説明

照明光学系、それを用いた露光装置及びデバイスの製造方法

【課題】特殊な光源を用いず、通常の超高圧水銀灯の放電管やレーザー光源を用いつつ、照明効率が良い照明光学系を提供する。
【解決手段】光源18から導入した光を照射対象物に照射する照明光学系10であって、照射対象物と共役な面14に入射した光の一部を取得し、該取得した光を照射対象物と共役な面14に再度導く循環光学系17を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光学系、それを用いた露光装置及びデバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
露光装置は、半導体デバイスや液晶表示装置等の製造工程であるリソグラフィ工程において、原版(レチクル、又はマスク)のパターンを、投影光学系を介して感光性の基板(表面にレジスト層が形成されたウエハやガラスプレート等)に転写する装置である。例えば、液晶表示装置にパターンを転写する投影露光装置では、近年、マスク上のより大きな面積パターンを基板上に一括露光する露光装置が求められている。この要求に対応するために、高解像力が得られ、かつ、大画面を露光することができるステップ・アンド・スキャン方式の走査型投影露光装置が提案されている。この走査型露光装置は、スリット光束により照明されたパターンを、投影光学系を介してスキャン動作により基板上に露光転写するものである。
【0003】
このような走査型露光装置として、円弧形状の光を用いて走査させる方式が存在する。この方式は、転写するパターンを持つ第1の物体と、転写される対象物である第2の物体との間に投影光学系が存在し、該投影光学系の特定の軸外像点のみを利用した円弧形状の露光域で露光処理を行うものである。このとき、第1の物体を円弧形状で照明するための照明光学系として、例えば、特許文献1は、矩形形状に照明した領域から円弧形状の開口部材を用いて円弧を切り出す照明光学系を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平4−78002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、技術文献1に示す円弧切り出し方式は、円弧開口部以外の光を露光に用いることができず、光の利用効率(照明効率)が低い。
【0006】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、特殊な光源を用いず、通常の超高圧水銀灯の放電管やレーザー光源を用いつつ、照明効率が良い照明光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、光源から導入した光を、照射対象物に照射する照明光学系であって、照射対象物と共役な面に入射した光の一部を取得し、該取得した光を照射対象物と共役な面に再度導く循環光学系を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、循環光学系により、従来ならば所望の照射位置まで到達せず、本来、照明光として利用できない光を取得し、再度照明光として利用するので、照明効率が良い照明光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る照明光学系の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る照明光学系の構成を示す概略図である。
【図3】フライアイレンズ光学系の構成を示す概略図である。
【図4】スリット板の構成を示す概略図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る照明光学系の構成を示す概略図である。
【図6】スリット板の構成を示す概略図である。
【図7】バンドルファイバーの射出側断面を示す概略図である。
【図8】本発明の実施形態に係る露光装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面等を参照して説明する。
【0011】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係る照明光学系の構成について説明する。以下、本実施形態の照明光学系は、例えば、露光装置に搭載されるものであり、光源からの光を照射対象物であるパターンが形成されたマスク(原版)へ導くための装置である。図1は、本実施形態に係る照明光学系の構成を示す概略図である。照明光学系10は、第1光学系11と、インテグレータ13と、第2光学系15と、第3光学系17とを備える。
【0012】
