説明

熱交換器

【課題】簡素な構成で、3種類の流体間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換器を提供する。
【解決手段】冷媒が流れる冷媒用チューブ16aと走行用電動モータMGの冷却水が流れる冷却媒体用チューブ43aとを、互いに交互に積層配置する。さらに、隣り合う冷媒用チューブ16aと冷却水用チューブ43aとの間に形成されて外気を流通させる外気通路70aに、冷媒用チューブ16aと冷却媒体用チューブ43aとの間の熱移動を可能とするアウターフィン50を配置する。これにより、冷媒と外気との間の適切な熱交換、冷却水と外気との間の適切な熱交換、さらに、冷媒と冷却水との間の適切な熱交換が実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3種類の流体間で熱交換可能に構成された複合型の熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3種類の流体間で熱交換可能に構成された複合型の熱交換器が知られている。例えば、特許文献1に開示された熱交換器では、冷凍サイクル装置の冷媒と室外空気(外気)との間での熱交換、および冷媒とエンジンを冷却する冷却水との間での熱交換が可能に構成された複合型の熱交換器が開示されている。
【0003】
具体的には、この特許文献1の熱交換器は、両端部が冷媒の集合および分配を行う冷媒タンクに接続された複数本の冷媒チューブを積層配置し、積層配置された冷媒チューブの間に、一端部が冷却水の流通する冷却水タンクに接続されたヒートパイプを配置し、冷媒チューブとヒートパイプとの間に形成された空気通路に熱交換促進用のフィンを配置した構成になっている。
【0004】
そして、冷凍サイクル装置の運転時には、冷媒に外気の有する熱量および冷却水の有する熱量(すなわち、エンジンの廃熱)を吸熱させることによって、冷媒を蒸発させるとともに、ヒートパイプから伝達されるエンジンの廃熱を熱源として、熱交換器の着霜の抑制を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−157326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年、急速に普及している環境保護や燃費向上を狙った、いわゆるエコラン車両では、通常のガソリンエンジン車両等と比較して、エンジンの廃熱が少なくなっている。
【0007】
例えば、車両走行用の駆動源としてエンジンと電動モータとを有する、いわゆるハイブリッド車両では、エンジンを停止させて電動モータから出力される駆動力のみで走行する走行モード時には、エンジンの廃熱を得ることができず冷却水の温度を充分に上昇させることができないことがある。
【0008】
このようにエンジンの廃熱によって冷却水の温度を充分に上昇させることができなくなってしまうと、特許文献1の熱交換器のようにヒートパイプを採用する構成では、ヒートパイプを適切に作動させることができなくなってしまい、冷媒にエンジンの廃熱を吸熱させること、および、熱交換器の着霜を抑制することができなくなってしまう。
【0009】
さらに、特許文献1の熱交換器では、積層配置された冷媒チューブの間にヒートパイプを配置するために、ヒートパイプを外気の流れ方向に湾曲させて冷却水タンクに接続している(引用文献1の図11、図12等参照)。このため、熱交換器の構成が複雑化、大型化してしまうという問題もある。
【0010】
本発明は、上記点に鑑み、簡素な構成で、3種類の流体間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、第1流体が流通する複数本の第1チューブ(16a)および複数本の第1チューブ(16a)の積層方向に延びて第1チューブ(16a)を流通する第1流体の集合あるいは分配を行う第1タンク部(16c)を有し、第1流体と第1チューブ(16a)の周囲を流れる第3流体とを熱交換させる第1熱交換部(16)と、第2流体が流通する複数本の第2チューブ(43a)および複数本の第2チューブ(43a)の積層方向に延びて第2チューブ(43a)を流通する第2流体の集合あるいは分配を行う第2タンク部(43c)を有し、第2流体と第2チューブ(43a)の周囲を流れる第3流体とを熱交換させる第2熱交換部(43)とを備え、
複数の第1チューブ(16a)のうち少なくとも1つは、複数の第2チューブ(43a)の間に配置され、複数の第2チューブ(43a)のうち少なくとも1つは、複数の第1チューブ(16a)の間に配置され、第1チューブ(16a)と第2チューブ(43a)との間に形成される空間は、第3流体が流通する第3流体用通路(70a)を形成しており、
第3流体用通路(70a)には、双方の熱交換部(16、43)における熱交換を促進するとともに、第1チューブ(16a)を流通する第1流体と第2チューブ(43a)を流通する第2流体との間の熱移動を可能とするアウターフィン(50)が配置され、第1タンク部(16c)には、第1チューブ(16a)と第2チューブ(43a)の双方が固定され、第2タンク部(43c)には、第1チューブ(16a)と第2チューブ(43a)の双方が固定されている熱交換器を特徴とする。
【0012】
これによれば、第1流体および第3流体については、第1チューブ(16a)およびアウターフィン(50)を介して、適切に熱交換させることができる。第2流体および第3流体とについては、第2チューブ(43a)およびアウターフィン(50)を介して、適切に熱交換させることができる。さらに、第1流体および第2流体については、アウターフィン(50)を介して、適切に熱交換させることができる。
【0013】
従って、3種類の流体間で適切な熱交換を行うことができる。さらに、第1〜3流体の流量調整可能なシステム等に適用することで、3種類の流体間で必要に応じた熱交換量を実現でき、3種類の流体間でより一層適切な熱交換を行うことができる。
【0014】
しかも、第1タンク部(16c)に、第1チューブ(16a)と第2チューブ(43a)の双方を固定し、第2タンク部に、第1チューブ(16a)と第2チューブ(43a)の双方を固定する構成を採用しているので、熱交換器の構成を複雑化、大型化させてしまうことを抑制できる。
【0015】
つまり、第1チューブ(16a)を流通する第1流体の集合あるいは分配を行うために必須の構成である第1タンク部(16c)および第2チューブ(43a)を流通する第2流体の集合あるいは分配を行うために必須の構成である第2タンク部(43c)に、双方のチューブ(16a、43a)を固定するので、双方のチューブ(16a、43a)の形状を同等の形状とすることができる。
【0016】
従って、従来技術のように、第1チューブ(16a)および第2チューブ(43a)のうち、一方のチューブ(16a、43a、)を湾曲させる構成を採用する必要がなく、熱交換器全体としての構成が複雑化、大型化してしまうことを抑制できる。その結果、簡素な構成で、3種類の流体間で適切な熱交換を行うことのできる熱交換器を提供できる。
【0017】
なお、本請求項における「固定」という用語は、双方のチューブ(16a、43a)と第1タンク部(16c)、あるいは、双方のチューブ(16a、43a)と第2タンク部(43c)が、相対的に移動しない状態になっていることを意味するものであって、双方のチューブ(16a、43a)と第1タンク部(16c)、あるいは、双方のチューブ(16a、43a)と第2タンク部(43c)が接合されていることに限定されない。
【0018】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の熱交換器において、第1タンク部(16c)は、第1チューブ(16a)および第2チューブ(43a)が固定される第1固定用プレート部材(161)、第1固定用プレート部材(161)に固定される第1中間プレート部材(162)、並びに、第1固定用プレート部材(161)あるいは第1中間プレート部材(162)に固定されて内部に第1流体の集合あるいは分配を行う空間が形成される第1タンク形成部材(163)を有し、第2タンク部(43c)は、第1チューブ(16a)および第2チューブ(43a)が固定される第2固定用プレート部材(431)、第2固定用プレート部材(431)に固定される第2中間プレート部材(432)、並びに、第2固定用プレート部材(431)あるいは第2中間プレート部材(432)に固定されて内部に第2流体の集合あるいは分配を行う空間が形成される第2タンク形成部材(433)を有し、
第1中間プレート部材(162)には、第1チューブ(16a)を第1タンク形成部材(163)の内部に形成される空間に連通させる第1連通穴(162a)が形成されており、第2中間プレート部材(432)には、第2チューブ(43a)を第2タンク形成部材(433)の内部に形成される空間に連通させる第2連通穴(432a)が形成されていることを特徴とする。
【0019】
これによれば、第1、第2タンク部(43c)に双方のチューブ(16a、43a)が固定されていても、第1タンク部(16c)が第1チューブ(16a)を流通する第1流体の集合あるいは分配を行う機能を果たし、第2タンク部(43c)が第2チューブ(43a)を流通する第2流体の集合あるいは分配を行う機能を果たす構成を容易かつ確実に実現できる。
【0020】
さらに、請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の熱交換器において、第1チューブ(16a)は、第1連通穴(162a)を貫通して、第1タンク形成部材(163)の内部に形成される空間に突出し、第2チューブ(43a)は、第2連通穴(432a)を貫通して、第2タンク形成部材(433)の内部に形成される空間に突出していることを特徴とする。
【0021】
これによれば、第1チューブ(16a)を第1タンク形成部材(163)の内部に形成される空間に確実に連通させることができ、第2チューブ(43a)を第2タンク形成部材(433)の内部に形成される空間に確実に連通させることができる。さらに、第1チューブ(16a)の外周部と第1連通穴(162a)の内周縁部が接合等によって固定され、第2チューブ(43a)の外周部と第2連通穴(432a)の内周縁部が接合等によって固定されていてもよい。
【0022】
請求項4に記載の発明では、請求項2または3に記載の熱交換器において、第1チューブ(16a)および第2チューブ(43a)は、第3流体用通路(70a)を流通する第3流体の流れ方向に複数列配置されており、第1固定用プレート部材(161)と第1中間プレート部材(162)との間には、第3流体の流れ方向に配列された第2チューブ(43a)同士を連通させる第1連通空間が形成され、第2固定用プレート部材(431)と第2中間プレート部材(432)との間には、第3流体の流れ方向に配列された前記第1チューブ(16a)同士を連通させる第2連通空間が形成されていることを特徴とする。
【0023】
これによれば、第1タンク部(16c)に固定された第2チューブ(43a)から流出した第2流体を流通させる流路としての第1連通空間を第1タンク部(16c)の内部に形成でき、第2タンク部(43c)に固定された第1チューブ(16a)から流出した第1流体を流通させる流路としての第2連通空間を第2タンク部(43c)の内部に形成できるので、第1チューブ(16a)および第2チューブ(43a)を第3流体の流れ方向に複数列配置する熱交換器であっても熱交換器全体としての大型化を抑制できる。
【0024】
請求項5に記載の発明のように、請求項2ないし4のいずれか1つに記載の熱交換器において、第1、第2チューブ(16a、43a)は、第1、第2固定用プレート部材(161、431)にろう付け接合されることによって、固定されていてもよい。これにより、第1、第2チューブ(16a、43a)を第1、第2固定用プレート部材(161、431)に容易に固定することができる。
