説明

照明装置、電子機器、携帯端末

【課題】 表面にナノメートルのオーダの幅(ピッチ)の凹凸構造が形成されている炭素系基板を用いる場合にも、例えば搬送、組付けなどの作業中等に人の手などが微細凹凸構造に接触することなどを防止でき、これにより、微細凹凸構造の倒れを防止できて、高い放熱性能を維持する。
【解決手段】 表面にナノメートルオーダまたはサブマイクロメートルオーダの幅(ピッチ)の凹凸構造が形成されている炭素系部材(炭素系基板)10を、筐体11の内壁等に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置、電子機器、携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1には、LEDの半導体発光素子を有する光源を備えて、例えば天井等に埋め込み設置して使用されるダウンライト等の照明装置が示されている。特許文献1の照明装置では、装置全体はLEDが発生する熱を外部に放出する放熱部材を兼ねるために金属製のものとなっている。また、その放熱器として、LEDが発生する熱を効率よく外部に放出するためにフィンなどが形成され、筐体の表面積を増大させた構造となっている。
【0003】
しかしながら、特許文献1に示されている照明装置では、照明装置全体が金属製であるために、装置全体の重量が増大するという問題と、放熱量は上記放熱器の包絡体積に寄与するため、小型化が難しいという問題があった。
【0004】
これに対し、例えば特許文献2には、放熱性に優れ小型軽量を意図した発光モジュールが示されている。図1は特許文献2に示されている発光モジュールの断面図である。特許文献2の発光モジュールは、配向性グラファイトシート103と、凹部を形成するように折り曲げた銅を主体とする複数のリードフレーム101a,101bと、前記配向性グラファイトシート103とリードフレーム101a,101bを接合するための無機フィラと熱硬化性樹脂からなる熱伝導性樹脂102と、前記リードフレーム101a,101bの上に複数個の発光素子108を実装した発光モジュールであって、少なくとも配向性グラファイトシート103と対向するリードフレーム101a,101bの一面を熱伝導性に優れた絶縁膜107にて被覆したものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−230701号公報
【特許文献2】特開2007−184540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の発光モジュールでは、在来の一般的なグラファイトシートを用いているため、放熱性能を著しく向上させることができないという問題があった。すなわち、在来の一般的なグラファイトシートは、熱拡散性には優れているが異方性を有するため、厚さ方向への熱伝導性能が低く、また、後述のように、表面の放射率が0.7程度と、さほど高くないため、放射による熱放散性能が低く、放熱性能を著しく向上させることができないという問題があった。
【0007】
小型(薄型化)、軽量に適し、なおかつ、放熱性能を著しく向上させる部材(放熱材料)として、本願出願人は、本願の先願(特願2009−195354)に記載のように、表面にナノメートルのオーダの幅(ピッチ)の凹凸構造が形成された炭素系基板(例えば、グラファイト基板)を開発した。
【0008】
この先願によれば、表面にナノメートルのオーダの幅(ピッチ)の凹凸構造が形成された炭素系基板(例えば、グラファイト基板)とすることで、輻射による放熱性を高くでき、表面の放射率を0.9以上にすることができて、放熱性能を著しく向上させることが可能となる。
【0009】
しかしながら、表面にナノメートルのオーダの幅(ピッチ)の微細凹凸構造が形成されている炭素系基板では、ナノメートルのオーダの幅(ピッチ)の微細凹凸構造の強度が物理的に弱く、例えば搬送、組付けなどの作業中に人の手の接触などによって微細凹凸構造が倒れやすく、それにより元来の高い放熱性能を発揮できなくなるなどの問題がある。
【0010】
