説明

熱交換器

【課題】製造コストの低減および軽量化を図りうる熱交換器を提供する。
【解決手段】熱交換器は、外面にろう材層を有する材料により形成された1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に配置されて両ヘッダタンクにろう付された複数の扁平状熱交換管4と、隣り合う熱交換管4どうしの間に配置されて熱交換管4にろう付されたコルゲートフィン5とを備えている。熱交換管4は、上下壁13,14および上下壁13,14の両側縁どうしにまたがって設けられた2つの側壁15,16を有している。熱交換管4を、金属素板を曲げることにより形成する。熱交換管4の上下壁13,14のうちのいずれか一方の一側縁部に、長さ方向にのびる継ぎ目部24が存在している。コルゲートフィン5の一側縁部が、熱交換管4の継ぎ目部24から熱交換管4の幅方向内側にずれている。コルゲートフィン5の一側縁部と継ぎ目部24との距離を0.3mm以上にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、熱交換器に関し、さらに詳しくは、たとえばカーエアコンのコンデンサやエバポレータやヒータコア、自動車用オイルクーラ、自動車用ラジエータなどとして使用される熱交換器に関する。
【0002】
この明細書において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【背景技術】
【0003】
たとえば車両のカーエアコンのコンデンサに使用される熱交換器として、外面にろう材層を有する材料により形成され、かつ互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に、ヘッダタンクの長さ方向に間隔をおくとともに幅方向を通風方向に向けて配置され、かつ両端部がヘッダタンクにろう付された複数の扁平状熱交換管と、熱交換管の通風方向の幅と等しい通風方向の幅を有し、かつ隣り合う熱交換管どうしの間に配置されて熱交換管にろう付されたコルゲートフィンとを備えたものが広く用いられている。
【0004】
上記熱交換器の熱交換管は、熱交換効率が優れていることはもちろんのこと、その内部に高圧ガス冷媒が導入されるため耐圧性が要求される。しかも、コンデンサのコンパクト化を図るため熱交換管の管壁が薄肉でかつ管高さが低いことが要求される。
【0005】
上述したコンデンサに用いられる熱交換効率に優れた熱交換管として、たとえば特許文献1に記載されたものが用いられていた。特許文献1に記載された熱交換管は、互いに対向する1対の平坦壁と、両平坦壁の両側縁どうしにまたがって設けられた2つの側壁と、両側壁間において両平坦壁にまたがるとともに長さ方向に伸びかつ相互に所定間隔をおいて設けられた複数の補強壁とを備えているとともに、内部に複数の並列状流体通路を有しており、第1の側壁が両平坦壁と一体に形成され、第2の側壁が、各平坦壁の側縁に一体成形されて他の平坦壁側に突出し、かつ先端どうしが当接させられてろう付された2つの側壁形成部により形成されている。
【0006】
このような熱交換管は、全体が1枚の金属板よりなり、両平坦壁を形成する同幅の2つの平坦壁形成部、平坦壁形成部どうしを連結しかつ第1側壁を形成する連結部、両平坦壁形成部における連結部とは反対側の側縁にそれぞれ隆起状に一体成形されかつ第2側壁を形成する側壁形成部、および両平坦壁形成部にそれぞれ隆起状に一体成形された補強壁形成部を有する熱交換管製造用板状体を、連結部においてヘアピン状に曲げ、両側壁形成部の先端どうしを突き合わせて相互にろう付するとともに、一方の平坦壁形成部に形成された補強壁形成部の先端と他方の平坦壁形成部に形成された補強壁形成部の先端とを突き合わせて相互にろう付することにより製造されている。そして、2つの側壁形成部どうしを突き合わせて相互にろう付することにより形成された第2側壁の肉厚は、連結部からなる第1側壁の肉厚よりも薄くなっている。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の熱交換管を上述したようなコンデンサに使用した場合、飛来した石等が2つの側壁形成部からなる第2側壁に当たると、その衝撃により第2側壁が破損するおそれがある。
【0008】
