説明

熱ナノインプリント方法

【課題】微細な凹凸パターンを転写した製品のバリの発生を抑制することのできる熱ナノインプリント方法を提供する。
【解決手段】型17に形成された微細な凹凸パターン15を熱可塑性樹脂の被成形材料9に転写する熱ナノインプリント方法であって、雌型3に形成された凹部5内に、体積が前記凹部5の体積にほぼ等しい体積の被成形材料9を配置し、前記雌型3及び被成形材料9を加熱すると共に前記型17でもって前記被成形材料9を押圧し、押圧した状態でもって前記型17及び被成形材料9の冷却を行い、その後に離型を行い、前記被成形材料9は、上部周縁部に予め面取り部が形成してある熱ナノインプリント方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂の被成形材料に対して、型に形成した微細な凹凸パターンを転写する熱ナノインプリント方法に係り、さらに詳細には、微細な凹凸パターンを転写した後の製品のバリの発生を抑制した熱ナノインプリント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、型に形成したナノスケールの微細な凹凸パターンを、熱可塑性樹脂の被形成材料に転写する熱ナノインプリントが開発されている。この熱ナノインプリントは、基板上に熱可塑性樹脂の被形成材料を載置し加熱して十分に柔らかくなった後に、ナノスケールの微細な凹凸パターンを形成した型(モールド)を前記被形成材料へ押圧して、前記凹凸パターンの転写を行うものである(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−26052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
熱可塑性樹脂の被形成材料を基板上に単に載置して加熱し、型によって前記被形成材料を押圧する構成においては、製品としての被形成材料の周縁部にバリが生じ、二次加工として前記バリを除去する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、前述のごとき問題に鑑みてなされたもので、型に形成された微細な凹凸パターンを熱可塑性樹脂の被成形材料に転写する熱ナノインプリント方法であって、雌型に形成された凹部内に、体積が前記凹部の体積にほぼ等しい体積の被成形材料を配置し、前記型及び被成形材料を加熱すると共に前記型でもって前記被成形材料を押圧し、押圧した状態でもって前記型及び被成形材料の冷却を行い、その後に離型を行うことを特徴とするものである。
【0005】
また、前記熱ナノインプリント方法において、前記被成形材料は、上部周縁部に体積調整のための面取り部が形成してあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、型に形成した微細な凹凸パターンの転写は、熱可塑性樹脂の被成形材料を雌型の凹部内に収納して行うことができる。すなわち、前記被成形材料が前記凹部から突出することを抑制して転写を行うことができ、製品においてのバリの発生を抑制することができるものである。
【0007】
また、例えバリが発生したような場合であっても、発生量が少なく、小さなバリであるから、簡単に除去することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1を参照するに、概念的、概略的に示すように、本発明の実施形態に係る熱ナノインプリント装置1は、素材台3を備えており、この素材台3上には成形用の凹部5を備えた雌型7が装着してある。前記凹部5は、凹部5の底部側よりも上部の開口部側が僅かに大きくなるように抜き勾配が設定してある。そして、前記素材台3には、前記雌型7及び前記凹部5内の熱可塑性樹脂からなる被成形材料9を加熱し、かつ冷却するための加熱・冷却手段11が備えられている。前記被成形材料9の体積は前記凹部5の体積にほぼ等しく形成してある。
【0009】
前記素材台3の上方位置には、当該素材台3と対向するスタンパ台13が上下動自在に備えられており、このスタンパ台13の下面には、前記雌型7における前記凹部5に対応する部分に微細な凹凸パターン15を形成したスタンパ(型)17が取付けてある。そして、前記スタンパ台13には前記スタンパ17の加熱,冷却を行うための加熱・冷却手段19が備えられている。
【0010】
以上のごとき構成において、前記雌型7における凹部5の体積にほぼ等しい体積に予め形成した被成形材料9を前記凹部5内に配置し、素材台3に備えた加熱・冷却手段11によって雌型7及び被成形材料9を加熱すると共に、スタンパ台13に備えた加熱・冷却手段19によってスタンパ17を加熱する。そして、前記被成形材料9が十分に軟化した後、スタンパ台13を下降してスタンパ17の下面に備えた凹凸パターン15でもって前記被成形材料9を押圧すると、被成形材料9は前記凹部5内に充填されると共に、前記凹凸パターン15が被成形材料9の上面に転写される。
【0011】
この際、前記被成形材料9の体積は前記凹部5の体積にほぼ等しく予め形成してあるので、図2に示すように、前記雌型7の上面とスタンパ17の下面との間の微少間隙21内に被成形材料9の一部がはみ出すことなく成形加工(転写加工)することができるものである。すなわち前記微少間隙21に被成形材料19の一部がはみ出すことによるバリの発生を抑制することができるものである。
【0012】
なお、前記微少間隙21に、バリが発生したような場合であっても、量は少ないものであり、簡単に除去することができるものである。
【0013】
前述のごとくスタンパ17によって被成形材料19を押圧した状態にあるとき、素材台3に備えた加熱・冷却手段11及びスタンパ台13に備えた加熱・冷却手段19によって全体の冷却を行うことにより、前記被成形材料19の硬化が行われる。その後、スタンパ台13を上昇して離型を行うことにより、前記凹部5の形状に形成され、かつ上面に凹凸パターン15が転写された製品が得られるものである。
【0014】
ところで、前記被成形材料9の体積が前記凹部5の体積にほぼ等しくなるように調整するには、前記凹部5の形状にほぼ近似して形成した被成形材料9の上面周縁に、図3(A)に示すように、体積調整のための面取り部9Cを上部周縁に形成することによって容易に調整することができるものである。なお、前記面取り部9Cの形状としてはC面取りに限ることなく、R面取りでもよく、また図3(B)に示すように、断面形状が凹状を呈するR面取りとすることも可能である。さらには、図3(C)に示すように、被成形材料9の上部周縁部に段部を形成し、この段部を面取部の1例とすることができる。すなわち、体積調整のための面取り部の形状としては、前記形状に限ることなく、種々の形状とすることができるものである。
【0015】
以上のごとき説明より理解されるように、成形後の製品におけるバリの発生を抑制することができるので、バリ取り加工の二次加工が不要となるものであり、生産性向上を図ることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る熱ナノインプリント装置を概念的、概略的に示した説明図である。
【図2】被成形材料の押圧状態を示す説明図である。
【図3】被成形材料の形状説明図である。
【符号の説明】
【0017】
3 素材台
5 凹部
7 雌型
9 被成形材料
13 スタンパ台
15 凹凸パターン
17 スタンパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型に形成された微細な凹凸パターンを熱可塑性樹脂の被成形材料に転写する熱ナノインプリント方法であって、雌型に形成された凹部内に、体積が前記凹部の体積にほぼ等しい体積の被成形材料を配置し、前記型及び被成形材料を加熱すると共に前記型でもって前記被成形材料を押圧し、押圧した状態でもって前記型及び被成形材料の冷却を行い、その後に離型を行うことを特徴とする熱ナノインプリント方法。
【請求項2】
請求項1に記載の熱ナノインプリント方法において、前記被成形材料は、上部周縁部に体積調整のための面取り部が形成してあることを特徴とする熱ナノインプリント方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−183813(P2008−183813A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−19442(P2007−19442)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】