説明

照明光学装置、露光装置及びマイクロデバイス製造方法

【課題】 インテグレータセンサにより照明光の光量を正確に検出することができる照明光学装置を提供する。
【解決手段】 光源1から射出される照明光で被照射面Mを照明する照明光学装置において、前記照明光の一部を検出光として抽出する抽出手段16と、前記抽出手段により抽出された前記検出光を計測する計測手段と、前記検出光を前記計測手段に導く光学系とを備え、前記光学系は、第1直線偏光成分の光の反射率よりも前記第1直線偏光成分と直交する方向に振動する第2直線偏光成分の光の反射率が高い反射面を持つ第1反射部材と、前記第2直線偏光成分の光の反射率よりも前記第1直線偏光成分の光の反射率が高い反射面を有する第2反射部材との組み合わせを少なくとも1つ有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等のマイクロデバイスをリソグラフィ工程で製造するための露光装置に用いられる照明光学装置、該照明光学装置を備えた露光装置及び該露光装置を用いたマイクロデバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の露光装置においては、光源から射出された光束がオプティカルインテグレータとしてのフライアイレンズ(またはマイクロフライアイレンズ)に入射し、その後側焦点面に多数の光源からなる二次光源を形成する。二次光源からの光束は、必要に応じてフライアイレンズの後側焦点面の近傍に配置された開口絞りを介して制限された後、コンデンサレンズに入射する。
【0003】
コンデンサレンズにより集光された光束は、所定のパターンが形成されたマスクを重畳的に照明する。マスクのパターンを透過した光は、投影光学系を介してウエハ上に結像する。こうして、ウエハ上には、マスクパターンが投影露光(転写)される。なお、マスクに形成されたパターンは高集積化されており、この微細パターンを正確にウエハ上に露光するためには露光時における露光量の制御を行う必要があり、露光量を制御するためにはマスクを照明する照明光(露光光)の光量を正確に計測する必要がある。照明光(露光光)の光量を計測するために、露光装置にはインテグレータセンサが設けられており、このインテグレータセンサは照明光学系内に設けられているハーフミラー等により分割された照明光(露光光)の光量の検出を行う(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−33259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の投影露光装置においては、ハーフミラー等により反射され、ND(減衰)フィルタを介して、インテグレータセンサに入射した照明光の光量を、インテグレータセンサにより検出する。NDフィルタはインテグレータセンサの受光許容範囲に応じて照明光のエネルギ密度を下げる機能を有しており、インテグレータセンサはNDフィルタを介することによりエネルギ密度が下げられた光であって、照明光の全光量と等価の光の光量を検出する。
【0006】
しかしながら、照明光の一部が検出光としてハーフミラー等により反射される際、照明光(検出光)に含まれるハーフミラー等の反射面に対するS偏光成分の光の反射率とハーフミラー等の反射面に対するP偏光成分の光の反射率とが異なるため、インテグレータセンサに入射する検出光の偏光状態が照明光(露光光)の偏光状態と異なることとなり、インテグレータセンサによる計測結果に悪影響を与える要因となっている。また、光のエネルギ密度を下げるためにNDフィルタを用いているが、NDフィルタの光学薄膜の透過率が安定していないためにNDフィルタの光学薄膜の透過率変動が生じ、この透過率変動がインテグレータセンサの検出精度を低下させる要因となっている。
【0007】
この発明の課題は、インテグレータセンサにより照明光の光量を正確に検出することができる照明光学装置、該照明光学装置を備えた露光装置及び該露光装置を用いたマイクロデバイスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の照明光学装置は、光源から射出される照明光で被照射面を照明する照明光学装置において、前記照明光の一部を検出光として抽出する抽出手段と、前記抽出手段により抽出された前記検出光を計測する計測手段と、前記検出光を前記計測手段に導く光学系とを備え、前記光学系は、第1直線偏光成分の光の反射率よりも前記第1直線偏光成分と直交する方向に振動する第2直線偏光成分の光の反射率が高い反射面を持つ第1反射部材と、前記第2直線偏光成分の光の反射率よりも前記第1直線偏光成分の光の反射率が高い反射面を有する第2反射部材との組み合わせを少なくとも1つ有することを特徴とする。
【0009】
この発明の照明光学装置によれば、検出光を計測手段に導く光学系が第1反射部材と第2反射部材との組み合わせを少なくとも1つ備えており、第1反射部材により第2直線偏光成分の光が第1直線偏光成分の光よりも多く反射され、第2反射部材により第1直線偏光成分の光が第2直線偏光成分の光よりも多く反射される。従って、第1反射部材により反射されることにより生じた検出光の偏光状態の変化は第2反射部材により反射されることにより打ち消され、第2反射部材により反射された後の検出光の偏光状態は第1反射部材により反射される前の検出光の偏光状態と同様になる。また、検出光が第1反射部材及び第2反射部材により反射されることにより検出光のエネルギ密度を低下させることができるため、計測手段の計測精度を低下させる要因となるND(減衰)フィルタ等を用いることなく、計測手段の受光許容範囲内にまで検出光のエネルギ密度を下げることができる。従って、照明光の偏光状態と同様の偏光状態を有し、かつ照明光の全光量と等価の検出光の光量を計測手段により良好に検出することができ、検出された検出光の光量に基づいて照明光の調整を良好に行うことができる。
【0010】
また、この発明の露光装置は、感光性基板上にマスクのパターンを露光する露光装置において、前記マスクを照明するためのこの発明の照明光学装置と、前記照明光学装置により照明された前記マスクのパターンの像を前記感光性基板上に形成するための投影光学系とを備えることを特徴とする。
【0011】
この発明の露光装置によれば、この発明の照明光学装置を備えているため、照明光学装置が備える計測手段により計測される検出光に含まれる第1直線偏光成分及び第2直線偏光成分の偏光状態が照明光の偏光状態と同様となり、かつ計測手段の計測精度を低下させる要因となるNDフィルタ等を用いることなく検出光のエネルギ密度を適当に低下させることができる。従って、計測手段により良好に検出光の光量を検出することができ、検出された検出光の光量に基づいて適切に調整された露光量により良好に露光を行うことができる。
