説明

照明光学装置、露光装置、及び制御方法

【課題】複数の光学要素からの光を用いる場合に、それらの光学要素からの光が後続の光学部材の表面の狭い領域に集光されにくくする。
【解決手段】光源7からの光を用いてレチクル面を照明する照明装置2であって、その光の光路に二次元的に配列される複数のミラー要素3と、複数のミラー要素3を駆動し、個別に光の偏向方向を制御する駆動部4と、複数のミラー要素3で偏向された光をフライアイレンズ15の入射面22Iに導くリレー光学系14と、を備え、リレー光学系14は、複数のミラー要素3における光の偏向方向が同一方向にそろったときに、その同一方向の光が入射面22Iで1点に集光することを阻む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の偏向方向を制御可能な複数の光学要素を用いて被照射面を照明する照明技術、その複数の光学要素の制御技術、その照明技術を用いる露光技術、及びこの露光技術を用いるデバイス製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体素子等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造するためのリソグラフィ工程で使用されるステッパー等の一括露光型の投影露光装置、又はスキャニングステッパー等の走査露光型の投影露光装置等の露光装置は、レチクル(マスク)を種々の照明条件で、かつ均一な照度分布で照明する照明光学系を備えている。従来の照明光学系は、照明条件に応じて例えば複数の回折光学素子を切り替えて照明光の光路上に配置して、瞳面上での光量分布を円形領域、輪帯状の領域、又は複数極の領域等で光量が大きくなる分布に設定していた。この構成では、照明条件の数とほぼ同じ数の回折光学素子を備える必要がある。
【0003】
そこで、アレイ状に配列され、かつ傾斜方向及び傾斜角が可変の多数の微小なミラー要素を有する可動マルチミラー方式の空間光変調器と、複数のミラー要素からの反射光が集光されるフライアイレンズ(フライアイインテグレータ)とを備えた照明光学系が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この照明光学系によれば、空間光変調器の多数のミラー要素の傾斜方向及び傾斜角の制御によって、フライアイレンズの射出面の近傍の瞳面上での光量分布を実質的に任意の分布に設定可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−353105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の照明光学系が有する空間光変調器は、一般に電源オフの状態で、全部のミラー要素の反射面が平行になる。この状態で、照明光が照射されると、全部のミラー要素からの反射光がフライアイレンズの特定のレンズエレメントに集光され、そのレンズエレメントの光学材料又は反射防止膜等が損傷を受ける恐れがある。
本発明は、このような事情に鑑み、複数の光学要素からの光を用いる場合に、それらの光学要素からの光が後続の光学部材の表面の狭い領域に集光されにくくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、光源からの光を用いて被照射面を照明する照明光学装置において、その光の光路に対して二次元的に配列される複数の光学要素と、その複数の光学要素のそれぞれを駆動し、個別にその光の偏向方向を制御する駆動機構と、その複数の光学要素のそれぞれで偏向されたその光を所定面内の領域に導く光学系と、を備え、その光学系は、その複数の光学要素におけるその光の偏向方向が同一方向にそろったときに、その複数の光学素子を介したその光がその所定面で1点に集光することを阻む照明光学装置が提供される。
【0007】
また、本発明の第2の態様によれば、被照射面を照明する光の光路に対して二次元的に配列され、個別にその光の偏向方向を制御するように駆動される複数の光学要素を有する空間光変調器の制御方法であって、その複数の光学要素からのその光を光学系を介して所定面に導き、その空間光変調器のその複数の光学要素を、その所定面でその光が1点に集光しないように制御する制御方法が提供される。
【0008】
また、本発明の第3の態様によれば、所定のパターンを照明するための本発明による照明光学装置を備え、その所定のパターンを介して基板を露光する露光装置が提供される。 また、本発明の第4の態様によれば、本発明による露光装置を用いて、その所定のパターンを介してその基板を露光する露光工程と、その基板を現像し、その所定のパターンに対応するマスク層をその基板の表面に形成する現像工程と、そのマスク層を介してその基板の表面を加工する加工工程と、を含むデバイス製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の光学要素からの光がほぼ平行光束であっても、その光は所定面で例えば光学部材に損傷の恐れがない最小領域より小さい1点の領域には集光しない。従って、その所定面を複数の光学要素の後続の光学部材の表面とすることによって、その複数の光学要素からの光がその光学部材の表面の狭い領域に集光されにくくなり、その光学部材の損傷が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態の一例の露光装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1中の空間光変調器13の一部を示す拡大斜視図である。
【図3】(A)は2極照明時の空間光変調器13のミラー要素の傾斜角を示す図、(B)は2極照明時の二次光源を示す図、(C)は電源オフ時の空間光変調器13からの照明光の光路を示す図、(D)は図3(C)のフライアイレンズ15の入射面の集光領域を示す図である。