【0025】
請求項6に記載の発明のように、請求項2ないし4のいずれか1つに記載の熱交換器において、第1固定用プレート部材(161)と第1タンク形成部材(163)、および、第2固定用プレート部材(431)と第2タンク形成部材(433)は、それぞれかしめによって固定されていてもよい。これにより、第1固定用プレート部材(161)と第1タンク形成部材(163)、および、第2固定用プレート部材(431)と第2タンク形成部材(433)とを容易に固定することができる。
【0026】
請求項7に記載の発明では、蒸気圧縮式の冷凍サイクルにおいて冷媒を蒸発させる蒸発器として用いられる請求項1ないし6のいずれか1つに記載の熱交換器であって、第1流体は、冷凍サイクルの冷媒であり、第2流体は、外部熱源の有する熱量を吸熱した熱媒体であり、第3流体は、空気であることを特徴とする。
【0027】
これによれば、第1流体である冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させた際に蒸発器(熱交換器)に着霜が生じても、第2流体である熱媒体の有する熱量によって、除霜を行うことができる。
【0028】
請求項8に記載の発明では、蒸気圧縮式の冷凍サイクルにおいて圧縮機吐出冷媒を放熱させる放熱器として用いられる請求項1ないし6のいずれか1つに記載の熱交換器であって、第1流体は、冷凍サイクルの冷媒であり、第2流体は、外部熱源の有する熱量を吸熱した熱媒体であり、第3流体は、空気であることを特徴とする。
【0029】
これによれば、冷凍サイクルを作動させて圧縮機吐出冷媒の有する熱量によって空気を加熱することができるとともに、熱媒体の有する熱量によって空気を加熱することもできる。
【0030】
請求項9に記載の発明では、車両用冷却システムに適用される請求項1ないし6のいずれか1つに記載の熱交換器であって、第1流体は、作動時に発熱を伴う第1車載機器の有する熱量を吸熱した熱媒体であり、第2流体は、作動時に発熱を伴う第2車載機器の有する熱量を吸熱した熱媒体であり、第3流体は、空気であることを特徴とする。
【0031】
ここで、車両には作動時に発熱を伴う様々な車載機器が搭載されており、これらの車載機器の発熱量は、車両の走行状態(走行負荷)に応じてそれぞれ変化する。従って、本請求項に記載の発明によれば、発熱量の大きい車載機器の熱量を、空気のみならず、発熱量の小さい車載機器へ放熱させることも可能となる。なお、作動時に発熱を伴う車載機器としては、エンジン(内燃機関)、走行用電動モータ、インバータ、電気機器等がある。
【0032】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】第1実施形態のヒートポンプサイクルの暖房運転時の冷媒流路等を示す全体構成図である。
【図2】第1実施形態のヒートポンプサイクルの除霜運転時の冷媒流路等を示す全体構成図である。
【図3】第1実施形態のヒートポンプサイクルの廃熱回収運転時の冷媒流路等を示す全体構成図である。
【図4】第1実施形態のヒートポンプサイクルの冷房運転時の冷媒流路等を示す全体構成図である。
【図5】第1実施形態の熱交換器の外観斜視図である。
【図6】第1実施形態の熱交換器の分解斜視図である。
【図7】図5のA−A断面図である。
【図8】第1実施形態の熱交換器における冷媒および冷却水の流れを説明する模式的な斜視図である。
【図9】第2実施形態の熱交換器の外観斜視図である。
【図10】第2実施形態の熱交換器の分解斜視図である。
【図11】(a)は、第3実施形態の熱交換器の図6のB部に対応する分解斜視図であり、(b)は、(a)に対応する部位の外観斜視図を一部断面図としたものであり、(c)は、(b)のC−C断面図であり、(d)は、(b)のD−D断面図である
【図12】(a)は、第4実施形態の熱交換器の図6のB部に対応する分解斜視図であり、(b)は、(a)に対応する部位の外観斜視図を一部断面図としたものであり、(c)は、(b)のC−C断面図であり、(d)は、(b)のD−D断面図である
【図13】第3実施形態のヒートポンプサイクルの廃熱回収運転時の冷媒流路等を示す全体構成図である。
【図14】(a)は、他の実施形態の熱交換器における図5のA−A断面図に対応する図面であり、(b)は、他の実施形態の別の熱交換器における図5のA−A断面図に対応する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(第1実施形態)
図1〜8により、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態では、本発明の熱交換器70を、車両用空調装置1において車室内送風空気の温調を行うヒートポンプサイクル10に適用している。図1〜4は、本実施形態の車両用空調装置1の全体構成図である。この車両用空調装置1は、内燃機関(エンジン)および走行用電動モータMGから車両走行用の駆動力を得る、いわゆるハイブリッド車両に適用されている。
【0035】
ハイブリッド車両は、車両の走行負荷等に応じてエンジンを作動あるいは停止させて、エンジンおよび走行用電動モータMGの双方から駆動力を得て走行する走行状態や、エンジンを停止させて走行用電動モータMGのみから駆動力を得て走行する走行状態等を切り替えることができる。これにより、ハイブリッド車両では、車両走行用の駆動力をエンジンのみから得る通常の車両に対して車両燃費を向上させることができる。
【0036】
ヒートポンプサイクル10は、車両用空調装置1において、空調対象空間である車室内へ送風される車室内送風空気を加熱あるいは冷却する機能を果たす蒸気圧縮式の冷凍サイクルである。従って、このヒートポンプサイクル10は、冷媒流路を切り替えて、熱交換対象流体である車室内送風空気を加熱して車室内を暖房する暖房運転(加熱運転)、車室内送風空気を冷却して車室内を冷房する冷房運転(冷却運転)を実行できる。
【0037】
さらに、このヒートポンプサイクル10では、暖房運転時に冷媒を蒸発させる蒸発器として機能する後述する複合型の熱交換器70の室外熱交換部16に着いた霜を融解させて取り除く除霜運転、暖房運転時に外部熱源として走行用電動モータMGの有する熱量を冷媒に吸熱させる廃熱回収運転を実行することもできる。なお、図1〜4のヒートポンプサイクル10に示す全体構成図では、各運転時における冷媒の流れを実線矢印で示している。
【0038】
また、本実施形態のヒートポンプサイクル10では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。この冷媒には圧縮機11を潤滑するための冷凍機油が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
【0039】
まず、圧縮機11は、エンジンルーム内に配置されて、ヒートポンプサイクル10において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機11aを電動モータ11bにて駆動する電動圧縮機である。固定容量型圧縮機11aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。
【0040】
電動モータ11bは、後述する空調制御装置から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御されるもので、交流モータ、直流モータのいずれの形式を採用してもよい。そして、この回転数制御によって、圧縮機11の冷媒吐出能力が変更される。従って、本実施形態では、電動モータ11bが圧縮機11の吐出能力変更手段を構成する。
【0041】
圧縮機11の冷媒吐出口には、利用側熱交換器としての室内凝縮器12の冷媒入口側が接続されている。室内凝縮器12は、車両用空調装置1の室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されて、その内部を流通する高温高圧冷媒と後述する室内蒸発器20通過後の車室内送風空気とを熱交換させる加熱用熱交換器である。なお、室内空調ユニット30の詳細構成については後述する。
【0042】
室内凝縮器12の冷媒出口側には、暖房運転時に室内凝縮器12から流出した冷媒を減圧膨張させる暖房運転用の減圧手段としての暖房用固定絞り13が接続されている。この暖房用固定絞り13としては、オリフィス、キャピラリチューブ等を採用できる。暖房用固定絞り13の出口側には、複合型の熱交換器70の室外熱交換部16の冷媒入口側が接続されている。
【0043】
さらに、室内凝縮器12の冷媒出口側には、室内凝縮器12から流出した冷媒を、暖房用固定絞り13を迂回させて室外熱交換部16側へ導く固定絞り迂回用通路14が接続されている。この固定絞り迂回用通路14には、固定絞り迂回用通路14を開閉する開閉弁15aが配置されている。開閉弁15aは、空調制御装置から出力される制御電圧によって、その開閉作動が制御される電磁弁である。
【0044】
また、冷媒が開閉弁15aを通過する際に生じる圧力損失は、固定絞り13を通過する際に生じる圧力損失に対して極めて小さい。従って、室内凝縮器12から流出した冷媒は、開閉弁15aが開いている場合には固定絞り迂回用通路14側を介して室外熱交換部16へ流入し、開閉弁15aが閉じている場合には暖房用固定絞り13を介して室外熱交換部16へ流入する。
【0045】
これにより、開閉弁15aは、ヒートポンプサイクル10の冷媒流路を切り替えることができる。従って、本実施形態の開閉弁15aは、冷媒流路切替手段としての機能を果たす。なお、このような冷媒流路切替手段としては、室内凝縮器12出口側と暖房用固定絞り13入口側とを接続する冷媒回路および室内凝縮器12出口側と固定絞り迂回用通路14入口側とを接続する冷媒回路を切り替える電気式の三方弁等を採用してもよい。
【0046】
室外熱交換部16は、熱交換器70において内部を流通する低圧冷媒と送風ファン17から送風された外気とを熱交換させる熱交換部である。この室外熱交換部16は、エンジンルーム内に配置されて、暖房運転時には、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発用熱交換部として機能し、冷房運転時には、高圧冷媒を放熱させる放熱用熱交換部として機能する。
【0047】
また、送風ファン17は、空調制御装置から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。さらに、本実施形態の熱交換器70では、上述の室外熱交換部16および走行用電動モータMGを冷却する冷却水と送風ファン17から送風された外気とを熱交換させる後述するラジエータ部43と一体的に構成している。
【0048】
このため、本実施形態の送風ファン17は、室外熱交換部16およびラジエータ部43の双方に向けて外気を送風する室外送風手段を構成している。なお、室外熱交換部16およびラジエータ部43とを一体的に構成した複合型の熱交換器70の詳細構成については後述する。
【0049】
室外熱交換部16の出口側には、電気式の三方弁15bが接続されている。この三方弁15bは、空調制御装置から出力される制御電圧によって、その作動が制御されるもので、上述した開閉弁15aとともに、冷媒流路切替手段を構成している。
【0050】
より具体的には、三方弁15bは、暖房運転時には、室外熱交換部16の出口側と後述するアキュムレータ18の入口側とを接続する冷媒流路に切り替え、冷房運転時には、室外熱交換部16の出口側と冷房用固定絞り19の入口側とを接続する冷媒流路に切り替える。
