焼結鋼製自己潤滑性生成物を形成するための粒状材料の組成物、焼結鋼製自己潤滑性生成物、および焼結鋼製自己潤滑性生成物を得る方法
本組成物は、主要粒状金属材料としての鉄と、鉄構造マトリクスを硬化する機能を持つ少なくとも1種の粒状合金要素と、および前駆体非金属粒状化合物、(一般に炭化物または炭酸塩であり、焼結中の自身の分離に際して、グラファイトの団塊を生成する能力があるもの)を含み、団塊の形成は、前駆体化合物が鉄構造マトリクスのα鉄相を安定化する元素を含む場合にこれ自身により促進されるか、または焼結中にα鉄相を安定化する元素で定義される追加の合金要素を組成物中に含ませることにより促進される。本組成物は、圧縮により、または粉末射出し成形により形成することができる。本発明の方法は、本組成物から自己潤滑性焼結鋼製生成物を得ることにつながる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、粒状材料(金属粉および非金属粉の形のもの)の組成物から形成され(conformed)、焼結されるように設計された、完成品(部品)および半完成品(複数の物品)を製造する具体的な技術に関し、これらの完成品および半完成品は、焼結工程中に形成される生成物の金属性構造マトリクスを構成する要素に加えて、粒子形の固形潤滑剤の前駆体相を含み、この固形潤滑剤は、焼結工程中の分離により、金属性マトリクスの体積中に固形潤滑剤の沈殿を生じることで、連続した金属性マトリクスである自己潤滑性生成物の微小構造の形成をもたらし、この微小構造により、焼結生成物は、焼結した部品または生成物の高機械的強度および高硬度と連携した低摩擦係数を有することができる。本発明は、焼結中に「in situ」で自己潤滑性材料を形成するこの冶金学的組成物、この組成物から得られる焼結鋼の部品または生成物、ならびに粉末冶金によりこの部品または生成物を得るための具体的な代替技法または方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
技術開発が進んだ段階においては、それぞれ特定の用途群用に具体的に設計された、高機能性材料の開発が必要になる。複数の機械工学用途では、同時に、低摩擦係数と連携した高機械的強度および高摩耗強度を有する材料が必要とされている。
【0003】
地球上で生み出される機械エネルギー全体のうち約35%が、潤滑不足で失われて、摩擦による熱に変換されていると見積もられている。このエネルギー損失とは別に、生じた熱による加熱で機械系の性能が損なわれている。従って、摩擦下にある機械部品で低摩擦係数を維持することは、廃棄物質の減少による環境保全への寄与に加えて、エネルギーの経済性だけでなく、この部品の耐久性およびこの部品が稼働する機械系の耐久性の向上にも非常に重要である。
【0004】
相対的に動いている表面間の摩耗および摩擦を減少させるために用いられている方法は、この表面間に潤滑層を挟むことで表面同士を離した状態に維持することである。可能な潤滑法の中で、流体力学的方法(流体潤滑剤)が最も用いられる。流体力学的潤滑では、相対的に動いている表面を完全に分離する油膜が形成される。しかしながら、流体潤滑剤の使用には、例えば極高温または極低温での用途、流体潤滑剤が化学的に反応する恐れがある用途、および流体潤滑剤が混入物として作用する恐れがある場合など、通常、問題が伴うことを指摘しておくべきである。この他、循環の停止から生じる潤滑が限定された状況、または連続した油膜の形成が不可能な状況では、部品同士の接触が生じ、その結果部品に摩耗が生じる。
【0005】
乾式潤滑、即ち固形潤滑剤を用いるものは、構成要素表面同士の接触を防ぐ固形潤滑剤層の存在により作用するが、この形成した層の破裂がないので、従来の潤滑の代替法となる。
【0006】
固形潤滑剤は、問題の多い潤滑領域でよく受け入れられてきている。これらは、従来の潤滑剤を用いることができない、極温中、高負荷条件下、および化学反応性環境中で、用いることができる。そのうえ、乾式潤滑(固形潤滑剤)は、環境負荷が少ない代替法である。
【0007】
固形潤滑剤は、トライボロジー対の構成要素の表面上に沈着もしくは生成したまたは構成要素の材料の体積に組み込まれた膜(または層)の形で、第二相粒子の形で、構成要素に対して用いることができる。特定の膜または層が用いられる場合、これらが摩耗すると、金属同士の接触が生じ、保護されていない対面する表面の、および相対的に動いている構成要素の急速な摩耗が続いて起こる。膜または層が用いられるこれらの解決法において、潤滑剤の交換の難しさ、ならびに潤滑剤の酸化および分解をさらに考慮するべきである。
【0008】
従って、材料、即ち構成要素の寿命を延ばすことを可能にするより適切な解決法は、低摩擦係数の複合材料製の構成要素構造体を形成するように、構成要素を構成する材料の体積中に固形潤滑剤を組み込むことである。連続複合材料を得る目的において、これは、粉末冶金法、即ち、圧縮(プレス、ロール、押出し成形、および射出し成形など)および続く焼結による粉末混合物の形成(conformation)により可能である。連続複合材料は、通常、すでに最終的な形状および寸法になる(完成品)か、または最終的な形状および寸法に近いものになる(半完成品)。
【0009】
低摩擦係数を示す自己潤滑性の機械構成要素(自己潤滑性軸受筒など)は、粉末冶金法により、固形潤滑剤粉末と混合した焼結部品の金属性構造マトリクスを形成する金属粉から製造される。この構成要素は、さまざまな家庭用器具および小型装置(プリンター、電動かみそり、ドリル、ミキサーなど)で用いられているものである。構造マトリクスで最もよく知られた先行技術の解決法は、青銅、銅、銀、および純鉄を用いる。固形潤滑剤として用いられるものには以下がある:モリブデンジスルフィド(MoS2)、銀(Ag)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびモリブデンジセレニド(MoSe2)。固形潤滑剤粒子、グラファイト粉末、セレンおよびモリブデンジスルフィド、ならびに低融点金属などを含有する青銅および銅マトリクスを主に用いる、この種の自己潤滑性材料でできた軸受筒が、複数の工学的用途において、数十年にわたり製造および使用されてきている。
【0010】
しかしながら、こうした部品は、固形潤滑剤粒子の体積含有量が高い(25%から40%)結果として高機械的強度を示さない。高い体積含有量は、部品の機械的強度の元となっている微小構造要素であるマトリクス相の連続性の度合いを低下させる。固形潤滑剤のこの高含有量は、部品が高機械的強度を有することが必要とされる用途用において、金属性マトリクスの機械的性質(強度および硬度)と微小構造パラメーター(マトリクス中に分散した固形潤滑剤粒子の大きさ、および形成された複合材料中のこれら粒子間の平均自由経路など)の両方が最適化されていない状況では、低摩擦係数を得るために必要であると考えられてきた。剪断に対する強度が本質的に低い固形潤滑剤の容積百分率が高いことは、金属性マトリクスの機械的強度に寄与しない。そのうえさらに、固形潤滑剤粒子は、粉末混合物を機械的に均質化する工程(ミキサー中で行われる。)および混合物を圧縮する工程中に生じる剪断力の働きとして容易に粒子自身を剪断してこの形状を変化させ、形成された自己潤滑性複合体の金属性構造マトリクスの連続性の度合いをさらに低下させる。
【0011】
そのうえ、金属性マトリクスの硬度が低いことで、焼結した材料または生成物の接触表面で、固形潤滑剤粒子が徐々に妨害されていく。従って、十分な低摩擦係数を維持する目的で、従来、乾燥自己潤滑性複合材料の組成物に固形潤滑剤が高い容積百分率で用いられてきた。
【0012】
上記のものと比較して一部差別化されておりさらに発展した計画が、US6890368Aに記載されている。この特許は、十分なけん引耐性(Rm≧400MPa)および0.3未満の摩擦係数を持つ、300℃から600℃の範囲の温度で用いるための自己潤滑性複合材料を提案している。この文書は、この体積中に固形潤滑剤粒子として主に六方晶窒化ホウ素、グラファイト、またはこれらの混合物を含み金属性構造マトリクスを形成する粒状材料の混合物を焼結して低摩擦係数の部品または生成物を得る解決法を示し、この材料が十分なけん引耐性(Rm≧400MPa)および0.3未満の摩擦係数を持ち、300℃から600℃の範囲の温度で用いるのに適していると記載している。
【0013】
2008年9月12日出願の、本発明と同一の出願人名による、ブラジル国特許出願(仮番号018080057518)に記載されるとおり、構造マトリクス粉末であると同時に固形潤滑剤粉末(例えば、六方晶窒化ホウ素およびグラファイトなど)である粉末混合物の合併(consolidation)から得られる部品または生成物は、焼結後、機械的強度が低く構造がもろい。
【0014】
上記の欠点は、製造しようとする部品または生成物の混合および形成(緻密化)工程中に、構造マトリクスの粉末粒子間の固形潤滑剤相が、剪断により、不適切に拡散(分散)することに由来する。固形潤滑剤は、混合および形成(緻密化)工程中に、剪断により、構造マトリクス相の粒子間に拡散し、この粒子を取り囲む傾向がある。これにより、固形潤滑剤は、この低い剪断ストレスを上回るストレスを受ける。
【0015】
一方で、剪断により形成された、構造マトリクスの粒子(粉末粒子)間の固形潤滑剤層の存在は、焼結中に複合体の構造マトリクスを形成するこれら粒子間の金属的接触の形成を損なう。このことが、複合材料の構造マトリクス相の連続性の度合いの低下に寄与し、材料および得られる生成物を構造的にもろくする。
【0016】
このような問題は、上記の先行するブラジル国特許出願に提案される解決法でほとんど解決することができ、先行技術の解決法よりも高い機械的強度を持つ複合材料がもたらされる。
【0017】
しかしながら、本発明と同一出願人による上記の先行特許出願に提案される解決法では、非金属粒状固形潤滑剤(例えば、六方晶窒化ホウ素、グラファイト、またはこの両方)を、焼結する複合生成物の構造マトリクスを形成する金属材料と混合しなければならず、さらに、ばらばらの粒子中、非金属粒状固形潤滑剤を塊にして、非金属粒状固形潤滑剤が構造マトリクス相の粒子間へ剪断により拡散する(非金属粒状固形潤滑剤は、製造しようとする部品または生成物の混合および形成(緻密化)工程中にこれら粒子を取り囲み、部品または生成物をもろくする傾向がある。)のを防ぐ目的で、冶金学的組成物の焼結工程中に、構造マトリクスを形成する粒状材料と非金属粒状固形潤滑剤間に液相を形成するように、少なくとも1種の粒状合金要素の添加を必要とする。