本発明は、表面にナノメートルのオーダ(本発明では、ナノメートルのオーダとは、ナノメートルオーダのみならずサブマイクロメートルオーダも含むものとする)の幅(ピッチ)の凹凸構造が形成されている炭素系基板を用いる場合にも、例えば搬送、組付けなどの作業中等に人の手などが微細凹凸構造に接触することなどを防止でき、これにより、微細凹凸構造の倒れを防止できて、高い放熱性能を維持することが可能な照明装置、電子機器、携帯端末を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、表面にナノメートルオーダまたはサブマイクロメートルオーダの幅(ピッチ)の凹凸構造が形成されている炭素系部材が、筐体の内壁、または、筐体内の部材、部品等に取り付けられていることを特徴とする照明装置である。
【0012】
また、請求項2記載の発明は、表面にナノメートルオーダまたはサブマイクロメートルオーダの幅(ピッチ)の凹凸構造が形成されている炭素系部材が、筐体の内壁、または、筐体内の部材、部品等に取り付けられていることを特徴とする電子機器である。
【0013】
また、請求項3記載の発明は、表面にナノメートルオーダまたはサブマイクロメートルオーダの幅(ピッチ)の凹凸構造が形成されている炭素系部材が、筐体の内壁、または、筐体内の部材、部品等に取り付けられていることを特徴とする携帯端末である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1、請求項2、請求項3記載の発明によれば、表面にナノメートルオーダまたはサブマイクロメートルオーダの幅(ピッチ)の凹凸構造が形成されている炭素系部材(炭素系基板)を、筐体の内壁、または、筐体内の部材、部品等に取り付けることにより、表面にナノメートルのオーダ(本発明では、ナノメートルのオーダとは、ナノメートルオーダのみならずサブマイクロメートルオーダも含むものとする)の幅(ピッチ)の凹凸構造が形成されている炭素系基板を用いる場合にも、例えば搬送、組付けなどの作業中等に人の手などが微細凹凸構造に接触することなどを防止でき、これにより、微細凹凸構造の倒れを防止できて、高い放熱性能を維持することが可能な照明装置、電子機器、携帯端末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】特許文献2に示されている発光モジュールの断面図である。
【図2】本発明で用いられる炭素系部材(炭素系基板(例えば、グラファイト基板))の概略拡大断面図である。
【図3】グラファイト基板材料の表面に形成された本発明のナノ凹凸構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図4】放熱材料に要求される理想的な反射特性を示すグラフである。
【図5】本発明に係る炭素系部材(炭素系基板(例えば、グラファイト基板))のナノ凹凸構造の加工形成を説明するためのフローチャートである。
【図6】図5のプラズマエッチング前後のグラファイト基板の表面の波長0.3−2μmの反射率を示すグラフである。
【図7】図5のプラズマエッチング前後のグラファイト基板の表面の波長2−15μmの反射率を示すグラフである。
【図8】表面にナノ凹凸構造が形成された炭素系部材(炭素系基板(例えば、グラファイト基板))が筐体の内壁に取り付けられた照明装置の一例を示す図である。
【図9】従来のLED照明装置と本発明のLED照明装置との比較結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
本発明は、本願の先願(特願2009−195354)に記載のような、表面にナノメートルのオーダ(本発明では、ナノメートルのオーダとは、ナノメートルオーダのみならずサブマイクロメートルオーダも含むものとする)の幅(ピッチ)の凹凸構造(以下、ナノ凹凸構造と称す)が形成されている炭素系部材(炭素系基板(例えば、グラファイト基板))を用いた(取り付けた)照明装置、電子機器、あるいは、携帯端末に関するものである。
【0018】