【0051】
冷房用固定絞り19は、冷房運転時に室外熱交換部16から流出した冷媒を減圧膨張させる冷房運転用の減圧手段であり、その基本的構成は、暖房用固定絞り13と同様である。冷房用固定絞り19の出口側には、室内蒸発器20の冷媒入口側が接続されている。
【0052】
室内蒸発器20は、室内空調ユニット30のケーシング31内のうち、室内凝縮器12よりも空気流れの上流側に配置されて、その内部を流通する冷媒と車室内送風空気とを熱交換させ、車室内送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。室内蒸発器20の冷媒出口側には、アキュムレータ18の入口側が接続されている。
【0053】
アキュムレータ18は、その内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰冷媒を蓄える低圧側冷媒用の気液分離器である。アキュムレータ18の気相冷媒出口には、圧縮機11の吸入側が接続されている。従って、このアキュムレータ18は、圧縮機11に液相冷媒が吸入されてしまうことを抑制して、圧縮機11の液圧縮を防止する機能を果たす。
【0054】
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、前述の室内凝縮器12、室内蒸発器20等を収容したものである。
【0055】
ケーシング31は、車室内に送風される車室内送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の車室内送風空気流れ最上流側には、車室内空気(内気)と外気とを切替導入する内外気切替装置33が配置されている。
【0056】
内外気切替装置33には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口が形成されている。さらに、内外気切替装置33の内部には、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドアが配置されている。
【0057】
内外気切替装置33の空気流れ下流側には、内外気切替装置33を介して吸入された空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
【0058】
送風機32の空気流れ下流側には、室内蒸発器20および室内凝縮器12が、車室内送風空気の流れに対して、この順に配置されている。換言すると、室内蒸発器20は、室内凝縮器12に対して、車室内送風空気の流れ方向上流側に配置されている。
【0059】
さらに、室内蒸発器20の空気流れ下流側であって、かつ、室内凝縮器12の空気流れ上流側には、室内蒸発器20通過後の送風空気のうち、室内凝縮器12を通過させる風量割合を調整するエアミックスドア34が配置されている。また、室内凝縮器12の空気流れ下流側には、室内凝縮器12にて冷媒と熱交換して加熱された送風空気と室内凝縮器12を迂回して加熱されていない送風空気とを混合させる混合空間35が設けられている。
【0060】
ケーシング31の空気流れ最下流部には、混合空間35にて混合された空調風を、冷却対象空間である車室内へ吹き出す吹出口が配置されている。具体的には、この吹出口としては、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス吹出口、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット吹出口、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ吹出口(いずれも図示せず)が設けられている。
【0061】
従って、エアミックスドア34が室内凝縮器12を通過させる風量の割合を調整することによって、混合空間35にて混合された空調風の温度が調整され、各吹出口から吹き出される空調風の温度が調整される。つまり、エアミックスドア34は、車室内へ送風される空調風の温度を調整する温度調整手段を構成している。
【0062】
換言すると、エアミックスドア34は、利用側熱交換器を構成する室内凝縮器12において、圧縮機11吐出冷媒と車室内送風空気との熱交換量を調整する熱交換量調整手段としての機能を果たす。なお、エアミックスドア34は、空調制御装置から出力される制御信号によって作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
【0063】
さらに、フェイス吹出口、フット吹出口、およびデフロスタ吹出口の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス吹出口の開口面積を調整するフェイスドア、フット吹出口の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ吹出口の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
【0064】
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、吹出口モードを切り替える吹出口モード切替手段を構成するものであって、リンク機構等を介して、空調制御装置から出力される制御信号によってその作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
【0065】
次に、冷却水循環回路40について説明する。この冷却水循環回路40は、作動時に発熱を伴う車載機器の一つである前述の走行用電動モータMGの内部に形成された冷却水通路に、冷却媒体(熱媒体)としての冷却水(例えば、エチレングリコール水溶液)を循環させて、走行用電動モータMGを冷却する冷却媒体循環回路である。
【0066】
この冷却水循環回路40には、冷却水ポンプ41、電気式の三方弁42、複合型の熱交換器70のラジエータ部43、このラジエータ部43を迂回させて冷却水を流すバイパス通路44等が配置されている。
【0067】
冷却水ポンプ41は、冷却水循環回路40において冷却水を走行用電動モータMGの内部に形成された冷却水通路へ圧送する電動式のポンプであり、空調制御装置から出力される制御信号によって回転数(流量)が制御される。従って、冷却水ポンプ41は、走行用電動モータMGを冷却する冷却水の流量を変化させて冷却能力を調整する冷却能力調整手段としての機能を果たす。
【0068】
三方弁42は、冷却水ポンプ41の入口側とラジエータ部43の出口側とを接続して冷却水をラジエータ部43へ流入させる冷却媒体回路、および、冷却水ポンプ41の入口側とバイパス通路44の出口側とを接続して冷却水をラジエータ部43を迂回させて流す冷却媒体回路を切り替える。この三方弁42は、空調制御装置から出力される制御電圧によって、その作動が制御されるもので、冷却媒体回路の回路切替手段を構成している。
【0069】
つまり、本実施形態の冷却水循環回路40では、図1等の破線矢印に示すように、冷却水ポンプ41→走行用電動モータMG→ラジエータ部43→冷却水ポンプ41の順に冷却水を循環させる冷却媒体回路と、冷却水ポンプ41→走行用電動モータMG→バイパス通路44→冷却水ポンプ41の順に冷却水を循環させる冷却媒体回路とを切り替えることができる。
【0070】
従って、走行用電動モータMGの作動中に、三方弁42が、冷却水をラジエータ部43を迂回させて流す冷却媒体回路に切り替えると、冷却水はラジエータ部43にて放熱することなく、その温度を上昇させる。つまり、三方弁42が、冷却水をラジエータ部43を迂回させて流す冷却媒体回路に切り替えた際には、走行用電動モータMGの有する熱量(発熱量)が冷却水に蓄熱されることになる。
【0071】
室外熱交換部16は、エンジンルーム内に配置されて、冷却水と送風ファン17から送風された外気とを熱交換させる放熱用熱交換部として機能する。前述の如く、ラジエータ部43は、室外熱交換部16とともに複合型の熱交換器70を構成している。
【0072】
ここで、図5〜8を用いて、本実施形態の複合型の熱交換器70の詳細構成について説明する。図5は、本実施形態の熱交換器70の外観斜視図であり、図6は、熱交換器70の分解斜視図であり、図7は、図5のA−A断面図であり、図8は、熱交換器70における冷媒流れおよび冷却水流れを説明するための模式的な斜視図である。
【0073】
まず、図5、6に示すように、室外熱交換部16およびラジエータ部43は、それぞれ冷媒または冷却水を流通させる複数本のチューブ、この複数本のチューブの両端側に配置されてそれぞれのチューブを流通する冷媒または冷却水の集合あるいは分配を行う一対の集合分配用タンク等を有する、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器構造に構成されている。
【0074】
より具体的には、室外熱交換部16は、第1流体としての冷媒が流通する複数本の冷媒用チューブ16a、および、複数本の冷媒用チューブ16aの積層方向に延びて冷媒用チューブ16aを流通する冷媒の集合あるいは分配を行う冷媒側タンク部16cを有し、冷媒用チューブ16aを流通する冷媒と冷媒用チューブ16aの周囲を流れる第3流体としての空気(送風ファン17から送風された外気)とを熱交換させる熱交換部である。
【0075】
一方、ラジエータ部43は、第2流体としての冷却水が流通する複数本の冷却媒体用チューブ43a、および、冷却媒体用チューブ43aの積層方向に延びて冷却媒体用チューブ43aを流通する冷却水の集合あるいは分配を行う冷却媒体側タンク部43cを有し、冷却媒体用チューブ43aを流通する冷却水と冷却媒体用チューブ43aの周囲を流れる空気(送風ファン17から送風された外気)とを熱交換させる熱交換部である。
【0076】
まず、冷媒用チューブ16aおよび冷却媒体用チューブ43aとしては、長手方向垂直断面の形状が扁平形状の扁平チューブが採用されている。そして、図6の分解斜視図に示すように、室外熱交換部16の冷媒用チューブ16aおよびラジエータ部43の冷却媒体用チューブ43aが、それぞれ送風ファン17によって送風された外気の流れ方向Xに沿って2列配置されている。
【0077】
さらに、外気の流れ方向風上側に配列された冷媒用チューブ16aおよび冷却媒体用チューブ43aは、その外表面のうち平坦面同士が互いに平行に、かつ、対向するように所定の間隔を開けて交互に積層配置されている。同様に、外気の流れ方向風下側に配列された冷媒用チューブ16aおよび冷却媒体用チューブ43aについても、所定の間隔を開けて交互に積層配置されている。
【0078】
換言すると、本実施形態の冷媒用チューブ16aは、冷却媒体用チューブ43aの間に配置され、冷却媒体用チューブ43aは、冷媒用チューブ16aの間に配置されている。さらに、冷媒用チューブ16aと冷却媒体用チューブ43aとの間に形成される空間は、送風ファン17によって送風された外気が流通する外気通路70a(第3流体用通路)を形成している。
【0079】
そして、この外気通路70aには、室外熱交換部16における冷媒と外気との熱交換およびラジエータ部43における冷却水と外気との熱交換を促進するとともに、冷媒用チューブ16aを流通する冷媒と冷却媒体用チューブ43aを流通する冷却水との間の熱移動を可能とするアウターフィン50が配置されている。
【0080】
このアウターフィン50としては、伝熱性に優れる金属の薄板を波状に曲げ成形したコルゲートフィンが採用されており、本実施形態では、このアウターフィン50が、冷媒用チューブ16aおよび冷却媒体用チューブ43aの双方に接合されていることによって、冷媒用チューブ16aと冷却媒体用チューブ43aとの間の熱移動を可能としている。
【0081】