第1光学系11は、光源18から照射された光を第1照射面12に導く光学系であり、照射光の進行方向を偏向するミラー19と、該ミラー19からの光を集光するレンズ20とを備える。ミラー19は、本実施形態では、上記の作用に加え、後述する第3光学系17からの光をレンズ20に導く作用を有するため、2方向から導入される光を同一方向へ導出させるような三角柱として形成される。なお、このミラー19の代替部材として、上記の作用が得られるものであれば、例えば、ビームスプリッタ、若しくはプリズム等を採用することもあり得る。また、レンズ20は、説明上1つの光学素子としているが、複数の光学素子で構成される場合もある。また、本実施形態の照明光学系10に適用される光源18は、例えば、波長約193nmのArFエキシマレーザー、波長約248nmのKrFエキシマレーザー、波長約157nmのF2エキシマレーザー等のレーザー光源を使用する。但し、レーザーの種類は、エキシマレーザーに限定されず、例えば、YAGレーザーを使用しても良いし、レーザーの個数も限定されない。更に、光源18は、上記レーザー光源に限定されるものではなく、一又は複数の水銀ランプやキセノンランプ等のランプも使用可能である。
【0013】
第1光学系11からの光は、第1照射面12を経て、2次光源を形成するインテグレータ13へと導かれる。第1照明面12は、インテグレータ13の入射面に相当する。このインテグレータ13は、第2照射面16の照度均一性を高めるための光学系であり、例えば、ロット形状やシリンドリカル形状のフライアイレンズ光学系、若しくは光ファイバーを使用する光学系等が用いられる。インテグレータ13からの光は、二次光源面14を経て、第2光学系15へと導かれる。例えば、インテグレータ13にフライアイレンズ光学系を採用した場合、二次光源面14には、光源18と等価な多数の二次光源分布が形成される。第2光学系15は、第2照射面16が実質的に二次光源面14のフーリエ変換面(瞳共役面)となるように配置された光学系である。以上のような構成を採用することにより、二次光源面14は、第2照射面16をケーラー照明しており、第2照射面16での照度分布はほぼ均一となる。また、第1照射面12と第2照射面16とは、実質的に共役関係となる。第2照明面16を透過した光は、第2照明面16と共役な面に配置されたマスクを照明する。
【0014】
第3光学系17は、第2照射面16に到達した光の一部を取得し、再度第1光学系11に導く循環光学系である。第3光学系17は、第2照射面16の一部に設置されたミラー21と、該ミラー21から取得した光を再度第1光学系11内のミラー19に導く光学素子群22とを備える。第1ミラー21は、第2照射面16に到達した光の一部を取得するための反射部である。なお、本実施形態では、この反射部をミラーとしているが、光の一部を取得する作用が得られるものであれば、ミラーに限定されない。光学素子群22は、取得された光をミラー19へと導く光学経路であり、例えば、複数のミラー及びレンズ等の光学素子で構成される。光学素子群22の構成も、取得された光をミラー19へと導く作用が得られるものであれば、特に限定するものではない。
【0015】
次に、照明光学系10の作用について説明する。まず、光源18から射出された光は、第1光学系11を介し第1照射面12に導入され、インテグレータ13、二次光源形成面14、第2光学系15を順次通過し、第2照射面16の所望の照射位置に照射される。加えて、本実施形態では、ミラー21、第3光学系17により、第2照射面16に到達した光の一部を取得して第1光学系11内へと導き、再度照射光として利用する。第2照射面16から取得する光は、例えば、第2照射面16に所望の形状の開口が設けられた、照明領域を規定するスリット板(視野絞り)を配置した場合の、開口以外(非透過領域である遮光部)に入射する光とする。このとき、スリット板の開口を通過する照射光は、光源18を出て最初に入射する光(第1照明光)と、第1照明光の一部が第3光学系17を経て至る光(第2照明光)と、更にn−1回(nは自然数)、第3光学系17を経て至る光(第n照明光)との和となる。即ち、第2照射面16における合計の照度は、第1照明光から第n照明光までの和で表される。ここで、最初に第2照射面16に至る光の照度をp、第2照射面16における第1照明光のうちスリット板の開口部に入射する割合をr(0≦r≦1)とそれぞれ仮定する。また、開口部以外に入射する光が第3光学系17により回収された場合の、回収光の第3光学系17における光のエネルギー効率をfと仮定する。このとき、照明光学系10を数秒以上使用することで、nは無限に大きい値をとるので、第2照射面16の開口部における合計照度Wは、次式のように無限級数の和で表される。
W=pr/(1−f+rf) (1)