【0018】
上記の欠点と向き合って、焼結しようとする冶金学的組成物への固形潤滑剤粒子の前混合も、冶金学的組成物に合金要素を添加して、焼結中、組成物中に液相を形成する必要もない解決法を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第6890368号明細書
【特許文献2】ブラジル国特許仮出願番号018080057518
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従って、構造マトリクスの連続性の度合いが高く、高機械的強度および高硬度を示し、焼結で生じた固形潤滑剤相の分布が良好な、自己潤滑性焼結鋼製の完成品または半完成品を形成することをこれ自身がこの焼結中に可能にする金属性構造マトリクスを含む、焼結鋼形成用の粒状材料の組成物を提供することが、本発明の目的である。
【0021】
プレスもしくはロールなどにより、または射出し成形により粉末圧縮し、続いて上記に定義される組成物を焼結することによる形成(conformation)から得られる、金属性構造マトリクスの連続性の度合いが高く、低摩擦係数および高機械的強度および高硬度を示し、焼結で生じたグラファイトの固形潤滑剤相の分布が良好な、自己潤滑性焼結鋼製の生成物を提供することが、同じく、本発明の目的である。
【0022】
上記粒状材料の組成物から自己潤滑性焼結鋼(上記で定義されるものなど)製の生成物を得る方法を提供することも、本発明の別の目的であり、この方法は、焼結しようとする冶金学的組成物への固形潤滑剤粒子の前混合も、冶金学的組成物に合金要素を添加して、焼結中、組成物中に液相を形成することも含まない。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第一の態様において、上記の目的は、圧縮および射出し成形操作のうちの1つによりあらかじめ形成される、自己潤滑性焼結鋼製生成物製造用の粒状材料の組成物を通じて達成され、この組成物は以下を含む:主要粒状金属材料として鉄;鉄を強化し、鉄と鉄構造マトリクスを形成する機能を持つ少なくとも1種の粒状合金要素;および、焼結中に生成物中に形成されるグラファイトの固形潤滑剤相の前駆体である非金属化合物。
【0024】
本発明を行うやり方において、非金属粒状化合物は、鉄構造マトリクスのα鉄相を安定化する元素を含む、炭化物型または炭酸塩型の化合物である。本発明を行う別のやり方において、非金属粒状化合物は、α鉄相を安定化するどのような元素も欠乏しており、従って冶金学的組成物に、α鉄相を安定化する機能を有する追加の粒状合金要素を含む必要がある。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、部品または生成物の焼結工程中に、前駆体相の分離によるグラファイト粒子の形成が起こる。本発明を行うための前駆体相の例として、以下が挙げられる:炭化ケイ素(SiC)、炭化モリブデン(Mo2C)、炭化クロム(Cr3C2)など。新規複合材料を構成できる粉末混合物の調製工程において、微粉粒子(好ましくは5から25μm)の形の炭化物が、鉄粉(主要構成要素)および粉末混合物中に存在するその他の合金要素の粉末と混合される。鉄マトリクス中にグラファイト団塊の沈殿を引き起こし、自己潤滑性焼結鋼を形成すると最も考えられる炭化物は、α鉄相を強く安定化することができる元素をこの式中に有するもの(例えば、元素Siが存在する炭化ケイ素(SiC))である。焼結工程中、即ち部品または生成物の焼結温度において、炭化ケイ素(SiC)は分離して、元素のケイ素は、鉄中、即ち鉄構造マトリクス中の固溶体となる。SiCの分離が進行するにつれて、鉄マトリクス中の分離中のSiC粒子の周囲に安定化Siの量が増加する。鉄ケイ素平衡図で確認できるとおり、元素のケイ素はα鉄相を強く安定化する;Fe−Si図のループα←→(α+γ)の頂点は、Siが2.15重量%(4.2%at)の値で生じる。従って、典型的には1125℃から1250℃で行われる焼結鋼の焼結中、分離中のSiC粒子の周りの鉄に溶解したケイ素の濃度が、γ相の溶解限界に達すると、γ鉄からα鉄への変換が起こる。SiC分離方法の第一の例では、Si濃度が分離中のSiC粒子の周りのα相を安定化するのに必要な値に到達してない間、分離から生じた炭素も固溶体となりマトリクス内部に拡散するが、分離中のSiC粒子の周りの鉄マトリクスがα相に変換されるとすぐに、炭素を溶解する方法は中断される。なぜなら、α鉄相への炭素の溶解性は非常に低いからである(最大値は727℃で0.022重量%)。従って、マトリクスの残りの部分はγ相として存在し続けることができるものの、炭化物分離の結果として放出される炭素はグラファイトの団塊を形成し、この団塊はα鉄の層で取り囲まれる。
【0026】
添付の図面を参照して、本発明を以下に説明するが、図は本発明の実施形態の例として与えられるものであり、これらの図において:
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】連続して模式的に、鉄粉(マトリクス)と混合した炭化物粒子の分離に由来する、焼結工程中の微小構造の進化を表す。図1Aは、方法の初期相における材料の二相微小構造を表し、ここでは炭化物粒子は未変化のままである、即ち反応はまだ始まっていないが、図1Bは炭化物の分離がすでに部分的に起こっている状況を表し、図1Cは分離がすでに完了した状況を示す。
【図1B】連続して模式的に、鉄粉(マトリクス)と混合した炭化物粒子の分離に由来する、焼結工程中の微小構造の進化を表す。図1Aは、方法の初期相における材料の二相微小構造を表し、ここでは炭化物粒子は未変化のままである、即ち反応はまだ始まっていないが、図1Bは炭化物の分離がすでに部分的に起こっている状況を表し、図1Cは分離がすでに完了した状況を示す。
【図1C】連続して模式的に、鉄粉(マトリクス)と混合した炭化物粒子の分離に由来する、焼結工程中の微小構造の進化を表す。図1Aは、方法の初期相における材料の二相微小構造を表し、ここでは炭化物粒子は未変化のままである、即ち反応はまだ始まっていないが、図1Bは炭化物の分離がすでに部分的に起こっている状況を表し、図1Cは分離がすでに完了した状況を示す。
【図2】複合材料のマトリクスの連続性の度合いを高く維持することを可能にする、低摩擦係数の複合材料の体積中、即ち鋼中の固形潤滑剤粒子または団塊の分布について望まれる理想的な状況(微小構造モデル)を模式的に示す;理想的な状況において、固形潤滑剤は、粒子または団塊間に定常平均自由経路「λ」を持つ、複合材料の体積中に均一に分布するばらばらの粒子または団塊の形でなければならない。
【図3】炭化物粒子の分離後の、すでに焼結した状態の、本発明の材料の微小構造の図であり、α相で形成された透明層で取り囲まれたグラファイトの団塊および複合材料のマトリクスを示す。
【図4】電界放出型走査型電子顕微鏡(FEG−SEM)で高倍率(20,000倍)で得られる画像による、焼結中に生じた団塊の内部のグラファイト構造の詳細を示し、この画像は、ナノメートルの厚さのグラファイト外被(skin)またはフレークの形の構造の証拠である。
【図5】簡略化された図で模式的に、後に焼結する部品または生成物の形成における圧縮の例を示し、この圧縮は、焼結する生成物の向かい合う2つの面に自己潤滑性層を提供するように行われる;この方法は、焼結した部品の一面以上において自己潤滑性層が一層のみであることが望まれる場合に用いられるべきである。
【図6A】生成物の例を示し、この形成は、自己潤滑性複合材料製棒、自己潤滑性複合材料製管、および自己潤滑性材料の外層で覆われた合金製芯のある棒それぞれを押ししすることにより行われる圧縮で得られる。
【図6B】生成物の例を示し、この形成は、自己潤滑性複合材料製棒、自己潤滑性複合材料製管、および自己潤滑性材料の外層で覆われた合金製芯のある棒それぞれを押ししすることにより行われる圧縮で得られる。
【図6C】生成物の例を示し、この形成は、自己潤滑性複合材料製棒、自己潤滑性複合材料製管、および自己潤滑性材料の外層で覆われた合金製芯のある棒それぞれを押ししすることにより行われる圧縮で得られる。
【図7】簡略化された図で模式的に、後に焼結する部品または生成物の形成における圧縮の例を示し、この圧縮は、合金製板またはストリップの向かい合う面に自己潤滑性複合材料をロールで付着させることで行われる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の記述
すでに上記に示したとおり、本発明の目的の1つは、粒状材料の組成物を提供することであり、先行技術の教示で得られる生成物に対して高い硬度、機械的強度、および低下した摩擦係数を示す生成物を得る目的で、この組成物は、焼結操作を受け入れられるように定義された形状(部品)をとることができるように、圧縮(プレス、ロール)により、または粉末の押出し成形もしくは射出し成形により均一に混合および形成(高密化)することができる。本発明の組成物は以下を含む:組成物の形成において優勢である主要粒状金属材料、および優勢材料を硬化する機能を持つ少なくとも1種の粒状合金要素、これらの構成要素は、焼結する複合生成物、即ち鋼中の構造マトリクスの形成に関与している;ならびに、前駆体粒状材料、これは焼結中に分離することにより固形潤滑剤の団塊を与えることができる。
【0029】
本発明に従って、図2に示すとおり、主要粒状金属材料は鉄であって鉄構造マトリクス10を定義するものであり、焼結中の分離により固形潤滑剤の団塊20を生じるための前駆体相は、炭化物または炭酸塩を主体とする化合物で、好ましくは鉄構造マトリクス10中のα鉄相を安定化する元素で形成されている。使用する前駆体相が、この組成中に、鉄構造マトリクス10中のα鉄相を安定化する元素を含まない場合、α鉄相を安定化するのに十分な量の具体的な追加合金要素も、本発明の材料の組成物に加えられるべきである。
【0030】