次に、冷媒側タンク部16cおよび冷却媒体側タンク部43cについて説明する。これらのタンク部16c、43cの基本的構成は同様である。冷媒側タンク部16cは、2列に配置された冷媒用チューブ16aおよび冷却媒体用チューブ43aの双方が固定される冷媒側固定用プレート部材161、冷媒側固定用プレート部材161に固定される冷媒側中間プレート部材162、並びに、冷媒側タンク形成部材163を有している。
【0082】
冷媒側中間プレート部材162には、図7の断面図に示すように、冷媒側固定用プレート部材161に固定されることによって、冷媒側固定用プレート部材161との間に冷却媒体用チューブ43aに連通する複数の空間を形成する複数の凹み部162bが形成されている。この空間は、外気の流れ方向Xに2列に並んだ冷却媒体用チューブ43a同士を互いに連通させる冷却媒体用連通空間としての機能を果たす。
【0083】
なお、図7では、図示の明確化のため、冷却媒体側中間プレート部材432に設けられた凹み部432b周辺の断面を図示しているが、前述の如く、冷媒側タンク部16cおよび冷却媒体側タンク部43cの基本的構成は同様なので、冷媒側接続用プレート部材161および凹み部162b等についてはカッコを付して符合を記載している。
【0084】
また、冷媒側中間プレート部材162のうち冷媒用チューブ16aに対応する部位にはその表裏を貫通する第1連通穴162aが設けられ、この第1連通穴162aには冷媒用チューブ16aが貫通している。これにより、冷媒用チューブ16aが冷媒側タンク形成部材163内に形成される空間に連通している。
【0085】
さらに、冷媒側タンク部16c側の端部では、冷媒用チューブ16aが冷却媒体用チューブ43aよりも、冷媒側タンク部16c側へ突出している。つまり、冷媒用チューブ16aの冷媒側タンク部16c側の端部と冷却媒体用チューブ43aの冷媒側タンク部16c側の端部は、不揃いに配置されている。
【0086】
冷媒側タンク形成部材163は、冷媒側固定用プレート部材161および冷媒側中間プレート部材162に固定されることによって、その内部に冷媒の集合を行う集合空間163aおよび冷媒の分配を行う分配空間163bを形成するものである。具体的には、冷媒側タンク形成部材163は、平板金属にプレス加工を施すことにより、その長手方向から見たときに、二山状(W字状)に形成されている。
【0087】
そして、冷媒側タンク形成部材163の二山状の中央部163cが冷媒側中間プレート部材162に接合されることによって、集合空間163aおよび分配空間163bが区画されている。なお、本実施形態では、外気の流れ方向Xの風上側に集合空間163aが配置され、さらに、外気の流れ方向Xの風下側に分配空間163bが配置されている。
【0088】
この中央部163cは、冷媒側中間プレート部材162に形成された凹み部162bに適合する形状に形成されており、集合空間163aと分配空間163bは、冷媒側固定用プレート部材161および冷媒側中間プレート部材162の接合部位から内部の冷媒が漏れないように区画されている。
【0089】
さらに、前述の如く、冷媒用チューブ16aは、冷媒側中間プレート部材162の第1連通穴162aを貫通して、冷媒側タンク形成部材163の内部に形成される集合空間163aあるいは分配空間163bへ突出していることにより、外気の流れ方向Xの風上側に配列された冷媒用チューブ16aは集合空間163aに連通し、外気の流れ方向Xの風下側に配列された冷媒用チューブ16aは分配空間163bに連通している。
【0090】
また、冷媒側タンク形成部材163の長手方向一端側には、分配空間163bへ冷媒を流入させる冷媒流入配管164が接続されるとともに、集合空間163aから冷媒を流出させる冷媒流出配管165が接続されている。さらに、冷媒側タンク形成部材163の長手方向他端側は、閉塞部材によって閉塞されている。
【0091】
一方、冷却媒体側タンク部43cについても、図6に示すように、同様の構成の冷却媒体側固定用プレート部材431、冷却媒体側固定用プレート部材431に固定される冷却媒体側中間プレート部材432、並びに、冷却媒体側タンク形成部材433を有している。
【0092】
さらに、冷却媒体側固定用プレート部材431と冷却媒体側中間プレート部材432との間には、冷却媒体側中間プレート部材432に設けられた凹み部432bによって、外気の流れ方向Xに2列に並んだ冷媒用チューブ16a同士を互いに連通させる冷媒用連通空間が形成されている。
【0093】
また、冷却媒体側中間プレート部材432のうち冷却媒体用チューブ43aに対応する部位にはその表裏を貫通する第2連通穴432aが設けられ、この第2連通穴432aには冷却媒体用チューブ43aが貫通している。これにより、冷却媒体用チューブ43aが冷却媒体媒側タンク形成部材433内に形成される空間に連通している。
【0094】
従って、冷却媒体側タンク部43c側の端部では、冷却媒体用チューブ43aが冷媒用チューブ16aよりも、冷却媒体側タンク部43c側へ突出している。つまり、冷媒用チューブ16aの冷却媒体側タンク部43c側の端部と冷却媒体用チューブ43aの冷却媒体側タンク部43c側の端部は、不揃いに配置されている。
【0095】
さらに、冷却媒体側タンク形成部材433は、冷却媒体側固定用プレート部材431および冷却媒体側中間プレート部材432に固定されることによって、内部に冷却媒体側タンク形成部材433の中央部433cによって区画された冷却媒体の集合空間433aおよび冷却媒体の分配空間433bを形成している。なお、本実施形態では、外気の流れ方向Xの風上側に分配空間433bが配置され、外気の流れ方向X風下側に集合空間433aが配置されている。
【0096】
また、冷却媒体側タンク形成部材433の長手方向一端側には、分配空間433bへ冷却媒体を流入させる冷却媒体流入配管434が接続されるとともに、集合空間433aから冷却媒体を流出させる冷却媒体流出配管435が接続されている。さらに、冷却媒体側タンク部43cの長手方向他端側は、閉塞部材によって閉塞されている。
【0097】
従って、本実施形態の熱交換器70では、図8の模式的な斜視図に示すように、冷媒流入配管164を介して冷媒側タンク部16cの分配空間163bへ流入した冷媒が、2列に並んだ冷媒用チューブ16aのうち、外気の流れ方向Xの風下側に配列された各冷媒用チューブ16aへ流入する。
【0098】
そして、風下側に配列された各冷媒用チューブ16aから流出した冷媒が、冷却媒体側タンク部43cの冷却媒体側固定用プレート部材431と冷却媒体側中間プレート部材432との間に形成された冷媒用連通空間を介して、外気の流れ方向Xの風上側に配列された各冷媒用チューブ16aへ流入する。
【0099】
さらに、風上側に配列された各冷媒用チューブ16aから流出した冷媒は、図10の実線矢印で示すように、冷媒側タンク部16cの集合空間163aにて集合して、冷媒流出配管165から流出していく。つまり、本実施形態の熱交換器70では、冷媒が、風下側の冷媒用チューブ16a→冷却媒体側タンク部43cの冷媒用連通空間→風上側の冷媒用チューブ16aの順にUターンしながら流れることになる。
【0100】
同様に、冷却水については、風上側の冷却媒体用チューブ43a→冷媒側タンク部16cの冷却媒体用連通空間→風下側の冷却媒体用チューブ43aの順にUターンしながら流れることになる。従って、隣り合う冷媒用チューブ16aを流通する冷媒と冷却媒体用チューブ43aを流通する冷却水とは、その流れ方向が互いに対向する方向となる。
【0101】
また、上述した室外熱交換部16の冷媒用チューブ16a、ラジエータ部43の冷却媒体用チューブ43a、冷媒側タンク部16cの各構成部品、冷却媒体側タンク部43cの各構成部品およびアウターフィン50は、いずれも同一の金属材料(本実施形態では、アルミニウム合金)で形成されている。
【0102】
そして、冷媒側中間プレート部材162を挟み込んだ状態で冷媒側固定用プレート部材161と冷媒側タンク形成部材163がかしめによって固定され、また、冷却媒体側中間プレート部材432を挟み込んだ状態で冷却媒体側固定用プレート部材431と冷却媒体側タンク形成部材433が、かしめによって固定されている。
【0103】
さらに、かしめ固定された状態の熱交換器70全体を加熱炉内へ投入して加熱し、各構成部品表面に予めクラッドされたろう材を融解させ、さらに、再びろう材が凝固するまで冷却することで、各構成部品が一体にろう付けされる。これにより、室外熱交換部16とラジエータ部43とが一体化されている。
【0104】
なお、上記の説明から明らかなように、本実施形態の冷媒は、特許請求の範囲に記載された第1流体に対応し、冷却水は第2流体に対応し、空気(外気)は第3流体に対応し、室外熱交換部16は、第1熱交換部に対応し、ラジエータ部43は、第2熱交換部に対応し、冷媒用チューブ16aは第1チューブに対応し、冷媒側タンク部16cは第1タンク部に対応し、冷却媒体用チューブ43aは第2チューブに対応し、冷却媒体側タンク部43cは第2タンク部に対応している。
【0105】
また、冷媒側固定用プレート部材161、冷媒側中間プレート部材162、冷媒側タンク形成部材163および冷却媒体用連通空間が、それぞれ特許請求の範囲に記載された第1固定用プレート部材、第1中間プレート部材、第1タンク形成部材および第1連通空間に対応し、冷却媒体側固定用プレート部材431、冷却媒体側中間プレート部材432、冷却媒体側タンク形成部材433および冷媒用連通空間が、それぞれ第2固定用プレート部材、第2中間プレート部材、第2タンク形成部材および第2連通空間に対応している。
【0106】
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種空調制御機器11、15a、15b、17、41、42等の作動を制御する。
【0107】
また、空調制御装置の入力側には、車室内温度を検出する内気センサ、外気温を検出する外気センサ、車室内の日射量を検出する日射センサ、室内蒸発器20の吹出空気温度(蒸発器温度)を検出する蒸発器温度センサ、圧縮機11吐出冷媒温度を検出する吐出冷媒温度センサ、室外熱交換部16出口側冷媒温度Teを検出する出口冷媒温度センサ51、走行用電動モータMGへ流入する冷却水温度Twを検出する冷却水温度検出手段としての冷却水温度センサ52等の種々の空調制御用のセンサ群が接続されている。
【0108】
なお、本実施形態では、冷却水温度センサ52によって、冷却水ポンプ41から圧送された冷却水温度Twを検出しているが、もちろん冷却水ポンプ41に吸入される冷却水温度Twを検出してもよい。
【0109】
さらに、空調制御装置の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された図示しない操作パネルが接続され、この操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチとしては、車両用空調装置の作動スイッチ、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ、運転モードの選択スイッチ等が設けられている。
【0110】
なお、空調制御装置は、圧縮機11の電動モータ11b、開閉弁15a等を制御する制御手段が一体に構成され、これらの作動を制御するものであるが、本実施形態では、空調制御装置のうち、圧縮機11の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が冷媒吐出能力制御手段を構成し、冷媒流路切替手段を構成する各種機器15a、15bの作動を制御する構成が冷媒流路制御手段を構成し、冷却水の回路切替手段を構成する三方弁42の作動を制御する構成が冷却媒体回路制御手段を構成している。
【0111】