ここで、一例として、r=0.2、f=0.6として(1)式に代入すると、照明光学系10では、照明効率を約2倍にすることができる。
【0016】
以上のように、例えば、第2照射面16上に所望の形状のスリットを設けた視野絞りを配置した場合、スリット開口部以外に入射する光は、通常照明光として使用されないが、本発明の第1実施形態では、その光を捨てずに回収して再利用する。したがって、その開口を通過する光の照度を向上させてマスクを照明することができ、照明光学系の照明効率を向上させることができる。なお、第1照射面12と第2照射面16とは、上述のように実質的に共役関係にあるので、第3光学系17の第1ミラー21を第1照射面12の近傍に設置しても、同様の効果が得られる。
【0017】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る照明光学系の構成について説明する。図2は、本実施形態に係る照明光学系の構成を示す概略図である。照明光学系30は、第1光学系31と、フライアイレンズ光学系32と、第2光学系33と、第3光学系35とを備える。第1光学系31は、光源36から照射された光をフライアイレンズ光学系32の入射面に導く光学系であり、フライアイレンズ光学系32の入射面が、後述の光源36のランプ部37の実質的にフーリエ変換面となるように配置されている。なお、第1光学系31は、説明上1つの光学素子としているが、複数の光学素子で構成される場合もある。また、本実施形態の照明光学系30に適用される光源36は、例えば、水銀ランプや、キセノン−水銀ランプを使用する。光源36は、ランプ部37と集光ミラー38とで構成され、ランプ部37としては、水銀ランプ等を採用し、集光ミラー38としては、例えば、楕円集光ミラーを採用する。ランプ部37から発生した光は、集光ミラー38により集光され、第1光学系31を経てフライアイレンズ光学系32に導かれる。
【0018】
フライアイレンズ光学系32は、第1照射面34を矩形形状ではなく、円弧形状に照明するために、以下のような構成とする。図3は、フライアイレンズ光学系32の構成を示す概略図であり、図3(a)は、側面図であり、図3(b)は、光の入射側から見た平面図である。フライアイレンズ光学系32は、図3(a)に示すように、多数の平凸レンズを平面状に張りあわせ、かつ、曲率面を向かい合わせ、各レンズの焦点位置に対となる第1フライアイレンズ32a及び第2フライアイレンズ32bとを備える。この場合、第1フライアイレンズ32a及び第2フライアイレンズ32bを構成する各平凸レンズの曲率面は、レンズ断面に対して方向により曲率半径を変えても良い。また、第1フライアイレンズ32aを構成する各平凸レンズは、図3(b)に示すように、それぞれの入射面(光源側)の領域が、透過領域部50と、反射領域部(反射部)51とに分けられている。このとき、各平凸レンズは、入射面が第1照射面34と共役面になっているので、各平凸レンズの透過領域部50をそれぞれ円弧形状にすることで、第1照射面34を照明する照明領域は、円弧形状となる。
【0019】
第2光学系33は、第1照射面34が実質的にフライアイレンズ光学系32の射出面のフーリエ変換面となるように配置された光学系である。このような構成を採用することにより、光源36は、第1照射面34をケーラー照明し、第1照射面34での照度分布は、ほぼ均一となる。また、フライアイレンズ光学系32の入射面と第1照射面34とは、実質的に共役関係となる。更に、第1照射面34は、使用する照明光の領域を抽出するためのスリット板52を有する。図4は、スリット板52を示す概略図(平面図)ある。スリット板52は、第1照射面34を矩形形状に照明する場合、矩形領域から円弧領域を切り出す視野絞りであり、円弧形状の開口部53と、該開口部53の外周部に位置する遮光部54とを備える。
【0020】
第3光学系35は、フライアイレンズ光学系32に入射する光のうち反射領域部51に到達した光を取得し、再度フライアイレンズ光学系32に導入させる循環光学系である。第3光学系35は、フライアイレンズ光学系32の反射領域部51から取得した光を再度フライアイレンズ光学系32に導く光学素子群39と、平行平板40とを備える。光学素子群39は、取得された光をフライアイレンズ光学系32へと導く光学経路であり、複数のミラー及びレンズ等の光学素子で構成される。なお、光学素子群39の構成は、取得された光をフライアイレンズ光学系32へと導く作用が得られるものであれば、特に限定するものではない。平行平板40は、光軸に対して傾斜を有するよう設置された透過板であり、フライアイレンズ光学系32に帰路した光を、反射領域部51からシフトし、可能な限り透過領域部50に入射させるものである。このとき、シフト量は、平行平板40の傾斜角度、屈折率、若しくは厚みで調整することができる。この光学素子群39及び平行平板40は、反射領域部51を反射した光と、フライアイレンズ光学系32に帰路した光とがほぼ共役関係となるように配置する。
