説明

焼結磁石の製造方法

【課題】Fe、CoおよびMnの酸化物、水酸化物、炭酸塩または硝酸塩を原料として、焼結磁石を製造する方法を提供する。
【解決手段】Fe、CoおよびMnの酸化物、水酸化物、炭酸塩または硝酸塩を原料とし、スピノーダル分解を利用して微細な角柱状の磁性相と角柱状の非磁性相とが交互に配列された構造を有する焼結磁石を得ることにより、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結磁石の製造方法およびこの方法によって得られる焼結磁石に関する。
より詳細には、本発明は、Fe、CoおよびMnの酸化物、水酸化物、炭酸塩または硝酸塩を原料とし、スピノーダル分解を利用して焼結磁石を製造する方法、ならびにこの方法によって得られる、角柱状の磁性相と角柱状の非磁性相とが交互に配列された構造を有する焼結磁石に関する。
【背景技術】
【0002】
フェライト磁石に代表される焼結磁石は、酸化鉄などの金属化合物を原料として、これらを粉砕・混合した後に成型して焼成し、この焼成物を強力な磁場の印加により着磁させることにより得られる(特許文献1)。
また、Fe‐Cr‐Co系合金やCu‐Ni‐Fe系合金などを原料とする合金磁石は、原料の合金に磁場を印加しながら熱処理することによりスピノーダル分解させて磁気特性を高めた後、さらなる着磁工程を経て得られる(特許文献2および3)。
【0003】
上記のとおり、一般に磁石の製造には、磁性材料を磁化するための着磁工程が必須であり、そのための装置が必要となる。この着磁用装置は、強力な磁場を発生させるために大量の電力を必要とし、装置自体も高価である。
したがって、着磁工程を経ないで磁石を製造できれば、磁石の製造コストが大幅に低減される。
【0004】
そこで、本発明者らは、着磁用装置によって外部から磁場を印加する方法とは異なった磁性化手段を検討し、スピノーダル分解に着目した。
上記のとおり、合金磁石の製造において磁気特性を高めるためにスピノーダル分解を利用し得ることは、従来知られている。しかし、スピノーダル分解を利用することにより良好な磁気特性を有する焼結磁石が得られることは、これまでに知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−112029号公報
【特許文献2】特開平7−316646号公報
【特許文献3】特開平10−163054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、Fe、CoおよびMnの酸化物、水酸化物、炭酸塩または硝酸塩を原料として、焼結磁石を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、Fe、CoおよびMnの酸化物、水酸化物、炭酸塩または硝酸塩を原料とする焼成物をスピノーダル分解することにより、良好な磁気特性を有する焼結磁石が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、
(1)Fe、CoおよびMnから選択される1種または2種以上の元素を含む酸化物、水酸化物、炭酸塩または硝酸塩の粉末を混合し、Fe、CoおよびMnを含む原料混合物を得る工程、
(2)上記で得た原料混合物を仮焼きして仮焼き物を得る工程、
(3)上記で得た仮焼き物を粉砕した後、粉砕物を成型して成型物を得る工程、
(4)上記で得た成型物を焼成して焼成物を得る工程、および
(5)上記で得た焼成物をスピノーダル分解に付す工程
を含む、焼結磁石の製造方法が提供される。
【0009】
本発明はまた、微細な角柱状の磁性相と角柱状の非磁性相とが交互に配列された構造を有することを特徴とする、上記の方法により得られる焼結磁石を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、Fe、CoおよびMnの酸化物、水酸化物、炭酸塩または硝酸塩を原料として、スピノーダル分解を利用することにより、良好な磁気特性を有する焼結磁石を製造することができる。
