説明

熱伝導性モノマーキャストナイロン成形体

【課題】充填剤が略均一に分布され、熱伝導性が向上されたモノマーキャストナイロン成形体を提供する。
【解決手段】窒化ホウ素粉体を含むモノマーキャストナイロン成形体であって、該成形体の少なくとも9箇所から成形体片を採取し、該成形体片各々を熱天秤で、室温から500℃まで10℃/分で昇温して求められる灰分の平均値が成形体の総質量に対して10〜34質量%であり、標準偏差が5質量%以下である成形体、但し、前記9箇所は、該成形体の略重心を原点とした空間座標X、Y、Z軸方向夫々の、成形体の両端部及び略中央部の計9箇所である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノマーキャストナイロン成形体に関し、詳細には、所定の窒化ホウ素を均一に含む、熱伝導性、絶縁性、切削加工性が良いモノマーキャストナイロン成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、機械的強度、耐摩耗性に優れるため、ギア、車輪、及びロール等に広く使用されている。しかし、熱伝導率が低いため、放熱材料としては不適切である。そこで、ポリアミド樹脂に熱伝導性を付与するために、酸化マグネシウムを主体とする無機質粉体を配合することが知られている(特許文献1)。しかし、酸化マグネシウム等、金属系無機粉体は比重の大きいものが多く、樹脂へ添加するに従い、成形体の比重が大きくなってしまう為、電気製品等、軽量であることが好ましい用途には向かない。例えば、ナイロン成形体の真比重は1.23〜1.25であるのに対して、上記酸化マグネシウム等の化合物を添加した場合には、成形体の真比重が1.99となる。
【0003】
カーボン系充填剤によっても、熱伝導性を向上することは可能である。しかし、熱伝導性が発現される量のカーボン系充填剤を含む成形体は、確実に導電性が発現するので厳格な電気絶縁性が要求される用途には使用できない。
【0004】
電気部品用電熱材料として、セラミック充填剤を含む熱伝導性ポリマー組成物が知られている(特許文献2)。セラミックとしては、メディアン粒径が約130〜260μmのBN、SiC、及びAlNから選ばれるものが使用される。しかし、酸化アルミニウムおよび炭化ケイ素等の高硬度充填剤は、添加量の割には熱伝導性の向上が少ない。さらに酸化アルミニウムおよび炭化ケイ素を含む成形体は、一般的なポリアミド樹脂の切削加工条件の下で切削を施した場合、工具の磨耗が激しく、そのまま切削を継続した場合、加工面の粗度が大きくなる。また、加工面をきれいに仕上げるためには、加工途中での工具の研磨又は交換が必要となり、加工の生産性が悪い。
【0005】
さらに、モノマーキャスト成形法は、金型に流し入れる原料液の粘度が低い。そのため、高比重の充填剤が添加されていると、重合がある程度進行して原料液の粘度上昇により充填剤の沈降が防止されるようになる前に、充填剤が沈降してしまい、得られる成形体内における充填剤の分布が不均一になり易いという問題がある。これにより、使用可能な充填剤が制限されてしまう。
【特許文献1】特開昭63−270761号公報
【特許文献2】特開平2−263847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、充填剤が略均一に分布され、良好な熱伝導性且つ電気絶縁性を備えるモノマーキャストナイロン成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、窒化ホウ素粉体を含むモノマーキャストナイロン成形体であって、該成形体の少なくとも9箇所から成形体片を採取し、該成形体片各々を熱天秤で、室温から500℃まで10℃/分で昇温して求められる灰分の平均値が成形体の総質量に対して10〜34質量%であり、標準偏差が5質量%以下である成形体、但し、前記9箇所は、該成形体の略重心を原点とした空間座標X、Y、Z軸方向夫々の、成形体の両端部及び略中央部の計9箇所である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のモノマーキャストナイロン成形体は、均一に分散された窒化ホウ素粉体を含み、これにより、良好な熱伝導性、絶縁性、切削加工性を満足する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、モノマーキャストナイロン成形体には、モノマーキャスト法により得られる成形体自体とその二次加工品が包含される。