さらに、本実施形態の空調制御装置は、上述した空調制御用のセンサ群の検出信号に基づいて、室外熱交換部16に着霜が生じているか否かを判定する構成(着霜判定手段)を有している。具体的には、本実施形態の着霜判定手段では、車両の車速が予め定めた基準車速(本実施形態では、20km/h)以下であって、かつ、室外熱交換部16出口側冷媒温度Teが0℃以下のときに、室外熱交換部16に着霜が生じていると判定する。
【0112】
次に、上記構成における本実施形態の車両用空調装置1の作動を説明する。本実施形態の車両用空調装置1では、車室内を暖房する暖房運転、車室内を冷房する冷房運転を実行することができるとともに、暖房運転時に、除霜運転、廃熱回収運転を実行することができる。以下に各運転における作動を説明する。
【0113】
(a)暖房運転
暖房運転は、操作パネルの作動スイッチが投入(ON)された状態で、選択スイッチによって暖房運転モードが選択されると開始される。そして、暖房運転時に、着霜判定手段によって室外熱交換部16の着霜が生じていると判定された際には除霜運転が実行され、冷却水温度センサ52によって検出された冷却水温度Twが予め定めた基準温度(本実施形態では、60℃)度以上になった際には廃熱回収運転が実行される。
【0114】
まず、通常の暖房運転時には、空調制御装置が、開閉弁15aを閉じるとともに、三方弁15bを室外熱交換部16の出口側とアキュムレータ18の入口側とを接続する冷媒流路に切り替え、さらに、冷却水ポンプ41を予め定めた所定流量の冷却水を圧送するように作動させるとともに、冷却水循環回路40の三方弁42を冷却水がラジエータ部43を迂回して流れる冷却媒体回路に切り替える。
【0115】
これにより、ヒートポンプサイクル10は、図1の実線矢印に示すように冷媒が流れる冷媒流路に切り替えられ、冷却水循環回路40は、図1の破線矢印に示すように冷媒が流れる冷却媒体回路に切り替えられる。
【0116】
この冷媒流路および冷却媒体回路の構成で、空調制御装置が上述の空調制御用のセンサ群の検出信号および操作パネルの操作信号を読み込む。そして、検出信号および操作信号の値に基づいて車室内へ吹き出す空気の目標温度である目標吹出温度TAOを算出する。さらに、算出された目標吹出温度TAOおよびセンサ群の検出信号に基づいて、空調制御装置の出力側に接続された各種空調制御機器の作動状態を決定する。
【0117】
例えば、圧縮機11の冷媒吐出能力、すなわち圧縮機11の電動モータに出力される制御信号については、以下のように決定される。まず、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置に記憶された制御マップを参照して、室内蒸発器20の目標蒸発器吹出温度TEOを決定する。
【0118】
そして、この目標蒸発器吹出温度TEOと蒸発器温度センサによって検出された室内蒸発器20からの吹出空気温度との偏差に基づいて、フィードバック制御手法を用いて室内蒸発器20からの吹出空気温度が目標蒸発器吹出温度TEOに近づくように、圧縮機11の電動モータに出力される制御信号が決定される。
【0119】
また、エアミックスドア34のサーボモータへ出力される制御信号については、目標吹出温度TAO、室内蒸発器20からの吹出空気温度および吐出冷媒温度センサによって検出された圧縮機11吐出冷媒温度等を用いて、車室内へ吹き出される空気の温度が車室内温度設定スイッチによって設定された乗員の所望の温度となるように決定される。
【0120】
なお、通常の暖房運転時、除霜運転時、および廃熱回収運転時には、送風機32から送風された車室内送風空気の全風量が、室内凝縮器12を通過するようにエアミックスドア34の開度を制御してもよい。
【0121】
そして、上記の如く決定された制御信号等を各種空調制御機器へ出力する。その後、操作パネルによって車両用空調装置の作動停止が要求されるまで、所定の制御周期毎に、上述の検出信号および操作信号の読み込み→目標吹出温度TAOの算出→各種空調制御機器の作動状態決定→制御電圧および制御信号の出力といった制御ルーチンが繰り返される。なお、このような制御ルーチンの繰り返しは、他の運転時にも基本的に同様に行われる。
【0122】
通常の暖房運転時のヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が室内凝縮器12へ流入する。室内凝縮器12へ流入した冷媒は、送風機32から送風されて室内蒸発器20を通過した車室内送風空気と熱交換して放熱する。これにより、車室内送風空気が加熱される。
【0123】
室内凝縮器12から流出した高圧冷媒は、開閉弁15aが閉じているので、暖房用固定絞り13へ流入して減圧膨張される。そして、暖房用固定絞り13にて減圧膨張された低圧冷媒は、室外熱交換部16へ流入する。室外熱交換部16へ流入した低圧冷媒は、送風ファン17によって送風された外気から吸熱して蒸発する。
【0124】
この際、冷却水循環回路40では、冷却水がラジエータ部43を迂回して流れる冷却媒体回路に切り替えられているので、冷却水が室外熱交換部16を流通する冷媒に放熱することや、冷却水が室外熱交換部16を流通する冷媒から吸熱することはない。つまり、冷却水が室外熱交換部16を流通する冷媒に対して熱的な影響を及ぼすことはない。
【0125】
室外熱交換部16から流出した冷媒は、三方弁15bが、室外熱交換部16の出口側とアキュムレータ18の入口側とを接続する冷媒流路に切り替えられているので、アキュムレータ18へ流入して気液分離される。そして、アキュムレータ18にて分離された気相冷媒が、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。
【0126】
以上の如く、通常の暖房運転時には、室内凝縮器12にて圧縮機11から吐出された冷媒の有する熱量によって車室内送風空気が加熱されて、車室内の暖房を行うことができる。
【0127】
(b)除霜運転
次に、除霜運転について説明する。ここで、本実施形態のヒートポンプサイクル10のように、室外熱交換部16にて冷媒と外気とを熱交換させて冷媒を蒸発させる冷凍サイクル装置では、室外熱交換部16における冷媒蒸発温度が着霜温度(具体的には、0℃)以下になってしまうと室外熱交換部16に着霜が生じるおそれがある。
【0128】
このような着霜が生じると、熱交換器70の外気通路70aが霜によって閉塞されてしまうので、室外熱交換部16の熱交換能力が著しく低下してしまう。そこで、本実施形態のヒートポンプサイクル10では、暖房運転時に、着霜判定手段によって室外熱交換部16の着霜が生じていると判定された際に除霜運転を実行する。
【0129】
この除霜運転では、空調制御装置が圧縮機11の作動を停止させるとともに、送風ファン17の作動を停止させる。従って、除霜運転時には、通常の暖房運転時に対して、室外熱交換部16へ流入する冷媒流量が減少し、外気通路70aへ流入する外気の風量が減少することになる。
【0130】
さらに、空調制御装置が冷却水循環回路40の三方弁42を、図2の破線矢印に示すように、冷却水をラジエータ部43へ流入させる冷却媒体回路に切り替える。これにより、ヒートポンプサイクル10に冷媒は循環することはなく、冷却水循環回路40は、図2の破線矢印に示すように冷媒が流れる冷却媒体回路に切り替えられる。
【0131】
従って、ラジエータ部43の冷却媒体用チューブ43aを流通する冷却水の有する熱量がアウターフィン50を介して、室外熱交換部16に伝熱されて、室外熱交換部16の除霜がなされる。つまり、走行用電動モータMGの廃熱を有効に利用した除霜が実現される。
【0132】
(c)廃熱回収運転
次に、廃熱回収運転について説明する。ここで、走行用電動モータMGのオーバーヒートを抑制するためには、冷却水の温度は所定の上限温度以下に維持されるとともに、走行用電動モータMGの内部に封入された潤滑用オイルの粘度増加によるフリクションロスを低減するためには、冷却水の温度は所定の下限温度以上に維持されることが望ましい。
【0133】
そこで、本実施形態のヒートポンプサイクル10では、暖房運転時に、冷却水温度Twが予め定めた基準温度(本実施形態では、60℃)度以上になった際に廃熱回収運転が実行される。この除霜運転では、ヒートポンプサイクル10の三方弁15bについては、通常の暖房運転時と同様に作動させ、冷却水循環回路40の三方弁42については、除霜運転時と同様に、冷却水を図3の破線矢印に示すようにラジエータ部43へ流入させる冷却媒体回路に切り替える。
【0134】
従って、図3の実線矢印に示すように、圧縮機11から吐出された高圧高温冷媒は、通常の暖房運転時と同様に、室内凝縮器12にて車室内送風空気を加熱し、暖房用固定絞り13にて減圧膨張されて16へ流入する。
【0135】
室外熱交換部16へ流入した低圧冷媒は、三方弁42が冷却水をラジエータ部43へ流入させる冷却媒体回路に切り替えているので、送風ファン17によって送風された外気の有する熱量とアウターフィン50を介して伝熱される冷却水の有する熱量との双方を吸熱して吸熱して蒸発する。その他の作動は、通常の暖房運転時と同様である。
【0136】
以上の如く、廃熱回収運転時には、室内凝縮器12にて圧縮機11から吐出された冷媒の有する熱量によって車室内送風空気が加熱されて、車室内の暖房を行うことができる。この際、冷媒が外気の有する熱量のみならず、アウターフィン50を介して伝熱される冷却水の有する熱量を吸熱するので、走行用電動モータMGの廃熱を有効に利用した車室内の暖房を実現できる。
【0137】
(d)冷房運転
冷房運転は、操作パネルの作動スイッチが投入(ON)された状態で、選択スイッチによって冷房運転モードが選択されると開始される。この冷房運転時には、空調制御装置が、開閉弁15aを開くとともに、三方弁15bを室外熱交換部16の出口側と冷房用固定絞り19の入口側とを接続する冷媒流路に切り替える。これにより、ヒートポンプサイクル10は、図4の実線矢印に示すように冷媒が流れる冷媒流路に切り替えられる。
【0138】
この際、冷却水循環回路40の三方弁42については、冷却水温度Twが基準温度以上になった際には、冷却水をラジエータ部43へ流入させる冷却媒体回路に切り替え、冷却水温度Twが予め定めた基準温度未満になった際には、冷却水がラジエータ部43を迂回して流れる冷却媒体回路に切り替えられる。なお、図4では、冷却水温度Twが基準温度以上になった際の冷却水の流れを破線矢印で示している。
【0139】
冷房運転時のヒートポンプサイクル10では、圧縮機11から吐出された高圧冷媒が室内凝縮器12へ流入して、送風機32から送風されて室内蒸発器20を通過した車室内送風空気と熱交換して放熱する。室内凝縮器12から流出した高圧冷媒は、開閉弁15aが開いているので、固定絞り迂回用通路14を介して室外熱交換部16へ流入する。室外熱交換部16へ流入した低圧冷媒は、送風ファン17によって送風された外気にさらに放熱する。
【0140】
室外熱交換部16から流出した冷媒は、三方弁15bが、室外熱交換部16の出口側と冷房用固定絞り19の入口側とを接続する冷媒流路に切り替えられているので、冷房用固定絞り19にて減圧膨張される。冷房用固定絞り19から流出した冷媒は、室内蒸発器20へ流入して、送風機32によって送風された車室内送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内送風空気が冷却される。
【0141】
室内蒸発器20から流出した冷媒は、アキュムレータ18へ流入して気液分離される。そして、アキュムレータ18にて分離された気相冷媒が、圧縮機11に吸入されて再び圧縮される。以上の如く、冷房運転時には、室内蒸発器20にて低圧冷媒が車室内送風空気から吸熱して蒸発することによって、車室内送風空気が冷却されて車室内の冷房を行うことができる。
【0142】