【図4】(A)は2極照明時の別の二次光源を示す図、(B)は通常照明時の二次光源を示す図、(C)は輪帯照明時の二次光源を示す図、(D)は4極照明時の二次光源を示す図である。
【図5】(A)は空間光変調器13からの光を最小領域に集光する状態の一例を示す図、(B)は図5(A)のフライアイレンズ15の入射面を示す図、(C)は空間光変調器13からの照明光を最小領域に集光する状態の他の例を示す図、(D)は図5(C)のフライアイレンズ15の入射面を示す図である。
【図6】空間光変調器13を使用する露光動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】(A)及び(B)はそれぞれ実施形態の他の例の照明装置の要部を示す図である。
【図8】電子デバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態の一例につき図1〜図6を参照して説明する。
図1は、本実施形態の露光装置EXの概略構成を示す。露光装置EXは、一例としてスキャニングステッパー(スキャナー)よりなる走査露光型の露光装置(投影露光装置)である。図1において、露光装置EXは、露光用の照明光(露光光)ILでレチクルR(マスク)のパターン面であるレチクル面(被照射面)を照明する照明装置2を備えている。照明装置2は、照明光ILをパルス発光する光源7と、光源7からの照明光ILでレチクル面(被照射面)の照明領域36を照明する照明光学系ILSとを備えている。さらに、露光装置EXは、レチクルRの位置決め及び移動を行うレチクルステージRSTと、レチクルRのパターンの像をウエハW(基板)の表面に投影する投影光学系PLと、ウエハWの位置決め及び移動を行うウエハステージWSTと、装置全体の動作を統括制御するコンピュータよりなる主制御系30と、各種制御系等とを備えている。以下、投影光学系PLの光軸に平行にZ軸を設定し、Z軸に垂直な平面(本実施形態ではほぼ水平面)内において図1の紙面に平行な方向にY軸を、図1の紙面に垂直な方向にX軸をそれぞれ設定して説明する。本実施形態では、露光時のレチクルR及びウエハWの走査方向はY軸に平行な方向(Y方向)であり、照明領域36はX方向(非走査方向)に細長い矩形である。また、X軸、Y軸、及びZ軸に平行な軸の回りの回転方向(傾斜方向)をθx方向、θy方向、及びθz方向として説明する。
【0012】
光源7としては、波長193nmのレーザ光を4〜6kHz程度の周波数でパルス発光するArFエキシマレーザ光源が使用されている。なお、光源7として、波長248nmのレーザ光を供給するKrFエキシマレーザ光源、又は固体レーザ光源(YAGレーザ、半導体レーザ等)から出力されるレーザ光の高調波を発生する高調波発生装置等も使用できる。光源7には電源部32が連結されている。主制御系30が、パルス発光のタイミング及び光量(パルスエネルギー)を指示する発光トリガパルスTPを電源部32に供給する。電源部32は、その発光トリガパルスTPに同期して光源7にパルス発光を行わせる。
【0013】
光源7から射出されたほぼ平行光束で直線偏光のレーザ光よりなる照明光ILは、ビームエキスパンダ8に入射して、その断面形状が所定形状に拡大される。ビームエキスパンダ8から射出された照明光ILは、光軸AXIを有する照明光学系ILSにおいて、照明光ILの偏光方向を所定の複数の角度回転するための1/2波長板9(偏光制御部材)と、主制御系30の制御のもとで1/2波長板9を回転する駆動部33と、照明光ILをランダム偏光(非偏光)に変換するための2つの楔型プリズム10a,10bからなるデポラライザ10とを有する偏光光学系を通過する。このような、1/2波長板9及びデポラライザ10を含む偏光光学系の詳細な構成及びその動作については国際公開第2004/051717号パンフレットに開示されている。
【0014】
デポラライザ10を通過した照明光ILは、ミラー11によって+Y方向に反射された後、光軸AXIに沿って、光軸AXIに垂直な入射面12d及び射出面12eを有するプリズム12の入射面12dに入射する。プリズム12は、照明光ILを透過する蛍石(CaF2)又は石英等の光学材料から形成されている。プリズム12は、一例として、入射面12dに対してX軸に平行な軸を中心として時計周りにほぼ60°で交差する第1反射面12aと、第1反射面12aとXZ平面に平行な面に対してほぼ対称な第2反射面12bと、XY平面に平行で入射面12d(射出面12e)に対して直交する透過面12cとを有している。
【0015】
また、プリズム12の近傍(透過面12c側)に、二次元のアレイ状に配列されたそれぞれ傾斜角が可変の微小なミラーよりなる多数のミラー要素3と、これらのミラー要素3を駆動する駆動部4とを有する空間光変調器13が設置されている。空間光変調器13の多数のミラー要素3は、全体として透過面12cにほぼ平行に、かつ近接して配置されている。また、各ミラー要素3の反射面は、それぞれθx方向及びθy方向(直交する2軸の回り)の傾斜角が所定の可変範囲内でほぼ連続的に制御可能である。一例として、その可変範囲内の中央においては、各ミラー要素3の反射面は透過面12cにほぼ平行である。さらに、空間光変調器13の駆動部4を電源オフにした状態、及び電源オン時にリセットした状態では、全部のミラー要素3の反射面は互いに平行に、かつ透過面12c、ひいてはXY平面にほぼ平行である。
【0016】
照明装置2は、空間光変調器13と、空間光変調器13の駆動部4の動作を制御する変調制御部31とを備えている。主制御系30が変調制御部31に照明条件(後述の照明瞳面22P上の光量分布)及び照明光ILの発光タイミングの情報を供給する。変調制御部31は、通常は照明光ILがパルス発光されている期間内に、多数のミラー要素3の2軸の回りの傾斜角がその照明条件に応じた値に維持されるように駆動部4を制御する。
【0017】