該モノマーキャストナイロン成形体中の窒化ホウ素粉体の平均含有量は、成形体総重量に対して、下限値は、10質量%、好ましくは15質量%、さらに好ましくは20質量%であり、且つ上限値は、34質量%、好ましくは30質量%である。ここで、平均含有量は、後述するように、少なくとも9つのサンプリング点における窒化ホウ素含有量の平均値を意味する。前記の範囲内の該窒化ホウ素微粒子含有量であれば、目的とする熱伝導性を工業規模で再現性良く達成できる。平均含有量が前記上限値を超えるものは、その製造の際に、該窒化ホウ素粉体を含むモノマー液の粘度が高くなり過ぎて、金型内に注入することが困難となる上、成形不良を生じ易いだけでなく、添加量に応じた熱伝導性の向上が見られない。一方、該窒化ホウ素粉体含有量が前記下限値未満では、1W/m・K以上の熱伝導率を実現することが困難である。
【0010】
該窒化ホウ素粉体は、モノマーキャストナイロン成形体に略均一に分布していることを特徴とする。上に述べたように、モノマーキャスト成形法では充填剤が沈降し易く、得られる成形体中の成形方向上部、即ち金型上部では充填剤濃度が低く、成形方向底部、即ち金型底部では該濃度が高くなりがちである。しかし、所定の窒化ホウ素粉体を所定量使用することによって、実用上均一に分布させることができることが見出された。成形体の成形方向上部と底部の2箇所の充填剤濃度を測定し、その違いがある一定限度内であれば、充填剤が均一に分布している事を確認することができる。しかし、実際上、成形体、特に二次加工品において、成形方向上部と底部とを特定することはほぼ不可能である。そこで、本発明では、成形体の、空間的に網羅された少なくとも9箇所の成形体片中の窒化ホウ素の質量%を測定し、そのばらつきを確認する。窒化ホウ素の質量%は、定法に従い、例えば熱天秤等を用いて、昇温して、可燃物を燃焼することによって測定できる。本発明においては、室温から500℃まで、10℃/分で昇温し、最早、それ以上の減量が認められなくなった480℃における重量として灰分を求めた。本発明の成形体は、該方法により求められる窒化ホウ素粉体の平均含有量の標準偏差、即ち、測定値をX、X〜Xとし、その平均値をXオーバーバーとしたときの下記S、


が、成形体総質量の5質量%以下、好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、もっとも好ましくは0.5質量%以下である。標準偏差が5質量%以下の成形体中では、窒化ホウ素が均一に分布しており、後述する良好な熱伝導率、さらには成形性を有する。
【0011】
熱天秤測定のサンプリング箇所は、多ければ多いほど好ましいが、実際上、困難である。そこで、該成形体の重心を原点とした空間座標X、Y、Z方向夫々の両端部及び中心部の計9箇所からサンプリングする。例えば、図1に示すような、角材状の成形体の場合には、底面もしくは上面と、2つの側面のそれぞれから、中央付近の点(b点)、両端部付近の点(a及びc)計3点×3方向から採取すれば、成形方向の上下によるばらつきを検出することができると考えられる。丸棒状の成形体の場合には、棒の長さ方向をZ方向として、棒の側面上の上端部、中心部及び下端部と、X及びY方向として、断面の中心部と、X及びY方向直径の両端部を採取すればよい。パイプ状の場合は、丸棒状の成形体における断面の中心部に代えて、内側の円周付近からサンプリングする。なお、X、Y、Z方向を網羅してサンプリングできればよいので、空間座標の原点となる重心は、凡その点であってよく、また、成形体の向きも任意であってよい。
【0012】
窒化ホウ素粉体は、レーザー光回折法で測定される平均粒径が30μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以下であり、さらに好ましくは、17μm以下である。粒径が前記値より大きい粉体は、モノマー反応液中で沈降し易い。一方、粒径の下限値については、特に制限はなく、分散方法、成形体の形状、重合反応により適時決定することが好ましいが、実際上は約5μmである。