そこで、このような問題を解決するために、本出願人は、先に、互いに対向する1対の平坦壁と、両平坦壁の両側縁どうしにまたがって設けられた2つの側壁とを備えており、第1の側壁が両平坦壁と一体に形成され、第2の側壁が両平坦壁の側縁に一体成形された複数の側壁形成部を組み合わせることにより形成されており、第2側壁が、第1平坦壁の側縁部に形成されて第2平坦壁側に突出し、かつ先端が第2側壁の高さの中間部に位置する第1側壁形成部と、第2平坦壁の側縁部に形成されて第1平坦壁側に突出し、かつ先端が第2側壁の高さの中間部に位置するとともに第1側壁形成部の先端に突き合わされた第2側壁形成部と、第2平坦壁における第2側壁形成部の熱交換管の幅方向外側部分に形成されて第1平坦壁側に突出し、かつ先端が第1平坦壁の外面の側縁部に係合した第3側壁形成部とよりなり、第1および第2側壁形成部の先端部どうし、第1および第2側壁形成部の外面と第3側壁形成部、ならびに第3側壁形成部と第1平坦壁の側縁部とがろう付されている熱交換管を提案した(特許文献2参照)。
【0009】
特許文献2記載の熱交換管は、全体が1枚の金属板よりなり、2つの平坦壁形成部と、両平坦壁形成部を一体に連結しかつ第1側壁を形成する連結部と、両平坦壁形成部における連結部とは反対側の側縁に、それぞれ平坦壁形成部から隆起するように設けられた第1および第2側壁形成部と、第1平坦壁形成部における連結部とは反対側の側縁を延長することにより設けられた第3側壁形成部用延長部とを備えている熱交換管製造用板状体を、連結部の両側においてヘアピン状に折り曲げて第1および第2側壁形成部の先端部どうしを突き合わせること、第3側壁形成部用延長部を、第1および第2側壁形成部の外面を覆うように折り曲げて第3側壁形成部をつくるとともに、第3側壁形成部の先端部を第1平坦壁形成部外面の側縁部に係合させて折り曲げ体を作ること、ならびに折り曲げ体の第1側壁形成部と第2側壁形成部、第1および第2側壁形成部と第3側壁形成部、ならびに第3側壁形成部と第1平坦壁形成部とを同時にろう付することにより製造される。特許文献2の熱交換管は、熱交換器の製造時に、他の部品のろう付と同時に、上述した折り曲げ体における第1側壁形成部と第2側壁形成部、第1および第2側壁形成部と第3側壁形成部、ならびに第3側壁形成部と第1平坦壁形成部とを同時にろう付することにより製造される。そして、製造された熱交換管においては、第1平坦壁形成部からなる第1平坦壁と第2側壁における第3側壁形成部の先端部との間に、ろう付部からなりかつ長さ方向にのびる継ぎ目部が存在することになる。
【0010】
ところで、特許文献2の熱交換管を製造するための上述した折り曲げ体においては、第3側壁形成部の先端部と第1平坦壁形成部の外面との間に、折り曲げ体の長さ方向にのびる合わせ目が存在することになる。なお、この合わせ目は極浅い凹溝状となることがある。したがって、熱交換器を製造する際に、ヘッダタンク本体素材から溶け出した溶融ろう材が、毛細管現象により、上記合わせ目に沿って流れるとともに、折り曲げ体とコルゲートフィンとの接触部に沿って流れる。その結果、ヘッダタンク本体素材の外面を覆うろう材量を多くしておかなければならず、材料コストが高くなり、ひいては熱交換器の製造コストが高くなるとともに、熱交換器の重量が増大するという問題がある。
【特許文献1】特開平6−281373号公報
【特許文献2】特開2006−78163号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
この発明の目的は、上記問題を解決し、製造コストの低減および軽量化を図りうる熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0013】
1)外面にろう材層を有する材料により形成され、かつ互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に、ヘッダタンクの長さ方向に間隔をおくとともに幅方向を通風方向に向けて配置され、かつ両端部がヘッダタンクにろう付された複数の扁平状熱交換管と、隣り合う熱交換管どうしの間に配置されて熱交換管にろう付されたコルゲートフィンとを備えており、熱交換管が、互いに対向する1対の平坦壁、および両平坦壁の両側縁どうしにまたがって設けられた2つの側壁を有しているとともに、金属素板を曲げることにより形成され、熱交換管のいずれか一方の平坦壁の外面の一側縁部に、長さ方向にのびる継ぎ目部が存在している熱交換器であって、
コルゲートフィンの一側縁部が、熱交換管の継ぎ目部から熱交換管の幅方向内側にずれている熱交換器。
【0014】
2)コルゲートフィンの一側縁部と継ぎ目部との距離が0.3mm以上である上記1)記載の熱交換器。
【0015】