本実施形態の車両用空調装置1では、上記の如く、ヒートポンプサイクル10の冷媒流路および冷却水循環回路40の冷却媒体回路を切り替えることによって、種々の運転を実行することができる。さらに、本実施形態では、上述した特徴的な熱交換器70を採用しているので、それぞれ運転時に冷媒、冷却水、外気の3種類の流体間で適切な熱交換を行うことができる。
【0143】
より詳細には、本実施形態の熱交換器70では、室外熱交換部16の冷媒用チューブ16aとラジエータ部43の冷却媒体用チューブ43aとの間に形成される外気通路70aにアウターフィン50を配置している。そして、このアウターフィン50により、冷媒用チューブ16aと冷却媒体用チューブ43aとの間の熱移動を可能としている。
【0144】
これにより、除霜運転時に、アウターフィン50を介して冷却水の有する熱量を室外熱交換部16に伝熱することができるので、走行用電動モータMGの廃熱を室外熱交換部16の除霜のために、有効に利用することができる。
【0145】
さらに、本実施形態では、除霜運転時に、圧縮機11の作動を停止させて室外熱交換部16へ流入する冷媒流量を減少させているので、アウターフィン50および冷媒用チューブ16aを介して室外熱交換部16に伝熱される熱量が冷媒用チューブ16aを流通する冷媒に吸熱されてしまうことを抑制できる。すなわち、冷却水と冷媒との不必要な熱交換を抑制することができる。
【0146】
さらに、除霜運転時に、送風ファン17の作動を停止させて外気通路70aへ流入する外気の風量を減少させているので、アウターフィン50を介して室外熱交換部16に伝熱される熱量が外気通路70aを流通する外気に吸熱されてしまうことを抑制できる。すなわち、冷却水と外気との不必要な熱交換を抑制することができる。
【0147】
また、廃熱回収運転時には、冷媒用チューブ16a、冷却媒体用チューブ43aおよびアウターフィン50を介して、冷却水と冷媒と熱交換させて、走行用電動モータMGの廃熱を冷媒に吸熱させることができるとともに、冷却媒体用チューブ43aおよびアウターフィン50を介して、冷却水と外気とを熱交換させて、走行用電動モータMGの不要な廃熱を外気に放熱することができる。
【0148】
また、通常の暖房運転時には、冷媒用チューブ16aおよびアウターフィン50を介して、冷媒と外気とを熱交換させて、外気の有する熱量を冷媒に吸熱させることができる。さらに、通常の暖房運転時には、冷却水循環回路40の三方弁42を、冷却水がラジエータ部43を迂回して流れる冷却媒体回路に切り替えているので、不要な冷却水と外気との熱交換を抑制して、冷却水に走行用電動モータMGの廃熱を蓄熱できるとともに、走行用電動モータMGの暖機を促進できる。
【0149】
さらに、本実施形態の熱交換器70では、冷媒側タンク部16cおよび冷却媒体側タンク部43cの双方のタンクに、冷媒用チューブ16aと冷却媒体用チューブ43aの双方を固定する構成を採用しているので、熱交換器の構成を複雑化、大型化させてしまうことを抑制できる。
【0150】
つまり、冷媒用チューブ16aを流通する冷媒の集合あるいは分配を行うために必須の構成である冷媒側タンク部16c、および、冷却媒体用チューブ43aを流通する冷却水の集合あるいは分配を行うために必須の構成である冷却媒体側タンク部43cに、双方のチューブ16a、43aを固定するので、双方のチューブ16a、43aの形状を略同等の形状とすることができる。
【0151】
従って、従来技術のように、冷媒用チューブ16aおよび冷却媒体用チューブ43aのうち、一方のチューブ16a、43aを湾曲させる構成を採用する必要がなく、熱交換器70全体としての構成が複雑化、大型化してしまうことを抑制できる。
【0152】
さらに、本実施形態の熱交換器70では、冷媒側中間プレート部材162に、冷媒用チューブ16aを冷媒側タンク形成部材163の内部空間に連通させる第1連通穴162aが形成され、冷却媒体側中間プレート部材432に、冷却媒体用チューブ43aを冷却媒体側タンク形成部材433の内部空間に連通させる第2連通穴432aが形成されている。
【0153】
これにより、冷媒側タンク部16cおよび冷却媒体側タンク部43cに、双方のチューブ16a、43aが固定されていても、冷媒側タンク部16cが冷媒用チューブ16aを流通する冷媒の集合あるいは分配を行う機能を果たし、冷却媒体側タンク部43cが冷却媒体用チューブ43aを流通する冷却水の集合あるいは分配を行う機能を果たす構成を容易かつ確実に実現できる。
【0154】
さらに、本実施形態の熱交換器70では、冷媒用チューブ16aおよび冷却媒体用チューブ43aが、外気通路70aを流通する外気の流れ方向Xに複数列配置されており、冷媒側固定用プレート部材161と冷媒側中間プレート部材162との間に、外気の流れ方向Xに配置された冷却媒体用チューブ43a同士を連通させる冷却媒体用連通空間を形成している。
【0155】
加えて、冷却媒体側固定用プレート部材431と冷却媒体側中間プレート部材432との間に、外気の流れ方向Xに配置された冷媒用チューブ16a同士を連通させる冷媒用連通空間を形成している。
【0156】
これにより、冷媒側タンク部16cに固定された冷却媒体用チューブ43aから流出した冷却水を流通させる流路としての冷却媒体用連通空間を冷媒側タンク部16cの内部に形成でき、冷却媒体側タンク部43cに固定された冷媒用チューブ16aから流出した冷媒を流通させる流路としての冷媒用連通空間を冷却媒体側タンク部43cの内部に形成できるので、冷媒用チューブ16aおよび冷却媒体用チューブ43aを外気の流れ方向Xに複数列配置する熱交換器であっても熱交換器全体としての大型化を抑制できる。
【0157】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、熱交換器70の構成を変更した例を説明する。本実施形態の熱交換器70の詳細構成については、図9、10を用いて説明する。図9は、熱交換器70の外観斜視図であり、第1実施形態の図5に対応する図面である。また、図10は、熱交換器70の分解斜視図であり、第1実施形態の図6に対応する図面である。なお、図9、10では、第1実施形態と同一もしくは均等部分には同一の符号を付している。このことは、以下の図面においても同様である。
【0158】
まず、図9、10に示すように、本実施形態の熱交換器70の室外熱交換部16およびラジエータ部43も、それぞれ第1実施形態と同様に、冷媒用チューブ16aおよび冷却媒体用チューブ43aを有する、いわゆるタンクアンドチューブ型の熱交換器構造に構成されている。
【0159】
本実施形態においても、冷媒側タンク部16cおよび冷却媒体側タンク部43cの基本的構成は互いに同様である。まず、本実施形態の冷媒側タンク部16cは、冷媒側固定用プレート部材161、冷媒側中間プレート部材162を有するとともに、冷媒側タンク形成部材163としての冷媒側集合用タンク形成部材163cおよび冷媒側分配用タンク形成部材163dを有している。
【0160】
さらに、冷媒側集合用タンク形成部材163cおよび冷媒側分配用タンク形成部材163dは、それぞれ管状部材にて形成されて、その内部に互いに独立した集合空間163aおよび分配空間163bを形成している。
【0161】
冷媒側分配用タンク形成部材163dの長手方向一端側の端部には、内部に形成された分配空間163bへ冷媒を流入させる冷媒流入口163eが設けられ、他端側の端部は閉塞されている。また、冷媒側集合用タンク形成部材163cの長手方向一端側の端部には、内部に形成された集合空間163aから冷媒を流出させる冷媒流出口163fが設けられ、他端側は閉塞されている。
【0162】
また、本実施形態の冷媒側中間プレート部材162にも、その表裏を貫通する第1連通穴162aが設けられている。そして、第1連通穴162aを介して、外気の流れ方向Xの風上側に配列された冷媒用チューブ16aが集合空間163aに連通し、外気の流れ方向Xの風下側に配列された冷媒用チューブ16aが分配空間163bに連通している。
【0163】
さらに、本実施形態の冷媒側中間プレート部材162および冷媒側固定用プレート部材161には、それぞれ冷媒用チューブ16aおよび冷却媒体用チューブ43aに対応する部位に第1実施形態と同様の凹み部が設けられている。
【0164】
より詳細には、冷媒側中間プレート部材162には、冷却媒体用チューブ43aに対応する部位に形成された凹み部162bおよび冷媒用チューブ16aに対応する部位に形成された凹み部162cが設けられ、冷媒側固定用プレート部材161には、冷却媒体用チューブ43aに対応する部位に形成された凹み部161bおよび冷媒用チューブ16aに対応する部位に形成された凹み部161aが設けられている。
【0165】
従って、冷媒側中間プレート部材162と冷媒側固定用プレート部材161が固定されることによって、冷媒用チューブ16aに対応する部位に形成された凹み部162c、161a同士の間に空間が形成され、冷却媒体用チューブ43aに対応する部位に形成された凹み部162b、161b同士の間に空間が形成されている。
【0166】
さらに、冷却媒体用チューブ43aに対応する部位に形成された凹み部162b、161bは、外気の流れ方向Xに2列に並んだ冷却媒体用チューブ43aの双方と連通する範囲に延びている。これにより、冷却媒体用チューブ43aに対応する部位に形成された凹み部162b、161b同士の間に形成される空間は、外気の流れ方向Xに2列に並んだ冷却媒体用チューブ43a同士を互いに連通させる冷却媒体用連通空間としての機能を果たしている。
【0167】
一方、冷却媒体側タンク部43cについても、図7に示すように、冷媒側タンク部16cと同様の構成の冷却媒体側固定用プレート部材431、冷却媒体側中間プレート部材432を有するとともに、冷却媒体側タンク形成部材433としての冷却媒体側集合用タンク形成部材433eおよび冷却媒体側分配用タンク形成部材433fを有している。
【0168】
冷却媒体側分配用タンク形成部材433fの長手方向一端側の端部には、内部に形成された分配空間433bへ冷媒を流入させる冷媒流入口433eが設けられ、他端側の端部は閉塞されている。また、冷却媒体側集合用タンク形成部材433eの長手方向一端側の端部には、内部に形成された集合空間433aから冷媒を流出させる冷媒流出口433fが設けられ、他端側は閉塞されている。
【0169】
さらに、本実施形態の冷却媒体側中間プレート部材432にも、その表裏を貫通する第2連通穴432aが設けられている。そして、第2連通穴432aを介して、外気の流れ方向Xの風下側に配列された冷却媒体用チューブ43aが分配空間433bに連通し、外気の流れ方向Xの風上側に配列された冷媒用チューブ16aが集合空間433aに連通している。
【0170】
また、冷却媒体側固定用プレート部材431と冷却媒体側中間プレート部材432との間には、冷却媒体用チューブ43aに対応する部位に形成された凹み部432c、431b同士の間に空間が形成され、冷媒用チューブ16aに対応する部位に形成された凹み部432b、431a同士の間に冷媒用連通空間が形成されている。
【0171】
これにより、本実施形態の熱交換器70においても、第1実施形態の図8と全く同様に、冷媒および冷却水を流すことができる。その他のヒートポンプサイクル10(車両用空調装置1)の構成および作動は第1実施形態と全く同様である。従って、本実施形態の車両用空調装置1を作動させても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0172】