鉄構造マトリクスを硬化する機能を持つ合金要素は、例えば、クロム、モリブデン、炭素、ケイ素、リン、マンガン、およびニッケルから選択される元素のうちの1つで定義されるが、構造マトリクスに同じ機能をもたらす他の元素(バナジウムおよび銅など)、ならびに複数の合金要素を同時に使用できることが、理解されるべきである。本発明は、構成要素の相互拡散(化学的均質化)により、焼結中に形成される鉄構造マトリクスを硬化する機能をもたらすことができる合金硬化要素の提供を必要とするが、ただしこの態様は本明細書中例示される合金要素に限定されはしないことを強調しなければならない。
【0031】
図1A、図1B、図1C、および図2は、焼結中の炭化物(SiC)の分離の機能としての、複合体の微小構造の進化を複数工程で模式的に示す。図3は、複合材料の焼結後に形成されるこの微小構造の光学顕微鏡画像を示し、図4は、団塊内部に、ナノメートルの厚さの「外被またははく」の形で存在する沈殿グラファイトの構造を示す。この構造は、トライボロジー対の相対的に動く表面の界面上にトライボロジー層を形成するのに好都合であり、固体潤滑の効率を上げる。
【0032】
複合体を形成する粉末混合物中のα鉄相を安定化する他の合金要素の平行付加は、焼結操作中のマトリクス中のα相の発生を加速し、材料の体積中に混合された炭化物粒子の分離によりグラファイトの団塊20が生じる傾向を増加させる。
【0033】
炭化物分離に由来するα鉄相を安定化する合金要素は、分離中の粒子11の周りにα相の層12を形成するので、分離において炭素がマトリクス中に溶解するのを防ぐことに加えて、固溶体にあるときに、マトリクスの硬度を増加させるのにも寄与する;それにもかかわらず、鉄中の固溶体中のこれらの合金要素の存在により達せられる硬度の増加が不十分な場合、用途に必要な硬度および機械的強度を達成する目的で、焼結操作中にマトリクスに溶解するように、他の合金要素をさらに粉末混合物に加えるべきである。
【0034】
従って、本発明において、材料の金属性構造マトリクスは、粉末冶金による材料の加工中に、α鉄相を安定化する合金要素を含む固溶体(例えば、鉄粉と混合した炭化物の分離の結果としての鉄マトリクスに溶解したケイ素およびモリブデンなど)により自動的に硬化される鉄により形成される。
【0035】
これらの必然的に存在する安定化合金要素に加えて、マトリクスの機械的強度および硬度を調整する機能を持つ他の合金要素を、粉末混合物に加えてもよく、これにより焼結中に生成する乾燥自己潤滑性複合材料のトライボロジー的および機械的挙動に関して高い性能を達成することができる。鉄相の強力な安定剤であるSi、Mo、およびP元素の他に、マトリクスの機械的強度および硬度を高めるのに本発明で有利に用いられる他の合金要素の例として、Cr、Ni、Mn、W、V、およびCを挙げることができる。
【0036】
用いる炭化物の種類に応じて、本発明において粉末冶金による生成物の生成用に配合される粉末混合組成物は、2種の異なる代替形態で形成される:
代替形態1:鉄粉+焼結温度で分離によりグラファイトの団塊20を生成する、α鉄相を安定化する元素で形成されている炭化物粉末の粒子11(容積百分率≦10%で混合されている。)+鉄構造マトリクス10の硬度および強度を高める機能を有する合金要素と称する他の元素の粉末粒子;
代替形態2:鉄粉+α鉄相を安定化する元素で形成されていない炭化物粉末粒子(容積百分率≦10%で混合されている。)+炭化物の分離から生じる炭素が鉄マトリクスに溶解するのを防ぐ目的の、鉄マトリクスのα相を安定化する機能を有するα鉄相を安定化する合金要素の粉末+複合体の構造マトリクスの機械的性質を調整するために存在する他の合金要素。
【0037】
金属性鉄構造マトリクス10は、形成される複合材料に機械的強度を与える、組成物の唯一の微小構造要素であるので、この複合体のマトリクスの連続性の度合いが高くなるほど、この材料で製造された焼結物品または部品の機械的強度も高くなる。乾燥自己潤滑性焼結複合材料の金属性構造マトリクスの連続性の度合いの維持は、空隙率の低さに加えて、固形潤滑剤相の容積百分率が低いことを必要とする。なぜなら、固形潤滑剤相は材料の機械的強度に寄与せず、従って、焼結生成物の機械的強度に寄与しないからである。その他、材料の体積中に存在する固形潤滑剤は、体積中に均一に分布して、即ち鉄構造マトリクス10の内部に定常平均自由経路「λ」を持って、ばらばらの粒子または団塊20の形で分散しているべきである(図2を参照)。これにより、より大きな潤滑効率を生み出すことができ、それと同時に、マトリクスの連続性の度合いをより高く保証し、ひいては複合材料により高い機械的強度を保証する。
【0038】
部品の操作に際して(相対運動で摩擦を受けた場合)、必要な負荷容量を持つ機械的支持体として操作するだけではなく固形潤滑剤粒子が構造マトリクスの塑性変形により覆われることを防ぐことも目的として、材料の金属性マトリクスは、塑性変形に対する耐性が高いことが必要とされ、これにより固形潤滑剤が層を形成すべき界面に固形潤滑剤が拡散することを防ぐ。
【0039】
本発明に従って、α鉄相を安定化する追加の合金構成要素は、リン、ケイ素、コバルト、クロム、およびモリブデンから選択される少なくとも1種の元素で定義される。これらの元素は、焼結温度(約1125℃から約1250℃)でα鉄相を安定化するのに別々にまたは一緒になって作用するのに最も適切であるとみなされるものの、本発明は、炭素溶解を減ずる目的でα鉄相を安定化するという構想にあるのであって、用いる合金構成要素(単数または複数)は必然的に本明細書中例示されるものであるという事実にあるのではないことが理解されるべきである。
【0040】
本発明の組成物が圧縮により形成される場合、主要粒状金属材料(鉄)は、好ましくは、約5μmから約90μmの範囲の平均粒子径を持つ。その場合(On its turn)、構造マトリクスを硬化する機能を持つ硬化要素、および固形潤滑剤相の前駆体構成要素(化合物)は、好ましくは約de45μmより小さい粒子径を持つべきである。主要粒状金属材料、即ち鉄の平均粒子径は、合金要素および固形潤滑剤相の前駆体構成要素(化合物)の平均粒子径より常に大きいべきであることがさらに理解されるべきである。
【0041】
本発明の組成物が射出し成形により形成される場合、主要粒状金属材料(鉄)は、好ましくは約5μmから約25μmの範囲の粒子径を持つ。同様に、合金要素および固形潤滑剤相の前駆体構成要素(化合物)も、好ましくは約5μmから約25μmの範囲の粒子径を持つ。
【0042】
組成物の形成が、焼結の前に、押出し成形または射出し成形により行われる場合、組成物は、パラフィンおよびその他のワックス、EVA、ならびに低融点重合体からなる群より好ましくは選択される少なくとも1種の有機結合剤を、押し出しによる形成に際しては、概して冶金学的組成物の合計体積の約15%から約45%の範囲の割合で、射出し成形による形成に際しては、約40%から45%の割合で、さらに含むべきである。有機結合剤は、形成工程後、形成された生成物が焼結工程を受ける前に、例えば、エバポレーションにより、組成物から抽出される。
【0043】
上記の組成物は、組成物の形成のために、およびその後自己潤滑性焼結生成物を得るために選択された粒状材料をあらかじめ定めた量で、任意の適したミキサーで混合することにより得られる。
【0044】
異なる粒状材料の混合物は、均質化されて、圧縮即ちプレスもしくはロールによる、または同じく粉末の押出しまたは射出しによる成形による緻密化操作を受け、この操作により粉末塊の緻密化だけではなく焼結により得ようとする生成物の所望の形状も得る。
【0045】
押出しまたは射出しによる粉末成形による形成の場合、有機結合剤を含有する構成要素混合物は、有機結合剤の融点を下回らない温度で均質化され、このように均質化された混合物は顆粒化されて、これ自身の取扱い、貯蔵、および射出成形機への供給を促進する。
【0046】
部品は、形成後、一般に2工程で行われる有機結合剤の抽出を受ける。第一の工程は、溶媒(例えば、ヘキサン)での化学抽出方法であり、第二の工程は、熱分解による抽出方法、即ちCDプラズマ支援熱方法である。
【0047】
本明細書中提案される組成物を用いると、230HVから700HVの硬度、摩擦係数μ≦0.15、350から750MPaの機械けん引耐性(存在する合金要素および用いる処理パラメーターに依存する。)を持つとともに、ナノメートル厚さの皮状の内部構造を持つ非晶質炭素の団塊が分散していて、可動表面の界面にグラファイトが拡散するのを促進し、固形潤滑剤層を形成する、自己潤滑性焼結部品または生成物を得ることが可能である。
【0048】
添付の図面のうち図5、図6A、図6B、図6C、および図7は、あるあらかじめ定めた量の組成物を任意の所望の形状に圧縮することにより本発明の組成物を形成するそれぞれ異なる可能性を例示する目的を有する。この形状は、得ようとする自己潤滑性焼結完成部品または生成物の形状、または所望の最終形に近い形が可能である。
【0049】
しかしながら、非常に多くの用途において、自己潤滑特性は、自身以外の相対可動要素と摩擦接触する機械構成要素または部品の1つ以上の表面領域にのみ必要である。
【0050】
従って、図5に示すとおり、好ましくは粒状材料で形成され、1つまたは2つの向かい合う面31において本発明の組成物40の表面層41を受ける、構造的基質30により、所望の自己潤滑性生成物を構成することが可能である。図示される例において、構造的基質30および組成物40の2つの向かい合う表面層は、任意の適した型Mの内部で、2つの向かい合うパンチPにより圧縮され、圧縮形成された複合生成物1を形成する。この複合生成物1は、その後焼結工程を受ける。この例では、構造的基質30の2つの向かい合う面31のみが、望ましい自己潤滑性を示すだろう。
【0051】
図6Aおよび図6Bは、それぞれ、適切な押出しマトリクス(図示せず)中、組成物40を押出し成形して得られる棒2および管3の形の生成物を例示する。この場合、組成物40の圧縮による形成は、組成物40の押出し成形工程で行われる。次いで、棒2または管3は、鉄系構造マトリクス10を形成するための、および粒状固形潤滑剤20のばらばらに分散した粒子を組み込むための焼結工程を受けることができる。
【0052】
