説明

照明光学系および画像表示装置

【課題】光源となる素子数を増やしても、照明光学系をコンパクトに構成可能な照明光学系および画像表示装置の提供を目的とする。
【解決手段】照明光学系は、二次元レーザアレイ光源と、インテグレータ光学系と、複数の第1レンズと、複数の第2レンズと、を備える。二次元レーザアレイ光源は、複数のレーザ光源を、平面上に二次元アレイ状にして配置する。インテグレータ光学系は、入射光を重畳して被照射面に照射する。複数の第1レンズは、二次元アレイ平面と平行に配置されて、二次元アレイ平面の第1軸方向の発散角を制限しながら、二次元レーザアレイ光源からの光線を第1軸方向で重畳してインテグレータ光学系に照射する。複数の第2レンズは、第1レンズの後方に配置されて、第1軸方向と直交する第2軸方向の発散角を制限しながら、二次元レーザアレイ光源からの光線を第2軸方向で重畳してインテグレータ光学系に照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、照明光学系および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置の1つとしてフロントプロジェクター(投影装置)が知られている。フロントプロジェクターは、光源として放電ランプ、光変調素子としては反射型液晶表示素子、透過型液晶素子やDMD(Digital Micromirror Device)などが用いられており、デバイス、光学系とも、さまざまな改良が重ねられてきている。
【0003】
近年、画像表示装置の新しい光源として、レーザを用いる提案がある。レーザは、発光点が非常に微小であり、中央部の輝度が高く、周辺に向かって輝度が急激に減少する、ほぼガウシアン分布にしたがう照度分布を有する。そのため、レーザを光源とする照明光学系は、均一分布の照明として利用するための輝度の均一化が必要とされ、いくつかの提案がなされている(たとえば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−5015号公報
【特許文献2】特開2009−192789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、提案の照明光学系は、一次元レーザアレイ光源であり、より大きな光量を得ようとして光源となる素子数を増やすと、照明光学系が大きくなるという欠点を有する。
【0006】
本技術は、このような点に鑑みてなされたものであり、光源となる素子数を増やしても、照明光学系をコンパクトに構成可能な照明光学系および画像表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、照明光学系は、二次元レーザアレイ光源と、インテグレータ光学系と、複数の第1レンズと、複数の第2レンズと、を備える。二次元レーザアレイ光源は、複数のレーザ光源を、平面上に二次元アレイ状にして配置する。インテグレータ光学系は、入射光を重畳して被照射面に照射する。複数の第1レンズは、前記平面と平行に配置されて、前記二次元アレイの第1軸方向の発散角を制限しながら、前記二次元レーザアレイ光源からの光線を前記第1軸方向で重畳して前記インテグレータ光学系に照射する。複数の第2レンズは、前記第1レンズの後方に配置されて、前記第1軸方向と直交する第2軸方向の発散角を制限しながら、前記二次元レーザアレイ光源からの光線を前記第2軸方向で重畳して前記インテグレータ光学系に照射する。
【0008】
また、上記課題を解決するために、画像表示装置は、光変調素子と、二次元レーザアレイ光源と、インテグレータ光学系と、複数の第1レンズと、複数の第2レンズと、を備える。二次元レーザアレイ光源は、複数のレーザ光源を、平面上に二次元アレイ状にして配置する。インテグレータ光学系は、入射光を重畳して前記光変調素子に照射する。複数の第1レンズは、前記平面と平行に配置されて、前記二次元アレイの第1軸方向の発散角を制限しながら、前記二次元レーザアレイ光源からの光線を前記第1軸方向で重畳して前記インテグレータ光学系に照射する。複数の第2レンズは、前記第1レンズの後方に配置されて、前記第1軸方向と直交する第2軸方向の発散角を制限しながら、前記二次元レーザアレイ光源からの光線を前記第2軸方向で重畳して前記インテグレータ光学系に照射する。
【発明の効果】
【0009】
上記の照明光学系および画像表示装置によれば、光源となる素子数を増やしても、照明光学系をコンパクトに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】第1の実施形態の画像表示装置の構成例を示す図である。