さらに、本実施形態の熱交換器70では、冷媒側タンク形成部材163として、管状部材にて形成された冷媒側集合用タンク形成部材163cおよび冷媒側分配用タンク形成部材163dを採用し、冷却媒体側タンク形成部材433として、管状部材にて形成された冷却媒体側集合用タンク形成部材433eおよび冷却媒体側分配用タンク形成部材433fを採用している。これにより、冷媒側タンク形成部材163および冷却媒体側タンク形成部材434を低コストで容易に形成することができる。
【0173】
さらに、本実施形態の熱交換器70では、冷媒側固定用プレート部材161と冷媒側中間プレート部材162との間に各チューブ16a、43aに連通する空間を形成し、冷却媒体側固定用プレート部材431と冷却媒体側中間プレート部材432との間に各チューブ16a、43aに連通する空間を形成する構成を採用している。
【0174】
これにより、冷媒用チューブ16aを冷却媒体用チューブ43aよりも冷媒側タンク部16c側へ突出させる構成や、冷却媒体用チューブ43aを冷媒用チューブ16aよりも冷却媒体側タンク部43c側へ突出させる構成を採用する必要がない。従って、各チューブ16a、43aの各タンク部16c、43cに対する位置合わせ作業が容易となり、各チューブ16a、43aを(具体的には、各固定用プレート部材161、431)へ容易に固定することができる。
【0175】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、熱交換器70の構成を変更した例を説明する。本実施形態の熱交換器70の詳細構成については、図11を用いて説明する。図11(a)は、本実施形態の熱交換器70の分解斜視図であり、第1実施形態の図6のB部に対応する部位を拡大して示している。また、図11(b)は、図11(a)に対応する部位の外観斜視図を一部断面図としたものである。さらに、図11(c)は、図11(b)のC−C断面図であり、図11(d)は、図11(b)のD−D断面図である。
【0176】
より具体的には、本実施形態の熱交換器70では、第1実施形態に対して、冷媒側タンク部16cの冷媒側固定用プレート部材161および冷媒側中間プレート部材162、並びに、冷却媒体側タンク部43cの冷却媒体側固定用プレート部材431および冷却媒体側中間プレート部材432の構成を変更している。
【0177】
なお、第1実施形態と同様に、冷媒側タンク部16cおよび冷却媒体側タンク部43cの基本的構成は互いに同様なので、以下の説明では、冷却媒体側タンク43cについて説明する。
【0178】
まず、図11(a)に示すように、本実施形態の冷却媒体側固定用プレート部材431には、冷却媒体側分配用タンク形成部材433に向かって凹んだ凹み部431aが形成されている。そして、冷却媒体側固定用プレート部材431のうち、凹み部431aに冷却媒体用チューブ43aが固定され、凹み部431aが形成されていない部位に、冷媒用チューブ16aが固定される。
【0179】
従って、第1実施形態と同様に、冷却媒体側タンク43c側の端部では、冷却媒体用チューブ43aが冷媒用チューブ16aよりも、冷媒側タンク部16c側へ突出している。つまり、冷媒用チューブ16aの冷却媒体側タンク43c側の端部と冷却媒体用チューブ43aの冷却媒体側タンク43c側の端部は、不揃いに配置されている。
【0180】
また、冷却媒体側中間プレート部材432には、第1実施形態とは逆に、冷却媒体側分配用タンク形成部材433の反対側に向かって凹んだ凹み部432bが形成されている。この凹み部432bは、冷却媒体側固定用プレート部材431の凹み部431aに対応する位置に形成され、さらに、凹み部432bには、冷却媒体用チューブ43aが貫通する第2連通穴432aが形成されている。
【0181】
このため、図11(b)に示すように、冷却媒体側固定用プレート部材431および冷却媒体側中間プレート部材432を固定すると、冷却媒体側固定用プレート部材431の凹み部431aと冷却媒体側中間プレート部材432の凹み部432bが当接する。
【0182】
そして、冷却媒体用チューブ43aが、図11(c)に示すように、第2連通穴432aを貫通して、冷却媒体媒側タンク形成部材433内に形成される集合空間433aあるいは分配空間433bに連通している。
【0183】
一方、冷却媒体側固定用プレート部材431の凹み部431aと冷却媒体側中間プレート部材432の凹み部432bが当接しない部位には、図11(d)に示すように、外気の流れ方向Xに2列に並んだ冷媒用チューブ16a同士を互いに連通させる冷媒用連通空間が形成されている。
【0184】
その他の熱交換器70の構成は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の熱交換器70においても、第1実施形態の図8と同様に、冷媒および冷却水を流すことができる。その結果、本実施形態の車両用空調装置1を作動させても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0185】
さらに、本実施形態の熱交換器70の冷却媒体側タンク43cでは、冷却媒体側固定用プレート部材431と冷却媒体側中間プレート部材432との双方に凹み部431a、432bを形成しているので、冷却媒体用チューブ43aを冷却媒体媒側タンク形成部材433内に形成される空間に容易に連通させることができるとともに、冷媒用連通空間を容易に形成することができる。
【0186】
さらに、本実施形態の熱交換器70では、冷却媒体側中間プレート部材432の凹み部432bを冷却媒体側分配用タンク形成部材433の反対側に向けて凹ませているので、集合空間433aおよび分配空間433bを区画する冷却媒体側タンク形成部材433の中央部433cを平坦な形状とすることができる。
【0187】
その結果、冷却媒体側タンク形成部材433の中央部433cと冷却媒体側中間プレート部材432とをろう付け接合する際の接合不良を抑制して、集合空間433aおよび分配空間433bとの間のシール不良を抑制できる。
【0188】
さらに、本実施形態の如く、双方のプレート部材431、432にそれぞれ凹み部431a、432bを形成した場合は、双方の凹み部431a、432bの凹み方向あるいは凹み量を調整することで、冷媒用チューブ16aの冷却媒体側タンク43c側の端部を冷却媒体用チューブ43aの冷却媒体側タンク43c側の端部よりも突出させることなく、これらの端部の位置を揃えることもできる。
【0189】
なお、上述の説明では、冷媒側タンク部16cについての詳細説明は省略しているが、本実施形態では、冷媒側タンク部16cの冷媒側固定用プレート部材161および冷媒側中間プレート部材162の双方に冷却媒体側タンク43c側と同様の凹み部が形成されている。
【0190】
(第4実施形態)
本実施形態では、第2実施形態に対して、熱交換器70の構成を変更した例を説明する。本実施形態の熱交換器70の詳細構成については、図12を用いて説明する。図12(a)は、本実施形態の熱交換器70の分解斜視図であり、図6のB部に対応する部位を拡大して示している。また、図12(b)は、図12(a)に対応する部位の外観斜視図を一部断面図としたものである。さらに、図12(c)は、図12(b)のC−C断面図であり、図12(d)は、図12(b)のD−D断面図である。
【0191】
なお、第3実施形態と同様に、冷媒側タンク部16cおよび冷却媒体側タンク部43cの基本的構成は互いに同様なので、以下の説明では、冷却媒体側タンク43cについて説明し、冷媒側タンク部16cについての詳細説明は省略する。
【0192】
より具体的には、第2実施形態では、冷却媒体側タンク形成部材433として、管状部材にて形成された冷却媒体側集合用タンク形成部材433eおよび冷却媒体側分配用タンク形成部材433fを採用したが、本実施形態では、図12(a)、(b)に示すように、平板金属にプレス加工を施すことにより形成された上側タンク形成部材433gおよび下側タンク形成部材433hを採用している。
【0193】
上側タンク形成部材433gおよび下側タンク形成部材433hは、いずれもその長手方向から見たときに、二山状(W字状)に形成されており、これらを最中合わせ状に接合することによって、冷却媒体の集合空間433aおよび冷却媒体の分配空間433bが形成されている。
【0194】
また、図12(c)に示すように、下側タンク形成部材433hには、冷却媒体側中間プレート部材432の凹み部432cに形成された第2連通穴432aと連通する連通穴が形成されており、これらの連通穴を介して、冷却媒体用チューブ43aが集合空間163aおよび分配空間433bに連通している。
【0195】
さらに、図12(d)に示すように、冷媒用チューブ16aに対応する部位に形成された冷却媒体側中間プレート部材432の凹み部432b、冷却媒体側固定用プレート部材431の431a同士の間に冷媒用連通空間が形成されている。従って、本実施形態の熱交換器70においても、第1実施形態の図8と同様に、冷媒および冷却水を流すことができ、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0196】
なお、本実施形態では、冷却媒体側タンク形成部材433(冷媒側タンク部16c)をプレス成形で形成された2つの部材433h、433gで形成した例を説明したが、本実施形態のような冷却媒体側タンク形成部材433(冷媒側タンク部16c)は、押し出し加工または引き抜き加工等によって形成しても低コストで容易に形成することができる。
【0197】
(第5実施形態)
本実施形態では、図13の全体構成図に示すように、第1実施形態に対して、ヒートポンプサイクル10の構成を変更した例を説明する。なお、図13は、本実施形態における廃熱回収運転時の冷媒流路等を示す全体構成図であり、ヒートポンプサイクル10における冷媒の流れを実線で示し、冷却水循環回路40における冷却水の流れを破線矢印で示している。
【0198】
具体的には、本実施形態では、第1実施形態の室内凝縮器12が廃止されており、室内空調ユニット30のケーシング31内に第1実施形態の複合型の熱交換器70を配置している。そして、この熱交換器70のうち、第1実施形態の室外熱交換部16を室内凝縮器12として機能させている。以下、熱交換器70のうち室内凝縮器12として機能する部位を室内凝縮部と表記する
一方、室外熱交換部16については、内部を流通する冷媒と送風ファン17から送風された外気とを熱交換させる単一の熱交換器として構成されている。その他の構成は、第1実施形態と同様である。また、本実施形態では、除霜運転は実行されないものの、その他の作動は、第1実施形態と同様である。
【0199】
従って、本実施形態の廃熱回収運転時には、車室内送風空気を、熱交換器70の室内蒸発部にて圧縮機11吐出冷媒と熱交換させて加熱し、さらに、室内凝縮部にて加熱された車室内送風空気を熱交換器70のラジエータ部43にて冷却水と熱交換させて加熱することができる。
【0200】
さらに、本実施形態のヒートポンプサイクル10の構成によれば、冷却水と車室内送風空気とを熱交換させることができるので、ヒートポンプサイクル10(具体的には、圧縮機11)の作動を停止させたときであっても車室内の暖房を実現することができる。また、圧縮機11吐出冷媒の温度が低く、ヒートポンプサイクル10の加熱能力が低いときであっても車室内の暖房を実現することができる。
【0201】
もちろん、本実施形態のヒートポンプサイクル10に、第2〜4実施形態に記載した熱交換器70を適用してもよい。
【0202】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0203】
(1)上述の第1実施形態では、図7に示すように、冷媒側タンク部16c内に冷却媒体用連通空間を形成し、冷却媒体側タンク部43c内に冷媒用連通空間を形成した例を説明したが、このような連通空間では、冷却水あるいは冷媒に圧力損失が生じることが懸念される。そのため、連通空間の容積をできるだけ拡大することが望ましい。