図6Cは、外周を本発明の組成物40から形成された表面層41で取り囲まれた、粒状材料製構造芯35を含む複合棒4で形成された生成物の別の例を示す。この場合も同様に、構造芯35および組成物40の外層41の形成および圧縮(緻密化)は、複合棒4の2つの部分の同時押出し成形により得られ、得られたものは次いで焼結工程を受ける。
【0053】
組成物40の圧縮が、例えば、図6A、図6B、および図6Cの棒2、棒3、および棒4の形成で行われるとおり、押出し成形により行われる場合、この組成物は、さらに有機結合剤を含むことができ、この有機結合剤は、組成物の形成後、焼結工程の前に、熱的除去のための任意の既知の技法を用いて組成物から熱的に除去される。
【0054】
有機結合剤は、例えば、パラフィンおよびその他のワックス、EVA、ならびに低融点重合体からなる群から選択される任意の1種が可能である。
【0055】
図7も、自己潤滑特性を持つ表面領域を1つ以上持つ、焼結鋼製複合生成物を得る別の方法を模式的に示す。この例では、得ようとする生成物5は、あらかじめストリップの形に形成した、粒状材料でできた構造的基質30を表すが、連続したストリップ中、構造的基質30の向かい合う面の少なくとも1つにおいて、本発明の組成物40の表面層41がロールで付着されていることに留意されたい。次いで複合生成物5は焼結工程を受ける。
【0056】
可能な組成物の例を複数用いて、異なる構造的基質と関係させて、本明細書中、本発明を示してきたものの、本明細書に添付の請求の範囲で定義されるとおり、このような組成物および関係は、ばらばらの粒子で、構造マトリクス中の固形潤滑剤の分布を制御する本発明の構想、および焼結工程中この固形潤滑剤がこのマトリクスに溶解する最終的な傾向の本発明の構想から逸脱することなく、当業者に明らかである改変を被ることが可能であることが理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、粒状材料(金属粉および非金属粉の形のもの)の組成物から形成され(conformed)、焼結されるように設計された、完成品(部品)および半完成品(複数の物品)を製造する具体的な技術に関し、これらの完成品および半完成品は、焼結工程中に形成される生成物の金属性構造マトリクスを構成する要素に加えて、粒子形の固形潤滑剤の前駆体相を含み、この固形潤滑剤は、焼結工程中の分離により、金属性マトリクスの体積中に固形潤滑剤の沈殿を生じることで、連続した金属性マトリクスである自己潤滑性生成物の微小構造の形成をもたらし、この微小構造により、焼結生成物は、焼結した部品または生成物の高機械的強度および高硬度と連携した低摩擦係数を有することができる。本発明は、焼結中に「in situ」で自己潤滑性材料を形成するこの冶金学的組成物、この組成物から得られる焼結鋼の部品または生成物、ならびに粉末冶金によりこの部品または生成物を得るための具体的な代替技法または方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
技術開発が進んだ段階においては、それぞれ特定の用途群用に具体的に設計された、高機能性材料の開発が必要になる。複数の機械工学用途では、同時に、低摩擦係数と連携した高機械的強度および高摩耗強度を有する材料が必要とされている。
【0003】
地球上で生み出される機械エネルギー全体のうち約35%が、潤滑不足で失われて、摩擦による熱に変換されていると見積もられている。このエネルギー損失とは別に、生じた熱による加熱で機械系の性能が損なわれている。従って、摩擦下にある機械部品で低摩擦係数を維持することは、廃棄物質の減少による環境保全への寄与に加えて、エネルギーの経済性だけでなく、この部品の耐久性およびこの部品が稼働する機械系の耐久性の向上にも非常に重要である。
【0004】
相対的に動いている表面間の摩耗および摩擦を減少させるために用いられている方法は、この表面間に潤滑層を挟むことで表面同士を離した状態に維持することである。可能な潤滑法の中で、流体力学的方法(流体潤滑剤)が最も用いられる。流体力学的潤滑では、相対的に動いている表面を完全に分離する油膜が形成される。しかしながら、流体潤滑剤の使用には、例えば極高温または極低温での用途、流体潤滑剤が化学的に反応する恐れがある用途、および流体潤滑剤が混入物として作用する恐れがある場合など、通常、問題が伴うことを指摘しておくべきである。この他、循環の停止から生じる潤滑が限定された状況、または連続した油膜の形成が不可能な状況では、部品同士の接触が生じ、その結果部品に摩耗が生じる。
【0005】
乾式潤滑、即ち固形潤滑剤を用いるものは、構成要素表面同士の接触を防ぐ固形潤滑剤層の存在により作用するが、この形成した層の破裂がないので、従来の潤滑の代替法となる。
【0006】
固形潤滑剤は、問題の多い潤滑領域でよく受け入れられてきている。これらは、従来の潤滑剤を用いることができない、極温中、高負荷条件下、および化学反応性環境中で、用いることができる。そのうえ、乾式潤滑(固形潤滑剤)は、環境負荷が少ない代替法である。
【0007】
固形潤滑剤は、トライボロジー対の構成要素の表面上に沈着もしくは生成したまたは構成要素の材料の体積に組み込まれた膜(または層)の形で、第二相粒子の形で、構成要素に対して用いることができる。特定の膜または層が用いられる場合、これらが摩耗すると、金属同士の接触が生じ、保護されていない対面する表面の、および相対的に動いている構成要素の急速な摩耗が続いて起こる。膜または層が用いられるこれらの解決法において、潤滑剤の交換の難しさ、ならびに潤滑剤の酸化および分解をさらに考慮するべきである。
【0008】
従って、材料、即ち構成要素の寿命を延ばすことを可能にするより適切な解決法は、低摩擦係数の複合材料製の構成要素構造体を形成するように、構成要素を構成する材料の体積中に固形潤滑剤を組み込むことである。連続複合材料を得る目的において、これは、粉末冶金法、即ち、圧縮(プレス、ロール、押出し成形、および射出し成形など)および続く焼結による粉末混合物の形成(conformation)により可能である。連続複合材料は、通常、すでに最終的な形状および寸法になる(完成品)か、または最終的な形状および寸法に近いものになる(半完成品)。
【0009】
低摩擦係数を示す自己潤滑性の機械構成要素(自己潤滑性軸受筒など)は、粉末冶金法により、固形潤滑剤粉末と混合した焼結部品の金属性構造マトリクスを形成する金属粉から製造される。この構成要素は、さまざまな家庭用器具および小型装置(プリンター、電動かみそり、ドリル、ミキサーなど)で用いられているものである。構造マトリクスで最もよく知られた先行技術の解決法は、青銅、銅、銀、および純鉄を用いる。固形潤滑剤として用いられるものには以下がある:モリブデンジスルフィド(MoS2)、銀(Ag)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびモリブデンジセレニド(MoSe2)。固形潤滑剤粒子、グラファイト粉末、セレンおよびモリブデンジスルフィド、ならびに低融点金属などを含有する青銅および銅マトリクスを主に用いる、この種の自己潤滑性材料でできた軸受筒が、複数の工学的用途において、数十年にわたり製造および使用されてきている。
【0010】
しかしながら、こうした部品は、固形潤滑剤粒子の体積含有量が高い(25%から40%)結果として高機械的強度を示さない。高い体積含有量は、部品の機械的強度の元となっている微小構造要素であるマトリクス相の連続性の度合いを低下させる。固形潤滑剤のこの高含有量は、部品が高機械的強度を有することが必要とされる用途用において、金属性マトリクスの機械的性質(強度および硬度)と微小構造パラメーター(マトリクス中に分散した固形潤滑剤粒子の大きさ、および形成された複合材料中のこれら粒子間の平均自由経路など)の両方が最適化されていない状況では、低摩擦係数を得るために必要であると考えられてきた。剪断に対する強度が本質的に低い固形潤滑剤の容積百分率が高いことは、金属性マトリクスの機械的強度に寄与しない。そのうえさらに、固形潤滑剤粒子は、粉末混合物を機械的に均質化する工程(ミキサー中で行われる。)および混合物を圧縮する工程中に生じる剪断力の働きとして容易に粒子自身を剪断してこの形状を変化させ、形成された自己潤滑性複合体の金属性構造マトリクスの連続性の度合いをさらに低下させる。
【0011】
そのうえ、金属性マトリクスの硬度が低いことで、焼結した材料または生成物の接触表面で、固形潤滑剤粒子が徐々に妨害されていく。従って、十分な低摩擦係数を維持する目的で、従来、乾燥自己潤滑性複合材料の組成物に固形潤滑剤が高い容積百分率で用いられてきた。
【0012】
上記のものと比較して一部差別化されておりさらに発展した計画が、US6890368Aに記載されている。この特許は、十分なけん引耐性(Rm≧400MPa)および0.3未満の摩擦係数を持つ、300℃から600℃の範囲の温度で用いるための自己潤滑性複合材料を提案している。この文書は、この体積中に固形潤滑剤粒子として主に六方晶窒化ホウ素、グラファイト、またはこれらの混合物を含み金属性構造マトリクスを形成する粒状材料の混合物を焼結して低摩擦係数の部品または生成物を得る解決法を示し、この材料が十分なけん引耐性(Rm≧400MPa)および0.3未満の摩擦係数を持ち、300℃から600℃の範囲の温度で用いるのに適していると記載している。
【0013】
2008年9月12日出願の、本発明と同一の出願人名による、ブラジル国特許出願(仮番号018080057518)に記載されるとおり、構造マトリクス粉末であると同時に固形潤滑剤粉末(例えば、六方晶窒化ホウ素およびグラファイトなど)である粉末混合物の合併(consolidation)から得られる部品または生成物は、焼結後、機械的強度が低く構造がもろい。
【0014】
上記の欠点は、製造しようとする部品または生成物の混合および形成(緻密化)工程中に、構造マトリクスの粉末粒子間の固形潤滑剤相が、剪断により、不適切に拡散(分散)することに由来する。固形潤滑剤は、混合および形成(緻密化)工程中に、剪断により、構造マトリクス相の粒子間に拡散し、この粒子を取り囲む傾向がある。これにより、固形潤滑剤は、この低い剪断ストレスを上回るストレスを受ける。
【0015】
一方で、剪断により形成された、構造マトリクスの粒子(粉末粒子)間の固形潤滑剤層の存在は、焼結中に複合体の構造マトリクスを形成するこれら粒子間の金属的接触の形成を損なう。このことが、複合材料の構造マトリクス相の連続性の度合いの低下に寄与し、材料および得られる生成物を構造的にもろくする。
