説明

熱交換装置

【課題】伝熱管の温度差による歪みを吸収し、耐火材の割れを防止する。
【解決手段】垂直状高温通路Hの軸線を中心とする円周上に、同軸線と平行にのびた複数の低温通路形成用金属製伝熱管13が隣り合う者同士間に間隔をおいて一列に配列されている。同伝熱管13列を挟んでその両側に垂直筒状耐火材製内壁21および垂直筒状断熱材製外壁22が互いに間隔をおいてそれぞれ設けられている。内壁21および外壁22間における各伝熱管13の周囲に粒子状熱媒体24が充填されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、都市ごみ焼却炉や産業廃棄物焼却炉における廃棄物の焼却処理および焼却炉から排出される灰を溶融処理する過程で発生する高温の燃焼ガス(排ガス)の熱エネルギーを空気と熱交換することにより回収し、熱エネルギーの有効利用を図る熱交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の熱交換装置としては、高温通路形成用筒状壁体が、耐火材製内壁およびこれの外面を空気層を介して取り囲んでいる断熱材製外壁よりなり、空気層に、内壁軸方向にのびた低温通路形成用金属製伝熱管が通されているものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このような構造において、熱交換時に発生する耐火材と伝熱管との間の熱膨張差の問題はないが、耐火材と伝熱管との間に空気層があり、熱伝達効率が悪いという問題がある。
【0004】
また、他の熱交換装置としては、高温通路形成用筒状壁体が、耐火材製内壁および断熱材製外壁よりなる二重壁構造によって形成されており、内壁外面および外壁内面の双方に、切欠が互いに相対させられるように形成されており、双方の切欠の合体によって形成されたスペースに、内壁軸方向にのびた低温通路形成用金属製伝熱管が通されているものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
このような構造において、内壁および外壁の温度差に基づいて、伝熱管の内面側と外面側で温度差が発生し、そのために伝熱管に歪みが生じる。その結果、この歪みを吸収しきれずに耐火材が割れ、耐火材の割れ目から高温ガス(排ガス)が侵入して伝熱管を腐食させるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−41681号公報
【特許文献2】特開平10−325527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、伝熱管の熱膨張による変形を吸収することができる熱交換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による熱交換装置は、垂直状高温通路の軸線を中心とする円周上に、同軸線と平行にのびた複数の低温通路形成用金属製伝熱管が隣り合う者同士間に間隔をおいて一列に配列されており、同伝熱管列を挟んでその両側に垂直筒状耐火材製内壁および垂直筒状断熱材製外壁が互いに間隔をおいてそれぞれ設けられており、内壁および外壁間における各伝熱管の周囲に粒子状熱媒体が充填されているものである。
【0009】
この発明による熱交換装置では、伝熱管の熱膨張による変形が内壁の耐火材に拘束されずに、その変形を熱媒体によって吸収することができる。
【0010】
さらに、熱媒体は、球状セラミックであり、セラミックの粒子径は、0.125〜3mmであることが好ましい。
【0011】
セラミックは、例えば、アルミナオキサイド、シリコンカーバイトであって、非常に硬く、耐摩耗性に優れ、高温雰囲気下で使用しうるものであことが望ましい。
【0012】
また、熱媒体は、球状ケイ砂であり、ケイ砂の粒子径は、0.3〜0.6mmであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、伝熱管の熱膨張による変形が耐火材に拘束されずに伝熱管の変形を吸収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明による熱交換装置の破砕断面を含む斜視図である。
【図2】同熱交換装置の水平横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照すると、熱交換装置は、内側に高温ガスHが流される垂直筒状壁体11と、壁体11外面に被覆されている金属製垂直筒状ケーシング12と、壁体11の周方向に等間隔で並ぶように壁体11に貫通させられかつ内部に低温ガスLが流される複数の金属製垂直状伝熱管13とよりなる。
【0016】
壁体11は、二重壁構造よりなるものであって、伝熱管13を高温ガスHの腐食成分から保護するための耐火材製内壁21と、内壁21に対して伝熱管13を通すためのスペース23をおいて相対させられている断熱材製外壁22と、同スペース23における伝熱管13の周囲に充填されている球状セラミック製熱媒体24とよりなる。
【0017】
ケーシング12外面の上端部を円環状排気ヘッダ31が、その下端部を円環状給気ヘッダ32がそれぞれ取り囲んでいる。排気ヘッダ31および給気ヘッダ32には各伝熱管13の上下に対応する端部が連通させられている。
【0018】
図2に示すように、ケーシング12の内面には複数の金属製アンカー41がケーシング12の周方向に伝熱管13の間隔と同間隔で固定されている。アンカー41は、Y字状をなすものであって、ケーシング12内面から半径方向内向きにのびかつ隣り合う2つの伝熱管13間において熱媒体に通されている直線部41aと、直線部41aの内端にこれと一体的に設けられかつ内壁21内に埋設されている二股状部41bとよりなる。
【0019】
廃棄物を燃焼させて生じた高温ガスHは、内壁21の内側を通される。低温ガスLは、伝熱管13内を通され、高温ガスHの熱を吸収して熱交換される。伝熱管13の内面側および外面側では温度差が生じ、そのため、伝熱管13に歪みが発生する。
【0020】
伝熱管13の周囲には熱媒体24が充満させられているので、伝熱管の熱膨張によって変形させられたとしても、その変形は熱媒体によって吸収されることで、耐火材の割れを防止できる。
【0021】
上記熱交換器の製造手順を以下に説明する。
【0022】
a) ケーシング12、伝熱管13、排気ヘッダ31、給気ヘッダ32をそれぞれ所定位置にセットする。
【0023】
b) ケーシング12の内面に、外壁22となる断熱材を貼り付ける。
【0024】
c) 外壁22の内面となるべきか所に金網製内型枠をセットする。
【0025】
d) アンカー41を所定位置にセットする。
【0026】
e) 外壁22の外面となるべきか所に木枠製外型枠をセットする。
【0027】
f) 内型枠および外型枠間に、外壁22となるべき耐火材を流し込み、所定期間養生する。この後、内型枠は耐火材に埋めた状態で残すが、耐火材から外型枠は取り外す。
【0028】
g) 断熱材および耐火材間に熱媒体を充填する。
【0029】
h) 耐火材を焼結させるために乾燥焚きをする。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明による熱交換装置は、伝熱管の温度差による歪みを吸収し、耐火材の割れを防止できることを達成するのに適している。
【符号の説明】
【0031】
13 伝熱管
21 内壁
22 外壁
24 熱媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直状高温通路の軸線を中心とする円周上に、同軸線と平行にのびた複数の低温通路形成用金属製伝熱管が隣り合う者同士間に間隔をおいて一列に配列されており、同伝熱管列を挟んでその両側に垂直筒状耐火材製内壁および垂直筒状断熱材製外壁が互いに間隔をおいてそれぞれ設けられており、内壁および外壁間における各伝熱管の周囲に粒子状熱媒体が充填されている熱交換装置。
【請求項2】
熱媒体は、セラミックである請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項3】
熱媒体は、ケイ砂である請求項1に記載の熱交換装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−220154(P2012−220154A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88991(P2011−88991)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】