【0021】
次に、照明光学系30の作用について説明する。まず、光源36から射出された光は、第1光学系31を介してフライアイレンズ光学系32に導入され、第2光学系33、及び第1照射面34を順次通過し、所望の照射位置に照射される。しかしながら、第1照射面34に設置されたスリット板52では、通常、光は開口部53を通過するものの、遮光部54に入射する光は捨てることになり、照明効率が低下する。そこで、本実施形態では、フライアイレンズ32及び第3光学系35により、反射領域部51に到達した光を取得して再度フライアイレンズ光学系32の入射面へと導き、照射光として利用する。このとき、第1照射面34に到達する光は、最初に透過領域部50に入射して至る光と、最初に反射領域部51で反射して第3光学系35を経てフライアイレンズ光学系32に帰路した光のうち、透過領域部50に入射して至る光の和で表される。ここで、最初にフライアイレンズ光学系32を照射する光の照度をp、フライアイレンズ光学系32において最初に透過領域部50に入射した光の割合をr(0≦r≦1)、第3光学系35の光学ケラレを考慮した光のエネルギー効率をfと仮定する。更に、フライアイレンズ光学系32に帰路した光のうち、透過領域部50に入射した光の割合をg(0≦g≦1)とすると、第1照射面34に到達する光の合計照度Wは、次式で表される。
W=p(r+fg−rfg) (2)
ここで、一例として、r=0.2、f=0.5、g=0.5として(2)式に代入すると、照明光学系30では、照明効率を約2倍にすることができる。
【0022】
このように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。なお、本実施形態では、円弧形状の開口に対する照明を例示したが、円弧形状以外の他の形状の開口を照明する場合でも、本発明は適用可能である。この場合、透過領域部50及び反射領域部51の領域形状をそれぞれ所望の領域に設定することで、同様の効果が得られる。また、本実施形態では、各フライアイレンズ32a、32bを構成する各レンズは、平凸レンズとし、曲率面を向かい合わせた一対のフライアイレンズ32を採用したが、本発明は、これに限定されない。例えば、一対のフライアイレンズ32の構成として、平凸レンズの平面を向かい合わせた形態や、各レンズが両凸レンズである形態を採用しても良い。更に、本実施形態では、反射領域部51を反射した光とフライアイレンズ光学系32に帰路した光がほぼ共役関係となるように第3光学系35を配置するが、これは望ましい例の一つであり、共役関係から外れた場合でも、本発明の効果は得られる。
【0023】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る照明光学系の構成について説明する。図5は、本実施形態に係る照明光学系の構成を示す概略図である。照明光学系60は、第1光学系61と、第2光学系62と、フライアイレンズ光学系63と、第3光学系64と、スリット板65と、第4光学系66とを備える。まず、第1光学系61は、2箇所の光源67a、67bから照射された光を第2光学系62に導く光学系であり、2箇所のミラー68a、68bと、該ミラー68a、68bへ光源67a、67bからの光を導く1つまたは複数の光学素子69a、69bとを備える。2箇所のミラー68a、68bは、1つのミラーが一方向から導入される光を他方向へ導出させる三角柱として形成され、かつ、後述の第4光学系66からの光を通過させるように光路を挟んで両側に設置される。第2光学系62は、2箇所のミラー68a、68bからの光を集光する光学系である。なお、第2光学系62は、説明上1つの光学素子としているが、複数の光学素子で構成される場合もある。また、本実施形態の照明光学系60に適用される光源67a、67bは、第2実施形態と同様に、例えば、水銀ランプや、キセノン−水銀ランプを使用する。
【0024】
フライアイレンズ光学系63は、第1実施形態におけるインテグレータ13と同様に、例えば、ロッド形状、若しくはシリンドリカル形状の複数のレンズを平面状に並べることにより形成される。第3光学系64は、スリット板65が実質的にフライアイレンズ光学系63の射出面のフーリエ変換面(瞳共役面)となるように配置された光学系である。このような構成を採用することにより、フライアイレンズ光学系63の射出面は、スリット板65をケーラー照明しており、スリット板65に入射する光の照度分布は、ほぼ均一となる。また、フライアイレンズ光学系63の入射面とスリット板65とは、実質的に共役な面となる。更に、スリット板65は、使用する照明光の領域を抽出するための視野絞りであり、図6に、スリット板65の構成概略図(平面図)を示す。スリット板65は、矩形領域から円弧領域を切り出す作用を有し、円弧形状の開口部70と、該開口部70の外周部に位置する第4光学系導入部71とを備える。