【0016】
このような問題は、上記の先行するブラジル国特許出願に提案される解決法でほとんど解決することができ、先行技術の解決法よりも高い機械的強度を持つ複合材料がもたらされる。
【0017】
しかしながら、本発明と同一出願人による上記の先行特許出願に提案される解決法では、非金属粒状固形潤滑剤(例えば、六方晶窒化ホウ素、グラファイト、またはこの両方)を、焼結する複合生成物の構造マトリクスを形成する金属材料と混合しなければならず、さらに、ばらばらの粒子中、非金属粒状固形潤滑剤を塊にして、非金属粒状固形潤滑剤が構造マトリクス相の粒子間へ剪断により拡散する(非金属粒状固形潤滑剤は、製造しようとする部品または生成物の混合および形成(緻密化)工程中にこれら粒子を取り囲み、部品または生成物をもろくする傾向がある。)のを防ぐ目的で、冶金学的組成物の焼結工程中に、構造マトリクスを形成する粒状材料と非金属粒状固形潤滑剤間に液相を形成するように、少なくとも1種の粒状合金要素の添加を必要とする。
【0018】
上記の欠点と向き合って、焼結しようとする冶金学的組成物への固形潤滑剤粒子の前混合も、冶金学的組成物に合金要素を添加して、焼結中、組成物中に液相を形成する必要もない解決法を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第6890368号明細書
【特許文献2】ブラジル国特許仮出願番号018080057518
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従って、構造マトリクスの連続性の度合いが高く、高機械的強度および高硬度を示し、焼結で生じた固形潤滑剤相の分布が良好な、自己潤滑性焼結鋼製の完成品または半完成品を形成することをこれ自身がこの焼結中に可能にする金属性構造マトリクスを含む、焼結鋼形成用の粒状材料の組成物を提供することが、本発明の目的である。
【0021】
プレスもしくはロールなどにより、または射出し成形により粉末圧縮し、続いて上記に定義される組成物を焼結することによる形成(conformation)から得られる、金属性構造マトリクスの連続性の度合いが高く、低摩擦係数および高機械的強度および高硬度を示し、焼結で生じたグラファイトの固形潤滑剤相の分布が良好な、自己潤滑性焼結鋼製の生成物を提供することが、同じく、本発明の目的である。
【0022】
上記粒状材料の組成物から自己潤滑性焼結鋼(上記で定義されるものなど)製の生成物を得る方法を提供することも、本発明の別の目的であり、この方法は、焼結しようとする冶金学的組成物への固形潤滑剤粒子の前混合も、冶金学的組成物に合金要素を添加して、焼結中、組成物中に液相を形成することも含まない。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の第一の態様において、上記の目的は、圧縮および射出し成形操作のうちの1つによりあらかじめ形成される、自己潤滑性焼結鋼製生成物製造用の粒状材料の組成物を通じて達成され、この組成物は以下を含む:主要粒状金属材料として鉄;鉄を強化し、鉄と鉄構造マトリクスを形成する機能を持つ少なくとも1種の粒状合金要素;および、焼結中に生成物中に形成されるグラファイトの固形潤滑剤相の前駆体である非金属化合物。
【0024】
本発明を行うやり方において、非金属粒状化合物は、鉄構造マトリクスのα鉄相を安定化する元素を含む、炭化物型または炭酸塩型の化合物である。本発明を行う別のやり方において、非金属粒状化合物は、α鉄相を安定化するどのような元素も欠乏しており、従って冶金学的組成物に、α鉄相を安定化する機能を有する追加の粒状合金要素を含む必要がある。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、部品または生成物の焼結工程中に、前駆体相の分離によるグラファイト粒子の形成が起こる。本発明を行うための前駆体相の例として、以下が挙げられる:炭化ケイ素(SiC)、炭化モリブデン(Mo2C)、炭化クロム(Cr3C2)など。新規複合材料を構成できる粉末混合物の調製工程において、微粉粒子(好ましくは5から25μm)の形の炭化物が、鉄粉(主要構成要素)および粉末混合物中に存在するその他の合金要素の粉末と混合される。鉄マトリクス中にグラファイト団塊の沈殿を引き起こし、自己潤滑性焼結鋼を形成すると最も考えられる炭化物は、α鉄相を強く安定化することができる元素をこの式中に有するもの(例えば、元素Siが存在する炭化ケイ素(SiC))である。焼結工程中、即ち部品または生成物の焼結温度において、炭化ケイ素(SiC)は分離して、元素のケイ素は、鉄中、即ち鉄構造マトリクス中の固溶体となる。SiCの分離が進行するにつれて、鉄マトリクス中の分離中のSiC粒子の周囲に安定化Siの量が増加する。鉄ケイ素平衡図で確認できるとおり、元素のケイ素はα鉄相を強く安定化する;Fe−Si図のループα←→(α+γ)の頂点は、Siが2.15重量%(4.2%at)の値で生じる。従って、典型的には1125℃から1250℃で行われる焼結鋼の焼結中、分離中のSiC粒子の周りの鉄に溶解したケイ素の濃度が、γ相の溶解限界に達すると、γ鉄からα鉄への変換が起こる。SiC分離方法の第一の例では、Si濃度が分離中のSiC粒子の周りのα相を安定化するのに必要な値に到達してない間、分離から生じた炭素も固溶体となりマトリクス内部に拡散するが、分離中のSiC粒子の周りの鉄マトリクスがα相に変換されるとすぐに、炭素を溶解する方法は中断される。なぜなら、α鉄相への炭素の溶解性は非常に低いからである(最大値は727℃で0.022重量%)。従って、マトリクスの残りの部分はγ相として存在し続けることができるものの、炭化物分離の結果として放出される炭素はグラファイトの団塊を形成し、この団塊はα鉄の層で取り囲まれる。
【0026】
添付の図面を参照して、本発明を以下に説明するが、図は本発明の実施形態の例として与えられるものであり、これらの図において:
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1A】連続して模式的に、鉄粉(マトリクス)と混合した炭化物粒子の分離に由来する、焼結工程中の微小構造の進化を表す。図1Aは、方法の初期相における材料の二相微小構造を表し、ここでは炭化物粒子は未変化のままである、即ち反応はまだ始まっていないが、図1Bは炭化物の分離がすでに部分的に起こっている状況を表し、図1Cは分離がすでに完了した状況を示す。
【図1B】連続して模式的に、鉄粉(マトリクス)と混合した炭化物粒子の分離に由来する、焼結工程中の微小構造の進化を表す。図1Aは、方法の初期相における材料の二相微小構造を表し、ここでは炭化物粒子は未変化のままである、即ち反応はまだ始まっていないが、図1Bは炭化物の分離がすでに部分的に起こっている状況を表し、図1Cは分離がすでに完了した状況を示す。
【図1C】連続して模式的に、鉄粉(マトリクス)と混合した炭化物粒子の分離に由来する、焼結工程中の微小構造の進化を表す。図1Aは、方法の初期相における材料の二相微小構造を表し、ここでは炭化物粒子は未変化のままである、即ち反応はまだ始まっていないが、図1Bは炭化物の分離がすでに部分的に起こっている状況を表し、図1Cは分離がすでに完了した状況を示す。
【図2】複合材料のマトリクスの連続性の度合いを高く維持することを可能にする、低摩擦係数の複合材料の体積中、即ち鋼中の固形潤滑剤粒子または団塊の分布について望まれる理想的な状況(微小構造モデル)を模式的に示す;理想的な状況において、固形潤滑剤は、粒子または団塊間に定常平均自由経路「λ」を持つ、複合材料の体積中に均一に分布するばらばらの粒子または団塊の形でなければならない。
【図3】炭化物粒子の分離後の、すでに焼結した状態の、本発明の材料の微小構造の図であり、α相で形成された透明層で取り囲まれたグラファイトの団塊および複合材料のマトリクスを示す。
【図4】電界放出型走査型電子顕微鏡(FEG−SEM)で高倍率(20,000倍)で得られる画像による、焼結中に生じた団塊の内部のグラファイト構造の詳細を示し、この画像は、ナノメートルの厚さのグラファイト外被(skin)またはフレークの形の構造の証拠である。
【図5】簡略化された図で模式的に、後に焼結する部品または生成物の形成における圧縮の例を示し、この圧縮は、焼結する生成物の向かい合う2つの面に自己潤滑性層を提供するように行われる;この方法は、焼結した部品の一面以上において自己潤滑性層が一層のみであることが望まれる場合に用いられるべきである。
【図6A】生成物の例を示し、この形成は、自己潤滑性複合材料製棒、自己潤滑性複合材料製管、および自己潤滑性材料の外層で覆われた合金製芯のある棒それぞれを押ししすることにより行われる圧縮で得られる。
【図6B】生成物の例を示し、この形成は、自己潤滑性複合材料製棒、自己潤滑性複合材料製管、および自己潤滑性材料の外層で覆われた合金製芯のある棒それぞれを押ししすることにより行われる圧縮で得られる。
【図6C】生成物の例を示し、この形成は、自己潤滑性複合材料製棒、自己潤滑性複合材料製管、および自己潤滑性材料の外層で覆われた合金製芯のある棒それぞれを押ししすることにより行われる圧縮で得られる。
【図7】簡略化された図で模式的に、後に焼結する部品または生成物の形成における圧縮の例を示し、この圧縮は、合金製板またはストリップの向かい合う面に自己潤滑性複合材料をロールで付着させることで行われる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
発明の記述
すでに上記に示したとおり、本発明の目的の1つは、粒状材料の組成物を提供することであり、先行技術の教示で得られる生成物に対して高い硬度、機械的強度、および低下した摩擦係数を示す生成物を得る目的で、この組成物は、焼結操作を受け入れられるように定義された形状(部品)をとることができるように、圧縮(プレス、ロール)により、または粉末の押出し成形もしくは射出し成形により均一に混合および形成(高密化)することができる。本発明の組成物は以下を含む:組成物の形成において優勢である主要粒状金属材料、および優勢材料を硬化する機能を持つ少なくとも1種の粒状合金要素、これらの構成要素は、焼結する複合生成物、即ち鋼中の構造マトリクスの形成に関与している;ならびに、前駆体粒状材料、これは焼結中に分離することにより固形潤滑剤の団塊を与えることができる。
