説明

照明装置

【課題】波長変換された波長変換光の光量を向上させ、明るい照明を得ること。
【解決手段】励起光射出端210を有する光源部200と、波長変換ユニット300と、を有する照明装置100は、波長変換ユニット300を、励起光射出端210から射出された励起光が入射する入射部304と、該入射部304に入射した励起光を所望の波長変換光に波長変換する波長変換部材302と、励起光と波長変換光とを透過する機能を有する光透過部材308と、波長変換部材302からの少なくとも一部の波長変換光を反射させる機能を有する反射部316と、該反射部316が反射した少なくとも一部の波長変換光のうちの少なくとも一部を外部に射出する射出部306と、により構成し、光透過部材308を、入射部304から射出部306まで少なくとも一部は連続して形成された、可視光を透過し且つ熱伝導経路となる部材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、小型固体光源と光ファイバとを組み合わせたファイバ光源が開発されている。このファイバ光源は、細い構造物の先端から光を照射する照明装置として用いられる。
【0003】
このような照明装置として、たとえば、特許文献1では、固体光源を用いたファイバ光源装置(発光装置)が提案されている。図5は、上記特許文献1に開示されている従来の照明装置を示すもので、(A)は波長変換部材周辺の概略構成を示す図、(B)は該照明装置に用いるスペーサの正面図、(C)は該スペーサの斜視図である。
【0004】
上記特許文献1に開示のファイバ光源装置では、小型固体光源(図示せず)に導光部材(光ファイバ)920が接続され、その導光部材920の先端に波長変換部材(蛍光体)940が設置されている。導光部材920は、保持部材930に取り付けられており、導光部材920と波長変換部材940との間には、スペーサ950が設置されている。このスペーサ950は、貫通孔950cを有し、表面には金属薄膜950aが形成されている。このファイバ光源装置では、波長変換部材940から導光部材920側に射出された後方射出光を、スペーサ950の貫通孔950cの内面に設けた金属薄膜950aからなる反射部により反射させることで導光部材920側への射出光を波長変換部材940側へ戻し、波長変換光の照明光量を上げている。
【0005】
このような特許文献1に開示のファイバ光源装置は、発光素子と、発光素子からの光を導く導光部材と、導光部材の少なくとも射出側端部に取り付けられる保持部材と、導光部材の射出側に設けられ、発光素子からの光の少なくとも一部を吸収して異なる波長の光に変換する波長変換部材、とを有し、保持部材または導光部材と、波長変換部材と、の間に、波長変換部材からの後方射出光を反射するスペーサが取り付けられた構成を備え、この構成により、波長変換部材で反射や発生した光が保持部材の端面に入射することにより生じる光の損失を低減できるため、光出力を向上させることができる。したがって、それまでは有効に使われなかった後方射出光を、光出力すべき方向に反射する手段を設けることで、明るさを向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−3228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のファイバ光源装置では、スペーサ950の射出側開口の全面を波長変換部材940で覆うように構成されている。このため、スペーサ950の貫通孔950cの内面である反射部で反射された後方射出光は、波長変換部材940を通過して外部に出力される。しかし、波長変換部材940は、一般に、自己吸収性を有するため、自らが波長変換した波長変換光の一部を吸収してしまい、これにより、外部に射出される波長変換光の光量が低下してしまう。したがって、上述のファイバ光源装置の構成では、波長変換部材940からの波長変換光が十分利用できず、期待されたほど光取り出し効率が向上されないという問題がある。
【0008】
また、導光部材(光ファイバ)920の先端と波長変換部材(蛍光体)940の距離が近接しており、且つ波長変換部材940やその周囲にある部材に対する材料規定がなされていないため、波長変換部材940による波長変換に伴って発生する熱量が波長変換部材940の底面周辺に局所集中し、波長変換部材940やその周囲にある部材が熱劣化し易く、発光素子の光量をあまり上げられないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、波長変換部材によって波長変換された波長変換光の光量を向上させ、明るい照明が得られる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の照明装置の一態様は、