この場合、照明光ILは光軸AXIに平行にプリズム12の入射面12dに入射する。入射した照明光ILは、第1反射面12aで全反射された後、透過面12cを透過して空間光変調器13の多数のミラー要素3に入射する。そして、多数のミラー要素3で反射され、波面分割された照明光ILは、再び透過面12cに入射した後、第2反射面12bで全反射されて射出面12eから射出される。従って、第1反射面12aの入射面12dに対する角度は、入射面12dに垂直に入射した光束が第1反射面12aで全反射するとともに、第1反射面12aで全反射された光束が透過面12cを透過する範囲であればよい。この際には、あるミラー要素3の反射面が透過面12cにほぼ平行であれば、そのミラー要素3で反射された照明光ILは、透過面12cを透過して第2反射面12bで全反射された後、射出面12eを経て光軸AXIにほぼ平行に射出される。従って、各ミラー要素3の2軸の回りの傾斜角を制御することによって、そのミラー要素3で反射されてプリズム12から射出される照明光ILの光軸AXIに対する直交する2方向(θx方向及びθz方向)の角度を制御できる。このように照明光ILの光軸AXIに対する角度(光路の方向)を制御することが、本実施形態の各ミラー要素3による空間的な変調である。
【0018】
なお、プリズム12の反射面12a,12bは全反射を用いているが、その反射面12a,12bに反射膜を形成し、この反射膜で照明光ILを反射してもよい。
そして、プリズム12から射出された照明光ILは、所定の焦点距離を持つリレー光学系14(強度分布形成光学系)を介してフライアイレンズ15(オプティカルインテグレータ)の入射面22Iに入射する。
【0019】
図3(D)はフライアイレンズ15の入射面22Iを示す。図3(D)において、フライアイレンズ15は、Z方向(レチクル面でY方向に対応する方向)の幅aでX方向の長さbの矩形の断面形状を有する多数の両凸のレンズエレメント15aをZ方向及びX方向にほぼ密着するように配置したものである。入射面22Iは、レチクル面と光学的にほぼ共役である。そのため、レンズエレメント15aの断面形状はレチクル面の照明領域36とほぼ相似であり、幅aと長さbとの比は例えば1:3程度である。一例として、幅aは1〜2mm程度であり、レンズエレメント15aのZ方向の配列数は数10程度である。
【0020】
ここで、空間光変調器13の構成例につき説明する。図2は、空間光変調器13の一部を示す拡大斜視図である。図2において、空間光変調器13は、X方向、Y方向に一定ピッチでほぼ密着するように配列された多数のミラー要素3と、この多数のミラー要素3の反射面の角度を個別に制御する駆動部4とを含んでいる。X方向、Y方向のミラー要素3の配列数は例えば数100である。一例として、ミラー要素3の駆動機構(駆動部4)は、ミラー要素3を支持するヒンジ部材(不図示)と、このヒンジ部材を静電力によって揺動及び傾斜させるための複数の電極(不図示)とを含んでいる。空間光変調器13のより詳細な構成は、例えば特開2002−353105号公報に開示されている。
【0021】
なお、ミラー要素3の駆動機構としては、他の任意の機構を使用できる。さらに、ミラー要素3はほぼ正方形の平面ミラーであるが、その形状は矩形等の任意の形状であってもよい。ただし、光の利用効率の観点からは、隙間無く配列可能な形状が好ましい。また、隣接するミラー要素3の間隔は必要最小限とすることが好ましい。また、現状では、ミラー要素3の形状は例えば10μm角〜数10μm角程度であるが、照明条件の細かな変更を可能とするために、ミラー要素3は可能な限り小さいことが好ましい。さらに、ミラー要素3として、平面ミラーの代わりに、凹面又は凸面のミラー要素(不図示)を使用することも可能である。
【0022】
なお、上記の空間光変調器13としては、例えば特表平10−503300号公報及びこれに対応する欧州特許公開第779530号明細書、特開2004−78136号公報及びこれに対応する米国特許第6,900,915号明細書、特表2006−52434
9号公報及びこれに対応する米国特許第7,095,546号明細書に開示される空間光変調器を用いることができる。
【0023】
図3(A)及び図3(C)は、それぞれ図1のプリズム12からフライアイレンズ15までの光学系を示す。図3(A)及び図3(C)において、空間光変調器13の多数のミラー要素3を代表的に複数のミラー要素3A〜3Gで表している。図3(A)において、本実施形態では、リレー光学系14のほぼ前側焦点面に空間光変調器13の各ミラー要素3A〜3Gの反射面が配置され、焦点距離fのリレー光学系14の後側焦点面FPから所定間隔だけ+Y方向にデフォーカスした位置にフライアイレンズ15の入射面22Iが配置されている。従って、リレー光学系14の主点と入射面22Iとの距離eは焦点距離fよりも大きい。
【0024】
この場合、光軸AXIを含みZY平面に平行な面に沿ってリレー光学系14に入射する光線の光軸AXIに対するθx方向の傾斜角をθ、その光線のリレー光学系14の主平面での光軸AXIからの高さをHとすると、フライアイレンズ15の入射面22Iにおいてその光線が集光される位置の光軸AXIからの高さh(Z方向の位置)はほぼ次のように計算できる。
【0025】
h=f・tanθ−(e−f)・H/f …(1)
式(1)において、傾斜角θは、各ミラー要素3A〜3Gの反射面のθx方向の傾斜角(変調制御部31で設定される値)に応じて計算される値であり、高さHは、各ミラー要素3A〜3Gの既知のY方向の位置及び傾斜角θより計算される。同様に、各ミラー要素3A〜3Gの反射面のθy方向の傾斜角及び既知のX方向の位置より、リレー光学系14に入射する光線のθz方向の傾斜角及びX方向の位置が分かり、この傾斜角及び位置に基づいて、式(1)と同様の計算式から、リレー光学系14から射出される光線のフライアイレンズ15の入射面22IにおけるX方向の位置が計算できる。
【0026】