【0029】
本発明に従って、図2に示すとおり、主要粒状金属材料は鉄であって鉄構造マトリクス10を定義するものであり、焼結中の分離により固形潤滑剤の団塊20を生じるための前駆体相は、炭化物または炭酸塩を主体とする化合物で、好ましくは鉄構造マトリクス10中のα鉄相を安定化する元素で形成されている。使用する前駆体相が、この組成中に、鉄構造マトリクス10中のα鉄相を安定化する元素を含まない場合、α鉄相を安定化するのに十分な量の具体的な追加合金要素も、本発明の材料の組成物に加えられるべきである。
【0030】
鉄構造マトリクスを硬化する機能を持つ合金要素は、例えば、クロム、モリブデン、炭素、ケイ素、リン、マンガン、およびニッケルから選択される元素のうちの1つで定義されるが、構造マトリクスに同じ機能をもたらす他の元素(バナジウムおよび銅など)、ならびに複数の合金要素を同時に使用できることが、理解されるべきである。本発明は、構成要素の相互拡散(化学的均質化)により、焼結中に形成される鉄構造マトリクスを硬化する機能をもたらすことができる合金硬化要素の提供を必要とするが、ただしこの態様は本明細書中例示される合金要素に限定されはしないことを強調しなければならない。
【0031】
図1A、図1B、図1C、および図2は、焼結中の炭化物(SiC)の分離の機能としての、複合体の微小構造の進化を複数工程で模式的に示す。図3は、複合材料の焼結後に形成されるこの微小構造の光学顕微鏡画像を示し、図4は、団塊内部に、ナノメートルの厚さの「外被またははく」の形で存在する沈殿グラファイトの構造を示す。この構造は、トライボロジー対の相対的に動く表面の界面上にトライボロジー層を形成するのに好都合であり、固体潤滑の効率を上げる。
【0032】
複合体を形成する粉末混合物中のα鉄相を安定化する他の合金要素の平行付加は、焼結操作中のマトリクス中のα相の発生を加速し、材料の体積中に混合された炭化物粒子の分離によりグラファイトの団塊20が生じる傾向を増加させる。
【0033】
炭化物分離に由来するα鉄相を安定化する合金要素は、分離中の粒子11の周りにα相の層12を形成するので、分離において炭素がマトリクス中に溶解するのを防ぐことに加えて、固溶体にあるときに、マトリクスの硬度を増加させるのにも寄与する;それにもかかわらず、鉄中の固溶体中のこれらの合金要素の存在により達せられる硬度の増加が不十分な場合、用途に必要な硬度および機械的強度を達成する目的で、焼結操作中にマトリクスに溶解するように、他の合金要素をさらに粉末混合物に加えるべきである。
【0034】
従って、本発明において、材料の金属性構造マトリクスは、粉末冶金による材料の加工中に、α鉄相を安定化する合金要素を含む固溶体(例えば、鉄粉と混合した炭化物の分離の結果としての鉄マトリクスに溶解したケイ素およびモリブデンなど)により自動的に硬化される鉄により形成される。
【0035】
これらの必然的に存在する安定化合金要素に加えて、マトリクスの機械的強度および硬度を調整する機能を持つ他の合金要素を、粉末混合物に加えてもよく、これにより焼結中に生成する乾燥自己潤滑性複合材料のトライボロジー的および機械的挙動に関して高い性能を達成することができる。鉄相の強力な安定剤であるSi、Mo、およびP元素の他に、マトリクスの機械的強度および硬度を高めるのに本発明で有利に用いられる他の合金要素の例として、Cr、Ni、Mn、W、V、およびCを挙げることができる。
【0036】
用いる炭化物の種類に応じて、本発明において粉末冶金による生成物の生成用に配合される粉末混合組成物は、2種の異なる代替形態で形成される:
代替形態1:鉄粉+焼結温度で分離によりグラファイトの団塊20を生成する、α鉄相を安定化する元素で形成されている炭化物粉末の粒子11(容積百分率≦10%で混合されている。)+鉄構造マトリクス10の硬度および強度を高める機能を有する合金要素と称する他の元素の粉末粒子;
代替形態2:鉄粉+α鉄相を安定化する元素で形成されていない炭化物粉末粒子(容積百分率≦10%で混合されている。)+炭化物の分離から生じる炭素が鉄マトリクスに溶解するのを防ぐ目的の、鉄マトリクスのα相を安定化する機能を有するα鉄相を安定化する合金要素の粉末+複合体の構造マトリクスの機械的性質を調整するために存在する他の合金要素。
【0037】
金属性鉄構造マトリクス10は、形成される複合材料に機械的強度を与える、組成物の唯一の微小構造要素であるので、この複合体のマトリクスの連続性の度合いが高くなるほど、この材料で製造された焼結物品または部品の機械的強度も高くなる。乾燥自己潤滑性焼結複合材料の金属性構造マトリクスの連続性の度合いの維持は、空隙率の低さに加えて、固形潤滑剤相の容積百分率が低いことを必要とする。なぜなら、固形潤滑剤相は材料の機械的強度に寄与せず、従って、焼結生成物の機械的強度に寄与しないからである。その他、材料の体積中に存在する固形潤滑剤は、体積中に均一に分布して、即ち鉄構造マトリクス10の内部に定常平均自由経路「λ」を持って、ばらばらの粒子または団塊20の形で分散しているべきである(図2を参照)。これにより、より大きな潤滑効率を生み出すことができ、それと同時に、マトリクスの連続性の度合いをより高く保証し、ひいては複合材料により高い機械的強度を保証する。
【0038】
部品の操作に際して(相対運動で摩擦を受けた場合)、必要な負荷容量を持つ機械的支持体として操作するだけではなく固形潤滑剤粒子が構造マトリクスの塑性変形により覆われることを防ぐことも目的として、材料の金属性マトリクスは、塑性変形に対する耐性が高いことが必要とされ、これにより固形潤滑剤が層を形成すべき界面に固形潤滑剤が拡散することを防ぐ。
【0039】
本発明に従って、α鉄相を安定化する追加の合金構成要素は、リン、ケイ素、コバルト、クロム、およびモリブデンから選択される少なくとも1種の元素で定義される。これらの元素は、焼結温度(約1125℃から約1250℃)でα鉄相を安定化するのに別々にまたは一緒になって作用するのに最も適切であるとみなされるものの、本発明は、炭素溶解を減ずる目的でα鉄相を安定化するという構想にあるのであって、用いる合金構成要素(単数または複数)は必然的に本明細書中例示されるものであるという事実にあるのではないことが理解されるべきである。
【0040】
本発明の組成物が圧縮により形成される場合、主要粒状金属材料(鉄)は、好ましくは、約5μmから約90μmの範囲の平均粒子径を持つ。その場合(On its turn)、構造マトリクスを硬化する機能を持つ硬化要素、および固形潤滑剤相の前駆体構成要素(化合物)は、好ましくは約de45μmより小さい粒子径を持つべきである。主要粒状金属材料、即ち鉄の平均粒子径は、合金要素および固形潤滑剤相の前駆体構成要素(化合物)の平均粒子径より常に大きいべきであることがさらに理解されるべきである。
【0041】
本発明の組成物が射出し成形により形成される場合、主要粒状金属材料(鉄)は、好ましくは約5μmから約25μmの範囲の粒子径を持つ。同様に、合金要素および固形潤滑剤相の前駆体構成要素(化合物)も、好ましくは約5μmから約25μmの範囲の粒子径を持つ。
【0042】
組成物の形成が、焼結の前に、押出し成形または射出し成形により行われる場合、組成物は、パラフィンおよびその他のワックス、EVA、ならびに低融点重合体からなる群より好ましくは選択される少なくとも1種の有機結合剤を、押し出しによる形成に際しては、概して冶金学的組成物の合計体積の約15%から約45%の範囲の割合で、射出し成形による形成に際しては、約40%から45%の割合で、さらに含むべきである。有機結合剤は、形成工程後、形成された生成物が焼結工程を受ける前に、例えば、エバポレーションにより、組成物から抽出される。
【0043】
上記の組成物は、組成物の形成のために、およびその後自己潤滑性焼結生成物を得るために選択された粒状材料をあらかじめ定めた量で、任意の適したミキサーで混合することにより得られる。
【0044】
異なる粒状材料の混合物は、均質化されて、圧縮即ちプレスもしくはロールによる、または同じく粉末の押出しまたは射出しによる成形による緻密化操作を受け、この操作により粉末塊の緻密化だけではなく焼結により得ようとする生成物の所望の形状も得る。
【0045】
押出しまたは射出しによる粉末成形による形成の場合、有機結合剤を含有する構成要素混合物は、有機結合剤の融点を下回らない温度で均質化され、このように均質化された混合物は顆粒化されて、これ自身の取扱い、貯蔵、および射出成形機への供給を促進する。
【0046】
部品は、形成後、一般に2工程で行われる有機結合剤の抽出を受ける。第一の工程は、溶媒(例えば、ヘキサン)での化学抽出方法であり、第二の工程は、熱分解による抽出方法、即ちCDプラズマ支援熱方法である。
【0047】
本明細書中提案される組成物を用いると、230HVから700HVの硬度、摩擦係数μ≦0.15、350から750MPaの機械けん引耐性(存在する合金要素および用いる処理パラメーターに依存する。)を持つとともに、ナノメートル厚さの皮状の内部構造を持つ非晶質炭素の団塊が分散していて、可動表面の界面にグラファイトが拡散するのを促進し、固形潤滑剤層を形成する、自己潤滑性焼結部品または生成物を得ることが可能である。
【0048】
添付の図面のうち図5、図6A、図6B、図6C、および図7は、あるあらかじめ定めた量の組成物を任意の所望の形状に圧縮することにより本発明の組成物を形成するそれぞれ異なる可能性を例示する目的を有する。この形状は、得ようとする自己潤滑性焼結完成部品または生成物の形状、または所望の最終形に近い形が可能である。
【0049】
しかしながら、非常に多くの用途において、自己潤滑特性は、自身以外の相対可動要素と摩擦接触する機械構成要素または部品の1つ以上の表面領域にのみ必要である。
【0050】
従って、図5に示すとおり、好ましくは粒状材料で形成され、1つまたは2つの向かい合う面31において本発明の組成物40の表面層41を受ける、構造的基質30により、所望の自己潤滑性生成物を構成することが可能である。図示される例において、構造的基質30および組成物40の2つの向かい合う表面層は、任意の適した型Mの内部で、2つの向かい合うパンチPにより圧縮され、圧縮形成された複合生成物1を形成する。この複合生成物1は、その後焼結工程を受ける。この例では、構造的基質30の2つの向かい合う面31のみが、望ましい自己潤滑性を示すだろう。