光源光を射出する光源と、
前記光源光を所望の波長の波長変換光に変換し、前記波長変換光を射出する波長変換部材と、
前記波長変換光の一部を反射する第1光学部材と、
を備え、
前記波長変換部材は、前記第1光学部材で反射された波長変換光が入射する領域(第1領域)を構成する第1部位と、前記第1光学部材で反射された波長変換光が入射する領域と入射せずに外部に放出される領域(第2領域)との境界を構成する第2部位と、からなり、
前記波長変換部材と前記第1光学部材との間には、可視光を透過し且つ熱伝導経路となる部材を介在させたことを特徴とする。
また、本発明の照明装置の別の態様は、
励起光射出端を有する励起光源と、波長変換ユニットと、を有する照明装置において、
前記波長変換ユニットは、
前記励起光射出端と光学的に接続され、前記励起光源から射出された励起光が入射する入射部と、
前記入射部に入射した前記励起光を所望の波長変換光に波長変換する波長変換部材と、
前記励起光と前記波長変換光とを透過する機能を有する光透過部材と、
前記波長変換部材からの少なくとも一部の波長変換光を反射させる機能を有する反射部と、
前記反射部が反射した前記少なくとも一部の波長変換光のうちの少なくとも一部を外部に射出する射出部と、
により構成され、
前記光透過部材は、前記入射部から前記射出部まで少なくとも一部は連続して形成された、可視光を透過し且つ熱伝導経路となる部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、波長変換部材が波長変換する際に同時に発生する熱を熱伝導経路となる部材を介して効率良く放熱することができるため、波長変換部材に入射する励起光量を増加させることができるので、波長変換部材によって波長変換された波長変換光の光量を向上させ、明るい照明が得られる照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1(A)は、本発明の第1実施形態に係る照明装置の概略構成を示す図であり、図1(B)は、図1(A)の波長変換ユニット及び導光部材を拡大して示す斜視図であり、図1(C)は、図1(A)の波長変換ユニット及び導光部材を拡大して示す断面図であり、図1(D)は、図1(A)の波長変換ユニットを射出端側から見た正面図である。
【図2】図2は、第1実施形態の変形例に係る照明装置の波長変換ユニット及び導光部材を拡大して示す斜視図である。
【図3】図3(A)は、本発明の第2実施形態に係る照明装置の波長変換ユニット及び導光部材を拡大して示す斜視図であり、図3(B)は、図3(A)の波長変換ユニットを射出端側から見た正面図であり、図3(C)は、図3(B)のC−C線断面での波長変換ユニット及び導光部材を拡大して示す断面図であり、図3(D)は、図3(B)のD−D線断面での波長変換ユニット及び導光部材を拡大して示す断面図である。
【図4】図4(A)は、第2実施形態に係る照明装置の変形例の波長変換ユニット及び導光部材を拡大して示す斜視図であり、図4(B)は、図4(A)の波長変換ユニットを射出端側から見た正面図であり、図4(C)は、図4(B)のC−C線断面での波長変換ユニット及び導光部材を拡大して示す断面図であり、図4(D)は、図4(B)のD−D線断面での波長変換ユニット及び導光部材を拡大して示す断面図である。
【図5】図5は、従来の照明装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る照明装置について、図1を用いて説明する。なお、図1(A)及び図1(B)では一部の部材の図示を省略している。また、図1(B)では、説明のために導光部材と波長変換ユニットの入射部とを離間させて表示している。
【0014】
図1(A)に示すように、第1実施形態に係る照明装置100は、主に、光源部200と波長変換ユニット300とに分けられ、光源部200から射出された励起光を、波長変換ユニット300内にある波長変換部材302に照射する構成である。各部の詳細な構造を次に説明する。
【0015】
光源部200は、半導体レーザ光源202と、集光レンズ204と、導光部材206と、を備える。半導体レーザ光源202は励起光を射出し、集光レンズ204は該励起光を導光部材206の励起光入射端208に集光する。導光部材206には、例えば、コア径50μm、開口数FNA=0.2を有するマルチモード光ファイバを用いる。導光部材206の励起光射出端210からは、上記励起光が光源光として出射される。
【0016】
波長変換ユニット300は、光源部200の導光部材206の励起光射出端210からの励起光を入射する入射部304と、所望の照明光を照射対象物400に射出する機能を持つ射出部306を有している。また、波長変換ユニット300は、波長変換部材302と光透過部材308とを備え、導光部材206により導光された励起光L1を所望の波長変換光L2に波長変換する。