より詳細に、本発明で用いられる炭素系部材(炭素系基板(例えば、グラファイト基板))は、図2に概略拡大断面図で示すように、炭素系基板材料(例えば、グラファイト基板材料)1の表面に、ナノメートルオーダー(約10nm〜500nm程度の範囲)からサブマイクロメートルオーダ(約0.5μm〜10μm程度の範囲)の幅(ピッチ)NPと、サブマイクロメートルオーダ(約0.5μm〜10μm程度の範囲)の深さNHとを持つ凹凸構造(ナノ凹凸構造)2が形成されたものとなっている。
【0019】
図3は、グラファイト基板材料の表面に形成された本発明のナノ凹凸構造2を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0020】
本発明で用いられる炭素系部材は、炭素系基板材料(例えば、グラファイト基板材料)1の表面に、ナノメートルオーダー(約10nm〜500nm程度の範囲)からサブマイクロメートルオーダ(約0.5μm〜10μm程度の範囲)の幅(ピッチ)NPと、サブマイクロメートルオーダ(約0.5μm〜10μm程度の範囲)の深さNHとを持つ凹凸構造(ナノ凹凸構造)2が形成されたものとなっていることにより、表面積が著しく増大し、また、以下に説明するように、可視光を含む領域及び遠赤外領域の反射率を十分に低くして放射率を理論最大値1.0に極めて近い0.99まで向上させることができ(輻射による放熱性を著しく高めることができ)、放熱性能を著しく向上させることが可能となる。従って、小型(薄型)、軽量で、放熱性能の著しく高い放熱材料(放熱部材)として用いることができる。
【0021】
以下に、本発明に係る炭素系部材(表面にナノ凹凸構造2が形成された炭素系部材)を放熱材料として用いる場合の、動作原理を説明する。本発明に係る放熱材料の動作原理は完全黒体効果を利用した吸収エネルギーの遠赤外放射による放射冷却作用を利用する。すなわち、図4に示すように、光の平均反射率RがR=R0(80%)と高い時には、放熱材料が吸収したエネルギーは放熱材料が有する温度たとえば室温300Kで図4のI0に示す遠赤外領域の黒体放射スペクトルの放射率I0で外部に放射散逸を起こすが、反射率が高いため放熱効率が低い。他方、光の平均反射率RがR=R1(1%)と低い時には、放熱材料が吸収したエネルギーは室温300Kで図4のI1に示す遠赤外領域の黒体放射スペクトルの放射率I1で外部に放射散逸を起こすことができるので、放熱効率が高い。つまり、反射率Rが低下すると、放射率Iが上昇し、逆に、反射率Rが上昇すると、放射率Iが低下するという関係が成立する。この場合、光放熱つまり光放射能力を示す指数として放射率を用いるが、光の透過率がほぼ0の場合、放射率I≒1−R(反射率)で表わされる。従って、理想的には、放熱材料としてたとえば波長0.3−50μmの反射率Rができるだけ0に近いものを用いると、放熱効率が大きくなることが分かる。
【0022】
図5は本発明に係る炭素系部材(炭素系基板(例えば、グラファイト基板))のナノ凹凸構造2の加工形成を説明するためのフローチャートである。なお、以下では、炭素系部材(炭素系基板)はグラファイト基板であるとして説明する。すなわち、以下の各例では、炭素系基板材料1としてグラファイト基板材料を用いている。
【0023】
図5のステップS1では、グラファイト基板材料1の表面をOガスを用いたプラズマエッチング法によってエッチングして、図3に示したようにナノ凹凸構造2が表面に形成されたグラファイト基板を得る。ここで、プラズマエッチング条件は、例えば次のごとくである。
RFパワー:500W
圧力:50mTorr
流量:200sccm
エッチング時間:50分
【0024】
なお、図5のステップS1でのプラズマエッチング法は、電子サイクロトロン共鳴(ECR)エッチング法、反応性イオンエッチング(RIE)法、大気圧プラズマエッチング法等のいずれでもよく、また、処理ガスはOガス以外のArガス、Nガス、Hガス、CFガス、COガス、SFガス等のいずれでもよく、これらの混合ガスでもよい。
【0025】