【0013】
窒化ホウ素には、立方晶系と六方晶系があるが、好ましくは六方晶系が使用される。六方晶系の窒化ホウ素は、グラファイトに類似した構造を有し、単位添加量当たりの熱伝導性向上効果に優れる。また、薄片状であるので、モノマー液中で沈降し難く、また、得られる摺動特性に優れた成形体を与える。さらに、六方晶系は、立方晶系に比べて硬度が低いので、成形体を切削加工する用途にも好適である。
【0014】
窒化ホウ素粉体は、表面処理されていないものであることが好ましい。表面処理剤によっては、ラクタムのアニオン重合を阻害するものがあるからである。
【0015】
モノマーキャスト成形体に許容される電気絶縁性に応じて、該電気絶縁性を確保することができる範囲で、グラファイトを含んでもよい。グラファイトは、窒化ホウ素よりもはるかに安価であるので、製造コスト上有利となる。所望の体積抵抗率の下限値が1013(Ω・cm)である場合には、成形体の約8質量%まで、グラファイトを配合することができる。グラファイトも、その平均粒径の上限値は、30μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μmさらに好ましくは10μm以下である。下限値は特になく、分散方法、成形体の形状、重合反応に応じて適時選択することが好ましいが、典型的には約5μmである。
【0016】
導電性を考慮すると、グラファイトの添加量の下限値は、成形体の総質量に対して2質量%、好ましくは4質量%、さらに好ましくは5質量%であり、上限値は7.8質量%、好ましくは7.6質量%、さらに好ましくは7.3質量%である。グラファイトが含有されている場合、製品の色が独特の黒色を帯びるので、グラファイトの存在を容易に確認することができる。また、上記方法で灰分を得た後、該灰分を顕微鏡で観察することでも確認することができる。また、灰分のうちの窒化ホウ素量は、ホウ素を定量することで、求めることができる。
【0017】
本発明の成形体を構成するナイロンの原料である環状アミドとしては、炭素数4〜12を有するラクタムが好適に用いられ、例えばγ−ブチロラクタム、ε−カプロラクタム、ω−エナントラクタム、ω−カプリロラクタム、ω−ラウロラクタムが挙げられる。前記環状アミドは単独でも、複数の種類を混合して用いてもよい。本発明の成形体を構成するナイロンとして好適に用いられるものは、ε−カプロラクタムを主成分とするナイロン−6、ω−ラウロラクタムを主成分とするナイロン−12及びε−カプロラクタムとω−ラウロラクタムの混合物から得られる共重合ナイロンである。
【0018】
本発明の成形体の熱伝導率は、用途に応じて、窒化ホウ素の上記配合量10〜34質量%の範囲内で適宜調整することができる。好ましくは、非定常伝熱法により測定される熱伝導率が、1(W/m・K)以上、より好ましくは1.2(W/m・K)以上であり、さらに好ましくは1.5(W/m・K)以上であり、上限値は、3(W/m・K)以下、好ましくは2.5(W/m・K)以下、さらに好ましくは2(W/m・K)である。一般的熱伝導用途には、熱伝導率が1(W/m・K)以上であれば、使用可能である。なお、本発明において、熱伝導率は、軸方向非定常熱線法により測定をした。
【0019】
前記したように、従来の熱伝導率を付与する為に用いられていたカーボン系充填剤では、添加することによって電気絶縁性が低下してしまう。これに対して、本発明の成形体は、体積抵抗率が1013Ω・cm以上であり、絶縁性を要求される用途、例えば配線基板等の要求を満足させることができる。本発明の成形体の体積抵抗率は、好ましくは1014Ω・cm以上、より好ましくは1015Ω・cm以上である。本発明の成形体の体積抵抗率の上限値は、カーボン系充填剤を成形体に添加しない場合の抵抗値である。
【0020】
本発明の成形体は、本発明の目的を損なわない範囲で、顔料、染料、滑剤、補強剤等の添加剤を含んでもよい。
【0021】
本発明の成形体は、以下の工程の製造方法で製造することができる。
1)ラクタム95〜98質量部に、アニオン重合助触媒0.25〜0.50質量部、および窒化ホウ素または窒化ホウ素およびグラファイトを11〜36質量部加えて、130〜170℃に加熱する工程、