3)コルゲートフィンが波頂部、波底部および波頂部と波底部とを連結しかつ複数のルーバが通風方向に並んで形成された連結部よりなり、熱交換管およびコルゲートフィンの通風方向の幅が等しくなっており、熱交換管の継ぎ目部が存在する側の側壁の外面からのコルゲートフィンの一側縁部のずれ長さをa、コルゲートフィンの他側縁部と、当該他側縁部側の端部のルーバとの距離をb、熱交換管における継ぎ目部が存在する側とは反対側の側壁の肉厚をcとした場合、a<b−cという関係を満たす上記1)または2)記載の熱交換器。
【0016】
4)コルゲートフィンの通風方向上流側の側縁部が、熱交換管よりも通風方向上流側に突出している上記3)記載の熱交換器。
【0017】
5)コルゲートフィンが、熱交換管におけるコルゲートフィンがろう付された面よりも電位的に卑となっており、両者の電位差が40〜300mVである上記1))〜4)のうちのいずれかに記載の熱交換器。
【0018】
6)熱交換管の第1の側壁が両平坦壁と一体に形成され、同じく第2の側壁が両平坦壁の側縁部に一体成形された複数の側壁形成部を組み合わせることにより形成され、2つの平坦壁形成部と、両平坦壁形成部を一体に連結しかつ第1側壁を形成する連結部と、両平坦壁形成部における連結部とは反対側の側縁部に設けられた側壁形成部とを備えている熱交換管製造用板状体を、連結部においてヘアピン状に折り曲げ、さらにすべての側壁形成部を組み合わせてかしめることにより折り曲げ体を得た後、複数の側壁形成部をろう付することにより熱交換管がつくられており、熱交換管の第2側壁を形成する複数の側壁形成部のうちのいずれか1つの側壁形成部と、いずれか一方の平坦壁形成部とのろう付部に継ぎ目部が存在している上記1)〜5)のうちのいずれかに記載の熱交換器。
【0019】
7)熱交換管の第2側壁が、各平坦壁における第1側壁とは反対側の縁部に、他方の平坦壁側に突出するように一体に形成されるとともに先端部どうしがろう付された第1および第2側壁形成部と、いずれか一方の平坦壁における第1および第2側壁形成部よりも熱交換管の幅方向外側部分に一体に形成され、かつ第1および第2側壁形成部の外面にろう付されるとともに、先端部が他方の平坦壁外面の側縁部における熱交換管の幅方向外側に向かって前記一方の平坦壁側に傾斜した傾斜面にろう付された第3側壁形成部とよりなり、第3側壁形成部の先端部と前記傾斜面の傾斜方向上端部との間に、熱交換管の長さ方向にのびる継ぎ目部が全長にわたって存在している上記6)記載の熱交換器。
【発明の効果】
【0020】
上記1)の熱交換器によれば、コルゲートフィンの一側縁部が、熱交換管の継ぎ目部から熱交換管の幅方向内側にずれているので、熱交換器の製造時における金属素板を曲げた折り曲げ体からの熱交換管の製造、ならびにヘッダタンク、製造された熱交換管およびコルゲートフィンの一括ろう付時に、ヘッダタンクを形成する材料から溶け出した溶融ろう材が、毛細管現象により前記折り曲げ体における継ぎ目部を形成する合わせ目に沿って流れたとしても、溶融ろう材が熱交換管とコルゲートフィンとの接触部に沿って流れることが防止される。したがって、ヘッダタンクを形成する材料の外面を覆うろう材量を少なくすることが可能になり、材料コストが安くなって熱交換器の製造コストを低減することができるとともに、軽量化を図ることができる。
【0021】
上記2)の熱交換器によれば、熱交換器の製造時において、ヘッダタンクを形成する材料から溶け出した溶融ろう材が、毛細管現象により前記折り曲げ体における継ぎ目部を形成する合わせ目に沿って流れたとしても、熱交換管とコルゲートフィンとの接触部に沿う溶融ろう材の流れを効果的に防止することができる。
【0022】
上記3)の熱交換器によれば、コルゲートフィンにおける熱交換管の継ぎ目部が存在する側と反対側の端部のルーバが、熱交換管における冷媒などが流れる流体通路に対応する部分に存在することになるので、熱交換効率の低下を防止することができる。
【0023】
上記4)の熱交換器が、たとえばカーエアコン用のコンデンサとして自動車に搭載された場合、石等が飛来したとしても、コルゲートフィンにおける熱交換管から通風方向上流側に突出した部分に当たるので、熱交換管の側壁の破損を防止することができる。
【0024】
上記5)の熱交換器によれば、熱交換管の耐食性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。この実施形態は、この発明による熱交換器を、フロン系冷媒を使用したカーエアコンのコンデンサに適用したものである。