したがって、従来、磁石の製造に必要とされていた着磁用装置を用いる着磁工程を省くことができ、磁石の製造コストを大幅に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の焼結磁石の構造を示す模式図である。
【図2】第4工程で得られた焼成物の組成を示したEDS分析結果である。
【図3】本発明の焼結磁石の微細構造(x−y面)を示す電子顕微鏡写真である。
【図4】本発明の焼結磁石の微細構造(x−y面およびy−z面)を示す電子顕微鏡写真である。
【図5】本発明の焼結磁石の磁性相および非磁性相の組成を示したEDS分析結果である。
【図6】本発明の焼結磁石の磁気特性を示した磁気ヒステリシス曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、本発明の方法で得られる焼結磁石の構造を模式的に示す。本発明の方法によれば、図1のAに示すような、角柱状の磁性相と角柱状の非磁性相とが交互に配列された構造(以下、「角柱状CB構造」ともいう)を有する焼結磁石が得られる。
そして、上記の構造を有する本発明の焼結磁石のx−y面は、図1のBに示すように、磁性相と非磁性相とがチェッカーボード(CB)のように配置された構造(以下、「CB構造」ともいう)として観察される。
【0013】
本発明の焼結磁石は、以下の方法により製造することができる。なお、本発明の方法によれば、角柱状CB構造を部分的に有さない焼結磁石も得られるが、このような場合も本発明の範囲に含まれる。
【0014】
第1工程では、Fe、CoおよびMnから選択される1種または2種以上の元素を含む酸化物、水酸化物、炭酸塩または硝酸塩を混合することにより、Fe、CoおよびMnを含む原料混合物が得られる。
【0015】
原料物質として用いられるFe、Co、Mnの酸化物としては、例えば、FeO、Fe23、Fe34、CoO、Co34、MnO、MnO2などが挙げられ、水酸化物としては、例えば、Fe(OH)2、Fe(OH)3、Co(OH)2、Co(OH)3、Mn(OH)2などが挙げられ、炭酸塩としては、例えば、FeCO3、CoCO3、MnCO3などが挙げられ、硝酸塩としては、例えば、Fe(NO32、Fe(NO33、Co(NO32、Co(NO33、Mn(NO32などが挙げられる。
これらの原料物質は、無水物であってもよく、水和物であってもよい。
【0016】
上記の原料物質の組み合わせは、原料混合物がFe、CoおよびMnを含むかぎり、特に限定されず、例えばFe23、Co34およびMnO2の組み合わせが挙げられる。
また、原料物質の混合割合は、原料混合物を焼成した際に予測される化学反応に基づいて、第4工程で得られる焼成物が組成式Co0.6FexMn2.4‐x4(0.7≦x≦1.9)で表わされる組成(モル比)となるように各物質の分量を計算することによって決定できる。
例えば、上記の組成を有する焼成物を得ようとする場合、Fe23、Co34およびMnO2をx/2:0.2:(2.4−x)の化学量論比(モル比;ただし、0.7≦x≦1.9)となる各物質の分量を計算する。
【0017】
上記の原料物質の形状は、混合のしやすさから粉末であることが好ましい。原料粉末の粒径は特に限定されないが、一般に0.1〜5.0μmであるのが好ましい。該粉末が水分を含んでいる場合には、秤量前に加熱して水分を除去してもよい。
【0018】
第2工程では、上記で得られる原料混合物を仮焼きした後、空気焼入れすることにより仮焼き物が得られる。仮焼きは、通常、空気中のような酸素含有雰囲気中で行われる。
仮焼き温度は、一般に850〜1150℃であり、好ましくは900〜1100℃、より好ましくは950〜1050℃である。
仮焼き温度の保持時間は、一般に0.5〜25時間であり、好ましくは1〜20時間、より好ましくは5〜15時間である。
得られた仮焼き物の空気焼入れの際の冷却は、例えば、放冷、衝風冷却などにより行われる。
【0019】
上記の仮焼きは、1回〜複数回行われる。仮焼きを複数回行なう場合、仮焼き温度および保持時間は、毎回同じでもよく、異なっていてもよい。
さらに、先の仮焼きで得られた仮焼き物を一旦粉砕して混合し、この粉砕混合物を一軸プレス機などによりペレット成型してから、後の仮焼きを行ってもよい。このような操作を繰り返し行えば、焼結密度を高めることができる。