このようにしてナノ凹凸構造2が表面に形成されたグラファイト基板を得ることができ、ナノ凹凸構造2が表面に形成されたことにより、表面積が著しく増大し、また、可視光を含む領域及び遠赤外領域の反射率を十分に低くして放射率を著しく高めることができるため(輻射による放熱性を著しく高めることができるため)、放熱効率を著しく高めることができる。すなわち、図6に示すように、可視光を含む領域の波長0.3−2μmの平均反射率はプラズマエッチング前の20−30%からプラズマエッチング後の1.5%以下と低くなる。従って、可視光を含む領域の吸収は最高となる。しかも、図7に示すように、遠赤外領域のたとえば波長2−15μmの平均反射率もプラズマエッチング前の60%からプラズマエッチング後の2%以下と低くなる。この結果、図4の理想的な反射特性R1に近づく。この結果、このプラズマエッチングされたグラファイト基板をそのまま放熱材料として用いることができる。
【0026】
また、図5のステップS1でのプラズマエッチングの前に、グラファイト基板にサンドブラスト等の機械的表面研磨及び/またはCOレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等のハイパワーレーザ照射による表面研磨による前処理を行い、これにより、不規則的周期の例えばマイクロメートルオーダ(約10μm〜500μm程度の範囲)、サブマイクロメートルオーダ(約0.5μm〜10μm程度の範囲)の凹凸構造をグラファイト基板に予め形成しておくこともでき、この場合には、グラファイト基板の表面積がより一層増大して、ナノ凹凸構造2だけが形成される場合よりも、さらにより一層放熱効率を高めることができる。なお、図5のステップS1でのプラズマエッチングの前に凹凸構造が形成される場合、この凹凸構造の幅(ピッチ)は、ステップS1でのプラズマエッチングで形成されるナノ凹凸構造2の幅(ピッチ)NPよりも必ず大きいものである。
【0027】
本願の発明者は、実際、ナノ凹凸構造2が表面に形成されたグラファイト基板の放射率を放射温度計(KEYENCE FT−H20)により測定した。この結果、ナノ凹凸構造2が表面に形成されたグラファイト基板の表面の温度が150℃のときの放射率は、理論最大値1.00に対して0.99となった。
【0028】
上記ナノ凹凸構造2が表面に形成されたグラファイト基板と同様なグラファイト素材を用いた放熱部材としては、グラファイトシートが挙げられる。以下に、上記ナノ凹凸構造2が表面に形成されたグラファイト基板と在来のグラファイトシートとの、熱拡散性能、放射率の比較結果を示す。
【0029】
<熱拡散性能>
グラファイトは、炭素の六方晶系の構造から成り、面内は共有結合で強く結合され、層と層の間は分子間力で結合されている。従って、熱伝導性能に異方性を有する。例えば、面内方向は熱伝導率が非常に高く約100〜2000W/mK程度、厚さ方向(層間)は熱伝導率が低く約3〜20W/mK程度である。グラファイトシートの厚さは約0.01〜0.1mmである。
一方、ナノ凹凸構造2が表面に形成されたグラファイト基板は、等方性の材料で、その熱伝導率は約140〜200W/mK程度であり、基板厚さは約0.1〜10mmを取りうる。
等価熱伝導率と厚さを考慮すると、ナノ凹凸構造2が表面に形成されたグラファイト基板の方がグラファイトシートよりも熱拡散性能を高めることができる。
【0030】
<放射率>
グラファイトシートの表面放射率は0.7程度である。一方、ナノ凹凸構造2が表面に形成されたグラファイト基板は、表面に施されたナノ凹凸構造2により、放射率を0.99まで向上させることができる。
【0031】
上記のように、グラファイトシートが熱拡散効果により放熱性能の向上をもたらす一方で、ナノ凹凸構造2が表面に形成されたグラファイト基板は、より高い熱拡散性能と理論最大値1.0に非常に近い放射率とによる双方の放熱性能向上効果が得られる。
【0032】
ところで、前述したように、表面にナノ凹凸構造2が形成された炭素系部材(炭素系基板(例えば、グラファイト基板))では、ナノ凹凸構造2の強度が物理的に弱く、接触などによってナノ凹凸構造2が倒れやすく、それにより元来の高い放熱性能を発揮できなくなるという問題がある。