この場合、フライアイレンズ15の所定のレンズエレメント15aに照明光ILが入射すると、このレンズエレメント15aの後側焦点面(射出面の近傍の面)がある照明光学系ILSの瞳面(以下、照明瞳面という)22Pには、このレンズエレメント15aによる光源(二次光源)が形成される。言い換えると、フライアイレンズ15の入射面22Iにおける照明光ILの光量分布は、フライアイレンズ15の射出面側にある照明瞳面22Pにおける光量分布と実質的に同じである。従って、空間光変調器13の全部のミラー要素3A〜3Gの2軸の回りの傾斜角を個別に制御することによって、照明瞳面22Pにおける照明光ILの光量分布(二次光源の形状)を任意の分布に制御可能である。実際には、主制御系30から変調制御部31に対して照明瞳面22P(ひいては入射面22I)において目標とする光量分布の情報が供給される。変調制御部31は、入射面22Iでその目標とする光量分布が得られるように、式(1)等から各ミラー要素3A〜3Gの反射面のθx方向、θy方向の傾斜角の目標値を計算し、これらの傾斜角を空間光変調器13の駆動部4に設定する。
【0027】
また、本実施形態において、空間光変調器13(駆動部4)の電源がオフの状態では、図3(C)に示すように、全部のミラー要素3A〜3Gの反射面がXY平面にほぼ平行になり、ミラー要素3A〜3Gで反射された照明光ILは、光軸AXIにほぼ平行にリレー光学系14に入射する。そして、リレー光学系14から射出される照明光ILは、後側焦点面FPで一度集光した後、図3(D)に示すフライアイレンズ15の入射面22Iの直径dのほぼ円形の領域25Fに入射する。本実施形態では、後述のように、照明光ILは入射面22Iにおいて領域25Fよりも面積が小さい領域には集光されないため、以下では領域25Fを最小領域25Fと呼ぶ。また、最小領域25Fは、通常のパワーの照明光ILが通常の照射時間だけ照射された場合に、例えば実験的にフライアイレンズ15の各レンズエレメント15aにほぼ損傷を与える恐れがないと予測される最小の領域である。なお、最小領域25Fは、一辺の幅dのほぼ正方形の領域等でもよい。
【0028】
また、リレー光学系14からの照明光ILが入射面22Iで集光される光学的に最小の領域を直径φの領域とすると、この直径φの領域を入射面22I上の1点の領域とみなすことができる。照明光ILの波長をλ、リレー光学系14の開口数をNARとすると、直径φはほぼ次のようになる。
φ=λ/NAR …(2)
一例として、開口数NARを0.1とすると、波長λは193nmであるため、直径φ(1点の領域の直径)はほぼ2μm程度である。
【0029】
本実施形態では、入射面22Iは、リレー光学系14の後側焦点面FPからデフォーカスしている。従って、入射面22I上で照明光ILが集光される上記の最小領域25Fは、リレー光学系14に平行な光束が入射したときに、その光束がリレー光学系14によって入射面22Iに集光される領域と同じ大きさの領域である。この場合、最小領域25Fは、リレー光学系14で光学的に集光可能な最小の領域(直径φの領域)よりも大きくなる。
【0030】
一例として、最小領域25Fの直径dは、フライアイレンズ15のレンズエレメント15aの短辺方向の幅a又はこれより大きく設定され、直径dの値は変調制御部31の記憶部に記憶されている。幅aは例えば1〜2mmであり、式(2)の直径φは例えば2μm程度であるため、最小領域25Fの直径dは、1点の領域の直径φよりも十分に大きくなっている。これによって、空間光変調器13(駆動部4)の電源がオフのときに光源7から照明光ILが照射されても、照明光ILはフライアイレンズ15の少なくとも一つのレンズエレメント15aの短辺方向の全面、又は短辺方向で2つのレンズエレメント15aに跨って照射されるため、レンズエレメント15aの光学材料及び反射防止膜等が損傷を受ける恐れがない。
【0031】
この場合、入射面22I内で光軸AXIを中心とする最大の円形領域26(コヒーレンスファクタ(σ値)が1のときの照明領域)の直径をDとして、リレー光学系14に入射する照明光ILの断面形状が円形領域26とほぼ同じであると仮定すると、ほぼ次の関係が成立する。
f:(e−f)=D:d …(3) よって、e=(1+d/D)f …(4)
従って、一例として、d=2a、D=50aとすると、距離eは(52/50)fとなる。この場合、最小領域25Fの直径dはレンズエレメント15aの幅aの2倍であり、空間光変調器13の電源がオフのときに、照明光ILはフライアイレンズ15の少なくとも2つのレンズエレメント15aに照射され、レンズエレメント15aの損傷の恐れはさらに低減する。
【0032】
なお、実際には、最小領域25Fが一つのレンズエレメント15a内にあっても、最小領域25Fの直径dが少なくとも円形領域26の直径Dの1/100倍程度であれば、レンズエレメント15aの光学材料及び反射防止膜等が損傷を受ける可能性は低い。従って、直径dは直径Dのほぼ1/100以上であってもよい。このとき、式(4)より、リレー光学系14とフライアイレンズ15の入射面22Iとの距離eは、ほぼ以下の条件を満たすことが好ましい。また、距離eの最大値は、例えば上記の(52/50)fが好ましい。
【0033】
e≧(101/100)f …(5)
図3(A)の例では、フライアイレンズ15の入射面22IのZ方向に離れた2箇所の照明領域25A及び25Bにそれぞれミラー要素3E〜3G及び3A〜3Dからの反射光が照射されている。照明領域25A,25Bに入射する光を反射するミラー要素3の個数は互いにほぼ等しい。そして、照明瞳面22Pには、図3(B)に示すように、照明領域25A,25Bと同じ位置に照明領域25A,25Bとほぼ同じ強度分布を有する二次光源(実質的な面光源)24A,24Bが形成される。
【0034】