【0025】
第4光学系66は、スリット板65に入射する光のうち第4光学系導入部71に到達した光を取得し、上流側のフライアイレンズ光学系63に再度導入させる光学系である。第4光学系66は、バンドルファイバー72と、該バンドルファイバー72から出た光を第2光学系62に導く光学素子73とを備える。光学素子73は、図5では一枚のレンズを表しているが、複数の光学素子群であってもよい。また、バンドルファイバー72は、複数の光ファイバーからなる光伝達素子である。このとき、バンドルファイバー72の入射側面は、図6に示すように、第4光学系導入部71において平面状に敷き詰められる。この第4光学系導入部71に入射した光は、バンドルファイバー72により伝達され、図7に示す射出側面72aに到る。図7は、バンドルファイバー72の射出側面72aを示す概略図である。図7に示すように、射出側面72aでは、バンドルファイバー72を構成する各線は、円形状に束ねて配置される。この射出側面72aから射出された光は、2箇所のミラー68a、68bの間を通過して、再度第2光学系62へ入射する。
【0026】
次に、照明光学系60の作用について説明する。まず、光源67a、67bから射出された光は、第1光学系61を介して第2光学系62に導入され、フライアイレンズ光学系63、第3光学系64を順次通過し、スリット板65の所望の照射位置に照射される。しかしながら、スリット板65では、通常、光は開口部70を通過するものの、第4光学系導入部71の非透過領域に相当する遮光部に入射する光は捨てることになり、照明効率が低下する。そこで、本実施形態では、第4光学系66により、第4光学系導入部71に到達した光を取得して再度第2光学系62へと導き、照射光として利用する。ここで、最初にスリット板65を照射する光の照度をp、開口部70の面積をスリット板65の全体の面積(開口部70と第4光学系導入部71との面積の合計)で割った値をrとし、バンドルファイバー72による光のエネルギー効率をfと仮定する。このとき、最初にスリット板65を照射する光を第1照明光として、バンドルファイバー72をn度通過した後スリット板65に帰路する光を第(n+1)照明光とすると、開口部70における合計照度Wは、第1照明光から第(n+1)照明光の和となる。更に、本実施形態の照明光学系60を数秒以上使用することで、nは無限に大きい値をとるので、合計照度Wは、次式のように無限級数の和で表される。
W=pr/(1−f+rf) (3)
ここで、一例として、r=0.2、f=0.6として(3)式に代入すると、照明光学系60では、照明効率を約2倍にすることができる。
【0027】
このように、本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。なお、本実施形態では、バンドルファイバー72の射出側面72aを円形状に束ねて配置したが、光学素子73を変化させることで、様々な形状とすることができる。また、本実施形態では、光源の設置数を2つとしたが、1つ、若しくは3つ以上でも構わない。なお、照射対象物と共役な面(照射面)に入射する光の一部は、上流側の別の照射面上に導いても、同一の照射面上に再度導いてもよい。
【0028】
(露光装置)
次に、本発明の照明光学系を採用した露光装置について説明する。図8は、本発明の実施形態である露光装置の構成を示す概略図である。露光装置の露光方式は、レンズ、若しくは鏡を用いてマスク(原版)のパターンを基板上に投影露光するプロジェクション方式と、マスクと基板との間に微小な間隙を設けてマスクのパターンを基板へ転写するプロキシミティ方式とがある。一般に、プロジェクション方式は、プロキシミティ方式と比較して、パターン解像性能や基板の倍率補正等の精度が高く、生産に適している。そこで、本実施形態では、ガラス基板に対する反射型投影光学系を用いたプロジェクション方式の露光装置を採用するものとして説明する。露光装置90は、マスクMに形成されたパターン(例えば、TFT回路)を、感光剤が塗布された基板P上へ投影転写するものである。この露光装置90は、光源91からの光を導入する照明光学系92と、該照明光学系92からの光をマスクM上に導く光学系93と、マスクMを載置する原版ステージ94と、投影光学系95と、基板Pを載置する基板ステージ96とを備える。
【0029】