2)別途、ラクタム2〜5質量部に、アニオン重合触媒0.02〜0.25質量部を添加して、130〜170℃に加熱する工程、
3)工程1)で得られた混合物と、工程2)で得られた混合物を混合する工程、
4)工程3)で得られた混合物を、金型に注入して重合させる工程、
を含み、但し工程2)は工程1)と並行して行ってもよい。
工程1)と2)で使用するラクタムの割合を95/5〜98/2、好ましくは96/4〜97/3にすることによって、窒化ホウ素等が均一に分散された成形体を得ることができる。グラファイトを使用する場合も、同様である。工程1)及び2)における温度は130〜170℃、好ましくは140〜160℃である。該温度が、前記下限値未満では、重合速度が遅いので、窒化ホウ素等充填剤が沈降し易くなり、また、成形体の表面が白くなる外観不良、機械的強度の不足等が起こり得る。一方、前記温度を超えると、重合速度が速くなり、粘度上昇により設備の配管を詰まらせたり、気泡の抜けが悪くなったりする。さらに、工程4)において、金型の温度は予め130〜170、好ましくは140〜160℃に加熱しておく。工程1)において、アニオン重合助触媒は0.25〜0.50質量部、好ましくは0.3〜0.45質量部であり、工程2)におけるアニオン重合触媒の量は、0.02〜0.25、好ましくは0.05〜0.2質量部である。
【0022】
上記方法で使用する、ラクタム、窒化ホウ素、グラファイトは、前記した通りである。
【0023】
アニオン重合助触媒としては、ナイロンモノマーのアニオン重合において知られているアニオン重合助触媒の任意のものを使用することができ、各種イソシアネート化合物、尿素誘導体、アシルラクタム、及びこれらの混合物が挙げられる。例としては、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリイソシアネート、例えばポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート及びカルボジイミド変性ジイソシアネート、カルバミドラクタム、例えば1,6−ヘキサメチレンビスカルバミドカプロラクタム、及びN,N’−ジフェニル−p−フェニレンビスカルバミドカプロラクタム、N−アセチル−ε−カプロラクタム、トリアリルイソシアヌレート、酸クロライド、例えばテレフタロイルクロリド、アジポイルクロリド及びセバコイルクロリド、ポリアシルラクタム、例えばアジポイルビスカプロラクタム及びテレフタロイルビスカプロラクタム、1,3−ジフェニル尿素等、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、ジイソシアネート類及びカルバミドラクタム類が使用される。
【0024】
アニオン重合触媒としては、公知の物を使用することができる。例としては、アルカリ金属、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム;アルカリ土類金属、例えばマグネシウム、カルシウム;およびこれら金属の水素化物、例えば水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム;酸化物、例えば酸化ナトリウム、酸化カリウム;水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム;炭酸塩、例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム;アルキル化物、例えばメチルナトリウム、エチルナトリウム、メチルカリウム、エチルカリウム;アルコキシド、例えばナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、カリウムエチラート;グリニャール化合物、例えばメチルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムブロマイド;ω−ラクタムとの反応生成物、例えばω−ラクタムのナトリウム塩、及びカリウム塩;及びこれらの混合物が挙げられる。好ましくは水素化ナトリウムが使用される。
【0025】