ペレット成型する場合の成型時の圧力および加圧時間は特に限定されないが、20kg/mm2の圧力で60秒間加圧するのが好ましい。
【0020】
第3工程では、上記で得られる仮焼き物を粉砕した後、所望の形状に成型することにより成型物が得られる。
仮焼き物の粉砕は、一般に粗粉砕、次いで微粉砕と段階的に行われる。粗粉砕工程では、仮焼き物が振動ミルなどによって粉砕される。得られる粗粉砕物の平均粒径は、特に限定されないが、2.0〜5.0μmが好ましい。
次いで、微粉砕工程では、上記の粗粉砕物がボールミルやジェットミルなどにより、さらに微細に粉砕される。得られる微粉砕物の平均粒径は、特に限定されないが、0.1〜2.0μmが好ましい。
【0021】
得られる微粉砕物の所望の形状への成型は、乾式成型または湿式成型により行われる。乾式成型は、一軸加圧法や冷間静水圧法など、公知の方法により行われる。
湿式成型は、水またはトルエンやキシレンなどの有機溶媒を分散媒として微粉砕物を湿式成型用のスラリとし、これを押出し法や加圧鋳込み法など、公知の方法により所望の形状に成型することができる。上記の湿式成型用のスラリには、グルコン酸、ソルビトール、オレイン酸などの界面活性剤を分散剤として適宜添加してもよい。
加圧成型時の圧力は、特に限定されないが、一般に0.1〜2.0t/cm2の圧力、好ましくは0.2〜1.0t/cm2の圧力が適用される。
【0022】
第4工程では、上記で得られる成型物を焼成した後、水焼入れすることにより焼成物が得られる。該焼成物は、通常、組成式Co0.6FexMn2.4‐x4(0.7≦x≦1.9)で表わされる組成(モル比)を有する。
焼成は、通常、空気中のような酸素含有雰囲気中で行われる。焼成時の温度は、一般に1050〜1400℃であり、好ましくは1100〜1300℃、より好ましくは1100〜1200℃である。
焼成温度の保持時間は、一般に10〜40時間であり、好ましくは15〜35時間、より好ましくは20〜30時間である。
【0023】
湿式成型により得られる成型物を焼成する場合は、焼成時の割れを防ぐために、該成型物を焼成前に十分に乾燥させて、水分や成型時に添加された界面活性剤などを除去しておくのが好ましい。この乾燥は、通常、室温から100〜500℃まで2〜10℃/時間の昇温速度で加熱することにより行われる。
【0024】
上記の焼成により得られる焼成物を、次いで水中に入れて焼入れする。焼入れに用いる水の温度は0℃(氷水)〜10℃が好ましい。特に、氷水を用いて水焼入れすることが好ましい。
【0025】
第5工程のスピノーダル分解は、上記で得られる焼成物をスピノーダル分解温度まで加熱し、該温度で保持することにより行われる。
ここで、スピノーダル分解という語は、2成分系または多成分系の固溶体において核形成および結晶成長の過程を経ないで起こる相分離の現象を意味する。
【0026】
スピノーダル分解時の温度は、通常、300〜600℃であればよく、特に限定されないが、好ましくは330〜500℃、より好ましくは350〜400℃である。
その際の昇温速度は特に限定されないが、好ましくは1〜5℃/分、より好ましくは2〜4℃/分である。
スピノーダル分解温度での保持時間は、通常、10〜730時間であればよく、特に限定されないが、好ましくは15〜700時間、より好ましくは20〜650時間、さらに好ましくは30〜600時間である。
【0027】
このスピノーダル分解温度での加熱処理は、アニール処理とも呼ばれ、通常、空気中のような酸素含有雰囲気中で行われる。このアニール処理によって相分離現象が起こり、焼成物が角柱状CB構造を形成する。
【0028】
上記の構造中の磁性相および非磁性相の組成(モル比)は、それぞれ組成式Co0.6FexMn2.4‐x4(1.2<x<2.4)および組成式Co0.6FexMn2.4‐x4(0<x<1.2)で表わすことができる。
なお、この組成は、透過型電子顕微鏡を用いるEDS(Energy Dispersive X-ray Spectrometer)分析により測定することができる。
【0029】