【0033】
従って、表面にナノ凹凸構造2が形成された炭素系部材(炭素系基板(例えば、グラファイト基板))を、照明装置、電子機器あるいは携帯端末の放熱材料として用いる場合、表面にナノ凹凸構造2が形成された炭素系部材(炭素系基板(例えば、グラファイト基板))を照明装置、電子機器あるいは携帯端末の筐体の例えば外壁などの人の手などが触れやすい位置に取り付けると、人の手などが触れることなどによってナノ凹凸構造2が倒れ、元来の高い放熱性能を発揮できなくなってしまう。
【0034】
この問題を解決するため、本発明では、表面にナノ凹凸構造2が形成された炭素系部材(炭素系基板(例えば、グラファイト基板))を照明装置、電子機器あるいは携帯端末の筐体の内壁、または、筐体内の部材、部品等に取り付けることを特徴としている。すなわち、照明装置、電子機器あるいは携帯端末の筐体の内壁、または、筐体内の部材、部品等は、外部からの接触などから護られており(保護されており)、これにより、人の手などの接触などによるナノ凹凸構造2の倒れを防止でき、高い放熱性能を維持することが可能となる。
【0035】
図8(a),(b)は、表面にナノ凹凸構造2が形成された炭素系部材(炭素系基板(例えば、グラファイト基板))が筐体の内壁に取り付けられた照明装置(図8(a),(b)の例では、LED照明装置)の一例を示す図である。なお、図8(a)は照明装置の概略的な外観を示す斜視図、図8(b)は図8(a)のA−A線における断面図である。また、以下の例では、表面にナノ凹凸構造2が形成された炭素系部材(炭素系基板(例えば、グラファイト基板))10として、表面にナノ凹凸構造2が形成されたグラファイト基板を用いており、これをナノ構造グラファイト基板と呼ぶことにする。
【0036】
図8(a),(b)を参照すると、この照明装置は、筐体11と、筐体11(の外壁)に取り付けられているLED12と、筐体11内に内蔵されているLED駆動回路13とを備えており、さらに、この照明装置では、LED12から発生する熱を外部へ放出するために、筐体11の内壁に、ナノ構造グラファイト基板10が放熱材料として取り付けられている。
【0037】
従来、LEDから発生する熱を外部へ放出するためにLED照明装置の筐体は放熱性の高い金属製が主流となっている。しかし、本発明では、放熱性能を低下することなく軽量化を実現する構造を提供することを意図しており、このため、筐体11には、成形性の高いポリプロピレン樹脂(PP)やポリカーボネイト(PC)またはアクリル(PMMC)等の樹脂などを用いるのが好ましい。
【0038】
また、筐体11とナノ構造グラファイト基板10との間に熱伝導性の高い部材(グリス、シート、接着剤など)を挿入することより、ナノ構造グラファイト基板10は筐体11の内壁にしっかりと確実に取り付けられ(固定され)、また、筐体11とナノ構造グラファイト基板10との間の接触熱抵抗が低減され、高い放熱性能が得られる。
【0039】
本願の発明者は、従来のLED照明装置と本発明のLED照明装置との比較を行った。従来のLED照明装置と本発明のLED照明装置との条件は、それぞれ次のとおりである。
【0040】
<従来のLED照明装置>
サイズ:底面175mm角、高さ70mm、厚さ2mm
筐体:ダイキャスト(ADC12)、熱伝導率97W/mK、放射率0.8
LED発熱量:3W
LED熱抵抗:2.5℃/W
周囲温度:25℃
【0041】
<本発明のLED照明装置>
サイズ:底面175mm角、高さ35mm、厚さ2mm
筐体:ポリプロピレン樹脂(PP)、熱伝導率0.23W/mK、放射率0.8
筐体内壁:ナノ構造グラファイト基板、熱伝導率200W/mK、放射率0.99
LED発熱量:3W
LED熱抵抗:2.5℃/W
周囲温度:25℃
【0042】
上記のような条件において、発熱源となるLED温度と筐体重量を図9に示す。
【0043】