【図2】第1の実施形態の照明光学系の構成例を第1平面に表した図である。
【図3】第1の実施形態の照明光学系の構成例を第2平面に表した図である。
【図4】第1の実施形態の二次元レーザアレイ光源からの出射光の様子を第1平面に表した図である。
【図5】第1の実施形態の二次元レーザアレイ光源からの出射光の様子を第2平面に表した図である。
【図6】第1の実施形態の照明光学系のインテグレータ光学系における入射光と出射光の関係を第1平面に表した図である。
【図7】第1の実施形態の照明光学系のインテグレータ光学系における入射光と出射光の関係を第2平面に表した図である。
【図8】第1の実施形態の照明光学系によって照射面に照射された光線の照度分布を示す図である。
【図9】第2の実施形態の照明光学系の構成例を第1平面に表した図である。
【図10】第2の実施形態の照明光学系の構成例を第2平面に表した図である。
【図11】第3の実施形態の照明光学系の構成例を第1平面に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
[第1の実施形態]
まず、第1の実施形態の画像表示装置の全体構成について図1を用いて説明する。図1は、第1の実施形態の画像表示装置の構成例を示す図である。
【0013】
画像表示装置1は、RGB(赤色、緑色、青色)毎に光変調された画像を合成した画像を表示出力する。画像表示装置1は、たとえば、フロントプロジェクターやリアプロジェクターなどの投影装置である。
【0014】
画像表示装置1は、照明光学系10R、10G、10B、反射型偏光素子2R、2G、2B、光変調素子3R、3G、3B、色合成プリズム4(合成光学系)、投影レンズ5(投射光学系)を有している。
【0015】
照明光学系10R、10G、10Bは、RGBの各色に対応する二次元レーザアレイ光源を有する照明光学系である。たとえば、照明光学系10Rは、赤色に対応する二次元レーザアレイ光源を有する。照明光学系10Gは、緑色に対応する二次元レーザアレイ光源を有する。照明光学系10Bは、青色に対応する二次元レーザアレイ光源を有する。
【0016】
照明光学系10Rは、二次元レーザアレイ光源からの出射光(L1)を、均一な照度分布にして被照射面となる光変調素子3Rに照射する。照明光学系10Gは、二次元レーザアレイ光源からの出射光(L2)を、均一な照度分布にして被照射面となる光変調素子3Gに照射する。照明光学系10Bは、二次元レーザアレイ光源からの出射光(L3)を、均一な照度分布にして被照射面となる光変調素子3Bに照射する。
【0017】
照明光学系10R、10G、10BからのRGBの各光は、それぞれ対応する反射型偏光素子2R、2G、2Bで反射し、対応する光変調素子3R、3G、3Bを照射する。光変調素子3R、3G、3Bは、RGBの各光をそれぞれ光変調して反射する。
【0018】
光変調素子3R、3G、3Bで光変調されたRGBの各光は、図示しない光学補償素子で光学補償(位相変調量の微調整)された後、反射型偏光素子2R、2G、2Bに入射する。再度、反射型偏光素子2R、2G、2Bに入射したRGBの各光は、光変調の度合いにより、一部は透過して色合成プリズム4に入射し、一部は反射して照明光学系10R、10G、10Bの方向に戻る。
【0019】
色合成プリズム4は、緑色波長帯域の入射光を透過し、赤色波長帯域および青色波長帯域の入射光を投影レンズ5方向に反射するように構成されている。色合成プリズム4は、たとえば、複数のガラスプリズム(4つの略同形状の直角二等辺プリズム)を接合することによって構成されており、各ガラスプリズムの接合面には、所定の光学特性を有する2つの干渉フィルタが形成されている。第1干渉フィルタは、青色波長帯域の入射光を反射し、赤色波長帯域および緑色波長帯域の入射光を透過する。第2干渉フィルタは、赤色波長帯域の入射光を反射し、緑色波長帯域および青色波長帯域の入射光を透過する。したがって、色合成プリズム4は、光変調素子3Rからの入射光(L4)と、光変調素子3Gからの入射光(L5)と、光変調素子3Bからの入射光(L6)を合成して、投影レンズ5に出射する。
【0020】
投影レンズ5は、色合成プリズム4からの出射光(L7)を所定の倍率に拡大してスクリーン(図示せず)に映像を投影する。
【0021】
なお、光変調素子としては、反射型液晶表示素子、透過型液晶素子やDMD(Digital Micromirror Device)を用いた構成とすることができる。
【0022】