【0026】
なお、以下の説明において、図1の上下、左右を上下、左右というものとし、通風方向下流側(図1に矢印Xで示す方向、図2の右側)を前、これと反対側を後というものとする。
【0027】
図1はこの発明による熱交換器を適用したカーエアコン用コンデンサの全体構成を示し、図2および図3はその要部の構成を示す。また、図4はコンデンサに用いられる熱交換管の製造方法を示す。
【0028】
図1において、カーエアコン用のコンデンサ(1)は、左右方向に間隔をおいて配置された上下方向にのびる1対のアルミニウム製ヘッダタンク(2)(3)と、両ヘッダタンク(2)(3)間において幅方向を通風方向に向けるとともに上下方向に間隔をおいて配置され、かつ両端部が両ヘッダタンク(2)(3)にろう付された複数のアルミニウム製扁平状熱交換管(4)と、隣り合う熱交換管(4)どうしの間、および上下両端の熱交換管(4)の外側に配置されて熱交換管(4)にろう付されたアルミニウム製コルゲートフィン(5)と、上下両端のコルゲートフィン(5)の外側に配置されてコルゲートフィン(5)にろう付されたサイドプレート(6)とを備えている。
【0029】
左側ヘッダタンク(2)は、高さ方向の中央部よりも上方において仕切部材(7)により上下2つのヘッダ部(2a)(2b)に仕切られ、右側ヘッダタンク(3)は、高さ方向の中央部よりも下方において仕切部材(7)により上下2つのヘッダ部(3a)(3b)に仕切られている。左側ヘッダタンク(2)の上ヘッダ部(2a)に流体入口(図示略)が形成され、流体入口に通じる流体流入路(8a)を有する入口部材(8)が上ヘッダ部(2a)にろう付されている。また、右側ヘッダタンク(3)の下ヘッダ部(3b)に流体出口(図示略)が形成され、流体出口に通じる流体流出路(9a)を有する出口部材(9)が下ヘッダ部(3b)にろう付されている。
【0030】
左右のヘッダタンク(2)(3)は、少なくとも外面にろう材層を有するアルミニウム製パイプ、たとえば両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなる素板が筒状に成形されるとともに両側縁部が部分的に重ね合わされて相互にろう付されたろう付パイプからなり、かつ複数の熱交換挿入穴を有するヘッダタンク本体(11)と、ヘッダタンク本体(11)の両端にろう付されてその両端開口を閉鎖するアルミニウム製閉鎖部材(12)とからなる。
【0031】
図2および図3に示すように、熱交換管(4)はアルミニウム製であり、互いに対向しかつ同一肉厚である平らな上下壁(13)(14)(1対の平坦壁)と、上下壁(13)(14)の後側縁どうしにまたがりかつ上下壁(13)(14)と一体に形成された後側壁(15)(第1側壁)と、上下壁(13)(14)の前側縁どうしにまたがりかつ上下壁(13)(14)の前側縁部に一体成形された複数の側壁形成部を組み合わせることにより形成された前側壁(16)(第2側壁)と、両側壁(15)(16)間において上下壁(13)(14)にまたがるとともに相互に所定間隔をおいて設けられ、かつ長さ方向に伸びる複数の補強壁(17)とよりなり、内部に並列状の複数の流体通路(18)を有するものである。なお、図示は省略したが、全ての補強壁(17)には、隣接する流体通路(18)どうしを通じさせる複数の連通穴が、全体として平面から見て千鳥配置状となるようにあけられている。
【0032】
前側壁(16)は、上壁(13)(第1平坦壁)に一体に形成された第1側壁形成部(19)と、下壁(14)(第2平坦壁)に一体に形成された第2側壁形成部(21)および第3側壁形成部(22)とを組み合わせてろう付することにより形成されている。
【0033】
第1側壁形成部(19)は、上壁(13)の前側縁部に下方突出状に一体に形成されている。第2側壁形成部(21)は、下壁(14)の前側縁部に上方突出状に一体に形成され、先端が第1側壁形成部(19)の先端に突き合わされた状態で第1側壁形成部(19)にろう付されている。第1および第2側壁形成部(19)(21)の先端部どうしは相欠き状に突き合わされている。すなわち、上壁(13)の第1側壁形成部(19)の先端部は後半部が欠き取られたような形状となっているとともに、下壁(14)の第2側壁形成部(21)の先端部は前半部が欠き取られたような形状となっており、第1側壁形成部(19)の突出部(19a)が第2側壁形成部(21)の欠き取り部(21b)内に嵌り、第2側壁形成部(21)の突出部(21a)が第1側壁形成部(19)の欠き取り部(19b)内に嵌っている。