【0017】
波長変換部材302は、円柱形状を有しており、導光部材206の励起光射出端210に面した底面310と、該底面310と対向する上面312と、これら底面310及び上面312に挟まれた側面314と、を有している。また、底面310は、励起光射出端210から離間している。
【0018】
光透過部材308は、波長変換部材302の側面314と底面310とを取り囲むように形成されている。別言すれば、光透過部材308は、入射部304を円錐台の小径の第1面、射出部306を大径の第2面、側面をテーパー面とする、円錐台形状を有している。また、光透過部材308は、励起光L1と、波長変換部材302から射出される波長変換光L2の両方を透過する性質を有している。なお、光透過部材308は、励起光L1や波長変換光L2を散乱する機能を有していても良い。また、光透過部材308の入射部304と射出部306を除く側面、すなわち、円錐台形状の傾斜面には、第1光学部材である反射部316が形成されている。
【0019】
反射部316は、該反射部316に入射した入射光を正反射または拡散反射して反射光に変換する機能を有している。本実施形態においては、入射光は、波長変換部材302により波長変換された波長変換光L2であり、反射光は反射部316により正反射または拡散反射されることでその進行方向が変換された波長変換光L2である。なお、理想的な反射面では、純粋な正反射や拡散反射を実現可能であるが、多くの場合、正反射する成分と拡散反射する成分とが混在する。本発明では、純粋な正反射から純粋な拡散反射までを含めた様々な反射部を利用することが可能である。純粋な正反射に近い反射部は、金属等の薄膜を成膜することで実現できる。これにより、テーパー形状を活かし、より多くの反射光を射出部306側に導き易い反射部316を実現できる。また、純粋な拡散反射に近い反射部は、酸化物や樹脂の粉末を塗布することで実現できる。これにより、反射部316の形状の影響を受けにくい反射部316を実現できる。このような反射部316は、光透過部材308の側面全面ではなく、一部のみに形成する構成でもよいが、本実施形態は、光透過部材308の側面の全面に形成した例である。
【0020】
円柱状の波長変換部材302の上面312は、射出部306よりも面積が小さく、且つ、射出部306とほぼ同心で配置されている。このように配置することで、波長変換部材302は、その全周にわたって反射部316と離間して配置されている。また上面312は、射出部306の開口面の一部を形成している。ここで、波長変換部材302の厚さは、励起光L1を十分波長変換光L2に変換するように設定される。
【0021】
以下、波長変換部材302の底面310と側面314を合わせた領域を第1領域と称し、この領域の部位を第1部位318と称する。また、射出部306から波長変換部材302の上面312を除いたドーナツ状の領域を、反射部316で反射された波長変換光が波長変換部材302に入射せずに外部に放出される領域である第2領域319と称し、この第2領域319のうち、内側の円状境界、すなわち、波長変換部材302の上面312と側面314とが接する円状曲線を第2部位320と称する。
【0022】
また、本実施形態では、光透過部材308は、波長変換部材302と反射部316の間に充填されるため、光透過部材308は、波長変換部材302の側方全周に渡って入射部304から射出部306まで連続して形成されていることになる。
【0023】
導光部材206の励起光射出端210は、入射部304に励起光L1が入射するように接続されている。より具体的には、励起光射出端210は、光透過部材308の円錐台の第1面である入射部304の中央付近に接続されている。
【0024】
励起光射出端210と波長変換部材302との相対位置は、励起光射出端210より射出される励起光L1が略全て波長変換部材302の底面310上に照射されるように光透過部材のサイズおよび波長変換部材302のサイズを設定する。このとき、導光部材206から射出された励起光L1が、波長変換部材302の底面310を含む平面上に形成するビームスポットは、波長変換部材302の底面310よりも小さくなるように構成している。ここで、ビームスポットとは、励起光の最大強度に対し、1/eより大きな光強度を有する領域と定義し、eは自然体数の底としてのネイピア数である。
【0025】
ここで、各部材の形状及び材質の好ましい例について説明する。
光透過部材308のテーパー角は、導光部材206の中心軸206Cに対し20degが好ましい。波長変換部材302は、0.17mmの半径と、0.5mmの厚さを有する円柱形状が良い。このような構造とすることにより、入射部304から波長変換部材302の底面310までの距離が約0.6mmとなる。なお、導光部材206には、先のマルチモード光ファイバを用いている。