上記方法により得られる成形体は、通常、加工に付され、二次加工品として使用される。該二次加工品としては、ギア、芯金質量部にベアリングを取り付けることによって車輪、ロール、スプロケット、カム、スターホイール等がある。
【0026】
実施例
以下、本発明を、実施例を参照してより詳細に説明する
以下に使用した充填剤(窒化ホウ素、グラファイト、アルミナ、炭化ケイ素)を示す。
(1)窒化ホウ素
窒化ホウ素1.HP−1(商品名)、水島合金鉄(株)製、六方晶系、平均粒径10μm
窒化ホウ素2.HP−1CAW(商品名)、水島合金鉄(株)製、六方晶系、平均粒径16μm
窒化ホウ素3.FS−3(商品名)、水島合金鉄(株)製、六方晶系、平均粒径50μm
窒化ホウ素4.HP−1CA(商品名)、水島合金鉄(株)製、六方晶系、平均粒径16μm、表面処理粉体
(2)グラファイト
グラファイト1.UFG−10(商品名)、昭和電工(株)製、平均粒径5μm
グラファイト2.UFG−C30(商品名)、昭和電工(株)製、平均粒径10μm
(3)アルミナ:AX3−32(商品名)、(株)マイクロン製、平均粒径3.9μm
(4)炭化ケイ素:C05(商品名)、Ceram GmbH
Ingenieurkeramik製、平均粒径4.8μm
【0027】
測定方法
(1)熱伝導度
京都電子工業(株)製、固体熱伝導率測定装置QTM−3Dを用いて、非定常伝熱法により測定した。各成形体について3箇所で測定を実施し、その平均値をとった。
(2)体積固有抵抗率
(株)アドバンテスト製、エレクトロメータR8340/Aを用い、JIS K6911に準拠して測定した。
【0028】
(3)灰分
後述する直方体形状の各成形体の、成形方向上部、底部、及び側面中央部の、夫々、3箇所から約15mgの試験片を採取した。該試験片を、TAインストゥルメンツジャパン(株)製、熱天秤装置Q500を用いて、室温から500℃まで、10℃/分で昇温し、最早減量が観測されなくなった480℃における重量から、灰分を求めた。得られた9つのデータの平均値と標準偏差を計算した。
【0029】
(4)切削加工性
切削加工性は、以下に示す条件により加工した成形体の面粗度を、JIS B0601に準拠して測定することにより評価した。面粗度は、Ra(中心線平均粗さ)を10回の試行により測定し、その値の平均の数値を算出した。
切削加工の条件
評価:同条件切削加工後の加工面粗度測定にて判断(JIS B0601準拠)
加工の種類:フライス加工(縦フライス)
装置:ヤマザキマザック(株) 製 マシニングセンタ V414−22
工具:京セラ(株)製 MSD4580−32 チップ、京セラ(株)製 SDKN 1203AUFN(材質:超硬KW10)工具口径:φ150、刃数:4枚、切削速度:800rpm、送り:0.15mm/rev、切込深さ:1mm
面粗度測定装置
(株)小坂研究所製、サーフコーダ SE−40D
カットオフ値 :λc0.8mm[0.1mm/s]
測定長さ :2.5mm
【0030】
実施例1〜3、参考例1〜7、比較例1〜4
ステンレス鋼のビーカーに無水のε−カプロラクタム2900gを取り、140〜160℃の温度に加熱し、これにアニオン重合助触媒のヘキサメチレンジイソシアネート11g、表1に示す各種充填剤を同表に示す量(ε−カプロラクタム100質量部当りの質量部)で夫々配合して混合した。但し、比較例1は、充填剤を何も配合しなかった。
一方、別のステンレス鋼のビーカーに無水のε−カプロラクタム100gを採り、これにアニオン重合触媒の水素化ナトリウム(油性63%)を4g加え、140〜160℃の温度に調整した。次いで、これと上記の六方晶窒化ホウ素微粒子が混合されたモノマー液を混合して150〜160℃に予熱された30mm×250mm×400mmの成形金型内に注入し、20分間重合させてから成形体を取り出し、各評価に供した。
【0031】
結果を表1に示す。表1において、「充填剤の質量%」は添加した質量を総仕込質量で除して得られた値(%)である。
【0032】
【表1】

【0033】
参考例1は、窒化ホウ素の平均粒径が50μmであったため、一部沈降し、標準偏差が8.2質量%になった。
参考例2で使用の窒化ホウ素4は、アニオン重合を阻害するタイプの表面処理剤で処理されているものと推測される。
参考例3〜5は、窒化ホウ素を10質量%未満で含むものである。窒化ホウ素は均一に分布しているものの、所望の熱伝導性を得ることはできなかった。