【0012】
また、この発明のマイクロデバイスの製造方法は、この発明の露光装置を用いてマスクのパターンを感光性基板上に露光する露光工程と、前記露光工程により露光された前記感光性基板を現像する現像工程とを含むことを特徴とする。
【0013】
この発明のマイクロデバイスの製造方法によれば、この発明の露光装置を用いてマイクロデバイスの製造を行うため、計測手段により良好に計測された検出光の光量に基づいて調整された適切な露光量により露光を行うことができ、良好なマイクロデバイスを得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明の照明光学装置によれば、検出光を計測手段に導く光学系が第1反射部材と第2反射部材との組み合わせを少なくとも1つ備えている。従って、第1反射部材により反射されることにより生じた検出光の偏光状態の変化は第2反射部材により反射されることにより打ち消され、第2反射部材により反射された後の検出光の偏光状態は第1反射部材により反射される前の検出光の偏光状態と同様になる。また、検出光が第1反射部材及び第2反射部材により反射されることにより検出光のエネルギ密度を低下させることができるため、計測手段の計測精度を低下させる要因となるND(減衰)フィルタ等を用いることなく、計測手段の受光許容範囲内にまで検出光のエネルギ密度を下げることができる。従って、照明光の偏光状態と同様の偏光状態を有し、かつ照明光の全光量と等価の検出光の光量を計測手段により良好に検出することができ、検出された検出光の光量に基づいて照明光の調整を良好に行うことができる。
【0015】
また、この発明の露光装置によれば、この発明の照明光学装置を備えているため、照明光学装置が備える計測手段により計測される検出光に含まれる第1直線偏光成分及び第2直線偏光成分の偏光状態が照明光の偏光状態と同様となり、かつ計測手段の計測精度を低下させる要因となるNDフィルタ等を用いることなく検出光のエネルギ密度を適当に低下させることができる。従って、計測手段により良好に検出光の光量を検出することができ、検出された検出光の光量に基づいて適切に調整された露光量により良好に露光を行うことができる。
【0016】
また、この発明のマイクロデバイスの製造方法によれば、この発明の露光装置を用いてマイクロデバイスの製造を行うため、計測手段により良好に計測された検出光の光量に基づいて調整された適切な露光量により露光を行うことができ、良好なマイクロデバイスを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図面を参照して、この発明の第1の実施の形態にかかる露光装置ついて説明する。図1は、この実施の形態にかかる露光装置の概略構成を示す図である。なお、以下の説明においては、図1中に示すXYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。XYZ直交座標系は、X軸及びY軸がウエハW(マスクM)に対して平行となるように設定され、Z軸がウエハWに対して直交する方向に設定されている。また、この露光装置が備える照明光学装置(光源1〜結像光学系9b)は、輪帯照明を行うように構成されている。
【0018】
この実施の形態にかかる露光装置は、図1に示すように、露光光(照明光)を供給するためのレーザ光源(光源)1として、例えば波長が約193nmの光を供給するArFエキシマレーザ光源または波長が約248nmの光を供給するKrFエキシマレーザ光源を備えている。レーザ光源1からZ方向に沿って射出された略平行な光束は、X方向に沿って細長く延びた矩形状の断面を有し、一対のレンズ2a及び2bからなるビームエキスパンダ2に入射する。各レンズ2a及び2bは、図1のYZ平面内において負の屈折力及び正の屈折力をそれぞれ有する。したがって、ビームエキスパンダ2に入射した光束は、図1のYZ平面内において拡大され、所定の矩形状の断面を有する光束に整形される。
【0019】
整形光学系としてのビームエキスパンダ2を介した平行な光束は、折り曲げミラー3により反射されY方向に偏向された後、光軸AXを中心として結晶光学軸が回転自在に、かつ光軸AXから挿脱可能に構成されている1/4波長板11に入射する。ここで、1/4波長板11は、楕円偏光の光が入射した場合において、入射する楕円偏光の特性に応じてその1/4波長板11の結晶光学軸を設定することにより、楕円偏光の入射光を直線偏光の光に変換する機能を有する。
【0020】
即ち、レーザ光源1としてKrFエキシマレーザ光源やArFエキシマレーザ光源を用いる場合、レーザ光源1は略直線偏光、例えば偏光度95%以上の直線偏光の光を射出する。通常、レーザ光源1と1/4波長板11との間の光路中には裏面反射鏡としての複数個の直角プリズム(図示せず)が配置されている。一般的に、裏面反射鏡としての直角プリズムに入射する直線偏光が直角プリズムの入射面に対してP偏光またはS偏光に一致していない場合、直角プリズムでの全反射により直線偏光が楕円偏光に変化する。従って、例えば直角プリズムを介することにより入射光が直線偏光から楕円偏光に変化した場合においても、1/4波長板11に入射する楕円偏光の特性に応じて1/4波長板11の結晶光学軸を設定することにより、入射光を楕円偏光から直線偏光に変化させることができる。
【0021】
1/4波長板11を通過した光束は、1/2波長板10及びデポラライザ(非偏光化素子)12を通過する。図2は、1/2波長板10及びデポラライザ12の概略構成を示す図である。図2に示すように、1/2波長板10は、光軸AXを中心として結晶光学軸が回転自在に構成されている。また、デポラライザ12は、くさび形状の水晶プリズム12aと、この水晶プリズム12aと相補的な形状を有するくさび形状の石英プリズム12bとにより構成されている。水晶プリズム12aと石英プリズム12bとは、一体的なプリズム組立体として構成されている。
【0022】
1/2波長板10の結晶光学軸が入射する直線偏光の偏光面に対して0度または90度の角度をなすように設定された場合、1/2波長板10に入射した直線偏光の光は偏光面が変化することなくそのまま通過する。また、1/2波長板10の結晶光学軸が入射する直線偏光の偏光面に対して45度の角度をなすように設定された場合、1/2波長板10に入射した直線偏光の光は偏光面が90度だけ変化した直線偏光の光に変換される。更に、水晶プリズム12aの結晶光学軸が入射する直線偏光の偏光面に対して45度の角度をなすように設定された場合、水晶プリズム12aに入射した直線偏光の光は、非偏光状態の光に変換(非偏光化)される。