この露光装置90において、光源91及び照明光学系92は、上記実施形態に示す光源及び照明光学系が採用される。光学系93は、照明光学系92の不図示の照射面とマスク表面とをほぼ共役な関係に保つ光学系である。したがって、照明光学系92は、該照明光学系92の照射面を均一に照明することにより、ケラレが無ければ、マスク表面もほぼ均一、かつ、ほぼ照明光学系92の照明形状と同じ形状に照明することが可能となる。原版ステージ94は、マスクMを載置し保持しつつ、XY方向に移動可能なステージ装置である。投影光学系95は、該投影光学系95の内部に設置された反射鏡97で偏向特性を変化させつつ、マスクMの照射領域に描画されたパターン像を基板P上に結像させるものである。基板ステージ96は、基板Pを載置し保持しつつ、XYZの3次元方向に移動可能なステージ装置である。本実施形態の露光装置90によれば、照明効率の良い照明光学系を採用するので、露光装置の省エネルギーに寄与する。
【0030】
(デバイスの製造方法)
次に、本発明の一実施形態のデバイス(半導体デバイス、液晶表示デバイス等)の製造方法について説明する。半導体デバイスは、ウエハに集積回路を作る前工程と、前工程で作られたウエハ上の集積回路チップを製品として完成させる後工程を経ることにより製造される。前工程は、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布されたウエハを露光する工程と、ウエハを現像する工程を含む。後工程は、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)と、パッケージング工程(封入)を含む。液晶表示デバイスは、透明電極を形成する工程を経ることにより製造される。透明電極を形成する工程は、透明導電膜が蒸着されたガラス基板に感光剤を塗布する工程と、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布されたガラス基板を露光する工程と、ガラス基板を現像する工程を含む。本実施形態のデバイス製造方法によれば、従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0032】
10 照明光学系
11 第1光学系
12 第1照射面
13 インテグレータ
14 二次光源面
15 第2光学系
16 第2照射面
17 第3光学系
18 光源
90 露光装置
91 光源
92 照明光学系
94 原版ステージ
96 基板ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から導入した光を照射対象物に照射する照明光学系であって、
前記照射対象物と共役な面に入射した光の一部を取得し、該取得した光を前記照射対象物と共役な面に再度導く循環光学系を有することを特徴とする照明光学系。
【請求項2】
前記照射対象物と共役な面に反射部が設けられ、
前記循環光学系は、前記反射部にて反射した光を再び前記照射対象物と共役な面に導くことを特徴とする請求項1に記載の照明光学系。
【請求項3】
2次光源を形成するインテグレータを有し、
前記循環光学系は、前記インテグレータを透過して前記照射対象物と共役な面に入射した光の一部を取得し、前記インテグレータの入射面に再度導くことを特徴とする請求項1又は2に記載の照明光学系。
【請求項4】
前記照射対象物と共役な面に配置された、前記照射対象物の照明領域を規定する視野絞りを有し、
前記循環光学系は、前記視野絞りの非透過領域に入射する光を前記照射対象物と共役な面に再度導くことを特徴とする請求項1に記載の照明光学系。
【請求項5】
前記循環光学系は、射出面と前記照射面とが共役関係になるように配置されることを特徴とする請求項1又は4に記載の照明光学系。
【請求項6】
光源からの光で原版を照明する照明光学系と、前記原版を載置して移動可能な原版ステージと、前記原版からの光を基板に導く投影光学系と、前記基板を載置して移動可能な基板ステージとを有する露光装置であって、
前記照明光学系は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の照明光学系であることを特徴とする露光装置。
【請求項7】
請求項6に記載の露光装置を用いて基板を露光する工程と、
露光された基板を現像する工程と、
を備えることを特徴とするデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−142150(P2011−142150A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−916(P2010−916)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】