【0034】
第3側壁形成部(22)は、第2側壁形成部(21)よりも前側において下壁(14)の前側縁部に上方突出状に一体に形成されて、第1および第2側壁形成部(19)(21)の外面に沿わされており、その先端部が、上壁(13)外面の前側縁部に形成されかつ前方に向かって下方に傾斜した傾斜面(23)に係合させられた状態で、第1および第2側壁形成部(19)(21)の外面全体、および上壁(13)の傾斜面(23)にろう付されている。そして、熱交換管(4)のコルゲートフィン(5)がろう付される上面には、第3側壁形成部(22)の先端部と、上壁(13)の傾斜面(23)の傾斜方向上端部との間に形成され、かつ熱交換管(4)の長さ方向にのびるろう付部からなる継ぎ目部(24)が全長にわたって存在している。なお、継ぎ目部(24)は極浅い凹溝状となっている場合もある。
【0035】
補強壁(17)は、上壁(13)より下方隆起状に一体成形された補強壁用凸条(25)(26)と、下壁(14)より上方隆起状に一体成形された補強壁用凸条(27)(28)とが、先端どうしが相互に突き合わされてろう付されることにより形成されている。上壁(13)および下壁(14)には、それぞれ肉厚の異なる2種類の補強壁用凸条(25)(26)および(27)(28)が前後方向に交互に形成されており、上壁(13)における肉厚の厚い補強壁用凸条(25)と下壁(14)における肉厚の薄い補強壁用凸条(28)とがろう付され、上壁(13)における肉厚の薄い補強壁用凸条(26)と下壁(14)における肉厚の厚い補強壁用凸条(27)とがろう付されている。以下、上下両壁(13)(14)の肉厚の厚い補強壁用凸条(25)(27)をそれぞれ第1補強壁用凸条といい、同じく薄い補強壁用凸条(26)(28)をそれぞれ第2補強壁用凸条というものとする。上下壁(13)(14)の第1補強壁用凸条(25)(27)の先端面には、それぞれその長さ方向に伸びかつ他方の壁(14)(13)の第2補強壁用凸条(28)(26)の先端部が嵌る凹溝(29)(31)が全長にわたって形成されている。そして、上壁(13)の第1補強壁用凸条(25)の凹溝(29)内に下壁(14)の第2補強壁用凸条(28)の先端部が、下壁(14)の第1補強壁用凸条(27)の凹溝(31)内に上壁(13)の第2補強壁用凸条(26)の先端部がそれぞれ圧入された状態で、両補強壁用凸条(25)(28)および(26)(27)がろう付されている。
【0036】
コルゲートフィン(5)の前後方向(通風方向)の幅は、熱交換管(4)の通風方向(前後方向)の幅と等しく、かつ前側縁部が、熱交換管(4)の継ぎ目部(24)が存在している部分から後側(熱交換管(4)の幅方向内側)にずれるように配置されている。コルゲートフィン(5)の前側縁と継ぎ目部(24)との距離(L)は、0.3mm以上であることが好ましい。そして、コルゲートフィン(5)の後側縁部(通風方向上流側の側縁部)が、熱交換管(4)よりも後方に突出している。また、コルゲートフィン(5)は周知のごとく、波頂部、波底部および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなり、連結部に複数のルーバ(32)が通風方向に並んで形成されている。ここで、熱交換管(4)の継ぎ目部(24)が存在する側の前側壁(16)の前面(外面)からのコルゲートフィン(5)の前側縁部の後側(熱交換管(4)の幅方向内側)へのずれ長さをa、コルゲートフィン(5)の後側縁部と、後端部のルーバ(32)との距離をb、左側壁(15)の肉厚をcとした場合、a<b−cという関係を満たしていることが好ましい。この場合、コルゲートフィン(5)の後端部(コルゲートフィン(5)における熱交換管(4)の継ぎ目部(24)が存在する側と反対側の端部)のルーバ(32)が、後端の流体通路(18)の前後方向の範囲内に存在することになり、熱交換効率の低下が防止される。さらに、コルゲートフィン(5)は、熱交換管(4)におけるコルゲートフィン(5)がろう付される面よりも電位的に卑となっており、両者の電位差が40〜300mVであることが好ましい。
【0037】
コンデンサ(1)は、以下に述べる方法で製造される。
【0038】
まず、少なくとも外面にろう材層を有する1対のアルミニウム製ヘッダタンク本体素材、閉鎖部材(12)、複数のアルミニウム製コルゲートフィン(5)、サイドプレート(6)、入口部材(8)、および出口部材(9)を用意する。ヘッダタンク本体素材には複数の管挿入穴が形成されている。
【0039】