【0023】
この実施の形態においては、デポラライザ12が照明光路中に位置決めされたときに水晶プリズム12aの結晶光学軸が入射する直線偏光の偏光面に対して45度の角度をなすように構成されている。ちなみに、水晶プリズム12aの結晶光学軸が入射する直線偏光の偏光面に対して0度または90度の角度をなすように設定された場合、水晶プリズム12aに入射した直線偏光の光は偏光面が変化することなくそのまま通過する。また、1/2波長板10の結晶光学軸が入射する直線偏光の偏光面に対して22.5度の角度をなすように設定された場合、1/2波長板10に入射した直線偏光の光は、偏光面が変化することなくそのまま通過する直線偏光成分と偏光面が90度だけ変化した直線偏光成分とを含む非偏光状態の光に変換される。
【0024】
デポラライザ12を照明光路中に位置決めした場合、1/2波長板10の結晶光学軸が入射する直線偏光の偏光面に対して0度または90度の角度をなすように設定すると、1/2波長板10に入射した直線偏光の光は偏光面が変化することなく通過して水晶プリズム12aに入射する。水晶プリズム12aの結晶光学軸は入射する直線偏光の偏光面に対して45度の角度をなすように設定されているので、水晶プリズム12aに入射した直線偏光の光は非偏光状態の光に変換される。
【0025】
一方、1/2波長板10の結晶光学軸が入射する直線偏光の偏光面に対して45度の角度をなすように設定すると、1/2波長板10に入射した直線偏光の光は偏光面が90度だけ変化した直線偏光の光になって水晶プリズム12aに入射する。水晶プリズム12aの結晶光学軸は入射する直線偏光の偏光面に対しても45度の角度をなすように設定されているので、水晶プリズム12aに入射した直線偏光の光は非偏光状態の光に変換される。水晶プリズム12aを介して非偏光化された光は、光の進行方向を補償するためのコンペンセータとしての石英プリズム12bを通過する。
【0026】
デポラライザ12を通過した光束は、回折光学素子(変換手段)4aに入射する。一般に、回折光学素子(DOE)は、ガラス基板に露光光(照明光)の波長程度のピッチを有する段差を形成することによって構成され、入射ビームを所望の角度に回折する作用を有する。具体的には、回折光学素子4aは、矩形状の断面を有する平行光束が入射した場合に、そのファーフィールド(またはフラウンホーファー回折領域)に輪帯状の光強度分布を形成する機能を有する。したがって、回折光学素子4aを介した光束は、後述するアフォーカルレンズ85の瞳位置に輪帯状の光強度分布、すなわち輪帯状の断面を有する光束を形成する。回折光学素子4aは、照明光路から退避可能に構成されている。
【0027】
なお、以下の説明では、回折光学素子4aを照明光路中に設定して、照明光学系の瞳位置にて輪帯状の強度分布を形成して、輪帯照明を行うことを代表させて説明するが、この輪帯照明用の回折光学素子の代わりに、照明光学系の瞳位置にて多極状の強度分布を形成するための多極照明用の回折光学素子や照明光学系の瞳位置にて円形状の強度分布を形成するための円形照明用の回折光学素子の何れかを照明光路中に配置して、任意の照明を行うことができることは言うまでもない。
【0028】
回折光学素子4aを通過した光束は、アフォーカルレンズ(リレー光学系)85に入射する。アフォーカルレンズ85は、その前側焦点位置と回折光学素子4aの位置とがほぼ一致し且つその後側焦点位置と図中破線で示す所定面86の位置とがほぼ一致するように設定されたアフォーカル系(無焦点光学系)である。したがって、回折光学素子4aに入射した略平行な光束は、アフォーカルレンズ85の瞳面に輪帯状の光強度分布を形成した後、略平行な光束となってアフォーカルレンズ85から射出される。
【0029】
なお、アフォーカルレンズ85の前側レンズ群85aと後側レンズ群85bとの間の光路中において瞳面またはその近傍には、光源側から順に、光分割部材としてのハーフミラー16及び円錐アキシコン系87が配置されている。1/2波長板10及びデポラライザ12を介することにより、非偏光状態の光に変換されている光束は、アフォーカルレンズ85の前側レンズ群85aを通過し、ハーフミラー(抽出手段)16に入射する。
【0030】
図3は、ハーフミラー(第1反射部材)16を備える光量計測装置17の概略構成を示す図である。図3に示すように、ハーフミラー16により照明光の一部が反射され、その反射された照明光の一部は、その光量を計測するための検出光として後述するインテグレータセンサ(計測手段)24に導かれる。ここで、ハーフミラー16の法線とハーフミラー16に入射する光の入射方向(Y方向)とを含む入射面(YZ平面と平行な面)に沿った方向(Z方向)に振動する直線偏光成分がハーフミラー16の反射面におけるP偏光(第1直線偏光)となっている。また、ハーフミラー16の法線とハーフミラー16に入射する光の入射方向(Y方向)とを含む入射面(YZ平面と平行な面)と直交する面(XY平面に平行な面)に沿った方向(X方向)に振動する直線偏光成分がハーフミラー16の反射面におけるS偏光(第2直線偏光)となっている。
【0031】
この結果、ハーフミラー16は検出光のS偏光成分(以下、第2直線偏光成分という。)の光の反射率がP偏光成分(以下、第1直線偏光成分という。)の光の反射率より高い反射面を有することになる。このハーフミラー16に入射する照明光に含まれるP偏光成分の光量とS偏光成分の光量との差が小さい場合、ハーフミラー16により反射された検出光に含まれる第2直線偏光成分の光量は第1直線偏光成分の光量より多くなる。
【0032】
ハーフミラー16により反射された検出光は、ミラー(第2反射部材)18に入射し、ミラー18の反射面により反射される。ミラー18の反射面を含む面はハーフミラー16の反射面を含む面と交差する方向に配置されている。ここで、ミラー18の法線とミラー18に入射する光の入射方向(Z方向)とを含む入射面(XZ平面と平行な面)に沿った方向(Z方向)に振動する直線偏光成分(第2直線偏光)がミラー18の反射面におけるP偏光となっている。また、ミラー18の法線とミラー18に入射する光の入射方向(Y方向)とを含む入射面(XZ平面と平行な面)と直交する面(YZ平面に平行な面)に沿った方向(Y方向)に振動する直線偏光成分(第1直線偏光)がミラー18の反射面におけるS偏光となっている。即ち、ミラー18は、第2直線偏光成分(ハーフミラー16の反射面に対するS偏光成分)がミラー18の反射面に対するP偏光成分となり、第1直線偏光成分(ハーフミラー16の反射面に対するP偏光成分)がミラー18の反射面に対するS偏光成分となるように配置されている。ミラー18は検出光のミラー18の反射面に対するS偏光成分(即ち、第1直線偏光成分)の光の反射率がミラー18の反射面に対するP偏光成分(即ち、第2直線偏光成分)の光の反射率より高い反射面を有しているため、ミラー18により反射された検出光の第1直線偏光成分は第2直線偏光成分より多く反射される。従って、ミラー18に入射する前の検出光に含まれる第2直線偏光成分の光量は第1直線偏光成分の光量より多いため、ミラー18により反射された検出光に含まれる第1直線偏光成分の光量と第2直線偏光成分の光量との差は小さくなる。