次に、第1の実施形態の照明光学系の構成について図2、図3を用いて説明する。図2は、第1の実施形態の照明光学系の構成例を第1平面に表した図である。図3は、第1の実施形態の照明光学系の構成例を第2平面に表した図である。なお、第1平面は、光源の光軸を法線とする平面上の一軸をy軸方向として定義し、y軸方向に直交する方向をx軸方向として定義する。このとき、x軸が図面の下方から上方に向き、y軸が手前に向かって図面を貫通する向きにある平面を第1平面と定義する。また、y軸が図面の下方から上方に向き、x軸が手前から図面を貫通する向きにある平面を第2平面と定義する。
【0023】
照明光学系10は、対応する色(波長)を特定しない二次元レーザアレイ光源12を有する照明光学系である。照明光学系10は、照明光学系10R、10G、10Bと同様の構成であり、照明光学系10を説明することで、照明光学系10R、10G、10Bの各々の説明に代える。
【0024】
照明光学系10(照明光学装置)は、二次元レーザアレイ光源12と、第1レンズ13と、第2レンズ14と、インテグレータ光学系11を備える。照明光学系10は、インテグレータ光学系11からの出射光を光変調素子19に照射する。
【0025】
二次元レーザアレイ光源12は、複数のシングルレーザ光源を平面上に二次元アレイ状にして配置する。たとえば、二次元レーザアレイ光源12は、m×n個のシングルレーザ光源を、m行、n列の二次元アレイ状(マトリクス状)に配置する。
【0026】
シングルレーザ光源は、光軸に対して所定の発散角(広がり角)を有し、特定方向に対して大きな発散角を有する。二次元レーザアレイ光源12は、複数のシングルレーザ光源の特定方向を揃えて配置する。したがって、二次元レーザアレイ光源12も光軸に対して所定の発散角を有し、特定方向に対して大きな発散角を有する。なお、ここでの特定方向は、y軸方向である。
【0027】
照明光学系10は、二次元レーザアレイ光源12がシングルレーザ光源を配置する平面と平行に、複数の第1レンズ13を配置する。第1レンズ13は、シリンドリカルレンズによって構成される。
【0028】
第1レンズ13は、x軸方向に並ぶシングルレーザ光源の一列ごとに設けられ、y軸方向に並べて複数配置される。第1レンズ13は、入射光のうちFAST軸成分をコリメートするFAC(Fast-Axis-Collimator)レンズであり、FAST軸成分について準平行光を生成するレンズとして用いられる。
【0029】
第1レンズ13は、二次元レーザアレイ光源12からの出射光を、主としてy軸方向(二次元アレイの第1軸方向)について発散角を制限した準平行光(完全にコリメートしない光線)にする。
【0030】
ここでいう準平行光は、インテグレータ光学系11の入射面において、インテグレータ光学系11への入射光がy軸方向で重畳する程度の発散角を有する。第1レンズ13は、デフォーカスするように、焦点位置が二次元レーザアレイ光源12から所定量だけずらして配置されている。これにより、第1レンズ13は、出射光を、y軸方向について準平行光としている。
【0031】
照明光学系10は、二次元レーザアレイ光源12がシングルレーザ光源を配置する平面と平行に、複数の第2レンズ14を配置する。第2レンズ14は、第1レンズ13の後方(インテグレータ光学系11側)に配置される。第2レンズ14は、シリンドリカルレンズによって構成される。
【0032】
第2レンズ14は、y軸方向に並ぶシングルレーザ光源の一列ごとに設けられ、x軸方向に並べて複数配置される。第2レンズ14は、入射光のうちSLOW軸成分をコリメートするSAC(Slow-Axis-Collimator)レンズであり、SLOW軸成分について準平行光を生成するレンズとして用いられる。
【0033】
第2レンズ14は、二次元レーザアレイ光源12からの出射光を、主としてx軸方向(二次元アレイの第2軸方向)について発散角を制限した準平行光にする。
【0034】
ここでいう準平行光は、インテグレータ光学系11の入射面において、インテグレータ光学系11への入射光がx軸方向で重畳する程度の発散角を有する。第2レンズ14は、デフォーカスするように、焦点位置が二次元レーザアレイ光源12から所定量だけずらして配置されている。これにより、第2レンズ14は、出射光を、x軸方向について準平行光としている。
【0035】
インテグレータ光学系11は、第1フライアイレンズ15と、第2フライアイレンズ16と、コンデンサレンズ17と、フィールドレンズ18を備える。インテグレータ光学系11は、第1レンズ13および第2レンズ14が一部を重畳しながら準平行光とした、二次元レーザアレイ光源12からの出射光を、第1フライアイレンズ15に入射する。したがって、インテグレータ光学系11は、第2レンズ14からの照射光が一部重畳するように、第2レンズ14と所定の距離を設けて配置される。