例えば図1のレチクルRのパターン面(レチクル面)において、Y方向(又はX方向)に解像限界に近いピッチで配列されたライン・アンド・スペースパターン(以下、L&Sパターンという。)を主に露光する場合には、照明瞳面22Pにおける二次光源は図3(B)のZ方向に2極の二次光源24A,24B(又は図4(A)のX方向に2極の二次光源24C,24D)に設定される。同様に、空間光変調器13によって、照明瞳面22P上の二次光源を、図4(B)の通常照明用の円形の二次光源28A、図4(C)の輪帯照明用の二次光源28B、及び図4(D)の4極照明用の4極の二次光源24E〜24H等の任意の形状に設定可能である。さらに、空間光変調器13によって、例えば図3(B)において、二次光源24A,24Bの間隔、及び/又は二次光源24A,24Bの個々の大きさを任意の値に変更することも可能である。
【0035】
次に、図1において、照明瞳面22Pに形成された二次光源からの照明光ILは、第1リレーレンズ16、レチクルブラインド(視野絞り)17、第2リレーレンズ18、光路折り曲げ用のミラー19、及びコンデンサ光学系20を介して、レチクル面の照明領域36を均一な照度分布が得られるように重畳して照明する。ビームエキスパンダ8からコンデンサ光学系20までの光学部材を含んで照明光学系ILSが構成されている。照明光学系ILSの空間光変調器13を含む各光学部材は、不図示のフレームに支持されている。
【0036】
レチクルRの照明領域36内のパターンは、両側(又はウエハ側に片側)テレセントリックの投影光学系PLを介して、レジスト(感光材料)が塗布されたウエハWの一つのショット領域上の露光領域37に所定の投影倍率(例えば1/4,1/5等)で投影される。
また、レチクルRはレチクルステージRSTの上面に吸着保持され、レチクルステージRSTは、不図示のレチクルベースの上面に、Y方向に一定速度で移動可能に、かつ少なくともX方向、Y方向、及びθz方向に移動可能に載置されている。レチクルステージRSTの2次元的な位置は不図示のレーザ干渉計によって計測され、この計測情報に基づいて主制御系30が、リニアモータ等の駆動系(不図示)を介してレチクルステージRSTの位置及び速度を制御する。
【0037】
一方、ウエハWはウエハホルダ(不図示)を介してウエハステージWSTの上面に吸着保持され、ウエハステージWSTは、不図示のウエハベースの上面でX方向、Y方向にステップ移動を行うとともに、Y方向に一定速度で移動可能である。ウエハステージWSTの2次元的な位置は不図示のレーザ干渉計によって計測され、この計測情報に基づいて主制御系30が、リニアモータ等の駆動系(不図示)を介してウエハステージWSTの位置及び速度を制御する。なお、レチクルR及びウエハWのアライメントを行うために、ウエハステージWSTには、レチクルRのアライメントマークの像の位置を計測する空間像計測系(不図示)が設置され、投影光学系PLの側面にウエハWのアライメントマークの位置を検出するウエハアライメント系(不図示)が備えられている。
【0038】
露光装置EXによるウエハWの露光時に、主制御系30は、レチクルRのパターンに応じて照明条件(照明瞳面22P上の二次光源の形状)を選択し、選択した照明条件を変調制御部31に設定する。これに応じて変調制御部31は、空間光変調器13の各ミラー要素3の傾斜角を個別に制御して、照明瞳面22P上の二次光源の形状を設定する。続いて、ウエハステージWSTのステップ移動によってウエハWが走査開始位置に移動する。その後、光源7のパルス発光を開始して、レチクルステージRSTを介してレチクルRを照明領域36に対してY方向に移動するのに同期して、ウエハステージWSTを介してウエハWを露光領域37に対して対応する方向に投影倍率を速度比として移動することで、ウエハWの一つのショット領域が走査露光される。このようにウエハWのステップ移動と走査露光とを繰り返すステップ・アンド・スキャン動作によって、ウエハW上の全部のショット領域にレチクルRのパターンの像が露光される。
【0039】
この露光装置EXによる露光に際して、空間光変調器13の全部のミラー要素3からの照明光ILが、フライアイレンズ15の入射面22I上で図3(D)の直径dの最小領域25Fよりも面積の小さい狭い領域に集光されると、レンズエレメント15aが損傷を受ける恐れがある。以下では、このように空間光変調器13からの照明光ILが最小領域25Fよりも小さい領域に集光されないようにする露光動作の一例につき、図6のフローチャートを参照して説明する。この動作は主制御系30によって制御される。
【0040】
まず、図6のステップ102において、露光装置EXの光源7の発光は停止され、空間光変調器13の電源がオフにされている。この状態で、ステップ104において、レチクルステージRSTにレチクルRがロードされる。そして、ステップ106において、主制御系30から変調制御部31にレチクルRの照明条件、即ち照明瞳面22Pの光量分布の情報が供給される。変調制御部31では、その光量分布を得るための、空間光変調器13の各ミラー要素3のθx方向、θy方向の傾斜角を計算する。次のステップ108において、変調制御部31では、空間光変調器13の各ミラー要素3の傾斜角がステップ106で計算された傾斜角であるときに、空間光変調器13からリレー光学系14を介してフライアイレンズ15の入射面22Iに入射する照明光ILの照明領域の面積が最小領域25Fの面積より小さいかどうかを確かめる。
【0041】
そして、入射面22I上での照明光ILの照明領域の面積が最小領域25Fより小さいとき、動作はステップ110に移行し、変調制御部31は主制御系30にアラーム情報を送出する。なお、このように入射面22I上での照明光ILの照明領域が最小領域25Fよりも小さくなる場合は、図5(A)及び図5(B)に示すように、例えば照明条件がいわゆる小σ照明で、照明瞳面22Pにおける二次光源、ひいてはフライアイレンズ15の入射面22I上の照明領域25Hが光軸AXIを中心とする小さい円形領域である場合に発生し得る。
【0042】