【0033】
この実施の形態においては、ハーフミラー16により反射された光(ミラー18に入射する前の光)の第2直線偏光成分の光量は第1直線偏光成分の光量よりも多いため、第1直線偏光成分の光の反射率が第2直線偏光成分の光の反射率よりも高い反射面を有するミラー18により反射されることにより第1直線偏光成分の光量は第2直線偏光成分の光量とほぼ同一になる。即ち、ミラー18により反射されることにより生じた偏光状態の変化によりハーフミラー16により反射されることにより生じた偏光状態の変化が打ち消されるため、ミラー18により反射された検出光の第1直線偏光成分の光量と第2直線偏光成分の光量との差は、ハーフミラー16に入射する前の光の第1直線偏光成分の光量と第2直線偏光成分の光量との差と同様となる。
【0034】
ミラー18により反射された検出光は、集光レンズ19に入射する。集光レンズ19は、ハーフミラー16とインテグレータセンサ24との間の光路中であって、第1直線偏光成分の光量と第2直線偏光成分の光量との差が小さい検出光が通過する位置に配置されている。
【0035】
集光レンズ19を通過した検出光は、ミラー(第2反射部材)20に入射し、ミラー20により反射される。ここで、ミラー20の法線とミラー20に入射する光の入射方向(X方向)とを含む入射面(XZ平面と平行な面)に沿った方向(Z方向)に振動する直線偏光成分(第2直線偏光)がミラー20の反射面におけるP偏光となっている。また、ミラー20の法線とミラー20に入射する光の入射方向(Y方向)とを含む入射面(XZ平面と平行な面)と直交する面(YZ平面に平行な面)に沿った方向(Y方向)に振動する直線偏光成分(第1直線偏光)がミラー20の反射面におけるS偏光となっている。ミラー20は、第2直線偏光成分(ハーフミラー16の反射面に対するS偏光成分)がミラー20の反射面に対するP偏光成分となり、第1直線偏光成分(ハーフミラー16の反射面に対するP偏光成分)がミラー20の反射面に対するS偏光成分となるように配置されている。ミラー20はその反射面に対する検出光のS偏光成分(即ち、第1直線偏光成分)の光の反射率がP偏光成分(即ち、第2直線偏光成分)の光の反射率より高い反射面を有しているため、ミラー20に入射する検出光(ハーフミラー16に入射する照明光)に含まれる第1直線偏光成分の光量と第2直線偏光成分の光量との差が小さい場合、ミラー20により反射された検出光に含まれる第1直線偏光成分の光量は第2直線偏光成分の光量より多くなる。
【0036】
ミラー20により反射された検出光は、ミラー(第1反射部材)21に入射し、ミラー21の反射面により反射される。ここで、ミラー21の法線とミラー21に入射する光の入射方向(−Z方向)とを含む入射面(YZ平面と平行な面)に沿った方向(Y方向)に振動する直線偏光成分(第1直線偏光)がミラー21の反射面におけるP偏光となっている。また、ミラー21の法線とミラー21に入射する光の入射方向(−Z方向)とを含む入射面(YZ平面と平行な面)と直交する面(XZ平面に平行な面)に沿った方向(X方向)に振動する直線偏光成分(第2直線偏光)がミラー21の反射面におけるS偏光となっている。ミラー21の反射面を含む面はミラー20の反射面を含む面と交差する方向に配置されている。即ち、ミラー21は、第2直線偏光成分(ハーフミラー16の反射面に対するS偏光成分)がミラー21の反射面に対するS偏光成分となり、第1直線偏光成分(ハーフミラー16の反射面に対するP偏光成分)がミラー21の反射面に対するP偏光成分となるように配置されている。ミラー21は検出光のミラー21の反射面に対するS偏光成分(即ち、第2直線偏光成分)の光の反射率がミラー21の反射面に対するP偏光成分(即ち、第1直線偏光成分)の光の反射率より高い反射面を有しているため、ミラー21により反射された検出光の第2直線偏光成分は第1直線偏光成分より多く反射される。従って、ミラー21に入射する前の検出光に含まれる第1直線偏光成分の光量は第2直線偏光成分の光量より多いため、ミラー21により反射された検出光に含まれる第1直線偏光成分の光量と第2直線偏光成分の光量との差は小さくなる。
【0037】
この実施の形態においては、ミラー20により反射された光(ミラー21に入射する前の光)の第1直線偏光成分の光量は第2直線偏光成分の光量よりも多いため、第2直線偏光成分の反射率が第1直線偏光成分の反射率よりも高い反射面を有するミラー21により反射されることにより第2直線偏光成分の光量は第1直線偏光成分の光量とほぼ同一になる。即ち、ミラー21により反射されることにより生じた偏光状態の変化によりミラー20により反射されることにより生じた偏光状態の変化が打ち消されるため、ミラー21により反射された検出光の第1直線偏光成分の光量と第2直線偏光成分の光量との差は、ミラー20(ひいては、ハーフミラー16)に入射する前の光の第1直線偏光成分の光量と第2直線偏光成分の光量との差と同様となる。また、検出光はハーフミラー16、ミラー18,20,21により反射されるため、そのエネルギ密度はインテグレータセンサ24の受光許容範囲内にまで低下する。
【0038】
ミラー21により反射された検出光は、集光レンズ22,23を通過する。集光レンズ22,23は、ハーフミラー16とインテグレータセンサ24との間の光路中であって、第1直線偏光成分の光量と第2直線偏光成分の光量との差が小さい検出光が通過する位置に配置されている。
【0039】
集光レンズ22,23を通過した検出光はインテグレータセンサ24に入射し、図示しない制御部はインテグレータセンサ24により検出された検出光の光量に基づいて光源1から射出される照明光(露光光)の光量及び時間の少なくとも1つを調整することにより露光量の制御を行う。
【0040】