スピノーダル分解温度での保持時間が10時間より短いと、角柱状CB構造が十分に形成されていないため、所望の保磁力を有する焼結磁石が得られ難い。逆に上記の保持時間が730時間よりも長いと、角柱状CB構造が崩壊して、焼結磁石の保磁力が著しく低下する恐れがあるので好ましくない。
【0030】
上記のアニール処理後の焼結磁石は、次いで水中に入れて冷却される。冷却水の温度は0℃(氷水)〜10℃が好ましい。
【0031】
本発明の方法によって得られる焼結磁石は、良好な残留磁化(20〜60kG)および優れた保磁力(3000〜5000Oe)を有する。これは、本発明の焼結磁石が角柱状CB構造を有しているので、磁壁のピンニングが起こり、その結果として保磁力が増加するためと考えられる。
なお、上記の残留磁化や保磁力などの磁気特性の測定は、SQUID(Superconducting Quantum Interference Device)磁束計を用いる公知の方法により行うことができる。
【0032】
以下に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0033】
(1)原料物質の混合
原料として、Fe23、Co34およびMnO2の各粉末を用いた。
まず、Fe23(高純度化学社製)を600℃に加熱して水分を除去した。この加熱処理したFe23粉末にCo34粉末(和光純薬社製)およびMnO2粉末(高純度化学社製)をそれぞれ化学量論比から算出した量を加えて、1時間撹拌混合した。
【0034】
(2)仮焼き
上記で得た原料粉末混合物を、ニュートンプレス(NPaシステム製)を用いて20kg/mm2の圧力で60秒間加圧してペレット化した。この原料ペレットをマフッル炉(ISUZU製)に入れて、室温から950℃の仮焼き温度まで加熱し、該温度で5時間保持した。得られた仮焼き物を空気中で放冷して焼入れした。
次いで、この仮焼き物を粉砕し、1時間撹拌混合した後、上記と同様にペレット化して、室温から1000℃の仮焼き温度まで加熱し、該温度で10時間保持し、得られた仮焼き物を空気中で放冷して焼入れした。
さらに、この仮焼き物を上記と同様にして粉砕、混合後、ペレット化して室温から1050℃の仮焼き温度まで加熱し、該温度で10時間保持し、得られた仮焼き物を空気中で放冷して焼入れした。
【0035】
(3)成型
上記で得られた仮焼き物を粉砕、混合し、得られた粉砕物をニュートンプレスにより20kg/mm2の圧力で加圧して成型した。
【0036】
(4)焼成
上記で得られた成型物をボートSSA−H(ニッカト製)に入れて、室温から1150℃の焼成温度まで加熱し、該温度で24時間保持した後、氷水中に入れて冷却した。
得られた焼成物を、透過型電子顕微鏡JEM−2010(日本電子社製)を用いたEDS分析により測定したところ、組成式Co0.6Fe0.9Mn1.54で表わされる組成(モル比)であった。図2に、上記の焼成物の組成を表わすEDS分析結果を示す。
【0037】
(5)アニール処理
上記で得られた焼成物をカンタル炉に入れて、昇温速度2.5℃/分で室温から375℃のスピノーダル分解温度まで加熱し、該温度を10時間(実施例1)保持した後、氷水中に入れて冷却し、焼結磁石を得た。
図3のAに、上記で得られた焼結磁石の微細構造(x−y面)の電子顕微鏡写真を示す。図3のAより、該焼結磁石は、ナノスケールのCB構造を形成していることがわかる。
【0038】
また、上記の(1)〜(4)と同様にして焼成物を作製し、これを昇温速度2.5℃/分で室温から375℃のスピノーダル分解温度まで加熱し、該温度で1時間(比較例1)、80時間(実施例2)、340時間(実施例3)、730時間(実施例4)および1000時間(比較例2)保持した後、氷水中に入れて冷却し、それぞれ焼結磁石を得た。
【0039】
図3のB〜Fに、これらの微細構造(x−y面)の電子顕微鏡写真を示す。図3のB〜Dより、実施例2〜4で得られた焼結磁石は、いずれもナノスケールのCB構造を形成していることがわかる。また、アニール処理時間に比例して、CB構造のサイズが大きくなっていることがわかる。