そのアラーム情報に応じて、主制御系30はオペレータに警報を発生する。これに応じて、オペレータは、一例として照明条件を僅かに変更する等の対策を実行する。これによって、図5(A)に示すように、フライアイレンズ15の入射面22Iで最小領域25Fよりも狭い照明領域25Hに照明光ILが集光されることが確実に防止され、フライアイレンズ15の損傷が防止できる。同様に、例えば照明条件の切り替え時等に、図5(C)及び図5(D)に示すように、フライアイレンズ15の入射面22Iにおいて光軸AXI以外の位置にある狭い照明領域25Hに照明光ILが集光されることも確実に防止される。
【0043】
一方、ステップ108で、入射面22I上での照明光ILの照明領域の面積が最小領域25Fの面積以上であるときには、動作はステップ112に移行し、変調制御部31は、空間光変調器13の電源をオンにし、駆動部4を介して各ミラー要素3の傾斜角をステップ106で計算した値に設定する。次のステップ114において、主制御系30は光源7にパルス発光を行わせ、空間像計測系(不図示)を用いてレチクルRのアライメントを行う。
【0044】
その後、ステップ116において、ウエハステージWSTにレジストが塗布されたウエハWがロードされ、ウエハWのアライメントが行われる。続いてステップ118において、ステップ・アンド・スキャン方式でウエハWの各ショット領域にレチクルRのパターンの像が露光される。その後、ステップ120で露光済みのウエハWのアンロードが行われ、次のステップ122で、未露光のウエハがある場合には、動作はステップ116に戻り、次のウエハに対する露光が行われる。
【0045】
本実施形態の効果等は以下の通りである。
(1)本実施形態の図1の露光装置EXに備えられた照明装置2は、光源7からの照明光ILを用いてレチクル面(被照射面)を照明する照明光学系ILSを有する。そして、照明装置2(照明光学装置)は、照明光ILの光路に対して二次元的に配列される複数のミラー要素3(光学要素)と、複数のミラー要素3のそれぞれを駆動し、個別に照明光ILの偏向方向を制御する駆動部4(駆動機構)と、複数のミラー要素3のそれぞれで偏向された照明光ILをフライアイレンズ15の入射面22I(所定面)に導くリレー光学系14(光学系)と、を備え、リレー光学系14は、複数のミラー要素3における照明光ILの偏向方向が同一方向にそろったときに、複数のミラー要素3を介した照明光ILが入射面22Iで最小領域25Fよりも面積が小さい領域、ひいてはリレー光学系14で集光可能な最小の領域である1点の領域に集光することを阻んでいる。
【0046】
また、本実施形態の露光動作は、光源7からの照明光ILを用いてレチクル面を照明する照明光学系ILS内に配置され、照明光ILの光路上に対して二次元的に配列され、個別に照明光ILの偏向方向を制御するように駆動される複数のミラー要素3(光学要素)を有する空間光変調器13の制御方法を含んでいる。この制御方法は、複数のミラー要素3からの照明光ILをリレー光学系14を介してフライアイレンズ15の入射面22I(所定面)に導き(ステップ112)、複数のミラー要素3を、入射面22Iで照明光ILが最小領域25Fよりも面積が小さい領域、ひいてはリレー光学系14で集光可能な最小の領域である1点の領域に集光しないように制御している(ステップ106,108,110)。
【0047】
本実施形態によれば、複数のミラー要素3と駆動部4とを有する空間光変調器13の例えばリセット動作等で全部のミラー要素3の反射面がほぼ平行のときに照明光ILが照射されても、全部のミラー要素3からのほぼ平行な光は、フライアイレンズ15の入射面22Iで最小領域25F(レンズエレメントがほぼ損傷を受ける恐れのない最小の領域)よりも小さい領域に集光しない。従って、フライアイレンズ15の各レンズエレメント15aの光学材料及び反射防止膜等が損傷を受けることがない。このため、通常の使用時にも、入射面22I上で狭い領域に照明光ILが集光されにくくなり、フライアイレンズ15のメンテナンス間隔を長くでき、照明装置2のメンテナンスコストを低減できる。
【0048】
なお、複数のミラー要素3からの照明光ILが、入射面22Iで最小領域25Fよりも小さく、その1点よりも面積が広い領域に集光するのを許容してもよい。この場合にも、フライアイレンズ15が損傷を受ける恐れは低減される。
(2)本実施形態では、複数のミラー要素3の後に配置されるフライアイレンズ15の入射面22Iが、照明光ILが1点の領域に集光することが阻まれる所定面である。その1点の領域は、最小領域25Fよりも小さいとともに、最小領域25Fはフライアイレンズ15の各レンズエレメント15aの断面形状の短辺方向の幅aと同じ幅の円形領域である。従って、その1点の領域は、幅aよりも小さい直径の円形領域である。この場合、レンズエレメント15aの損傷の恐れがより低減される。
【0049】
なお、その所定面は、フライアイレンズ15以外の光学部材の表面等でもよい。
(3)また、本実施形態の空間光変調器13は、光学要素として複数のミラー要素3(反射要素)を備えている。このようにミラー要素3を用いる場合には照明光ILの利用効率が高い。
(4)また、空間光変調器13(駆動部4)は、電源オフの状態で、全部のミラー要素3の反射面がほぼ同一面に沿って平行である。さらに、フライアイレンズ15の入射面22Iはリレー光学系14の後側焦点面FPからデフォーカスしているため、電源オフの空間光変調器13に照明光ILが照射されても、入射面22Iでは照明光ILが広がっているため(1点に集光されないため)、フライアイレンズ15が損傷を受ける恐れがない。
【0050】