一方、図1に示すように、ハーフミラー16を通過した照明光は、円錐アキシコン系87に入射する。図4は、円錐アキシコン系87の概略構成を示す図である。円錐アキシコン系87は、光源側から順に、光源側に平面を向け且つマスク側に凹円錐状の屈折面を向けた第1プリズム部材87aと、マスクM側に平面を向け且つ光源側に凸円錐状の屈折面を向けた第2プリズム部材87bとから構成されている。
【0041】
第1プリズム部材87aの凹円錐状の屈折面と第2プリズム部材87bの凸円錐状の屈折面とは、互いに当接可能なように相補的に形成されている。また、第1プリズム部材87aおよび第2プリズム部材87bのうち少なくとも一方の部材が光軸AXに沿って移動可能に構成され、第1プリズム部材87aの凹円錐状の屈折面と第2プリズム部材87bの凸円錐状の屈折面との間隔が可変に構成されている。
【0042】
ここで、第1プリズム部材87aの凹円錐状の屈折面と第2プリズム部材87bの凸円錐状の屈折面とが互いに当接している状態では、円錐アキシコン系87は平行平面板として機能し、形成される輪帯状の二次光源に及ぼす影響はない。しかしながら、第1プリズム部材87aの凹円錐状の屈折面と第2プリズム部材87bの凸円錐状の屈折面とを離間させると、円錐アキシコン系87は、いわゆるビームエキスパンダとして機能する。したがって、円錐アキシコン系87の間隔の変化に伴って、図1中破線で示す所定面86への入射光束の角度は変化する。
【0043】
図5は、輪帯照明において形成される二次光源に対する円錐アキシコン系87の作用を説明するための図である。円錐アキシコン系87の間隔が0でかつ後述するズームレンズ90の焦点距離が最小値に設定された状態(以下、「標準状態」という)で形成された最も小さい輪帯状の二次光源130aは、円錐アキシコン系87の間隔を0から所定の値まで拡大させることにより、その幅(外径と内径との差の1/2:図中矢印で示す)が変化することなく、その外径および内径がともに拡大された輪帯状の二次光源130bに変化する。即ち、円錐アキシコン系87の作用により、輪帯状の二次光源の幅が変化することなく、その輪帯比(内径/外径)および大きさ(外径)がともに変化する。
【0044】
アフォーカルレンズ85を介した光束は、σ値可変用のズームレンズ90を介して、オプティカルインテグレータとしてのマイクロレンズアレイ8に入射する。所定面86の位置はズームレンズ90の前側焦点位置またはその近傍に配置され、マイクロレンズアレイ8の入射面はズームレンズ90の後側焦点面またはその近傍に配置されている。即ち、ズームレンズ90は、所定面86とマイクロレンズアレイ8の入射面とを実質的にフーリエ変換の関係に配置し、ひいてはアフォーカルレンズ85の瞳面とマイクロレンズアレイ8の入射面とを光学的に略共役に配置している。したがって、マイクロレンズアレイ8の入射面上には、アフォーカルレンズ85の瞳面と同様に、例えば光軸AXを中心とした輪帯状の照野が形成される。この輪帯状の照野の全体形状は、ズームレンズ90の焦点距離に依存して相似的に変化する。
【0045】
図6は、輪帯照明において形成される二次光源に対するズームレンズ90の作用を説明するための図である。標準状態で形成された輪帯状の二次光源130aは、ズームレンズ90の焦点距離を最小値から所定の値へ拡大させることにより、その全体形状が相似的に拡大された輪帯状の二次光源130cに変化する。即ち、ズームレンズ90の作用により、輪帯状の二次光源の輪帯比が変化することなく、その幅及び大きさ(外径)が共に変化する。
【0046】
また、マイクロレンズアレイ8は、縦横にかつ稠密に配列された多数の正屈折力を有する微小レンズからなる光学素子である。マイクロレンズアレイ8を構成する各微小レンズは、マスクMにおいて形成すべき照野の形状(ひいてはウエハW上において形成すべき露光領域の形状)と相似な矩形上の断面を有する。マイクロレンズアレイ8に入射した光束は、多数の微小レンズにより二次元的に分割され、その後側焦点面(ひいては照明瞳)にはマイクロレンズアレイ8への入射光束によって形成される照野と略同じ光強度分布を有する二次光源、即ち光軸AXを中心とした輪帯状の実質的な面光源からなる二次光源が形成される。
【0047】
マイクロレンズアレイ8の後側焦点面に形成された輪帯状の二次光源からの光束は、コンデンサレンズ9aを介して、マスクブラインドMBを重畳的に照明する。照明視野絞りとしてのマスクブラインドMBには、マイクロレンズアレイ8を構成する各微小レンズの形状と焦点距離とに応じた矩形状の照野が形成される。マスクブラインドMBの矩形状の開口部(光透過部)を介した光束は、結像光学系9bの集光作用を受けた後、所定のパターンが形成されたマスク(被照射面)Mを重畳的に照明する。即ち、結像光学系9bは、マスクブラインドMBの矩形状開口部の像をマスクM上に形成する。マスクMのパターンを透過した光束は、投影光学系PLを介して、感光性基板であるウエハW上にマスクパターンの像を形成する。こうして、投影光学系PLの光軸AXと直交する平面内においてウエハWを二次元的に駆動制御しながら一括露光またはスキャン露光を行うことにより、ウエハWの各露光領域にはマスクMのパターンが逐次露光される。
【0048】
なお、被照射面としてのマスクMへの照明条件や感光性基板としてのウエハWへの結像条件は、例えばマスクMのパターンの種類等に従って自動的に設定することができる。ここで、マスクMへの照明条件を変更するためのパラメータとしては、1/2波長板の挿脱や回転角度位置、回折光学素子4aの種類の選択、円錐アキシコン系87の間隔、σ値可変用のズームレンズ90の焦点距離等が挙げられ、ウエハWへの結像条件を変更するためのパラメータとしては、投影光学系PL中の1つ又は複数の光学素子の位置や姿勢、投影光学系PL中の図示なき可変開口絞りの径等が挙げられる。
【0049】
この第1の実施の形態にかかる露光装置よれば、検出光をインテグレータセンサ24に導く光学系がハーフミラー16とミラー18との組み合わせ及びミラー20,21との組み合わせを備えており、第1反射部材としてのハーフミラー16及びミラー21により第2直線偏光成分の光が第1直線偏光成分の光よりも多く反射され、第2反射部材としてのミラー18及びミラー20により第1直線偏光成分の光が第2直線偏光成分の光よりも多く反射される。従って、ハーフミラー16により反射されることにより生じた検出光の偏光状態の変化はミラー18により反射されることにより打ち消され、ミラー18により反射された後の検出光の偏光状態はハーフミラー16により反射される前の検出光の偏光状態と同様になる。同様に、ミラー20により反射されることにより生じた検出光の偏光状態の変化はミラー21により反射されることにより打ち消され、ミラー21により反射された後の検出光の偏光状態はミラー20(ひいてはハーフミラー16)により反射される前の検出光の偏光状態と同様になる。