【0051】
図6Aおよび図6Bは、それぞれ、適切な押出しマトリクス(図示せず)中、組成物40を押出し成形して得られる棒2および管3の形の生成物を例示する。この場合、組成物40の圧縮による形成は、組成物40の押出し成形工程で行われる。次いで、棒2または管3は、鉄系構造マトリクス10を形成するための、および粒状固形潤滑剤20のばらばらに分散した粒子を組み込むための焼結工程を受けることができる。
【0052】
図6Cは、外周を本発明の組成物40から形成された表面層41で取り囲まれた、粒状材料製構造芯35を含む複合棒4で形成された生成物の別の例を示す。この場合も同様に、構造芯35および組成物40の外層41の形成および圧縮(緻密化)は、複合棒4の2つの部分の同時押出し成形により得られ、得られたものは次いで焼結工程を受ける。
【0053】
組成物40の圧縮が、例えば、図6A、図6B、および図6Cの棒2、棒3、および棒4の形成で行われるとおり、押出し成形により行われる場合、この組成物は、さらに有機結合剤を含むことができ、この有機結合剤は、組成物の形成後、焼結工程の前に、熱的除去のための任意の既知の技法を用いて組成物から熱的に除去される。
【0054】
有機結合剤は、例えば、パラフィンおよびその他のワックス、EVA、ならびに低融点重合体からなる群から選択される任意の1種が可能である。
【0055】
図7も、自己潤滑特性を持つ表面領域を1つ以上持つ、焼結鋼製複合生成物を得る別の方法を模式的に示す。この例では、得ようとする生成物5は、あらかじめストリップの形に形成した、粒状材料でできた構造的基質30を表すが、連続したストリップ中、構造的基質30の向かい合う面の少なくとも1つにおいて、本発明の組成物40の表面層41がロールで付着されていることに留意されたい。次いで複合生成物5は焼結工程を受ける。
【0056】
可能な組成物の例を複数用いて、異なる構造的基質と関係させて、本明細書中、本発明を示してきたものの、本明細書に添付の請求の範囲で定義されるとおり、このような組成物および関係は、ばらばらの粒子で、構造マトリクス中の固形潤滑剤の分布を制御する本発明の構想、および焼結工程中この固形潤滑剤がこのマトリクスに溶解する最終的な傾向の本発明の構想から逸脱することなく、当業者に明らかである改変を被ることが可能であることが理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主要粒状金属材料としての鉄と、鉄を硬化する機能を持ち鉄と一緒に鉄構造マトリクスを形成する少なくとも1種の粒状合金要素と、および焼結中に複合体生成物中に形成されるグラファイトの固形潤滑剤相の前駆体である非金属化合物、を含むことを特徴とする、圧縮または粉末射出し成形により形成される、焼結鋼製自己潤滑性生成物を形成するための粒状材料組成物。
【請求項2】
グラファイトの固形潤滑剤相の前駆体である非金属粒状化合物は、炭化物または炭酸塩型の化合物であり、ならびにこの組成中に、鉄構造マトリクスのα鉄相を安定化する元素を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
α鉄相を安定化する元素は、炭化ケイ素、炭化モリブデン、および炭化クロムの中から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
非金属粒状化合物が鉄マトリクスのα鉄相を安定化するどのような元素も欠乏している炭化物または炭酸塩である場合に、α鉄相を安定化する追加の粒状合金要素をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
鉄構造マトリクスのα鉄相を安定化する追加の粒状合金要素は、ケイ素、リン、モリブデン、およびクロムから選択される少なくとも1種の元素であることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
グラファイトの固形潤滑剤相の前駆体である非金属粒状化合物は、好ましくは形成される粒状材料冶金学的組成物の質量の約10%未満の容積百分率であることを特徴とする、請求項2、3、4、または5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
鉄構造マトリクスの鉄を硬化する機能を持つ粒状合金要素は、ニッケル、クロム、モリブデン、バナジウム、マンガン、銅、ケイ素、リン、および炭素から選択される少なくとも1種の元素により定義されることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、または6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
主要粒状金属材料(鉄粉)の粒子は、約5μmから約90μmの範囲の平均径を有し、鉄を硬化する機能を持つ粒状合金要素の粒子、および固形潤滑剤相の前駆体である非金属粒状化合物の粒子は、約45μmより小さい径を有することを特徴とする、粉末圧縮(プレス、ロール、ダブルプレス、または圧縮)により形成される、請求項1から7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
主要粒状金属材料、即ち鉄の平均粒子径は、粒状合金要素の平均粒子径および固形潤滑剤相の前駆体である非金属粒状化合物の平均粒子径よりも大きいことを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
鉄製主要粒状金属材料、ならびに粒状合金要素、および、非金属粒状化合物は、約5μmから約25μmの範囲の粒子径を有することを特徴とする、押出し成形または射出し成形により形成される、請求項1から7のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
パラフィンおよびその他のワックス、EVA、ならびに低融点重合体からなる群より選択される有機結合剤の系を、冶金学的組成物の全体積の約40%から約45%の範囲の割合で含むことを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
230HVから700HVの硬度、≦0.15の摩擦係数μ、および350から900MPaのけん引耐性を示すことを特徴とする、請求項1から11のいずれかに定義されるとおりの粒状材料の組成物から得られ、および焼結の前に形成を受ける、自己潤滑性焼結鋼製生成物。
【請求項13】
構造的基質(30)に組み込まれた冶金学的組成物(40)の少なくとも1つの表面層(41)を定義することを特徴とする、請求項12に記載の生成物。
【請求項14】
構造的基質(30)は、冶金学的組成物(40)の表面層(41)と一緒に焼結される粒状材料で定義されることを特徴とする、請求項13に記載の生成物。
【請求項15】
構造的基質(30)は、向かい合う面の少なくとも1つに冶金学的組成物(40)の表面層(41)を組み込んだストリップの板の形をとることを特徴とする、請求項14に記載の生成物。
【請求項16】
構造的基質(30)は、外周に冶金学的組成物(40)の表面層(41)を組み込んだ、複合棒(4)の構造芯(35)の形をとることを特徴とする、請求項14に記載の生成物。
【請求項17】
請求項8または9のいずれかに定義されるとおりの粒状材料の組成物から、焼結鋼製自己潤滑性生成物を得る方法であって、
−あらかじめ定めた量で、冶金学的組成物を定義する粒状材料を混合する工程、
−粒状材料混合物を均質化する工程、
−粒状材料混合物を圧縮して、混合物に焼結する生成物の形状を与える工程、
−圧縮して形成した混合物を、約1125℃から約1250℃の温度で焼結し、焼結中に、構造マトリクスの体積中での前駆体化合物の分離によりグラファイトの団塊を形成する工程、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項18】
組成物(40)を定義する粒状材料混合物を圧縮する工程は、粒状材料混合物を、その後焼結する板またはストリップにロールで付着させることを含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
組成物(40)を定義する粒状材料混合物を圧縮する工程は、粒状材料混合物を、構造マトリクス(10)を形成する主要粒状金属材料と適合した粒状材料の板またはストリップの形の構造的基質(30)の向かい合う面の少なくとも1つにロールで付着させることを含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
粒状材料の焼結工程後に、残留空隙率を減少させるために板またはストリップを冷ロール処理し、続いて最終的にアニーリングする追加の工程を含むことを特徴とする、請求項18または19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
組成物(40)を定義する粒状材料混合物を圧縮する工程は、棒(2)および管(3)で定義される形のうち1つに押出し成形することを含むことを特徴とする、請求項18または19のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
組成物(40)を定義する粒状材料混合物を圧縮する工程は、構造マトリクス(10)を形成する主要粒状金属材料と適合した粒状材料の棒の形の構造芯(35)を囲む管状スリーブ(42)の形の粒状材料混合物を押出し成形して、複合棒(4)を形成することを含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
組成物(40)は、焼結工程の前に生成物から熱的に除去される有機結合剤を含むことを特徴とする、請求項21または22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
請求項10または11のいずれかに定義されるとおりの粒状材料の組成物から、焼結鋼製自己潤滑性生成物を得る方法であって、
−あらかじめ定めた量で、冶金学的組成物を定義する粒状材料を混合する工程と、