【0026】
また、光透過部材308の側面に反射部316を形成するためには、まず、光透過部材308の上下面をマスキングしたサンプルに反射材料を蒸着もしくはメッキすることが望ましい。反射材料としては、光透過部材308の側面に形成し易く、また、可視光に対し高い反射率を有する金属膜が望ましい。より望ましくは、アルミニウムか銀を選択されたい。
【0027】
なお、波長変換ユニット300にはさらに、図1(C)及び(D)に示すように、このように反射部316が形成された光透過部材308を保護するためのホルダ322が設置される。具体的には、ホルダ322は、貫通孔を有しており、光透過部材ホルダ固着部材324によって、反射部316が形成された光透過部材308の入射部304および射出部306を除いた周囲がその内孔に固定されている。
【0028】
なお、反射部316は、光透過部材側面に設置するのではなく、ホルダの貫通孔内面に形成されていても良い。その場合光透過部材とホルダを固着させる光透過部材ホルダ固着部材324は、波長変換光L2に対する光透過性という特性を有する事が必要である。
【0029】
また、導光部材206の励起光射出端210付近には、該導光部材206の側面を保護するための導光部材保持部材212が設置されていることが望ましい。この導光部材保持部材212も貫通孔を有しており、導光部材206の励起光射出端210付近をその内孔に固定している。このような導光部材保持部材212は、図示しない固着部材によって、ホルダ322に固定されている。
【0030】
なお、波長変換部材302や、光透過部材308など波長変換部材302の周辺部材は、樹脂であることが最も成形性良くまた安価である。ただし、それらが持つ熱伝導率が低い場合、波長変換部材302の波長変換に伴って発生する熱量が、その周囲を取り囲んでいる部材によって放熱されにくく、波長変換部材302やその周辺部材が熱劣化する原因となるため、波長変換部材302に入射させる励起光量を高く設定できない。
【0031】
このことから、波長変換部材302で発生した熱量は、周囲の部材と熱的に接続され、迅速に周囲に拡散されることが望ましく、それを実現する材料を配置することが望まれる。ただし、波長変換部材302から照明光を射出する方向には、光学的な制約が多く、自由な材料選択が出来ない。波長変換部材302から射出方向に接する物質は、レンズなどの透明部材もしくは空気のみであり、それ以上熱を拡散させることはできない。ここで熱的に接続とは、2つの部材間を効率良く熱が伝わる状態であることを指すこととする。
【0032】
一方で、波長変換部材302の後方もしくは側方には、複数の部材が設置され、光源としての性能を著しく低下させない程度の材料選択自由度はある。従って、波長変換部材302で発生した熱量を、該波長変換部材302の周囲を取り囲む部材の材料選択によって、後方もしくは側方に拡散させることが効果的であることがわかった。例えば、光透過部材308は、可視光に対する透過率が高く且つ熱伝導率の高い他の材料で構成することが望ましい。このような構成とすることで、光透過部材308は熱伝導経路となる部材とすることが出来る。一般的な耐熱性樹脂にシリコーン樹脂があるが、この種の樹脂の熱伝導率は0.1W/(m・k)程度である。これより熱伝導率の高い材料を用いた方が放熱され易く、波長変換部材302が熱劣化しにくいため、励起光を多く入力できより明るい照明装置となる。具体的には、シリコーン樹脂の熱伝導率の5倍(0.5W/m・k)以上の熱伝導率を有した材料、例として無機ガラス材料(アモルファスガラス材や石英ガラス材)やダイヤモンドなどを採用すると効果が顕著に現れる。
【0033】
また、同様の理由で、ホルダ322や導光部材保持部材212、ホルダ322と波長変換ユニット300とを固着する光透過部材ホルダ固着部材324、ホルダ322と導光部材保持部材212とを固着する固着部材に関しても、熱伝導率が光透過部材308と同等又は高い材料を用いることが望ましい。
【0034】
特に、ホルダ322や導光部材保持部材212に関しては、透過率など光学的な材料制約がほとんど無いため、材料の選択自由度が高い。そのため、熱伝導率のより高いアルミニウム、銅などの金属製、またはチッ化アルミニウムなどの金属化合物製、またはシリコンカーバイドやグラフェンなどの炭素化合物で作製されることが望まれる。
【0035】