一方、アニール処理時間が1時間の比較例1で得られた焼結磁石は、図3のEに示されているように、CB構造が形成されていない。また、アニール処理時間が1000時間の比較例2で得られた焼結磁石は、図3のFに示されているように、CB構造が崩壊してラメラ状構造になっていることがわかる。
【0040】
実施例3で340時間のアニール処理を行って得られた焼結磁石のx−y面およびy−z面の微細構造の電子顕微鏡写真を図4に示す。図4のAに示されているように、該焼結磁石はCB構造を形成しており、また図4のBに示されているように、該焼結磁石は磁性相と非磁性相との縦筋を形成している。これらのことから、本発明の焼結磁石は角柱状CB構造を有していることがわかる。
【0041】
実施例4で730時間のアニール処理を行って得られた焼結磁石の磁性相および非磁性相のEDS分析の結果を図5に示す。図5のAは磁性相が組成式Co0.6Fe1.4Mn1.04で表わされるFe−richな組成であることを示し、図5のBは非磁性相が組成式Co0.6Fe0.4Mn2.04で表わされるMn−richな組成であることを示す。
【0042】
SQUID磁束計(Quantum Design製)を用いて測定した本発明の焼結磁石の磁気特性を表わす磁気ヒステリシス曲線を図6に示す。測定は、第4工程で得られた焼成物ならびにアニール処理(80時間:実施例2または730時間:実施例4)を行って得られた本発明の焼結磁石を試料として用い、室温(300K)で行った。
図6より、本発明の焼結磁石は、20〜60emu/gの残留磁化を有することがわかる。また、アニール処理を施す前の焼成物は保磁力をほとんど有していないが、アニール処理後の本発明の焼結磁石は、3000〜5000Oeの保磁力を有することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、Fe、CoおよびMnの酸化物、水酸化物、炭酸塩または硝酸塩を原料とし、スピノーダル分解を利用して、焼結磁石を製造することができる。
この方法により得られる焼結磁石は、良好な磁気特性を有するため、モーター、パワーウインドー、ドアロックなどの自動車用部品、冷蔵庫やエアコンなどのコンプレッサ、スピーカーやヘッドホン用のマグネットなど、従来のフェライト磁石と同様に幅広い分野で好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)Fe、CoおよびMnから選択される1種または2種以上の元素を含む酸化物、水酸化物、炭酸塩または硝酸塩の粉末を混合し、Fe、CoおよびMnを含む原料混合物を得る工程、
(2)上記で得た原料混合物を仮焼きして仮焼き物を得る工程、
(3)上記で得た仮焼き物を粉砕した後、粉砕物を成型して成型物を得る工程、
(4)上記で得た成型物を焼成して焼成物を得る工程、および
(5)上記で得た焼成物をスピノーダル分解に付す工程
を含む、焼結磁石の製造方法。
【請求項2】
工程(4)で、組成式Co0.6FexMn2.4‐x4(0.7≦x≦1.9)で表わされる組成からなる焼成物が得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スピノーダル分解が、300〜600℃の温度で10〜730時間加熱することにより行われる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法により得られ、角柱状の磁性相と角柱状の非磁性相とが交互に配列された構造を有することを特徴とする焼結磁石。
【請求項5】
角柱状の磁性相が、組成式Co0.6FexMn2.4‐x4(1.2<x<2.4)で表わされる組成からなり、
角柱状の非磁性相が、組成式Co0.6FexMn2.4‐x4(0<x<1.2)で表わされる組成からなる、請求項4に記載の焼結磁石。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−278054(P2010−278054A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126448(P2009−126448)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】