また、図4に示す熱交換管製造用板状体(40)を用いて、以下に述べる方法により熱交換管(4)をつくるための折り曲げ体(40A)を得る。
【0040】
熱交換管製造用板状体(40)は、全体が両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなる圧延素板を圧延することにより形成されたものであり、上下壁(13)(14)を形成する相互に同幅および同肉厚の平らな上壁形成部(41)(平坦壁形成部)および下壁形成部(42)(平坦壁形成部)と、上下壁形成部(41)(42)どうしを一体に連結するとともに後側壁(15)を形成する連結部(43)と、上壁形成部(41)および下壁形成部(42)における連結部(43)とは反対側の側縁より上方隆起状に一体成形されかつ前側壁(15)を形成する第1および第2側壁形成部(19)(21)と、下壁形成部(42)における連結部(43)とは反対側の側縁(前側縁)を前後方向外方(前方)に延長することにより形成された第3側壁形成部用延長部(44)と、上壁形成部(41)および下壁形成部(42)にそれぞれ前後方向に所定間隔をおいて上方隆起状に一体成形された複数の第1および第2補強壁用凸条(25)(26)(27)(28)とを備えており、上壁形成部(41)の第1補強壁用凸条(25)と下壁形成部(42)の第2補強壁用凸条(28)、および下壁形成部(42)の第1補強壁用凸条(27)と上壁形成部(41)の第2補強壁用凸条(26)とが、それぞれ連結部(43)の前後方向の中心線に対して前後対称となる位置にある。
【0041】
下壁形成部(42)下面における第1側壁形成部(19)側の縁部には、幅方向外方に向かって上方に傾斜した傾斜面(23)が形成されている。上下壁形成部(41)(42)の第1および第2側壁形成部(19)(21)は、それぞれ先端部に突出部(19a)(21a)および欠き取り部(19b)(21b)を有しており、上壁形成部(41)の第1側壁形成部(19)の突出部(19a)と下壁形成部(42)の第2側壁形成部(21)の欠き取り部(21b)、および上壁形成部(41)の第1側壁形成部(19)の欠き取り部(19b)と下壁形成部(42)の第2側壁形成部(21)の突出部(21a)とが、それぞれ連結部(43)の前後方向の中心線に対して前後対称となる位置にある。また、第1および第2側壁形成部(19)(21)の寸法、すなわち高さ、全体の肉厚および突出部(19a)(21a)の肉厚は同一である。上壁形成部(41)の第1補強壁用凸条(25)の先端面に下壁形成部(42)の第2補強壁用凸条(28)が圧入される凹溝(29)が形成され、下壁形成部(42)の第1補強壁用凸条(27)の先端面に上壁形成部(41)の第2補強壁用凸条(26)が圧入される凹溝(31)が形成されている。上壁形成部(41)の第1補強壁用凸条(25)および下壁形成部(42)の第1補強壁用凸条(27)の寸法、すなわち高さ、肉厚、凹溝(29)(31)の幅および凹溝(29)(31)の深さは同一である。また、上壁形成部(41)の第2補強壁用凸条(26)および下壁形成部(42)の第2補強壁用凸条(28)の寸法、すなわち高さおよび肉厚は同一である。被覆壁形成部(24)の肉厚は上下壁形成部(42)(22)の肉厚と等しくなっている。
【0042】
なお、両面にろう材層が設けられたアルミニウムブレージングシートからなる圧延素板を圧延することにより、上壁形成部(41)、下壁形成部(42)、連結部(43)、第1および第2側壁形成部(19)(21)、第3側壁形成部用延長部(44)、および補強壁用凸条(25)(26)(27)(28)が一体成形されていることにより、上壁形成部(41)の第1側壁形成部(19)の側面、および第3側壁形成部用延長部(44)の先端面を除いた全体がろう材層により覆われている。
【0043】
また、上記においては、圧延素板は、両面にろう材層が設けられたアルミニウムブレージングシートからなるが、これに限定されるものではなく、Al−Mn系合金製の芯材の片面にろう材層が設けられ、他面にAl−Zn合金からなる犠牲腐食層が設けられたアルミニウムブレージングシートからなるものであってもよい。この場合、ろう材層面が第1および第2側壁形成部(19)(21)と、補強壁用凸条(25)(26)(27)(28)とを形成する面となる。
【0044】