【0036】
インテグレータ光学系11は、第1フライアイレンズ15への入射光を分割した後、照射面に重畳するようにして出射する。インテグレータ光学系11は、フィールドレンズ18からの出射光を、被照射面となる光変調素子19に照射する。
【0037】
第1フライアイレンズ15および第2フライアイレンズ16は、入射した準平行光の照度を均一化する。コンデンサレンズ17は、第2フライアイレンズ16の出射光を入射して、フィールドレンズ18を通して光変調素子19に照射する。
【0038】
このように、照明光学系10は、二次元レーザアレイ光源12からの出射光を、まず、第1レンズ13によってy軸方向の発散角を小さくし、次に、第2レンズ14によってx軸方向の発散角を小さくしている。第1レンズ13および第2レンズ14を出射した準平行光は、x軸方向およびy軸方向で光線同士が一部重畳して、インテグレータ光学系11を照射する。
【0039】
なお、二次元レーザアレイ光源12が出射する光線は、直線偏光である。二次元レーザアレイ光源12が出射する光線の偏光方向は、光変調素子19が反射型液晶表示素子(反射型液晶表示装置)や、透過型液晶素子(透過型液晶表示装置)である場合、光変調素子19の偏光方向と一致するように設けられる。これにより、照明光学系10は、二次元レーザアレイ光源12の偏光方向を保持することによって、P/S変換素子などを追加する必要も無く、光利用効率を高く保つことができる。
【0040】
この場合、二次元レーザアレイ光源12の偏光比は、望ましくは10以上である。すなわち、P成分とS成分のうち、従となる偏光成分を1としたとき、主となる偏光成分は10以上である。より望ましくは、二次元レーザアレイ光源12の偏光比は、20以上である。すなわち、P成分とS成分のうち、従となる偏光成分を1としたとき、主となる偏光成分は20以上である。なお、所望する偏光比を得られない場合は、照明光学系10は、P/S変換素子を設けて光学効率を改善することができる。
【0041】
次に、第1の実施形態の照明光学系の構成について図4、図5を用いて説明する。図4は、第1の実施形態の二次元レーザアレイ光源からの出射光の様子を第1平面に表した図である。図5は、第1の実施形態の二次元レーザアレイ光源からの出射光の様子を第2平面に表した図である。
【0042】
二次元レーザアレイ光源12は、y軸方向にピッチP1(距離P1)、x軸方向にピッチP2(距離P2)でシングルレーザ光源20を二次元アレイ状に配置する。二次元レーザアレイ光源12は、y軸方向について大きな発散角を有するように、シングルレーザ光源20を配置する。
【0043】
シングルレーザ光源20は、x軸方向にピッチP1より小さいピッチP2で複数が並べられて一次元レーザアレイ光源を構成する。一次元レーザアレイ光源は、対応する第1レンズ13とともに一次元レーザアレイユニットを構成する。二次元レーザアレイ光源12は、複数の一次元レーザアレイユニットをy軸方向にピッチP1で並べることで、複数のシングルレーザ光源20を二次元アレイ状に配置する。
【0044】
第2レンズ14は、二次元レーザアレイ光源12の後方に配置され、二次元レーザアレイユニットを構成する。二次元レーザアレイ光源12は、必要な光量に応じて、1または2以上の二次元レーザアレイユニットにより構成される。
【0045】
このような二次元レーザアレイ光源12からの出射光は、第1レンズ13によってy軸方向に発散角β1を有し、第2レンズ14によってx軸方向に発散角α1を有する準平行光としてインテグレータ光学系11を照射する。
【0046】
このような構成により、照明光学系10は、二次元レーザアレイ光源12の素子(シングルレーザ光源20)数が増えても、発散角が大きい方向への素子の配置を容易としている。また、照明光学系10は、二次元レーザアレイ光源12の素子が二次元アレイ状に配置した配置面のいずれにあっても、対応する第1レンズ13および対応する第2レンズ14によって準平行光を生成可能であり、素子数の増大に容易に対応可能である。
【0047】
このように、照明光学系10は、より大きな光量を得るためにシングルレーザ光源20の素子数を増やしても、コンパクトに設計可能である。また、二次元レーザアレイ光源12は、シングルレーザ光源20を二次元アレイ状に配置するとき、発散角が大きいy軸方向の配置数を発散角が小さいx軸方向の配置数より少なくすることで、二次元レーザアレイ光源12をコンパクトにしている。
【0048】