−有機結合剤を溶融する温度を下回らない温度で、粒状材料混合物を均質化する工程と、
−組成物の取扱い、貯蔵、および射出成形機への供給を促進するために組成物を顆粒化する工程と、
−粒状材料混合物を射出し成形して、混合物に焼結する生成物の形状を与える工程と、
−成形した部品から有機結合剤を抽出する工程と、および
−粉末の形成により得られる部品を、約1125℃から約1250℃の温度で焼結する工程、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項1】
主要粒状金属材料としての鉄と、鉄を硬化する機能を持ち鉄と一緒に鉄構造マトリクスを形成する少なくとも1種の粒状合金要素と、および焼結中に複合体生成物中に形成されるグラファイトの固形潤滑剤相の前駆体である非金属化合物、を含むことを特徴とする、圧縮または粉末射出し成形により形成される、焼結鋼製自己潤滑性生成物を形成するための粒状材料組成物。
【請求項2】
グラファイトの固形潤滑剤相の前駆体である非金属粒状化合物は、炭化物または炭酸塩型の化合物であり、ならびにこの組成中に、鉄構造マトリクスのα鉄相を安定化する元素を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
α鉄相を安定化する元素は、炭化ケイ素、炭化モリブデン、および炭化クロムの中から選択されることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
非金属粒状化合物が鉄マトリクスのα鉄相を安定化するどのような元素も欠乏している炭化物または炭酸塩である場合に、α鉄相を安定化する追加の粒状合金要素をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
鉄構造マトリクスのα鉄相を安定化する追加の粒状合金要素は、ケイ素、リン、モリブデン、およびクロムから選択される少なくとも1種の元素であることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
グラファイトの固形潤滑剤相の前駆体である非金属粒状化合物は、好ましくは形成される粒状材料冶金学的組成物の質量の約10%未満の容積百分率であることを特徴とする、請求項2、3、4、または5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
鉄構造マトリクスの鉄を硬化する機能を持つ粒状合金要素は、ニッケル、クロム、モリブデン、バナジウム、マンガン、銅、ケイ素、リン、および炭素から選択される少なくとも1種の元素により定義されることを特徴とする、請求項1、2、3、4、5、または6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
主要粒状金属材料(鉄粉)の粒子は、約5μmから約90μmの範囲の平均径を有し、鉄を硬化する機能を持つ粒状合金要素の粒子、および固形潤滑剤相の前駆体である非金属粒状化合物の粒子は、約45μmより小さい径を有することを特徴とする、粉末圧縮(プレス、ロール、ダブルプレス、または圧縮)により形成される、請求項1から7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
主要粒状金属材料、即ち鉄の平均粒子径は、粒状合金要素の平均粒子径および固形潤滑剤相の前駆体である非金属粒状化合物の平均粒子径よりも大きいことを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
鉄製主要粒状金属材料、ならびに粒状合金要素、および、非金属粒状化合物は、約5μmから約25μmの範囲の粒子径を有することを特徴とする、押出し成形または射出し成形により形成される、請求項1から7のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
パラフィンおよびその他のワックス、EVA、ならびに低融点重合体からなる群より選択される有機結合剤の系を、冶金学的組成物の全体積の約40%から約45%の範囲の割合で含むことを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
230HVから700HVの硬度、≦0.15の摩擦係数μ、および350から900MPaのけん引耐性を示すことを特徴とする、請求項1から11のいずれかに定義されるとおりの粒状材料の組成物から得られ、および焼結の前に形成を受ける、自己潤滑性焼結鋼製生成物。
【請求項13】
構造的基質(30)に組み込まれた冶金学的組成物(40)の少なくとも1つの表面層(41)を定義することを特徴とする、請求項12に記載の生成物。
【請求項14】
構造的基質(30)は、冶金学的組成物(40)の表面層(41)と一緒に焼結される粒状材料で定義されることを特徴とする、請求項13に記載の生成物。
【請求項15】
構造的基質(30)は、向かい合う面の少なくとも1つに冶金学的組成物(40)の表面層(41)を組み込んだストリップの板の形をとることを特徴とする、請求項14に記載の生成物。
【請求項16】
構造的基質(30)は、外周に冶金学的組成物(40)の表面層(41)を組み込んだ、複合棒(4)の構造芯(35)の形をとることを特徴とする、請求項14に記載の生成物。
【請求項17】
請求項8または9のいずれかに定義されるとおりの粒状材料の組成物から、焼結鋼製自己潤滑性生成物を得る方法であって、
−あらかじめ定めた量で、冶金学的組成物を定義する粒状材料を混合する工程、
−粒状材料混合物を均質化する工程、
−粒状材料混合物を圧縮して、混合物に焼結する生成物の形状を与える工程、
−圧縮して形成した混合物を、約1125℃から約1250℃の温度で焼結し、焼結中に、構造マトリクスの体積中での前駆体化合物の分離によりグラファイトの団塊を形成する工程、
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項18】
組成物(40)を定義する粒状材料混合物を圧縮する工程は、粒状材料混合物を、その後焼結する板またはストリップにロールで付着させることを含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
組成物(40)を定義する粒状材料混合物を圧縮する工程は、粒状材料混合物を、構造マトリクス(10)を形成する主要粒状金属材料と適合した粒状材料の板またはストリップの形の構造的基質(30)の向かい合う面の少なくとも1つにロールで付着させることを含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
粒状材料の焼結工程後に、残留空隙率を減少させるために板またはストリップを冷ロール処理し、続いて最終的にアニーリングする追加の工程を含むことを特徴とする、請求項18または19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
組成物(40)を定義する粒状材料混合物を圧縮する工程は、棒(2)および管(3)で定義される形のうち1つに押出し成形することを含むことを特徴とする、請求項18または19のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
組成物(40)を定義する粒状材料混合物を圧縮する工程は、構造マトリクス(10)を形成する主要粒状金属材料と適合した粒状材料の棒の形の構造芯(35)を囲む管状スリーブ(42)の形の粒状材料混合物を押出し成形して、複合棒(4)を形成することを含むことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
組成物(40)は、焼結工程の前に生成物から熱的に除去される有機結合剤を含むことを特徴とする、請求項21または22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
請求項10または11のいずれかに定義されるとおりの粒状材料の組成物から、焼結鋼製自己潤滑性生成物を得る方法であって、
−あらかじめ定めた量で、冶金学的組成物を定義する粒状材料を混合する工程と、
−有機結合剤を溶融する温度を下回らない温度で、粒状材料混合物を均質化する工程と、
−組成物の取扱い、貯蔵、および射出成形機への供給を促進するために組成物を顆粒化する工程と、
−粒状材料混合物を射出し成形して、混合物に焼結する生成物の形状を与える工程と、
−成形した部品から有機結合剤を抽出する工程と、および
−粉末の形成により得られる部品を、約1125℃から約1250℃の温度で焼結する工程、
を含むことを特徴とする、方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【公表番号】特表2012−512320(P2012−512320A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539854(P2011−539854)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【国際出願番号】PCT/BR2009/000411
【国際公開番号】WO2010/069020
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(506198746)ワールプール・エシ・ア (57)
【出願人】(510333058)ウニベルシダーデ・フエデラル・デ・サンタ・カタリナ(ウ・エフイ・エシ・セー) (4)
【出願人】(511065255)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【国際出願番号】PCT/BR2009/000411
【国際公開番号】WO2010/069020
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(506198746)ワールプール・エシ・ア (57)
【出願人】(510333058)ウニベルシダーデ・フエデラル・デ・サンタ・カタリナ(ウ・エフイ・エシ・セー) (4)
【出願人】(511065255)
【Fターム(参考)】
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