また、上記に挙げた固着部材は、それの厚さを薄くすることでも熱伝導効果を高くすることも出来る。熱伝導効果を顕著にするためには、少なくとも光透過部材ホルダ固着部材324の厚さを、反射部316と波長変換部材302との間の最短距離よりもさらに薄いことが望ましい。通常、化学接着剤などを用いて2つの部材を接着させる場合、30μm以上の膜厚になることがほとんどであるが、接着剤の粘度をかなり低く設定するか、もしくは、両部材間に加重をかけることで、意図的に薄くし10μm以下にすることが出来る。そうすることによっても、劇的に熱伝導効果を高くすることができる。
【0036】
また、波長変換部材302は、分散材326としてシリコーン樹脂を用い、粒径が数μmから数十μmの粉末蛍光体328を、この樹脂に分散したものが例として挙げられる。ただし、この場合も、粉末蛍光体328で発生した波長変換時の熱を放熱させにくく入力励起光をあまり上げられない。そこで、この分散材326に関しても、可視光に対する透過率が高く且つ熱伝導率が光透過部材ホルダ固着部材324と同等又は高い材料が望ましい。同じくシリコーン樹脂の5倍以上の熱伝導率を有した材料を採用すると効果が顕著に現れ、励起光を多く入力できるため、より明るい照明装置となる。
【0037】
上記のような材料や形状で作製することで、波長変換部材302が波長変換する際に同時に発生する熱を効率良く外部に放熱することができ、波長変換部材302やその周囲の部材の熱劣化を防ぐことができるため、波長変換部材302に入射させる励起光量を増加させることができ、明るい照明装置を提供できるようになる。
【0038】
[動作]
次に、光源部200からの励起光L1の挙動について説明する。
【0039】
まず、光源を構成する半導体レーザ光源202と導光部材206は光学的に接続され、半導体レーザ光源202から射出された励起光L1は、集光レンズ204を通して、励起光入射端208から導光部材206に高効率に入射する。ここで、光学的に接続とは、2つの部材間で所望の光が効率よく伝達される状態にあることを指すこととする。
【0040】
導光部材206に入射した励起光L1は、導光部材206の内部を導光し、導光部材206の励起光射出端210から光透過部材308に向かって射出される。このとき、導光部材206が有する開口数(NA)と光透過部材308の屈折率などに応じた広がり角で射出される。
【0041】
励起光L1は、光透過部材308を透過して波長変換部材302の底面310に照射される。このとき、波長変換部材302の底面310の大きさは、励起光が波長変換部材302の底面310を含む平面上に形成するビームスポットより大きくなるように構成されているため、励起光L1は、その大部分が波長変換部材302に照射される。この結果、波長変換部材302を経由せず直接外部に射出される励起光はほとんどない。
【0042】
励起光L1は、波長変換部材302に照射され、波長変換部材302を透過しながら励起光L1と異なる波長の波長変換光L2に変換される。このとき波長変換光L2は、励起光L1の入射方向に依らず、あらゆる方向に射出される。一部は、波長変換部材302の上面312から、または側面314と上面312との境界部分(第2部位320)から、直接、外部の照射対象物400に照射され、別の一部は、波長変換部材302の側面314から光透過部材308を介して射出部306より外部の照射対象物400に照射される。
【0043】
また、波長変換光L2の別の一部は、波長変換部材302の第1部位318又は第2部位320から、光透過部材308に向かって射出する。この第1部位318又は第2部位320から光透過部材308に向かって射出された波長変換光L2は、光透過部材308を透過した後、該光透過部材308の側面に形成された反射部316によって一部反射される。反射部316は、射出部306側すなわち照射対象物400側に開いたテーパー面となっているため、反射部316で反射された波長変換光L2は、もとの進行方向と比べ、射出部306側に向かって進行する成分が増加する。
【0044】
詳細には、反射部316で反射された波長変換光L2は、その一部は再び反射部316に向かい、また別の一部は波長変換部材302に向かい、残りの一部は光透過部材308を経由して、射出部306から外部の照射対象物400に照射される。
【0045】
反射部316で一度反射され、再び反射部316に向かって射出した波長変換光L2は、一部は、再び上述の工程を繰り返してさらに反射部316に向かい、別の一部は、波長変換部材302に向かい、残りの一部は、射出部306から外部に射出される。
【0046】
反射部316や波長変換部材302に向かった波長変換光L2は、以降、上述の過程を繰り返す。
【0047】
一方、波長変換ユニット300に入射された励起光L1が、粉末蛍光体328に吸収、波長変換されることに伴って発生した熱量も等方的に拡散される。この熱量は、主に、下記5つの熱伝導経路を通り外部に放熱される。
【0048】