【0050】
また、検出光がハーフミラー16、ミラー18,20,21により反射されることにより検出光のエネルギ密度を効率的に低下させることができるため、インテグレータセンサ24の計測精度を低下させる要因となるND(減衰)フィルタ等を用いることなく、インテグレータセンサ24の受光許容範囲内にまで検出光のエネルギ密度を低下させることができる。従って、照明光の偏光状態と同様の偏光状態を有し、かつ照明光の全光量と等価の検出光の光量をインテグレータセンサ24により良好に検出することができ、検出された検出光の光量に基づいて適切に調整された露光量により良好に露光を行うことができる。
【0051】
なお、この第1の実施の形態においては、ハーフミラー16とミラー18との組み合わせ及びミラー20とミラー21との組み合わせ(第1反射部材と第2反射部材との組み合わせを2つ)を備えているが、第1反射部材と第2反射部材との組み合わせを1つ備えるようにしてもよい。この場合には、検出光をインテグレータセンサまで導く光学系のコンパクト化を実現することができる。また、第1反射部材と第2反射部材との組み合わせを3つ以上備えるようにしてもよい。この場合には、検出光の偏光状態を変化させることなく検出光のエネルギ密度を十分に低下させることができるため、インテグレータセンサの受光許容範囲が小さい場合に有効である。
【0052】
次に、図面を参照して、この発明の第2の実施の形態にかかる露光装置について説明する。第2の実施の形態にかかる露光装置の構成は、第1の実施の形態にかかる露光装置の光量計測装置17を光量計測装置30に変更したものである。従って、第2の実施の形態の説明においては、第1の実施の形態にかかる露光装置の構成と同一の構成の詳細な説明は省略する。なお、第2の実施の形態の説明においては、第1の実施の形態にかかる露光装置の構成と同一の構成には第1の実施の形態で用いたのと同一の符号を用いて説明を行う。
【0053】
図7は、第2の実施の形態にかかる光量計測装置30の概略構成を示す図である。図7に示すように、ハーフミラー(第1反射部材)16により照明光の一部が反射され、その反射された照明光の一部は、その光量を計測するための検出光として後述するインテグレータセンサ(計測手段)37に導かれる。ここで、ハーフミラー16の法線とハーフミラー16に入射する光の入射方向(Y方向)とを含む入射面(YZ平面と平行な面)に沿った方向(Z方向)に振動する直線偏光成分がハーフミラー16の反射面におけるP偏光(第1直線偏光)となっている。また、ハーフミラー16の法線とハーフミラー16に入射する光の入射方向(Y方向)とを含む入射面(YZ平面と平行な面)と直交する面(XY平面と平行な面)に沿った方向(X方向)に振動する直線偏光成分がハーフミラー16の反射面におけるS偏光(第2直線偏光)となっている。
【0054】
ハーフミラー16は照明光のS偏光成分(以下、第2直線偏光成分という。)の反射率がP偏光成分(以下、第1直線偏光成分という。)の反射率より高い反射面を有しているため、ハーフミラー16に入射する照明光に含まれるP偏光成分の光量とS偏光成分の光量が同一である場合、ハーフミラー16により反射された検出光の第2直線偏光成分の光量は第1直線偏光成分の光量より多くなる。
【0055】
ハーフミラー16により反射された検出光は、ミラー(第2反射部材)31に入射し、ミラー31の反射面により反射される。ミラー31の反射面を含む面は、ハーフミラー16の反射面を含む面と交差する方向に配置されている。ここで、ミラー31の法線とミラー31に入射する光の入射方向(Z方向)とを含む入射面(XZ平面と平行な面)に沿った方向(Z方向)に振動する直線偏光成分(第2直線偏光)がミラー31の反射面におけるP偏光となっている。また、ミラー31の法線とミラー31に入射する光の入射方向(Y方向)とを含む入射面(XZ平面と平行な面)と直交する面(YZ平面に平行な面)に沿った方向(Y方向)に振動する直線偏光成分(第1直線偏光)がミラー31の反射面におけるS偏光となっている。即ち、ミラー31は、第2直線偏光成分(ハーフミラー16の反射面に対するS偏光成分)がミラー31の反射面に対するP偏光成分となり、第1直線偏光成分(ハーフミラー16の反射面に対するP偏光成分)がミラー31の反射面に対するS偏光成分となるように配置されている。ミラー31は検出光のミラー31の反射面に対するS偏光成分(即ち、第1直線偏光成分)の反射率がミラー31の反射面に対するP偏光成分(即ち、第2直線偏光成分)の反射率より高い反射面を有しているため、ミラー31により反射された検出光の第1直線偏光成分は第2直線偏光成分より多く反射される。従って、ミラー31に入射する前の検出光に含まれる第2直線偏光成分の光量は第1直線偏光成分の光量より多いため、ミラー31により反射された検出光に含まれる第1直線偏光成分の光量と第2直線偏光成分の光量との差は小さくなる。
【0056】
この実施の形態においては、ハーフミラー16により反射された光(ミラー31に入射する前の光)の第2直線偏光成分の光量は第1直線偏光成分の光量よりも多いため、第1直線偏光成分の反射率が第2直線偏光成分の反射率よりも高い反射面を有するミラー31により反射されることにより第1直線偏光成分の光量は第2直線偏光成分の光量とほぼ同一になる。即ち、ミラー31により反射されることにより生じた偏光状態の変化によりハーフミラー16により反射されることにより生じた偏光状態の変化が打ち消されるため、ミラー31により反射された検出光の第1直線偏光成分の光量と第2直線偏光成分の光量との差は、ハーフミラー16に入射する前の光の第1直線偏光成分の光量と第2直線偏光成分の光量との差と同様となる。
【0057】
ミラー31により反射された検出光は、集光レンズ32,33を通過する。集光レンズ32,33は、ハーフミラー16とインテグレータセンサ37との間の光路中であって、第1直線偏光成分の光量と第2直線偏光成分の光量との差が小さい検出光が通過する位置に配置されている。
【0058】
集光レンズ32,33を通過した検出光は、拡散素子としての回折光学素子(DOE)35に入射する。回折光学素子35は、照明光学装置の瞳面位置と光学的に共役な位置またはその近傍に配置されている。回折光学素子35は回折光学素子35を通過する検出光を拡散する。検出光を拡散させることにより、検出光の全光量ではなく一部の検出光をインテグレータセンサ37により検出することにより、正確な露光量を求めることができる。