(5)また、複数極照明時(例えば2極照明時)に、リレー光学系14は、駆動部4による複数のミラー要素3の駆動が可能な電源オンの状態(第1状態)のときに、入射面22Iの複数の領域25A,25Bに複数のミラー要素3を介した照明光ILを導くとともに、駆動部4による複数のミラー要素3の駆動が不可能な電源オフの状態(第2状態)のときに、複数のミラー要素3を介した照明光ILが入射面2Iで1点に集光することを阻んでいる。従って、駆動部4の電源オフの状態で、複数のミラー要素3に照明光ILが照射されても、フライアイレンズ15が損傷を受ける恐れがない。
【0051】
なお、空間光変調器13は、駆動部4の電源オフの状態で、必ずしも全部のミラー要素3の反射面が平行でなくともよい。この場合には、リレー光学系14の後側焦点面FP又はこの近傍にフライアイレンズ15の入射面22Iを配置して、駆動部4は、全部のミラー要素3の傾斜角を、常時、入射面22Iで照明光ILが最小領域25Fより狭い領域(1点の領域)に照射されないように制御してもよい。
【0052】
(6)また、リレー光学系14は、その電源オンの状態(第1状態)のときに入射面22Iに形成される照明光ILの強度分布及び照明光ILの形状の少なくとも一方に基づいて、その電源オフの状態(第2状態)のときに入射面22Iに集光する照明光ILの強度を減衰してもよい(照射領域を広くしてもよい)。
これは、リレー光学系14の配置によって、変形照明時の入射面22I(ひいては照明瞳面22P)における照明光ILの形状が多少ぼけてもよいことを意味している。
【0053】
(7)また、本実施形態の露光装置EXは、レチクルRのパターンをウエハW(基板)に露光する露光装置であって、レチクルRのパターンを照明するための照明光学系ILSを含む照明装置2と、そのパターンの像をウエハWの表面に形成する投影光学系PLとを備えている。この露光装置EXによれば、照明装置2、ひいては露光装置EXのメンテナンスコストが低減できる。
【0054】
次に、上記の実施形態では次のような変形が可能である。
(1)上記の実施形態では、照明装置2(照明光学系ILS)において、照明光ILを空間光変調器13に供給するためにプリズム12が使用されているため、照明光学系ILSの配置が容易である。なお、内面反射型のプリズム12の代わりに、図7(A)の変形例で示すように、互いに傾斜した反射面42a及び42bが形成されたミラー部材42を用いてもよい。また、上記の実施形態では、図3(C)に示すように、リレー光学系14の後側焦点面FPに対してフライアイレンズ15の入射面22Iは外側にデフォーカスして配置されている。
【0055】
これに対して、図7(A)に示すように、リレー光学系14の後側焦点面FPに対して内側にデフォーカスした位置にフライアイレンズ15の入射面22Iを配置してもよい。この構成では、リレー光学系14の主平面から入射面22Iまでの距離e1は、焦点距離fより短くなる。また、例えば空間光変調器13の駆動部4の電源がオフで全部のミラー要素3A〜3Gの反射面が平行であるときに、ミラー要素3A〜3Gから平行に反射される照明光ILの入射面22I上での照明領域が、図3(C)の例と同じ大きさの最小領域25Fとなるように距離e1を設定すればよい。
【0056】
この場合、図7(B)に示すように、フライアイレンズ15の最小領域25F内の各レンズエレメント15aはそれぞれ照明瞳面22P上に二次光源43を形成するため、フライアイレンズ15の射出面で例えば一つのレンズエレメント15aの表面に照明光ILが集光されることはない。従って、フライアイレンズ15の射出面はリレー光学系14の後側焦点面FPに近い位置にあっても差し支えない。
【0057】
(2)上記の実施形態では、オプティカルインテグレータとしてフライアイレンズ15が使用されているが、オプティカルインテグレータとしてマイクロレンズアレイ(マイクロフライアイレンズ)を使用してもよい。走査型露光装置用のマイクロレンズアレイは、一例として、断面形状がほぼ0.6mm×0.2mmの両凸の微小レンズを縦横に密着して多数形成したものであり、微小レンズの短辺方向における微小レンズの配列数は数100程度である。この場合には、空間光変調器13からマイクロレンズアレイの入射面に照射される照明光の最小領域の幅は、例えば微小レンズの短辺方向の幅の数倍〜20倍程度でもよい。
【0058】
(3)図1の波面分割型のインテグレータであるフライアイレンズ15に代えて、内面反射型のオプティカルインテグレータとしてのロッド型インテグレータを用いることもできる。この場合には、例えばロッド型インテグレータの入射面の所定の狭い面積の領域に照明光ILが集光されないように光学系の配置、及び空間光変調器13の各ミラー要素3の傾斜角の制御を行えばよい。
【0059】
また、上記の実施形態の露光装置を用いて半導体デバイス等の電子デバイス(マイクロデバイス)を製造する場合、この電子デバイスは、図8に示すように、デバイスの機能・性能設計を行うステップ221、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ222、デバイスの基材である基板(ウエハ)を製造するステップ223、前述した実施形態の露光装置EXによりマスクのパターンを基板に露光する工程、露光した基板を現像する工程、現像した基板の加熱(キュア)及びエッチング工程などを含む基板処理ステップ224、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)225、並びに検査ステップ226等を経て製造される。
【0060】
言い換えると、上記のデバイスの製造方法は、露光装置EXを用いて、マスクのパターンを介して基板(ウエハW)を露光する露光工程と、その基板を現像し、そのマスクのパターンに対応するマスク層をその基板の表面に形成する現像工程と、そのマスク層を介してその基板の表面を加工(加熱及びエッチング等)する加工工程と、を含んでいる。
このデバイス製造方法によれば、露光装置のメンテナンスコストを低減できるため、電子デバイスを安価に高精度に製造できる。
【0061】