(1)波長変換部材302の粉末蛍光体328にて発生した熱量が、分散材326と他の粉末蛍光体328を通過し、射出部306の一部である波長変換部材302の上面312から外部へ放出される。
【0049】
(2)波長変換部材302の粉末蛍光体328にて発生した熱量が、分散材326と他の粉末蛍光体328を通過し、波長変換部材の底面310もしくは側面314から光透過部材308へ伝わり、光透過部材308の内部を通り、導光部材206へ伝わり、導光部材206の内部を通り、導光部材保持部材212へ伝わり、導光部材保持部材212の内部を通り、外部へ放出される。
【0050】
(3)波長変換部材302の粉末蛍光体328にて発生した熱量が、分散材326と他の粉末蛍光体328を通過し、波長変換部材302の底面310もしくは側面314から光透過部材308へ伝わり、光透過部材308の内部を通り、光透過部材ホルダ固着部材324へ伝わり、光透過部材ホルダ固着部材324の内部を通り、ホルダ322へ伝わり、ホルダ322の内部を通り、外部へ放出される。
【0051】
(4)波長変換部材302の粉末蛍光体328にて発生した熱量が、分散材326と他の粉末蛍光体328を通過し、波長変換部材302の底面310もしくは側面314から光透過部材308へ伝わり、光透過部材308の内部を通り、光透過部材ホルダ固着部材324へ伝わり、光透過部材ホルダ固着部材324の内部を通り、ホルダ322へ伝わり、ホルダ322の内部を通り、導光部材保持部材212へ伝わり、導光部材保持部材212の内部を通り、外部へ放出される。
【0052】
(5)波長変換部材302の粉末蛍光体328にて発生した熱量が、分散材326と他の粉末蛍光体328を通過し、波長変換部材302の底面310もしくは側面314から光透過部材308へ伝わり、光透過部材308の内部を通り、射出部306の一部である第2領域319から外部へ放出される。
【0053】
[作用・効果]
上述のように、波長変換部材302の側面314および底面310から射出した波長変換光の一部は、波長変換部材302に再入射することなく、光透過部材308を通って射出部306から外部に射出される。この光は、波長変換部材302の自己吸収による光量低下が少ないため、波長変換光の取出し効率の高い照明装置100を実現することが可能となる。特に、励起光が直接照射される底面310からは、他の面に比べて高い割合で波長変換光が射出される。底面310から射出された波長変換光L2の一部は、波長変換部材302よりも光源部200側に配されている光透過部材308に射出し、そこから反射部316と光透過部材308を経由して射出部306まで波長変換部材302に入射することなく、光の利用効率高く外部の照射対象物400に照射できる。
【0054】
また、以下に示すような特徴を有するために、光の利用効率が高く照明光を射出することができると同時に、波長変換時に発生した熱量を効率的に後方もしくは側方に伝達することで熱の極所集中を防ぐことができるため、励起光を多く入力することができ、明るい照明が得られる照明装置を提供することが可能となる。
【0055】
第1に、波長変換部材302は、第1光学部材である反射部316で反射された波長変換光が再び入射する領域(第1領域)である底面310及び側面314と、反射部316で反射された波長変換光が当該波長変換部材302に入射せずに外部に放出されるドーナツ状の領域(第2領域319)と上記第1領域との境界を構成する第2部位である円状曲線と、からなり、且つ、波長変換部材302が前方で接している空気より、後方もしくは側方にある光透過部材308の方が熱伝導率が高く、光透過部材308が熱伝導経路となるため、波長変換時に発生した熱量を効率的に後方に伝達することができる。
【0056】
第2に、波長変換部材305は、熱伝導率の高い光透過部材308と接しているため、波長変換時に発生した熱量を効率的に拡散することができる。
【0057】
第3に、反射部316と波長変換部材302は、互いに離間して配置されており、両者の間には光透過部材308が設けられ、その光透過部材308は熱伝導率の高い材料を選択しているため、波長変換時に発生した熱量を効率的に反射部316まで伝達することができる。
【0058】
第4に、光透過部材308は、可視光に対し光透過率が高く、且つ、0.5W/m・k以上の熱伝導率としているため、波長変換時に発生した熱量を効率的に後方もしくは側方に伝達することができる。
【0059】
第5に、光透過部材308とホルダ322とは、反射部316と光透過部材ホルダ固着部材324を介して熱的に接続されているため、波長変換時に発生した熱量を効率的にホルダ322まで伝達することができる。
【0060】