参考例5は、窒化ホウ素を36質量%添加しているので原料の増粘により成形不可能であった。
参考例7、比較例2はグラファイトを過剰に入れた為、所望の電気絶縁性を達成出来なかった。
比較例3、4は、アルミナ、炭化ケイ素を含む。窒化ホウ素よりも多い量配合しても、熱伝導性が不良であり、切削加工性も良くなかった。
これらに対して、実施例1〜3の成形体は、窒化ホウ素が標準偏差5質量%以下で分布しており、良好な熱伝導性、成形性、及び電気絶縁性を備えた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の成形体は、熱伝導性、電気絶縁性及び機械加工性が求められる放熱用質量部材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】成形体からのサンプリング例を示す概念図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ホウ素粉体を含むモノマーキャストナイロン成形体であって、該成形体の少なくとも9箇所から成形体片を採取し、該成形体片各々を熱天秤で、室温から500℃まで10℃/分で昇温して求められる灰分の平均値が成形体の総質量に対して10〜34質量%であり、標準偏差が5質量%以下である成形体、但し、前記9箇所は、該成形体の略重心を原点とした空間座標X、Y、Z軸方向夫々の、成形体の両端部及び略中央部の計9箇所である。
【請求項2】
前記窒化ホウ素粉体の結晶系が、六方晶系であることを特徴とする請求項1記載のモノマーキャストナイロン成形体。
【請求項3】
前記窒化ホウ素粉体の平均粒径が30μm以下であることを特徴とする請求項1または2項記載のモノマーキャストナイロン成形体。
【請求項4】
グラファイトをさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項記載のモノマーキャストナイロン成形体。
【請求項5】
ナイロンが、ナイロン6、ナイロン12、及びε−カプロラクタムとω−ラウリルラクタムとの共重合ナイロンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のモノマーキャストナイロン成形体。
【請求項6】
非定常伝熱法により測定される熱伝導率が、1(W/mK)以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のモノマーキャストナイロン成形体。
【請求項7】
JIS K6911に準拠して測定される体積固有抵抗率が1013(Ω・cm)以上あることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のモノマーキャストナイロン成形体。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項記載のモノマーキャストナイロン成形体から得られる二次加工品。
【請求項9】
下記工程を含む、モノマーキャストナイロン成形体の製造方法
1)ラクタム95〜98質量部に、アニオン重合助触媒0.25〜0.50質量部、および窒化ホウ素または窒化ホウ素およびグラファイトを11〜36質量部加えて、130〜170℃に加熱する工程、
2)別途、ラクタム2〜5質量部に、アニオン重合触媒0.02〜0.25質量部を添加して、130〜170℃に加熱する工程、
3)工程1)で得られた混合物と、工程2)で得られた混合物を混合する工程、及び
4)工程3)で得られた混合物を、金型に注入して重合させる工程、
を含み、但し工程2)は工程1)と並行して行ってもよい。

【図1】
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【公開番号】特開2008−214398(P2008−214398A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50413(P2007−50413)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(591182101)日本ポリペンコ株式会社 (10)
【Fターム(参考)】