そして、図5に示すように、ロールフォーミング法により、熱交換管製造用板状体(40)を連結部(43)の左右両側で順次折り曲げていき(図5(a)参照)、最後にヘアピン状に折り曲げて第1および第2側壁形成部(19)(21)の突出部(19a)(21a)と欠き取り部(21b)(19b)とを嵌め合わせるとともに、第2補強壁用凸条(26)(28)の先端部を第1補強壁用凸条(27)(25)の凹溝(31)(29)内に圧入する。
【0045】
ついで、第3側壁形成部用延長部(44)を折り曲げていき、第1および第2側壁形成部(19)(21)の外面に沿わせるとともに、その先端部を上壁形成部(22)の傾斜面(23)に係合させて第3側壁形成部(22)とつくって折り曲げ体(40A)を得る(図5(b)参照)。ここで、折り曲げ体(40A)において、第3側壁形成部(22)の先端部と上壁形成部(41)の外面、すなわち第3側壁形成部(22)の先端部と傾斜面(23)の傾斜方向上端部との間に、折り曲げ体(40A)の長さ方向にのびる合わせ目(45)が存在している。
【0046】
ついで、1対のヘッダタンク本体素材を間隔をおいて配置するとともに、両ヘッダタンク本体素材の両端に閉鎖部材(12)を配置する。また、折り曲げ体(40A)とフィン(5)とを交互に配置し、折り曲げ体(40A)の両端部をヘッダタンク本体素材の管挿入穴に挿入する。このとき、コルゲートフィン(5)の前側縁部を、折り曲げ体(40A)の第3側壁形成部(22)の先端部と上壁形成部(41)の外面との合わせ目(45)よりも後方に0.3mm以上ずらす。また、折り曲げ体(40A)の合わせ目(45)が存在する側の第3側壁形成部(22)の外面からのコルゲートフィン(5)の第3側壁形成部(22)側の縁部の折り曲げ体(40A)の幅方向内側へのずれ長さをa、コルゲートフィン(5)の連結部(43)側の側縁部と連結部(43)側の端部のルーバ(32)との距離をb、連結部(43)の肉厚をcとした場合、a<b−cという関係を満たすようにする。
【0047】
また、両端のコルゲートフィン(5)の外側にサイドプレート(6)を配置し、さらに入口部材(8)および出口部材(9)を配置する。その後、これらを所定温度に加熱し、第1および第2側壁形成部(19)(21)の先端部どうしを相互にろう付するとともに、第3側壁形成部(24)を第1および第2側壁形成部(19)(21)の外面と上壁(13)の傾斜面(23)にろう付することにより前側壁(16)を形成する。また、上記ろう材層を利用して両補強壁用凸条(25)(28)および(26)(27)の先端部どうしをろう付することにより補強壁(17)を形成し、連結部(43)により後側壁(15)を形成し、さらに上壁形成部(41)により上壁(13)を、下壁形成部(42)により下壁(14)をそれぞれ形成して熱交換管(4)を製造する。これと同時に、ヘッダタンク本体素材からヘッダタンク本体(11)を製造するとともに、ヘッダタンク本体(11)と閉鎖部材(12)とによりヘッダタンク(2)(3)を製造し、熱交換管(4)とヘッダタンク(2)(3)、熱交換管(4)とコルゲートフィン(5)、コルゲートフィン(5)とサイドプレート(6)、ならびにヘッダタンク(2)(3)と入口部材(8)(9)および出口部材とを、それぞれ同時にろう付する。こうして、コンデンサ(1)が製造される。
【0048】
上述したコンデンサ(1)の製造の際の全部品の一括ろう付時には、コルゲートフィン(5)の第3側壁形成部(22)側の縁部が、折り曲げ体(40A)の第3側壁形成部(22)と、上壁形成部(41)の傾斜面(23)の傾斜方向上端部との合わせ目(45)よりも連結部(43)側にずれていることから、ヘッダタンク本体素材から溶け出した溶融ろう材が、毛細管現象により合わせ目(45)に沿って流れたとしても、溶融ろう材が熱交換管(4)とコルゲートフィン(5)との接触部に沿って流れることは防止される。したがって、ヘッダタンク(2)(3)を形成する材料の外面を覆うろう材量を少なくすることが可能になり、材料コストが安くなってコンデンサ(1)の製造コストを低減することができるとともに、コンデンサ(1)の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明の熱交換器を適用したコンデンサの実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】図2の熱交換管の要部拡大図である。
【図4】図1のコンデンサの熱交換管を製造するのに使用される熱交換管製造用板状体の正面図である。
【図5】図1のコンデンサの熱交換管を製造する工程の一部を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