特に、照明光学系10は、二次元レーザアレイ光源12の素子数が増えても、二次元アレイ面の中央部から離れた周縁部に位置する素子について、中央部に位置する素子と同様にインテグレータ光学系への照明光の取り込みを容易にする。
【0049】
また、照明光学系10は、第1レンズ13と第2レンズ14のうち、第1レンズ13を光源側に配置したことで、二次元レーザアレイ光源12からの出射光のうち発散角が大きいy軸方向について先に準平行光を生成して照明光学系10をコンパクトにしている。
【0050】
次に、第1の実施形態のインテグレータ光学系11における入射光と出射光の関係について図6、図7を用いて説明する。図6は、第1の実施形態の照明光学系のインテグレータ光学系における入射光と出射光の関係を第1平面に表した図である。図7は、第1の実施形態の照明光学系のインテグレータ光学系における入射光と出射光の関係を第2平面に表した図である。
【0051】
第1平面に表したインテグレータ光学系11は、第2レンズ14から発散角α1の出射光を入射し、取込角α2で光変調素子19を照射する。このとき、インテグレータ光学系11は、第2レンズ14のx軸方向の大きさL1xの出射面から光を取り込み、光変調素子19のx軸方向の大きさL2xの被照射面を照射する。
【0052】
同様に、第2平面に表したインテグレータ光学系11は、第2レンズ14から発散角β1の出射光を入射し、取込角β2で光変調素子19を照射する。このとき、インテグレータ光学系11は、第2レンズ14のy軸方向の大きさL1yの出射面から光を取り込み、光変調素子19のy軸方向の大きさL2yの被照射面を照射する。
【0053】
なお、発散角α1および発散角β1は、シングルレーザ光源20の発光点の大きさ、実装精度、およびデフォーカス量によって決定される。
【0054】
これら、L1x、L1y、α1、α2、L2x、L2y、β1、β2の関係式はラグランジュ−ヘルムホルツの不変量によって、(1)式および(2)式のように表される。なお、k1、k2は、第2レンズ14からの出射光と、インテグレータ光学系11が取り込む光の関係を表す係数である。
k1・L1x・α1=L2x・α2 ……(1)
k2・L1y・β1=L2y・β2 ……(2)
【0055】
係数k1、k2は、0.5から1.5の範囲にあることが望ましい。たとえば、係数が0.5以下の場合、インテグレータ光学系11は、50%以上の光を利用しないことを示す。また、係数が1.5以上の比率の場合、インテグレータ光学系11は、過大に冗長設計であることを示す。
【0056】
したがって、照明光学系10は、0.5≦k1≦1.5、0.5≦k2≦1.5の範囲で、(1)式および(2)式を満たすことで、好適に設計され得る。なお、係数k1、k2は、等しくてもよい。
【0057】
このように、照明光学系10は、インテグレータ光学系11の取込角度に合わせて、光線の発散角をコントロールすることで、光線の利用効率を最適化することが可能である。また、照明光学系10は、インテグレータ光学系11への入射光の重ね合わせを大きくすることで、照射面の均一性を得ることができる。
【0058】
次に、第1の実施形態の照明光学系10によって照射面に照射された光線の照度分布について図8を用いて説明する。図8は、第1の実施形態の照明光学系によって照射面に照射された光線の照度分布を示す図である。
【0059】
図8に示すグラフは、横軸を照射面の位置、縦軸を照度として、照明光学系10が照射面に照射する光線の照度分布91(実線)と、比較例となる照明光学系の照度分布90(破線)とを表す。
【0060】
比較例となる照度分布90は、二次元レーザアレイ光源からの光を平行光にしてインテグレータ光学系に取り込む場合を示し、複数ある光源の均一化が十分になされず、不均一な照度分布を示す。一方、照明光学系10の照度分布91は、複数ある光源の均一化がなされ、全体として均一な照度分布を示す。
【0061】
このように、照明光学系10は、インテグレータ光学系11によって、照度が均一化された光線を被照射面に照射することができる。また、照明光学系10は、二次元レーザアレイ光源12を大光量にしても発散角が過大にならず、x軸方向の発散角とy軸方
向の発散角とをコントロールすることで、インテグレータ光学系11の取込角度とのバランスをとることができる。これにより、照明光学系10は、光学効率の損失を低減し、均一性のよい照明光を得ることができる。また、照明光学系10は、二次元レーザアレイ光源12の偏光方向を維持して被照射面に照射することで、高い光学効率を実現する。
