐食性を向上する効果を有する。Niの含有量は3.0%〜3.2%の範囲であり、3.0%未満では耐食性を向上する効果が小さく、3.2%を超えると温熱効果の向上に悪影響がある。
【0016】
Fe及びCr:Fe及びCrは強度を高めるとともに耐食性を向上する効果を有する。Fe及びCrの含有量は総量で1.0%〜1.1%の範囲であり、1.0%未満では強度を高める効果が小さく、1.1%を超えると温熱効果の向上に悪影響がある。
Mn:Mnは強度を高めるとともに耐食性を向上する効果を有する。Mnの含有量は0.026%〜0.032%であり、0.032%を越えると温熱効果の向上に悪影響がある。
【0017】
次に、以下本発明の実施の一形態の健康ヒータを図1ないし図3を参照して詳細に説明する。
図1において健康ヒータ1は、セラミックス粉末を布生地に担持させてなる布生地層2と面状発熱体4間に焼結セラミックス3を敷き詰めてなる。
【0018】
布生地2aには通常のフェルトを用いることができ、この布生地2aに粉末化した焼結セラミックスを混合したアルコールを塗布し乾燥して粒径2μm以下の焼結セラミックス粉末2bを担持した布生地層2を得ることができる。
布生地層2を得る手法としてシルク印刷を用いることができる。
シルク印刷とは、孔版をスクリーンとして印刷対象を覆い、孔からインクを付けて印刷する方法であり、シルクスクリーン、スクリーン印刷ともいう。
シルク印刷で使用するスクリーン版は、版が柔軟で印刷対象が布生地2aでも対応できること、印圧が少なくてすむこと、多様なインク種類に対応できることなど利点も多く、布への特殊印刷を行うことができる。
【0019】
面状発熱体4には電源ケーブル5が接続されており、電源ケーブル5を介する通電によって面状発熱体4が発熱する。
【0020】
前記布生地層2は、焼結セラミックスを粒径2μm以下に粉末化する工程と、粉末化した焼結セラミックスを印刷インクに混合する工程と、焼結セラミックスを混合した印刷インクを布生地2aに塗布する工程とにより得ることができる。
【0021】
図2,図3に示されるように、前記布生地層2をほぼ同一形状の2区画2b、2cに分離し、前記布生地層2の2区画2b、2cによって面状発熱体4を介して対向する外側面が形成されてなるようにし、さらにその外側をカバー6によって被覆して本発明の健康ヒータ1となすこともできる。
【実施例1】
【0022】
以下本発明及び比較例の焼結セラミックスの成分元素分析結果について説明する。
本発明の実施例及び比較例の焼結セラミックスにつきX線分析装置を用いて成分分析を行った。
実施例試料1の測定条件は管電圧が50.000kV、また管電流が1.225mA、リアルタイムが241.91秒、デッドタイムが39%、ライブタイムが145.64秒、計数率は4956Counts/秒、プリセットがライブタイム 240.00秒、エネルギー範囲が0−41keV、PHAモードを標準とし、空気中で分析した。さらに光学系条件は、コリメータ:4.000mm、フィルタOpenとした。 図4に実施例試料1のX線成分分析データ図を示し、成分分析結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
実施例試料2の分析条件は管電圧が50.000kV、また管電流が1.225mA、リアルタイムが398.51秒、デッドタイムが39%、ライブタイムが240.00秒、計数率は4952Counts/秒、プリセットがライブタイム 240.00秒、エネルギー範囲が0−41keV、PHAモードを標準とし、空気雰囲気とした。た。さらに光学系条件は、コリメータ:4.000mm、フィルタOpenとした。図5に実施例試料2のX線成分分析データ図を示し、成分分析結果を表2に示す。
【表2】

【0025】
比較例試料の測定条件は管電圧が50.000kV、また管電流が0.775mA、リアルタイムが401.56秒、デッドタイムが40%、ライブタイムが240.00秒、計数率は4963Counts/秒、プリセットがライブタイム 240.00秒、エネルギー範囲が0−41keV、PHAモードを標準とし、雰囲気を空気とした。さらに光学系条件は、コリメータ:4.000mm、フィルタOpenとした。図6に比較例試料のX線成分分析データ図を示し、成分分析結果を表3に示す。
【表3】

【0026】
以上の実施例試料1、実施例試料2及び比較例試料を焼結セラミックス3として図1ないし図3に示す本発明の実施の形態の健康ヒータを構成した。
その結果、実施例試料1、実施例試料2を用いた場合には、体を内部から直接温めて、血管を広げて血行を促進し、痛みの原因となる筋肉の緊張や老廃物を除去するという効果が認められた。しかし、比較例試料を用いた場合には充分な加温効果は得られなかった。
【符号の説明】
【0027】
1・・・健康ヒータ、2・・・布生地層、4・・・面状発熱体、3・・・焼結セラミックス、2a・・・布生地、2b・・・焼結セラミックス粉末、5・・・電源ケーブル、6・・・カバー。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si:95%〜96%、Ni:3.0%〜3.2%、Fe及びCrを総量で1.0%〜1.1%(質量%、以下同じ)以上を含有し、残部不可避的不純物からなることを特徴とする焼結セラミックス。
【請求項2】
Si:95%〜96%、Ni:3.0%〜3.2%、Fe及びCrを総量で1.0%〜1.1%、Mn:0.026%〜0.032%を含有し、残部不可避的不純物からなることを特徴とする焼結セラミックス。
【請求項3】
セラミックス粉末を布生地に担持させてなる布生地層と面状発熱体間に請求項1又は請求項2記載の焼結セラミックスを収納してなることを特徴とする健康ヒータ。
【請求項4】
前記布生地層は、焼結セラミックスを粒径2μm以下に粉末化する工程と、粉末化した焼結セラミックスを印刷インクに混合する工程と、焼結セラミックスを混合した印刷インクを布生地に塗布する工程とにより得られる請求項3記載の健康ヒータ。
【請求項5】
前記布生地層をほぼ同一形状の2区画に分離し、前記布生地層の2区画によって前記面状発熱体を介して対向する外側が形成されてなる請求項3又は請求項4記載の健康ヒータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−32110(P2011−32110A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177548(P2009−177548)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(507152899)エスエッチビー商事株式会社 (3)
【Fターム(参考)】