第6に、光透過部材308とホルダ322は、光透過部材308と比較して熱伝導率が同等又は高く、且つ、光透過部材308の、反射部316と波長変換部材302との間の最短距離よりも薄い、光透過部材ホルダ固着部材324で接続されているため、波長変換時に発生した熱量を効率的にホルダ322まで伝達することができる。
【0061】
第7に、ホルダ322は、金属製等、光透過部材308と比較して熱伝導率が同等又は高い材料で形成されているため、波長変換時に発生した熱量を効率的に外部に伝達、放熱することができる。
【0062】
第8に、導光部材保持部材212は、金属製等、光透過部材308と比較して熱伝導率が同等又は高い材料で形成されているため、波長変換時に発生した熱量を効率的に外部まで伝達、放熱することができる。
【0063】
第9に、粉末蛍光体328を分散、固定化している分散材326は、可視光に対して光透過性が高く、且つ、光透過部材ホルダ固着部材324と比較して、熱伝導率が同等又は高い材料により形成されているため、波長変換時に発生した熱量を効率的に周囲に伝達することができる。
【0064】
[変形例]
なお、光透過部材308は、入射部304を円錐台の小径の第1面、射出部306を大径の第2面、側面をテーパー面とする、円錐台形状を有しているものとしたが、図2に示すように、第1面と第2面を同サイズとした円柱形状として構成しても、円錐台形に構成した場合と同様に動作し、同様の効果を奏することができる。
【0065】
なお、図2では、説明のために、導光部材206と波長変換ユニット300の入射部304とを離間させて表示している。
【0066】
この場合、光透過部材308の側面に加えて、入射部304を除いた第1面にも、反射部316が直接形成されることは言うまでもない。
【0067】
[第2実施形態]
上記第1実施形態は、波長変換部材302の側方全周に渡って光透過部材308を設置した例であるが、光透過部材308は、波長変換部材302の側方のうち一部に設置され、結果、入射部304から射出部306まで光透過部材308の一部が連続して形成されていれば、上記第1実施形態よりは得られる効果が小さいが、同様の効果を奏することができる。
【0068】
図3および図4は、それぞれ、そのような、波長変換ユニット300の入射部304から射出部306まで連続した光透過部材308の領域が波長変換部材302を取り囲んでいる例を示している。
【0069】
この場合、射出部306は、連続して形成された光透過部材308のうち波長変換部材302の上面312と同一面の外表面すべてであり、この面全てから反射部316で反射された波長変換光の一部が外部に射出される。
【0070】
なお、これらの例では、反射部316は、波長変換ユニット300の入射部304を除いた第1面と、波長変換部材302の側面と光透過部材308とが接する部分を除いた波長変換部材302および光透過部材308の側面全面と、に形成されているが、波長変換部材302のその他の側面には形成しなくても良いことは勿論である。
【0071】
さらに、光透過部材308の側面全面に渡って形成しているエリアについても、その全てに反射部316を設けずとも、少なくともその一部に反射部316が形成されていれば、効果が得られる。
【0072】
このように、光透過部材308は、波長変換ユニット300における入射部304から射出部306まで少なくとも一部は連続して形成され、且つ、波長変換部材302は、熱伝導率の高い光透過部材308と接しているため、波長変換時に発生した熱量を効率的に拡散することができる。
【0073】
なお、図3および図4は、光透過部材308を円柱形状として構成した場合を示しているが、円錐台形に構成したほう好ましいことは言うまでもない。
【0074】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0075】
100…照明装置、 200…光源部、 202…半導体レーザ光源、 204…集光レンズ、 206…導光部材、 206C…導光部材の中心軸、 208…励起光入射端、 210…励起光射出端、 212…導光部材保持部材、 300…波長変換ユニット、 302…波長変換部材、 304…入射部、 305…波長変換部材、 306…射出部、 308…光透過部材、 310…底面、 312…上面、 314…側面、 316…反射部、 318…第1部位、 319…第2領域、 320…第2部位、 322…ホルダ、 324…光透過部材ホルダ固着部材、 326…分散材、 328…粉末蛍光体、 400…照射対象物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源光を射出する光源と、
前記光源光を所望の波長の波長変換光に変換し、前記波長変換光を射出する波長変換部材と、
前記波長変換光の一部を反射する第1光学部材と、
を備え、