(1):コンデンサ(熱交換器)
(2)(3):ヘッダタンク
(4):熱交換管
(5):コルゲートフィン
(13):上壁(平坦壁)
(14):下壁(平坦壁)
(15):第1側壁
(16):第2側壁
(19):第1側壁形成部
(21):第2側壁形成部
(22):第3側壁形成部
(23):傾斜面
(24):継ぎ目部
(32):ルーバ
(40):熱交換管製造用板状体
(40A):折り曲げ体
(41):上壁形成部
(42):下壁形成部
(43):連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面にろう材層を有する材料により形成され、かつ互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に、ヘッダタンクの長さ方向に間隔をおくとともに幅方向を通風方向に向けて配置され、かつ両端部がヘッダタンクにろう付された複数の扁平状熱交換管と、隣り合う熱交換管どうしの間に配置されて熱交換管にろう付されたコルゲートフィンとを備えており、熱交換管が、互いに対向する1対の平坦壁、および両平坦壁の両側縁どうしにまたがって設けられた2つの側壁を有しているとともに、金属素板を曲げることにより形成され、熱交換管のいずれか一方の平坦壁の外面の一側縁部に、長さ方向にのびる継ぎ目部が存在している熱交換器であって、
コルゲートフィンの一側縁部が、熱交換管の継ぎ目部から熱交換管の幅方向内側にずれている熱交換器。
【請求項2】
コルゲートフィンの一側縁部と継ぎ目部との距離が0.3mm以上である請求項1記載の熱交換器。
【請求項3】
コルゲートフィンが波頂部、波底部および波頂部と波底部とを連結しかつ複数のルーバが通風方向に並んで形成された連結部よりなり、熱交換管およびコルゲートフィンの通風方向の幅が等しくなっており、熱交換管の継ぎ目部が存在する側の側壁の外面からのコルゲートフィンの一側縁部のずれ長さをa、コルゲートフィンの他側縁部と、当該他側縁部側の端部のルーバとの距離をb、熱交換管における継ぎ目部が存在する側とは反対側の側壁の肉厚をcとした場合、a<b−cという関係を満たす請求項1または2記載の熱交換器。
【請求項4】
コルゲートフィンの通風方向上流側の側縁部が、熱交換管よりも通風方向上流側に突出している請求項3記載の熱交換器。
【請求項5】
コルゲートフィンが、熱交換管におけるコルゲートフィンがろう付された面よりも電位的に卑となっており、両者の電位差が40〜300mVである請求項1〜4のうちのいずれかに記載の熱交換器。
【請求項6】
熱交換管の第1の側壁が両平坦壁と一体に形成され、同じく第2の側壁が両平坦壁の側縁部に一体成形された複数の側壁形成部を組み合わせることにより形成され、2つの平坦壁形成部と、両平坦壁形成部を一体に連結しかつ第1側壁を形成する連結部と、両平坦壁形成部における連結部とは反対側の側縁部に設けられた側壁形成部とを備えている熱交換管製造用板状体を、連結部においてヘアピン状に折り曲げ、さらにすべての側壁形成部を組み合わせてかしめることにより折り曲げ体を得た後、複数の側壁形成部をろう付することにより熱交換管がつくられており、熱交換管の第2側壁を形成する複数の側壁形成部のうちのいずれか1つの側壁形成部と、いずれか一方の平坦壁形成部とのろう付部に継ぎ目部が存在している請求項1〜5のうちのいずれかに記載の熱交換器。
【請求項7】
熱交換管の第2側壁が、各平坦壁における第1側壁とは反対側の縁部に、他方の平坦壁側に突出するように一体に形成されるとともに先端部どうしがろう付された第1および第2側壁形成部と、いずれか一方の平坦壁における第1および第2側壁形成部よりも熱交換管の幅方向外側部分に一体に形成され、かつ第1および第2側壁形成部の外面にろう付されるとともに、先端部が他方の平坦壁外面の側縁部における熱交換管の幅方向外側に向かって前記一方の平坦壁側に傾斜した傾斜面にろう付された第3側壁形成部とよりなり、第3側壁形成部の先端部と前記傾斜面の傾斜方向上端部との間に、熱交換管の長さ方向にのびる継ぎ目部が全長にわたって存在している請求項6記載の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−24896(P2009−24896A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185931(P2007−185931)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】