【0062】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態の照明光学系の構成について図9、図10を用いて説明する。図9は、第2の実施形態の照明光学系の構成例を第1平面に表した図である。図10は、第2の実施形態の照明光学系の構成例を第2平面に表した図である。なお、第2の実施形態の説明では、第1の実施形態と同様の構成について符号を同じにして詳細な説明を省略する。また、x軸方向、y軸方向、第1平面、第2平面の定義は、第1の実施形態と同様とする。
【0063】
照明光学系30は、第1の実施形態の照明光学系10と同様に、対応する色を特定しない二次元レーザアレイ光源12を有する照明光学系である。
【0064】
照明光学系30(照明光学装置)は、二次元レーザアレイ光源12と、第1レンズ13と、第2レンズ14と、インテグレータ光学系31を備える。照明光学系30は、インテグレータ光学系31からの出射光を光変調素子19に照射する。
【0065】
インテグレータ光学系31は、集光レンズ32と、ロッドレンズ33と、コンデンサレンズ34と、フィールドレンズ18を備える。インテグレータ光学系31は、第1レンズ13および第2レンズ14が準平行光とした、二次元レーザアレイ光源12からの出射光を、集光レンズ32を介してロッドレンズ33に入射する。二次元レーザアレイ光源12からの出射光は、一部を重畳(デフォーカス)しながらロッドレンズ33の入射面に入射する。したがって、インテグレータ光学系31は、第2レンズ14からの照射光が一部重畳するように、第2レンズ14と所定の距離を設けて配置される。
【0066】
ロッドレンズ33への入射光は、ロッドレンズ33により重畳されて、照度が均一化される。コンデンサレンズ34は、ロッドレンズ33の出射光を入射して、フィールドレンズ18を通して光変調素子19に照射する。
【0067】
このように、照明光学系30は、二次元レーザアレイ光源12からの出射光を、まず、第1レンズ13によってy軸方向の発散角を小さくし、次に、第2レンズ14によってx軸方向の発散角を小さくしている。第1レンズ13および第2レンズ14を出射した準平行光は、x軸方向およびy軸方向で光線同士が一部重畳して、インテグレータ光学系31を照射する。
【0068】
なお、二次元レーザアレイ光源12の偏光方向は、光変調素子19が反射型液晶表示素子(反射型液晶表示装置)や、透過型液晶素子(透過型液晶表示装置)である場合、光変調素子19の偏光方向と一致するように設けられる。これにより、照明光学系10は、二次元レーザアレイ光源12の偏光方向を保持することによって、P/S変換素子などを追加する必要も無く、光利用効率を高く保つことができる。また、第1の実施形態と同様に、照明光学系30は、0.5≦k1≦1.5、0.5≦k2≦1.5の範囲で、(1)式および(2)式を満たすことで、好適に設計され得る。
【0069】
このような構成により、照明光学系30は、二次元レーザアレイ光源12の素子(シングルレーザ光源20)数が増えても、発散角が大きい方向への素子の配置を容易としている。また、照明光学系30は、二次元レーザアレイ光源12の素子が二次元アレイ状に配置した配置面のいずれにあっても、対応する第1レンズ13および対応する第2レンズ14によって準平行光を生成可能であり、素子数の増大に容易に対応可能である。また、照明光学系30は、二次元レーザアレイ光源12の素子が二次元アレイ状に配置した配置面のいずれにあっても、第1レンズ13および第2レンズ14が各々の素子に対応することで、第1レンズ13および第2レンズ14の球面収差を抑制可能である。
【0070】
このように、照明光学系30は、より大きな光量を得るためにシングルレーザ光源20の素子数を増やしても、コンパクトに設計可能である。
【0071】
特に、照明光学系30は、二次元レーザアレイ光源12の素子数が増えても、二次元アレイ面の中央部から離れた周縁部に位置する素子について、中央部に位置する素子と同様にインテグレータ光学系への照明光の取り込みを容易にする。
【0072】
また、照明光学系30は、第1レンズ13と第2レンズ14のうち、第1レンズ13を光源側に配置したことで、二次元レーザアレイ光源12からの出射光のうち発散角が大きいy軸方向について先に準平行光を生成して照明光学系30をコンパクトにしている。
【0073】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態の照明光学系の構成について図11を用いて説明する。図11は、第3の実施形態の照明光学系の構成例を第1平面に表した図である。なお、第3の実施形態の説明では、第1の実施形態と同様の構成について符号を同じにして詳細な説明を省略する。また、x軸方向、y軸方向、第1平面の定義は、第1の実施形態と同様とする。