【0204】
例えば、図12(a)に示すように、中間プレート部材432(162)の凹み部432b(162b)の凹み量を、チューブ16a(43a)の配列方向(すなわち、外気の流れ方向X)の両側から中央部に向かって徐々に増加させる形状を採用してもよい。
【0205】
また、図12(b)に示すように、チューブ16a(43a)として、その長手方向長さがチューブ16a(43a)の配列方向の両側から中央部に向かって徐々に短くなる形状を採用してもよい。もちろん、図12(a)に示す中間プレート部材432(162)と、図12(b)に示すチューブ16a(43a)との双方を同時に採用してもよい。
【0206】
(2)上述の第1実施形態では、第1流体としてヒートポンプサイクル10の冷媒を採用し、第2流体として冷却水循環回路40の冷却水を採用し、さらに、第3流体として送風ファン17によって送風された外気を採用した例を説明したが、第1〜第3流体はこれに限定されない。例えば、第3実施形態のように、第3流体として車室内送風空気を採用してもよい。
【0207】
例えば、第1流体は、ヒートポンプサイクル10の高圧側冷媒であってもよいし、低圧側冷媒であってもよい。
【0208】
例えば、第2流体は、エンジン、走行用電動モータMGに電力を供給するインバータ等の電気機器等を冷却する冷却水を採用してもよい。また、第2流体として、冷却用のオイルを採用し、第2熱交換部をオイルクーラとして機能させてもよいし、第2流体として、蓄熱剤、蓄冷剤等を採用してもよい。
【0209】
さらに、本発明の熱交換器70が適用されたヒートポンプサイクル10を据置型空調装置、冷温保存庫、自動販売機用冷却加熱装置等に適用する場合は、第2流体として、ヒートポンプサイクル10の圧縮機の駆動減としてのエンジン、電動モータおよびその他の電気機器等を冷却する冷却水を採用してもよい。
【0210】
さらに、上述の実施形態では、ヒートポンプサイクル(冷凍サイクル)に本発明の熱交換器70を適用した例を説明したが、本発明の熱交換器70の適用はこれに限定されない。すなわち、3種類の流体間で熱交換を行う装置等に幅広く適用可能である。
【0211】
例えば、車両用冷却システムに適用される熱交換器として適用することができる。そして、第1流体は、作動時に発熱を伴う第1車載機器の有する熱量を吸熱した熱媒体とし、第2流体は、作動時に発熱を伴う第2車載機器の有する熱量を吸熱した熱媒体とし、第3流体は、室外空気としてもよい。
【0212】
より具体的には、ハイブリッド車両に適用する場合には、第1車載機器をエンジンEGとし、第1流体をエンジンEGの冷却水とし、第2車載機器を走行用電動モータとし、第2流体を走行用電動モータの冷却水としてもよい。
【0213】
これらの車載機器の発熱量は、車両の走行状態(走行負荷)に応じてそれぞれ変化するので、エンジンEGの冷却水の温度および走行用電動モータの冷却水の温度も車両の走行状態によって変化する。従って、この例によれば、発熱量の大きい車載機器にて生じた熱量を、空気のみならず、発熱量の小さい車載機器側へ放熱させることが可能となる。
【0214】
(3)上述の実施形態では、室外熱交換部16の冷媒用チューブ16a、ラジエータ部43の冷却媒体用チューブ43aおよびアウターフィン50をアルミニウム合金(金属)で形成し、ろう付け接合した例を説明したが、もちろん、アウターフィン50を、他の伝熱性に優れる材質(例えば、カーボンナノチューブ等)で形成して、接着等の接合手段によって接合してもよい。
【0215】
(4)上述の実施形態では、冷却水循環回路40の冷却媒体回路を切り替える回路切替手段として、電気式の三方弁42を採用した例を説明したが、回路切替手段はこれに限定されない。例えば、サーモスタット弁を採用してもよい。サーモスタット弁は、温度によって体積変化するサーモワックス(感温部材)によって弁体を変位させて冷却媒体通路を開閉する機械的機構で構成される冷却媒体温度応動弁である。従って、サーモスタット弁を採用することで、冷却水温度センサ52を廃止することもできる。
【0216】
(5)上述の実施形態では、冷媒として通常のフロン系冷媒を採用した例を説明したが、冷媒の種類はこれに限定されない。二酸化炭素等の自然冷媒や炭化水素系冷媒等を採用してもよい。さらに、ヒートポンプサイクル10が、圧縮機11吐出冷媒が冷媒の臨界圧力以上となる超臨界冷凍サイクルを構成していてもよい。
【符号の説明】
【0217】
16 室外熱交換部
16a 冷媒用チューブ
16c 冷媒側タンク部
161 冷媒側固定用プレート部材
162 冷媒側中間プレート部材
162a 第1連通穴
163 冷媒側タンク形成部材
43 ラジエータ部
43a 冷却媒体用チューブ
43c 冷却媒体側タンク部
431 冷却媒体側固定用プレート部材
432 冷却媒体側中間プレート部材
432a 第2連通穴
433 冷却媒体側タンク形成部材
50 アウターフィン
70 熱交換器
70a 外気通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体が流通する複数本の第1チューブ(16a)および前記複数本の第1チューブ(16a)の積層方向に延びて前記第1チューブ(16a)を流通する前記第1流体の集合あるいは分配を行う第1タンク部(16c)を有し、前記第1流体と前記第1チューブ(16a)の周囲を流れる第3流体とを熱交換させる第1熱交換部(16)と、
第2流体が流通する複数本の第2チューブ(43a)および前記複数本の第2チューブ(43a)の積層方向に延びて前記第2チューブ(43a)を流通する前記第2流体の集合あるいは分配を行う第2タンク部(43c)を有し、前記第2流体と前記第2チューブ(43a)の周囲を流れる第3流体とを熱交換させる第2熱交換部(43)とを備え、
前記複数の第1チューブ(16a)のうち少なくとも1つは、前記複数の第2チューブ(43a)の間に配置され、
前記複数の第2チューブ(43a)のうち少なくとも1つは、前記複数の第1チューブ(16a)の間に配置され、
前記第1チューブ(16a)と前記第2チューブ(43a)との間に形成される空間は、前記第3流体が流通する第3流体用通路(70a)を形成しており、
前記第3流体用通路(70a)には、双方の熱交換部(16、43)における熱交換を促進するとともに、前記第1チューブ(16a)を流通する前記第1流体と前記第2チューブ(43a)を流通する前記第2流体との間の熱移動を可能とするアウターフィン(50)が配置され、
前記第1タンク部(16c)には、前記第1チューブ(16a)と前記第2チューブ(43a)の双方が固定され、
前記第2タンク部(43c)には、前記第1チューブ(16a)と前記第2チューブ(43a)の双方が固定されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記第1タンク部(16c)は、前記第1チューブ(16a)および前記第2チューブ(43a)のうち少なくとも一方が固定される第1固定用プレート部材(161)、前記第1固定用プレート部材(161)に固定される第1中間プレート部材(162)、並びに、前記第1固定用プレート部材(161)あるいは前記第1中間プレート部材(162)に固定されて内部に前記第1流体の集合あるいは分配を行う空間が形成される第1タンク形成部材(163)を有し、
前記第2タンク部(43c)は、前記第1チューブ(16a)および前記第2チューブ(43a)のうち少なくとも一方が固定される第2固定用プレート部材(431)、前記第2固定用プレート部材(431)に固定される第2中間プレート部材(432)、並びに、前記第2固定用プレート部材(431)あるいは前記第2中間プレート部材(432)に固定されて内部に前記第2流体の集合あるいは分配を行う空間が形成される第2タンク形成部材(433)を有し、
前記第1中間プレート部材(162)には、前記第1チューブ(16a)を前記第1タンク形成部材(163)の内部に形成される空間に連通させる第1連通穴(162a)が形成されており、
前記第2中間プレート部材(432)には、前記第2チューブ(43a)を前記第2タンク形成部材(433)の内部に形成される空間に連通させる第2連通穴(432a)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記第1チューブ(16a)は、前記第1連通穴(162a)を貫通して、前記第1タンク形成部材(163)の内部に形成される空間に突出し、
前記第2チューブ(43a)は、前記第2連通穴(432a)を貫通して、前記第2タンク形成部材(433)の内部に形成される空間に突出していることを特徴とする請求項2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記第1チューブ(16a)および前記第2チューブ(43a)は、前記第3流体用通路(70a)を流通する第3流体の流れ方向に複数列配置されており、
前記第1固定用プレート部材(161)と前記第1中間プレート部材(162)との間には、前記第3流体の流れ方向に配列された前記第2チューブ(43a)同士を連通させる第1連通空間が形成され、
前記第2固定用プレート部材(431)と前記第2中間プレート部材(432)との間には、前記第3流体の流れ方向に配列された前記第1チューブ(16a)同士を連通させる第2連通空間が形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記第1、第2チューブ(16a、43a)は、前記第1、第2固定用プレート部材(161、431)にろう付け接合されることによって、固定されていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1つに記載の熱交換器。
【請求項6】
前記第1固定用プレート部材(161)と前記第1タンク形成部材(163)、および、前記第2固定用プレート部材(431)と前記第2タンク形成部材(433)は、それぞれかしめによって固定されていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1つに記載の熱交換器。
【請求項7】
蒸気圧縮式の冷凍サイクルにおいて冷媒を蒸発させる蒸発器として用いられる熱交換器であって、
前記第1流体は、前記冷凍サイクルの冷媒であり、
前記第2流体は、外部熱源の有する熱量を吸熱した熱媒体であり、
前記第3流体は、空気であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の熱交換器。
【請求項8】
蒸気圧縮式の冷凍サイクルにおいて圧縮機吐出冷媒を放熱させる放熱器として用いられる熱交換器であって、
前記第1流体は、前記冷凍サイクルの冷媒であり、
前記第2流体は、外部熱源の有する熱量を吸熱した熱媒体であり、
前記第3流体は、空気であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の熱交換器。
【請求項9】
車両用冷却システムに適用される熱交換器であって、
前記第1流体は、作動時に発熱を伴う第1車載機器の有する熱量を吸熱した熱媒体であり、
前記第2流体は、作動時に発熱を伴う第2車載機器の有する熱量を吸熱した熱媒体であり、
前記第3流体は、空気であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−7821(P2012−7821A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145011(P2010−145011)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】