図9から、従来の金属製(ダイキャスト)筐体に比べて、本発明の樹脂製筐体とナノ構造グラファイト基板の2層構造の方が放熱性能に優れていることがわかる。すなわち、本発明では、例えば筐体高さを従来の半分にしても、従来よりもLED温度を低減することができる。これは、本発明では、前述したように、ナノ構造グラファイト基板を用いることにより(すなわち、ナノ凹凸構造2により)、表面積が著しく増大し、また、可視光を含む領域及び遠赤外領域の反射率を十分に低くして放射率を理論最大値1.0に極めて近い0.99まで向上させることができ(輻射による放熱性を著しく高めることができ)、放熱性能を著しく向上させることが可能となることによる。
【0044】
このように、本発明では、樹脂製筐体とナノ構造グラファイト基板の2層構造により、高い放熱性能と小型(薄型)・軽量とを両立可能な照明装置(LED照明装置)を提供することができる。
【0045】
なお、上述の例では、照明装置として、LED照明装置を例に挙げたが、発光部(熱源)がLED以外の照明装置にも、本発明を同様に適用できる。
【0046】
また、照明装置に限らず、発熱源(例えば、半導体素子など)を有し、発熱源からの熱を放熱する必要のある装置、機器(例えばパソコンなどの電子機器や、携帯電話などの携帯端末など)にも、本発明を同様に適用できて、本発明を適用することで、高い放熱性能と小型(薄型)・軽量とを両立可能な装置、機器を提供することができる。
【0047】
また、上述の各例では、表面にナノ凹凸構造2が形成された炭素系部材(炭素系基板)としてグラファイト基板を用いる場合を示したが、表面にナノ凹凸構造2が形成された炭素系部材(炭素系基板)は、グラファイト基板に金属を混ぜた稠密グラファイト基板でもよい。また、表面にナノ凹凸構造2が形成された炭素系部材(炭素系基板)は、グラファイト基板以外の炭素系基板、例えばダイヤモンド基板やガラス状炭素基板などでもよい。
【0048】
また、上述の例では、筐体11が樹脂などで構成されているとし、筐体11が樹脂などで構成されている場合には軽量化に適しており好ましいが、必要に応じ、筐体11を樹脂以外の材料(例えばアルミニウムなどの金属材料等)で構成することも可能であり、この場合も本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、LEDヘッドライト、LEDフォグライト、LEDデイタイムランニングランプ、プロジェクタなどの照明装置や、パソコンなどの電子機器や、携帯電話などの携帯端末などの、発熱源を有し、発熱源からの熱を放熱する必要のある装置、機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 炭素系基板材料(例えば、グラファイト基板材料)
2 凹凸構造(ナノ凹凸構造)
10 ナノ構造グラファイト基板
11 筐体
12 LED
13 LED駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にナノメートルオーダまたはサブマイクロメートルオーダの幅(ピッチ)の凹凸構造が形成されている炭素系部材が、筐体の内壁、または、筐体内の部材、部品等に取り付けられていることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
表面にナノメートルオーダまたはサブマイクロメートルオーダの幅(ピッチ)の凹凸構造が形成されている炭素系部材が、筐体の内壁、または、筐体内の部材、部品等に取り付けられていることを特徴とする電子機器。
【請求項3】
表面にナノメートルオーダまたはサブマイクロメートルオーダの幅(ピッチ)の凹凸構造が形成されている炭素系部材が、筐体の内壁、または、筐体内の部材、部品等に取り付けられていることを特徴とする携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−156395(P2012−156395A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15662(P2011−15662)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】