【0074】
照明光学系40は、第1の実施形態の照明光学系10と同様に、対応する色を特定しない二次元レーザアレイ光源12を有する照明光学系である。
【0075】
照明光学系40(照明光学装置)は、二次元レーザアレイ光源12と、第1レンズ13と、第2レンズ14と、リレー光学系41と、インテグレータ光学系11を備える。照明光学系40は、インテグレータ光学系11からの出射光を被照射面に照射する。なお、照明光学系40は、インテグレータ光学系11に代えてインテグレータ光学系31を備えるようにしてもよい。
【0076】
リレー光学系41は、第1リレーレンズ42と、第2リレーレンズ43を備える。照明光学系40は、第2レンズ14からの出射光がリレー光学系41を通過することにより、二次元レーザアレイ光源12の大きさ(面積)を任意にして、インテグレータ光学系11を構成する光学装置(たとえば、第1フライアイレンズ15)の大きさに合わせることができる。
【0077】
このように、照明光学系40は、リレー光学系41を備えることにより、二次元レーザアレイ光源12とインテグレータ光学系11の組み合わせの柔軟性を拡張する。
【0078】
なお、本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)複数のレーザ光源を、平面上に二次元アレイ状にして配置する二次元レーザアレイ光源と、
入射光を重畳して被照射面に照射するインテグレータ光学系と、
前記平面と平行に配置されて、前記二次元アレイの第1軸方向の発散角を制限しながら、前記二次元レーザアレイ光源からの光線を前記第1軸方向で重畳して前記インテグレータ光学系に照射する複数の第1レンズと、
前記第1レンズの後方に配置されて、前記第1軸方向と直交する第2軸方向の発散角を制限しながら、前記二次元レーザアレイ光源からの光線を前記第2軸方向で重畳して前記インテグレータ光学系に照射する複数の第2レンズと、
を備える照明光学系。
(2)前記複数の第2レンズから出射する光線は、前記第1軸方向および前記第2軸方向のそれぞれにおいて、出射範囲の大きさと発散角との積が、前記被照射面の照射範囲の大きさと取込角の積の0.5倍以上、かつ1.5倍以下である(1)記載の照明光学系。
(3)前記第1レンズおよび前記第2レンズは、シリンドリカルレンズによって構成される(1)または(2)記載の照明光学系。
(4)前記二次元レーザアレイ光源からの光線は、直線偏光であって、前記直線偏光の偏光成分と、前記直線偏光と直交する方向の偏光成分との比が少なくとも10以上である(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の照明光学系。
(5)前記二次元レーザアレイ光源は、前記複数のレーザ光源を、前記第1軸方向において第1ピッチで配列し、前記第2軸方向において前記第1ピッチより小さな第2ピッチで配列する(1)乃至(4)のいずれか1つに記載の照明光学系。
(6)前記インテグレータ光学系は、
第1フライアイレンズと、
前記第1フライアイレンズの後方に配置される第2フライアイレンズと、
前記第2フライアイレンズの後方に配置されるレンズ群と、
を含んで構成される(1)乃至(5)のいずれか1つに記載の照明光学系。
(7)前記インテグレータ光学系は、
ロッドレンズと、
前記ロッドレンズの前方に位置する前方レンズと、
前記ロッドレンズの後方に位置する後方レンズと、
を含んで構成される(1)乃至(5)のいずれか1つに記載の照明光学系。
(8)前記複数の第2レンズと前記インテグレータ光学系との間をリレーするリレー光学系を備える(1)乃至(7)のいずれか1つに記載の照明光学系。
(9)光変調素子と、
複数のレーザ光源を、平面上に二次元アレイ状にして配置する二次元レーザアレイ光源と、
入射光を重畳して前記光変調素子に照射するインテグレータ光学系と、
前記平面と平行に配置されて、前記二次元アレイの第1軸方向の発散角を制限しながら、前記二次元レーザアレイ光源からの光線を前記第1軸方向で重畳して前記インテグレータ光学系に照射する複数の第1レンズと、
前記第1レンズの後方に配置されて、前記第1軸方向と直交する第2軸方向の発散角を制限しながら、前記二次元レーザアレイ光源からの光線を前記第2軸方向で重畳して前記インテグレータ光学系に照射する複数の第2レンズと、
を備える画像表示装置。
(10)前記光変調素子が反射型液晶表示装置であり、
前記二次元レーザアレイ光源の偏光方向は、前記反射型液晶表示装置の偏光方向と一致している(9)記載の画像表示装置。
【0079】
なお、上述の実施の形態は、実施の形態の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。