なお、本発明は、例えば米国特許出願公開第2007/242247号明細書、又は欧州特許出願公開第1420298号明細書等に開示されている液浸型露光装置にも適用できる。さらに、本発明は、投影光学系を用いないプロキシミティ方式等の露光装置、及びこの露光装置の照明装置(照明光学装置)にも適用することができる。
また、本発明は、半導体デバイスの製造プロセスへの適用に限定されることなく、例えば、液晶表示素子、プラズマディスプレイ等の製造プロセスや、撮像素子(CMOS型、CCD等)、マイクロマシーン、MEMS(Microelectromechanical Systems:微小電気機械システム)、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイス(電子デバイス)の製造プロセスにも広く適用できる。このように本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得る。
【符号の説明】
【0062】
EX…露光装置、ILS…照明光学系、R…レチクル、PL…投影光学系、W…ウエハ、2…照明装置、3…ミラー要素、4…駆動部、12…プリズム、13…空間光変調器、14…リレー光学系、15…フライアイレンズ、30…主制御系、31…変調制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を用いて被照射面を照明する照明光学装置において、
前記光の光路に対して二次元的に配列される複数の光学要素と、
前記複数の光学要素のそれぞれを駆動し、個別に前記光の偏向方向を制御する駆動機構と、
前記複数の光学要素のそれぞれで偏向された前記光を所定面内の領域に導く光学系と、を備え、
前記光学系は、前記複数の光学要素における前記光の偏向方向が同一方向にそろったときに、前記複数の光学素子を介した前記光が前記所定面で1点に集光することを阻むことを特徴とする照明光学装置。
【請求項2】
前記駆動機構は、前記複数の光学要素のそれぞれで偏向された前記光が前記所定面で1点に集光しないように、前記複数の光学要素を駆動することを特徴とする請求項1に記載の照明光学装置。
【請求項3】
前記光学系と前記被照射面との間に配置される複数のレンズエレメントを有するフライアイレンズを備え、
前記所定面は前記フライアイレンズの入射面であり、
前記所定面における前記1点の領域は、前記各レンズエレメントの断面形状と同じ幅又はこれよりも小さい幅の領域であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の照明光学装置。
【請求項4】
前記フライアイレンズからの光を前記被照射面に導くコンデンサ光学系を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の照明光学装置。
【請求項5】
前記複数の光学要素は、前記光源からの光を反射する傾斜角が制御可能なミラー要素を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の照明光学装置。
【請求項6】
前記駆動機構の電源がオフ状態で、前記複数のミラー要素の傾斜角が同じであることを特徴とする請求項5に記載の照明光学装置。
【請求項7】
前記光学系は、前記駆動機構による前記複数の光学要素の駆動が可能な第1状態のときに、前記所定面内の複数の領域に前記複数の光学要素を介した前記光を導くとともに、前記駆動機構による前記複数の光学素子の駆動が不可能な第2状態のときに、前記複数の光学素子を介した前記光が前記所定面で1点に集光することを阻むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の照明光学装置。
【請求項8】
前記光学系は、前記第1状態のときに前記所定面に形成される前記光の強度分布及び前記光の形状の少なくとも一方に基づいて、前記第2状態のときに前記所定面に集光する前記光の強度を減衰することを特徴とする請求項7に記載の照明光学装置。
【請求項9】
被照射面を照明する光の光路に対して二次元的に配列され、個別に前記光の偏向方向を制御するように駆動される複数の光学要素を有する空間光変調器の制御方法であって、
前記複数の光学要素からの前記光を光学系を介して所定面に導き、
前記空間光変調器の前記複数の光学要素を、前記所定面で前記光が1点に集光しないように制御することを特徴とする制御方法。
【請求項10】
前記所定面は複数のレンズエレメントを有するフライアイレンズの入射面であり、
前記所定面における前記1点の領域は、前記各レンズエレメントの断面形状と同じ幅又はこれよりも小さい幅の領域であることを特徴とする請求項9に記載の制御方法。
【請求項11】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の照明光学装置を備え、前記照明光学装置からの光で所定のパターンを介して基板を露光することを特徴とする露光装置。
【請求項12】
前記所定のパターンの像を前記基板に形成する投影光学系を備えることを特徴とする請求項11に記載の露光装置。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載の露光装置を用いて、前記所定のパターンを介して前記基板を露光する露光工程と、
前記基板を現像し、前記所定のパターンに対応するマスク層を前記基板の表面に形成する現像工程と、
前記マスク層を介して前記基板の表面を加工する加工工程と、
を含むデバイス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−103465(P2011−103465A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250006(P2010−250006)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】