【0059】
回折光学素子35を通過した検出光は、集光レンズ36に入射する。集光レンズ36は、ハーフミラー16とインテグレータセンサ37との間の光路中であって、第1直線偏光成分の光量と第2直線偏光成分の光量との差が小さい検出光が通過する位置に配置されている。
【0060】
集光レンズ36を通過した検出光はインテグレータセンサ37に入射し、インテグレータセンサ37は図示しないピンホールに入射した検出光を検出し、その検出結果を図示しない制御部に対して出力する。図示しない制御部は、インテグレータセンサ37により検出された検出光の光量に基づいて光源1から射出される照明光(露光光)の光量及び時間の少なくとも1つを調整することにより露光量の制御を行う。
【0061】
なお、インテグレータセンサ37のピンホール径の大きさ、集光レンズ36の焦点距離の長さ及び拡散素子としての回折光学素子35の発散角の大きさの組み合わせによりインテグレータセンサ37の検出精度が決定される。
【0062】
この第2の実施の形態によれば、検出光をインテグレータセンサ37に導く光学系がハーフミラー16とミラー31との組み合わせを備えており、第1反射部材としてのハーフミラー16により第2直線偏光成分の光が第1直線偏光成分の光よりも多く反射され、第2反射部材としてのミラー31により第1直線偏光成分の光が第2直線偏光成分の光よりも多く反射される。従って、ハーフミラー16により反射されることにより生じた検出光の偏光状態の変化はミラー31により反射されることにより打ち消され、ミラー31により反射された後の検出光の偏光状態はハーフミラー16により反射される前の検出光の偏光状態と同様になる。
【0063】
また、検出光が拡散素子としての回折光学素子35を通過することにより拡散され、拡散された検出光の一部を検出することにより露光量を計測することができるため、インテグレータセンサ37により高精度に検出光の検出を行うことができる。従って、照明光の偏光状態と同様の偏光状態を有し、かつ照明光の全光量と等価の検出光の光量をインテグレータセンサ37により良好に検出することができ、検出された検出光の光量に基づいて適切に調整された露光量により良好に露光を行うことができる。
【0064】
なお、この第2の実施の形態においては、ハーフミラー16とミラー31との組み合わせ、即ち第1反射部材と第2反射部材との組み合わせを1つ備えているが、第1反射部材と第2反射部材との組み合わせを2つ以上備えるようにしてもよい。
【0065】
また、この第2の実施の形態においては、拡散素子としての回折光学素子35を1つ備えているが、2つ以上備えるようにしてもよい。この場合には、検出光の拡散効果を高めることができ、インテグレータセンサ37により照明光と等価の検出光の光量をより高精度に検出することができる。また、拡散素子としての回折光学素子35を集光レンズ33と集光レンズ36との間の光路中に配置しているが、ハーフミラー16とインテグレータセンサ37との間の光路中であって照明光学装置の瞳面位置と光学的に共役な位置またはその近傍に配置するようにしてもよい。
【0066】
また、上述の各実施の形態においては、抽出手段としてのハーフミラーがレンズと円錐アキシコン系との間の光路中に配置されているが、回折光学素子とマイクロレンズアレイとの間の光路中のいずれかに配置されるようにすればよい。
【0067】
上述の各実施の形態にかかる露光装置では、照明光学系によってレチクル(マスク)を照明し、投影光学系を用いてマスクに形成された転写用のパターンを感光性基板(プレート)に露光することにより、マイクロデバイス(半導体素子、撮像素子、液晶表示素子、薄膜磁気ヘッド等)を製造することができる。以下、上述の各実施の形態にかかる露光装置を用いて感光性基板としてプレート等に所定の回路パターンを形成することによって、マイクロデバイスとしての半導体デバイスを得る際の手法の一例につき図8のフローチャートを参照して説明する。
【0068】
まず、図8のステップS301において、1ロットのプレート上に金属膜が蒸着される。次のステップS302において、その1ロットのプレート上の金属膜上にフォトレジストが塗布される。その後、ステップS303において、上述の各実施の形態にかかる露光装置を用いて、マスク上のパターン像が投影光学系を介して、その1ロットのプレート上の各ショット領域に順次露光転写される。その後、ステップS304において、その1ロットのプレート上のフォトレジストの現像が行なわれた後、ステップS305において、その1ロットのプレート上でレジストパターンをマスクとしてエッチングを行なうことによって、マスク上のパターンに対応する回路パターンが、各プレート上の各ショット領域に形成される。
【0069】
その後、更に上のレイヤの回路パターンの形成等を行うことによって、半導体素子等のデバイスが製造される。上述のマイクロデバイスの製造方法によれば、上述の各実施の形態にかかる露光装置を用いて適切な光量を有する露光光により露光を行うため、微細な回路パターンを有するマイクロデバイスを高解像度及び高スループットで得ることができる。なお、ステップS301〜ステップS305では、プレート上に金属を蒸着し、その金属膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチングの各工程を行っているが、これらの工程に先立って、プレート上にシリコンの酸化膜を形成後、そのシリコンの酸化膜上にレジストを塗布、そして露光、現像、エッチング等の各工程を行っても良いことはいうまでもない。
【0070】
また、上述の各実施の形態にかかる露光装置では、プレート(ガラス基板)上に所定のパターン(回路パターン、電極パターン等)を形成することによって、マイクロデバイスとしての液晶表示素子を得ることもできる。以下、図9のフローチャートを参照して、このときの手法の一例につき説明する。図9において、パターン形成工程S401では、上述の各実施の形態にかかる露光装置を用いてマスクのパターンを感光性基板(レジストが塗布されたガラス基板等)に転写露光する、所謂光リソグラフィ工程が実行される。この光リソグラフィ工程によって、感光性基板上には多数の電極等を含む所定パターンが形成される。その後、露光された基板は、現像工程、エッチング工程、レジスト剥離工程等の各工程を経ることによって、基板上に所定のパターンが形成され、次のカラーフィルタ形成工程S402へ移行する。
【0071】