【0080】
さらに、上述の実施の形態は、多数の変形、変更が当業者にとって可能であり、説明した正確な構成および応用例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0081】
1……画像表示装置、2R,2G,2B……反射型偏光素子、3R,3G,3B,19……光変調素子、4……色合成プリズム、5……投影レンズ、10,10R,10G,10B,30,40……照明光学系、11,31……インテグレータ光学系、12……二次元レーザアレイ光源、13……第1レンズ、14……第2レンズ、15……第1フライアイレンズ、16……第2フライアイレンズ、17,34……コンデンサレンズ、18……フィールドレンズ、20……シングルレーザ光源、32……集光レンズ、33……ロッドレンズ、41……リレー光学系、42……第1リレーレンズ、43……第2リレーレンズ、90,91……照度分布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレーザ光源を、平面上に二次元アレイ状にして配置する二次元レーザアレイ光源と、
入射光を重畳して被照射面に照射するインテグレータ光学系と、
前記平面と平行に配置されて、前記二次元アレイの第1軸方向の発散角を制限しながら、前記二次元レーザアレイ光源からの光線を前記第1軸方向で重畳して前記インテグレータ光学系に照射する複数の第1レンズと、
前記第1レンズの後方に配置されて、前記第1軸方向と直交する第2軸方向の発散角を制限しながら、前記二次元レーザアレイ光源からの光線を前記第2軸方向で重畳して前記インテグレータ光学系に照射する複数の第2レンズと、
を備える照明光学系。
【請求項2】
前記複数の第2レンズから出射する光線は、前記第1軸方向および前記第2軸方向のそれぞれにおいて、出射範囲の大きさと発散角との積が、前記被照射面の照射範囲の大きさと取込角の積の0.5倍以上、かつ1.5倍以下である請求項1記載の照明光学系。
【請求項3】
前記第1レンズおよび前記第2レンズは、シリンドリカルレンズによって構成される請求項2記載の照明光学系。
【請求項4】
前記二次元レーザアレイ光源からの光線は、直線偏光であって、前記直線偏光の偏光成分と、前記直線偏光と直交する方向の偏光成分との比が少なくとも10以上である請求項2記載の照明光学系。
【請求項5】
前記二次元レーザアレイ光源は、前記複数のレーザ光源を、前記第1軸方向において第1ピッチで配列し、前記第2軸方向において前記第1ピッチより小さな第2ピッチで配列する請求項2記載の照明光学系。
【請求項6】
前記インテグレータ光学系は、
第1フライアイレンズと、
前記第1フライアイレンズの後方に配置される第2フライアイレンズと、
前記第2フライアイレンズの後方に配置されるレンズ群と、
を含んで構成される請求項2記載の照明光学系。
【請求項7】
前記インテグレータ光学系は、
ロッドレンズと、
前記ロッドレンズの前方に位置する前方レンズと、
前記ロッドレンズの後方に位置する後方レンズと、
を含んで構成される請求項2記載の照明光学系。
【請求項8】
前記複数の第2レンズと前記インテグレータ光学系との間をリレーするリレー光学系を備える請求項2記載の照明光学系。
【請求項9】
光変調素子と、
複数のレーザ光源を、平面上に二次元アレイ状にして配置する二次元レーザアレイ光源と、
入射光を重畳して前記光変調素子に照射するインテグレータ光学系と、
前記平面と平行に配置されて、前記二次元アレイの第1軸方向の発散角を制限しながら、前記二次元レーザアレイ光源からの光線を前記第1軸方向で重畳して前記インテグレータ光学系に照射する複数の第1レンズと、
前記第1レンズの後方に配置されて、前記第1軸方向と直交する第2軸方向の発散角を制限しながら、前記二次元レーザアレイ光源からの光線を前記第2軸方向で重畳して前記インテグレータ光学系に照射する複数の第2レンズと、
を備える画像表示装置。
【請求項10】
前記光変調素子が反射型液晶表示装置であり、
前記二次元レーザアレイ光源の偏光方向は、前記反射型液晶表示装置の偏光方向と一致している請求項9記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−15762(P2013−15762A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150077(P2011−150077)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】