前記波長変換部材は、前記第1光学部材で反射された波長変換光が入射する領域を構成する第1部位と、前記第1光学部材で反射された波長変換光が入射する領域と入射せずに外部に放出される領域との境界を構成する第2部位と、からなり、
前記波長変換部材と前記第1光学部材との間には、可視光を透過し且つ熱伝導経路となる部材を介在させたことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
励起光射出端を有する励起光源と、波長変換ユニットと、を有する照明装置において、
前記波長変換ユニットは、
前記励起光射出端と光学的に接続され、前記励起光源から射出された励起光が入射する入射部と、
前記入射部に入射した前記励起光を所望の波長変換光に波長変換する波長変換部材と、
前記励起光と前記波長変換光とを透過する機能を有する光透過部材と、
前記波長変換部材からの少なくとも一部の波長変換光を反射させる機能を有する反射部と、
前記反射部が反射した前記少なくとも一部の波長変換光のうちの少なくとも一部を外部に射出する射出部と、
により構成され、
前記光透過部材は、前記入射部から前記射出部まで少なくとも一部は連続して形成された、可視光を透過し且つ熱伝導経路となる部材であることを特徴とする照明装置。
【請求項3】
前記光透過部材は、0.5W/m・kより大きい熱伝導率であることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記光透過部材は、無機材料であることを特徴とする請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記光透過部材は、無機ガラスであることを特徴とする請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記波長変換ユニットは、前記入射部と前記射出部とを除く側面を保護するためのホルダをさらに備え、
前記反射部は、前記光透過部材と前記ホルダとの間に設けられ、
前記光透過部材と前記ホルダは、光透過部材ホルダ固着部材を介して熱的に接していることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項7】
前記光透過部材ホルダ固着部材の厚さは、前記光透過部材の、前記反射部と前記波長変換部材との間の最短距離よりも薄いことを特徴とする請求項6に記載の照明装置。
【請求項8】
前記波長変換ユニットにおいて、前記光透過部材ホルダ固着部材は、前記光透過部材と比較して、熱伝導率が同等又は高いことを特徴とする請求項6に記載の照明装置。
【請求項9】
前記光透過部材ホルダ固着部材は、0.5W/m・k以上の熱伝導率を有する材料であることを特徴とする請求項8に記載の照明装置。
【請求項10】
前記ホルダは、前記光透過部材と比較して、熱伝導率が同等又は高い材料で形成されていることを特徴とする請求項6に照明装置。
【請求項11】
前記ホルダは、0.5W/m・k以上の熱伝導率を有する材料であることを特徴とする請求項10に記載の照明装置。
【請求項12】
前記ホルダは、金属または金属化合物で形成されていることを特徴とする請求項11に記載の照明装置。
【請求項13】
前記励起光源は、導光部材を有しており、
前記励起光射出端は、前記導光部材の射出側端部であり、
前記励起光源は、さらに、前記励起光射出端の側面を保護する導光部材保持部材を有し、
前記導光部材保持部材は、前記光透過部材と比較して、熱伝導率が同等又は高い材料で形成されていることを特徴とする請求項10に記載の照明装置。
【請求項14】
前記導光部材保持部材は、0.5W/m・k以上の熱伝導率であることを特徴とする請求項13に記載の照明装置。
【請求項15】
前記導光部材保持部材は、金属または金属化合物で形成されていることを特徴とする請求項14に記載の照明装置。
【請求項16】
前記波長変換部材は、粉末蛍光体と、前記粉末蛍光体を分散させる分散材と、からなり、
前記分散材は、可視光に対して光透過性を有し、且つ、前記光透過部材ホルダ固着部材と比較して、熱伝導率が同等又は高い材料により形成されていることを特徴とする請求項6、10又は13に記載の照明装置。
【請求項17】
前記分散材は、0.5W/m・k以上の熱伝導率であることを特徴とする請求項16に記載の照明装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−4208(P2013−4208A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131484(P2011−131484)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】