次に、カラーフィルタ形成工程S402では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応した3つのドットの組がマトリックス状に多数配列されたり、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルタの組を複数水平走査線方向に配列されたりしたカラーフィルタを形成する。そして、カラーフィルタ形成工程S402の後に、セル組み立て工程S403が実行される。セル組み立て工程S403では、パターン形成工程S401にて得られた所定パターンを有する基板、およびカラーフィルタ形成工程S402にて得られたカラーフィルタ等を用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。セル組み立て工程S403では、例えば、パターン形成工程S401にて得られた所定パターンを有する基板とカラーフィルタ形成工程S402にて得られたカラーフィルタとの間に液晶を注入して、液晶パネル(液晶セル)を製造する。
【0072】
その後、モジュール組み立て工程S404にて、組み立てられた液晶パネル(液晶セル)の表示動作を行わせる電気回路、バックライト等の各部品を取り付けて液晶表示素子として完成させる。上述の液晶表示素子の製造方法によれば、上述の各実施の形態にかかる露光装置を用いて適切な光量を有する露光光により露光を行うため、微細な回路パターンを有する液晶表示素子を高解像度かつ高スループットで得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】第1の実施の形態にかかる露光装置の概略構成を示す図である。
【図2】第1の実施の形態にかかる1/2波長板及びデポラライザの概略構成を示す図である。
【図3】第1の実施の形態にかかる光量計測装置の概略構成を示す図である。
【図4】第1の実施の形態にかかる円錐アキシコン系の概略構成を示す図である。
【図5】第1の実施の形態にかかる輪帯照明において形成される二次光源に対する円錐アキシコン系の作用を説明するための図である。
【図6】第1の実施の形態にかかる輪帯照明において形成される二次光源に対するズームレンズの作用を説明するための図である。
【図7】第2の実施の形態にかかる光量計測装置の概略構成を示す図である。
【図8】この発明の実施の形態にかかるマイクロデバイスとしての半導体デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
【図9】この発明の実施の形態にかかるマイクロデバイスとしての液晶表示素子の製造方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0074】
1…レーザ光源、2…ビームエキスパンダ、3…折り曲げミラー、4a…回折光学素子、8…マイクロレンズアレイ、9a…コンデンサレンズ、9b…結像光学系、10…1/2波長板、11…1/4波長板、12…デポラライザ、16…ハーフミラー、17,30…光量計測装置、18,20,21,31…ミラー、19,22,23,32,33,36…集光レンズ、35…拡散素子(DOE)、24…インテグレータセンサ、85…アフォーカルレンズ、87…円錐アキシコン系、90…ズームレンズ、MB…マスクブラインド、M…マスク、PL…投影光学系、W…ウエハ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から射出される照明光で被照射面を照明する照明光学装置において、
前記照明光の一部を検出光として抽出する抽出手段と、
前記抽出手段により抽出された前記検出光を計測する計測手段と、
前記検出光を前記計測手段に導く光学系と、
を備え、
前記光学系は、第1直線偏光成分の光の反射率よりも前記第1直線偏光成分と直交する方向に振動する第2直線偏光成分の光の反射率が高い反射面を持つ第1反射部材と、
前記第2直線偏光成分の光の反射率よりも前記第1直線偏光成分の光の反射率が高い反射面を有する第2反射部材との組み合わせを少なくとも1つ有することを特徴とする照明光学装置。
【請求項2】
前記光学系は、少なくとも1つの集光レンズを有することを特徴とする請求項1記載の照明光学装置。
【請求項3】
前記集光レンズは、前記抽出手段と前記計測手段との間の光路中であって、前記第1直線偏光成分の光量と前記第2直線偏光成分の光量との差が小さい前記検出光が通過する位置に配置されることを特徴とする請求項2記載の照明光学装置。
【請求項4】
前記第1反射部材と前記第2反射部材とは、前記第1反射部材の反射面を含む面と前記第2反射部材の反射面を含む面とが互いに交差する方向に配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の照明光学装置。
【請求項5】
前記照明光を所望形状に変換する変換手段と、前記変換手段により設定された前記照明光に基づき前記被照射面を均一に照明するためのオプティカルインテグレータとを備え、
前記抽出手段は、前記変換手段と前記オプティカルインテグレータとの間の光路中に配置されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の照明光学装置。
【請求項6】
前記光学系は、少なくとも1つの拡散素子を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の照明光学装置。
【請求項7】
前記拡散素子は、前記抽出手段と前記計測手段との間の光路中であって、前記照明光学装置の瞳面位置と光学的に共役な位置またはその近傍に配置されることを特徴とする請求項6記載の照明光学装置。
【請求項8】
感光性基板上にマスクのパターンを露光する露光装置において、
前記マスクを照明するための請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の照明光学装置と、
前記照明光学装置により照明された前記マスクのパターンの像を前記感光性基板上に形成するための投影光学系と、
を備えることを特徴とする露光装置。
【請求項9】
請求項8記載の露光装置を用いてマスクのパターンを感光性基板上に露光する露光工程と、
前記露光工程により露光された前記感光性基板を現像する現像工程と、
を含むことを特徴とするマイクロデバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−237538(P2006−237538A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−54098(P2005−54098)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】